JP2006317429A - 限界電流式ガスセンサ及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明によって提供される限界電流式ガスセンサ10は、酸化物イオン導電性を有する固体電解質12と、ガス拡散律速体14と、該電解質とそれぞれ電気的に接する少なくとも一対の電極であって該ガス拡散律速体により被検ガスの拡散速度が制限される領域に配置される内部電極16と該領域外に配置される外部電極18とから成る一対の電極16,18とを備える。そして、前記一対の電極のうち少なくとも一つの電極は、白金族に属するいずれかの金属、金、銀及びニッケルから成る群から選択される少なくとも一種の金属元素を主体とする金属粒子から形成されており、該金属粒子の表面に偏った状態でビスマスを含む。
【選択図】 図1
Description
可燃性ガスの影響を受けずに酸素濃度を測定するセンサとして、例えば特許文献1に、電極にビスマスを添加したセンサが記載されている。しかし、これら公報に記載のセンサはいわゆる起電力型であり、センサ出力が検知ガス濃度に対して直線的な関係とならない。このため、正確な測定値の算出には補正回路を必要とし、取り扱いに不便である。
即ち、従来提案されている限界電流式空燃比センサでは、酸素過剰雰囲気(以下「リーン雰囲気」ともいう。)から燃料過剰雰囲気(以下「リッチ雰囲気」ともいう。)迄の空燃比を連続的に測定するために、一般に一方の電極を大気中に設ける必要があった。このため、大気室の設置が必要となり、センサ(即ち空燃比測定装置)自体の小型化が阻まれていた。このことに関して、特許文献2には、大気室を有さない限界電流式空燃比センサが記載されている。しかし、かかる特許文献に記載のセンサでは、リーン雰囲気からリッチ雰囲気まで連続的に測定することは困難である。
ここで「電極が金属粒子から形成されている」とは、電極が金属粒子の集合体である場合のみならず、焼結等で連結した金属粒子から成る場合や、もともと均質な金属膜が多孔質化した場合も含んでいる。
また、ここで「金属粒子の表面に偏った状態でビスマスを含む」とは、電極を構成する連結した金属粒子(例えば白金粒子)のそれぞれの表面にビスマスが含有されるとともに、該金属粒子の表面部分とそれ以外の部分(例えば粒子内部の中心部分)とを比較した場合に、表面部分の方がビスマス含有率が高いこと(偏在すること)をいう。
かかる態様のガスセンサでは、上記ガス拡散律速体により被検ガスの拡散速度が制限される領域に配置される内部電極(検知極)のビスマス含有率が上記範囲に設定されることにより、電極の電気的特性を好適に維持しつつ該電極の触媒作用を抑えることができる。このため、本態様のガスセンサによると、可燃性ガスの影響を排して高精度に酸素ガス(又は酸化性ガス)の濃度を検知・測定することができる。
白金は導電性に優れた元素であり、電極の電気的特性を好適に維持することができる。
金は導電性に優れた元素であり、電極の電気的特性を好適に維持しつつ電極の触媒作用を抑えることができる。金を主体とする金属粒子に白金および/またはパラジウムを主体とする金属粒子が混在していると、限界電流式ガスセンサの酸素ポンプ性能を向上することができる。さらに固体電解質と内部電極の密着性を高めることができる。白金および/またはパラジウムの含有率が高いと、電極の触媒作用を抑制しきれない。白金および/またはパラジウムの含有率が10質量%以下であれば、短所を抑制して長所を引き出すことができる。
本態様のガスセンサによると、可燃性ガスの影響を排除し、酸素ガス(又は酸化性ガス)の濃度を高精度に検知・測定することができる。
内部電極と共に、外部電極にもビスマス(典型的には酸化ビスマスの形態で存在する)を含有させることによって、両電極における触媒作用を抑えることができる。また、ガス拡散律速体の存在によりビスマスの気化速度の遅い内部電極よりも当該気化速度の速い外部電極側のビスマス含有率を高めておくことによって、例えば高温雰囲気中の使用でも外部電極におけるビスマス効果(電極構成金属による触媒作用を抑える効果をいう。以下同じ。)を長期間持続させることができる。このため、本態様のガスセンサによると、長期に渡って所望する性能を維持することができる。
