JPH10168582A - 円筒状部材の内周面への被膜形成方法 - Google Patents

円筒状部材の内周面への被膜形成方法

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JPH10168582A
JPH10168582A JP27487897A JP27487897A JPH10168582A JP H10168582 A JPH10168582 A JP H10168582A JP 27487897 A JP27487897 A JP 27487897A JP 27487897 A JP27487897 A JP 27487897A JP H10168582 A JPH10168582 A JP H10168582A
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JP
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cylindrical member
intermediate layer
peripheral surface
inner peripheral
vacuum chamber
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Application number
JP27487897A
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English (en)
Inventor
Osamu Sugiyama
杉山  修
Yukio Miya
宮  行男
Ryuta Koike
▲龍▼太 小池
Takashi Toida
孝志 戸井田
Toshiichi Sekine
敏一 関根
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Citizen Watch Co Ltd
Original Assignee
Citizen Watch Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 円筒状部材の内周面に均一な膜厚で中間層を
形成し、その上に硬質カーボン膜を密着性よくしかも均
一な膜厚で形成することができるようにする。 【解決手段】 円筒状部材11の内周面11bを形成す
る開口11a内に第1の中間層材料からなる補助電極2
3を挿入し、その補助電極23のスパッタあるいは抵抗
加熱蒸着により第1の中間層を形成する。さらに、その
円筒状部材11に補助電極を挿入して、真空層内にシリ
コン又はゲルマニウムを含むガスを導入してプラズマを
発生させ、内周面11bの第1の中間層上にシリコン膜
又はゲルマニウム膜による第2の中間層を形成する。そ
の後、真空層内に炭素を含むガスを導入してプラズマを
発生させ、内周面11bの第2の中間層上に硬質カーボ
ン膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は円筒状部材の内周
面への被膜形成方法に関し、特に各種のブッシュ,ピス
トンシリンダ,ベアリング等の円筒状部材(部品)の内
周面に、密着性を高める中間層を介して硬質カーボン膜
を被覆し、その内周面の耐摩耗性を高める被膜形成方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】硬質カーボン膜は黒色を有し、ダイヤモ
ンドによく似た性質をもつ。すなわち硬質カーボン膜
は、機械的硬度が高く、他の部材と接触したときの摩擦
係数が小さく、電気的絶縁性が高く、熱伝導率が大き
く、耐腐食性も高いなどの優れた特性をもつ。そのた
め、各種の装飾品や医療機器,磁気ヘッド,工具など
に、この硬質カーボン膜を被覆することが提案されてい
る。
【0003】そして、この硬質カーボン膜は水素化アモ
ルファス・カーボン膜であり、前述のようにダイヤモン
ドとよく似た性質をもつため、ダイヤモンド・ライク・
カーボン(DLC)膜と呼ばれたり、あるいはi−カー
ボン膜とも呼ばれている。
【0004】この硬質カーボン膜を基材の表面に密着性
よく形成するために、たとえば、特開昭56−6920
号公報に見られるような被膜形成方法がある。すなわ
ち、基材の表面にシリコンまたはシリコン化合物からな
る中間層をアルゴンガスと炭素を含むガスとの混合ガス
を用いるスパッタリング法により形成し、その後、この
中間層上に硬質カーボン膜を形成する。
【0005】このような従来技術によって、例えば炭素
工具鋼からなるブッシュ等の円筒状部材を基材としてそ
の内周面に、中間層と硬質カーボン膜とを形成する方法
を図を用いて説明する。図9は、硬質カーボン膜の下層
に形成する従来の中間層の形成方法を示す断面図であ
る。この図に示すように、シリコンやシリコン化合物な
どの中間層材料からなるターゲット30と、内周面11
bを形成する開口11aを有する円筒状部材11とを互
いに対向するように、真空槽13内に配置する。
【0006】そして、図示しない排気手段によって真空
槽13内を排気口17から真空排気する。その後、ガス
導入口15からスパッタガスとしてアルゴン(Ar)ガ
スを導入する。さらにその後、ターゲット30にはター
ゲット電源39から直流負電圧を印加し、円筒状部材1
1にも直流電源25から直流負電圧を印加する。
【0007】それにより真空槽13内にはプラズマが発
生し、このプラズマ中のイオンによって中間層材料から
なるターゲット30の表面をスパッタする。それによっ
て、このターゲット30の表面から叩き出され中間層材
料の分子が円筒状部材11の内周面11bに付着し、シ
リコンやシリコン化合物からなる中間層を円筒状部材1
1の内周面11b上に形成することができる。
【0008】次に、この中間層の上面に硬質カーボン膜
を形成する。その硬質カーボン膜の従来の形成方法を図
10を用いて説明する。図10に示すように、ガス導入
口15と排気口17とを有する真空槽13内に内周面に
中間層を形成した円筒状部材11を配置する。そして、
排気口17から真空槽13の内部を、図示しない排気手
段によって真空排気する。その後、ガス導入口15から
炭素を含むガスを真空槽13内に導入して、設定圧力に
なるように調整する。
【0009】その後、真空槽内に設けられたアノード3
1にアノード電源27から直流正電圧を印加し、フィラ
メント33にはフィラメント電源29から交流電圧を印
加する。さらに円筒状部材11には、直流電源25から
直流の負電圧を印加する。それによって真空槽13内に
プラズマを発生させて、円筒状部材11の内周面の中間
層上に硬質カーボン膜を形成する。
