JP2002285279A - 超大入熱溶接特性に優れた鋼材 - Google Patents
超大入熱溶接特性に優れた鋼材Info
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Abstract
構造物の施工コスト低減に寄与できる鋼材を提供する。 【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.1%、S
i:0.01〜0.5%、Mn:0.5〜2%、Cu:
0.8超〜2%、Ti:0.005〜0.025%、
N:0.002〜0.008%、sol.Al:0.002
〜0.05%、O(酸素):0.0035%以下を含有
し、残部はFeおよび不純物からなり、金属組織のフェ
ライト組織の占める割合が50%以下である鋼材。
Description
機械、造船、パイプ、タンクおよび海洋構造物などの溶
接構造物として使用される超大入熱溶接用鋼材に関する
ものである。
上記種々の分野で使用され、高強度化や高靭性化などの
特性の改善が図られてきた。
にラインパイプに用いる鋼としてCを0.03%以下に
低減しかつ微量のBを添加した極低C−B添加鋼が開示
されおり、C量の低減により島状マルテンサイトの低減
が図られ、溶接部の靱性が向上すること、微量のBの添
加により母材組織をベイナイトとし高強度、高靱性な母
材が得られることが示されている。
ばらつきの小さなMn、Nb量を調整した極低C−B添
加ベイナイト鋼とその製造方法が開示されている。
のばらつきが少なく、かつ耐疲労特性に優れたCu添加
による析出強化を利用した極低C−B添加高靭性鋼材と
その製造方法が開示されている。
スト削減の観点から大入熱溶接の適用が望ましい。上記
各公報には、極低C−B添加鋼において低C化による島
状マルテンサイトの低減は、溶接部靱性の向上に効果が
あることが示されているが、いずれも対象は溶接入熱量
100kJ/cm未満の比較的入熱量の少ない領域に限
られており、施工コスト低減に対する寄与は小さいとい
う問題があった。
熱溶接においても靱性劣化が少なく、溶接構造物の施工
コスト低減に寄与できる鋼材を提供することにあり、具
体的には母材の特性として降伏応力が450MPa以上
または引張り強さが570MPa以上、JIS Z 2202 に
規定の幅10mmのVノッチシャルピー衝撃試験片を用
いた衝撃試験における破面遷移温度(VTS)が−40
℃以下、溶接ボンドでの吸収エネルギーが−10℃にお
いて100J以上の鋼材を提供することにある。
を解決するため種々の実験と検討をおこなった結果、下
記の知見を得た。
の強度とし、かつ大入熱溶接した場合の溶接ボンド部の
靭性を確保するにはCuを0.8%を超えて含有させ析
出強化を図るのが有効で、かつフェライト組織分率を5
0%以下にするのがよい。
り強さ570MPa以上の強度を確保するためには、B
を含有させて焼入性を向上させ、かつフェライト組織分
率を35%以下と少なくすればよい。しかし、この方法
では大入熱溶接をおこなった場合に溶接部の靱性が劣化
するので、Si、AlおよびC含有量を低減すれば組織
中の硬質脆化相の生成を抑制することができる。すなわ
ち、Si、Alの含有量をC量に応じて変化させる必要
があり、下記式を満足させることにより、靭性も確保で
きる。 0.5≦C×(Si+5Al)×102≦1.5 本発明は、このような知見に基づきなされたもので、そ
の要旨は下記に示す超大入熱溶接性に優れた鋼材にあ
る。
%、Si:0.01〜0.5%以下、Mn:0.5〜2
%、Cu:0.8超〜2%、Ti:0.005〜0.0
25%、N:0.002〜0.008%、sol.Al:
0.002〜0.05%、O(酸素):0.0035%
以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、金属
組織のフェライト組織の占める割合が50%以下である
超大入熱溶接特性に優れた鋼材。
i:0.2〜2%、Cr:0.05〜1%、Mo:0.
