JPH07233414A - 一様伸びの優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法 - Google Patents

一様伸びの優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法

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JPH07233414A
JPH07233414A JP2445794A JP2445794A JPH07233414A JP H07233414 A JPH07233414 A JP H07233414A JP 2445794 A JP2445794 A JP 2445794A JP 2445794 A JP2445794 A JP 2445794A JP H07233414 A JPH07233414 A JP H07233414A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、高価な合金元素を用いたり、複雑
な熱履歴により生産性を低下させることなく、低降伏比
かつ一様伸び特性の良好な高張力厚鋼板を製造する方法
を提供する。 【構成】 所定の成分範囲の鋼片をAc3 変態点以上、
1150℃以下の温度に加熱し、オーステナイトの再結
晶域圧延に続く未再結晶域の圧延の累積圧下率が30%
以上の圧延を行った後、5℃/s以上の冷却速度で600
〜500℃の温度範囲まで第1の強制冷却を行った後、
放冷以下の冷却速度で冷却し、さらに450〜400℃
の温度範囲から5℃/s以上の冷却速度で200℃以下ま
で第2の強制冷却を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は低降伏比でかつ一様伸び
の優れた、引張強さが60〜80kgf/mm2 級の高張力鋼
板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、高層建築物を中心に安全性重視の
観点から、地震時を想定した変形に対しても建築物の崩
壊を招かないような設計がなされるようになってきてお
り、そのために、鋼板に必要な特性として、低降伏比
(降伏比=降伏強度/引張り強度)や高一様伸び特性が
求められてる。
【0003】低降伏比化については、一般的には焼入れ
と焼戻し熱処理の間にフェライト(α)+オーステナイ
ト(γ)二相域に加熱する中間熱処理を施す方法(以
降、QLT処理)に代表されるように、軟質相としての
αと硬質相としてのベイナイトあるいはマルテンサイト
を混在させることにより達成される。このような二相組
織鋼を得るための従来の技術は、一般的に複雑であり、
生産性の低下を生じやすい。即ち、上記のQLT処理で
は工程が増加するため、製造コストの増加及び生産性の
低下を招く。
【0004】また、もう一つの代表的な製造方法とし
て、熱間圧延後、直接焼入れする、いわゆるDQ工程に
おいて、圧延後、直ちに焼入れせずに、αが一定量生成
するまで放冷した後、焼入れて二相組織とする方法(以
降DLT処理)が挙げられる。しかし、この方法ではQ
LT処理に比べて中間熱処理は省略できるものの、圧延
から焼入れまでの待ち時間が長くなるため、生産性の低
下は避けられない。また、待ち時間が長いため板内の温
度不均一が生じやすく、そのため、材質の板内変動が大
きくなりがちである。加えて、QLT処理にせよDLT
処理にせよ、材質の安定、靭性の向上のために最後に施
す焼戻し処理も工程の増加、生産性の低下につながる。
さらに、組織中にαを生成させるため、高強度化が困難
であり、引張強さが60〜80kgf/mm2 級の高張力鋼を
製造するためには通常の製造法によるよりも合金元素の
含有量を高める必要があり、この点でも経済的に不利で
ある。
【0005】一方、一様伸び特性についてはその支配要
因の不明確さから低降伏比化に比べて向上が難しい。一
般的には鋼の強度が高くなるにつれて一様伸びは低下す