【0010】この図10に示す硬質カーボン膜の被膜形
成方法においては、円筒状部材11に印加する直流電圧
により発生するプラズマと、交流電圧を印加したフィラ
メント33と直流電圧を印加したアノード31とによる
プラズマとが発生する。そして、硬質カーボン膜を形成
するときの真空槽13内の圧力により、円筒状部材11
の周囲のプラズマか、フィラメント33とアノード31
の近傍のプラズマのいずれかが主になって、硬質カーボ
ン膜を形成する。
【0011】例えば、真空槽13内の圧力が3×10-3
torr 以上のときは、円筒状部材11の周囲に発生する
プラズマが主になって、炭素を含むガスを分解して硬質
カーボン膜を形成する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】このとき、円筒状部材
11の外周面には硬質カーボン膜を均一性よく形成する
ことができるが、開口11a内の面である内周面11b
に形成される硬質カーボン膜は密着性が悪く、硬度など
の膜質も劣る。これは、円筒状部材11には全体に同じ
電圧が印加されており、内周面は同電位の電極同士が対
向している空間となり、その開口11a内でのプラズマ
はホロー放電と呼ばれる異常放電を発生する。このホロ
ー放電によって形成される硬質カーボン膜は、ポリマー
ライクな密着性の悪い被膜であり、円筒状部材11から
剥離しやすく、その硬度も低い。
【0013】これに対して、真空槽13内の圧力が3×
10-3 torr より低いときは、円筒状部材11の周囲の
プラズマより、フィラメント33とアノード31の近傍
に発生するプラズマが主に寄与して硬質カーボン膜を形
成する。
【0014】このときも、円筒状部材11の外周面には
硬質カーボン膜を均一性よく形成することができるが、
開口11a内の内周面11bには硬質カーボン膜を円筒
状部材11の軸線方向に均一な膜厚で形成することがで
きない。ここで、フィラメント33とアノード31の近
傍に発生するプラズマでイオン化された炭素イオンは、
円筒状部材11に印加された直流負電位に引っ張られて
堆積し円筒状部材の表面に硬質カーボン膜を形成してい
る。
【0015】前述の真空槽13内の圧力が3×10-3 t
orr より高いときは、硬質カーボン膜が化学気相成長的
に形成されるのに対して、圧力が3×10-3 torr より
低いときは、硬質カーボン膜が物理気相成長的に形成さ
れる。このために、フィラメント33とアノード31の
近傍に発生するプラズマが主に寄与する硬質カーボン膜
形成のときは、真空蒸着法などの物理的気相成長法によ
る場合と同様に、円筒状部材11の内周面11bでは開
口11aの開口端から奥側に向かうに従って、硬質カー
ボン膜の膜厚が薄くなる。その結果、円筒状部材11の
内周面には硬質カーボン膜を全面に均一な膜厚で形成す
ることができなかった。
【0016】また、図9によって説明した中間層の形成
においても、同様に円筒状部材11の内周面11bには
開口11aの開口端から奥側に向かうに従って、中間層
の膜厚が薄くなる。この円筒状部材の内周面に形成する
中間層の膜厚分布を、図11を用いて説明する。図11
の線図では、横軸は円筒状部材の内周面の開口端からの
距離を示し、縦軸は円筒状部材の内周面に形成される中
間層の膜厚を示している。そして、曲線aが図9に示し
た形成方法によって中間層を形成したときの中間層の膜
厚状態を示す。
【0017】従来の方法で中間層を形成した場合、この
図の曲線aに示すように、開口端に0.5μmの膜厚の
中間層を形成したとき、開口端から奥側に30mmに入
った位置では、0.1μmと極端にその膜厚が薄くなっ
ている。このように中間層の膜厚分布のばらつきが大き
くなると、この中間層の上面に硬質カーボン膜を形成し
たとき、円筒状部材11の開口端近傍では密着性よく硬
質カーボン膜を形成することができるが、開口端から奥
側に入るに従って硬質カーボン膜の密着性が悪くなり、
剥離し易くなってしまう。
【0018】これは、円筒状部材の開口内の奥では、中
間層の膜厚が薄くなっているので硬質カーボン膜のスト
レスに耐えきれず、中間層と硬質カーボン膜が剥離して
しまうためである。そのため、従来の方法で円筒状部材
の内周面に中間層と硬質カーボン膜を形成しても、硬質
カーボン膜の優れた特性により耐摩耗性や耐腐食性を高
めるなどの効果を充分に得ることができなかった。
【0019】この発明は、この課題を解決して、円筒状
部材の内周面に均一な膜厚で中間層を形成し、その上に
硬質カーボン膜を密着性よくしかも均一な膜厚で形成す
ることができるようにすることを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、この発明による被膜形成方法は、いずれも円筒状部
材の内周面に、該円筒状部材と密着性のよい第1の中間
層(下層)と硬質カーボン膜と結合性のよい第2の中間
層(上層)を形成する第1,第2の中間層形成工程と、
その第2の中間層上に硬質カーボン膜を形成する硬質カ
ーボン膜形成工程とからなる。
【0021】そして、そのいずれの工程においても、円
筒状部材の内周面を形成する開口内に補助電極を挿入
し、その補助電極と円筒状部材との間に電圧を印加し
て、プラズマによるスパッタ、抵抗加熱蒸着、化学気相
成長(CVD)法等によって被膜形成を行なうことを特
徴としている。上記第1の中間層形成工程では、第1の
中間層材料(チタン又はクロム)からなる補助電極を使
用して、アルゴン等のスパッタガスによるスパッタある
いは抵抗加熱蒸着により、円筒状部材の内周面に第1の
中間層を形成する。
【0022】第2の中間層形成工程では、上記と同じか
あるいはステンレス等の金属材料で作られた補助電極を
使用し、真空層内にシリコン又はゲルマニウムを含むガ
スを導入してプラズマを発生させ、プラズマCVDプロ
セスによって、円筒状部材の内周面の上記第1の中間層
上にシリコン膜又はゲルマニウム膜による第2の中間層
を形成する。
【0023】いずれの場合も、円筒状部材は真空槽内に
配置して接地電位にするかあるいはそれに直流負電圧を
印加し、補助電極には直流負電圧,高周波電圧,あるい
は交流電圧を印加する。
【0024】また、硬質カーボン膜形成工程では、真空
槽内に内周面に上記第1,第2の中間層を形成した円筒
状部材を配置して、その開口内に補助電極を挿入し、該
補助電極を接地電位にするかあるいは直流正電圧を印加
する。そして、真空槽内を排気した後、ベンゼンC6H
6,メタンCH4 等の炭素を含むガスを導入し、円筒状
部材に電圧を印加して真空槽内にプラズマを発生させ、
プラズマCVDプロセスにより該円筒状部材の内周面の
第2の中間層上に硬質カーボン膜を形成する。
【0025】そのプラズマを発生させるために、円筒状