かかる態様のガスセンサでは、上記ガス拡散律速体により被検ガスの拡散速度が制限される領域に配置される内部電極(検知極)にビスマスが実質的に含まれない結果、電極触媒作用による酸素ガス濃度の低下を積極的に利用し得る。他方、ビスマスを含む外部電極では触媒作用が低減されるため、当該電極を可燃性ガスを含む被検ガス雰囲気中に配置した際にも可燃性ガスの影響を受けないで安定した電位を維持することができる。
このため、本態様のガスセンサは、限界電流式空燃比センサとして好適に利用することができる。また、本態様のガスセンサでは、大気室を設けることなく高精度に空燃比を測定することができる。
前記外部電極を形成する前記金属粒子の表面に偏った状態でビスマスを含むものが特に好ましい。
外部電極におけるビスマス含有率を上記範囲に設定することにより、外部電極の電気的特性を好適に維持しつつ高精度に空燃比を測定することができる。
白金は導電性に優れた元素であり、電極の電気的特性を好適に維持することができる。
金は導電性に優れた元素であり、電極の電気的特性を好適に維持しつつ電極の触媒作用を抑えることができる。金を主体とする金属粒子に白金および/またはパラジウムを主体とする金属粒子が混在していると、限界電流式ガスセンサの酸素ポンプ性能を向上することができる。さらに固体電解質と内部電極の密着性を高めることができる。白金および/またはパラジウムの含有率が高いと、電極の触媒作用を抑制しきれない。白金および/またはパラジウムの含有率が10質量%以下であれば、短所を抑制して長所を引き出すことができる。
本態様のガスセンサによると、可燃性ガスの影響を排除し、酸素ガス(又は酸化性ガス)の濃度を高精度に検知・測定することができる。
かかる態様のガスセンサでは、ガス拡散律速体により被検ガスの拡散速度が制限される領域に配置される内部電極にビスマスが実質的に含まれない結果、電極触媒作用による酸素ガス濃度の低下を積極的に利用し得る。他方、ビスマスを含む外部電極では触媒作用が低減されるため、当該電極を可燃性ガスを含む被検ガス雰囲気中に配置した際にも可燃性ガスの影響を受けないで安定した電位を維持することができる。特に主体とする金属粒子が金であるため、電極の電気的特性をより好適に維持することができる。また、白金および/またはパラジウムを少量利用すると、固体電解質と電極の密着性を高めることができる。
即ち、ここで開示される好ましい一つのシステムは、排ガス中の酸素濃度に基づく排ガス浄化システムである。このシステムは、空燃比センサとして内燃機関の排気系に設けられた限界電流式ガスセンサと、該センサからの検知信号に基づき、前記排気系に設けられた排ガス浄化装置における排ガス浄化処理の態様を制御する制御装置とを備える。
ここで「排ガス浄化装置における排ガス浄化処理の態様を制御する」とは、排ガス浄化処理に係る内容を該制御によって異ならせることをいう。例えば、排ガス浄化装置(典型的には触媒)への還元剤(NOx還元用)添加量の調節、排ガス浄化装置を流れるガス流量調節或いは流路変更(例えばバルブ開閉)等は、ここでいう排ガス浄化処理の態様制御の典型例である。
本システムによると、ここで開示される限界電流式ガスセンサを空燃比センサとして用いることにより、効率よく排ガス浄化処理を行うことができる。
本システムによると、ここで開示される限界電流式ガスセンサを空燃比センサとして用いることにより、リーン雰囲気からリッチ雰囲気(或いはこの逆)まで連続的に空燃比を高精度に測定して、燃料供給量の最適化を実現することができる。
