JPH09227937A - 高張力厚鋼板の製造方法 - Google Patents

高張力厚鋼板の製造方法

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JPH09227937A
JPH09227937A JP3936296A JP3936296A JPH09227937A JP H09227937 A JPH09227937 A JP H09227937A JP 3936296 A JP3936296 A JP 3936296A JP 3936296 A JP3936296 A JP 3936296A JP H09227937 A JPH09227937 A JP H09227937A
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JP
Japan
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toughness
temperature
rolling
strength
steel
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JP3936296A
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Inventor
Tomoya Fujiwara
知哉 藤原
Hideji Okaguchi
秀治 岡口
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】靱性および溶接性に優れたTS780MPa 級
高靱性高張力厚鋼板の製造方法の提供。 【解決手段】(1)重量%にて、C:0.02〜0.1
2%、Si:0.3%以下、Mn:0.4〜1.5%、
Cu:0〜0.6%、Ni:0.5〜6%、Cr:0〜
0.8%、Mo:0〜0.8%、V:0.07〜0.1
5%、B:0.0008〜0.0025%、Ti:0.
005〜0.03%、solAl:0.01%以下、
N:0.001〜0.008%、残部Feの鋼を110
0〜1200℃に加熱し急冷後、Ac3〜1050℃に加
熱し圧延し、未再結晶オーステナイト域での累積圧下率
が50%以上となる条件でAr3より高温で圧延を終了
し、そのまま300℃以下まで水冷後、600℃〜Ac1
の温度域で焼戻す高張力厚鋼板の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海洋構造物、タン
ク、橋梁、ペンストックなどの溶接構造物に使用され
る、特に高靱性かつ溶接性に優れた高張力厚鋼板の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】溶接構造物の大型化は常に追求されてお
り、これら構造物に使用される厚鋼板の高強度化への要
求も、より高度の内容のものとなっている。橋梁、海洋
構造物、タンク、ペンストックなどには780MPa 級
の厚鋼板が使用されるに至っているが、これらの大多数
は、一般軟鋼を使用したのでは、重量増、肉厚増、岩盤
の制約などのために基礎工事などが不可能であったもの
が高強度鋼の使用により実現された構造物である。さら
に、素材である厚鋼板の高強度化は、必要板厚を減少
し、溶接工数の減少による施工期間の短縮などを可能に
するので、高強度化に加えて溶接性の改善をともなう要
求がされる場合が多い。
【0003】高強度を確保するために、これら鋼板には
Ni、Cr、Moなどの合金元素が使用される。これ
は、板厚が50ミリを超える鋼板の板厚中心部において
も、最良の靱性が得られるマルテンサイトと下部ベイナ
イトの混合組織とするために、十分な焼入性を確保する
必要があるからである。しかし780MPa を超える高
強度鋼の場合には、こうした焼入性向上元素の多量添加
によって母材の強度と靱性は改善されるものの、溶接熱
影響部(HAZ:Heat Affected Zone)では、靱性の観
点からは焼きの入り過ぎた組織となることが避けられ
ず、また、同時に硬さ上昇による耐溶接低温割れ性の劣
化が大きな問題となる。溶接低温割れを防止するために
は、溶接前に100℃以上、場合によっては150℃以
上の温度で予熱する必要があり、溶接施工コスト低減の
大きな障害となっている。
【0004】このような問題を解決する方法として、C
uやVといった析出強化元素を利用し、Cを低下させる
ことによって、HAZ硬さを抑制し溶接性を向上させる
高強度鋼の製造方法がある。しかし、この方法は強度上
昇を析出強化に依存しているために母材靱性の劣化は避
けられない。なお、“溶接性”というとき、“HAZの
靱性”と“耐溶接低温割れ性”の両方を含んだ性能をさ
す。
【0005】上記の合金組成にのみ頼る方法とは別に、
圧延と熱処理を組み合わせた加工熱処理法により溶接性
と母材靱性を両立させる方法が提案されてきた(特開平
2−205629号公報、特開平5−209222号公