部材に直流電圧(負電圧)を印加するか、高周波電圧を
印加するか、あるいは円筒状部材に直流電圧を印加する
とともに、真空槽内に設けたアノードに直流電圧を印加
し、フィラメントに交流電圧を印加する方法のいずれか
を行なう。上記第1,第2の中間層形成工程および硬質
カーボン膜形成工程は、それぞれ別の真空槽で行なう
か、同じ真空槽で時間をおいて行なってもよいが、同じ
真空槽内で連続して行なうこともできる。
【0026】円筒状部材は、ガイドブッシュ,シリン
ダ,ベアリングなどの内周面が他の部材と摺接する円筒
状の部材(一方の端面が閉じているものも含む)であ
り、一般に合金工具鋼(SK鋼)等の金属製であるが、
セラミック等の絶縁性材料からなるもの、あるいは金属
基材の内周面に超硬合金やセラミックをロー付けなどに
よって固着したものなどでも、この発明を実施できる。
【0027】円筒状部材が絶縁性材料からなる場合は、
第1の中間層形成工程では接地電位にはできないので浮
遊電位になるが、補助電極の中間層材料から飛び出した
イオンはプラスの電位を持っており、このイオンより電
位が低い個所に引き付けられて膜を形成するので、浮遊
電位の円筒状部材の内周面にも第1の中間層を形成する
ことができる。
【0028】第2の中間層形成工程および硬質カーボン
膜形成工程では、円筒状部材が絶縁性材料からなる場合
でも、その内周面に金属膜による第1の中間層が形成さ
れているので、それに電圧を印加することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図1は、この発明による被膜形
成方法によって円筒状部材の内周面に形成される被膜構
成を拡大して示す模式図である。
【0030】この図1に示す円筒状部材の内周面の被膜
構成は、合金工具鋼等の基材によって形成された円筒状
部材11の内周面11bに、基材に対する密着性を高め
るための第1の中間層12aと、硬質カーボン膜に対す
る密着性を高める第2の中間層12bとからなる二層の
中間層12を形成し、その中間層12上に硬質カーボン
(DLC)膜3を形成している。
【0031】その二層の中間層12のうち、第1の中間
層12aはチタン(Ti)膜、クロム(Cr)膜、アル
ミニウム(Al)膜、またはチタン−シリコン合金、カ
ーボン−シリコン合金、クロム−シリコン合金等の金属
シリサイド膜、あるいはチタン−ゲルマニウム合金膜、
クロム−ゲルマニウム合金膜、アルミニウム−シリコン
合金膜などで形成される。
【0032】第2の中間層12bは、シリコン(Si)
膜またはゲルマニウム(Ge)膜、あるいはシリコン−
カーボン合金膜などで形成される。以下に、上述した第
1の中間層12a、第2の中間層12b、および硬質カ
ーボン膜3の形成工程についてそれぞれ説明する。
【0033】〔第1の中間層を形成する工程の第1の
例:図2〕まず、円筒状部材の内周面に第1の中間層を
形成する工程の第1の例を、図2を用いて説明する。こ
こでは、図1に示した第1の中間層12aとしてチタン
膜を形成する例で説明する。
【0034】図2に示すように、ガス導入口15と排気
口17とを備えた真空槽13の中に、基材として円筒状
の中心開口11aを有する円筒状部材11を、絶縁支持
具10によって下部を真空槽13に固定して配置する。
この円筒状部材11は、各種のブッシュやシリンダ,ベ
アリング等の部品であり、例えば合金工具鋼(SK鋼)
等の金属で形成されており、真空槽13と共にアースに
接続して接地電位に保持する。
【0035】そして、この円筒状部材11の開口11a
内の中心軸上に、中間層材料であるチタン材料からなる
ロッド状の補助電極23を挿入するように配置する。そ
して、図示しない排気手段によって真空槽13内を3×
10-5 torr の真空度になるまで排気する。その後、ガ
ス導入口15からスパッタガスとしてアルゴンガスを真
空槽13内に導入して、真空度を5×10-3 torr にな
るように制御する。
【0036】さらに、直流電源35からマイナス500
Vの直流電圧を補助電極23に印加する。すると円筒状
部材11の開口11a内で補助電極23の周囲領域にプ
ラズマが発生して、そのプラズマ中のイオンによってチ
タン材料からなる補助電極23の表面をスパッタする。
なお、例えば円筒状部材11の内径(開口11aの直
径)が10mmであるとき、補助電極23の直径は2m
m程度のものを使用するとよい。しかし、補助電極23
の断面形状は円形に限らず、三角や四角あるいはその他
の多角形状としてもよい。
【0037】そして、この補助電極23の表面からスパ
ッタにより叩き出された中間層材料の分子が円筒状部材
11の内周面11bに付着し、そこにチタン膜からなる
中間層を形成することができる。このスパッタリング処
理を30分間行ない、円筒状部材11の開口内面に0.
5μm の厚さのチタン膜からなる第1の中間層12a
を形成する。
【0038】このように、この実施例における第1の中
間層形成工程においては、円筒状部材11の開口11a
内に中間層材料からなる補助電極23を配置して、開口
11a内の補助電極23の周囲にプラズマを発生させ、
円筒状部材11の内周面11bに第1の中間層を形成す
る。円筒状部材11の開口11a内に補助電極23を配
置して形成するプラズマは、円筒状部材11の軸線方向
での全長に亘って均一であるため、その内周面11bに
均一な膜厚で第1の中間層12a(図1)を形成するこ
とができる。
【0039】この第1の中間層形成工程によって形成さ
れる第1の中間層の膜厚分布を図3に示す。この図3の
線図は、横軸が円筒状部材11の開口端からの距離を示
し、縦軸は円筒状部材11の内周面11bに形成される
第1の中間層の膜厚を示す。そして、曲線bが第1の中
間層の膜厚分布を示す。
【0040】この図に示すように、円筒状部材11の開
口端に0.5μmの膜厚の第1の中間層を形成したと
き、その第1の中間層の膜厚は、開口端から奥側へ30
mmに入った位置でも殆ど変化なく、内周面11bの全
域に亘って均一な膜厚でチタン膜からなる第1の中間層
が形成されている。
【0041】なお、この第1の中間層形成工程におい
て、円筒状部材11を接地電位にする例で説明したが、
円筒状部材11に直流負電圧を印加するようにしてもよ
い。その後、この円筒状部材11の内周面に形成した第
1の中間層12a上に、図1に示した第2の中間層12
bを形成し、さらにその上に硬質カーボン膜3を形成す
るが、それらの第2の中間層と硬質カーボン膜形成工程
については後述する。
【0042】〔第1の中間層を形成する工程の第2の
例:図4〕円筒状部材の内周面に第1の中間層を形成す
る工程の第2の例を、図4を用いて説明する。この図4
