JP2997215B2 - 円筒状部材の内周面への被膜形成方法 - Google Patents

円筒状部材の内周面への被膜形成方法

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JP2997215B2
JP2997215B2 JP8272698A JP27269896A JP2997215B2 JP 2997215 B2 JP2997215 B2 JP 2997215B2 JP 8272698 A JP8272698 A JP 8272698A JP 27269896 A JP27269896 A JP 27269896A JP 2997215 B2 JP2997215 B2 JP 2997215B2
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宮  行男
▲龍▼太 小池
孝志 戸井田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は円筒状部材の内周
面への被膜形成方法に関し、特に各種のブッシュ,ピス
トンシリンダ,ベアリング等の円筒状部材(部品)の内
周面に、密着性を高める中間層を介して硬質カーボン膜
を被覆し、その内周面の耐摩耗性を高める被膜形成方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】硬質カーボン膜は黒色を有し、ダイヤモ
ンドによく似た性質をもつ。すなわち硬質カーボン膜
は、機械的硬度が高く、他の部材と接触したときの摩擦
係数が小さく、電気的絶縁性が高く、熱伝導率が大き
く、耐腐食性も高いなどの優れた特性をもつ。そのた
め、各種の装飾品や医療機器,磁気ヘッド,工具など
に、この硬質カーボン膜を被覆することが提案されてい
る。
【0003】そして、この硬質カーボン膜は水素化アモ
ルファス・カーボン膜であり、前述のようにダイヤモン
ドとよく似た性質をもつため、ダイヤモンド・ライク・
カーボン(DLC)膜と呼ばれたり、あるいはi−カー
ボン膜とも呼ばれている。
【0004】この硬質カーボン膜を基材の表面に密着性
よく形成するために、たとえば、特開昭56−6920
号公報に見られるような被膜形成方法がある。すなわ
ち、基材の表面にシリコンまたはシリコン化合物からな
る中間層をアルゴンガスと炭素を含むガスとの混合ガス
を用いるスパッタリング法により形成し、その後、この
中間層上に硬質カーボン膜を形成する。
【0005】このような従来技術によって、例えば炭素
工具鋼からなるブッシュ等の円筒状部材を基材としてそ
の内周面に、中間層と硬質カーボン膜とを形成する方法
を図を用いて説明する。図10は、硬質カーボン膜の下
層に形成する従来の中間層の形成方法を示す断面図であ
る。この図に示すように、シリコンやシリコン化合物な
どの中間層材料からなるターゲット37と、内周面11
bを形成する開口11aを有する円筒状部材11とを互
いに対向するように、真空槽13内に配置する。
【0006】そして、図示しない排気手段によって真空
槽13内を排気口17から真空排気する。その後、ガス
導入口15からスパッタガスとしてアルゴン(Ar)ガ
スを導入する。さらにその後、ターゲット37にはター
ゲット電源39から直流負電圧を印加し、円筒状部材1
1にも直流電源25から直流負電圧を印加する。
【0007】それにより真空槽13内にはプラズマが発
生し、このプラズマ中のイオンによって中間層材料から
なるターゲット37の表面をスパッタする。それによっ
て、このターゲット37の表面から叩き出され中間層材
料の分子が円筒状部材11の内周面11bに付着し、シ
リコンやシリコン化合物からなる中間層を円筒状部材1
1の内周面11b上に形成することができる。その後、
この中間層の上面に硬質カーボン膜を形成する。その硬
質カーボン膜の従来の形成方法を図11を用いて説明す
る。
【0008】図11に示すように、ガス導入口15と排
気口17とを有する真空槽13内に内周面に中間層を形
成した円筒状部材11を配置する。そして、排気口17
から真空槽13の内部を、図示しない排気手段によって
真空排気する。その後、ガス導入口15から炭素を含む