報など)。
【0006】特開平2−205629号公報に開示され
た方法によれば、加工硬化オーステナイトからの変態を
利用し表層部の組織は最適なものが得られる。しかし、
板厚中心部では焼入性確保を考慮して再結晶オーステナ
イトからの変態とせざるを得ず、ある程度の靱性は満た
されるものの、良好な靱性が得られない。さらに、同提
案に示されている580℃以下の焼戻し温度では、強度
と靱性とのバランスを最良のものとすることが出来ない
と考えられる。
【0007】また、特開平5−209222号公報に開
示された方法は、Vの析出強化を利用し強度を確保し、
Cの低減およびB無添加によりHAZ硬さの抑制を図る
ものである。しかし、B無添加としたために、板厚中心
部では焼入性が不足し、靱性に最適な組織が得られず、
したがって、とくに極厚鋼板の板厚中心部において良好
な靱性が得られない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、母材
性能と溶接性に優れた厚鋼板の製造方法、具体的には下
記の性能を満足する厚鋼板の製造方法の提供にある。
【0009】(1) 母材の機械的性質: (a) 引張強さ(TS): 780MPa 以上 (b) 靱性: シャルピー衝撃試験における遷移温度( v
Ts )−80℃以下 (2) 溶接性: (a) HAZの硬さ: 350HV10以下 母材の引張強さと靱性を上記のような目標に限定したと
き、実際の溶接継手部HAZの衝撃試験および溶接低温
割れ試験を行わなくても、HAZの硬さによりHAZの
靱性および溶接低温割れ性を知ることができる。HAZ
の硬さを350HV10以下にできれば、TS780M
Pa 以上で、かつvTs−80℃以下の母材性能を満た
す厚鋼板においては、HAZ靱性および耐溶接低温割れ
性は、十分良好なものとなる。なお、溶接継手部は、
“溶接金属”、“溶接金属に接するHAZ”および“そ
の外側のHAZ”からなり、通常、HAZというときは
“溶接金属に接するHAZ”および“その外側のHA
Z”を含む。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、厚鋼板の
溶接性を確保するためにはCは0.12重量%以下に抑
制しなければならないという知見に基づき、このような
低Cであっても780MPa 以上のTSと優れた靱性を
確保する加工熱処理条件を検討した結果、下記の事項が
必要であることを確認した。
【0011】(イ)凝固後冷却中に生成した粗大な炭窒
化物、例えば、M23(CB)6 、BN、V(CN)、A
lNなどを、鋼(スラブ)を加熱することにより固溶さ
せ、後の圧延段階等で微細な炭窒化物の析出を促進させ
ることが必要である。これは、強度を高め、組織を微細
化し、粗大析出物自体による靱性劣化を防止し、さらに
Bの焼入性向上効果を確保するのに有効である。
【0012】(ロ)合金成分のうち、solAlはBの
焼入性向上効果を生かす場合には高めるのが普通である
が、solAlの増量はTiが添加されている場合には
かえって母材およびHAZの靱性を劣化させるので、s
olAlは低く抑えることが必要である。
【0013】(ハ)上記(イ)に加えてさらに組織を微
細にするには、オーステナイト未再結晶域で累積圧下率
50%以上を加えることが必要である。ここで、オース
テナイト未再結晶域とは、通常の厚鋼板を圧延する際、
圧下を加えられ圧延機を通過した鋼板がつぎの圧延まで
に(その間隔は通常10秒間)、体積率で25%以上再
結晶しない温度域をいい、本発明の範囲の鋼では900
℃以下である。
【0014】また、オーステナイト未再結晶域での累積
圧下率とは、オーステナイト未再結晶域の上限の温度で
の板厚をtu とし、製品板厚をtf とするとき、{(t
u −tf )/tu }×100(%)のことをいう。
【0015】(ニ)上記(ハ)の圧延を付与されたオー
ステナイトから後記する直接焼入れをおこないBの焼入
性向上効果を得るには、通常の再加熱焼入れに用いる量
よりも多くする必要がある。それより少ないと、直接焼
入れにおいてはB本来の効果を十分得ることができな
い。
【0016】図1は、本発明によるスラブ熱処理、圧延
および直接焼入れ焼戻しの方法を示す図面である。この
うち、スラブ熱処理の内容は上記(イ)の、また圧延は
上記(ハ)の技術的内容に基づいておこなわれる。ま
た、直接焼入れにおいて十分な焼入性を確保したうえで
良好な靱性を得るために必要な技術的内容は、上記
(ロ)および(ニ)に示されている。
【0017】本発明は、これら化学組成、圧延および熱
処理条件を組み合わせて完成されたもので、下記の製造
方法を要旨とする(図1参照)。
【0018】(1)重量%にて、C:0.02〜0.1
2%、Si:0.3%以下、Mn:0.4〜1.5%、
Cu:0〜0.6%、Ni:0.5〜6%、Cr:0〜
0.8%、Mo:0〜0.8%、V:0.07〜0.1
5%、B:0.0008〜0.0025%、Ti:0.