ここで開示される限界電流式ガスセンサに備えられる電極は、従来のこの種のガスセンサの電極形成プロセスと同様の手法によって形成することができる。例えば、白金等の金属の粉状物(金属粒子)を含む電極形成用ペースト(インク)をスクリーン印刷法等に基づいて所定の形状・厚さとなるように固体電解質の表面に塗布し、それらを適当な焼成温度(例えば800〜1600℃)で焼成する。このことによって、ペースト中の金属粒子同士が焼結して成る所定の形状・厚さの電極(検知極及びその対極)を形成することができる。
ここで開示される限界電流式ガスセンサでは、ビスマスが電極を構成する金属粒子の表面に偏在することにより、比較的低いビスマス含有率でも所望する触媒活性の低減(抑止)を実現することができる。例えば、内部電極の場合、0.002〜1質量%(好ましくは0.01〜1質量%、例えば0.1〜1質量%)のビスマス含有率で当該電極の触媒活性を抑止することができる(後述する実施例参照)。
或いは、後述するような電極形成用材料に予めビスマス化合物を混合しておき、該材料から成る成形物を所定の温度で焼成することによって、該焼成時に気化したビスマスを電極(即ち焼成した成形物)構成金属粒子の表面に偏在させることができる。
ここで開示される限界電流式ガスセンサを備えたガス濃度測定装置の形態の一典型例として、図2に示すような構成のいわゆる積層型の酸素ガス濃度測定装置20が挙げられる。図示されるように、この装置20は、アルミナ等から成る絶縁性の薄板状基材32と、その表面に形成された薄板状の固体電解質(例えばイットリア安定化ジルコニア)22との積層型装置である。固体電解質22と絶縁性基材32との間には内部空間25が形成されており、固体電解質22には該内部空間25に被検ガスを導入するためのガス導入孔25Aが形成されている。そのガス導入孔25Aを塞ぐようにして固体電解質22の表面に薄板状のガス拡散律速体(例えば多孔質アルミナ)24が形成されており、ガス導入孔25Aから内部空間25へのガス拡散速度を制限している。
そして、固体電解質22を挟んで一対の電極(例えばPt電極)26,28が形成されている。両電極26,28は電源、電流計等を備えた外部回路31と接続される。これにより電極26,28間に所定の電圧を印加することが可能となり、この装置20を限界電流式ガスセンサとして機能させることができる。好ましくは、適当なヒータ34を絶縁性基材32中に埋設するかその表面に形成する。このことによって、所望する温度(例えば500℃以上)でガス濃度測定を行うことができる。
或いは、内部空間25に配置される電極(検知極)28にはビスマスを実質的に含有させない一方、外部に配置される電極(対極)26を構成するPt粒子の表面にビスマスを含有させる(好ましくは偏在させる)ことによって、本装置20を被検ガスの空燃比を正確に測定し得る限界電流式空燃比センサ(空燃比測定装置)として使用することができる。即ち、内部空間25に配置された電極(検知極)28の触媒活性を積極的に利用して、内部空間25に導入された被検ガス中に含まれる可燃性ガスの含有率に応じた電流値の変化より空燃比を決定することができる。このとき、対極26の触媒活性はPt粒子表面に存在するビスマス(典型的には酸化ビスマス)によって低減(抑止)される。これにより、可燃性ガスを含む被検ガス雰囲気中に対極26を配置しても可燃性ガスの影響を受けないで安定した電位を維持することができる。従って、ここで開示される空燃比センサは、従来の空燃比センサのように大気室を別途設ける必要がない。このため、簡素な構成の空燃比測定装置を提供することができる。
他方、内部電極(検知極)48にはビスマスを実質的に含有させない一方、外部電極(対極)46を構成するPt粒子の表面にビスマスを含有させる(好ましくは偏在させる)ことによって、本センサ40を被検ガスの空燃比を正確に測定し得る薄膜型限界電流式空燃比センサとして使用することができる。