ガスを真空槽13内に導入して、設定圧力になるように
調整する。
【0009】その後、真空槽内に設けられたアノード3
1にアノード電源27から直流正電圧を印加し、フィラ
メント33にはフィラメント電源29から交流電圧を印
加する。さらに円筒状部材11には、直流電源25から
直流の負電圧を印加する。それによって真空槽13内に
プラズマを発生させて、円筒状部材11の内周面の中間
層上に硬質カーボン膜を形成する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】この図11に示す硬質
カーボン膜の被膜形成方法においては、円筒状部材11
に印加する直流電圧により発生するプラズマと、交流電
圧を印加したフィラメント33と直流電圧を印加したア
ノード31とによるプラズマとが発生する。そして、硬
質カーボン膜を形成するときの真空槽13内の圧力によ
り、円筒状部材11の周囲のプラズマか、フィラメント
33とアノード31の近傍のプラズマのいずれかが主に
なって、硬質カーボン膜を形成する。
【0011】例えば、真空槽13内の圧力が3×10-3
torr 以上のときは、円筒状部材11の周囲に発生する
プラズマが主になって、炭素を含むガスを分解して硬質
カーボン膜を形成する。
【0012】このとき、円筒状部材11の外周面には硬
質カーボン膜を均一性よく形成することができるが、開
口11a内の面である内周面11bに形成される硬質カ
ーボン膜は密着性が悪く、硬度などの膜質も劣る。これ
は、円筒状部材11には全体に同じ電圧が印加されてお
り、内周面は同電位の電極同士が対向している空間とな
り、その開口11a内でのプラズマはホロー放電と呼ば
れる異常放電を発生する。このホロー放電によって形成
される硬質カーボン膜は、ポリマーライクな密着性の悪
い被膜であり、円筒状部材11から剥離しやすく、その
硬度も低い。
【0013】これに対して、真空槽13内の圧力が3×
10-3 torr より低いときは、円筒状部材11の周囲の
プラズマより、フィラメント33とアノード31の近傍
に発生するプラズマが主に寄与して硬質カーボン膜を形
成する。このときも、円筒状部材11の外周面には硬質
カーボン膜を均一性よく形成することができるが、開口
11a内の内周面11bには硬質カーボン膜を円筒状部
材11の軸線方向に均一な膜厚で形成することができな
い。
【0014】ここで、フィラメント33とアノード31
の近傍に発生するプラズマでイオン化された炭素イオン
は、円筒状部材11に印加された直流負電位に引っ張ら
れて堆積し、円筒状部材の表面に硬質カーボン膜を形成
している。
【0015】前述の真空槽13内の圧力が3×10-3 t
orr より高いときは、硬質カーボン膜が化学気相成長的
に形成されるのに対して、圧力が3×10-3 torr より
低いときは、硬質カーボン膜が物理気相成長的に形成さ
れる。このためにフィラメント33とアノード31の近
傍に発生するプラズマが主に寄与する硬質カーボン膜形
成のときは、真空蒸着法などの物理的気相成長法による
場合と同様に、円筒状部材11の内周面11bでは開口
11aの開口端から奥側に向かうに従って、硬質カーボ
ン膜の膜厚が薄くなる。その結果、円筒状部材11の内
周面には硬質カーボン膜を全面に均一な膜厚で形成する
ことができなかった。
【0016】また、図10によって説明した中間層の形
成においても、同様に円筒状部材11の内周面11bに
は開口11aの開口端から奥側に向かうに従って、中間
層の膜厚が薄くなる。
【0017】この円筒状部材の内周面に形成する中間層
の膜厚分布を、図12を用いて説明する。図12の線図
では、横軸は円筒状部材の内周面の開口端からの距離を
示し、縦軸は円筒状部材の内周面に形成される中間層の
膜厚を示している。そして、曲線aが図10に示した形
成方法によって中間層を形成したときの中間層の膜厚状
態を示す。
【0018】従来の方法で中間層形成した場合、この図
の曲線aに示すように、開口端に0.5μmの膜厚の中
間層を形成したとき、開口端から奥側に30mmに入っ
た位置では、0.1μmと極端にその膜厚が薄くなって
