JPH05112823A - 大入熱溶接継手靱性の優れた建築用490N/mm2級耐火鋼材の製造方法 - Google Patents
大入熱溶接継手靱性の優れた建築用490N/mm2級耐火鋼材の製造方法Info
- Publication number
- JPH05112823A JPH05112823A JP27134891A JP27134891A JPH05112823A JP H05112823 A JPH05112823 A JP H05112823A JP 27134891 A JP27134891 A JP 27134891A JP 27134891 A JP27134891 A JP 27134891A JP H05112823 A JPH05112823 A JP H05112823A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- steel
- toughness
- temperature
- heat input
- welded joint
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】 高温で高い耐力を有し、かつ、Ceqを大幅に
低減した大入熱溶接継手靱性の優れた建築用 490N/m
m2 級耐火鋼材の製造方法を得る。 【構成】 C:0.04〜0.15%、Si:0.05〜0.60%、Mn:
0.50〜1.50%、Mo:0.10〜0.40%、Nb: 0.005〜 0.060
%、Ti: 0.005〜 0.030%を含有し、残部がFeおよび不
可避不純物からなり、かつ、下記式で規定されるCeqの
値が0.40%以下である鋼片を1050℃以上の温度に加熱
し、 900℃以下での圧下率を40%以上とし、850〜 900
℃の温度範囲で圧延を終了した後、Ar3変態点以上の温
度から、 3〜20℃/秒の冷却速度で 400〜 550℃まで加
速冷却を施す大入熱溶接継手靱性の優れた建築用 490N
/mm2 級耐火鋼材の製造方法。 Ceq= C+Si/24 +Mn/6+ Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14(%)
低減した大入熱溶接継手靱性の優れた建築用 490N/m
m2 級耐火鋼材の製造方法を得る。 【構成】 C:0.04〜0.15%、Si:0.05〜0.60%、Mn:
0.50〜1.50%、Mo:0.10〜0.40%、Nb: 0.005〜 0.060
%、Ti: 0.005〜 0.030%を含有し、残部がFeおよび不
可避不純物からなり、かつ、下記式で規定されるCeqの
値が0.40%以下である鋼片を1050℃以上の温度に加熱
し、 900℃以下での圧下率を40%以上とし、850〜 900
℃の温度範囲で圧延を終了した後、Ar3変態点以上の温
度から、 3〜20℃/秒の冷却速度で 400〜 550℃まで加
速冷却を施す大入熱溶接継手靱性の優れた建築用 490N
/mm2 級耐火鋼材の製造方法。 Ceq= C+Si/24 +Mn/6+ Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14(%)
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐火鋼材の製造方法に
関し、詳しくは、 600℃の高温においても高い耐力を有
し、かつ、炭素当量(Ceq)を大幅に低減した大入熱溶
接継手靱性の優れた建築用 490N/mm2級耐火鋼材の
製造方法に関するものである。
関し、詳しくは、 600℃の高温においても高い耐力を有
し、かつ、炭素当量(Ceq)を大幅に低減した大入熱溶
接継手靱性の優れた建築用 490N/mm2級耐火鋼材の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】建築構造物では、火災時に鉄骨が高温に
さらされると強度が下がり、建築物としての耐力が低下
するため、建築基準法により鉄骨の耐火被覆施工が義務
づけられている。
さらされると強度が下がり、建築物としての耐力が低下
するため、建築基準法により鉄骨の耐火被覆施工が義務
づけられている。
【0003】従来のSi−Mn系の建築用鋼では、 350℃を
超えると火災時に構造部材に要求される長期耐力(常温
耐力の 2/ 3)の 217N/mm2 を下回るため、鉄骨の
温度が 350℃を超えないように工事費、工期などの面か
らは足かせとなる耐火被覆を施している。
超えると火災時に構造部材に要求される長期耐力(常温
耐力の 2/ 3)の 217N/mm2 を下回るため、鉄骨の
温度が 350℃を超えないように工事費、工期などの面か
らは足かせとなる耐火被覆を施している。
【0004】しかし、最近追加された「新耐火設計法」
では、高温耐力の優れた鋼材(耐火鋼材)を使用すれ
ば、耐火被覆量の削減あるいは省略が認められるように
なっている。
では、高温耐力の優れた鋼材(耐火鋼材)を使用すれ
ば、耐火被覆量の削減あるいは省略が認められるように
なっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】現在、高温耐力の優れ
た鋼材としては、ボイラ・圧力容器用として広く使用さ
れているCr−Mo鋼板がある。本鋼板は、 600℃の耐力は
217N/mm2 以上を有するが、Ceqが高いために、大
入熱溶接継手靱性および耐溶接割れ性が悪く、溶接施工
に難点がある。
た鋼材としては、ボイラ・圧力容器用として広く使用さ
れているCr−Mo鋼板がある。本鋼板は、 600℃の耐力は
217N/mm2 以上を有するが、Ceqが高いために、大
入熱溶接継手靱性および耐溶接割れ性が悪く、溶接施工
に難点がある。
【0006】このため、建築用鋼材の耐火被覆施工の低
減あるいは省略を図るために、高い耐力を有するととも
に優れた大入熱溶接継手靱性、溶接性を有し、従来と同
じ設計・施工のできる鋼材が必要とされている。
減あるいは省略を図るために、高い耐力を有するととも
に優れた大入熱溶接継手靱性、溶接性を有し、従来と同
じ設計・施工のできる鋼材が必要とされている。
【0007】また、建築用鋼には、耐震性を向上させる
ために高い塑性変形能が要求され、降伏比として80%以
下の低降伏比の要求が強まっている。
ために高い塑性変形能が要求され、降伏比として80%以
下の低降伏比の要求が強まっている。
【0008】前記のような建築用鋼材の改良製造方法と
しては特開平 2− 77523号公報や特開平 3−6322号公報
が提案されている。
しては特開平 2− 77523号公報や特開平 3−6322号公報
が提案されている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来の建築用
鋼材における上記の問題点に鑑み、前述の先行発明とは
異なった観点から、本発明者らが鋭意研究を行なった結
果、化学成分を限定し、制御圧延および加速冷却を適用
することにより、Ceqを大幅に低減できるという知見を
得て完成されたものである。
鋼材における上記の問題点に鑑み、前述の先行発明とは
異なった観点から、本発明者らが鋭意研究を行なった結
果、化学成分を限定し、制御圧延および加速冷却を適用
することにより、Ceqを大幅に低減できるという知見を
得て完成されたものである。
【0010】つまり、制御圧延型あるいは焼きならし型
490N/mm2 級鋼材ではフェライト・パーライト組織
であるのに対し、Mo、Nbを添加した本発明鋼の制御圧延
直後から加速冷却を施すとベイナイト主体の組織とな
る。これが高温耐力を大幅に上昇させる主因であること
を明らかにし、低Ceqの 490N/mm2 級耐火鋼材の製
造を可能とした。
490N/mm2 級鋼材ではフェライト・パーライト組織
であるのに対し、Mo、Nbを添加した本発明鋼の制御圧延
直後から加速冷却を施すとベイナイト主体の組織とな
る。これが高温耐力を大幅に上昇させる主因であること
を明らかにし、低Ceqの 490N/mm2 級耐火鋼材の製
造を可能とした。
【0011】前記した知見に基づいて完成された本発明
の第1発明は、 C:0.04〜0.15%、Si:0.05〜0.60%、
Mn:0.50〜1.50%、Mo:0.10〜0.40%、Nb: 0.005〜
0.060%、Ti: 0.005〜 0.030%を含有し、残部がFeお
よび不可避不純物からなり、かつ、下記式で規定される
Ceqの値が0.40%以下である鋼片を1050℃以上の温度に
加熱し、 900℃以下での圧下率を40%以上とし、 850〜
900℃の温度範囲で圧延を終了した後、Ar3変態点以上
の温度から、 3〜20℃/秒の冷却速度で 400〜 550℃ま
で加速冷却を施す大入熱溶接継手靱性の優れた建築用 4
90N/mm2 級耐火鋼材の製造方法を要旨としている。 Ceq= C+Si/24 +Mn/6+ Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14(%)
の第1発明は、 C:0.04〜0.15%、Si:0.05〜0.60%、
Mn:0.50〜1.50%、Mo:0.10〜0.40%、Nb: 0.005〜
0.060%、Ti: 0.005〜 0.030%を含有し、残部がFeお
よび不可避不純物からなり、かつ、下記式で規定される
Ceqの値が0.40%以下である鋼片を1050℃以上の温度に
加熱し、 900℃以下での圧下率を40%以上とし、 850〜
900℃の温度範囲で圧延を終了した後、Ar3変態点以上
の温度から、 3〜20℃/秒の冷却速度で 400〜 550℃ま
で加速冷却を施す大入熱溶接継手靱性の優れた建築用 4
90N/mm2 級耐火鋼材の製造方法を要旨としている。 Ceq= C+Si/24 +Mn/6+ Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14(%)
【0012】また、本発明の第2発明は、第1発明にさ
らにCu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%、Cr:0.10〜
0.40%、 V: 0.005〜 0.060%、Ca:0.0005〜0.0050%