例えば、図5に示すような排ガス中の空燃比に基づく燃料供給システムが提供される。このシステムは、自動車等の内燃機関75に付設されるシステムであり、好ましくは、内燃機関75の排気系(即ち排気管)78に設けられる一又は二以上のガスセンサ72,74と、該センサ72,74からの検知信号に基づいて内燃機関75に供給する燃料の供給量を制御する制御装置(マイコン部)70とを備える。かかる燃料供給システムでは、内燃機関75から排出される排ガスの空燃比を排気系(排気管)78における排ガス浄化装置(即ち三元触媒)73の上流側に配置されたガスセンサ74及び/又は下流側に配置されたガスセンサ72にて測定する。そして、制御装置70は、該センサ74,72から入力した検知信号に基づいて現在の空燃比を判定し、理想空燃比が得られるように制御装置70から内燃機関の吸気系77に設けられた燃料添加装置(典型的にはフューエル・インジェクション)76の作動を制御する。これにより、例えば排ガス浄化装置(三元触媒)73の機能を最大限発揮し得るストイキ燃焼を自動制御で実現することができる。なお、制御装置(マイコン部)自体の構成、制御装置とガスセンサと燃料添加装置との電気的接続手段等は、従来のこの種のシステムと同様でよく、本発明を特徴付けるものではないため詳細な説明は省略する。
上述した図1に示す形態のガスセンサであって、検知極のビスマス含有率がそれぞれ異なるガスセンサを多数製造した。
即ち、薄板状(直径17mm、高さ1mm)に成形したイットリア安定化ジルコニア(ZrO2−6mol%Y2O3:以下「YSZ」という。)の両面に、白金(Pt)粉90質量%、イットリア安定化ジルコニア10質量%(但しビヒクル等の有機成分を除く)の組成の白金(Pt)電極形成用ペーストをスクリーン印刷した。その後、1500℃で1時間の焼成を行い、YSZ板の両面にPt粒子が焼結して成る薄膜状のPt電極(厚さ:10μm、面積:約0.5cm2、空隙率:約40%、密度:21.45g/cm3、Pt質量:約6.4mg)を形成した。
次いで、一方のPt電極に表1に示すいずれかの濃度の硝酸ビスマス水溶液を適量(表1参照)滴下した。滴下後、当該Pt電極上に所定形状(直径17mm、高さ0.5mm)の多孔質アルミナから成るガス拡散律速体を接着させた後、大気中、800℃で熱処理を行った。これにより、ガス拡散律速体により包囲された領域に配置された内部電極を構成するPt粒子の表面にビスマス(酸化ビスマス)を導入した。
このようにして、表1に示す計12種類のセンサ(サンプル1〜サンプル12)を製造した。表1には、各サンプルの製造に使用した硝酸ビスマスの濃度、滴下量、ビスマス添加量、及び、ビスマスを添加したPt電極(内部電極)における電極構成金属元素の総質量に対するビスマス質量含有率(即ち(Bi/Pt+Bi)×100)を示す。
表1から明らかなように、内部電極のビスマス含有率が0.0016質量%を越えるサンプル3〜12において限界電流値が可燃性ガス(ここではプロパン)の影響を受けずに良好であった。その一方、詳細なデータを示していないが、内部電極のビスマス含有率が10質量%を越えるサンプル11〜12では抵抗値が上昇してしまった(図中の△)。従って、本発明によって提供されるガスセンサを酸素センサとして用いる場合は、内部電極(検知極)のビスマス含有率は0.002〜10質量%程度が適当であり、0.01〜10質量%程度が好ましいことが認められた。
上述した図2に示すような断面形状の積層型ガスセンサ(ガス濃度測定装置)を製造した。即ち、実施例1で使用した組成のPt電極形成用ペーストを用いて所定の電極パターンが両面にスクリーン印刷された薄板形状(70mm×6mm×0.2mm)のガス導入孔付きYSZ板と、アルミナ(Al2O3)を主体とする絶縁シート(70mm×6mm×0.2mm)と、アルミナ(Al2O3)を主体とし且つヒータを実装した絶縁シート(70mm×6mm×2mm)とを積層して貼り合わせ、次いで約1500℃で焼成した。これにより、図2に示すような、ガス導入孔25A及び内部空間(即ち内部電極が配置されている検知空間)25を備えた積層体が得られた。
