JPH11172331A - 溶接割れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法 - Google Patents
溶接割れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法Info
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- JPH11172331A JPH11172331A JP14041098A JP14041098A JPH11172331A JP H11172331 A JPH11172331 A JP H11172331A JP 14041098 A JP14041098 A JP 14041098A JP 14041098 A JP14041098 A JP 14041098A JP H11172331 A JPH11172331 A JP H11172331A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 溶接割れ感受性および低降伏比の両特性に優
れた極厚のHT590鋼を、低コストにて製造する方法
を提供することを課題とする。 【解決手段】 重量%で、C:0.06〜0.11%、
Si:0.01〜0.4%、Mn:0.5〜1.6
%、、Al:0.01〜0.06%、Mo:0.1〜
1.0%、V:0.01〜0.1%を含有し、かつ、P
cm:0.22以下を満たし、残部が鉄および不可避的
不純物よりなる鋼を、1000〜1250℃に加熱し、
950℃以下で20%以上の累積圧下を加え熱間圧延
し、圧延終了後Ar3変態点以上から直接焼入れし、つ
いでAcl点以上Ac3点以下の2相域温度に再加熱後
焼入れし、さらにAc1点以下500℃以上にて焼戻し
処理を行うことを特徴とする製造方法である。更に、前
記熱間圧延が、圧延仕上温度を850℃以上とすると、
音響異方性の小さい極厚の低降伏比HT590鋼を製造
することができる。
れた極厚のHT590鋼を、低コストにて製造する方法
を提供することを課題とする。 【解決手段】 重量%で、C:0.06〜0.11%、
Si:0.01〜0.4%、Mn:0.5〜1.6
%、、Al:0.01〜0.06%、Mo:0.1〜
1.0%、V:0.01〜0.1%を含有し、かつ、P
cm:0.22以下を満たし、残部が鉄および不可避的
不純物よりなる鋼を、1000〜1250℃に加熱し、
950℃以下で20%以上の累積圧下を加え熱間圧延
し、圧延終了後Ar3変態点以上から直接焼入れし、つ
いでAcl点以上Ac3点以下の2相域温度に再加熱後
焼入れし、さらにAc1点以下500℃以上にて焼戻し
処理を行うことを特徴とする製造方法である。更に、前
記熱間圧延が、圧延仕上温度を850℃以上とすると、
音響異方性の小さい極厚の低降伏比HT590鋼を製造
することができる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶接割れ感受性に
優れた引張強さ590N/mm2 級の低降伏比高張力鋼
の製造方法に関する。
優れた引張強さ590N/mm2 級の低降伏比高張力鋼
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、建築構造物の大型化により、引張
強さ590N/mm2 級の高張力鋼(以下「HT590
鋼」という。)の使用が増大している。建築用のHT5
90鋼は、耐震安全性を向上させる観点より、一般に降
伏比(降伏強さ/引張強さ)を80%以下とする低降伏
比鋼が要求される。この低降伏比鋼は、鋼構造物の施工
の合理化の観点から、良好な溶接低温割れ感受性が要求
されるとともに、最近では、音響異方性の小さい鋼板を
要求されることが多々ある。
強さ590N/mm2 級の高張力鋼(以下「HT590
鋼」という。)の使用が増大している。建築用のHT5
90鋼は、耐震安全性を向上させる観点より、一般に降
伏比(降伏強さ/引張強さ)を80%以下とする低降伏
比鋼が要求される。この低降伏比鋼は、鋼構造物の施工
の合理化の観点から、良好な溶接低温割れ感受性が要求
されるとともに、最近では、音響異方性の小さい鋼板を
要求されることが多々ある。
【0003】高張力鋼で、低降伏比を実現するには、一
般的には、圧延後に通常の焼入れを行い、ついで2相域
からの焼入れ、さらにその後焼戻し処理(以下「Q−Q
´−0 処理」という。)を行って製造される。このQ−
Q´−T処理は、降伏強さを低減するのに極めて効果的
であるものの、目標強度を確保するために、通常の焼入
れ−焼戻し(以下「Q−T処理」という。)型のHT5
90鋼に比較して、合金元素の含有量を高める必要があ
る。特に、超高層建築に使用される建築用鋼では、板厚
が100mm程度の極厚材が要望されており、強度の確
保を難しくしている。
般的には、圧延後に通常の焼入れを行い、ついで2相域
からの焼入れ、さらにその後焼戻し処理(以下「Q−Q
´−0 処理」という。)を行って製造される。このQ−
Q´−T処理は、降伏強さを低減するのに極めて効果的
であるものの、目標強度を確保するために、通常の焼入
れ−焼戻し(以下「Q−T処理」という。)型のHT5
90鋼に比較して、合金元素の含有量を高める必要があ
る。特に、超高層建築に使用される建築用鋼では、板厚
が100mm程度の極厚材が要望されており、強度の確
保を難しくしている。
【0004】従って、極厚の低降伏比鋼は、合金成分を
多量に含有するため、溶接硬化性あるいは溶接低温割れ
感受性を表示するパラメータであるCeq値及びPcm
値が必然的に高くなり、溶接性は必ずしも良好であると
は言えない。ここで、Ceq、Pcmは次式で示され
る。 Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+ V/14 ・・・・・(1) Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/30+Cr/20 +Mo/15+V/10+5B・・・・・(2)
多量に含有するため、溶接硬化性あるいは溶接低温割れ
感受性を表示するパラメータであるCeq値及びPcm
値が必然的に高くなり、溶接性は必ずしも良好であると
は言えない。ここで、Ceq、Pcmは次式で示され
る。 Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+ V/14 ・・・・・(1) Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/30+Cr/20 +Mo/15+V/10+5B・・・・・(2)
【0005】こうした観点から、溶接割れ感受性に優れ
た低降伏比のHT590鋼を実現する試みが、特公平5
−81644号公報、特公平5−81645号公報、特
公平6−6740号公報、特開平3−162518号公
報、特開平7−90365号公報、特開平7−1267
43号公報、特開平8−92639号公報、特開平8−
143950号公報、特開平8−209294号公報等
に開示されているように数多くなされている。
た低降伏比のHT590鋼を実現する試みが、特公平5
−81644号公報、特公平5−81645号公報、特
公平6−6740号公報、特開平3−162518号公
報、特開平7−90365号公報、特開平7−1267
43号公報、特開平8−92639号公報、特開平8−
143950号公報、特開平8−209294号公報等
に開示されているように数多くなされている。
【0006】これらの開示された技術は、第1に、Q−
Q´−T処理において合金成分を最適化する方法と、第
2に、熱処理鋼の強化手段として近年脚光を浴びている
直接焼入れを活用し、その後2相域からの焼入れ−後焼
戻し処理(以下「DQ−Q’−T処理」という。)を行
う方法とに、大別できる。
Q´−T処理において合金成分を最適化する方法と、第
2に、熱処理鋼の強化手段として近年脚光を浴びている
直接焼入れを活用し、その後2相域からの焼入れ−後焼
戻し処理(以下「DQ−Q’−T処理」という。)を行