いる。このように中間層の膜厚分布のばらつきが大きく
なると、この中間層の上面に硬質カーボン膜を形成した
とき、円筒状部材11の開口端近傍では密着性よく硬質
カーボン膜を形成することができるが、開口端から奥側
に入るに従って硬質カーボン膜の密着性が悪くなり、剥
離し易くなってしまう。
【0019】これは、円筒状部材の開口内の奥では、中
間層の膜厚が薄くなっているので硬質カーボン膜のスト
レスに耐えきれず、中間層と硬質カーボン膜が剥離して
しまうためである。そのため、従来の方法で円筒状部材
の内周面に中間層と硬質カーボン膜を形成しても、硬質
カーボン膜形の優れた特性により耐摩耗性や耐腐食性を
高めるなどの効果を充分に得ることができなかった。
【0020】この発明は、この課題を解決して、円筒状
部材の内周面に均一な膜厚で中間層を形成し、その上に
硬質カーボン膜を密着性よくしかも均一な膜厚で形成す
ることができるようにすることを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、この発明による円筒状部材の内周面への被膜形成方
法は、いずれも円筒状部材の内周面に硬質カーボン膜に
対する密着性を高めるための二層の中間層を形成する中
間層形成工程と、その中間層上に硬質カーボン膜を形成
する硬質カーボン膜形成工程とからなる。
【0022】そして、そのいずれの工程においても、円
筒状部材の内周面を形成する開口内に補助電極を挿入
し、その補助電極と円筒状部材との間に電圧を印加し
て、プラズマによるスパッタ、抵抗加熱蒸着、化学気相
成長(CVD:Chemical VaporDeposition)法等によっ
て被膜形成を行なうことを特徴としている。
【0023】中間層形成工程では、中間層材料からなる
補助電極を使用して、そのスパッタあるいは抵抗加熱蒸
着により金属膜の中間層を形成する場合と、真空層内に
スパッタガス(アルゴンガス等)と炭素又はシリコンを
含むガスを導入して、補助電極からスパッタされた分子
と炭素又はシリコンとが反応した炭化金属膜又は金属シ
リサイド膜を形成する場合とがある。
【0024】そして、二層の中間層を形成するために
材料の異なる補助電極を使用してそのスパッタあるいは
抵抗加熱蒸着により、円筒状部材の内周面と密着性のよ
い第1の中間層(下層)と硬質カーボン膜と密着性のよ
い第2の中間層(上層)とを順次形成する場合と、補助
電極のスパッタあるいは抵抗加熱蒸着により第1の中間
層を形成した後、真空層内にスパッタガスと炭素又はシ
リコンを含むガスを導入して、補助電極からスパッタさ
れた分子と炭素又はシリコンとが反応した炭化金属膜又
は金属シリサイド膜による第2の中間層を形成する場合
とがある。
【0025】いずれの場合も、円筒状部材は真空槽内に
配置して接地あるいは浮遊電位に保持し、補助電極には
直流負電圧,高周波電圧,あるいは交流電圧を印加す
る。
【0026】また、硬質カーボン膜形成工程では、真空
槽内に内周面に中間層を形成した円筒状部材を配置し
て、その開口内に補助電極を挿入し、該補助電極を接地
電位にする。そして、真空槽内を排気した後、ベンゼン
C6H6,メタンCH4 等の炭素を含むガスを導入し、円
筒状部材に電圧を印加して真空槽内にプラズマを発生さ
せ、プラズマCVD法により該円筒状部材の内周面の中
間層上に硬質カーボン膜を形成する。
【0027】そのプラズマを発生させるために、円筒状
部材に直流電圧(負電圧又は正電圧)を印加するか、高
周波電圧を印加するか、あるいは円筒状部材に直流電圧
を印加するとともに、真空槽内に設けたアノードに直流
電圧を印加し、フィラメントに交流電圧を印加する方法
のいずれかを行なう。
【0028】上記中間層形成工程と硬質カーボン膜形成
工程とは、別の真空槽で行なうか、同じ真空槽で時間を
おいて行なってもよいが、同じ真空槽内で連続して行な
う方がよい。
【0029】円筒状部材は、ガイドブッシュ,シリン
ダ,ベアリングなどの内周面が他の部材と摺接する円筒
状の部材(一方の端面が閉じているものも含む)であ
り、一般に炭素工具鋼(SK鋼)等の金属製であるが、
セラミック等の絶縁性材料からなるもの、あるいは金属
基材の内周面に超硬合金やセラミックをロー付けなどに