次に、0.002Mの硝酸ビスマス水溶液を当該内部空間内に注入した。次いで、850℃で熱処理を行い、内部電極を構成するPt粒子の表面にビスマスを導入した。ビスマス含有率は、0.82質量%であった。次いで、所定形状(6mm×5mm×0.3mm)の多孔質アルミナ製ガス拡散律速体をYSZ板表面のガス導入孔を塞ぐ位置に接着した。
これらグラフから明らかなように、比較例に係るセンサでは、内部電極(検知極)を構成する白金の触媒作用によってプロパンが燃焼し且つ酸素が消費される結果、限界電流は被検ガス中のプロパン濃度の増加とともに減少した。一方、本実施例に係るセンサでは、内部電極(検知極)を構成するPt粒子の表面にビスマスが存在(偏在)することにより極めて低いビスマス含有率であるにも拘わらず、電極を構成する白金の触媒作用を抑えて被検ガス中のプロパン濃度に拘わらず限界電流は常に一定であった。
また、被検ガス中の酸素濃度を変化させて本実施例に係るセンサの性能を評価した。図9に示すように、センサの限界電流は酸素濃度の変化(0〜0.5%)に対応して変化し、酸素センサとして好ましい性能を有することが確認された。即ち、ここで開示されるビスマス含有電極を内部電極として備えるガスセンサは、可燃性ガスが共存する雰囲気(例えば排ガス)中の酸素濃度を可燃性ガスに影響されることなく正確に検知・測定し得ることが確認された。
次に、製造した各センサを900℃に加熱し、そのまま200時間駆動させた後の両電極のビスマス含有率を調べた。結果を表2に示す。
次いで、得られたセンサ(ガス濃度測定装置)についてガス濃度検知特性試験を行った。即ち、このセンサを700℃に加熱するとともに基準被検ガス中に配置して限界電流を測定した。次に、該基準被検ガスにプロパンガスを導入し、被検ガス中のプロパン濃度が100、200、300、400ppmであるときの限界電流をそれぞれ求めた。比較例として、電極(内部電極及び外部電極)にビスマスを含まない同形状のセンサ(ガス濃度測定装置)について同様の試験を行った。結果を図10及び図11に示す。図10は外部電極にビスマスを含むガスセンサの酸素ガス検知特性(I−V特性)を示すグラフであり、図11は、いずれの電極にもビスマスを含まないガスセンサの酸素ガス検知特性を示すグラフである。
図11から明らかなように、ビスマスを含まないセンサでは、リーン雰囲気において限界電流は第1象限に得られ、リッチ雰囲気になると限界電流は第3象限に得られた。一方、図10から明らかなように、外部電極にビスマスを含むセンサでは、リーン雰囲気において限界電流は第1象限に得られ、リッチ雰囲気になると限界電流は第4象限に得られた。このことから、外部電極にビスマスを含む本発明の限界電流式ガスセンサでは、本実施例のように例えば0.3〜0.5Vの電圧を印加することにより、被検ガスの空燃比をリーン雰囲気からリッチ雰囲気に至るまで連続的に測定し得ることが確認された。このような特性は、従来、いわゆる大気導入型空燃比センサ(大気室の設置が必要である)でしか 得ることができなかった。本発明によって提供される空燃比センサを用いることにより、大気を導入することなく(即ち大気室を設ける必要なく)、両電極を同一雰囲気に配置するという簡単な構成で正確な空燃比を測定することができる。
図1(a)に示したガスセンサからガス拡散律速体14を除去し、検知極16の金属種類を変更し、図1(b)に示すガスセンサの構成部品110を製造し、酸素ガスのポンプ性能を測定した。
即ち、薄板状(直径17mm、高さ1mm)に成形したYSZ板12の一方の面に、実施例1で使用した組成のPt電極形成用ペーストを用いてスクリーン印刷し、1500℃で焼成した。次いで、YSZ板12の他方の面に、金(Au)粉90質量%、イットリア安定化ジルコニア10質量%(但しビヒクル等の有機成分を除く)の組成の金(Au)電極形成用ペーストを用いてスクリーン印刷した。その後、1000℃で1時間の焼成を行い、YSZ板12の一方の面にPt粒子が焼結して成る薄膜状のPt電極18を形成し、他方の面にAu粒子が焼結して成る薄膜状のAu電極16を形成した。
