JPH10170476A - 電気化学素子の製造方法 - Google Patents

電気化学素子の製造方法

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JPH10170476A
JPH10170476A JP8328124A JP32812496A JPH10170476A JP H10170476 A JPH10170476 A JP H10170476A JP 8328124 A JP8328124 A JP 8328124A JP 32812496 A JP32812496 A JP 32812496A JP H10170476 A JPH10170476 A JP H10170476A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 雰囲気中の酸素濃度を測定する限界電流式酸
素センサなどの電気化学素子の製造方法に関し、白金電
極膜の耐久信頼性を向上させたものである。 【解決手段】 1は酸化イットリウム8モル%とジルコ
ニア92モル%からなるジルコニア焼結板であり、その
表面に白金電極膜2a、2bが形成されている。白金電
極膜2a、2bは、小量の酸化ビスマス3と微小量の酸
化カドミニウム4からなる結合材を白金5に混合してお
り、厚膜印刷したのち700〜1100℃で焼成した。
白金電極膜は、混合された酸化ビスマス量をBとし酸化
カドミニウム量をCとしその混合比をC/Bとすると、
1.5wt%≦B≦5wt%でしかも0.1≦C/B≦1な
る条件を満足する組成である。材料組成と焼成温度の最
適化で、熱膨張係数の相違や材質変化が原因による酸素
イオン導電性と密着性の低下が減少し、白金電極膜2
a、2bは優れた耐久性を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、雰囲気中の酸素濃
度を測定する限界電流式酸素センサなどの電気化学素子
の製造方法に関し、電極の耐久信頼性を向上させたもの
である。
【0002】
【従来の技術】濃淡電池式酸素センサまたは限界電流式
酸素センサなどの電気化学素子として、特開平5−99
894号公報に記載されているものがある。この電気化
学素子は図14に示されているように、3価以下の金属
またはその酸化物を0.05〜10.0wt%含有する固
体電解質体16と、3価以下の金属またはその酸化物を
0.05〜10.0wt%含有する電極層15a、15b
を積層し、得られた積層体を酸化性雰囲気中において焼
成し、固体電解質体16と電極層15a、15bとを接
合した構成である。そして3価以下の金属として、銅、
ビスマス、亜鉛、カドミニウムから選択された少なくと
も一種を使用することが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来例の電気化学素子
は、上記材料組成の固体電解質体16に、上記材料組成
の電極層15a、15bを積層したものであり、使用初
期における両者の接合強度が向上される利点がある。し
かしながら、熱膨張係数、酸素イオン導電性、材質変化
を考慮した材料組成と製法になっていないため、耐久性
が不安定である課題があった。
【0004】以下、その理由を具体的に説明する。従来
例に記載された固体電解質体16は、酸化銅および酸化
ビスマスをそれぞれ2wt%ずつ含む酸化イットリウム系
ジルコニア、銅およびビスマスをそれぞれ1wt%ずつ含
む酸化イットリウム系ジルコニアである。この材料組成
の固体電解質体16は、優れた耐久性の材料として多く
の文献等で紹介されている安定化ジルコニア(酸化イッ
トリウム8モル%とジルコニア92モル%からなる)と
は、材料組成や熱膨張係数、酸素イオン導電性が異な
る。さて、酸化ビスマスは材質変化を起こし易くその酸
素イオン導電性が低下する欠点を有する。従って、この
固体電解質体16は、酸化ビスマスを有する材料組成の
特殊性から材質変化を起こして酸素イオン導電性が低下
し易く、耐久信頼性が不安定である課題があった。同様
に、銅、ビスマス、亜鉛、カドミニウムから選択された
少なくとも一種の金属またはその酸化物を一元的に0.
05〜10.0重量%含有する材料組成の固体電解質体
16も、前記理由から材質変化が起こりその耐久性が不
安定になる課題があった。この様に従来例の固体電解質
体16を用いた電気化学素子は、耐久性が不安定となる
課題があった。
【0005】さてここで、耐久性に優れた材料である安
定化ジルコニアに、従来例に記載された酸化銅および酸
化ビスマスをそれぞれ最大量の10wt%ずつ含む白金電
極層15a、15bを積層し、酸化性雰囲気中において
焼成して接合することを試みてみる。この構成品は、白
金電極層15a、15bの熱膨張係数が安定化ジルコニ
アとは大きく異なるため、熱膨張係数の違いから白金電
極層15a、15bが徐々に剥離して耐久性が不安定と
なる課題があった。同様に銅、ビスマス、亜鉛、カドミ
ニウムから選択された少なくとも一種の金属またはその
酸化物を一元的に0.05〜10.0wt%含有する材料
組成の電極層15a、15bも、安定化ジルコニアとの
熱膨張係数の一致を考慮した材料組成でないため、ただ
単に積層しても熱膨張係数の違いが原因で割れたり剥離
や密着性低下が起こり耐久性が不安定になる課題があっ
た。
【0006】一方、酸素イオン導電性のある材料は酸化
ビスマスだけであり、他材料は酸素イオン導電性がまっ
たく無い。従って、他材料を単独で使用しても酸素イオ
ン導電性のある白金電極膜は得られず、酸素イオン導電
性のある白金電極膜を得るには酸化ビスマスが必ず必要
である。酸化ビスマスは、酸素イオン導電性に優れる
が、熱膨張係数が14×10ー6(degー1)もあり白金
の9×10ー6(degー1),安定化ジルコニアの10×
10ー6(degー1)と比べてその値が約1.4倍大き
い。しかも、使用中に材質変化が起こって酸素イオン導
電性および密着性が低下するし、焼成温度が最適でない
と酸素イオン導電性および密着性が大きく低下する欠点
がある。一方、酸化カドミニウムは、酸素イオン導電性
がほとんどなく熱膨張係数が12×10ー6(degー1
で白金や安定化ジルコニアより1.2倍大きい。従っ
て、この金属酸化物を含有させた白金電極層を安定化ジ
ルコニア焼結板に形成し、その耐久信頼性を確保するた
めには、安定化ジルコニア焼結板との熱膨張係数の一致
や酸素イオン導電性、材質変化を考慮した最適な材料組
成と製造方法が必要であり、これが最適でないとジルコ
ニアの割れや酸素イオン導電性、密着性の低下が起こっ
て、耐久性が不安定になる課題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、酸化イットリウム8モル%とジルコニア9
2モル%からなる安定化ジルコニア焼結板(以下、ジル
コニア焼結板と記す)の表面に、白金に酸化ビスマスと
酸化カドミニウムを混合したペースト膜を700〜11
00℃で焼成して得た白金電極膜を少なくとも一対形成
し、前記白金電極膜に混合された酸化ビスマス量をBと
し、酸化カドミニウム量をCとし、その混合比をC/B
とすると、1.5wt%≦B≦5wt%でしかも0.1≦C
/B≦1なる条件を満足する電極膜組成としたものであ
る。
【0008】上記発明によれば白金電極膜は、酸素イオ