よって固着したものなどでも、この発明を実施できる。
【0030】円筒状部材が絶縁性材料からなる場合は、
中間層形成工程ではその円筒状部材接地電位にはできな
いので浮遊電位になるが、補助電極の中間層材料から飛
び出したイオンはプラスの電位を持っており、このイオ
ンより電位が低い箇所に引き付けられて膜を形成するの
で、浮遊電位の円筒状部材の内周面にも中間層を形成す
ることができる。
【0031】硬質カーボン膜形成工程では、円筒状部材
が絶縁性材料からなる場合でも、その内周面に金属膜の
中間層が形成されているので、それに電圧を印加するこ
とができる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図1及び図2は、この発明によ
る被膜形成方法によって円筒状部材の内周面に形成され
る被膜構成を拡大して示す模式図である。この発明によ
る被膜形成方法は、この図1及び図2に示すように、基
材である円筒状部材11の内周面11bに、硬質カーボ
ン膜に対する密着性を高めるための中間層2又は12を
形成する中間層形成工程と、その中間層2又は12上に
硬質カーボン(DLC)膜3を形成する硬質カーボン膜
形成工程とからなる。
【0033】中間層形成工程には、図1に示すような単
層の中間層2を形成する場合と、図2に示すような第1
の中間層(下層)12aと第2の中間層(上層)12b
からなる二層の中間層12を形成する場合とがある。図
1に示す単層の中間層2は、チタン−シリコン合金(金
属シリサイド)被膜、チタン−炭素合金(金属炭化物)
被膜などで形成される。
【0034】図2に示す二層の中間層12は、第1の中
間層12aがチタン(Ti),クロム(Cr),モリブ
デン(Mo),タングステン(W),タンタル(T
a),アルミニウム(Al)などで形成され、第2の中
間層12bはチタン−シリコン合金(金属シリサイド)
被膜、チタン−炭素合金(炭化チタン)等の金属炭化物
被膜、あるいはシリコン(Si)やゲルマニウム(G
e)などで形成される。そして、中間層形成工程におい
ても硬質カーボン膜形成工程においても、円筒状部材1
1の内周面11bを形成する開口内に補助電極を挿入し
て被膜形成を行なう。
【0035】〔単層の中間層を形成する工程の第1の
例:図3〕まず、円筒状部材の内周面に単層の中間層形
成する工程の第1の例を、図3を用いて説明する。ここ
では、図1に示した中間層2としてチタン−シリコン合
金膜を形成する例で説明する。
【0036】図3に示すように、ガス導入口15と排気
口17とを備えた真空槽13の中に、基材として円筒状
の中心開口11aを有する円筒状部材11を、絶縁支持
具10によって下部を真空槽13に固定して配置する。
この円筒状部材11は、各種のブッシュやシリンダ,ベ
アリング等の部品であり、例えば炭素工具鋼(SK鋼)
等の金属で形成されており、真空槽13と共にアースに
接続して接地電位に保持する。
【0037】そして、この円筒状部材11の開口11a
内の中心軸上に、中間層材料であるチタン−シリコン合
金材料からなるロッド状の補助電極23を挿入するよう
に配置する。この例では、この補助電極23を構成する
チタン−シリコン合金材料中のシリコンの比率は30w
t%から70wt%とする。そして、図示しない排気手
段によって真空槽13内を3×10-5 torr の真空度に
なるまで排気する。その後、ガス導入口15からスパッ
タガスとしてアルゴンガスを真空槽13内に導入して、
真空度を5×10-3 torr になるように制御する。
【0038】さらに、直流電源35からマイナス500
Vの直流電圧を補助電極23に印加する。すると円筒状
部材11の開口11a内で補助電極23の周囲領域にプ
ラズマが発生して、そのプラズマ中のイオンによってチ
タン−シリコン合金材料からなる補助電極23の表面を
スパッタする。なお、例えば円筒状部材11の内径(開
口11aの直径)が10mmであるとき、補助電極23
の直径は2mm程度のものを使用するとよい。しかし、
補助電極23の断面形状は円形に限らず、三角や四角あ
るいはその他の多角形状としてもよい。
【0039】そして、この補助電極23の表面からスパ