う方法とに、大別できる。
【0007】これらの先行技術は、溶接割れ感受性に優
れた低降伏比のHT590鋼として効果は認められる。
しかし、最近の建築用HT590鋼に対する材質要求を
考慮すると、以下に述べるように、性能改善の余地がま
だ残されているといえる。
れた低降伏比のHT590鋼として効果は認められる。
しかし、最近の建築用HT590鋼に対する材質要求を
考慮すると、以下に述べるように、性能改善の余地がま
だ残されているといえる。
【0008】まず、Q−Q´−T処理を前提とした、従
来技術について述べる。特開平7−90365号公報に
は、Bを含有しない低降伏比HT590鋼が開示されて
いる。これは、熱処理鋼によく使用される微量のBは、
溶接熱影響部の硬さを著しく高め溶接性に悪影響を及ぼ
すことによる。しかし、板厚が60mm以上の場合は、
C、Mn、Cu等を増量するため、Pcm値が増加し、
その結果、実施例ではy型溶接割れ試験の割れ防止予熱
温度は50℃にとどまっており、溶接割れ感受性は十分
とは言えない。
来技術について述べる。特開平7−90365号公報に
は、Bを含有しない低降伏比HT590鋼が開示されて
いる。これは、熱処理鋼によく使用される微量のBは、
溶接熱影響部の硬さを著しく高め溶接性に悪影響を及ぼ
すことによる。しかし、板厚が60mm以上の場合は、
C、Mn、Cu等を増量するため、Pcm値が増加し、
その結果、実施例ではy型溶接割れ試験の割れ防止予熱
温度は50℃にとどまっており、溶接割れ感受性は十分
とは言えない。
【0009】また、当該発明は、目標強度を確保するた
め、Cuの析出強化を積極的に活用している。析出強化
は、一般に降伏比を高めるため、Q−Q´−T処理の各
温度を最適化して低降伏比化を図っているが、最適な製
造条件の範囲が狭く、製造安定性の点で懸念される。ま
た、溶接入熱により析出効果が減少し、溶接継手強度が
低下すること、熱間圧延時にCu疵が発生しやすいこ
と、さらに、Q−Q´−T処理は再加熱の熱処理を3回
も行うため製造コストの点では有利とはいえないこと等
の欠点がある。
め、Cuの析出強化を積極的に活用している。析出強化
は、一般に降伏比を高めるため、Q−Q´−T処理の各
温度を最適化して低降伏比化を図っているが、最適な製
造条件の範囲が狭く、製造安定性の点で懸念される。ま
た、溶接入熱により析出効果が減少し、溶接継手強度が
低下すること、熱間圧延時にCu疵が発生しやすいこ
と、さらに、Q−Q´−T処理は再加熱の熱処理を3回
も行うため製造コストの点では有利とはいえないこと等
の欠点がある。
【0010】特開平7−126743号公報では、上記
と同様の鋼を用い、Q−Q´−T処理のQ処理を省略し
た熱処理により、低降伏比HT590鋼を製造する方法
が開示されている。しかしながら、実施例に示された板
厚50mm以上の鋼板では、溶接割れ防止予熱温度は5
0℃であり、溶接割れ感受性に優れるとは言えない。ま
た、Cuを多量に含有するため、上記と同様の危惧があ
る。
と同様の鋼を用い、Q−Q´−T処理のQ処理を省略し
た熱処理により、低降伏比HT590鋼を製造する方法
が開示されている。しかしながら、実施例に示された板
厚50mm以上の鋼板では、溶接割れ防止予熱温度は5
0℃であり、溶接割れ感受性に優れるとは言えない。ま
た、Cuを多量に含有するため、上記と同様の危惧があ
る。
【0011】特開平8−143950号公報では、Bを
含有せず、Vの析出強化を利用したQ−Q´−T型の厚
物の低降伏比HT590鋼が開示されている。上述の2
つの例と同様に、板厚60mm以上の鋼板では、溶接割
れ防止予熱温度は50℃である。また、Vを0.10〜
0.15%と多量に含有する鋼であり、溶接継手部の靭
性低下が懸念されるが、当該発明はこの点に触れていな
い。さらに、経済性の観点からも、Vの多量含有及びQ
−Q´−T処理は有利とはいえない。
含有せず、Vの析出強化を利用したQ−Q´−T型の厚
物の低降伏比HT590鋼が開示されている。上述の2
つの例と同様に、板厚60mm以上の鋼板では、溶接割
れ防止予熱温度は50℃である。また、Vを0.10〜
0.15%と多量に含有する鋼であり、溶接継手部の靭
性低下が懸念されるが、当該発明はこの点に触れていな
い。さらに、経済性の観点からも、Vの多量含有及びQ
−Q´−T処理は有利とはいえない。
【0012】特開平3−162518号公報では、C
u、Ni、Cr、V、Nb、Bの1種以上を含む、Pc
mが0.16〜0.21%の鋼を、熱間圧延後DQ−Q
´−T処理、あるいはQ−Q´−T処理により、低降伏
比のHT590鋼を製造する方法が開示されている。実
施例では、溶接割れ防止予熱温度が25℃以下と溶接割
れ感受性に優れる鋼板が明示されている。しかし、実施
例で示された鋼板の最大厚さは80mmにとどまる。ま
た、合金元素としてNbを使用した場合は、降伏比が7
8%にも達し、目標の80%に対しての余裕が極めて少
なく、実製造における安定性の点で懸念される。
u、Ni、Cr、V、Nb、Bの1種以上を含む、Pc
mが0.16〜0.21%の鋼を、熱間圧延後DQ−Q
´−T処理、あるいはQ−Q´−T処理により、低降伏
比のHT590鋼を製造する方法が開示されている。実
施例では、溶接割れ防止予熱温度が25℃以下と溶接割
れ感受性に優れる鋼板が明示されている。しかし、実施
例で示された鋼板の最大厚さは80mmにとどまる。ま
た、合金元素としてNbを使用した場合は、降伏比が7
8%にも達し、目標の80%に対しての余裕が極めて少
なく、実製造における安定性の点で懸念される。
【0013】一方、DQ−Q´−T処理を前提とした低
降伏比の鋼材の製造方法に関しては以下の技術が開示さ
れている。特公平5−81644号公報に所定の化学成
分を有する鋼材を熱間圧延後250℃以下まで急冷し、
次いでAc1+20℃〜Ac1+80℃に再加熱し、ひ
きつづき水冷した後200〜600℃の温度範囲で焼も
どしする発明が、また特公平5−81645号公報に所
定の化学成分を有する鋼材の熱間圧延において、900
℃〜Ar3間で30%以上70%以下の累積圧下を加
え、圧延後水冷を開始し250℃以下まで急冷し、次い
で次いでAc1+20℃〜Ac1+80℃まで再加熱
し、ひきつづき水冷した後200〜600℃の温度範囲
で焼もどしする発明が、開示されている。
降伏比の鋼材の製造方法に関しては以下の技術が開示さ
れている。特公平5−81644号公報に所定の化学成
分を有する鋼材を熱間圧延後250℃以下まで急冷し、
次いでAc1+20℃〜Ac1+80℃に再加熱し、ひ
きつづき水冷した後200〜600℃の温度範囲で焼も
どしする発明が、また特公平5−81645号公報に所
定の化学成分を有する鋼材の熱間圧延において、900
℃〜Ar3間で30%以上70%以下の累積圧下を加
え、圧延後水冷を開始し250℃以下まで急冷し、次い
で次いでAc1+20℃〜Ac1+80℃まで再加熱
し、ひきつづき水冷した後200〜600℃の温度範囲
で焼もどしする発明が、開示されている。
【0014】さらに、特公平6−6740号公報には、
適切な条件により熱間圧延した鋼材を、圧延終了後10
〜80秒間空冷した後、空冷を超える冷却速度で500
℃以下まで冷却し、次いで740〜860℃の温度域に
加熱した後、空冷を超える冷却速度で500℃以下まで
冷却し、その後400〜Ac1の温度域で焼戻処理する
低降伏比高張力鋼の製造方法が開示されている。
適切な条件により熱間圧延した鋼材を、圧延終了後10
〜80秒間空冷した後、空冷を超える冷却速度で500
℃以下まで冷却し、次いで740〜860℃の温度域に
加熱した後、空冷を超える冷却速度で500℃以下まで
冷却し、その後400〜Ac1の温度域で焼戻処理する
低降伏比高張力鋼の製造方法が開示されている。
【0015】しかしながら、これらの発明は、いずれも
鋼材の降伏比を低減することに主眼が置かれ、当該発明
により製造された低降伏比の高張力鋼の溶接性や音響異
方性については言及がなされていない。
鋼材の降伏比を低減することに主眼が置かれ、当該発明
により製造された低降伏比の高張力鋼の溶接性や音響異