ン導電性に優れた酸化ビスマスが混合されているため、
優れた酸素イオン導電特性が得られる。しかも、ジルコ
ニアと比べて熱膨張係数が0.9倍の白金に、熱膨張係
数が1.4倍の酸化ビスマスと熱膨張係数が1.2倍の
酸化カドミニウムを小量づつ混合した白金電極膜組成と
している。そのため、白金電極膜の熱膨張係数がジルコ
ニア焼結板の熱膨張係数と概略同じとなり、熱膨張係数
の違いが原因による電極膜の剥離が減少しその耐久信頼
性が向上する。
【0009】また上記発明によれば電極膜は、融点17
00℃の白金に融点820℃の酸化ビスマスと融点70
0℃の酸化カドミニウムを小量づつ混合した組成であ
り、700〜1100℃で焼成している。そのため、材
質変化が起こりにくい酸素イオン導電性に優れた酸化ビ
スマス・酸化カドミニウム複合酸化物系結合材(以下、
複合酸化物系結合材と記す)が生成して、材質変化が原
因による酸素イオン導電性と密着性の低下が減少し、そ
の耐久信頼性がより向上する。
【0010】さらに上記発明によれば、上記のごとく材
料組成とその製造方法を最適化しているため、複合酸化
物系結合材を介して白金がジルコニアが良好に密着して
その接触面積が大きくなり、前記接触面積減少が原因に
よる電極膜劣化が少なくなり密着性向上で耐久信頼性が
一層向上する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、ジルコニア焼結板の表
面に、白金に酸化ビスマスと酸化カドミニウムを混合し
たペースト膜を700〜1100℃で焼成して得た白金
電極膜を少なくとも一対形成し、前記白金電極膜に混合
された酸化ビスマス量をBとし、酸化カドミニウム量を
Cとし、その混合比をC/Bとすると、1.5%≦B≦
5wt%でしかも0.1≦C/B≦1なる条件を満足する
電極膜組成としたものである。
【0012】そして白金電極膜は、酸素イオン導電性に
優れた酸化ビスマスが混合されているため、優れた酸素
イオン導電特性が得られる。しかも、白金電極膜の熱膨
張係数がジルコニア焼結板の熱膨張係数と概略同じとな
る組成配合としたため、熱膨張係数の違いが原因による
剥離が減少して電極膜の耐久信頼性が向上する。また焼
成温度の最適化で、材質変化が起こりにくい複合酸化物
系結合材が生成し、材質変化が原因による酸素イオン導
電性と密着性低下が減少して電極膜の耐久信頼性がより
向上する。さらに組成と焼成温度の最適化で、良好に密
着してその接触面積が大きくなり、前記接触面積減少が
原因による劣化が少なくなり密着性向上で電極膜の耐久
信頼性が一層向上する。
【0013】また本発明は、白金電極膜を両面に形成し
たジルコニア焼結板と、片側の前記白金電極膜を囲んで
配置された酸素拡散孔形成用の硝子製螺旋型スペーサ膜
と、前記螺旋型スペーサ膜の上部に積層したフォルステ
ライト焼結板から構成される限界電流式酸素センサであ
り、前記白金電極膜を焼成して形成した後に、前記螺旋
型スペーサ膜を焼成して酸素拡散孔を形成し、前記螺旋
型スペーサ膜の硝子が下記の(a)(b)の条件を同時
に満足する組成としたものである。(a)螺旋型スペー
サ膜の焼成温度が700〜1100℃なる条件、(b)
熱膨張係数をβ×10ー6(degー1)とすると、9≦β
≦11なる条件。
【0014】そして、螺旋型スペーサ膜の硝子焼成温度
上限1100℃は、白金電極膜の焼成温度上限と同じで
ある。そのためこの1100℃以下の螺旋型スペーサ膜
焼成は、白金電極膜の酸素イオン導電特性と密着性に悪
影響を及ぼさない。従って、この限界電流式酸素センサ
の白金電極膜は、優れた酸素イオン導電特性と密着性を
示す。また、螺旋型スペーサ膜の硝子焼成温度下限70
0℃は、白金電極膜の焼成温度下限と同じである。その
ためこの700℃以上の焼成は、白金電極膜と螺旋型ス
ペーサ膜を両者の積層部でお互いに溶融させて強固に密
着させ、この積層部のガス気密性に悪影響を及ぼさな
い。さらに螺旋型スペーサ膜の熱膨張係数を、ジルコニ
ア焼結板や白金電極膜・フォルステライト焼結板と概略
同じの9〜11×10ー6(degー1)としたため、熱膨
張係数の違いが原因によるこれら3種の材料の剥離が発
生しない。従って、これら3種の材料で形成される酸素
拡散孔は、剥離発生がなく優れた耐久信頼性を示す。
【0015】また本発明は、白金に硝子を1〜5wt%混
合した組成のリード線固定材用ペーストを、塗布し60
0〜730℃で焼成して、白金電極膜にリード線を固定
した。そして硝子を1〜5wt%混合することで、白金電
極膜中の複合酸化物系結合材と結合力が高まり、電気導
通性を維持しつつリード線を強固に固定できる。焼成温
度上限730℃は、白金電極膜に混合した複合酸化物系
結合材の結晶構造が大きく変化して酸素イオン導電特性
が大きく変化し始める温度である。そのため730℃以
下の焼成は、複合酸化物系結合材の結晶構造が変化する
ことがなく、既に形成した白金電極膜の酸素イオン導電
特性に悪影響を及ぼさない。また焼成温度下限600℃
は、白金電極膜中の複合酸化物系結合材が軟化し始め、
これにともない硝子との結合力が高まりリード線固定が
可能になり始める温度である。そのため600℃以上の
焼成は、動作中にリード線が外れることがなく、電気化
学素子の耐久信頼性に悪影響を及ぼさない。
【0016】また本発明は、限界電流式酸素センサに用
いる螺旋型スペーサ膜が、酸化アルミナが3〜7wt%、
酸化ホウソが3〜7wt%、酸化カルシウムが1〜2wt
%、酸化ストロンチウムが4〜6wt%、酸化バリウムが
0.2〜1.5wt%、酸化ナトリウムが10〜13wt
%、酸化カリウムが4〜8wt%、酸化チタンが6〜9wt
%、残部が酸化珪素である硝子としたものである。そし
てこの硝子組成にすることで、焼成温度が770〜95
0℃で熱膨張係数が9〜10×10ー6(degー1)の螺
旋型スペーサ膜となる。このため、螺旋型スペーサ膜の
焼成温度と熱膨張係数が原因による白金電極膜と酸素拡
散孔の耐久性低下が減少し、しかもジルコニア焼結板と
フォルステライト焼結板とを強固に密着して良好なガス
気密性を維持し、限界電流式酸素センサは優れた耐久性
を示す。
【0017】また本発明は、螺旋型スペーサ膜の焼成温
度をTsとし、白金電極膜の焼成温度をTpとすると、
700℃≦Ts≦Tpなる条件を満足する製法とした。
そして螺旋型スペーサ膜の焼成温度Tsは、白金電極膜
の焼成温度Tpと同じか、もしくはそれ以下で700℃
以上である。そのため、螺旋型スペーサ膜の硝子焼成が
原因による白金電極膜の過焼成とこれにともなう耐久性
低下が減少し、限界電流式酸素センサの白金電極膜は優
れた耐久性を示す。
【0018】以下、本発明の実施例を添付図面に基づい
て説明する。(実施例1)図1は、本発明の実施例1で
ある電気化学素子の断面図である。1は酸化イットリウ
ム8モル%とジルコニア92モル%からなる安定化ジル
コニア焼結板であり、その表面に白金電極膜2a、2b
が形成されている。白金電極膜2a、2bは、小量の酸
化ビスマス3と微小量の酸化カドミニウム4からなる結
合材を白金5に混合しており、厚膜印刷したのち700
〜1100℃で焼成してジルコニア焼結板1の表面に形
成した。
【0019】白金電極膜の組成は、混合された酸化ビス
マス量をBとし、酸化カドミニウム量をCとし、その混
合比をC/Bとすると、1.5wt%≦B≦5wt%でしか
も0.1≦C/B≦1なる条件を満足する電極膜であ