005〜0.03%、solAl:0.01%以下およ
びN:0.001〜0.008%を含み、残部がFeお
よび不可避不純物からなる鋼を1100〜1200℃に
加熱し急冷したのち、Ac3点以上1050℃以下の温度
域に加熱し、未再結晶オーステナイト域での累積圧下率
が50%以上となる条件でAr3点より高い温度で圧延を
終了し、そのまま300℃以下まで水冷した後、600
℃〜Ac1点の温度域で焼戻すことを特徴とする靱性およ
び溶接性に優れた高張力厚鋼板の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】まず、鋼の組成の限定理由につい
て説明する。化学組成の%表示は重量%をあらわす。
【0020】1.化学組成 C:0.02〜0.12% Cは強度上昇に有効であり、そのためには0.02%以
上必要である。しかし、0.12%を超えるとHAZ硬
さが上昇し、溶接性を劣化させるため、上限を0.12
%とする。HAZ硬さが高いということは、(1) 溶接低
温割れ性が高く、かつ(2) 同様な化学組成の同様な組織
で比較した場合に、靱性が低いことを意味する。
【0021】Si:0.3%以下 Siは脱酸および強度上昇に有効な元素であるが、0.
3%を超えるとHAZの靱性を低下させるため0.3%
以下とする。Al脱酸時にAlの損失が大きくなるの
で、Si脱酸はおこなうが、その結果として、鋼に残存
するSi量は実質的に0でもよい。Si脱酸の効果を安
定して得るためには、0.02%以上とするのが望まし
い。
【0022】Mn:0.4〜1.5% Mnは強度上昇に有効であり、そのためには、0.4%
以上必要である。しかし、1.5%を超えると靱性が劣
化するので、0.4〜1.5%とする。
【0023】Cu:0〜0.6% Cuは添加しなくてよい。Cuは強度上昇に有効なの
で、とくに高強度化を図る場合には添加してもよい。し
かし、0.6%を超えると靱性を劣化させるので、添加
する場合でも0.6%以下とする。靱性を劣化させず
に、強度を確保するには、0.2〜0.4%とすること
が望ましい。
【0024】Ni:0.5〜6% Niは靱性を改善するのに有効なので添加するが、0.
5%以上としないとその効果が小さい。しかし、6%を
超えるとコストアップに見合うだけの靱性改善が得られ
ないので0.5〜6%とする。
【0025】Cr:0〜0.8% Crは無添加でもよい。Crは、焼入性を向上させるの
で板厚が厚い場合には添加してもよい。しかし、0.8
%を超えると靱性が劣化するので、0.8%以下とす
る。靱性と強度のバランスを良好にするには、0.3〜
0.7%とすることが望ましい。
【0026】Mo:0〜0.8% Moは無添加でもよい。Moは焼入性を高め、焼戻し軟
化抵抗も増大させるので板厚が厚い場合およびより高い
TSを確保するためには添加してもよい。しかし、0.