において図2と同じ部分には同一の符号を付してあり、
それらの説明は省略する。
【0043】この第1の中間層形成工程において、図2
によって説明した第1の例と異なるのは、円筒状部材1
1の開口11a内の中心軸上に挿入配置した補助電極2
3に、高周波電源36からマッチング回路19を介して
高周波電力を印加する点だけである。このときの高周波
電力は例えば400W(ワット)である。
【0044】このようにしても、円筒状部材11の開口
11a内で補助電極23の周囲領域にプラズマが発生し
て、そのプラズマ中のイオンによってチタン材料からな
る補助電極23の表面をスパッタし、その表面からスパ
ッタにより叩き出された中間層材料であるチタン(T
i)の分子が円筒状部材11の内周面全域に均一に付着
する。それによって、チタン膜からなる第1の中間層1
2aを、図3に曲線bで示すように均一な膜厚で形成す
ることができる。その他の条件等は前述の第1の例と同
じであるから、説明を省略する。
【0045】〔第1の中間層を形成する工程の第3の
例:図5〕円筒状部材の内周面に第1の中間層を形成す
る工程の第3の例を、図5を用いて説明する。この図5
においても図2と同じ部分には同一の符号を付してあ
り、それらの説明は省略する。この第1の中間層形成工
程において、図2によって説明した第1の例と異なるの
は、円筒状部材11の開口11a内の中心軸上に挿入配
置した、中間層材料であるチタン材料からなる補助電極
23の両端を交流電源37に接続したことである。
【0046】そして、真空槽13内を3×10-5 torr
の真空度になるように排気した後、アルゴンガスを真空
槽13内に導入することなく、交流電源37によって交
流電圧を、例えば電流が2A流れるように補助電極23
に印加する。すると、円筒状部材11の開口11a内に
配設されている補助電極23が抵抗加熱されてその表面
が溶融し、真空槽13内の真空度が高いため蒸発する。
その蒸発したチタン分子が、円筒状部材11の内周面1
1bに抵抗加熱蒸着法により付着して、チタン膜からな
る第1の中間層を形成する。
【0047】この場合も、円筒状部材11の開口11a
内の全長に亘って、補助電極23の表面からの抵抗加熱
による中間層材料の蒸発が均等に発生するため、円筒状
部材11の内周面11bの全域に亘って、図3に示すよ
うに均一な膜厚で第1の中間層が形成することができ
る。その他の条件等は前述の第1の例と同じであるか
ら、説明を省略する。
【0048】なお、これらの第1の中間層形成工程に使
用する補助電極23の太さは、円筒状部材11の開口1
1aの径より小さければよいが、好ましくは円筒状部材
11の内周面11bとの間に4mm程度の隙間、すなわ
ち充分なプラズマ形成領域を設けるようにするとよい。
さらに、その補助電極23の長さは、円筒状部材11の
開口11a内に挿入したとき、開口11aの長さ(軸線
方向の寸法)とほぼ同じになるか、あるいは若干突出す
る長さにするとよい。
【0049】また、上述の各例では、補助電極23をチ
タンで構成し、第1の中間層12aをチタン膜で形成す
る例について説明した。しかし、これに限るものではな
く、例えば、補助電極23をクロム(Cr)、アルミニ
ウム(Al)、またはチタン−シリコン合金、カーボン
−シリコン合金、クロム−シリコン合金、チタン−ゲル
マニウム合金、クロム−ゲルマニウム合金、またはアル
ミニウム−シリコン合金等で構成し、第1の中間層12
aをそれらの金属膜あるいは合金膜で形成することもで
きる。
【0050】〔第2の中間層を形成する工程の第1実施
例:図6〕次に、円筒状部材11の内周面11bに上述
のように形成した第1の中間層12a上に、図1に示す
ように第2の中間層12bを形成する第2の中間層形成
工程について説明する。この場合も3種類の工程がある
が、その第1の例について、図6を用いて説明する。
【0051】この第2の中間層形成工程では、図6に示
すように排気口17及びガス導入口15を有し、内部に
アノード31とフィラメント33を設けた真空槽13を
用いる。その真空槽13内に内周面に第1の中間層12
aを形成した円筒状部材11を、絶縁支持具10によっ
て下部を真空槽13に固定して配置する。
【0052】この円筒状部材11の開口11a内の中心
軸線上に、補助電極23′を挿入して配置する。その補
助電極23′は真空槽13を介してアースに接続して接
地電位にする。この補助電極23′としては、第1の中
間層形成工程で使用した補助電極23をそのまま継続し
て使用してもよいし、ステンレス等の金属材料で作られ
た別のロッド状の補助電極を使用してもよい。
【0053】そして、図示しない排気手段によって、真
空槽13内を真空度が3×10-5torrになるように排気
口17から排気する。その後、ガス導入口15からシリ
コンを含むガスとしてモノシラン(SiH4)を真空槽
13内に導入して、この真空槽13内の真空度が5×1
0-3 torr になるように制御する。
【0054】その後、アノード31には直流電源27か
らプラス10Vの直流電圧を印加し、フィラメント33
には交流電源29から10Vの交流電圧を印加して、3
0Aの電流がフィラメント33に流れるようにする。ま
た、円筒状部材11には直流電源25からマイナス3k
Vの直流電圧を印加する。
【0055】このとき、円筒状部材11の開口11a内
に接地電位の補助電極23′が挿入配置されているた
め、円筒状部材11の外周部だけでなく、開口11a内
にもプラズマが発生する。そのため、プラズマCVDプ
ロセスにより、円筒状部材11の内周面11bの第1の
中間層(チタン膜)上に、第2の中間層として厚さが
0.5μm程度のシリコン膜が形成される。
【0056】このように、円筒状部材11の開口11a
内に補助電極23′を配置して第2の中間層の形成処理
を行なうことにより、円筒状部材11の同電位同士が対
向している内周面11bの間に接地電位の補助電極2
3′が配設されるため、異常放電であるホロー放電の発
生がなくなり、第2の中間層の密着性が向上する。
【0057】さらに、円筒状部材11の開口11a内で
軸線方向の全長において、その電位特性が均一になり、
内周面11bの第1の中間層(チタン膜)上に形成され
る第2の中間層の膜厚が変化することなく、図3に示し
た第1の中間層の膜厚と同様に、開口端付近から奥側ま
で内周面11bの全域に均一な膜厚で第2の中間層を形
成することができる。
【0058】そして、このように二層膜構造の中間層1
2を形成すると、図1に示した下層の第1の中間層12
aを構成するチタンは、円筒状部材11との密着性を保
つ役割をもち、上層の第2の中間層12bを構成するシ
リコンは、後述する硬質カーボン膜3と共有結合してそ