方性については言及がなされていない。
【0016】低温割れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼
の製造方法に関する研究としては、例えば、特開平8−
209294号公報には、微細なNb炭窒化物を体積分
率にて0.01〜0.6%およびフェライト分率を2%
以上含有し、Pcm値が0.22%以下である、低降伏
比HT590鋼の製造方法が開示されている。この発明
は、加速冷却−Q´−T処理するか又はDQ−Q´−T
処理で製造するものであるが、板厚が50mm以上の厚
物材では、強度確保のためにBを含有している。B含有
鋼は、化学成分や製造条件の変動により、母材特性が不
安定となる欠点があるとともに、Pcmで評価される以
上に溶接熱影響部の硬化が著しく、溶接継手靭性の劣化
も懸念される。
の製造方法に関する研究としては、例えば、特開平8−
209294号公報には、微細なNb炭窒化物を体積分
率にて0.01〜0.6%およびフェライト分率を2%
以上含有し、Pcm値が0.22%以下である、低降伏
比HT590鋼の製造方法が開示されている。この発明
は、加速冷却−Q´−T処理するか又はDQ−Q´−T
処理で製造するものであるが、板厚が50mm以上の厚
物材では、強度確保のためにBを含有している。B含有
鋼は、化学成分や製造条件の変動により、母材特性が不
安定となる欠点があるとともに、Pcmで評価される以
上に溶接熱影響部の硬化が著しく、溶接継手靭性の劣化
も懸念される。
【0017】また、特開平8−92639号公報では、
Nb、V、Tiを同時に含有し、微量元素の固溶による
焼入れ性向上効果と析出強化を活用した鋼を、熱間圧延
後にDQ−Q´−T処理することにより、板厚50〜1
00mmの低降伏比HT590鋼が開示されている。し
かし、実施例からは、板厚70mm以上の鋼板では、溶
接割れ防止予熱温度は50℃にとどまり、また、降伏比
も80%近くに達し、製造における安定性の点で懸念さ
れる。
Nb、V、Tiを同時に含有し、微量元素の固溶による
焼入れ性向上効果と析出強化を活用した鋼を、熱間圧延
後にDQ−Q´−T処理することにより、板厚50〜1
00mmの低降伏比HT590鋼が開示されている。し
かし、実施例からは、板厚70mm以上の鋼板では、溶
接割れ防止予熱温度は50℃にとどまり、また、降伏比
も80%近くに達し、製造における安定性の点で懸念さ
れる。
【0018】こうした溶接低温割れ感受性の課題に加
え、最近ではさらに、鋼構造物の施工の合理化の観点か
ら、音響異方性の小さい鋼板を要求されることが多々あ
る。これは、溶接構造物の安全性確保のため、溶接欠陥
を、斜角による超音波探傷により検出することに由来す
る。すなわち超音波探傷においては、鋼板の最終圧延方
向(L方向)とその方向に直交する方向(C方向)で結
晶粒の方向性、すなわち圧延集合組織に差がある場合、
超音波を入射する方向によって音速に差が生じ、欠陥の
正確な検出が困難となる。
え、最近ではさらに、鋼構造物の施工の合理化の観点か
ら、音響異方性の小さい鋼板を要求されることが多々あ
る。これは、溶接構造物の安全性確保のため、溶接欠陥
を、斜角による超音波探傷により検出することに由来す
る。すなわち超音波探傷においては、鋼板の最終圧延方
向(L方向)とその方向に直交する方向(C方向)で結
晶粒の方向性、すなわち圧延集合組織に差がある場合、
超音波を入射する方向によって音速に差が生じ、欠陥の
正確な検出が困難となる。
【0019】また、L方向、C方向の検査を区別して評
価判定することは技術的にも限界がある。従って、溶接
欠陥と疑われるエコーが発見された場合、その箇所はす
べて補修しなければならならず、必要以上の欠陥補修を
余儀なくされ、施工費が莫大なものとなる。
価判定することは技術的にも限界がある。従って、溶接
欠陥と疑われるエコーが発見された場合、その箇所はす
べて補修しなければならならず、必要以上の欠陥補修を
余儀なくされ、施工費が莫大なものとなる。
【0020】音響異方性に関しては、例えば特開昭63
−235431号公報に開示されるように、熱間圧延の
圧下率と圧延温度、圧延後の冷却速度を制御することに
より実現を図ることができる。しかし、この方法は、引
張強さ490N/mm2 級鋼において実現できるもので
あり、HT590鋼のように、合金含有量が多い鋼で、
強度、靭性、溶接性等の厳しい要求を全て満足させる必
要がある場合には、音響異方性を小さくするのは容易で
はない。
−235431号公報に開示されるように、熱間圧延の
圧下率と圧延温度、圧延後の冷却速度を制御することに
より実現を図ることができる。しかし、この方法は、引
張強さ490N/mm2 級鋼において実現できるもので
あり、HT590鋼のように、合金含有量が多い鋼で、
強度、靭性、溶接性等の厳しい要求を全て満足させる必
要がある場合には、音響異方性を小さくするのは容易で
はない。
【0021】以上述べたように、溶接割れ感受性を改善
した低降伏比のHT590鋼の製造方法に関して、多く
の先行技術が開示されている。しかし、上述のようにこ
れらの技術では、建築用HT590鋼として要求される
特性を、厚物の鋼板において、安定して達成し得るとは
いえないのが現状である。
した低降伏比のHT590鋼の製造方法に関して、多く
の先行技術が開示されている。しかし、上述のようにこ
れらの技術では、建築用HT590鋼として要求される
特性を、厚物の鋼板において、安定して達成し得るとは
いえないのが現状である。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情
に鑑みてなされたものであり、良好な溶接割れ感受性更
には小さな音響異方性を備えた低降伏比の極厚のHT5
90鋼を、低コストにて製造する方法を提供することを
目的とする。特に溶接割れ感受性については、溶接施工
時の溶接予熱温度のみならず、現場施工において頻繁に
行われる点付けや、ショートビード等の小入熱において
も低温割れを発生させない鋼材を目的とする。
に鑑みてなされたものであり、良好な溶接割れ感受性更
には小さな音響異方性を備えた低降伏比の極厚のHT5
90鋼を、低コストにて製造する方法を提供することを
目的とする。特に溶接割れ感受性については、溶接施工
時の溶接予熱温度のみならず、現場施工において頻繁に
行われる点付けや、ショートビード等の小入熱において
も低温割れを発生させない鋼材を目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、溶接割れ
感受性に配慮し、かつ、降伏比を上昇させるNb及び溶
接性に好ましくないBの含有量を規制した化学成分を有
する鋼を、熱間圧延において制御圧延(CR)を施した
後、DQ−Q´−T処理を前提に鋭意検討した結果、下
記の発明をするに至った。
感受性に配慮し、かつ、降伏比を上昇させるNb及び溶
接性に好ましくないBの含有量を規制した化学成分を有
する鋼を、熱間圧延において制御圧延(CR)を施した
後、DQ−Q´−T処理を前提に鋭意検討した結果、下
記の発明をするに至った。
【0024】すなわち、第1の発明は、重量%で、C:
0.06〜0.11%、Si:0.01〜0.4%、M
n:0.5〜1.6%、、Al:0.01〜0.06
%、Mo:0.1〜1.0%、V:0.01〜0.1%
を含有し、かつ、Pcm:0.22以下を満たし、残部
が鉄および不可避的不純物よりなる鋼を、1000〜1
250℃に加熱し、950℃以下で20%以上の累積圧
下を加え熱間圧延し、圧延終了後Ar3変態点以上から
直接焼入れし、ついでAcl点以上Ac3点以下の2相
域温度に再加熱後焼入れし、さらにAc1点以下500
℃以上にて焼戻し処理を行うことを特徴とする、溶接割
れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法である。
本発明により、溶接施工時に実質的に溶接予熱を不要と
するとともに施工に際してショートビードを避ける等の
溶接施工管理の制限を緩和する割れ感受性に優れた極厚