8%を超えると靱性が劣化するので、添加する場合でも
0.8%以下とする。靱性と強度のバランスを最適にす
るためには、0.3〜0.7%とすることが望ましい。
【0027】V:0.07〜0.15% Vは炭窒化物を析出して析出硬化により母材の強度を確
保するのに必要である。Cを低減したうえで十分な強度
を確保するには、0.07%以上とすることが必須であ
る。しかし0.15%を超えると、炭窒化物の析出量が
過剰となり靱性が劣化するので、0.07〜0.15%
とする。
【0028】B:0.0008〜0.0025% Bは、後記する直接焼入れにおいて、低C鋼の組織をマ
ルテンサイトと下部ベイナイトとするために、必要であ
る。Bは、M23(CB)6 やBNの状態では焼入性を高
めず、固溶Bの状態で粒界などの欠陥部に偏析して焼入
性を向上させる。再加熱焼入れにおいては、Bは0.0
003%以上あれば焼入性を有効に高めるが、前記の知
見(ニ)に述べたように未再結晶域で50%以上累積圧
下した高い格子欠陥密度のオーステナイトから直接焼入
れする場合は0.0003%では不十分であり、0.0
008%以上とする。しかし、0.0025%を超える
と靱性が劣化するので、0.0025%以下とする。
【0029】Ti:0.005〜0.03% Tiは微量の含有量でNをTiNとして固定し結晶粒を
微細化し、同時に焼入性に必要な固溶Bを確保する。
0.005%未満ではこのような効果を十分得られず、
いっぽう、0.03%を超えると靱性が劣化するので、
0.005〜0.03%とする。
【0030】solAl:0.01%以下 solAlは脱酸に働いた量を超えるAlが鋼に残存し
たものである。本発明方法では、意図的にsolAlを
残存させてもよいし、脱酸のみ行うだけでもよい。すな
わち、solAlが実質的に0でもよい。ただし、板厚
が厚いために圧延の全圧下率({( スラブ厚さ−製品板
厚) /スラブ厚さ}×100(%) )を50%以上とれず
凝固時のピンホールの圧着が期待できない場合には、ピ
ンホールの発生を抑えるために凝固後の鋼中のsolA
lとして0.001%以上残存させることが望ましい。
凝固後の鋼中のsolAlが0.001%未満では、凝
固の進行中に酸素と結合してピンホールの発生を防止す
るのに必要なAlが不足する。
【0031】solAlは、鋼中においてAlNまたは
固溶Alの状態で存在するAlである。AlNは結晶粒
の微細化に有効であるが、本発明方法においてはAlN
による組織の微細化は期待していない。solAlの大
部分は固溶Alとなるが、solAlが0.01%を超
えると、知見(ロ)に記載したように固溶Alが多くな
り母材およびHAZの靱性を低下させるので、意図的に
残存させる場合でも0.01%以下とする。
【0032】N:0.001〜0.008% Nは、微細なTi(CN)などの炭窒化物を生成してH
AZの組織を微細化し硬さ上昇を抑制し、HAZ靱性お
よび耐溶接低温割れ性を向上させる。0.001%未満
ではこのような効果を得ることができないが、0.00
8%を超えると粗大なTi(CN)を生成し、これが脆
性破壊の起点になり母材およびHAZの靱性を劣化させ
るので0.001〜0.008%とする。
【0033】不可避的不純物:不可避的不純物のうち、
Pは0.01%以下とすることが望ましい。0.01%
を超えると、凝固する際に生成する偏析部にPのみなら
ずC、Mn、Sなどを濃縮させ、硬さを高くして靱性と
溶接性を劣化させる。
【0034】Sは、0.007%以下とすることが望ま
しい。0.007%を超えると、偏析部に粗大なMnS
を生成し、溶接低温割れの起点や水素性欠陥の起点とな
る。
【0035】その他の不純物は、通常の精錬により得ら
れるレベルまで減少させる。
【0036】次にスラブ熱処理、圧延および熱処理条件
について説明する。
【0037】2.スラブ熱処理(図1(a)参照) 鋳造後の鋼(スラブ)には、M23(CB)6 、BN、V
(CN)、AlNなどの粗大な析出物が析出し、これら
は低温加熱や短時間加熱では十分に固溶せず、焼入性の
低下や粗大析出物そのものによる靱性の低下が引き起こ
される。これをいちど固溶させるために、鋳造後のスラ
ブをいったん、1100℃以上に加熱し、溶体化処理を
する。この溶体化温度が1100℃未満では、析出物の
固溶は十分でなく、いっぽう1200℃を超えるとオー
ステナイト粒が粗大化し、母材靱性に悪影響をおよぼす
ため、加熱温度は1100〜1200℃とする。また溶
体化温度に加熱後、スラブを徐冷すると、鋳造後と同