る。
【0020】リード線10a、10bは白金線であり、
白金と硝子1〜5wt%との混合物であるリード線固定材
11a、11bを塗布し600〜730℃で焼成して、
白金電極膜2a、2bに固定されている。
【0021】この電気化学素子は、動作温度が300〜
550℃である。本発明の効果を比較例と対比させて確
認した。
【0022】ジルコニア焼結板1として、安定化ジルコ
ニア(ZrO2の92モル%とY2 3の8モル%の固溶
体)の粉末に有機溶剤を混合してシート状に成型した乾
燥品を1400℃で4時間焼成し、10mm角に切断し
た板を準備した。
【0023】白金として、その粒度分布の大半が0.0
7〜0.7μmである微細粉末品を準備した。白金電極
膜用ペーストとして、白金96wt%と酸化ビスマス3wt
%と酸化カドミニウム1wt%と高粘性有機溶剤19wt%
の混合物を準備した。
【0024】このジルコニア焼結板の両面に白金電極膜
用ペーストを厚膜印刷し、乾燥後920℃で10分焼成
した。この焼成により有機溶剤が除去されて、電極膜は
白金96wt%と酸化ビスマス3wt%と酸化カドミニウム
1wt%の混合膜となる。しかも酸化ビスマスと酸化カド
ミニウムの溶融により酸化ビスマス、酸化カドミニウム
複合酸化物系結合材が生成し、白金がジルコニア焼結板
に強固に密着固定された。また溶融時に複合酸化物系結
合材が体積膨張し、白金電極膜は多孔質な膜となった。
【0025】この白金電極膜に、白金と硝子2%wtとの
混合物であるリード線固定材を塗布し、700℃で焼成
してリード線を付けた。そして、500℃で酸素20%
の雰囲気中に放置し、直流電圧0.5V印加における電
流の過渡特性を評価した結果を図2に示す。
【0026】本発明品は、時間とともに電流が少ししか
変化せずしかも密着性も良好で優れた耐久性を示す。こ
の優れた耐久性は、次の3つの効果のためである。
【0027】一つ目は、熱膨張の緩和効果である。熱膨
張係数が、酸化ビスマスは14×10ー6(degー1)、
酸化カドミニウムは約12×10ー6(degー1)もあ
り、これら化合物は、白金の9×10ー6(degー1)や
ジルコニアの10×10ー6(degー1)と比べてその値
が大きい。白金電極膜は、熱膨張の緩和を図るため、熱
膨張係数の小さい白金96wt%に、熱膨張係数の大きい
酸化ビスマスを3wt%と、熱膨張係数のやや大きい酸化
カドミニウムをさらに1wt%混合した組成である。その
ため、白金電極膜の熱膨張係数がジルコニアの熱膨張係
数よりわずかに大きい程度となり、熱膨張係数の違いが
原因による電極膜の剥離が減少してその耐久信頼性が向
上する。
【0028】2つ目は、結合材の材質変化を低減する効
果である。酸化ビスマスは融点820℃で酸素イオン導
電性に優れるが、経時変化して材質変化が起こりその密
着性が低下する性質がある。酸化カドミニウムは融点7
00℃である。本発明品は、両材料を920℃で焼成し
ているため、酸化ビスマス、酸化カドミニウム複合酸化
物が生成する。しかも、この複合酸化物系結合材は酸素
イオン導電性が高くしかもその材質変化が小さいため、
酸素イオン導電性と密着性の低下が少ない。従って、材
質変化が原因による電極膜劣化が減少してその耐久信頼
性が向上する。
【0029】3つ目は、接触面積の減少を低減する効果
である。上記のごとく材料組成とその製造方法を最適化
しているため、複合酸化物系結合材は体積膨張して多孔
質な膜となりジルコニアに充分に密着してその接触面積
が大きくなる。従って、前記接触面積減少が原因による
電極膜劣化が低減されその耐久信頼性が向上する。
【0030】さて、本発明品は、白金に硝子を1〜5wt
%混合した組成のリード線固定材用ペーストを、塗布し
600〜730℃で焼成して、白金電極膜にリード線を
固定した。リード線固定材の硝子は、白金電極膜中の複
合酸化物系結合材との親和結合力が強いため、リード線
が電極膜に強固に固定されて外れることがない理由で使
用した。硝子の混合量は、電気導通性と密着性の兼ね合
いから1〜5wt%好ましくは2〜3wt%が最適であり、
1wt%未満は密着しないため不適格、5wt%を超えると
電気導通性がないため不適格であった。焼成温度上限の
730℃は、白金電極膜中の複合酸化物の結晶構造が大
きく変化して酸素イオン導電特性が大きく変化し始める
温度である。そのため730℃以下の焼成は、この焼成
中に複合酸化物の結晶構造が変化することがなく、既に
形成した白金電極膜の酸素イオン導電特性に悪影響を及
ぼさない。また焼成温度下限600℃は、白金電極膜中
の複合酸化物系結合材が軟化し始め、これにともない硝
子との結合力が高まりリード線固定が可能になり始める
温度である。そのため600℃以上の焼成は、動作中に
リード線が外れることがなく、電気化学素子の耐久信頼
性に悪影響を及ぼさない。以上のことより、焼成温度は
600〜730℃が最適であり、730℃を超えた焼成
は既に形成した白金電極膜の酸素イオン導電特性が大き
く変化するため不適格、600℃未満の焼成は白金電極
膜と硝子が密着しないため動作中にリード線が外れ不適
格であった。
【0031】参考のため下記の比較例A、比較例B、比
較例C、比較例Dを試作し、上記測定条件における電流
の過渡特性と電極膜の密着性を評価した。
【0032】比較例Aは、白金97wt%と酸化ビスマス
3wt%の混合物の電極膜である。この混合電極膜は、ジ
ルコニア焼結板に電極膜用ペースト(白金と酸化ビスマ
スと有機溶剤の混合物)を厚膜印刷し乾燥後920℃で
10分焼成した白金電極膜であり、焼成後の電極膜組成
が白金97wt%と酸化ビスマス3wt%の混合物となって
いる。比較例Aは、時間とともに電流が低下ししかも密
着不良が発生して電極膜として不適格である。その理由
は結合材として用いた酸化ビスマスが電場により材質変
化し、酸素イオン導電性と密着性が低下するためであ
る。
【0033】比較例Bは、酸化ビスマスの上部に白金を
積層した電極膜である。この積層電極膜は、ジルコニア
焼結板に酸化ビスマスをスパッタして酸化ビスマス層を
形成しさらにその上部に白金をスパッタして白金層を積
層した電極膜である。時間とともに電流が低下ししかも
剥離が生じるため電極膜として不適格である。その理由
は、熱膨張係数がほぼ等しい白金層とジルコニア焼結板
の間に、熱膨張係数が1.4倍の酸化ビスマス層を全面
に渡って介在させたため、熱膨張係数の違いから耐久試
験中に徐々に3層の剥離が生じ、酸素がうまく3層間を
伝達しないためである。
【0034】比較例Cは、白金100wt%の電極膜であ
る。この電極膜は、ジルコニア焼結板に電極膜用ペース
ト(白金と有機溶剤の混合物)を厚膜印刷し乾燥後92
0℃で10分焼成した白金電極膜であり、焼成後の電極
膜組成は白金100wt%となっている。初期電流が極端
に小さく密着性がないため電極膜としては不適格であ
る。その理由は、結合材として酸化ビスマスが使用され
ていないため、白金粉末とジルコニア焼結板の接触状態
が悪くしかも両者の接触面積が極端に小さいため、酸素
がうまく伝達しないためである。
【0035】比較例Dは、白金97wt%と酸化カドミニ
ウム3wt%を混合物した電極膜であるが、比較例Cと同
じで初期電流が極端に小さかった。この電流は、酸化カ
ドミニウムの電子電導に関わる電流であり、酸素イオン