る傾向にあるため、高強度鋼ほど一様伸びの確保が困難
となる。低降伏比化と同じように、QLT処理等により
α相を生成させた二相組織とすることにより改善される
と考えられているが、このような方法では上記の低降伏
比化と同じ欠点を有することになり、本発明において対
象としているような引張強さ60kgf/mm2 以上の高強度
鋼に対してはその適用が制限される。
【0006】引張強さ60kgf/mm2 以上の高強度鋼にお
いて従来から提示されている一様伸びの改善方法として
は、例えば、特開平5−140644号公報に開示され
ているように、Moを含有する鋼をα−γ二相共存域に
再加熱して固溶C濃度を極端に低下させた上で、圧延を
加えることにより圧延方向の一様伸びを向上させる方法
がある。この方法によれば軟質のα相を比較的生産性を
阻害することなく生成できるが、加熱温度が通常の鋼片
加熱温度に比べて極端に低いため、加熱炉によっては操
業が難しい場合もあり、また均一加熱に時間を要した
り、溶体化が不十分となる恐れがある。また、材質の異
方性も生じやすいと考えられる。あるいは、降伏強度が
95kgf/mm2 以上の超高張力鋼において、特開平4−7
4846号公報に示されるような、時効析出強化による
一様伸びの向上方法が示されているが、強度が80kgf/
mm2 以下の鋼に対しては一般的な手段とは言い難い。以
上から、引張強さが60〜80kgf/mm2 級の高張力鋼板
の一様伸びの向上方法が確立されているとは言い難く、
生産性が高く、経済性に優れた、一様伸びの良好な低降
伏比高張力鋼板の製造技術の確立が望まれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は建築用
の高張力鋼板を代表とする、低降伏比でかつ良好な一様
伸び特性を要求される厚鋼板の製造方法を提供すること
にある。さらに具体的には、引張強さが60〜80kgf/
mm2 級程度の低降伏比でかつ良好な一様伸び特性を有す
る高張力厚鋼板の生産性の高い製造方法を提供すること
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は従来のQLT処
理やDLT処理に代表される、軟らかいα相を生成させ
ることによる一様伸びの向上に替わる手段を検討した結
果、Cの存在状態により一様伸びは大幅に変化し得、ま
た、Cの状態を適正にすれば、生産性を阻害するプロセ
スによって軟質α相を生成させることは必須でないこと
を見い出し、本発明を確立した。
【0009】本発明の要旨とするところは、重量%で、
C:0.01〜0.20%、Si:0.20〜1.5
%、Mn:0.30〜2.5%、Al:0.005〜0.
1%、N:0.001〜0.01%を含有し、以下の
(1)式で示す炭素当量(Ceq.)が0.30〜0.60
%で、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼片をAc3
変態点以上、1150℃以下の温度に加熱し、オーステ
ナイトの再結晶域圧延に続く未再結晶域の圧延の累積圧
下率が30%以上の圧延を行った後、5℃/s以上の冷却
速度で600〜500℃の温度範囲まで第1の強制冷却
を行った後、放冷以下の冷却速度で冷却し、さらに45
0〜400℃の温度範囲から5℃/s以上の冷却速度で2
00℃以下まで第2の強制冷却を行うことを特徴とする
一様伸びの優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法であ
る。
【0010】あるいは、重量%で、C:0.01〜0.
20%、Si:0.20〜1.5%、Mn:0.30〜
2.5%、Al:0.005〜0.1%、N:0.00
1〜0.01%を含有し、さらに、Cr:0.01〜
1.0%、Ni:0.01〜3.0%、Mo:0.01
〜1.0%、Cu:0.01〜1.5%、Ti:0.0
03〜0.10%、V:0.005〜0.20%、N
b:0.003〜0.05%、B:0.0003〜0.