05〜1%、V:0.01〜0.1%、Nb:0.00
5〜0.07%のうちの1種以上を含有する上記(1)
に記載の超大入熱溶接特性に優れた鋼材。
%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.5〜2%、
Ti:0.005〜0.025%、B:0.0003〜
0.002%、N:0.002〜0.006%、sol.A
l:0.002〜0.05%、O(酸素):0.003
5%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、
金属組織のフェライト組織の占める割合が35%以下で
あり、かつ下記式を満足している超大入熱溶接特性に優
れた鋼材。
1.5 ここで、式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)
を示す。(4)Feの一部に代えて、質量%で、Cu:
0.1〜0.8%、Ni:0.2〜2%、Cr:0.0
5〜1%、Mo:0.05〜1%、V:0.01〜0.
1%、Nb:0.005〜0.07%のうちの1種以上
を含有する上記(3)に記載の超大入熱溶接特性に優れ
た鋼材。
て詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示
は全て「質量%」とする。
未満では570MPa以上の強度を確保することができ
ない。一方、0.1%を超えると溶融線近傍の溶接熱影
響部の靱性が劣化する。したがって、Cの含有量は0.
03〜0.1%とした。なお、好ましくは0.08%以
下、さらに望ましくは0.06%以下である。望ましい
下限は0.04%である。
得るためには、0.01%以上含有させる必要がある。
一方、含有量が増加すると溶接冷却過程において残留γ
がセメンタイトへ分解する反応を抑制し島状マルテンサ
イトを増加させるので、溶接部靱性の確保の観点からは
含有量は少ない方が望ましく、上限を0.5%とした。
好ましい上限は0.3%、さらに好ましくは0.15%
以下である。
に有効で、また脱酸元素としても有効である。0.5%
未満では、溶接熱影響部にフェライトが生成し靱性が劣
化するので0.5%以上含有させる必要がある。一方、
2%を超えると中心偏析による板厚方向での母材特性の
不均一や靱性の劣化をもたらす。したがって、Mnの上
限は2%とした。
上させる効果がある。鋼材に時効処理や冷却途中からの
徐冷などの処理を施すことにより前記析出物を析出させ
ることができる。析出したCuは母材では強度を向上さ
せ、また溶接熱影響部ではCuが再溶解するので硬度過
剰となりがちな溶接部の硬度を低減し溶接部の靱性を向
上させる効果がある。B含有させない鋼においてε析出
物を析出させることによって、効果的に強度を向上させ
るためには、0.8%を超えるCu量が必要である。し
かしながら、2%を超えて含有させると、溶接熱影響部
で未固溶の析出物が増加し、靭性が低下するため2%以
下とする必要がある。
ラブの横ひび割れを防止するのに有効である。また、固
溶Nと結合することによって形成されるTiNは、加熱
時のγ結晶粒の粗大化を抑制し、母材および溶接部の靱
性を向上させる効果がある。これらの効果を発揮させる
には0.005%以上含有させる必要がある。しかしな
がら、0.025%を超えて含有させると母材の靱性が
劣化するため上限は0.025%とした。
鋼の場合) Nは、Tiと結合してTiNを形成し、加熱時のγ粒の
粗大化を抑制し、母材および溶接熱影響部の靱性を改善
する。このたには、0.002%以上含有させることが
必要である。しかしながら、Bを含有させない場合Nが
0.008%を超えると、過剰のNが組織中に存在し靱
性を劣化させる。γ粒の細粒化の観点からは、N量はT
i量の4.3分の1よりもやや多く含有されることが望
ましい。
の場合) Nは、Tiと結合してTiNを形成し、加熱時のγ粒の
粗大化を抑制し、母材および溶接熱影響部の靱性を改善
する。このためには、0.002%以上含有されること
が必要である。しかしながら、Bを含有させる鋼の場合
は0.006%を超えると、過剰のNが組織中に存在
し、ボロンと結合してボロンの焼入性を劣化、強度を低
下させる。このためN量は0.006%以下とする必要
がある。ボロンの焼入性向上の観点からは、N量はTi
量の4.3分の1よりもやや少なく含有されることが望
ましい。
0.002%以上含有させる必要がある。一方、Al含
有が増加するとSiと同様、溶接冷却過程において残留
オーステナイトがセメンタイトへ分解する反応を抑制し
島状マルテンサイトを増加させる。したがって、溶接熱
影響部の靱性を確保する観点から含有は少ないほうが望
ましが、0.05%までの量であれば問題がない。望ま
しい上限は0.03%、さらに望ましくは0.01%で
ある。
れば酸化物を形成することにより溶接熱影響部の組織を
微細化する作用がある。この効果は不純物量を超える量
でも効果があるが、含有させる場合は0.001%を超
えた量とするのが好ましい。一方、過剰な添加は粗大な
酸化物の形成から靱性に悪影響を及ぼすため含有させる
場合の上限を0.0035%とした。
る析出強化を積極的に活用しない場合は、下記の量でB
を含有させる。
果が得られないため下限を0.0003%とした。一方
0.002%を超えて過剰にBを含有させると、粗大な
B化合物の析出を招き靱性を劣化させるので上限を0.