の低降伏比HT590鋼を、安定して製造することがで
きる。
0.06〜0.11%、Si:0.01〜0.4%、M
n:0.5〜1.6%、、Al:0.01〜0.06
%、Mo:0.1〜1.0%、V:0.01〜0.1%
を含有し、かつ、Pcm:0.22以下を満たし、残部
が鉄および不可避的不純物よりなる鋼を、1000〜1
250℃に加熱し、950℃以下で20%以上の累積圧
下を加え熱間圧延し、圧延終了後Ar3変態点以上から
直接焼入れし、ついでAcl点以上Ac3点以下の2相
域温度に再加熱後焼入れし、さらにAc1点以下500
℃以上にて焼戻し処理を行うことを特徴とする、溶接割
れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法である。
本発明により、溶接施工時に実質的に溶接予熱を不要と
するとともに施工に際してショートビードを避ける等の
溶接施工管理の制限を緩和する割れ感受性に優れた極厚
の低降伏比HT590鋼を、安定して製造することがで
きる。
【0025】第2の発明は、前記鋼が、更に、重量%
で、Cu:0.5%以下、Ni:1.5%以下、Cr:
0.5%以下のうち1種もしくは2種以上を含有するこ
とを特徴とする、溶接割れ感受性に優れた低降伏比高張
力鋼の製造方法である。本発明により、上述の溶接割れ
感受性の更なる向上が可能となる。
で、Cu:0.5%以下、Ni:1.5%以下、Cr:
0.5%以下のうち1種もしくは2種以上を含有するこ
とを特徴とする、溶接割れ感受性に優れた低降伏比高張
力鋼の製造方法である。本発明により、上述の溶接割れ
感受性の更なる向上が可能となる。
【0026】第3の発明は、前記熱間圧延が、更に、圧
延仕上温度が850℃以上であることを特徴とする、溶
接割れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法であ
る。この発明により、音響異方性の小さい、溶接割れ感
受性に優れた極厚の低降伏比HT590鋼を製造するこ
とができる。
延仕上温度が850℃以上であることを特徴とする、溶
接割れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法であ
る。この発明により、音響異方性の小さい、溶接割れ感
受性に優れた極厚の低降伏比HT590鋼を製造するこ
とができる。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の基本的な考え方を以下に
述べる。 (1)溶接割れ感受性を改善するためには、Pcm値の
低減が前提となる。この点、Bの含有はPcmを低減す
るのに効果的であるが、微量のBは溶接熱影響部の硬度
を著しく上昇させ、それによる継手靭性の劣化を引き起
こす。従ってBを含有しない鋼を前提とする。このた
め、Bの効果を発揮させるため、Nの固定の役割を果た
すTiも、母材性能を不安定にさせることもあり、含有
しない鋼とする。
述べる。 (1)溶接割れ感受性を改善するためには、Pcm値の
低減が前提となる。この点、Bの含有はPcmを低減す
るのに効果的であるが、微量のBは溶接熱影響部の硬度
を著しく上昇させ、それによる継手靭性の劣化を引き起
こす。従ってBを含有しない鋼を前提とする。このた
め、Bの効果を発揮させるため、Nの固定の役割を果た
すTiも、母材性能を不安定にさせることもあり、含有
しない鋼とする。
【0028】(2)Ti、Bを含有せずに低降伏比のH
T590鋼を得るためには、Q−Q´−T処理では板厚
範囲に制約を生じるため、直接焼入れを活用するDQ−
Q´−T処理を前提とする。
T590鋼を得るためには、Q−Q´−T処理では板厚
範囲に制約を生じるため、直接焼入れを活用するDQ−
Q´−T処理を前提とする。
【0029】(3)Nbの含有は、先行技術に見られる
ように、DQプロセスにおいて、加熱圧延時の固溶Nb
による焼入れ性向上、さらにはその後2相域に再加熱す
る際に炭窒化物形成による析出強化が期待できる。しか
し、Nb炭窒化物による析出強化は、図1に示すよう
に、Nbを含有しない鋼に比べて、降伏比を上昇させて
しまう。
ように、DQプロセスにおいて、加熱圧延時の固溶Nb
による焼入れ性向上、さらにはその後2相域に再加熱す
る際に炭窒化物形成による析出強化が期待できる。しか
し、Nb炭窒化物による析出強化は、図1に示すよう
に、Nbを含有しない鋼に比べて、降伏比を上昇させて
しまう。
【0030】ここで、図1は、DQ−Q´−T処理で製
造した板厚75mmのNb含有鋼、Nb非含有鋼の引張
強さと降伏比の関係を示した図である。Nb含有鋼は、
Nb非含有鋼に比較して、降伏比が平均して数%高く、
目標とする降伏比80%以下を安定して得るのが難し
い。従って、低降伏比化を確保する観点から、Nbを含
有しない鋼とする。
造した板厚75mmのNb含有鋼、Nb非含有鋼の引張
強さと降伏比の関係を示した図である。Nb含有鋼は、
Nb非含有鋼に比較して、降伏比が平均して数%高く、
目標とする降伏比80%以下を安定して得るのが難し
い。従って、低降伏比化を確保する観点から、Nbを含
有しない鋼とする。
【0031】(4)熱間圧延において、制御圧延(C
R)はオーステナイト組織を展伸させる働きをし、これ
により、DQ時の焼入れ性は幾分減少するものの、低降
伏比化に有効なフェライトの生成が促進する。このフェ
ライトは、その後のQ´−T処理後も残存し低降伏比化
に寄与する。従ってCR−DQプロセスは、Q−Q´−
T処理では実現できない、2相域加熱前の組織制御を可
能とし、これを通じてその後のQ´−T処理後も低降伏
比化が達成される。
R)はオーステナイト組織を展伸させる働きをし、これ
により、DQ時の焼入れ性は幾分減少するものの、低降
伏比化に有効なフェライトの生成が促進する。このフェ
ライトは、その後のQ´−T処理後も残存し低降伏比化
に寄与する。従ってCR−DQプロセスは、Q−Q´−
T処理では実現できない、2相域加熱前の組織制御を可
能とし、これを通じてその後のQ´−T処理後も低降伏
比化が達成される。
【0032】(5)CR−DQプロセスにより展伸した
組織は、その後の2相域再加熱時に、α→γの逆変態オ
ーステナイトの生成サイトを増加させるため、Q´後に
硬い焼入れ組織が増加し、高強度化が達成される。ま
た、CRの実施により硬質相自体の硬さも上昇する。従
って、CR−DQ−Q´−Tプロセスは引張強さを高め
るが、それに伴う降伏比の上昇は小さい。図2、3はこ
れらの結果を示した図である。
組織は、その後の2相域再加熱時に、α→γの逆変態オ
ーステナイトの生成サイトを増加させるため、Q´後に
硬い焼入れ組織が増加し、高強度化が達成される。ま
た、CRの実施により硬質相自体の硬さも上昇する。従
って、CR−DQ−Q´−Tプロセスは引張強さを高め
るが、それに伴う降伏比の上昇は小さい。図2、3はこ
れらの結果を示した図である。
【0033】図2、3は、いずれも板厚60mmにおい
て、950℃以下の累積圧下率で示すCRの程度と引張
強さ、降伏比の関係を示すが、CRの程度を強めるに従
い、引張強さが上昇する。HT590鋼を安定して得る
には、950℃以下で20%以上の累積圧下を加える必
要がある。一方、降伏比については、CRの強化により
上昇するものの、上記(4)の効果により、低降伏比鋼
として十分な水準にとどまっている。
て、950℃以下の累積圧下率で示すCRの程度と引張
強さ、降伏比の関係を示すが、CRの程度を強めるに従
い、引張強さが上昇する。HT590鋼を安定して得る
には、950℃以下で20%以上の累積圧下を加える必
要がある。一方、降伏比については、CRの強化により
上昇するものの、上記(4)の効果により、低降伏比鋼
として十分な水準にとどまっている。
【0034】(6)一方、CRの程度が大きくなり、圧
延仕上温度が低下しすぎると、音響異方性が大きくな
る。音響異方性は、オーステナイトの未再結晶域の圧
下、すなわち組織の展伸の度合いと相関があるため、音
響異方性の要求を満たす場合には、圧延仕上温度は、再
結晶域で完了するのが望ましい。未再結晶となる温度
は、厳密には、合金元素の含有量、特にNb含有量に依