のうち1種または2種以上を含有する大入熱溶接継手靱
性の優れた建築用 490N/mm2 級耐火鋼材の製造方法
を要旨としている。
らにCu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%、Cr:0.10〜
0.40%、 V: 0.005〜 0.060%、Ca:0.0005〜0.0050%
のうち1種または2種以上を含有する大入熱溶接継手靱
性の優れた建築用 490N/mm2 級耐火鋼材の製造方法
を要旨としている。
【0013】
【作用】本発明の構成と作用を説明する。本発明が対象
とする鋼の化学成分の限定理由は次の通りである。C
は、強度上昇に寄与する元素であるが、0.04%未満では
強度を確保することは困難であり、また、0,15%を超え
て多量に添加すると溶接性及び靱性を劣化させる。した
がって、その添加量は0.04〜0.15%の範囲とする。
とする鋼の化学成分の限定理由は次の通りである。C
は、強度上昇に寄与する元素であるが、0.04%未満では
強度を確保することは困難であり、また、0,15%を超え
て多量に添加すると溶接性及び靱性を劣化させる。した
がって、その添加量は0.04〜0.15%の範囲とする。
【0014】Siは、脱酸のために必須の元素であるが、
0.05%未満ではその効果が少なく、また、0.60%を超え
ると溶接性を劣化させる。このため、その添加量は0.05
〜0.60%の範囲とする。
0.05%未満ではその効果が少なく、また、0.60%を超え
ると溶接性を劣化させる。このため、その添加量は0.05
〜0.60%の範囲とする。
【0015】Mnは、鋼の強度及び靱性を確保するために
必要な元素であるが、0.50%未満ではこのような効果は
少なく、また、1.50%を超えて多量に添加すると溶接性
及び靱性を劣化させる。したがって、その添加量は0.50
〜1.50%の範囲とする。
必要な元素であるが、0.50%未満ではこのような効果は
少なく、また、1.50%を超えて多量に添加すると溶接性
及び靱性を劣化させる。したがって、その添加量は0.50
〜1.50%の範囲とする。
【0016】Moは、高温強度を確保するために不可欠の
元素であり、 600℃における耐力を大幅に上昇させる。
しかしながら、0.10%未満ではこのような効果は得られ
ず、また、0.40%を超えて添加すると大入熱溶接継手靱
性を劣化させる。したがって、その添加量は0.10〜0.40
%の範囲とする。
元素であり、 600℃における耐力を大幅に上昇させる。
しかしながら、0.10%未満ではこのような効果は得られ
ず、また、0.40%を超えて添加すると大入熱溶接継手靱
性を劣化させる。したがって、その添加量は0.10〜0.40
%の範囲とする。
【0017】Nbは、析出効果および変態強化による高温
強度の上昇および細粒化による靱性の向上が図れる元素
である。しかし、 0.005%未満ではこのような効果は得
られず、また、 0.060%を超えて過多に添加すると大入
熱溶接継手靱性が劣化する。したがって、その添加量は
0.005〜 0.060%の範囲とする。
強度の上昇および細粒化による靱性の向上が図れる元素
である。しかし、 0.005%未満ではこのような効果は得
られず、また、 0.060%を超えて過多に添加すると大入
熱溶接継手靱性が劣化する。したがって、その添加量は
0.005〜 0.060%の範囲とする。
【0018】Tiは、オーステナイト粒の粗大化を抑制す
るとともに、微細フェライトを生成することから、大入
熱溶接継手靱性の脆化軽減に有効な元素である。しか
し、 0.005%未満ではかかる効果を発揮することが出来
ず、また、 0.030%を超えて添加すると溶接継手靱性を
劣化させる。したがって、その添加量は 0.005〜 0.030
%の範囲とする。
るとともに、微細フェライトを生成することから、大入
熱溶接継手靱性の脆化軽減に有効な元素である。しか
し、 0.005%未満ではかかる効果を発揮することが出来
ず、また、 0.030%を超えて添加すると溶接継手靱性を
劣化させる。したがって、その添加量は 0.005〜 0.030
%の範囲とする。
【0019】なお、本発明における第2発明では、上記
の元素の他に必要に応じて、Cu、Ni、Cr、 VおよびCaの
内1種または2種以上を添加することが出来る。
の元素の他に必要に応じて、Cu、Ni、Cr、 VおよびCaの
内1種または2種以上を添加することが出来る。
【0020】Cuは、固溶効果による強度上昇に有効な元
素であるが、0.05%未満ではこのような効果は少なく、
また、0.50%を超えて添加すると、熱間加工性および溶
接性を損なう。このため、その添加量は0.05〜0.50%の
範囲とする。
素であるが、0.05%未満ではこのような効果は少なく、
また、0.50%を超えて添加すると、熱間加工性および溶
接性を損なう。このため、その添加量は0.05〜0.50%の
範囲とする。
【0021】Niは、靱性の向上に有効な元素であるが、
0.05%未満では子のような効果は得られない。また、0.