導電に関わる電流ではない。また、耐久試験中に徐々に
密着性が低下してやがて密着性がなくなるため、電極膜
としては不適格である。
【0036】以上の結果をもとにして白金電極膜の適否
を、密着性が良好な電極膜を適正、密着性が悪い電極膜
を不適格とした。これは本発明の白金電極膜は、密着性
が良好な電極膜は酸素イオン導電性に優れるため電流が
大きく耐久性が良好であること、密着性が悪い電極膜は
酸素イオン導電性が小さいため電流が小さく耐久性が悪
いことが、上記実験結果から導き出されたためである。
【0037】本発明の効果を、焼成温度を変化させた白
金電極膜で確認した。まず、白金96wt%と酸化ビスマ
ス3wt%と酸化カドミニウム1wt%と高粘性の有機溶剤
19wt%の混合物からなる白金電極膜用ペーストを準備
した。そして、ジルコニア焼結板の両面に白金電極膜用
ペーストを厚膜印刷し、乾燥後その焼成温度を変化させ
た白金電極膜を得た。焼成時間は10分である。この白
金電極膜にリード線を付け、500℃で酸素20%の雰
囲気中に放置し、直流電圧0.5V印加における電流の
初期値と500時間後の値、白金電極膜の密着性を評価
した。焼成温度をパラメータにして整理した結果を図3
に示す。耐久性を500時間評価した理由は、電流値が
500時間までにほぼ安定した値となり、それ以上長く
評価しても変化しなかったためである。よって、500
時間後の電流と電極膜密着性を基準に白金電極膜の適否
を判断した。
【0038】電流値は、使用初期および500時間とも
焼成温度が920℃を境に変化し、920℃以下では焼
成温度が低いほど電流値が低下し、920℃以上では焼
成温度が高いほど電流値が減少した。一方、電極膜の密
着性は、700〜1100℃焼成は良好であるが、70
0℃未満および1100℃を超えた焼成は密着不良であ
った。
【0039】使用初期の電流について説明する。920
℃以下では焼成温度が低いほど、酸化ビスマスと酸化カ
ドミニウムの溶融性が低下して、酸素イオン導電性の優
れた複合酸化物系結合材が生成しにくくしかも密着性が
低下して、白金に吸着した酸素がジルコニア焼結板に良
好に伝達されず電流値が小さくなる傾向である。特に7
00℃未満の焼成は、両材料が溶融しないために白金電
極膜が密着せず簡単に剥離して電流値が小さい。一方、
920℃以上になると焼成温度が高いほど、複合酸化物
系結合材が材質変化を起こしてその酸素イオン導電性と
密着性が低下し、白金に吸着した酸素がジルコニア焼結
板に良好に伝達されにくいため電流値が小さくなる傾向
である。特に1100℃を超えた焼成は、複合酸化物系
結合材が著しい材質変化を起こして白金電極膜が密着せ
ず電流値が小さい。
【0040】500時間後の電流値も、使用初期の電流
値の挙動と類似しており、920℃以下では焼成温度が
低いほど電流値が小さく、920℃以上では焼成温度が
高いほど電流値が小さい傾向である。これは次の理由に
よる。920℃以下では焼成温度が低いほど材質変化が
起こりにくい複合酸化物系結合材が生成しにくく、電場
により材質変化して酸素イオン導電性および密着性が低
下して電流値が低下し易くなる。一方、920℃以上に
なると焼成温度が高いほど複合酸化物系結合材の酸素イ
オン導電性低下が小さいが、使用初期の電流値が小さい
ため電流値が小さい。
【0041】このように、700〜1100℃で焼成し
た白金電極膜は、使用初期および500時間後の電流と
も大きな値が得られしかも密着性も良好で、酸素イオン
導電性の有る白金電極膜である。また特に、750〜9
50℃で焼成した白金電極膜は、使用初期および500
時間後とも電極膜がジルコニア焼結板に強固に密着して
非常に大きな電流値が得られており、酸素イオン導電性
の優れた白金電極膜であった。一方、700℃未満およ
び1100℃を超えた焼成の白金電極膜は、白金電極膜
が密着しないために小さな電流値が得られず電極膜とし
て不適格である。
【0042】なお、酸化ビスマスと酸化カドミニウム量
の組成を変更しても同様の焼成効果が得られることは言
うまでもない。
【0043】本発明の効果を、酸化カドミニウム量
(C)を酸化ビスマス量(B)の3分の一の混合比(C
/B=1/3)としながら、酸化ビスマス量(B)を変
化させた白金電極膜で確認した。
【0044】まず、白金と酸化ビスマスと酸化カドミニ
ウムと有機溶剤の混合物からなり、酸化カドミニウム量
(C)と酸化ビスマス量(B)の割合がC/B=1/3
としながら酸化ビスマス量(B)を変化させた白金電極
膜用ペーストを各種準備した。そして、ジルコニア焼結
板の両面に白金電極膜用のペーストを厚膜印刷し、乾燥
後920℃で10分焼成した。この白金電極膜にリード
線を付け、500℃で酸素20%の雰囲気中に放置し、
直流電圧0.5V印加における電流の初期値と500時
間後の値、白金電極膜の密着性を評価した。酸化ビスマ
ス量(B)をパラメータにして整理した結果を図4に示
す。
【0045】白金電極膜の密着性は、酸化ビスマス
(B)が1.5〜5wt%の時は良好であるが、1.5wt
%未満および5wt%を超えた時は密着不良であった。
【0046】使用初期の電流値は、酸化ビスマス量
(B)が増加するにつれて大きくなる。この理由は、酸
化ビスマス量が増加するにつれて酸化カドミニウム量も
増加して溶融が良好となり、白金粉末とジルコニア焼結
板が良好に密着ししかも両者の接触面積が大きくなるた
め、酸素がうまく伝達するためである。なお、酸化ビス
マス(B)が1.5wt%未満の場合は結合材の量が少な
いため密着しない問題、酸化ビスマス(B)が7wt%を
超えた時は熱膨張係数の違いが原因で割れが発生の問題
がある。
【0047】500時間後の電流値は、酸化ビスマス量
(B)が3wt%までは増加するが3wt%以上になると逆
に小さくなった。酸化ビスマス量3wt%以下では、材質
変化が起こりにくい複合酸化物が少ししか生成しないた
め、電流が低下する傾向となる。特に、酸化ビスマス
(B)が1.5wt%未満は、白金電極膜が密着しないた
め小さな電流値しか得られない。一方、酸化ビスマス量
3wt%以上では、熱膨張係数が白金およびジルコニア焼
結板より大きい酸化ビスマスを混合してその固定を行っ
ているため、熱膨張係数の違いから試験中に徐々に密着
性が低下し、電流が低下する傾向となる。特に、酸化ビ
スマス(B)が5wt%を越えると、白金電極膜の剥離が
起こり小さな電流値しか得られない。
【0048】以上のことより、酸化ビスマスを1.5〜
5wt%混合した白金電極膜は、使用初期および500時
間後とも密着性が良好で大きな電流値が得られ、良好な
白金電極膜である。また特に、酸化ビスマスを2.5〜
3.5wt%混合した白金電極膜は、使用初期および50
0時間後とも密着性に優れて非常に大きな電流値が得
ら、優れた白金電極膜である。一方、1.5wt%未満お
よび5wt%を超えた時は白金電極膜が密着しないため小
さな電流値しか得られず、電極膜として不適格である。
【0049】本発明の効果を、酸化ビスマス量(B)を
1.5wt%とし、酸化カドミニウム量(C)と酸化ビ
スマス量(B)の混合比(C/B)を変化させた白金電
極膜で確認した。
【0050】実験はまず、白金と酸化ビスマスと酸化カ
ドミニウムと有機溶剤の混合物からなり、酸化ビスマス
の混合量を1.5wt%とし酸化カドミニウムの混合量
を変化させた白金電極膜用ペーストを各々準備した。そ