存するが、本発明では再結晶抑制効果を有するNbを含
有しないため、ほぼ一定と考えられる。
延仕上温度が低下しすぎると、音響異方性が大きくな
る。音響異方性は、オーステナイトの未再結晶域の圧
下、すなわち組織の展伸の度合いと相関があるため、音
響異方性の要求を満たす場合には、圧延仕上温度は、再
結晶域で完了するのが望ましい。未再結晶となる温度
は、厳密には、合金元素の含有量、特にNb含有量に依
存するが、本発明では再結晶抑制効果を有するNbを含
有しないため、ほぼ一定と考えられる。
【0035】図4は、板厚60mmの鋼板の圧延仕上温
度と音響異方性の関係を示した図であるが、圧延仕上温
度の低下とともに音響異方性が拡大する。超音波探傷に
おいて問題を生じさせない音響異方性は、経験的には
1.02以下であることが知られており、これを満たす
ためには、圧延仕上温度は850℃以上とする必要があ
る。
度と音響異方性の関係を示した図であるが、圧延仕上温
度の低下とともに音響異方性が拡大する。超音波探傷に
おいて問題を生じさせない音響異方性は、経験的には
1.02以下であることが知られており、これを満たす
ためには、圧延仕上温度は850℃以上とする必要があ
る。
【0036】本発明は、上記知見にもとづいて、鋼の化
学成分、熱間圧延時のスラブ加熱温度、圧延仕上温度、
圧延後の熱処理条件を総合的に組み合せ、完成したもの
である。以下に本発明での化学成分、製造条件の限定理
由について説明する。
学成分、熱間圧延時のスラブ加熱温度、圧延仕上温度、
圧延後の熱処理条件を総合的に組み合せ、完成したもの
である。以下に本発明での化学成分、製造条件の限定理
由について説明する。
【0037】C:0.06〜0.11%とする。 Cは、母材強度の点で必須の合金成分であるが、その量
が0.06%未満の場合は、他の焼入れ性向上元素の含
有を多く必要とするため、コスト上昇、溶接割れ感受性
の劣化を招くおそれがある。また、本発明鋼に大入熱溶
接を施す場合に、C含有量が0.06%未満では溶接金
属中へのCの希釈が少なく、一般の溶接材料では継手強
度を確保することが困難となる。一方、C量が0.11
%を超えると、溶接割れ感受性の確保が困難となる。
が0.06%未満の場合は、他の焼入れ性向上元素の含
有を多く必要とするため、コスト上昇、溶接割れ感受性
の劣化を招くおそれがある。また、本発明鋼に大入熱溶
接を施す場合に、C含有量が0.06%未満では溶接金
属中へのCの希釈が少なく、一般の溶接材料では継手強
度を確保することが困難となる。一方、C量が0.11
%を超えると、溶接割れ感受性の確保が困難となる。
【0038】Si:0.01〜0.4%とする。 Siは、脱酸剤として必要であり、また母材強度と溶接
継手強度を確保する上で有効に働くので0.01%以上
含有する。しかし、0.4%を超える含有は、溶接割れ
感受性と溶接継手靭性を劣化させる。
継手強度を確保する上で有効に働くので0.01%以上
含有する。しかし、0.4%を超える含有は、溶接割れ
感受性と溶接継手靭性を劣化させる。
【0039】Mn:0.5〜1.6%とする。 Mnは、母材強度と溶接継手強度を確保する上で有効に
働くので0.5%以上含有する。しかし、1.6%を超
える含有は溶接割れ感受性を劣化させるとともに、必要
以上に鋼の焼入れ性を高めるため、母材靭性、継手靭性
を劣化させる。
働くので0.5%以上含有する。しかし、1.6%を超
える含有は溶接割れ感受性を劣化させるとともに、必要
以上に鋼の焼入れ性を高めるため、母材靭性、継手靭性
を劣化させる。
【0040】P、S:いずれも0.015%以下とす
る。 P、Sは、いずれも不純物元素であり、健全な母材およ
び溶接継手を得るために、完全に除去するのが望ましい
が、実際の鋼製造プロセスでの経済性を考えて、0.0
15%以下、好ましくは0.01%以下に規制すること
が望ましい。
る。 P、Sは、いずれも不純物元素であり、健全な母材およ
び溶接継手を得るために、完全に除去するのが望ましい
が、実際の鋼製造プロセスでの経済性を考えて、0.0
15%以下、好ましくは0.01%以下に規制すること
が望ましい。
【0041】Al:0.01〜0.06%とする。 Alは、鋼の脱酸のため及びミクロ組織の微細化による
母材靭性の確保のために0.01%以上含有する。しか
し、過剰なAlの含有は、鋼の清浄性を損ない、連続鋳
造スラブの疵発生の原因ともなるため、その上限を0.
06%、好ましくは0.04%とする。
母材靭性の確保のために0.01%以上含有する。しか
し、過剰なAlの含有は、鋼の清浄性を損ない、連続鋳
造スラブの疵発生の原因ともなるため、その上限を0.
06%、好ましくは0.04%とする。
【0042】Mo:0.1〜1.0%とする。 Moは、溶接割れ感受性、母材強度および溶接継手強度
を確保する上で有効に作用するので0.1%以上含有す
る。ただし、必要以上の含有は溶接割れ感受性を高め、
溶接継手靭性を劣化させるために、その上限を1.0%
とする。
を確保する上で有効に作用するので0.1%以上含有す
る。ただし、必要以上の含有は溶接割れ感受性を高め、
溶接継手靭性を劣化させるために、その上限を1.0%
とする。
【0043】V:0.01〜0.1%とする。 Vは、母材強度と溶接継手強度を確保する上で有効に働
くので、0.01%以上含有する。しかし必要以上の含
有は、溶接継手靭性に悪影響を及ぼすので、その上限を
0.1%をとする。
くので、0.01%以上含有する。しかし必要以上の含
有は、溶接継手靭性に悪影響を及ぼすので、その上限を
0.1%をとする。
【0044】Nb:0.005%未満とする。 Nbは、図1に示したように降伏比を著しく上昇させる
ため、含有しない。しかし、スクラップ等からNbが混
入する場合もあるため、本発明鋼の特性に影響を与えな
い範囲として、混入量を0.005%未満に規制する。
ため、含有しない。しかし、スクラップ等からNbが混
入する場合もあるため、本発明鋼の特性に影響を与えな
い範囲として、混入量を0.005%未満に規制する。
【0045】Ti:0.005%未満とする。 本発明では、Tiは含有しない。しかし、スクラップ等
からTiが混入する場合もあるため、本発明鋼の特性、
特に母材性能の不安定さ等に影響を与えない範囲とし
て、混入量を0.005%未満に規制する。
からTiが混入する場合もあるため、本発明鋼の特性、
特に母材性能の不安定さ等に影響を与えない範囲とし
て、混入量を0.005%未満に規制する。
【0046】B:0.0003%未満とする。 本発明では、溶接熱影響部の硬さ低減のためBは含有し
ない。しかし、Bは原料の鉄鉱石から混入する場合もあ
るため、本発明鋼の特性、特に溶接熱影響部の硬さにつ
いて影響を与えない範囲として、混入量を0.0003
%未満に規制する。
ない。しかし、Bは原料の鉄鉱石から混入する場合もあ
るため、本発明鋼の特性、特に溶接熱影響部の硬さにつ
いて影響を与えない範囲として、混入量を0.0003
%未満に規制する。
【0047】N:0.008%以下とする。 Nは、Al等と反応し析出物を形成することでミクロ組
織を微細化し、母材靭性を向上させるため、また、本発
明ではVを必須の合金元素としその析出効果を導き出す
ためにも、必要的な不純物元素である。しかし、過剰な
含有は母材および溶接継手の靭性を損なうため、その上
限を0.008%望ましくは0.005%とする。
織を微細化し、母材靭性を向上させるため、また、本発
明ではVを必須の合金元素としその析出効果を導き出す
ためにも、必要的な不純物元素である。しかし、過剰な
含有は母材および溶接継手の靭性を損なうため、その上
限を0.008%望ましくは0.005%とする。
【0048】本発明では、上記の合金元素の他に、さら
にCu、Ni、Crの各合金元素の一種以上を、Cu:
0.5%以下、Ni:1.5%以下、Cr:0.5%以
下の範囲内で含有しても好ましい結果が得られる。
にCu、Ni、Crの各合金元素の一種以上を、Cu:
0.5%以下、Ni:1.5%以下、Cr:0.5%以
下の範囲内で含有しても好ましい結果が得られる。