ッタにより叩き出された中間層材料の分子が円筒状部材
11の内周面11bに付着し、そこにチタン−シリコン
合金膜(金属シリサイド膜)からなる中間層を形成する
ことができる。このスパッタリング処理を30分間行な
い、円筒状部材11の開口内面に0.5μm の厚さのチ
タン−シリコン合金膜からなる中間層を形成する。
【0040】このように、この実施例における中間層形
成工程においては、円筒状部材11の開口11a内に中
間層材料からなる補助電極23を配置して、開口11a
内の補助電極23の周囲にプラズマを発生させ、円筒状
部材11の内周面11bに中間層を形成する。円筒状部
材11の開口11a内に補助電極23を配置して形成す
るプラズマは、円筒状部材11の軸線方向での全長に亘
って均一であるため、その内周面11bに均一な膜厚で
中間層2(図1)を形成することができる。
【0041】この中間層形成工程によって形成される中
間層の膜厚分布を図4に示す。この図4の線図は、横軸
が円筒状部材11の開口端からの距離を示し、縦軸は円
筒状部材11の内周面11bに形成される中間層の膜厚
を示す。そして、曲線bが中間層の膜厚分布を示す。
【0042】この図に示すように、円筒状部材11の開
口端に0.5μm の膜厚の中間層を形成したとき、その
中間層の膜厚は、開口端から奥側へ30mmに入った位
置でも殆ど変化なく、内周面11bの全域に亘って均一
な膜厚でチタン−シリコン合金膜からなる中間層が形成
されている。その後、この内周面に中間層を形成した円
筒状部材11の中間層2上に、図1に示した硬質カーボ
ン膜3を形成するが、その硬質カーボン膜形成工程につ
いては後述する。
【0043】〔単層の中間層を形成する工程の第2の
例:図5〕円筒状部材の内周面に単層の中間層形成する
工程の第2の例を、図5を用いて説明する。この図5に
おいて図3と同じ部分には同一の符号を付してあり、そ
れらの説明は省略する。
【0044】この中間層形成工程において、図3によっ
て説明した第1の例と異なるのは、円筒状部材11の開
口11a内の中心軸上に挿入配置した補助電極23に、
高周波電源36からマッチング回路19を介して高周波
電圧を印加する点だけである。このときの高周波電力は
例えば400W(ワット)である。このようにしても、
円筒状部材11の開口11a内で補助電極23の周囲領
域にプラズマが発生して、そのプラズマ中のイオンによ
ってチタン−シリコン合金材料からなる補助電極23の
表面をスパッタし、その表面からスパッタにより叩き出
された中間層材料の分子が円筒状部材11の内周面全域
に均一に付着する。
【0045】それによって、チタン−シリコン合金膜
(金属シリサイド膜)からなる中間層を、図4に曲線b
で示すように均一な膜厚で形成することができる。その
他の条件等は前述の第1の例と同じであるから、説明を
省略する。
【0046】〔単層の中間層を形成する工程の第3の
例:図6〕円筒状部材の内周面に単層の中間層形成する
工程の第3の例を、図6を用いて説明する。この図6に
おいても図3と同じ部分には同一の符号を付してあり、
それらの説明は省略する。
【0047】この中間層形成工程において、図3によっ
て説明した第1の例と異なるのは、円筒状部材11の開
口11a内の中心軸上に挿入配置した、中間層材料であ
るチタン−シリコン合金材料からなる補助電極23の両
端を交流電源37に接続したことである。そして、真空
槽13内を3×10-5 torr の真空度になるように排気
した後、アルゴンガスを真空槽13内に導入することな
く、交流電源37によって交流電圧を、例えば電流が2
A流れるように補助電極23に印加する。
【0048】すると、円筒状部材11の開口11a内に
配設されている補助電極23が抵抗加熱されてその表面
が溶融し、真空槽13内の真空度が高いため蒸発する。
その蒸発したチタン−シリコン合金分子が、円筒状部材
11の内周面11bに抵抗加熱蒸着法により付着して、
チタン−シリコン合金膜(金属シリサイド膜)からなる
中間層を形成する。
【0049】この場合も、円筒状部材11の開口11a
内の全長に亘って、補助電極23の表面からの抵抗加熱