様、再び粗大な炭窒化物の析出がおこるので、スラブを
急冷する。冷却速度は0.25℃/秒以上であることが
望ましく、これは通常の厚さのスラブでは水冷によって
十分可能である。
【0038】3.圧延および熱処理条件(図1(b)、
(c)参照) 圧延前の加熱温度は、オーステナイト粒の粗大化を防止
するために、上限を1050℃とする。ただし、完全に
オーステナイト化しないと引張強さが不足し、同時に圧
延による異方性が発生するので加熱温度の下限はAc3
とする。本発明の範囲内の鋼の場合、Ac3点はおよそ8
50〜910℃の温度域となる。
【0039】圧延は本発明において靱性を左右する重要
な製造プロセスである。十分に圧下を加え加工硬化した
オーステナイトからマルテンサイトおよびベイナイトに
変態させると、微細な組織となり優れた靱性が得られ
る。このためには、オーステナイトの未再結晶温度域で
少なくとも累積圧下率で50%の圧延を施さなければな
らない。本発明の化学組成の範囲内の鋼の場合、オース
テナイトの未再結晶域はおよそ900℃以下の温度域で
ある。
【0040】また圧延終了温度がAr3点より低くなると
圧延機への負荷が大きくなりすぎるばかりでなく、圧延
による機械的性質の異方性が出現するため、圧延終了温
度はAr3点以上とする。上記のオーステナイト未再結晶
域の温度(上限温度900℃)および圧延終了温度は、
表面温度を測定する輻射温度計による測定値により判断
することができる。本発明の範囲内の鋼を放冷した場
合、Ar3点はおよそ700℃であるので、具体的な仕上
げ温度は表面温度で700℃以上とする。
【0041】圧延後、鋼板は“そのまま水冷”、すなわ
ち“水を冷却媒体として直接焼入れされる”必要があ
る。強度を確保するために、直接焼入れは表面温度にて
Ar3点以上からおこなうことが望ましい。ただし、圧延
終了から直接焼入れまでの間に、脱スケール、歪矯正、
鋼板全体の温度を均一化する加熱、直接焼入れ設備まで
の搬入などの処理があってもよく、表面性状や形状の整
った厚鋼板を製造するためにはむしろ好ましい。
【0042】板厚中心まで良好な焼入れ組織(マルテン
サイトとベイナイトの混合組織)とするためには、水に
よる直接焼入れにおける冷却速度は板厚中心部にて5℃
/秒以上とすることが望ましい。
【0043】また、水冷停止温度は、ベイナイト変態が
終了しマルテンサイト変態が十分進行する温度以下、す
なわち本発明の範囲内の組成では、表面温度で300℃
以下まで冷却する。また、水冷は、水素性欠陥の発生を
防止するために室温まで冷却せずに、表面温度で100
℃以上の温度域で水冷を停止することが望ましい。
【0044】本発明の範囲内の化学組成では、焼戻し温
度が600℃未満では、引張強さと靱性を最適な組み合
わせにすることが出来ないので、焼戻し温度は600℃
以上とする。しかし、Ac1点を超えると強度が必要以上
に低下するので、焼戻し温度は600℃〜Ac1点とす
る。本発明の範囲内の鋼の場合、Ac1点は695〜72
5℃の範囲にある。
【0045】
【実施例】つぎに実施例について説明する。
【0046】表1は、本発明の実施および比較のために
用いた鋼の化学組成を表す一覧表である。また表2はこ
れら鋼のAc1点、Ac3点、CeqおよびPcmを表す一覧表
である。これら鋼を70トン転炉により溶製し、200
mm厚さ×1000mm幅×2500mm高さの鋼塊
(スラブ)に鋳造した。
【0047】表3は、これら鋼塊(スラブ)に対してお
こなった圧延および熱処理条件を示す一覧表である。同
表に示すように圧延後の鋼板の板厚は50mmと75m
mの2種類である。試番Hはスラブ熱処理をおこなわな
かったものであり、また試番Iはスラブを加熱後グラス
ウールのカバーをして徐冷をしたもので冷却速度は中心
部で0.05℃/秒である。水冷をおこなったそのほか
の試番のスラブ中心部の冷却速度は1℃/秒である。表
3に示す圧延仕上げ温度は、表面温度計により実測した
値であり、いずれも近似的にAr3点とみなせる700℃
より高い温度である。また、計算により所定の表面温度
になるように所定の時間水冷したのち水冷を停止した水
冷停止温度は、計算上での表面温度である。直接焼入れ
における冷却速度は、試番Jの空冷の場合は0.2℃/
秒であり、そのほかの水冷の場合は、板厚50mmで2
5℃/秒、また板厚75mmでは20℃/秒であり、こ
れまでの実験により経験的に知られている(t/2)部