さらに、Au電極16に0.02mol/Lの硝酸ビスマス水溶液を10μL滴下した。Au電極16のビスマス含有率は0.65質量%になる。
硝酸ビスマス水溶液を滴下後、構成部品110を850℃で熱処理した。さらにAu電極16の金属表面にビスマスを偏在化させる為に、1%H2を含む窒素ガス中で通電処理を行った。また、比較のために、Au電極16にビスマスを含まない同形状の構成部品110も製造した。
図1(a)に示すガスセンサ10であり、内部電極16の金属種類のみ異なるガスセンサ10を製造した。ガスセンサ10の形成過程は実施例1若しくは実施例3と同一なため省略する。下記に示す5種類の内部電極16を用意した。
(1)Ptを主体とする金属粒子からなる内部電極。
(2)Ptを主体とする金属粒子に0.02mol/Lの硝酸ビスマス水溶液を20μL滴下した内部電極。
(3)Auを主体とする金属粒子を90質量%含み、Ptを主体とする金属粒子を10質量%含み、電極に0.02mol/Lの硝酸ビスマス水溶液を20μL滴下した内部電極。
(4)Auを主体とする金属粒子を97質量%含み、Ptを主体とする金属粒子を3質量%含み、電極に0.02mol/Lの硝酸ビスマス水溶液を20μL滴下した内部電極。
(5)Auを主体とする金属粒子に0.02mol/Lの硝酸ビスマス水溶液を20μL滴下した内部電極。
図13から、Auの割合が高いほど電流低下率が小さくなり、ガスセンサ10の検知能力が高くなることがわかる。その反面、白金および/またはパラジウムを主体とする金属粒子が少量だけ混在していると、固体電解質12と内部電極16の密着性を高めることができる。白金および/またはパラジウムを主体とする金属粒子が10質量%以下であれば、図13に示すように、電流低下率を許容範囲内に押さえることができ、固体電解質12と内部電極16の密着性を高めることができる。
上述した図3に示すような薄膜型ガスセンサを製造した。即ち、ガス拡散律速体として多孔質アルミナ基板(30mm×30mm×0.3mm)を用意した。RFスパッタリング装置と適当なターゲット材料を用いた一般的なスパッタ法により、該アルミナ基板上にPt電極(内部電極)、YSZ電解質膜及びPt電極(外部電極)をこの順に積層・形成した。同様の手法によって、アルミナ基板の裏面側に、Pt製内部ヒータを形成した。その後、3×3mmに細断し、一つのセンサを得た。そして、外部接続用白金製リード端子等の必要な部品を付設し、図3に示す形態の薄膜型センサを構築した。次いで最上層のPt電極膜(外部電極)に0.002Mの硝酸ビスマス水溶液を適量滴下し、酸化雰囲気中、850℃で熱処理を行った。これにより、Pt電極膜(外部電極)を構成するPt粒子の表面にビスマス(酸化ビスマス)に富むビスマス層を形成した。
得られた薄膜型センサについてガス濃度検知特性試験を行った。即ち、このセンサを内部ヒータを用いて700℃に加熱するとともに基準被検ガス中に配置して限界電流を測定した。次に、該基準被検ガスにプロパンガスを導入し、被検ガス中のプロパン濃度が100、200、300、400、500ppmであるときの限界電流をそれぞれ求めた。結果を図14に示す。図中の計6本の酸素ガス検知特性(I−V特性)曲線は、上から順に、被検ガス中のプロパン濃度が0、100、200、300、400、500ppmのときのものである。
図14から明らかなように、外部電極にビスマスを含む薄膜型センサでは、リーン雰囲気において限界電流は第1象限に得られ、リッチ雰囲気になると限界電流は第4象限に得られた。このことから、外部電極にビスマスを含む本発明の薄膜型限界電流式ガスセンサによると、本実施例のように例えば0.3〜0.5Vの電圧を印加することにより、大気を導入することなく、コンパクトな装置構成によって被検ガスの空燃比をリーン雰囲気からリッチ雰囲気に至るまで連続的に測定し得ることが確認された。