【0049】Cuは母材強度および溶接継手強度向上の
ために、Niは母材強度、靭性および継手強度をともに
向上させるために、またCrは母材強度、靭性および大
入熱溶接継手強度を向上させるために含有させても差し
支えない。特に、Mnの一部をこれらの元素に置き換え
ることで、靭性の向上や鋳造段階のミクロ偏析の低減な
どが達成でさる。ただし、過剰の含有は必要以上に焼入
れ性を向上させ、溶接割れ感受性を損なうため、上記範
囲を上限とする。
ために、Niは母材強度、靭性および継手強度をともに
向上させるために、またCrは母材強度、靭性および大
入熱溶接継手強度を向上させるために含有させても差し
支えない。特に、Mnの一部をこれらの元素に置き換え
ることで、靭性の向上や鋳造段階のミクロ偏析の低減な
どが達成でさる。ただし、過剰の含有は必要以上に焼入
れ性を向上させ、溶接割れ感受性を損なうため、上記範
囲を上限とする。
【0050】Pcm:0.22%以下とする。 Pcmは溶接割れ感受性を表すパラメータであり、わが
国で一般的に行われる溶接環境において、溶接施工時の
予熱をしないでも、低温割れを発生させないためには、
0.22%以下とする必要がある。
国で一般的に行われる溶接環境において、溶接施工時の
予熱をしないでも、低温割れを発生させないためには、
0.22%以下とする必要がある。
【0051】次に、本発明における製造条件の限定理由
について述べる。 熱間圧延前のスラブ加熱温度:1000℃以上1250
℃以下とする。 スラブ加熱温度は、合金元素の均質化を図るため、10
00℃以上とする必要がある。しかし、加熱温度の上昇
と共に、加熱時のオーステナイト結晶粒の粗大化により
母材靭性の劣化が懸念されるので、その上限を1250
℃、好ましくは1150℃とする。
について述べる。 熱間圧延前のスラブ加熱温度:1000℃以上1250
℃以下とする。 スラブ加熱温度は、合金元素の均質化を図るため、10
00℃以上とする必要がある。しかし、加熱温度の上昇
と共に、加熱時のオーステナイト結晶粒の粗大化により
母材靭性の劣化が懸念されるので、その上限を1250
℃、好ましくは1150℃とする。
【0052】熱間圧延条件:950℃以下で20%以上
の累積圧下を施す。 スラブ加熱後所定の板厚まで熱間圧延する工程は、本発
明においては特に強度の点で重要な役割を果たす。上述
の図2、3から明らかなように、950℃以下での累積
圧下率を増加させると母材強度が向上し、一方、降伏比
も増加するが、その程度は小さい。従って、950℃以
下で20%以上の累積圧下を加えると、低降伏比を維持
しつつ、目標とする強度を安定して達成できる。
の累積圧下を施す。 スラブ加熱後所定の板厚まで熱間圧延する工程は、本発
明においては特に強度の点で重要な役割を果たす。上述
の図2、3から明らかなように、950℃以下での累積
圧下率を増加させると母材強度が向上し、一方、降伏比
も増加するが、その程度は小さい。従って、950℃以
下で20%以上の累積圧下を加えると、低降伏比を維持
しつつ、目標とする強度を安定して達成できる。
【0053】圧延仕上温度:850℃以上とする。 強度の点からは、950℃以下での累積圧下率を大きく
とることが好ましいが、累積圧下率を大きくすると必然
的に圧延仕上温度も低下し、音響異方性が増大する。従
って、音響異方性の要求がある場合には、図4に示した
ように、圧延仕上温度を一定温度以上、すなわち850
℃以上とする必要がある。
とることが好ましいが、累積圧下率を大きくすると必然
的に圧延仕上温度も低下し、音響異方性が増大する。従
って、音響異方性の要求がある場合には、図4に示した
ように、圧延仕上温度を一定温度以上、すなわち850
℃以上とする必要がある。
【0054】直接焼入れ温度:Ar3変態点以上とす
る。 熱間圧延終了後の直接焼入れ温度が低温、例えばAr3
変態点近傍になると、圧延した鋼板内位置による母材性
能の変動が大きくなる。これを防ぐためには、少なくと
もAr3変態点を上回る温度から、鋼板を強制冷却する
直接焼入れ処理を施すことが必要である。
る。 熱間圧延終了後の直接焼入れ温度が低温、例えばAr3
変態点近傍になると、圧延した鋼板内位置による母材性
能の変動が大きくなる。これを防ぐためには、少なくと
もAr3変態点を上回る温度から、鋼板を強制冷却する
直接焼入れ処理を施すことが必要である。
【0055】なお、Ar3変態点は、例えば、Tran
s.ISIJ、22(1982)、P214(C.Ou
chi、T.Sampei、and I.Kozas
u)に記載されるように、板厚をt(mm)として、化
学成分の関数として、(3)式にて表せる。 Ar3=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni− 80Mo+0.35(t−8) (℃)・・・・・(3) 本発明の適用板厚、例えば板厚100mm、において
は、Ar3変態点は800℃と計算されるため、熱間圧
延後の直接焼入れは、800℃以上にて実施すればAr
3変態点を上回ることが可能となる。
s.ISIJ、22(1982)、P214(C.Ou
chi、T.Sampei、and I.Kozas
u)に記載されるように、板厚をt(mm)として、化
学成分の関数として、(3)式にて表せる。 Ar3=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni− 80Mo+0.35(t−8) (℃)・・・・・(3) 本発明の適用板厚、例えば板厚100mm、において
は、Ar3変態点は800℃と計算されるため、熱間圧
延後の直接焼入れは、800℃以上にて実施すればAr
3変態点を上回ることが可能となる。
【0056】二相域焼入れ温度:Ac1変態点以上Ac
3変態点以下とする。 直接焼入れ処理後、降伏比の低減を図るべく、Ac1変
態点以上Ac3変態点以下の2相域温度範囲に再加熱
し、焼入れ処理を施す。これは、上述のように、鋼の組
織を部分的にオーステナイト変態させることにより、ミ
クロ組織が硬質相と軟質相(フェライト)の2相に分離
し、降伏比の低減が図られるからである。
3変態点以下とする。 直接焼入れ処理後、降伏比の低減を図るべく、Ac1変
態点以上Ac3変態点以下の2相域温度範囲に再加熱
し、焼入れ処理を施す。これは、上述のように、鋼の組
織を部分的にオーステナイト変態させることにより、ミ
クロ組織が硬質相と軟質相(フェライト)の2相に分離
し、降伏比の低減が図られるからである。
【0057】焼戻し温度:Ac1変態点以下500℃以
上とする。 焼戻しはAcl変態点以下の温度範囲にて実施される
が、必要以上に低温で焼戻しを行うと硬質相の焼戻しが
不十分となるため、その下限を500℃とする。
上とする。 焼戻しはAcl変態点以下の温度範囲にて実施される
が、必要以上に低温で焼戻しを行うと硬質相の焼戻しが
不十分となるため、その下限を500℃とする。
【0058】
【実施例】以下に、本発明の実施例を比較例と対比して
示す。図5として示す表1に供試鋼の化学成分を示す。
ここで、鋼A〜Gは本発明の範囲の化学成分を有する鋼
である。一方鋼H〜Lは比較鋼であり、鋼H及び鋼Jは
Nb含有鋼、鋼IはNbとBを含有する鋼、鋼KはPc
mが、鋼LはCとPcmが本発明の範囲外の鋼である。
示す。図5として示す表1に供試鋼の化学成分を示す。
ここで、鋼A〜Gは本発明の範囲の化学成分を有する鋼
である。一方鋼H〜Lは比較鋼であり、鋼H及び鋼Jは
Nb含有鋼、鋼IはNbとBを含有する鋼、鋼KはPc
mが、鋼LはCとPcmが本発明の範囲外の鋼である。
【0059】表1に示す化学成分を有する鋼を溶製し、
鋼塊とした後、図6、図7として示す表2−1、表2−
2の製造条件にて所定の板厚に熱間圧延後、直接焼入れ
し、さらに2相域に再加熱後焼入れし、その後焼戻し処
理を施し供試鋼板を得た。なお、Ar3変態点以上から
の直接焼入れを確保するため、圧延仕上温度はいずれも
800℃以上とした。また、焼戻し温度は500〜63
0℃の範囲とした。また、鋼L(鋼番27)は加熱圧延
後に、一旦空冷し、その後2相域に再加熱後焼入れ、焼