れと強く結合する役割をもつ。なお、ガス導入口15か
ら導入するガスは、シリコンを含むガスとしてモノシラ
ンを使用する実施例で説明したが、ゲルマニウム(G
e)を含むガスを導入してゲルマニウム膜からなる第2
の中間層を形成してもよい。
【0059】また、シリコンを含むガスとしてジシラン
(Si2 H6 )を使用することもできる。さらに、モノ
シランやジシランなどのシリコンを含むガスに水素(H
2 )やヘリウム(He)やアルゴン(Ar)を添加して
もよい。あるいは、モノシランやジシランなどのシリコ
ンを含むガスにメタンやエチレンなどの炭素を含むガス
を混合してもよい。この場合は第2の中間層12bとし
て、シリコン−カーボン合金膜が形成できる。
【0060】また、この第2の中間層形成工程において
は、補助電極23′を接地電位にしたが、補助電極2
3′に直流正電圧を印加するようにしてもよい。
【0061】〔第2の中間層を形成する工程の第2の
例:図7〕この第2の中間層形成工程の第2の例におい
ても、上述の第1の例と同様な処理を行なうが、図7に
示すように、使用する真空槽13内には図6に示したア
ノード31とフィラメント33は設けられていない。
【0062】そして、この真空槽13内に、中心開口1
1a内に補助電極23′を挿入して、内周面11bに第
1の中間層12aを形成した円筒状部材11を配置し、
その真空度が3×10-5 torr になるように排気した
後、ガス導入口15からシリコンを含むガスとしてモノ
シラン(SiH4 )を導入し、真空度を0.1torr にな
るように調整する。
【0063】さらに、円筒状部材11には、13.56
MHz の発振周波数を有する高周波電源21からマッ
チング回路49を介して400Wの高周波電力を印加
し、真空槽13内の円筒状部材11の開口11a内を含
む周囲領域にプラズマを発生させる。
【0064】そのため、プラズマCVDプロセスによ
り、円筒状部材11の内周面11bの第1の中間層上
に、硬質カーボン膜と結合性のよいシリコン膜からなる
第2の中間層が均一な膜厚で形成され、二層の中間層1
2となる。その他の条件や作用・効果などは、前述の第
2の中間層を形成する工程の第1の例と同様であるの
で、その説明は省略する。
【0065】〔第2の中間層を形成する工程の第3の
例:図8〕この第2の中間層形成工程の第3の例におい
ても、上述の第1実施例と同様な処理を行なう。この場
合も、図8に示すように真空槽13内に、内周面11b
に第1の中間層12aを形成した円筒状部材11を、絶
縁支持具10によって下部を真空槽13に固定して配置
し、その開口11a内の中心部に接地した補助電極2
3′を挿入して配設する。
【0066】そして、この真空槽13内をその真空度が
3×10-5 torr になるように排気した後、ガス導入口
15からシリコンを含むガスとしてモノシラン(SiH
4 )を真空槽13内に導入し、真空度を0.1torr にな
るように調整する。さらに、円筒状部材11には直流電
源25からマイナス600Vの直流電圧を印加して、真
空槽13内にプラズマを発生させる。
【0067】したがって、プラズマCVDプロセスによ
って円筒状部材11の内周面11bの第1の中間層12
a上に硬質カーボン膜3と結合性のよいシリコン膜から
なる第2の中間層12bが均一な膜厚で形成され、二層
の中間層12となる。その他の条件や作用・効果など
は、前述の第2の中間層を形成する工程の第1の例と同
様であるので、その説明は省略する。
【0068】〔硬質カーボン膜形成工程の第1の例:図
6〕上述した第1,第2の中間層形成工程によって、内
周面11bに二層の中間層12を形成した円筒状部材1
1の第2の中間層上に、図1に示した硬質カーボン膜3
を形成するが、その硬質カーボン膜形成工程も3種類あ
る。その3種類の硬質カーボン膜形成工程で使用する装
置は、図6から図8に示した3種類の第2の中間層形成
工程で使用したものと同じであるから、再び図6から図
8を用いて各硬質カーボン膜形成工程を説明する。
【0069】まず、その第1の例を図6によって説明す
る。図6において、図2,図4,図5と対応する部分に
は同一の符号を付してあるが、必ずしも同一のものを使
用する必要はない。この硬質カーボン膜形成工程では、
図6に示すように、ガス導入口15と排気口17とを有
し、内部にアノード31とフィラメント33を設けた真
空槽13内に、内周面11bに中間層12を形成した円
筒状部材11を、絶縁支持具10によって下部を真空槽
13に固定して配置する。
【0070】この円筒状部材11の開口11a内の中心
軸線上に、補助電極23′を挿入して配置する。その補
助電極23′は真空槽13を介してアースに接続して接
地電位にする。この補助電極23′としては、第2の中
間層形成工程で使用した補助電極23をそのまま継続し
て使用してもよいし、ステンレス等の金属材料で作られ
た別のロッド状の補助電極を使用してもよい。
【0071】そして、図示しない排気手段によって、真
空槽13内を真空度が3×10-5torrになるように排気
口17から排気する。その後、ガス導入口15から炭素
を含むガスとしてベンゼン(C6 H6 )を真空槽13内
に導入して、真空槽13内の圧力を5×10-3 torr に
なるように制御する。
【0072】さらに、アノード31には直流電源27か
らプラス10Vの直流電圧を印加し、フィラメント33
には交流電源29から10Vの交流電圧を印加して、3
0Aの電流がフィラメント33に流れるようにする。ま
た、円筒状部材11には直流電源25からマイナス3k
Vの直流電圧を印加して、真空槽13内にプラズマを発
生させる。
【0073】このとき、円筒状部材11の開口11a内
に接地電位の補助電極が挿入配置されているため、円筒
状部材11の外周部だけでなく、開口11a内にもプラ
ズマが発生する。それによって、円筒状部材11の全面
に1μmから5μm程度の硬質カーボン膜3(DLC)
が形成される。
【0074】このように、円筒状部材11の開口11a
内に補助電極23′を配置して硬質カーボン膜3の形成
処理を行なうことにより、同電位同士が対向している中
間層12を形成した内周面11bの間に接地電位の補助
電極23′が配設されるため、異常放電であるホロー放
電の発生がなくなり、硬質カーボン膜3の密着性が向上
する。
【0075】さらに、円筒状部材11の開口11a内で
軸線方向の全長において、その電位特性が均一になり、
内周面11bの第2の中間層上に形成される硬質カーボ
ン膜3の膜厚が変化することなく、開口端付近から奥側
まで内周面11bの全域に均一な膜厚で硬質カーボン膜
を形成することができる。そのうえ、硬質カーボン膜の
下層に形成した各中間層も、前述のように円筒状部材1