による中間層材料の蒸発が均等に発生するため、円筒状
部材11の内周面11bの全域に亘って、図4に示すよ
うに均一な膜厚で中間層が形成することができる。その
他の条件等は前述の第1の例と同じであるから、説明を
省略する。
【0050】なお、これらの中間層形成工程に使用する
補助電極23の太さは、円筒状部材11の開口11aの
径より小さければよいが、好ましくは円筒状部材11の
内周面11bとの間に4mm程度の隙間、すなわち充分
なプラズマ形成領域を設けるようにするとよい。さら
に、その補助電極23の長さは、円筒状部材11の開口
11a内に挿入したとき、開口11aの長さ(軸線方向
の寸法)とほぼ同じになるか、あるいは若干突出する長
さにするとよい。
【0051】また、上述の各実施例では、補助電極23
をチタン−シリコン合金で構成し、中間層をチタン−シ
リコン合金膜で形成する例について説明した。しかし、
これに限るものではなく、補助電極をカーボン−シリコ
ン合金(シリコンカーバイト),クロム−シリコン合
金,チタン−ゲルマニウム合金,クロム−ゲルマニウム
合金,アルミニウム−シリコン合金,炭化チタン等の炭
化金属などで構成し、中間層をそれらの合金膜あるいは
炭化金属膜で形成することもできる。
【0052】〔硬質カーボン膜形成工程の第1の例:図
7〕上述した各例のいずれかの中間層形成工程によっ
て、内周面11bに中間層2を形成した円筒状部材11
の中間層2上に、図1に示した硬質カーボン膜3を形成
するが、その硬質カーボン膜形成工程は3種類ある。
【0053】まず、その第1の例を図7によって説明す
る。図7において、図3,図5,図6と対応する部分に
は同一の符号を付してあるが、必ずしも同一のものを使
用する必要はない。この硬質カーボン膜形成工程では、
図7に示すように、ガス導入口15と排気口17とを有
する真空槽13内に、内周面11bに中間層2を形成し
た円筒状部材11を、絶縁支持具10によって下部を真
空槽13に固定して配置する。
【0054】そして、この円筒状部材11の開口11a
内の中心軸線上に、補助電極23′を挿入して配置す
る。その補助電極23′は真空槽13を介してアースに
接続して接地電位にする。この補助電極23′として
は、中間層形成工程で使用した補助電極23をそのまま
継続して使用してもよいし、ステンレス等の金属材料で
作られた別のロッド状の補助電極を使用してもよい。
【0055】さらに、図示しない排気手段によって、真
空槽13内を真空度が3×10-5torrになるように排気
口17から排気する。その後、ガス導入口15から炭素
を含むガスとしてメタン(CH4 )を真空槽13内に導
入して、この真空槽13内の真空度が0.1torr になる
ように制御する。
【0056】次いで、円筒状部材11には直流電源25
からマイナス600Vの直流電圧を印加して、真空槽1
3内にプラズマを発生させる。このとき、円筒状部材1
1の開口11a内に接地電位の補助電極が挿入配置され
ているため、円筒状部材11の外周部だけでなく、開口
11a内にもプラズマが発生する。それによって、円筒
状部材11の全面に硬質カーボン膜(DLC)が形成さ
れる。
【0057】このように、円筒状部材11の開口11a
内に補助電極23′を配置して硬質カーボン膜の形成処
理を行なうことにより、同電位同士が対向している中間
層2を形成した内周面11bの間に接地電位の補助電極
23′が配設されるため、異常放電であるホロー放電の
発生がなくなり硬質カーボン膜の密着性が向上する。さ
らに、円筒状部材11の開口11a内で軸線方向の全長
において、その電位特性が均一になり、内周面11bの
中間層2上に形成される硬質カーボン膜の膜厚が変化す
ることなく、開口端付近から奥側まで内周面11bの全
域に均一な膜厚で硬質カーボン膜を形成することができ
る。
【0058】そのうえ、硬質カーボン膜の下層に形成し
た中間層も、前述のように円筒状部材11の内周面11
bの全域に均一な膜厚で形成されているため、ストレス
に起因する中間層と硬質カーボン膜の剥離は発生しな
い。したがって、この発明による中間層形成工程と硬質
カーボン膜形成工程によって、円筒状部材11の内周面