002%とした。
観点よりSi、Alの含有量をC量に応じて変化させる
必要がある。この指標が下記式であり、靱性を確保する
ためには上記式0.5以上となるようにC、Siおよび
Al含有を調整しなければならない。上記式において
0.5未満の場合は強度が不足し、1.5を超える場合
はベイナイト組織中の硬質相の割合が増加するために靱
性が劣化する。望ましい範囲は0.7〜1である。
有鋼材において、さらに母材の強度を高めたい場合には
各鋼材に、Cu、Ni、Cr、Mo、VおよびNbのう
ちの1種以上を含有させるのが有効である(ただし、C
uはB含有鋼材の場合のみ)。以下、各元素毎に説明す
る。
るのに有効で、0.2%以上の添加が好ましい。一方、
2%を超えて含有させてもコストアップに見合う強度、
靱性の改善効果が見られないため、上限を2%とした。
ためには、少なくとも0.05%含有させる必要があ
る。一方、1%以上含有させると靱性を劣化させるた
め、その上限は1%とした。好ましい上限は0.5%以
下である。
ためには少なくとも0.05%含有させる必要がある。
一方、1%を超えて含有させた場合は靱性を劣化させる
ので上限を1%とした。好ましい上限は0.5%であ
る。
めには少なくとも0.01%含有させる必要がある。一
方、0.1%を超えて含有させた場合は靱性を劣化させ
るため、その上限を0.1%とした。好ましい上限は
0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以下であ
る。
通して母材の低温靱性を改善する効果がある。これらの
効果を得るには0.005%以上含有させる必要があ
る。一方、0.07%を超えて過剰に含有させると粗大
な炭化物、窒化物を形成して靱性を低下させる。したが
って、上限は0.07%とした。強度と靱性のバランス
の観点より、好ましい上限は0.05%、さらに好まし
くは0.03%である。
り、B含有の鋼材の場合に選択元素として必要により含
有させる。しかし、0.1%未満ではその効果がないた
め、含有させる場合の下限を0.1%とした。また、B
を含有させる場合は、積極的にCuによる強化作用は不
要であるため上限を0.8%とした。
量:0.8%超の場合)、35%以下(Cu量:0.8%
以下の場合) 上述したように、本発明鋼において570MPa以上の
強度を確保するためには、上記のような化学組成とし、
さらに適切なフェライト組織分率を確保する必要があ
る。Cu含有量が0.8%超の場合は、時効析出による
強化を図ることができるためにフェライト組織分率は5
0%以下でよい。しかしながらCu含有量が0.8%以
下の場合は、析出による強化作用が期待できないため、
フェライト組織分率は35%以下にしてベイナイトおよ
びマルテンサイト組織分率を上げて強度を上げる必要が
ある。
織以外は、ベイナイトまたはマルテンサイト組織であ
る。この場合、靱性改善の理由からベイナイト組織のラ
スの平均長さは50μm以下であるのが好ましい。靱性
改善の観点からは、ベイナイトラスの長さは短ければ短
いほど良く、それを実現するためには一般的には、例え
ばオーステナイトの未再結晶温度域で強圧下圧延をすれ
ばよい。しかしながら、本発明鋼材のように比較的焼入
性の低い鋼では、ベイナイトの平均ラス長さを15μm
以下にしようとすると、強圧下圧延によって、同時に初
析αの生成頻度を高めることとなり、ベイナイトとマル
テンサイトの組織分率が不足する。ベイナイトとマルテ
ンサイトの組織分率が不足すると所望の強度が確保され
ないため、ベイナイトの平均ラス長さは15μm以上に
調整するのがよい。
種の鋼を180kg真空溶解炉を用いて溶製した。表中
記号1〜12、13〜23は本発明例 、記号X1〜X
7、X8〜X14は比較例である。
鋼片とした。次いで、表3および表4に示す各温度に加
熱して熱間圧延して、各温度で仕上げて冷却した。その