1の内周面11bの全域に均一な膜厚で形成されている
ため、ストレスに起因する中間層と硬質カーボン膜3の
剥離は発生しない。
【0076】したがって、この発明による第1、第2の
中間層形成工程と硬質カーボン膜形成工程によって、円
筒状部材11の内周面11bに中間層12及び硬質カー
ボン膜3を形成すると、基材である円筒状部材11に対
する硬質カーボン膜の密着性が極めて良好となる。
【0077】この硬質カーボン膜形成工程においても、
補助電極23′の太さは、円筒状部材11の開口11a
の径より小さければよいが、好ましくは内周面11bと
の間に4mm程度の隙間、すなわちプラズマ形成領域を
設けるようにするとよい。また、この補助電極23′の
長さは、円筒状部材11に挿入したときに開口11aの
軸線方向の寸法と略同じか、あるいは円筒状部材11か
ら補助電極23′が若干突出するようにするとよい。
【0078】〔硬質カーボン膜形成工程の第2の例:図
7〕次に、硬質カーボン膜の形成工程の第2の例を図7
によって説明する。図7においても、図2,図4,図5
と対応する部分には同一の符号を付してあるが、必ずし
も同一のものを使用する必要はない。この場合に使用す
る真空槽13内には、アノード31とフィラメント33
が設けられていない。
【0079】そして、前述の例と同様にこの真空槽13
内に、内周面11bに中間層12を形成した円筒状部材
11を、絶縁支持具10によって下部を真空槽13に固
定して配置し、その開口11a内の中心部に接地した補
助電極23′を挿入して配設する。この補助電極23′
としても、第2の中間層形成工程で使用した補助電極2
3をそのまま継続して使用してもよいし、ステンレス等
の金属材料で作られた別のロッド状の補助電極を使用し
てもよい。
【0080】そして、真空槽13内を真空度が3×10
-5 torr になるように排気した後、ガス導入口15から
炭素を含むガスとしてメタン(CH4 )を真空槽13内
に導入し、真空度を0.1torr になるように調整する。
【0081】また、円筒状部材11には、13.56M
Hz の発振周波数を有する高周波電源21からマッチ
ング回路49を介して400Wの高周波電力を印加し、
真空槽13内の円筒状部材11の周囲領域にプラズマを
発生させ、プラズマCVDプロセスによつて、円筒状部
材11の内周面11bの中間層12上を含む全面に硬質
カーボン膜3を形成する。
【0082】この場合も、円筒状部材11の開口11a
内に接地電位の補助電極23′が配設されているため、
円筒状部材11の外周部だけでなく、開口11a内にも
プラズマが発生し、内周面11bの中間層12上にも硬
質カーボン膜3が形成される。 その他の条件や作用・
効果などは、前述の硬質カーボン膜形成工程の第1の例
と同様であるので、その説明は省略する。
【0083】〔硬質カーボン膜形成工程の第3の例:図
8〕次に、硬質カーボン膜の形成工程の第3の例を図8
によって説明する。図8においても、図2,図4,図5
と対応する部分には同一の符号を付してあるが、必ずし
も同一のものを使用する必要はない。
【0084】この場合も、図8に示すように真空槽13
内に、内周面11bに二層の中間層12を形成した円筒
状部材11を、絶縁支持具10によって下部を真空槽1
3に固定して配置し、その開口11a内の中心部に接地
した補助電極23′を挿入して配設する。この補助電極
23′としても、第2の中間層形成工程で使用した補助
電極23′をそのまま継続して使用してもよいし、ステ
ンレス等の金属材料で作られた別のロッド状の補助電極
を使用してもよい。
【0085】そして、この真空槽13内をその真空度が
3×10-5 torr になるように排気した後、ガス導入口
15から炭素を含むガスとしてメタン(CH4 )を真空
槽13内に導入し、真空度を0.1torr になるように調
整する。そして、円筒状部材11には直流電源25から
マイナス600Vの直流電圧を印加して、真空槽13内
にプラズマを発生させ、プラズマCVDプロセスにより
円筒状部材11の全面に硬質カーボン膜を形成する。
【0086】この場合も、円筒状部材11の開口11a
内に接地電位の補助電極23′が配設されているため、
円筒状部材11の外周部だけでなく開口11a内にもプ
ラズマが発生し、内周面11bの中間層12上にも硬質
カーボン膜3が形成される。
【0087】この例においても、円筒状部材11の開口
11a内に補助電極23′を配置して硬質カーボン膜3
の形成処理を行なうことにより、同電位同士が対向して
いる中間層12を形成した内周面11bの間に接地電位
の補助電極23′が配設されるため、異常放電であるホ
ロー放電の発生がなくなり、硬質カーボン膜3の密着性
が向上する。また、円筒状部材11の開口端付近から奥
側まで内周面11bの全域に均一な膜厚で硬質カーボン
膜3を形成することができる。その他の条件および作用
・効果は前述の第1の例と同様であるので、説明を省略
する。
【0088】これらの硬質カーボン膜形成工程は、前述
した第1、第2の中間層形成工程とは別の真空槽を使用
して行なうか、同じ真空槽を使用して時間をおいて行な
ってもよいが、同じ真空槽内で連続して行なうこともで
きる。しかし、好ましくは同一の装置を用いて連続して
中間層と硬質カーボン膜とを形成する方がよい。その理
由は、円筒状部材の内周面に形成される中間層と硬質カ
ーボン膜との被膜の相互の密着性が向上するためであ
る。
【0089】そして、同一の装置を用いて連続して中間
層と硬質カーボン膜とを形成するときは、第2の中間層
を形成した後、補助電極23を接地電位とし、円筒状部
材11に直流負電圧あるいは高周波電圧を印加し、さら
にガス導入口15から導入するガスを炭素を含むガスに
変えればよい。
【0090】また、第2の中間層の形成工程を硬質カー
ボン膜の形成工程と同じプラズマ化学気相成長(CV
D)法で行なうことにより、これらの工程は、ガス導入
口15に導入するガスを変えるだけで、簡単に同一の装
置を用いて連続して行なうことができる。
【0091】さらに、図6から図8を用いて説明した各
硬質カーボン膜形成工程の説明においては、炭素を含む
ガスとしてメタンガスやベンゼンガスを用いる例につい
て説明したが、メタン以外にエチレンなどの炭素を含む
ガスや、あるいはヘキサンなどの炭素を含む液体の蒸発
蒸気も使用することができる。
【0092】また、説明した3種類の第1の中間層形成
工程と、3種類の第2の中間層形成工程と、3種類の硬
質カーボン膜形成工程との組み合わせは任意であり、2
7通りの組み合わせが可能である。上記の各実施形態の
説明において示した具体的な数値は一例であり、円筒状
部材及び補助電極の材質,形状,大きさなどに応じて種