戻しを行ったものである。
鋼塊とした後、図6、図7として示す表2−1、表2−
2の製造条件にて所定の板厚に熱間圧延後、直接焼入れ
し、さらに2相域に再加熱後焼入れし、その後焼戻し処
理を施し供試鋼板を得た。なお、Ar3変態点以上から
の直接焼入れを確保するため、圧延仕上温度はいずれも
800℃以上とした。また、焼戻し温度は500〜63
0℃の範囲とした。また、鋼L(鋼番27)は加熱圧延
後に、一旦空冷し、その後2相域に再加熱後焼入れ、焼
戻しを行ったものである。
【0060】供試鋼板の板厚中央部より、引張試験およ
びシヤルピー衝撃試験を圧延方向の直角の方向から採取
し、HT590鋼としての母材の機械的性質を評価し
た。また、音響異方性は、JIS Z 3060に規定
された超音波試験に準拠して評価し、音速比が1.02
0以下を基準に良否を判断した。これらの試験結果を、
表2−1、表2−2に併せて示す。
びシヤルピー衝撃試験を圧延方向の直角の方向から採取
し、HT590鋼としての母材の機械的性質を評価し
た。また、音響異方性は、JIS Z 3060に規定
された超音波試験に準拠して評価し、音速比が1.02
0以下を基準に良否を判断した。これらの試験結果を、
表2−1、表2−2に併せて示す。
【0061】溶接割れ感受性は、JIS Z 3158
に準拠した斜めy型溶接割れ試験による評価に加え、J
IS Z 3101に準拠した溶接熱影響部の最高硬さ
試験及びJIS Z 3115に準拠した溶接熱影響部
のテーパ硬さ試験におけるショートビード硬さ、アーク
ストライク硬さを評価した。溶接割れ感受性の評価に際
しては、いずれもHT590鋼用の極低水素系の溶接材
料を用いて、雰囲気温度20℃、湿度60%、試験片初
期温度25℃の条件で行った。試験結果を、図8として
示す表3に示す。
に準拠した斜めy型溶接割れ試験による評価に加え、J
IS Z 3101に準拠した溶接熱影響部の最高硬さ
試験及びJIS Z 3115に準拠した溶接熱影響部
のテーパ硬さ試験におけるショートビード硬さ、アーク
ストライク硬さを評価した。溶接割れ感受性の評価に際
しては、いずれもHT590鋼用の極低水素系の溶接材
料を用いて、雰囲気温度20℃、湿度60%、試験片初
期温度25℃の条件で行った。試験結果を、図8として
示す表3に示す。
【0062】まず溶接割れ試験に関しては、比較鋼の一
部(鋼I、鋼K、鋼L)を除いて予熱温度:25℃の条
件で、溶接低温割れは認められなかった。従って、本発
名鋼の割れ防止予熱温度は25℃以下である。一方、鋼
IはPcmは0.21%であるがBを含有するため、ま
た鋼K、LはPcmが高いため、いずれも溶接割れ感受
性が高く、予熱温度25℃で5〜20%の低温割れが発
生している。
部(鋼I、鋼K、鋼L)を除いて予熱温度:25℃の条
件で、溶接低温割れは認められなかった。従って、本発
名鋼の割れ防止予熱温度は25℃以下である。一方、鋼
IはPcmは0.21%であるがBを含有するため、ま
た鋼K、LはPcmが高いため、いずれも溶接割れ感受
性が高く、予熱温度25℃で5〜20%の低温割れが発
生している。
【0063】更に、本発名鋼は、HAZの最高硬さ試験
に加え、テーパ硬さ試験におけるショートビード硬さ、
アークストライク硬さが比較鋼に比して著しく小さい。
このことは、本発明鋼が鋼構造物の現場施工において多
用される小入熱の点付け溶接や仮付け溶接等の溶接に課
せられる種々の制限を緩和できることを意味する。
に加え、テーパ硬さ試験におけるショートビード硬さ、
アークストライク硬さが比較鋼に比して著しく小さい。
このことは、本発明鋼が鋼構造物の現場施工において多
用される小入熱の点付け溶接や仮付け溶接等の溶接に課
せられる種々の制限を緩和できることを意味する。
【0064】鋼番1〜6及び鋼番7〜10は、鋼A及び
鋼Bを用いて、熱間圧延条件を変化させた場合の結果で
ある。靭性は、直接焼入れ後に2相域焼入れ−焼戻しを
実施しているため、いずれも十分なレベルにある。強度
は、950℃以下の累積圧下を加えない鋼番1あるいは
鋼番7はHT590鋼として不十分であるが、950℃
以下で20%以上の累積圧下を加えた他の鋼板は、HT
590鋼としての強度水準を満足する。
鋼Bを用いて、熱間圧延条件を変化させた場合の結果で
ある。靭性は、直接焼入れ後に2相域焼入れ−焼戻しを
実施しているため、いずれも十分なレベルにある。強度
は、950℃以下の累積圧下を加えない鋼番1あるいは
鋼番7はHT590鋼として不十分であるが、950℃
以下で20%以上の累積圧下を加えた他の鋼板は、HT
590鋼としての強度水準を満足する。
【0065】制御圧延によるこの強度の上昇は、上述し
たように、2相域に再加熱した際のオーステナイト変態
サイトが増加し硬質相の面積率が上昇することに加え、
その後の焼入れで生じる硬質相自体の硬さの上昇にあ
る。すなわち硬質相自体の硬さは、950℃以下の累積
圧下を加えない場合(鋼番1)は254Hvであるのに
対し、累積圧下を20%、50%と増加すると(鋼番
3、鋼番6)、271Hv、290Hvと上昇すること
が確認された。
たように、2相域に再加熱した際のオーステナイト変態
サイトが増加し硬質相の面積率が上昇することに加え、
その後の焼入れで生じる硬質相自体の硬さの上昇にあ
る。すなわち硬質相自体の硬さは、950℃以下の累積
圧下を加えない場合(鋼番1)は254Hvであるのに
対し、累積圧下を20%、50%と増加すると(鋼番
3、鋼番6)、271Hv、290Hvと上昇すること
が確認された。
【0066】一方、CRを大きくとり、圧延仕上温度が
低下しすぎると、オーステナイトの未再結晶域での圧下
が加わり音響異方性が大きくなる。すなわち、950℃
以下で50%ないし55%の圧下を加えて圧延仕上温度
が800℃となった鋼番6、鋼番10では、音響異方性
が認められる。しかし、圧延仕上温度が850℃以上に
ある鋼番1〜5、鋼番7〜9は音響異方性が小さい。
低下しすぎると、オーステナイトの未再結晶域での圧下
が加わり音響異方性が大きくなる。すなわち、950℃
以下で50%ないし55%の圧下を加えて圧延仕上温度
が800℃となった鋼番6、鋼番10では、音響異方性
が認められる。しかし、圧延仕上温度が850℃以上に
ある鋼番1〜5、鋼番7〜9は音響異方性が小さい。
【0067】鋼番11〜13は鋼Cにおける板厚75m
m材、鋼番14、15及び鋼番16〜18は鋼D及び鋼
Eにおける板厚100mm材の結果である。950℃以
下で20%以上の累積圧下を施し、圧延仕上温度が85
0℃以上の場合には、HT590鋼の強度と良好な音響
異方性を有している。同様の結果は、本発明の範囲内で
合金成分を変化させた鋼F〜G(鋼番19〜21)にお
いても認められる。
m材、鋼番14、15及び鋼番16〜18は鋼D及び鋼
Eにおける板厚100mm材の結果である。950℃以
下で20%以上の累積圧下を施し、圧延仕上温度が85
0℃以上の場合には、HT590鋼の強度と良好な音響
異方性を有している。同様の結果は、本発明の範囲内で
合金成分を変化させた鋼F〜G(鋼番19〜21)にお
いても認められる。
【0068】これに対して、鋼番22〜27は、合金成
分が本発明の範囲外にある鋼H〜Lを用い、本発明の範
囲内の製造条件にて、鋼板を製造した結果である。鋼番
22及び鋼番24(鋼H及び鋼J)は、強度、靭性、溶
接性、音響異方性はいずれも良好であるが、Nb含有鋼
であるため降伏比が高い。
分が本発明の範囲外にある鋼H〜Lを用い、本発明の範
囲内の製造条件にて、鋼板を製造した結果である。鋼番
22及び鋼番24(鋼H及び鋼J)は、強度、靭性、溶
接性、音響異方性はいずれも良好であるが、Nb含有鋼
であるため降伏比が高い。
【0069】鋼番23(鋼I)は、Nb、Bをいずれも
含有するため、極めて高い強度、良好な靭性、音響異方
性を有するが、降伏比が80%を超え、また、25℃の
予熱条件で溶接低温割れが発生している。さらに、鋼番
25、26(鋼K)は、強度、降伏比、靭性、音響異方
性はいずれも良好であるが、Pcmが高いため、25℃
の予熱条件で溶接低温割れが発生している。鋼番27