50%を超えて添加してもこのような効果は飽和し、経済
的にも無駄である。したがって、その添加量は0.05〜0.
50%の範囲とする。
0.05%未満では子のような効果は得られない。また、0.
50%を超えて添加してもこのような効果は飽和し、経済
的にも無駄である。したがって、その添加量は0.05〜0.
50%の範囲とする。
【0022】Crは、高温強度の上昇に有効な元素である
が、0.10%未満ではこのような効果は期待しがたく、0.
40%を超えて多量に添加すると溶接性が劣化する。この
ため、その添加量は0.10〜0.40%の範囲とする。
が、0.10%未満ではこのような効果は期待しがたく、0.
40%を超えて多量に添加すると溶接性が劣化する。この
ため、その添加量は0.10〜0.40%の範囲とする。
【0023】Vは、析出効果により高温強度を上昇させ
るが、 0.005%未満ではこのような効果はほとんど期待
出来ず、また、 0.060%を超えて過多に添加すると溶接
性が劣化する。したがって、その添加量は 0.005〜 0.0
60%の範囲とする。
るが、 0.005%未満ではこのような効果はほとんど期待
出来ず、また、 0.060%を超えて過多に添加すると溶接
性が劣化する。したがって、その添加量は 0.005〜 0.0
60%の範囲とする。
【0024】Caは、微量で板厚方向の特性を改善する元
素であるが、0.0005%未満ではこのような効果は無く、
一方、0.0050%を超えて添加するとこのような効果は飽
和するとともに、大型介在物が生成するため超音波欠陥
を生じやすくなる。このため、その添加量は0.0005〜0.
0050%の範囲とする。
素であるが、0.0005%未満ではこのような効果は無く、
一方、0.0050%を超えて添加するとこのような効果は飽
和するとともに、大型介在物が生成するため超音波欠陥
を生じやすくなる。このため、その添加量は0.0005〜0.
0050%の範囲とする。
【0025】そしてさらに、第1発明および第2発明と
もに、大入熱溶接時のHAZに生成する島状マルテンサ
イト量を低減し、かつ、溶接時の低温割れを防止するた
めに、炭素当量(Ceq)を0.40%以下に限定する。
もに、大入熱溶接時のHAZに生成する島状マルテンサ
イト量を低減し、かつ、溶接時の低温割れを防止するた
めに、炭素当量(Ceq)を0.40%以下に限定する。
【0026】つぎに、本発明における加熱、圧延および
加速冷却条件の限定理由について説明する。加熱温度を
1050℃以上に限定した理由は、常温強度および高温強度
の確保に必要なNbおよびMoを鋼中に固溶させるためであ
る。
加速冷却条件の限定理由について説明する。加熱温度を
1050℃以上に限定した理由は、常温強度および高温強度
の確保に必要なNbおよびMoを鋼中に固溶させるためであ
る。
【0027】また、 900℃以下での圧下率は靱性の確保
に有効な細粒オーステナイトを得るために40%以上が必
要である。
に有効な細粒オーステナイトを得るために40%以上が必
要である。
【0028】さらに、圧延終了温度は 850℃未満の場
合、フェライトの細粒化により、降伏比が高くなり、80
%以下の降伏比を得ることが出来ず、また、集合組織に
起因して音響異方性が高くなり、超音波斜角探傷におい
て屈折角や探傷感度が変化するために鋼溶接部の健全性
が検査出来ない。一方、圧延終了温度が 900℃を超える
と、オーステナイトが粗粒となるために靱性が劣化す
る。したがって、圧延終了温度が 850〜 900℃の範囲と
する。
合、フェライトの細粒化により、降伏比が高くなり、80
%以下の降伏比を得ることが出来ず、また、集合組織に
起因して音響異方性が高くなり、超音波斜角探傷におい
て屈折角や探傷感度が変化するために鋼溶接部の健全性
が検査出来ない。一方、圧延終了温度が 900℃を超える
と、オーステナイトが粗粒となるために靱性が劣化す