々変更される。
【0093】なお、図6から図8を用いて説明した各第
2の中間層形成工程、及び硬質カーボン膜形成工程によ
れば、円筒状部材11の外周部と開口11a内とにプラ
ズマが形成されるため、第2の中間層及び硬質カーボン
膜が円筒状部材11の外周面と内周面とに形成されるこ
とになる。しかし、円筒状部材11の外周部に被覆部材
を配置したり、簡易的にはアルミニウム箔を円筒状部材
11の外周部に巻き付けることにより、円筒状部材11
の内周面11bにのみ第2の中間層12b及び硬質カー
ボン膜3を形成することができる。
【0094】また、上述した第2の中間層形成工程およ
び硬質カーボン膜形成工程の各例の説明においては、円
筒状部材11の開口11a内に配置する補助電極23′
はアースに接続して接地電位とするように説明した。し
かし、この補助電極23′に直流電源から直流の正電圧
を印加して第2の中間層あるいは硬質カーボン膜を形成
するようにしてもよい。このように、補助電極23′に
直流の正電圧を印加して第2の中間層または硬質カーボ
ン膜を形成すると次のような効果がある。
【0095】すなわち、直流正電圧を補助電極23′に
印加すると、この補助電極23′の周囲領域に電子を集
める効果を生じ、補助電極23′の周囲領域は電子密度
が高くなる。それによって必然的にシリコン又はゲルマ
ニウム、あるいは炭素を含む分子と電子との衝突確率が
増え、ガス分子のイオン化が促進され、その補助電極2
3′の周囲領域のプラズマ密度が高くなる。
【0096】そのため補助電極23′に直流の正電圧を
印加して第2の中間層または硬質カーボン膜3を形成す
ると、補助電極23′を接地電位にしたときと比べて第
2の中間層または硬質カーボン膜の被膜形成速度が速く
なる。さらに、円筒状部材11の開口11aの大きさが
小さくなり、内周面11bと補助電極23′との隙間寸
法が小さくなると、補助電極23′に直流正電圧を印加
しないで第2の中間層または硬質カーボン膜3を形成し
ようとしても、円筒状部材11の開口11a内にプラズ
マが発生せず、被膜形成ができなくなる。
【0097】これに対して、補助電極23′に直流正電
圧を印加して第2の中間層または硬質カーボン膜3を形
成する場合には、円筒状部材11の開口11a内に配置
した補助電極23′に印加した直流正電圧によって電子
を強制的に補助電極23′の周囲領域に集めることがで
きる。そのため、補助電極23′の周囲にプラズマを発
生させることができ、開口11aが小さい円筒状部材1
1の内周面11bにも、第2の中間層または硬質カーボ
ン膜3の形成が可能になる。
【0098】また、前述した第1の中間層形成工程にお
いては、円筒状部材11を接地電位にしたが、直流負電
圧を印加してもよい。さらに、円筒状部材11がセラミ
ック等の絶縁性材料でできている場合には、接地も直流
負電圧の印加もせず浮遊電位にしておいても、その円筒
状部材11の内周面に補助電極23の中間層材料により
第1の中間層を均一な膜厚で形成することができる。
【0099】
【発明の効果】以上説明してきたように、この発明によ
る円筒状部材の内周面への被膜形成方法における第1,
第2の中間層形成工程、および硬質カーボン膜形成工程
においては、いずれも基材である円筒状部材の開口内に
補助電極を挿入して、プラズマを発生させたり抵抗加熱
蒸着を行なったりして、第1,第2の中間層あるいは硬
質カーボン膜を形成する。
【0100】そのため、同電位の電極同士が対向してい
る円筒状部材の開口内に、接地電位あるいは直流負電圧
が印加された補助電極が存在することとなり、同電位同
士が対向することがなくなる。このような電位状態は、
プラズマ化学気相成長(CVD)法にとって最も望まし
い状態であり、異常放電であるホロー放電は発生しな
い。
【0101】それによって、密着性の良好な中間層およ
び硬質カーボン膜を形成することができる。しかも、中
間層および硬質カーボン膜は、円筒状部材の内周面にそ
の開口端側から奥側まで全域に亘って均一な膜厚で形成
される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による被膜形成方法によつて円筒状部
材の内周面に形成される被膜構成を拡大して示す模式図
である。
【図2】この発明による被膜形成方法における第1の中
間層形成工程の第1の例を説明するための断面図であ
る。
【図3】円筒状部材の内周面にこの発明による第1の中
間層形成工程で第1の中間層を形成した場合の膜厚分布
を示す線図である。
【図4】この発明による被膜形成方法における第1の中
間層形成工程の第2の例を説明するための断面図であ
る。
【図5】同じく第1の中間層形成工程の第3の例を説明
するための断面図である。
【図6】この発明による被膜形成方法における第2の中
間層形成工程及び硬質カーボン膜形成工程の第1の例を
説明するための断面図である。
【図7】同じく第2の中間層形成工程及び硬質カーボン
膜形成工程の第2の例を説明するための断面図である。
【図8】同じく第2の中間層形成工程及び硬質カーボン
膜形成工程の第3の例を説明するための断面図である。
【図9】従来の中間層の形成方法を説明するための断面
図である。
【図10】硬質カーボン膜の従来の形成方法を説明する
ための断面図である。
【図11】は円筒状部材の内周面に従来の方法で中間層
を形成した場合の膜厚分布を示す線図である。
【符号の説明】
3:硬質カーボン膜 10:絶縁支持具 11:円筒状部材 11a:中心開口 11b:内周面 12:二層の中間層 12a:第1の中間層(下層) 12b:第2の中間層(上層) 13:真空槽 15:ガス導入口 17:排気口 19,49:マッチング回路 21,36:高周波電源 23,23′:補助電極 25,27,35:直流電
源 29,37:交流電源 31:アノード 33:フィラメント
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年10月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正内容】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 戸井田 孝志 埼玉県所沢市大字下富字武野840番地 シ チズン時計株式会社所沢事業所内 (72)発明者 関根 敏一 東京都田無市本町6丁目1番12号 シチズ ン時計株式会社田無製造所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空槽内に円筒状部材を配置するととも
    にも、該円筒状部材の内周面を形成する開口内に、第1
    の中間層材料からなる補助電極を挿入し、前記円筒状部