して、ジルコニア焼結板の両面に白金電極膜用のペース
トを厚膜印刷し、乾燥後920℃で10分焼成した。こ
の白金電極膜にリード線を付け、500℃で酸素20%
の雰囲気中に放置し、直流電圧0.5V印加における電
流の初期値と500時間後の値、白金電極膜の密着性を
評価した。酸化カドミニウム量(C)と酸化ビスマス量
(B)の混合比(C/B)をパラメータにして整理した
結果を図5に示す。
【0051】白金電極膜の密着性は、500時間後にお
いても混合比(C/B)が0.1〜1の時は密着性良好
であるが、0.1未満および1を超えた時は密着不良で
あった。
【0052】使用初期の電流値は、混合比(C/B)
0.5を境に変化し、0.5以下ではその値が小さいほ
ど電流値が減少し、0.5以上ではその値が多いほど電
流値が減少した。これは次の理由による。混合比(C/
B)0.5以下では、その値が小さいほど低融点の酸化
カドミニウムが少ししか混合されないため、溶融が悪く
なって白金電極膜とジルコニア焼結板の密着性が低下し
両者の接触面積が小さくなって、電流が少ししか流れな
い。一方、混合比(C/B)0.5以上では、その値が
大きいほど酸化カドミニウムが多く混合されるが、酸素
イオン導電性の優れた酸化ビスマスの割合が低下して電
流が低下してくる。特に、混合比(C/B)が1を越え
ると、小さな電流値しか得られない。
【0053】500時間後の電流値も、使用初期の電流
値と連動しており、混合比(C/B)が0.5を境に変
化し、0.5以下ではその値が小さいほど電流値が減少
し、0.5以上ではその値が大きいほど電流値が減少し
た。これは次の理由による。混合比(C/B)0.5以
下では、その値が小さいほど酸化カドミニウムが少しし
か混合されないため酸化ビスマスとの複合酸化物が少し
しか生成せず、電場で材質変化しにくいこの複合酸化物
が少ないため密着性が低下して電流値が小さくなる。特
に、混合比(C/B)が0.1未満は、白金電極膜が剥
離して電流が大きく低下した。一方、混合比(C/B)
0.5以上では、その値が大きいほど酸化カドミニウム
が多く混合され、これにともない酸化カドミニウムが電
場で材質変化するため密着性が低下して電流値が小さく
なる。特に、混合比(C/B)が1を超えると、白金電
極膜が剥離して電流が大きく低下した。
【0054】以上のことより、酸化ビスマス1.5wt%
において、酸化カドミニウム量(C)と酸化ビスマス量
(B)の混合比(C/B)は、0.1≦C/B≦1の時
が使用初期および500時間後とも密着性が良好で大き
な電流値が得られ、良好な白金電極膜である。一方、
0.1未満および1を超えた時は500時間後に白金電
極膜の剥離が生じて小さな電流値しか得られず、電極膜
として不適格である。
【0055】本発明の効果を、酸化ビスマスを3.0wt
%とし、酸化カドミニウム量(C)と酸化ビスマス量
(B)の混合比(C/B)を変化させた白金電極膜で確
認した。
【0056】実験はまず、白金と酸化ビスマスと酸化カ
ドミニウムと有機溶剤の混合物からなり、酸化ビスマス
の混合量を3.0wt%とし酸化カドミニウムの混合量を
変化させた白金電極膜用ペーストを各々準備した。そし
て、ジルコニア焼結板の両面に白金電極膜用のペースト
を厚膜印刷し、乾燥後920℃で10分焼成した。この
白金電極膜にリード線を付け、500℃で酸素20%の
雰囲気中に放置し、直流電圧0.5V印加における電流
の初期値と500時間後の値、白金電極膜の密着性を評
価した。酸化カドミニウム量(C)と酸化ビスマス量
(B)の混合比(C/B)をパラメータにして整理した
結果を図6に示す。
【0057】白金電極膜の密着性は、500時間後にお
いても混合比(C/B)が0.1〜1の時は密着性良好
であるが、0.1未満および1を超えた時は密着不良で
あった。
【0058】使用初期および500時間後の電流値は、
混合比(C/B)が0.5を境に変化し、0.5以下で
はその値が小さいほど電流値が減少し、0.5以上では
その値が多いほど電流値が減少した。特に、混合比(C
/B)が0.1未満または1を越えると、500時間後
に白金電極膜の剥離が生じて小さな電流値しか得られな
い。この理由は、前述と同じである。
【0059】以上のことより、酸化ビスマス3.0wt%
においても、酸化カドミニウム量(C)と酸化ビスマス
量(B)の混合比(C/B)は、0.1≦C/B≦1の
時が使用初期および500時間後とも密着性が良好で大
きな電流値が得られ、良好な白金電極膜である。特に、
0.25≦C/B≦0.75の時は、使用初期および5
00時間後とも密着性に優れて非常に大きな電流値が得
ら、優れた白金電極膜である。一方、0.1未満および
1を超えた時は500時間後に白金電極膜の剥離が生じ
て小さな電流値しか得られず、電極膜として不適格であ
る。
【0060】本発明の効果を、酸化ビスマスを5.0wt
%とし、酸化カドミニウム量(C)と酸化ビスマス量
(B)の混合比(C/B)を変化させた白金電極膜で確
認した。
【0061】実験はまず、白金と酸化ビスマスと酸化カ
ドミニウムと有機溶剤の混合物からなり、酸化ビスマス
の混合量を5.0wt%とし酸化カドミニウムの混合量を
変化させた白金電極膜用ペーストを各々準備した。そし
て、ジルコニア焼結板の両面に白金電極膜用のペースト
を厚膜印刷し、乾燥後920℃で10分焼成した。この
白金電極膜にリード線を付け、500℃で酸素20%の
雰囲気中に放置し、直流電圧0.5V印加における電流
の初期値と500時間後の値、白金電極膜の密着性を評
価した。酸化カドミニウム量(C)と酸化ビスマス量
(B)の混合比(C/B)をパラメータにして整理した
結果を図7に示す。
【0062】白金電極膜の密着性は、500時間後にお
いても混合比(C/B)が0.1〜1の時は密着性良好
であるが、0.1未満および1を超えた時は密着不良で
あった。
【0063】使用初期および500時間後の電流値は、
混合比(C/B)が0.5を境に変化し、0.5以下で
はその値が小さいほど電流値が減少し、0.5以上では
その値が多いほど電流値が減少した。特に、混合比(C
/B)が0.1未満または1を越えると、500時間後
に白金電極膜の剥離が生じて小さな電流値しか得られな
い。この理由は、前述と同じである。
【0064】以上のことより、酸化ビスマス5.0wt%
においても、酸化カドミニウム量(C)と酸化ビスマス
量(B)の混合比(C/B)は、0.1≦C/B≦1の
時が使用初期および500時間後とも密着性が良好で大
きな電流値が得られ、良好な白金電極膜である。一方、
0.1未満および1を超えた時は500時間後に白金電
極膜の剥離が生じて小さな電流値しか得られず、電極膜
として不適格である。
【0065】本発明の効果を、白金の粒径を変化させた
白金電極膜で確認した。実験はまず、白金96wt%と酸
化ビスマス3wt%と酸化カドミニウム1wt%と有機溶剤
19wt%の混合物からなり、白金の粒径を変化させた白
金電極膜用ペーストを各々準備した。そして、ジルコニ
ア焼結板の両面に白金電極膜用のペーストを厚膜印刷
し、乾燥後920℃で10分焼成した。白金電極膜の膜
厚は約10μmである。この白金電極膜にリード線を付
け、500℃で酸素20%の雰囲気中に放置し、直流電
圧0.5V印加における電流の初期値と500時間後の
値を評価した。白金粒径をパラメータにして整理した結