0020%の1種または2種以上を含有し、(2)式で
示す炭素当量(Ceq.)が0.30〜0.70%で、残
部Fe及び不可避不純物からなる鋼片Ac3 変態点以
上、1150℃以下の温度に加熱し、オーステナイトの
再結晶域圧延に続く未再結晶域の圧延の累積圧下率が3
0%以上の圧延を行った後、5℃/s以上の冷却速度で6
00〜500℃の温度範囲まで第1の強制冷却を行った
後、放冷以下の冷却速度で冷却し、さらに450〜40
0℃の温度範囲から5℃/s以上の冷却速度で200℃以
下まで第2の強制冷却を行うことを特徴とする一様伸び
の優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法である。
【0011】従来から知られているような、軟質相とし
てのα相を生成させて一様伸びを向上させる方法では、
その製造方法は複雑な工程を通らざるを得ない。従っ
て、生産性が高く、簡便な製造方法とするためには、α
相を生成させずに一様伸びを向上させる方法の確立が必
要となる。本発明者らはこの観点から一様伸びの改善方
法の研究に取り組み、冷却変態において、初析αをほと
んど生成せずにベイナイト主体の変態を生じた場合でも
ベイナイト変態後の冷却条件を適正化してCの存在状態
を制御することにより良好な一様伸び特性を得ることが
可能であることを見い出した。
【0012】ベイナイト主体組織の一様伸び向上には従
来のα+硬質相組織鋼での改善方法と同様にマトリクス
の一様伸び特性改善が必要である。そして、マトリクス
の一様伸び特性に対しては、Cの存在状態が複雑に影響
する。C量の低減等によって固溶C量を低減できれば一
様伸び特性は向上可能であるが、実用鋼では一定量以上
のCを含有することは不可避であり、また、ベイナイト
変態組織では変態温度が低くなるため、マトリクス中の
固溶Cを一様伸びの向上に有効な程度に低減することは
通常の製造方法におていは容易ではない。そこで固溶C
をセメンタイトとして析出させることが必要である。
【0013】しかし、セメンタイトの析出形態は多様で
あり、その析出形態によって一様伸びは大きく変化す
る。本発明者らがCの固溶、析出形態と一様伸び特性を
詳細に検討した結果、一様伸びを最も劣化させるのは、
マトリクス内にセメンタイトが微細に析出する場合であ
ることが判明した。即ち、マトリクス中に微細にセメン
タイトが析出するとマトリクスの変形能が極端に低下す
る。従って、このような析出形態を回避することにより
一様伸び特性を向上させることが可能となる。
【0014】マトリクス内のセメンタイトの微細析出は
450℃程度以下の低温での焼戻しあるいはこの温度域
に保持あるいは徐冷することにより顕著に生じるが、通
常の製造条件においては、ベイナイト変態する高強度鋼
ではこの温度域以上でのCの析出が抑制されるため、わ
ずかではあっても、マトリクス内のセメンタイトの微細
析出が生じていて一様伸びを劣化させる。そこで、この
セメンタイトの微細析出を回避して良好な一様伸びを得
るための最適な製造条件を検討した結果、冷却変態させ
る場合において、変態後、温度が比較的高い間にセメン
タイトを粒界に粗大に析出させて固溶Cを極力低減した
上で、マトリクス内で微細析出しやすい温度域を急冷す
ることにより一様伸び特性が改善する方法が好ましいと
の結論に至った。この方法では若干量の固溶Cが残存す
るが、マトリクス内にセメンタイトが微細に析出する場
合に比べて一様伸びへの悪影響は小さくなる。
【0015】具体的な条件としては、熱間圧延後の冷却
において、靭性を劣化させる粗大な組織を形成せず、強
度確保に必要なベイナイト主体組織とする必要から60
0〜500℃の温度範囲までは5℃/s以上の冷却速度で
強制冷却する必要がある。強制冷却を600℃超の温度
で停止すると粗大組織の形成を抑制できず、また初析α
の量も増加するため、強度、靭性確保が困難となる。一
方、この強制冷却停止温度が500℃未満であると、引
き続き行う徐冷過程で、一様伸び特性に悪影響の大きい
微細セメンタイトの析出を抑制することが不十分となる
ため、γ域からの強制冷却を停止する温度は600〜5
00℃の温度範囲とする必要がある。
【0016】強制冷却を停止した後は放冷以下の冷却速
度で徐冷することによって、強制冷却によって過飽和に