得られた混合電極層付き薄膜型センサを内部ヒータを用いて550℃に加熱するとともに、上記と同様のガス濃度検知特性試験を行った。その結果、リーン雰囲気において限界電流は第1象限に得られ、リッチ雰囲気になると限界電流は第4象限に得られた。即ち、混合電極層を備えた本センサによると、一定の電圧(例えば0.3〜0.5V)を印加することにより、低温条件下でも大気を導入することなくコンパクトな装置構成によって被検ガスの空燃比をリーン雰囲気からリッチ雰囲気に至るまで連続的に測定し得ることが確認された。
実施例5に示している薄膜型ガスセンサ40において、外部電極46がAuを主体とする金属粒子で形成されており、その表面にビスマスが偏在している薄膜型ガスセンサ40を製造した。
それとは別に、Auを主体とする金属粒子を97質量%を含み、Ptを主体とする金属粒子を3質量%含み、それらの金属粒子の表面にビスマスが偏在している外部電極46を有する薄膜型ガスセンサ40を製造した。薄膜型ガスセンサ40の製造工程は、実施例5と同じため省略する。
得られた2種類の薄膜型センサ40についてガス濃度検知特性試験を行った。即ち、この薄膜型ガスセンサ40をヒータ54を用いて700℃に加熱するとともにイソブタン燃焼排気ガス中に配置して、空気過剰率λ(測定雰囲気の空燃比/理論空燃比)が1.2、1.1、1.0、0.9であるときの限界電流をそれぞれ求めた。
外部電極46をAuで形成したガスセンサの酸素ガス検知特性曲線を図15に示し、外部電極46をAu粒子(97質量%)とPt粒子(3質量%)で形成したガスセンサの酸素ガス検知特性曲線を図16に示す。図15、図16の酸素ガス検知特性曲線は、上から順に空気過剰率λが1.2、1.1、1.0、0.9のときのものである。
図15から明らかなように、外部電極46がAu粒子で形成され、Au粒子の表面に偏った状態でビスマスを含む薄膜型センサ40では、リーン雰囲気において限界電流は第1象限に得られ、リッチ雰囲気になると限界電流は第4象限に得られた。このことから、外部電極46にビスマスを含む本発明の薄膜型限界電流式ガスセンサによると、本実施例のように例えば0.2〜0.6Vの電圧を印加することにより、大気を導入することなく、コンパクトな装置構成によって被検ガスの空燃比をリーン雰囲気からリッチ雰囲気に至るまで連続的に測定し得ることが確認された。
また図16から明らかなように、外部電極を形成する金属粒子がAu粒子(97質量%)とPt粒子(3質量%)で形成され、それらの金属粒子の表面に偏った状態でビスマスを含む薄膜型センサ40では、リーン雰囲気において限界電流は第1象限に得られ、リッチ雰囲気になると限界電流は第4象限に得られた。このことから、外部電極46にビスマスを含む本発明の薄膜型限界電流式ガスセンサによると、本実施例のように例えば0.2〜0.4Vの電圧を印加することにより、大気を導入することなく、コンパクトな装置構成によって被検ガスの空燃比をリーン雰囲気からリッチ雰囲気に至るまで連続的に測定し得ることが確認された。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。
12,22,42 固体電解質
14,24,44 ガス拡散律速体
16,28,48 電極(内部電極)
18,26,46 電極(外部電極)
20 ガス濃度測定装置(積層型ガスセンサ)
40 薄膜型ガスセンサ
Claims (15)
- 酸化物イオン導電性を有する固体電解質と、ガス拡散律速体と、該電解質とそれぞれ電気的に接する少なくとも一対の電極であって該ガス拡散律速体により被検ガスの拡散速度が制限される領域に配置される内部電極と該領域外に配置される外部電極とから成る一対の電極と、を備える限界電流式ガスセンサにおいて、