る。したがって、圧延終了温度が 850〜 900℃の範囲と
する。
【0029】上記条件による熱間圧延後、加速冷却を行
なうが、高温耐力を向上させるベイナイト量を増加させ
るには冷却開始までの時間が短く、冷却開始が高温ほど
望ましい。特に冷却開始温度がAr3変態点より低くなる
と、フェライトが生成し、冷却による高温強度の上昇効
果が小さくなるため、冷却開始温度の下限はAr3変態点
とする。また、冷却速度は20℃/秒を超える強冷却を行
うと、強度が規格上限を超え、また、 3℃/秒よりも遅
い冷却速度では強度上昇効果が得られない。したがっ
て、冷却速度は 3〜20℃/秒の範囲とする。
なうが、高温耐力を向上させるベイナイト量を増加させ
るには冷却開始までの時間が短く、冷却開始が高温ほど
望ましい。特に冷却開始温度がAr3変態点より低くなる
と、フェライトが生成し、冷却による高温強度の上昇効
果が小さくなるため、冷却開始温度の下限はAr3変態点
とする。また、冷却速度は20℃/秒を超える強冷却を行
うと、強度が規格上限を超え、また、 3℃/秒よりも遅
い冷却速度では強度上昇効果が得られない。したがっ
て、冷却速度は 3〜20℃/秒の範囲とする。
【0030】さらに、冷却停止温度は 400〜 550℃に規
制する。これは 400℃未満では島状マルテンサイトが生
成し、靱性が著しく劣化するためであり、また、 550℃
を超えると、強度上昇効果が小さくなるためである。
制する。これは 400℃未満では島状マルテンサイトが生
成し、靱性が著しく劣化するためであり、また、 550℃
を超えると、強度上昇効果が小さくなるためである。
【0031】以上の条件を用いることにより、従来、C
eqが高いために大入熱溶接継手靱性および耐溶接割れ性
が悪いというCr−Mo鋼の欠点を解消することができる。
すなわち、適正に成分調整された鋼に適切な制御圧延お
よびその後の加速冷却を組み合わせて適用し、鋼の組織
を微細なベイナイト組織に制御することにより、低Ceq
の建築用 490N/mm2 級耐火鋼材が製造できる。
eqが高いために大入熱溶接継手靱性および耐溶接割れ性
が悪いというCr−Mo鋼の欠点を解消することができる。
すなわち、適正に成分調整された鋼に適切な制御圧延お
よびその後の加速冷却を組み合わせて適用し、鋼の組織
を微細なベイナイト組織に制御することにより、低Ceq
の建築用 490N/mm2 級耐火鋼材が製造できる。
【0032】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明するが、本発明
はこれにより限定されるものではない。
はこれにより限定されるものではない。
【0033】実施例1 供試鋼板は表1に示す化学成分を有する鋼片を表2に示
す加熱・圧延条件にしたがって製造した。これらの鋼板
から試験片を採取し、常温引張試験、シャルピ衝撃試
験、 600℃の高温引張試験、最高硬さ試験および再現熱
サイクルシャルピ試験を行った。その結果を表2に併記
する。なお、最高硬さ試験はJISZ 3101に準じ
て行った。
す加熱・圧延条件にしたがって製造した。これらの鋼板
から試験片を採取し、常温引張試験、シャルピ衝撃試
験、 600℃の高温引張試験、最高硬さ試験および再現熱
サイクルシャルピ試験を行った。その結果を表2に併記
する。なお、最高硬さ試験はJISZ 3101に準じ
て行った。
【0034】
【表1】
【0035】表1に本発明鋼A〜Hおよび比較鋼I〜O
の化学成分を、表2に加熱・圧延・冷却条件、引張特
性、衝撃特性、高温特性、大入熱HAZ靱性および溶接
性能をそれぞれ示す。
の化学成分を、表2に加熱・圧延・冷却条件、引張特
性、衝撃特性、高温特性、大入熱HAZ靱性および溶接
性能をそれぞれ示す。
【0036】
【表2】
【0037】本発明鋼A〜Hは 600℃における耐力は 2