固溶しているCを粒界に粗大に析出させて、一様伸び特
性に対する悪影響を除く。この徐冷によってもわずかに
はCは固溶Cとして残り、そのまま冷却して温度が低下
した状態ではマトリクス内に微細に析出する可能性が高
いため、微細セメンタイトの析出の恐れのある温度域は
さらに急冷する必要があるが、その強制冷却開始温度は
450〜400℃の温度範囲が適当である。
【0017】その場合の冷却速度は微細析出を抑制する
に十分な速度として5℃/s以上必要である。この低温で
の強制冷却は鋼板温度が200℃以下になるまで継続し
て行う必要があるが、200℃未満になればCの拡散速
度が顕著に小さくなり、セメンタイト析出の恐れがなく
なるため、200℃未満の強制冷却は必須ではない。た
だし、低温でも長時間保持されるような場合は微細析出
を生じる可能性があるため、200℃未満の温度域も放
冷程度の冷却速度で冷却することが好ましい。
【0018】以上が、本発明において、課題を解決する
ために最も重要な要件についての説明であるが、安定し
て一様伸び特性を向上させ、その他の材質特性も劣化さ
せないためには、上記の変態及び変態後の冷却に関わる
部分以外に、変態前の加熱、熱間圧延条件も併せて規制
すべきである。即ち、変態前のγが粗大であると、変態
後の組織も粗大となるため、強度低下や靭性劣化を生じ
る。また、一様伸び特性に対しても粗大組織よりも微細
組織の方が有利である。従って、変態後の組織の微細化
を目的として、加熱及び熱間圧延条件を以下のように限
定する必要がある。
【0019】鋼片の加熱温度はAc3 変態点以上115
0℃以下とする。加熱温度がAc3変態点未満である
と、溶体化が十分でなく、未変態のα組織が残存するた
め、強度確保が困難となり、また最終的な組織の不均一
性が大きくなるために靭性劣化の恐れも大きい。逆に、
加熱温度が1150℃を超えると、TiやNbを含有し
ていない鋼では加熱γ粒径が極端に粗大となり、その後
の熱間圧延によっても微細化が困難となるため、鋼の化
学成分によらず変態前のγ微細化を達成し、結果として
最終的な変態後の組織を微細化するためには加熱温度の
上限としては1150℃とする必要がある。
【0020】以上のように、加熱時のγ粒の状態を適正
化した上で、熱間圧延を行うが、最終的な組織を微細化
するために、再結晶温度域での圧延に引き続き、未再結
晶温度域での圧延を行い、γを展伸させることによる変
態組織の微細化も図る必要があるが、その効果を明確に
発揮させるためには未再結晶温度域の圧下率は30%以
上とする必要がある。
【0021】
【作用】以上が製造方法に関する本発明の限定理由であ
るが、強度、延性、低温靭性等、所望の材質を確保する
ためには製造方法だけでなく、化学成分も適正範囲内と
する必要がある。以下に、本発明における化学成分の限
定理由を述べる。先ず、Cは鋼の強度を向上させる有効
な成分として添加するもので、0.01%未満では構造
用鋼に必要な強度の確保が困難であり、また、0.20
%を超える過剰の添加は一様伸び及び靭性、さらに耐溶
接割れ性等を著しく低下させるので0.01〜0.20
%の範囲とした。
【0022】次に、Siは脱炭元素として、また、母材
の強度確保に有効な元素である。また、延性向上に有効
であるため0.20%以上添加させる必要がある。逆に
1.5%を超える過剰の添加は粗大な酸化物を形成して
延性や靭性劣化を招く。そこで、Siの範囲は0.20
〜1.5%とした。また、Mnは母材の強度、靭性の確
保に必要な元素であり、最低限0.30%以上添加する
必要があるが、溶接部の靭性、割れ性等材質上許容でき
る範囲で上限を2.5%とした。
【0023】Alは脱酸、γ粒径の微細化等に有効な元
素であり、効果を発揮するためには0.005%以上含
有する必要があるが、0.1%を超えて過剰に添加する
と、粗大な酸化物を形成して延性を極端に劣化させるた
め、0.005〜1.0%の範囲に限定する必要があ
る。NはAlやTiと結びついてγ粒微細化に有効に働
くが、強度、靭性向上に有効であるが、その効果が明確
になるためには0.001%以上含有させる必要があ
る。一方、過剰に添加すると固溶Nが増加して靭性や延
性に悪影響を及ぼす。許容できる範囲として上限を0.