11bに中間層2及び硬質カーボン膜3を形成すると、
基材である円筒状部材11に対する硬質カーボン膜の密
着性が極めて良好となる。
【0059】この硬質カーボン膜形成工程においても、
補助電極23′の太さは、円筒状部材11の開口11a
の径より小さければよいが、好ましくは内周面11bと
の間に4mm程度の隙間、すなわちプラズマ形成領域を
設けるようにするとよい。また、この補助電極23′の
長さは、円筒状部材11に挿入したときに開口11aの
軸線方向の寸法と略同じか、あるいは円筒状部材11か
ら補助電極23が突出するようにするとよい。
【0060】〔硬質カーボン膜形成工程の第2の例:図
8〕次に、硬質カーボン膜形成工程の第2の例を図8に
よって説明する。図8においても、図3,図5,図6と
対応する部分には同一の符号を付してあるが、必ずしも
同一のものを使用する必要はない。この場合に使用する
真空槽13内には、上部にアノード31とフィラメント
33が設けられている。
【0061】前述の例と同様にこの真空槽13内に、内
周面11bに中間層2を形成した円筒状部材11を、絶
縁支持具10によって下部を真空槽13に固定して配置
し、その開口11a内の中心部に接地した補助電極2
3′を挿入して配設する。この補助電極23′として
も、中間層形成工程で使用した補助電極23をそのまま
継続して使用してもよいし、ステンレス等の金属材料で
作られた別のロッド状の補助電極を使用してもよい。
【0062】そして、真空槽13内を真空度が3×10
-5 torr になるように排気した後、ガス導入口15から
炭素を含むガスとしてベンゼン(C6 H6 )を真空槽1
3内に導入して、真空槽13内の圧力を5×10-3 tor
r になるように制御する。
【0063】その後、アノード31には直流電源27か
ら直流電圧を印加し、フィラメント33には交流電源2
9から交流電圧を印加する。このとき、直流電源27か
らアノード31に印加する直流電圧はプラス10Vと
し、交流電源29からフィラメント33に印加する交流
電圧は10で、30Aの電流がフィラメント33に流れ
るようにする。また、円筒状部材11には直流電源25
からマイナス3kVの直流電圧を印加する。
【0064】そして、真空槽13内の円筒状部材11の
周囲領域にプラズマを発生させ、円筒状部材11の全面
に硬質カーボン膜を形成する。この場合も、円筒状部材
11の開口11a内に接地電位の補助電極23′が配設
されているため、円筒状部材11の外周部だけでなく、
開口11a内にもプラズマが発生し、内周面11bの中
間層2上にも硬質カーボン膜が形成される。
【0065】〔硬質カーボン膜形成工程の第3の例:図
9〕次に、硬質カーボン膜形成工程の第3の例を図9に
よって説明する。図9においても、図3,図5,図6と
対応する部分には同一の符号を付してあるが、必ずしも
同一のものを使用する必要はない。
【0066】この場合も、図9に示すように真空槽13
内に、内周面11bに中間層2を形成した円筒状部材1
1を、絶縁支持具10によって下部を真空槽13に固定
して配置し、その開口11a内の中心部に接地した補助
電極23′を挿入して配設する。この補助電極23′と
しても、中間層形成工程で使用した補助電極23をその
まま継続して使用してもよいし、ステンレス等の金属材
料で作られた別のロッド状の補助電極を使用してもよ
い。
【0067】そして、この真空槽13内をその真空度が
3×10-5 torr になるように排気した後、ガス導入口
15から炭素を含むガスとしてメタン(CH4 )を真空
槽13内に導入し、真空度を0.1torr になるように調
整する。さらに、円筒状部材11には、13.56MH
z の発振周波数を有する高周波電源21からマッチン
グ回路19を介して高周波電圧(高周波電力400W)
を印加し、真空槽13内の円筒状部材11の周囲領域に
プラズマを発生させ、円筒状部材11の全面に硬質カー
ボン膜を形成する。する。
【0068】この場合も、円筒状部材11の開口11a
内に接地電位の補助電極23′が配設されているため、
円筒状部材11の外周部だけでなく、開口11a内にも
プラズマが発生し、内周面11bの中間層2上にも硬質