での冷却速度である。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】これら厚鋼板の板厚の(t/4)部および
(t/2)部より試験片を採取し、引張試験(JIS Z 22
41 : 試験片JIS Z 2201 4号試験片)および2mmVノ
ッチシャルピー衝撃試験(JIS Z 2212 : 試験片JIS Z
2202 4号試験片)をおこなった。溶接性の評価は、板厚
中心部から厚さ32mmの鋼板を切り出し、780MP
a 級のSAW溶接材料を用い、突き合わせたV開先に対
して層間温度125℃以上にて片面6層のSAWを行っ
た。硬さは、溶接線に垂直な断面上で板面表層から3m
m、8mmおよび16mmのHAZ硬さを板面に平行に
1mmピッチで測定(HV10)し、そのうちの最高の
硬さをHAZ硬さとして採用した。
【0052】表4はこれらの結果を表す一覧表である。
同表によれば、本発明例の母材はいずれも板厚の(t/
4)部および(t/2)部の両方で、引張強さ780M
Pa以上、シャルピー衝撃試験において遷移温度−80
℃以下を満足する。またHAZの硬さは350HV10
以下となっており、とくに試番E(鋼5)は、Cが0.
05%と低いことを反映して287HV10と低い値を
示す。
【0053】
【表4】
【0054】これに対して、比較例の試番M(鋼6)
は、母材の強度と靱性は優れているものの、HAZ硬さ
は451HV10と高く、鋼のCが0.15%と高いこ
とを反映している。比較例の試番N〜Tは、Cがいずれ
も低いために、HAZ硬さは低いものの、母材の強度お
よび靱性をともに満足することはできない。また、本発
明の範囲内の鋼を用いた比較例の試番F〜Lは、スラブ
熱処理、圧延および熱処理のいずれかにおいて、本発明
の範囲外の条件を用いたために、やはり母材の強度と靱
性がともに良好なものになっていない。
【0055】これは、Cが0.08%以下と低い鋼に対
して従来方法を適用したのでは母材の強度と靱性の両方
を同時に満足することが困難であることを示している。
本発明方法によれば、HAZ硬さを低くするため低Cで
ありながら、母材の強度と靱性を同時に良好にすること
ができる。
【0056】
【発明の効果】本発明方法により、良好な耐溶接低温割
れ性とHAZ靱性等の溶接性を備え、引張強さ780M
Pa 以上、シャルピー衝撃試験の遷移温度−80℃以下
という優れた靱性等の機械的性質を有する厚鋼板を多量
生産でき、大型鋼構造物の製作工数の短縮、費用軽減な
ど関連産業に非常に大きな効果を及ぼす。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明方法のスラブ熱処理、圧延およ
び直接焼入れ焼戻しの方法を示す図面である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%にて、C:0.02〜0.12%、
    Si:0.3%以下、Mn:0.4〜1.5%、Cu:
    0〜0.6%、Ni:0.5〜6%、Cr:0〜0.8
    %、Mo:0〜0.8%、V:0.07〜0.15%、
    B:0.0008〜0.0025%、Ti:0.005
    〜0.03%、solAl:0.01%以下およびN:
    0.001〜0.008%を含み、残部がFeおよび不
    可避不純物からなる鋼を1100〜1200℃に加熱し
    急冷したのち、Ac3点以上1050℃以下の温度域に加
    熱し、未再結晶オーステナイト域での累積圧下率が50
    %以上となる条件でAr3点より高い温度で圧延を終了
    し、そのまま300℃以下まで水冷した後、600℃〜
    Ac1点の温度域で焼戻すことを特徴とする靱性および溶
    接性に優れた高張力厚鋼板の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100711467B1 (ko) * 2005-12-23 2007-04-24 주식회사 포스코 표층부 인성이 우수한 보론첨가 극후물 강판의 제조방법
CN103556078A (zh) * 2013-11-12 2014-02-05 湖南华菱湘潭钢铁有限公司 一种调质高强度q550d特厚钢板的生产方法
CN103556076A (zh) * 2013-11-12 2014-02-05 湖南华菱湘潭钢铁有限公司 一种调质高强度q690f特厚钢板的生产方法

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