01%とする。
【0024】以上が本発明鋼の基本成分であるが、所望
の強度レベルに応じて母材強度の上昇の目的で、必要に
応じてCr,Ni,Mo,Cu,Ti,V,Nb,Bの
1種または2種以上を含有することができる。即ち、板
厚がそれほど大きくない引張強度が70kgf/mm2 程度以
下の鋼において基本成分で所望の強度を達成することも
可能であるが、板厚の大きい鋼あるいは引張強度が80
kgf/mm2 級の鋼の場合はCr,Ni,Mo,Cu,T
i,V,Nb,Bの1種または2種以上を適宜含有する
ことにより強度確保を計る必要がある。また、Ni,C
uは強度向上以外に靭性向上を目的としても添加する。
【0025】先ず、Cr及びMoはいずれも母材の強度
向上に有効な元素であるが、明瞭な効果を生じるために
は0.01%以上必要であり、一方、1.0%を超えて
添加すると、靭性が劣化する傾向を有するため、0.0
1〜1.0%の範囲とする。またNiは母材の強度と靭
性を同時に向上でき、非常に有効な元素であるが、効果
を発揮させるためには0.01%以上含有させる必要が
ある。含有量が多くなると強度、靭性は向上するが3.
0%を超えて添加しても効果が飽和するため、経済性を
考慮して、上限を3.0%とする。
【0026】次に、CuもほぼNiと同様の効果を有す
るが、1.5%超の添加では熱間加工性に問題を生じる
ため、0.01〜1.5%の範囲に限定する。Tiは析
出強化により母材強度向上に寄与するとともに、TiN
の形成によりγ粒微細化にも有効な元素であるが、効果
を発揮できるためには0.003%以上の添加が必要で
ある。一方、0.10%を超えると、Alと同様、粗大
な酸化物を形成して靭性や延性を劣化させるため、上限
を0.10%とする。
【0027】V及びNbはいずれも主として析出強化に
より母材の強度向上に寄与するが、過剰の添加で延性や
靭性が劣化する。従って、延性、靭性の劣化を招かず
に、効果を発揮できる範囲として、Vは0.005〜
0.20%、Nbは0.003〜0.05%とする。B
は0.0003%以上のごく微量添加で鋼材の焼入れ性
を高めて強度上昇に非常に有効であるが、過剰に添加す
るとBNを形成して、逆に焼入れ性を落としたり、靭性
を大きく劣化させるため、上限を0.0020%とす
る。
【0028】以上の、個々の化学成分の限定に加えて、
鋼材の強度調整、材質確保のために、(1)式あるいは
(2)式で示される炭素当量を限定する必要がある。即
ち、本発明の方法では軟質なα相を生成させる必要はな
いが、この場合でも60kgf/mm2 級鋼としての強度を確
保するためにはCeq.を0.30%以上とする必要があ
る。一方、炭素当量を高めれば高強度化するが、C,S
i,Mnだけで強度を確保しようとする場合は、靭性及
び溶接性を損なわないために、(1)式の炭素当量を
0.60%以下とすべきである。また、Cr,Ni,M
o,Cu,Ti,V,Nb,Bも含めて強度調整する場
合はC,Si,Mnだけで強度確保する場合に比べて溶
接性や靭性の確保は容易となるため炭素当量の上限は
0.70%まで許容できる。
【0029】
【実施例】実施例に用いた供試鋼の化学成分を表1に示
す。本発明の化学成分を有する鋼A〜鋼Gと、本発明の
化学成分範囲を逸脱している鋼H〜鋼Jにおいて表2に
示す製造条件により鋼板を製造し、機械的性質を調査し
た。板厚12mmの鋼板については板厚中心部より、それ
以外は板厚の1/4の位置より試験片を採取した。採取
方向のいずれも熱間圧延方向に平行な方向とした(L方
向)。機械試験結果も表2に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】試験番号1〜9(以降、発明法1〜9)は
本発明により製造したものであり、試験番号10〜15
(以降、比較法10〜15)は本発明のいずれかの要件
を満足していない。表2の機械的性質から明らかなよう
に、本発明による発明法1〜9はいずれも60kgf/mm2
以上の引張強度とほぼ80%以下の低降伏比と10%以
上の優れた一様伸びを有している。一方、本発明の要件
を満足していない比較法10は低温での急冷を行ってい
ないため、一様伸びが劣る。
【0034】また、比較法11は常温近くまで強制冷却
した後、焼戻し処理を行った場合であるが、降伏比が高
い上に一様伸びも低い。比較法12は2回にわたる強制
冷却の温度域が適正範囲をはずれているため、やはり一
様伸びが劣る。比較法13は炭素当量が低いため、強度
が低い。この場合、変態温度が比較的高く、組織がα主
体の組織となり、高温でセメンタイト析出が生じるた
め、変態後の冷却を制御しても、強度が低い割に一様伸