果を図8に示す。なお、この白金粒径は、約8割の白金
粒子が存在する粒径である。
【0066】白金電極膜の密着性は、500時間後にお
いてもいずれの白金粒径でも良好である。
【0067】白金粒径を0.07〜0.7μmとした白
金電極膜は、使用初期および500時間後とも大きな電
流値を示しており、優れた電極膜であることがわかる。
一方、白金粒径がこれより大きくなると白金電極膜の反
応面積が低下して電流値が小さくなり、逆に白金粒径が
これより小さくなると白金電極膜の多孔度が減少してち
密な膜となり、酸素拡散抵抗の増大で酸素がうまく伝達
しないため電流値が小さくなった。
【0068】以上のことより本発明は、いずれの白金粒
径でも密着性良好で良好な白金電極膜であるが、特に白
金粒径を0.07〜0.7μmを中心径とした時が、使
用初期および500時間後の電流とも大きな値が得られ
ており、優れた白金電極膜である。
【0069】本発明の効果を、電気化学素子の動作温度
を変化させて確認した。実験はまず、白金96wt%と酸
化ビスマス3wt%と酸化カドミニウム1wt%と有機溶剤
19wt%の混合物からなる白金電極膜用ペーストを準備
した。そして、ジルコニア焼結板の両面に白金電極膜用
のペーストを厚膜印刷し、乾燥後920℃で10分焼成
した。白金電極膜の膜厚は約10μmである。この白金
電極膜にリード線を付け、酸素20%の雰囲気中であり
炉内温度が異なる電気炉内に放置し、直流電圧0.5V
印加における電流の初期値と500時間後の値,白金電
極膜の密着性を評価した。その結果を図9に示す。
【0070】白金電極膜は酸化カドミニウムを含有して
いるため、300℃未満の低温になると酸化カドミニウ
ムの電子電導に関わる電流が支配的になり、酸化ビスマ
スの酸素イオン導電性が得られなくなる。そのため、3
00℃未満の動作は不適格であり、動作温度を300℃
以上とすることで、白金電極膜の酸素イオン導電特性が
効果的に発揮される。一方、550℃を超えた動作は、
結晶構造の変化のため500時間後に複合酸化物系結合
材の材質変化が起こりその密着性が低下して剥離が生じ
電流が大きく低下する。そのため、550℃を超えた動
作は不適格であり、動作温度を550℃以下とすると密
着性が良好な電極膜となりその電流値も大きくなって耐
久信頼性が確保される。
【0071】以上のことより、動作温度を300〜55
0℃以上とすると白金電極膜は電流特性と密着性が良好
となり、その耐久信頼性が確保される。また特に、40
0〜530℃の時が、500時間後でも密着性が良好で
電流が大きく、優れた耐久信頼性が確保される。
【0072】(実施例2)図10は、本発明の実施例2
である限界電流式酸素センサ構造の電気化学素子の一部
破断斜視図である。1はジルコニア焼結板であり、その
表面に白金電極膜2a,2b(記載せず)が形成されて
いる。白金電極膜2a、2bは、白金に酸化ビスマスと
酸化カドミニウムを混合したペースト膜を、700〜1
100℃で焼成した製法で得る。そして、白金電極膜に
混合された酸化ビスマス量をBとし、酸化カドミニウム
量をCとし、その混合比をC/Bとすると、1.5wt%
≦B≦5wt%でしかも0.1≦C/B≦1なる条件を満
足する電極膜組成としたものである。この電極膜組成と
焼成温度の理由は、前述の通りである。
【0073】6は硝子製螺旋型スペーサ膜であり、白金
電極膜2a,2bを形成した後その片側2aの周囲に、
ペーストを厚膜印刷し焼成してジルコニア焼結板1の片
側に形成した。7はフォルステライト焼結板であり、螺
旋型スペーサ膜6の上部に積層し、ジルコニア焼結板1
と螺旋型スペーサ膜6とともに焼成して、酸素拡散孔8
をこれらで囲まれる空間に形成した。なお、フォルステ
ライト焼結板7には、加熱部9がその表面に形成されて
おり、ジルコニア焼結板1を加熱して酸素イオン導電性
を高めることに活用している。またフォルステライト焼
結板は、熱膨張係数がジルコニア焼結板1と同じである
こと、加熱部9の電場で材質変化しない理由から用い
た。
【0074】螺旋型スペーサ膜6の硝子は、(a)螺旋型
スペーサ膜の焼成温度が700〜1100℃なる条件、
(b)熱膨張係数をβ×10ー6(degー1)とすると、9
≦β≦11なる条件、これらを同時に満足する組成とし
たものである。螺旋型スペーサ膜の硝子焼成温度上限1
100℃は、白金電極膜の焼成温度上限と同じである。
そのため1100℃以下の螺旋型スペーサ膜焼成は、白
金電極膜の酸素イオン導電特性と密着性に悪影響を及ぼ
さない。従って、この限界電流式酸素センサの白金電極
膜は、優れた酸素イオン導電特性と密着性を示す。ま
た、螺旋型スペーサ膜の硝子焼成温度下限700℃は、
白金電極膜の焼成温度下限と同じである。そのためこの
700℃以上の焼成は、白金電極膜と螺旋型スペーサ膜
を両者の積層部6aでお互いに溶融させて強固に密着さ
せ、この積層部6aのガス気密性に悪影響を及ぼさな
い。さらに螺旋型スペーサ膜の熱膨張係数を、ジルコニ
ア焼結板や白金電極膜、フォルステライト焼結板と概略
同じの9〜11×10ー6(degー1)としたため、熱膨
張係数の違いが原因によるこれら3種の材料の剥離が発
生しない。従って、これら3材料で形成される酸素拡散
孔は、剥離発生がなく優れた耐久信頼性を示す。なお、
螺旋型スペーサ膜の硝子焼成温度が1100℃を超える
と白金電極膜が材質変化して密着性が悪くなり剥離する
問題、700℃未満は白金電極膜との密着性が悪くてガ
スリークが発生して限界電流が得られない問題が起こ
り、不適格である。また熱膨張係数が9×10ー6(de
ー1)未満および11×10ー6(degー1)を超える
と、熱膨張係数の違いが原因で割れが発生する問題が起
こり、不適格である。
【0075】また螺旋型スペーサ膜は、その焼成温度を
Tsとし、白金電極膜の焼成温度をTpとすると、70
0℃≦Ts≦Tpなる条件を満足する製法とした。する
と螺旋型スペーサ膜の焼成温度Tsは、白金電極膜の焼
成温度Tpと同じか、もしくはそれ以下で700℃以上
である。そのため、螺旋型スペーサ膜の硝子焼成が原因
による白金電極膜の酸素イオン導電特性低下と密着性低
下が減少し、限界電流式酸素センサの白金電極膜は優れ
た耐久性を示す。なお、螺旋型スペーサ膜の焼成温度T
sが白金電極膜の焼成温度Tpを超えると、焼成過剰と
なって白金電極膜が材質変化を起こし酸素イオン導電特
性と密着性が大きく低下した。
【0076】螺旋型スペーサ膜6は、酸化アルミナが3
〜7wt%、酸化ホウソが3〜7wt%、酸化カルシウムが
1〜2wt%、酸化ストロンチウムが4〜6wt%、酸化バ
リウムが0.2〜1.5wt%、酸化ナトリウムが10〜
13wt%、酸化カリウムが4〜8wt%、酸化チタンが6
〜9wt%、残部が酸化珪素である硝子を使用した。この
硝子組成は、熱膨張係数が9〜10×10ー6(de
ー1)ジルコニア焼結板の10×10ー6(degー1)と
概略同一である。また770〜950℃で焼成すること
で、限界電流特性を得るために必要な寸法の酸素拡散孔
が簡単に形成できる。しかもジルコニア焼結板とフォル
ステライト焼結板とを強固に密着して良好なガス気密性
を維持する。このため、螺旋型スペーサ膜の焼成温度と
熱膨張係数が原因による白金電極膜と酸素拡散孔の耐久
性低下が減少し、限界電流式酸素センサは優れた耐久性
を示す。