    材を接地電位にするかあるいはそれに直流負電圧を印加
    して、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内にスパッタガス
    を導入し、 前記補助電極に直流負電圧を印加して前記円筒状部材の
    開口内の前記補助電極の周囲にプラズマを発生させ、該
    補助電極をなす第1の中間層材料のスパッタにより、前
    記円筒状部材の内周面に該円筒状部材と密着性のよい第
    1の中間層を形成する第1の中間層形成工程と、 真空槽内に内周面に前記第1の中間層を形成した円筒状
    部材を配置し、該円筒状部材の前記開口内に補助電極を
    挿入し、該補助電極を接地電位にするかあるいはそれに
    直流正電圧を印加し、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内にシリコンまた
    はゲルマニウムを含むガスを導入し、 前記円筒状部材に電圧を印加して前記真空槽内にプラズ
    マを発生させ、プラズマCVDプロセスにより前記円筒
    状部材の内周面の前記第1の中間層上に硬質カーボン膜
    と結合性のよい第2の中間層を形成する第2の中間層形
    成工程と、 真空槽内に内周面に前記第1,第2の中間層を形成した
    円筒状部材を配置し、 該円筒状部材の前記開口内に補助電極を挿入し、該補助
    電極を接地電位にするかあるいはそれに直流正電圧を印
    加して、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内に炭素を含むガ
    スを導入し、 前記円筒状部材に電圧を印加して前記真空槽内にプラズ
    マを発生させ、プラズマCVDプロセスにより該円筒状
    部材の内周面の前記第2の中間層上に硬質カーボン膜を
    形成する硬質カーボン膜形成工程と、 からなることを特徴とする円筒状部材の内周面への被膜
    形成方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の円筒状部材の内周面への
    被膜形成方法において、前記第1の中間層形成工程で、
    前記補助電極に直流負電圧を印加する代わりに高周波電
    力を印加することを特徴とする円筒状部材の内周面への
    被膜形成方法。
  3. 【請求項3】 真空槽内に円筒状部材を配置するととも
    にも、該円筒状部材の内周面を形成する開口内に、第1
    の中間層材料からなる補助電極を挿入し、前記円筒状部
    材を接地電位にするかあるいはそれに直流負電圧を印加
    して、 前記真空槽内を排気した後、前記補助電極に交流電圧を
    印加し、該補助電極をなす第1の中間層材料の抵抗加熱
    蒸着により前記円筒状部材の内周面に該円筒状部材と密
    着性のよい第1の中間層を形成する第1の中間層形成工
    程と、 真空槽内に内周面に前記第1の中間層を形成した円筒状
    部材を配置し、該円筒状部材の前記開口内に補助電極を
    挿入し、該補助電極を接地電位にするかあるいはそれに
    直流正電圧を印加し、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内にシリコンまた
    はゲルマニウムを含むガスを導入し、 前記円筒状部材に電圧を印加して前記真空槽内にプラズ
    マを発生させ、プラズマCVDプロセスにより前記円筒
    状部材の内周面の前記第1の中間層上に硬質カーボン膜
    と結合性のよい第2の中間層を形成する第2の中間層形
    成工程と、 真空槽内に内周面に前記第1,第2の中間層を形成した
    円筒状部材を配置し、 該円筒状部材の前記開口内に補助電極を挿入し、該補助
    電極を接地電位にするかあるいはそれに直流正電圧を印
    加して、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内に炭素を含むガ
    スを導入し、 前記円筒状部材に電圧を印加して前記真空槽内にプラズ
    マを発生させ、プラズマCVDプロセスにより該円筒状
    部材の内周面の前記第2の中間層上に硬質カーボン膜を
    形成する硬質カーボン膜形成工程と、 からなることを特徴とする円筒状部材の内周面への被膜
    形成方法。
  4. 【請求項4】 前記第2の中間層形成工程において、前
    記真空槽として内部にアノードとフィラメントを設けた
    ものを使用し、前記円筒状部材に直流電圧を印加すると
    ともに、前記アノードに直流電圧を、前記フィラメント
    に交流電圧をそれぞれ印加して、前記真空槽内にプラズ
    マを発生させることを特徴とする請求項1乃至3のいず
    れか一項に記載の円筒状部材の内周面への被膜形成方
    法。
  5. 【請求項5】 前記第2の中間層形成工程において、前
    記円筒状部材に高周波電力を印加して前記真空槽内にプ
    ラズマを発生させることを特徴とする請求項1乃至3の
    いずれか一項に記載の円筒状部材の内周面への被膜形成
    方法。
  6. 【請求項6】 前記第2の中間層形成工程において、前
    記円筒状部材に直流電圧を印加して前記真空槽内にプラ
    ズマを発生させることを特徴とする請求項1乃至3のい
    ずれか一項に記載の円筒状部材の内周面への被膜形成方
    法。
  7. 【請求項7】 前記硬質カーボン膜形成工程において、
    前記真空槽として内部にアノードとフィラメントを設け
    たものを使用し、前記円筒状部材に直流電圧を印加する
    とともに、前記アノードに直流電圧を、前記フィラメン
    トに交流電圧をそれぞれ印加して前記真空槽内にプラズ
    マを発生させることを特徴とする請求項1乃至6のいず
    れか一項に記載の円筒状部材の内周面への被膜形成方
    法。
  8. 【請求項8】 前記硬質カーボン膜形成工程において、
    前記円筒状部材に高周波電力を印加して前記真空槽内に
    プラズマを発生させることを特徴とする請求項1乃至6
    のいずれか一項に記載の円筒状部材の内周面への被膜形
    成方法。
  9. 【請求項9】 前記硬質カーボン膜形成工程において、
    前記円筒状部材に直流電圧を印加して前記真空槽内にプ
    ラズマを発生させることを特徴とする請求項1乃至6の
    いずれか一項に記載の円筒状部材の内周面への被膜形成
    方法。
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