(鋼L)は、機械的性質は本発明鋼と同程度の水準にあ
るが、溶接割れ感受性が高い。すなわち、直接焼入れを
用いない従来の方法では、機械的性質を満たすことがで
きる鋼成分では、溶接割れ感受性に問題が生じ、溶接割
れ感受性を改善した鋼成分では機械的性質が不十分とな
ることを示唆している。
含有するため、極めて高い強度、良好な靭性、音響異方
性を有するが、降伏比が80%を超え、また、25℃の
予熱条件で溶接低温割れが発生している。さらに、鋼番
25、26(鋼K)は、強度、降伏比、靭性、音響異方
性はいずれも良好であるが、Pcmが高いため、25℃
の予熱条件で溶接低温割れが発生している。鋼番27
(鋼L)は、機械的性質は本発明鋼と同程度の水準にあ
るが、溶接割れ感受性が高い。すなわち、直接焼入れを
用いない従来の方法では、機械的性質を満たすことがで
きる鋼成分では、溶接割れ感受性に問題が生じ、溶接割
れ感受性を改善した鋼成分では機械的性質が不十分とな
ることを示唆している。
【0070】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は、溶接割れ
感受性に優れ、かつ音響異方性にも優れる、低降伏比の
590N/mm2 級の高張力鋼の製造方法を提供するも
のである。このことは、HT590鋼を必要とする、種
々の建築構造物に適用できることを示唆し、同時にそれ
らの施工において、施工コストの低減に大きく寄与する
ものである。更に、本発明により製造される鋼材は、小
入熱溶接における割れ感受性にも優れるため、例えば、
建築構造物の施工に際しての点付け溶接の禁止やショー
トビードの最低長さの規制等の種々の制限を緩和するこ
とが可能となる。また、本発明は、鋼板を対象とするも
のであるが、本発明の思想は、他の鋼材製造プロセス、
例えば形鋼の製造に応用できることは言うまでもない。
感受性に優れ、かつ音響異方性にも優れる、低降伏比の
590N/mm2 級の高張力鋼の製造方法を提供するも
のである。このことは、HT590鋼を必要とする、種
々の建築構造物に適用できることを示唆し、同時にそれ
らの施工において、施工コストの低減に大きく寄与する
ものである。更に、本発明により製造される鋼材は、小
入熱溶接における割れ感受性にも優れるため、例えば、
建築構造物の施工に際しての点付け溶接の禁止やショー
トビードの最低長さの規制等の種々の制限を緩和するこ
とが可能となる。また、本発明は、鋼板を対象とするも
のであるが、本発明の思想は、他の鋼材製造プロセス、
例えば形鋼の製造に応用できることは言うまでもない。
【図1】DQ−Q´−T処理で製造した板厚75mmの
Nb含有鋼、Nb非含有鋼の引張強さと降伏比の関係を
示した図である。
Nb含有鋼、Nb非含有鋼の引張強さと降伏比の関係を
示した図である。
【図2】板厚60mm材の、950℃以下の累積圧下率
と引張強さ関係を示す図である。
と引張強さ関係を示す図である。
【図3】板厚60mm材の、950℃以下の累積圧下率
と降伏比の関係を示す図である。
と降伏比の関係を示す図である。
【図4】板厚60mm材の鋼板の圧延仕上温度と音響異
方性の関係を示す図である。
方性の関係を示す図である。
【図5】供試鋼の化学成分を表1として示す図である。
【図6】供試鋼板の製造条件及び機械的性質、音響異方
性の結果を表2−1として示す図である。
性の結果を表2−1として示す図である。
【図7】供試鋼板の製造条件及び機械的性質、音響異方
性の結果を表2−2として示す図である。
性の結果を表2−2として示す図である。
【図8】供試鋼板の溶接割れ感受性試験の結果を表3と
して示す図である。
して示す図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.06〜0.11%、
Si:0.01〜0.4%、Mn:0.5〜1.6
%、、Al:0.01〜0.06%、Mo:0.1〜
1.0%、V:0.01〜0.1%を含有し、かつ、P
cm:0.22以下を満たし、残部が鉄および不可避的
不純物よりなる鋼を、1000〜1250℃に加熱し、
950℃以下で20%以上の累積圧下を加え熱間圧延
し、圧延終了後Ar3変態点以上から直接焼入れし、つ
いでAcl点以上Ac3点以下の2相域温度に再加熱後
焼入れし、さらにAc1点以下500℃以上にて焼戻し
処理を行うことを特徴とする、溶接割れ感受性に優れた
低降伏比高張力鋼の製造方法。 - 【請求項2】 前記鋼が、更に、重量%で、Cu:0.
5%以下、Ni:1.5%以下、Cr:0.5%以下の
うち1種もしくは2種以上を含有することを特徴とす
る、請求項1に記載の溶接割れ感受性に優れた低降伏比
高張力鋼の製造方法。 - 【請求項3】 前記熱間圧延の圧延仕上温度が850℃
以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の
溶接割れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14041098A JPH11172331A (ja) | 1997-09-30 | 1998-05-08 | 溶接割れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9-281110 | 1997-09-30 | ||
JP28111097 | 1997-09-30 | ||
JP14041098A JPH11172331A (ja) | 1997-09-30 | 1998-05-08 | 溶接割れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11172331A true JPH11172331A (ja) | 1999-06-29 |
Family
ID=26472926
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14041098A Pending JPH11172331A (ja) | 1997-09-30 | 1998-05-08 | 溶接割れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11172331A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002060839A (ja) * | 2000-08-23 | 2002-02-28 | Nkk Corp | 溶接割れ感受性に優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造方法 |
JP2008189973A (ja) * | 2007-02-02 | 2008-08-21 | Jfe Steel Kk | 強度−伸びバランスに優れた高靭性高張力鋼板の製造方法 |
JP2008208439A (ja) * | 2007-02-27 | 2008-09-11 | Jfe Steel Kk | 強度−伸びバランスに優れた高靭性高張力鋼板の製造方法 |
-
1998
- 1998-05-08 JP JP14041098A patent/JPH11172331A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002060839A (ja) * | 2000-08-23 | 2002-02-28 | Nkk Corp | 溶接割れ感受性に優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造方法 |
JP2008189973A (ja) * | 2007-02-02 | 2008-08-21 | Jfe Steel Kk | 強度−伸びバランスに優れた高靭性高張力鋼板の製造方法 |
JP2008208439A (ja) * | 2007-02-27 | 2008-09-11 | Jfe Steel Kk | 強度−伸びバランスに優れた高靭性高張力鋼板の製造方法 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20040325 |