【0077】次に、動作について説明する。図10にお
いて、加熱部9に所定の電力を印加し、加熱部9を介し
てジルコニア焼結板1を所定温度に加熱する。一方、ジ
ルコニア焼結板1の両面に形成した白金電極膜2a、2
bにも所定の電圧を印加する。すると、空気中の酸素
は、酸素拡散孔8を経由して流入し、さらにカソード側
白金電極膜2aからアノード白金電極膜2bに向かって
酸素イオンが流れる。この酸素ポンプ作用によってジル
コニア焼結板1を酸素が移動するが、酸素拡散孔8によ
って酸素分子の流入が制限されるため、酸素濃度に対応
した電流が生じこの電流値を測定することにより酸素濃
度が判明する。
【0078】本発明の効果を、図10記載の限界電流式
酸素センサ構造で確認した。白金電極膜2a、2bは、
白金96wt%と酸化ビスマス3wt%と酸化カドミニウム
1wt%と有機溶剤19wt%の混合物からなる白金電極膜
用ペーストを、厚膜印刷し乾燥後、920℃で焼成して
ジルコニア焼結板1の両面に形成した。白金電極膜2a
を形成した後その周囲に、熱膨脹係数が9〜10×10
ー6degー1の硝子のペースト(硝子60wt%と有機溶剤
40wt%の混合物)を厚膜印刷し920℃で焼成して、
固体電解質体1の片側に螺旋型スペーサ膜6を形成し
た。シール板7はフォルステライトであり、熱膨脹係数
がジルコニア焼結板1および螺旋型スペーサ膜6の硝子
と概略同一の10×10ー6(degー1)である。螺旋型
スペーサ膜6の上部にシール板7を積層し、固体電解質
体1と螺旋型スペーサ膜6とともにさらに820℃で焼
成して酸素拡散孔8をこれらで囲まれる空間に形成し
た。リード線10a、10bは白金線であり、リード線
固定材11a,11b(白金と硝子2wt%との混合物)
を塗布し700℃で焼成して、白金電極膜に固定した。
【0079】この限界電流式酸素センサを、500℃で
酸素20%の雰囲気中に放置し、使用初期および500
時間後の電圧電流特性を評価した。その結果を図11に
示す。
【0080】使用初期の電流値は、酸素拡散孔によって
酸素の流入が制限されるため、電圧0.8V以上におい
ては電圧に関わらず一定である。この電圧に関わらず一
定である電流値(以下、限界電流値と称す)は酸素濃度
にほぼ比例する性質がある。従って、限界電流値が得ら
れるこの限界電流式酸素センサは正常に動作している。
【0081】500時間後の電流も、電圧0.8V以上
においては電圧に関わらず一定の限界電流値を示してお
り、限界電流式酸素センサは正常に動作している。また
限界電流値も使用初期と比べて変化せず、センサ割れや
ガス漏洩性のない優れた耐久性を示す。
【0082】また、螺旋型スペーサ膜6として、熱膨脹
係数が9〜11×10ー6(degー1)であり700〜1
100℃で焼成できる他組成の硝子を用いて限界電流式
酸素センサを試作したところ、いずれもセンサ割れやガ
ス漏洩性のない優れた耐久性を示すことが確認できた。
これらの中で特に、酸化アルミナが4〜6%、酸化ホウ
ソが4〜6%、酸化カルシウムが1〜2%、酸化ストロ
ンチウムが4〜6%、酸化バリウムが0.2〜1%、酸
化ナトリウムが11〜12%、酸化カリウムが5〜7
%、酸化チタンが7〜8%、残部が酸化珪素である硝子
組成は、耐久性向上の点で最適であった。この硝子は、
熱膨脹係数が9.5〜10.0×10ー6(degー1)で
あり、820〜920℃の焼成で限界電流特性を得るた
めに必要な寸法の酸素拡散孔が簡単に形成できる。ま
た、ジルコニア焼結板とフォルステライト焼結板とを強
固に密着して良好なガス気密性を維持する。
【0083】なお、比較のため、白金97wt%と酸化
ビスマス3wt%の混合物の白金電極膜(比較例A)
と、酸化ビスマスの上部に白金を積層した白金電極膜
(比較例B)で、限界電流式酸素センサを前述と同様に
試作しその効果を同様に確認した。
【0084】500時間も経過すると白金電極膜は劣化
した。そのため、限界電流値が得られ始める電圧値は、
比較例Aは1.2V(使用初期は0.8V)、比較例B
は1.4V(使用初期は0.8V)と高電圧側にシフト
しており、耐久性の低下が起こった。
【0085】(実施例3)図12は、本発明の実施例3
である炭化水素検出センサ構造の電気化学素子の断面図
である。1はジルコニア焼結板であり、その表面に白金
電極膜2a,2bが形成されている。白金電極膜2a、
2bは、白金に酸化ビスマスと酸化カドミニウムを混合
したペースト膜を、700〜1100℃で焼成した製法
で得る。そして、白金電極膜に混合された酸化ビスマス
量をBとし、酸化カドミニウム量をCとし、その混合比
をC/Bとすると、1.5wt%≦B≦5wt%でしかも
0.1≦C/B≦1なる条件を満足する電極膜組成とし
たものである。この電極膜組成と焼成温度の理由は、前
述の通りである。12は酸化触媒層であり、片側の白金
電極膜2aに配置されている。
【0086】動作について説明する。図12において、
炭化水素(例えば一酸化炭素)と酸素を含むガスがこの
センサ構造の電気化学素子に接触すると、酸化触媒層1
2が配置された白金電極膜2a側では炭化水素と酸素が
酸化触媒によって反応して酸素濃度が減少する。一方、
他方の白金電極膜2b側はそのままの酸素濃度である。
従って酸素濃度の差が生じ、炭化水素の濃度に対応した
起電力が生じる。本発明の効果を、図12記載の炭化水
素検出センサ構造で確認した。
【0087】1はジルコニア焼結板である。白金電極膜
2a、2bは、白金96wt%と酸化ビスマス3wt%と酸
化カドミニウム1wt%と有機溶剤19wt%の混合物から
なる白金電極膜用ペーストを厚膜印刷し乾燥後、920
℃で焼成してジルコニア焼結板1の両面に形成した。酸
化触媒層12は、白金を充填したフィルタであり、片側
の白金電極膜2aに配置されている。リード線10a、
10bは白金線であり、リード線固定材11a、11b
(白金と硝子2wt%との混合物)を塗布し700℃で焼
成して、白金電極膜に固定した。
【0088】一酸化炭素500ppmと二酸化イオウ5
0ppmと酸素10%を含む混合ガス雰囲気中に500
℃で放置し、起電力の過渡特性を評価した。その結果を
図13に示す。
【0089】本発明品は、時間とともに起電力が少しし
か変化せず優れた耐久性を示すことがわかる。この理由
は2つ考えられる。1つは熱膨張の緩和、複合酸化物系
結合材の材質変化低減、接触面積の減少低減の効果、他
1つは弱アルカリ性の酸化カドミニウムが二酸化イオウ
の悪影響を回避する効果である。
【0090】比較のため、白金97wt%と酸化ビスマ
ス3wt%の混合物の白金電極膜(比較例A)と、酸化
ビスマスの上部に白金を積層した白金電極膜(比較例
B)で、炭化水素検出センサを試作しその効果を同様に
確認した。
【0091】比較例Aも比較例Bも、時間とともに起電
力が大きく低下し耐久性がよくなかった。
【0092】なお、本発明は他実施例(濃淡電池式酸素
センサなど)に適用しても同様の効果があることは言う
までもない。
【0093】
【発明の効果】
(1)本発明の電気化学素子は、白金電極膜に酸素イオ
ン導電性に優れた酸化ビスマスが混合されているため、
優れた酸素イオン導電特性が得られる。しかも配合組成
の最適化により、白金電極膜の熱膨張係数がジルコニア
焼結板の熱膨張係数と概略同じとなるため、熱膨張係数
の違いが原因による剥離が減少して電極膜の耐久信頼性