前記一対の電極のうち少なくとも一つの電極は、白金族に属するいずれかの金属、金、銀及びニッケルから成る群から選択される少なくとも一種の金属元素を主体とする金属粒子から形成されており、該金属粒子の表面に偏った状態でビスマスを含む、限界電流式ガスセンサ。 - 前記内部電極は、白金族に属するいずれかの金属、金、銀及びニッケルから成る群から選択される少なくとも一種の金属元素を主体とする金属粒子から形成されており、該金属粒子の表面に偏った状態でビスマスを含み、
該内部電極における電極構成金属元素の総質量に対するビスマスの含有率(Bi質量/電極構成金属元素の総質量)が0.01〜10質量%である、請求項1に記載の限界電流式ガスセンサ。 - 前記内部電極が白金を主体とする金属粒子から形成されている、請求項1又は2に記載の限界電流式ガスセンサ。
- 前記内部電極が金を主体とする金属粒子から形成されている、請求項1又は2に記載の限界電流式ガスセンサ。
- 前記内部電極が、金を主体とする金属粒子と、白金および/またはパラジウムを主体とする金属粒子から形成されており、
該内部電極における電極構成金属元素の総質量に対する白金および/またはパラジウムの含有率が10質量%以下である、請求項1又は2に記載の限界電流式ガスセンサ。 - 前記外部電極は、白金族に属するいずれかの金属、金、銀及びニッケルから成る群から選択される少なくとも一種の金属元素を主体とする金属粒子から形成されており、該金属粒子の表面に偏った状態でビスマスを含み、
該外部電極における電極構成金属元素の総質量に対するビスマスの含有率(Bi質量/電極構成金属元素の総質量)が0.1〜15質量%であり、且つ前記内部電極のビスマス含有率よりも高く設定されている、請求項2〜5のいずれかに記載の限界電流式ガスセンサ。 - 酸化物イオン導電性を有する固体電解質と、ガス拡散律速体と、該電解質とそれぞれ電気的に接する少なくとも一対の電極であって該ガス拡散律速体により被検ガスの拡散速度が制限される領域に配置される内部電極と該領域外に配置される外部電極とから成る一対の電極と、を備える限界電流式ガスセンサにおいて、
前記外部電極は、白金族に属するいずれかの金属、金、銀及びニッケルから成る群から選択される少なくとも一種の金属元素を主体とする金属粒子から形成されており、該金属粒子の少なくとも表面にビスマスを含み、
前記内部電極には実質的にビスマスが含まれていない、限界電流式ガスセンサ。 - 前記外部電極を形成する前記金属粒子の表面に偏った状態でビスマスを含む、請求項7に記載の限界電流式ガスセンサ。
- 前記外部電極におけるビスマスの質量含有率が電極構成金属元素の総質量に対するビスマス換算(Bi質量/電極構成金属元素の総質量)で0.1〜15質量%である、請求項7又は8に記載の限界電流式ガスセンサ。
- 前記外部電極が白金を主体とする金属粒子から形成されている、請求項7〜9のいずれかに記載の限界電流式ガスセンサ。
- 前記外部電極が金を主体とする金属粒子から形成されている、請求項7〜9のいずれかに記載の限界電流式ガスセンサ。
- 前記外部電極が、金を主体とする金属粒子と、白金および/またはパラジウムを主体とする金属粒子から形成されており、
該内部電極における電極構成金属元素の総質量に対する白金および/またはパラジウムの含有率が10質量%以下である、請求項7〜9のいずれかに記載の限界電流式ガスセンサ。 - 請求項1〜12のいずれかに記載の限界電流式ガスセンサを備えるガス濃度測定装置。
- 空燃比センサとして内燃機関の排気系に設けられた請求項7〜12のいずれかに記載の限界電流式ガスセンサと、
該センサからの検知信号に基づき、前記排気系に設けられた排ガス浄化装置における排ガス浄化処理の態様を制御する制御装置と、
を備える、排ガス中の空燃比に基づく排ガス浄化システム。 - 空燃比センサとして内燃機関の排気系に設けられた請求項7〜12のいずれかに記載の限界電流式ガスセンサと、
該センサからの検知信号に基づき、前記内燃機関に供給する燃料の供給量を制御する制御装置と、
を備える、排ガス中の空燃比に基づく燃料供給システム。
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