後、これらの表に示す600〜630℃の温度範囲で1
時間保持して焼戻し熱処理を施し、板厚40mmの鋼板
とした。
号引張試験片とJIS Z2202に規定の幅10mmのVノッ
チシャルピー衝撃試験片をそれぞれ圧延方向と平行な方
向で採取し、母材の機械的性質を調査した。また、各鋼
板についてナイタルで腐食して組織を現出させた後、光
学顕微鏡により20視野を観察して面積率を求め、フェ
ライト組織分率を調べた。
性を調べるため、入熱300kJ/mmの条件にてエレ
クトロガスアーク溶接をおこない、溶接ボンド部にノッ
チを成形できるように上記と同じシャルピー衝撃試験片
採取し、溶接部のボンドの吸収エネルギーを測定した。
YSで450MPa以上、TSで570MPa以上、v
Tsを−40℃以下とした。また、シャルピー衝撃試験
において溶接ボンド部の吸収エネルギーの目標値は−1
0℃で100J以上とした。
〜19は全てTSで570MPa以上、YSで450M
Pa以上の強度と−40℃以下のvTsが得られてい
る。また300kJ/mmの溶接にて−10℃でのエネ
ルギーが100J以上となった。成分のいずれかが本発
明で規定する範囲から外れた比較例の記号X1〜X14
は、強度、靭性、溶接性の少なくとも1つが目標に達し
ていなかった。
上、YSが450MPa以上、JIS Z2202 に規定の10
mm幅、Vノッチシャルピー衝撃試験片を用いた衝撃試
験でのvTsが−40℃以下で、300kJ/mmでの
溶接時の−10℃での吸収エネルギーが100J以上の
鋼が得られ、種々の溶接構造物において優れた効果を発
揮する。
Claims (4)
- 【請求項1】質量%で、C:0.03〜0.1%、S
i:0.01〜0.5%、Mn:0.5〜2%、Cu:
0.8超〜2%、Ti:0.005〜0.025%、
N:0.002〜0.008%、sol.Al:0.002
〜0.05%、O(酸素):0.0035%以下を含有
し、残部はFeおよび不純物からなり、金属組織のフェ
ライト組織の占める割合が50%以下であることを特徴
とする超大入熱溶接特性に優れた鋼材。 - 【請求項2】Feの一部に代えて、質量%で、Ni:
0.2〜2%、Cr:0.05〜1%、Mo:0.05
〜1%、V:0.01〜0.1%、Nb:0.005〜
0.07%のうちの1種以上を含有することを特徴とす
る請求項1に記載の超大入熱溶接特性に優れた鋼材。 - 【請求項3】質量%で、C:0.03〜0.1%、S
i:0.01〜0.5%、Mn:0.5〜2%、Ti:
0.005〜0.025%、B:0.0003〜0.0
02%、N:0.002〜0.006%、sol.Al:
0.002〜0.05%、O(酸素):0.0035%
以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、金属
組織のフェライト組織の占める割合が35%以下であ
り、かつ下記式を満足していることを特徴とする超大入
熱溶接特性に優れた鋼材。 0.5≦C×(Si+5Al)×102≦1.5 ここで、式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)
を示す。 - 【請求項4】Feの一部に代えて、質量%で、Cu:
0.1〜0.8%、Ni:0.2〜2%、Cr:0.0
5〜1%、Mo:0.05〜1%、V:0.01〜0.
1%、Nb:0.005〜0.07%のうちの1種以上
を含有することを特徴とする請求項3に記載の超大入熱
溶接特性に優れた鋼材。
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JP2001083919A JP3852295B2 (ja) | 2001-03-23 | 2001-03-23 | 超大入熱溶接特性に優れた鋼材 |
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