が向上する。また電極膜焼成温度の最適化により、酸素
イオン導電特性に優れしかも材質変化が起こりにくい酸
化ビスマス、酸化カドミニウム複合酸化物が生成し、材
質変化が原因による酸素イオン導電性と密着性低下が減
少して電極膜の耐久信頼性がより向上する。さらに組成
と焼成温度の最適化で、良好に密着してその接触面積が
大きくなり、前記接触面積減少が原因による劣化が少な
くなり密着性向上で電極膜の耐久信頼性が一層向上す
る。
【0094】(2)本発明の電気化学素子は、螺旋型ス
ペーサ膜の硝子焼成温度上限1100℃を、白金電極膜
の焼成温度上限と同じにした。そのためこの1100℃
以下の螺旋型スペーサ膜焼成は、白金電極膜の酸素イオ
ン導電特性と密着性に悪影響を及ぼさない。従って、こ
の限界電流式酸素センサの白金電極膜は、優れた酸素イ
オン導電特性と密着性を示す。また、螺旋型スペーサ膜
の硝子焼成温度下限700℃を、白金電極膜の焼成温度
下限と同じにした。そのためこの700℃以上の焼成
は、白金電極膜と螺旋型スペーサ膜を両者の積層部でお
互いに溶融させて強固に密着させ、この積層部のガス気
密性に悪影響を及ぼさない。さらに螺旋型スペーサ膜の
熱膨張係数を、ジルコニア焼結板や白金電極膜・フォル
ステライト焼結板と概略同じの9〜11×10ー6(de
ー1)としたため、熱膨張係数の違いが原因によるこれ
ら3種の材料の剥離が発生しない。従って、これら3種
の材料で形成される酸素拡散孔は、剥離発生がなく優れ
た耐久信頼性を示す。
【0095】(3)本発明の電気化学素子は、白金に硝
子を混合した組成のリード線固定材用ペーストを、塗布
し600〜730℃で焼成して、白金電極膜にリード線
を固定している。焼成温度上限730℃は、白金電極膜
に混合した複合酸化物系結合材の結晶構造が大きく変化
して酸素イオン導電特性が大きく変化し始める温度であ
る。そのため730℃以下の焼成は、既に形成した白金
電極膜の酸素イオン導電特性に悪影響を及ぼさない。ま
た焼成温度下限600℃は、白金電極膜中の複合酸化物
系結合材が軟化し始め、これにともない硝子との結合力
が高まりリード線固定が可能になり始める温度である。
そのため600℃以上の焼成は、動作中にリード線が外
れることがなく、電気化学素子の耐久信頼性に悪影響を
及ぼさない。
【0096】(4)本発明の限界電流式酸素センサに用
いられる螺旋型スペーサ膜は、酸化アルミナが3〜7wt
%、酸化ホウソが3〜7wt%、酸化カルシウムが1〜2
wt%、酸化ストロンチウムが4〜6wt%、酸化バリウム
が0.2〜1.5wt%、酸化ナトリウムが10〜13wt
%、酸化カリウムが4〜8wt%、酸化チタンが6〜9wt
%、残部が酸化珪素である硝子である。この硝子組成
は、焼成温度が770〜950℃で熱膨張係数が9〜1
0×10ー6(degー1)であるため、螺旋型スペーサ膜
の焼成温度と熱膨張係数が原因による白金電極膜と酸素
拡散孔の耐久性低下が減少し、しかもジルコニア焼結板
とフォルステライト焼結板とを強固に密着して良好なガ
ス気密性を維持し、限界電流式酸素センサは優れた耐久
性を示す。
【0097】(5)本発明の限界電流式酸素センサに用
いられる螺旋型スペーサ膜は、その焼成温度をTsと
し、白金電極膜の焼成温度をTpとすると、700℃≦
Ts≦Tpなる条件を満足する。螺旋型スペーサ膜の焼
成温度Tsは、白金電極膜の焼成温度Tpと同じかもし
くはそれ以下で700℃以上であるため、螺旋型スペー
サ膜の硝子焼成が原因による白金電極膜の過剰焼成とそ
れに起因する耐久性低下が減少し、限界電流式酸素セン
サの白金電極膜は優れた耐久性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の電気化学素子の断面図
【図2】同電気化学素子の効果特性図
【図3】同電気化学素子の効果特性図
【図4】同電気化学素子の効果特性図
【図5】同電気化学素子の効果特性図
【図6】同電気化学素子の効果特性図
【図7】同電気化学素子の効果特性図
【図8】同電気化学素子の効果特性図
【図9】同電気化学素子の効果特性図
【図10】本発明の実施例2の限界電流式酸素センサ構
造の電気化学素子の一部破断斜視図
【図11】同電気化学素子の効果特性図
【図12】本発明の実施例3の炭化水素検出センサ構造
の電気化学素子の断面図
【図13】同電気化学素子の効果特性図
【図14】従来の電気化学素子の断面図
【符号の説明】
1 安定化ジルコニア焼結板 2a、2b 白金電極膜 3 酸化ビスマス 4 酸化カドミニウム 5 白金 6 硝子製螺旋型スペーサ膜 6a 交差積層部 7 フォルステライト焼結板 8 酸素拡散孔 9 加熱部 10a、10b リード線 11a、11b リード線固定材 12 酸化触媒層 15a、15b 電極層 16 固体電解質体

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化イットリウム8モル%とジルコニア9
    2モル%からなる安定化ジルコニア焼結板の表面に、白
    金に酸化ビスマスと酸化カドミニウムを混合したペース
    ト膜を700〜1100℃で焼成して得た白金電極膜を
    少なくとも一対形成し、前記白金電極膜に混合された酸
    化ビスマス量をBとし、酸化カドミニウム量をCとし、
    その混合比をC/Bとすると、1.5wt%≦B≦5wt%
    でしかも0.1≦C/B≦1なる条件を満足する電極膜
    組成とした電気化学素子の製造方法。
  2. 【請求項2】白金電極膜を両面に形成したジルコニア焼
    結板と、片側の前記白金電極膜を囲んで配置された酸素
    拡散孔形成用の硝子製螺旋型スペーサ膜と、前記螺旋型
    スペーサ膜の上部に積層したフォルステライト焼結板か
    ら構成される限界電流式酸素センサであり、前記白金電
    極膜を焼成して形成した後に、前記螺旋型スペーサ膜を
    焼成して酸素拡散孔を形成し、前記螺旋型スペーサ膜の
    硝子が下記の(a)(b)の条件を同時に満足する組成である
    請求項1記載の電気化学素子の製造方法。 (a)螺旋型スペーサ膜の焼成温度が700〜1100
    ℃なる条件 (b)熱膨張係数をβ×10ー6(degー1)とすると、
    9≦β≦11なる条件
  3. 【請求項3】白金に硝子を1〜5wt%混合した組成のリ
    ード線固定材用ペーストを塗布し600〜730℃で焼
    成して、白金電極膜にリード線を固定した請求項1記載
    または2記載の電気化学素子の製造方法。
  4. 【請求項4】酸化アルミナが3〜7wt%、酸化ホウソが
    3〜7wt%、酸化カルシウムが1〜2wt%、酸化ストロ
    ンチウムが4〜6wt%、酸化バリウムが0.2〜1.5
    wt%、酸化ナトリウムが10〜13wt%、酸化カリウム
    が4〜8wt%、酸化チタンが6〜9wt%、残部が酸化珪
    素である硝子を、螺旋型スペーサ膜に使用した請求項2
    記載の電気化学素子の製造方法。
  5. 【請求項5】螺旋型スペーサ膜の焼成温度をTsとし、
    白金電極膜の焼成温度をTpとすると、700℃≦Ts
    ≦Tpなる条件を満足する請求項2記載の電気化学素子
    の製造方法。
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