17N/mm2 以上と優れた高温耐力を有し、かつ、再現
熱サイクルシャルピ試験での吸収エネルギーvE20が 1
00J以上であり、大入熱HAZ靱性も良好である。さら
に、最高硬さもHv 350未満であり、溶接硬化性が低
い。また、降伏比は建築用鋼材に要求されている80%以
下を十分満足し、シャルピ試験における破面遷移温度も
−40℃以下と良好である。
17N/mm2 以上と優れた高温耐力を有し、かつ、再現
熱サイクルシャルピ試験での吸収エネルギーvE20が 1
00J以上であり、大入熱HAZ靱性も良好である。さら
に、最高硬さもHv 350未満であり、溶接硬化性が低
い。また、降伏比は建築用鋼材に要求されている80%以
下を十分満足し、シャルピ試験における破面遷移温度も
−40℃以下と良好である。
【0038】一方、比較鋼Iは、一般のCr−Mo鋼であ
り、Ceqが本発明の範囲から高めに外れているため、大
入熱HAZ靱性、溶接性および母材靱性が悪い。比較鋼
J、Kについては、前者は C、後者はMoがそれぞれ本発
明の範囲から高めに外れているため、大入熱HAZ靱性
および母材靱性ともに悪い。
り、Ceqが本発明の範囲から高めに外れているため、大
入熱HAZ靱性、溶接性および母材靱性が悪い。比較鋼
J、Kについては、前者は C、後者はMoがそれぞれ本発
明の範囲から高めに外れているため、大入熱HAZ靱性
および母材靱性ともに悪い。
【0039】比較鋼Lは、Tiが添加されていないため大
入熱HAZ靱性が悪く、また、比較鋼M、Nは、前者は
Moが、後者はNbがそれぞれ添加されていないため 600℃
における耐力が低い。
入熱HAZ靱性が悪く、また、比較鋼M、Nは、前者は
Moが、後者はNbがそれぞれ添加されていないため 600℃
における耐力が低い。
【0040】比較鋼Oは、Ceqが0.40%を超えており、
大入熱HAZ靱性および溶接性が悪い。
大入熱HAZ靱性および溶接性が悪い。
【0041】実施例2 供試鋼板は表3に示す化学成分、加熱・圧延・冷却条件
にしたがって製造した。なお、化学成分は表1の本発明
鋼Aと同じである。
にしたがって製造した。なお、化学成分は表1の本発明
鋼Aと同じである。
【0042】
【表3】
【0043】表3から明らかなように、本発明鋼A1〜
A5は、加熱温度が1050〜1250℃、900℃以下の圧下率
が40%以上、圧延終了温度が 860〜 890℃、冷却開始温
度がAr3変態点以上、冷却停止温度が 440〜 530℃、冷
却速度が 5〜18℃/秒であり、常温強度、降伏比、破面
遷移温度および高温耐力はいずれも良好である。
A5は、加熱温度が1050〜1250℃、900℃以下の圧下率
が40%以上、圧延終了温度が 860〜 890℃、冷却開始温
度がAr3変態点以上、冷却停止温度が 440〜 530℃、冷
却速度が 5〜18℃/秒であり、常温強度、降伏比、破面
遷移温度および高温耐力はいずれも良好である。
【0044】一方、比較鋼A6は、加熱温度が1000℃で
あり、Nbが十分に固溶していないため、常温強度および
高温耐力が低い。
あり、Nbが十分に固溶していないため、常温強度および
高温耐力が低い。
【0045】比較鋼A7は、 900℃以下の圧下率が30%
と小さいため、オーステナイトの細粒化が不十分であ
り、破面遷移温度が高い。
と小さいため、オーステナイトの細粒化が不十分であ
り、破面遷移温度が高い。
【0046】比較鋼A8は、圧延終了温度が 800℃と低
いため、フェライトが細粒となり、降伏比が80%を超え
ている。一方、比較鋼A9は、圧延終了温度が 930℃と
高いため、オーステナイトが粗粒となり、破面遷移温度
が高い。
いため、フェライトが細粒となり、降伏比が80%を超え
ている。一方、比較鋼A9は、圧延終了温度が 930℃と
高いため、オーステナイトが粗粒となり、破面遷移温度
が高い。
【0047】比較鋼A10は、冷却開始温度がAr3変態点