びはあまり改善されない。比較法14はC量が過剰なた
め、一様伸びの改善が認められず、靭性も極端に劣化す
る。比較法15の場合は炭素当量が極端に高く、変態温
度が低くなるため、圧延後の冷却条件を制御してもCの
析出挙動が好ましい形態にならず、一様伸びが改善され
ない。以上の実施例から、本発明により優れた一様伸び
特性を有する低降伏比高張力鋼板を製造することが可能
であることが明らかである。
【0035】
【発明の効果】本発明は、高価な合金元素を用いたり、
複雑な熱履歴により生産性を低下させることなく、低降
伏比かつ一様伸び特性の良好な厚鋼板を製造できる画期
的な方法であり、製造コストの低減、構造物としての安
全性の向上等、産業上の効果は極めて大きい。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.01〜0.20%、 Si:0.20〜
    1.5%、 Mn:0.30〜2.5%、 Al:0.005〜
    0.1%、 N :0.001〜0.01%を含有し、以下の(1)
    式で示す炭素当量(Ceq.)が0.30〜0.60%
    で、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼片をAc3
    態点以上、1150℃以下の温度に加熱し、オーステナ
    イトの再結晶域圧延に続く未再結晶域の圧延の累積圧下
    率が30%以上の圧延を行った後、5℃/s以上の冷却速
    度で600〜500℃の温度範囲まで第1の強制冷却を
    行った後、放冷以下の冷却速度で冷却し、さらに450
    〜400℃の温度範囲から5℃/s以上の冷却速度で20
    0℃以下まで第2の強制冷却を行うことを特徴とする一
    様伸びの優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。 Ceq.=C%+(Mn%/6) …………………………(1)
  2. 【請求項2】 重量%で、 C :0.01〜0.20%、 Si:0.20〜
    1.5%、 Mn:0.30〜2.5%、 Al:0.005〜
    0.1%、 N :0.001〜0.01%を含有し、さらに、 Cr:0.01〜1.0%、 Ni:0.01〜
    3.0%、 Mo:0.01〜1.0%、 Cu:0.01〜
    1.5%、 Ti:0.003〜0.10%、 V :0.005〜
    0.20%、 Nb:0.003〜0.05%、 B :0.0003
    〜0.0020%の1種または2種以上を含有し、
    (2)式で示す炭素当量(Ceq.)が0.30〜0.7
    0%で、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼片Ac3
    変態点以上、1150℃以下の温度に加熱し、オーステ
    ナイトの再結晶域圧延に続く未再結晶域の圧延の累積圧
    下率が30%以上の圧延を行った後、5℃/s以上の冷却
    速度で600〜500℃の温度範囲まで第1の強制冷却
    を行った後、放冷以下の冷却速度で冷却し、さらに45
    0〜400℃の温度範囲から5℃/s以上の冷却速度で2
    00℃以下まで第2の強制冷却を行うことを特徴とする
    一様伸びの優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。 Ceq.=C%+(Mn%/6)+{(Cu%+Ni%)/15} +{(Cr%+Mo%+V%)/5} ……………(2)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003105439A (ja) * 2001-10-01 2003-04-09 Kawasaki Steel Corp 低温用低降伏比鋼材およびその製造方法
JP2017197787A (ja) * 2016-04-25 2017-11-02 新日鐵住金株式会社 延性に優れた高張力厚鋼板及びその製造方法
KR20210022416A (ko) * 2019-08-20 2021-03-03 동국제강주식회사 항복강도 620MPa급 이상의 내진철근의 제조방법 및 이 제조방법으로 제조된 항복강도 620MPa급 이상의 내진철근
CN114411061A (zh) * 2022-01-14 2022-04-29 宝武集团鄂城钢铁有限公司 一种高强度抗震钢筋及其制备方法

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