以下のためベイナイトの生成が少なく、常温強度および
高温耐力が低い。
以下のためベイナイトの生成が少なく、常温強度および
高温耐力が低い。
【0048】比較鋼A11は冷却速度が 2℃/秒と小さい
ため、常温強度および高温耐力が低い。一方、比較鋼A
12は冷却速度が25℃/秒と大きいため、常温の引張強さ
が 490N/mm2 級鋼板の規格値(TS: 490〜 610N
/mm2 )を超えている。
ため、常温強度および高温耐力が低い。一方、比較鋼A
12は冷却速度が25℃/秒と大きいため、常温の引張強さ
が 490N/mm2 級鋼板の規格値(TS: 490〜 610N
/mm2 )を超えている。
【0049】比較鋼A13は、冷却停止温度が 580℃と高
いため、強度上昇効果が小さく、常温および高温耐力が
低い。また、比較鋼A14は冷却停止温度が 320℃と低い
ため、島状マルテンサイトの生成により、破面遷移温度
が高い。
いため、強度上昇効果が小さく、常温および高温耐力が
低い。また、比較鋼A14は冷却停止温度が 320℃と低い
ため、島状マルテンサイトの生成により、破面遷移温度
が高い。
【0050】比較鋼A15は圧延ままのため、フェライト
パーライト組織であり、常温強度および高温耐力ともに
低い。
パーライト組織であり、常温強度および高温耐力ともに
低い。
【0051】なお、上記実施例は厚鋼板の製造方法に関
するものであるが、本発明は他の鋼製品、例えば、条
鋼、形鋼の製造にも適応し得ることはいうまでもない。
するものであるが、本発明は他の鋼製品、例えば、条
鋼、形鋼の製造にも適応し得ることはいうまでもない。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係わる大
入熱溶接継手靱性の優れた建築用 490N/mm2 級耐火
鋼の製造方法は上記の構成であるから、 600℃における
高い耐力、良好な大入熱HAZ靱性と溶接性を兼ね備
え、かつ、降伏比の低い鋼を製造することが可能であ
る。このため、従来必要とされていた耐火被覆を大幅に
低減あるいは省略することが可能であり、さらに、溶接
施工および耐震性の点からも、構造物の安全性を高める
ことができるという優れた効果を有するものであり、産
業上極めて有用である。
入熱溶接継手靱性の優れた建築用 490N/mm2 級耐火
鋼の製造方法は上記の構成であるから、 600℃における
高い耐力、良好な大入熱HAZ靱性と溶接性を兼ね備
え、かつ、降伏比の低い鋼を製造することが可能であ
る。このため、従来必要とされていた耐火被覆を大幅に
低減あるいは省略することが可能であり、さらに、溶接
施工および耐震性の点からも、構造物の安全性を高める
ことができるという優れた効果を有するものであり、産
業上極めて有用である。
Claims (2)
- 【請求項1】 C:0.04〜0.15%、Si:0.05〜0.60%、
Mn:0.50〜1.50%、Mo:0.10〜0.40%、Nb: 0.005〜
0.060%、Ti: 0.005〜 0.030%を含有し、残部がFeお
よび不可避不純物からなり、かつ、下記式で規定される
Ceqの値が0.40%以下である鋼片を1050℃以上の温度に
加熱し、 900℃以下での圧下率を40%以上とし、 850〜
900℃の温度範囲で圧延を終了した後、Ar3変態点以上
の温度から、 3〜20℃/秒の冷却速度で 400〜 550℃ま
で加速冷却を施すことを特徴とする大入熱溶接継手靱性
の優れた建築用 490N/mm2 級耐火鋼材の製造方法。 Ceq= C+Si/24 +Mn/6+ Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14(%) - 【請求項2】 さらにCu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.
50%、Cr:0.10〜0.40%、 V: 0.005〜 0.060%、Ca:
0.0005〜0.0050%のうち1種または2種以上を含有する
請求項1記載の大入熱溶接継手靱性の優れた建築用 490
N/mm2 級耐火鋼材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27134891A JPH05112823A (ja) | 1991-10-18 | 1991-10-18 | 大入熱溶接継手靱性の優れた建築用490N/mm2級耐火鋼材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27134891A JPH05112823A (ja) | 1991-10-18 | 1991-10-18 | 大入熱溶接継手靱性の優れた建築用490N/mm2級耐火鋼材の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05112823A true JPH05112823A (ja) | 1993-05-07 |
Family
ID=17498814
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27134891A Withdrawn JPH05112823A (ja) | 1991-10-18 | 1991-10-18 | 大入熱溶接継手靱性の優れた建築用490N/mm2級耐火鋼材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05112823A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH05279735A (ja) * | 1992-04-02 | 1993-10-26 | Nippon Steel Corp | 大入熱溶接熱影響部靱性の優れた建築用耐火鋼板の製造法 |
JPH06316724A (ja) * | 1993-03-04 | 1994-11-15 | Kobe Steel Ltd | 音響異方性の少ない建築用耐火鋼板の製造方法 |
JP2002220622A (ja) * | 2001-01-25 | 2002-08-09 | Nkk Corp | 高い降伏点を有する高張力鋼材の製造方法 |
JP2010196109A (ja) * | 2009-02-25 | 2010-09-09 | Jfe Steel Corp | 全伸びと疲労き裂伝播抵抗性に優れた厚鋼板の製造方法 |
JP2011074495A (ja) * | 2010-11-08 | 2011-04-14 | Jfe Steel Corp | 高い降伏点を有する高張力鋼材の製造方法 |
-
1991
- 1991-10-18 JP JP27134891A patent/JPH05112823A/ja not_active Withdrawn
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH05279735A (ja) * | 1992-04-02 | 1993-10-26 | Nippon Steel Corp | 大入熱溶接熱影響部靱性の優れた建築用耐火鋼板の製造法 |
JPH06316724A (ja) * | 1993-03-04 | 1994-11-15 | Kobe Steel Ltd | 音響異方性の少ない建築用耐火鋼板の製造方法 |
JP2002220622A (ja) * | 2001-01-25 | 2002-08-09 | Nkk Corp | 高い降伏点を有する高張力鋼材の製造方法 |
JP4655372B2 (ja) * | 2001-01-25 | 2011-03-23 | Jfeスチール株式会社 | 高い降伏点を有する高張力鋼材の製造方法 |
JP2010196109A (ja) * | 2009-02-25 | 2010-09-09 | Jfe Steel Corp | 全伸びと疲労き裂伝播抵抗性に優れた厚鋼板の製造方法 |
JP2011074495A (ja) * | 2010-11-08 | 2011-04-14 | Jfe Steel Corp | 高い降伏点を有する高張力鋼材の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5407478B2 (ja) | 1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法 | |
JP4379085B2 (ja) | 高強度高靭性厚鋼板の製造方法 | |
JP4120531B2 (ja) | 超大入熱溶接熱影響部靱性に優れる建築構造用高強度厚鋼板の製造方法 | |
JP5089224B2 (ja) | オンライン冷却型高張力鋼板の製造方法 | |
JP2006274388A (ja) | 音響異方性が小さい降伏強さ650MPa以上の高張力鋼板およびその製造方法 | |
JP3247908B2 (ja) | 延性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP4770415B2 (ja) | 溶接性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法 | |
JP5008879B2 (ja) | 強度および低温靭性の優れた高張力鋼板および高張力鋼板の製造方法 | |
JPH10298706A (ja) | 大入熱溶接性、溶接割れ感受性に優れた高張力鋼およびその製造方法 | |
JPH06316723A (ja) | ガス切断性及び溶接性の優れた建築構造用耐候性耐火鋼材の製造方法 | |
JPH05112823A (ja) | 大入熱溶接継手靱性の優れた建築用490N/mm2級耐火鋼材の製造方法 | |
JPH05117745A (ja) | 建築構造用490N/mm2級耐候性耐火鋼材の製造方法 | |
JP4655372B2 (ja) | 高い降伏点を有する高張力鋼材の製造方法 | |
JP2000192140A (ja) | 溶接割れ感受性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法 | |
JP2898455B2 (ja) | 溶接性に優れた高張力鋼の製造方法 | |
JP2005272854A (ja) | 耐火性および溶接熱影響部の靭性に優れる高張力鋼の製造方法 | |
JPH1068045A (ja) | 溶接割れ感受性と大入熱溶接継手靱性に優れた600N/mm2 級高張力鋼およびその製造方法 | |
JP2005307313A (ja) | 耐震性と溶接性に優れた鋼板の製造方法 | |
JP5903907B2 (ja) | 引張強さ(TS)が780MPa以上の大入熱溶接熱影響部の靭性と小入熱溶接熱影響部の耐硬化特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法 | |
JPH06264136A (ja) | 溶接性の優れた建築用低降伏比厚肉耐火鋼の製造方法 | |
JPH06145787A (ja) | 溶接性に優れた高張力鋼の製造方法 | |
JP3568710B2 (ja) | 大入熱溶接時のHAZ靱性が優れ、降伏比が80%以下である溶接構造用590N/mm2 級鋼板およびその製造方法 | |
JPH0657371A (ja) | 溶接性の優れた建築用低降伏比耐火鋼材 | |
JPH07173532A (ja) | 溶接性の優れた建築用低降伏比型耐火鋼の製造方法 | |
JPH08176731A (ja) | 高張力鋼及びその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 19990107 |