カーボン膜が形成される。
【0069】この例においても、円筒状部材11の開口
11a内に補助電極23′を配置して硬質カーボン膜の
形成処理を行なうことにより、同電位同士が対向してい
る中間層2を形成した内周面11bの間に接地電位の補
助電極23′が配設されるため、異常放電であるホロー
放電の発生がなくなり、硬質カーボン膜の密着性が向上
する。また、円筒状部材11の開口端付近から奥側まで
内周面11bの全域に均一な膜厚で硬質カーボン膜を形
成することができる。その他の条件および作用・効果は
前述の第1の例と同様であるので、説明を省略する。
【0070】これらの硬質カーボン膜形成工程は、前述
した中間層形成工程とは別の真空槽を使用して行なう
か、同じ真空槽を使用して時間をおいて行なってもよい
が、同じ真空槽内で連続して行なうこともできる。しか
し、好ましくは同一の装置を用いて連続して中間層と硬
質カーボン膜とを形成する方がよい。その理由は、円筒
状部材の内周面に形成される中間層と硬質カーボン膜と
の被膜の相互の密着性が向上するためである。
【0071】そして、同一の装置を用いて連続して中間
層と硬質カーボン膜とを形成するときは、中間層を形成
した後、補助電極23を接地電位とし、円筒状部材11
に直流負電圧あるいは高周波電圧を印加し、さらにガス
導入口15から導入するガスを炭素を含むガスに変えれ
ばよい。
【0072】さらに、図7から図9を用いて説明した各
硬質カーボン膜形成工程の説明においては、炭素を含む
ガスとしてメタンガスやベンゼンガスを用いる例につい
て説明したが、メタン以外にエチレンなどの炭素を含む
ガスや、あるいはヘキサンなどの炭素を含む液体の蒸発
蒸気も使用することができる。また、説明した3種類の
中間層形成工程と、3種類の硬質カーボン膜形成工程と
の組み合わせは任意であり、9通りの組み合わせが可能
である。
【0073】上記の各実施例の説明において示した具体
的な数値は一例であり、円筒状部材及び補助電極の材
質,形状,大きさなどに応じて種々変更される。なお、
図7から図9を用いて説明した各硬質カーボン膜形成工
程によれば、円筒状部材11の外周部と開口11a内と
にプラズマが形成されるため、硬質カーボン膜が円筒状
部材11の外周面と内周面とに形成されることになる。
【0074】しかし、円筒状部材11の外周部に被覆部
材を配置したり、簡易的にはアルミニウム箔を円筒状部
材11の外周部に巻き付けることにより、円筒状部材1
1の内周面11bにのみに硬質カーボン膜を形成するこ
とができる。
【0075】また、上述した硬質カーボン膜形成工程の
各例の説明においては、円筒状部材11の開口11a内
に配置する補助電極23′はアースに接続して接地電位
とするように説明した。しかし、この補助電極23′に
直流電源から直流の正電圧を印加して硬質カーボン膜を
形成するようにしてもよい。このように、補助電極2
3′に直流の正電圧を印加して硬質カーボン膜を形成す
ると次のような効果がある。
【0076】すなわち、直流正電圧を補助電極23′に
印加すると、この補助電極23′の周囲領域に電子を集
める効果を生じ、補助電極23′の周囲領域は電子密度
が高くなる。それによって必然的に炭素を含む分子と電
子との衝突確率が増え、ガス分子のイオン化が促進さ
れ、その補助電極23′の周囲領域のプラズマ密度が高
くなる。
【0077】そのため、補助電極23′に直流の正電圧
を印加して硬質カーボン膜を形成すると、補助電極2
3′を接地電位にしたときと比らべて硬質カーボン膜の
被膜形成速度が速くなる。さらに、円筒状部材11の開
口11aの大きさが小さくなり、内周面11bと補助電
極23′との隙間寸法が小さくなると、補助電極23′
に直流正電圧を印加しないで硬質カーボン膜を形成しよ
うとしても、円筒状部材11の開口11a面にプラズマ
が発生せず、被膜形成ができなくなる。
【0078】これに対して、補助電極23′に直流正電
圧を印加して硬質カーボン膜を形成する場合には、円筒
状部材11の開口11a内に配置した補助電極23′に
印加した直流正電圧によって電子を強制的に補助電極2
3′の周囲領域に集めることができる。そのため、補助
電極23′の周囲にプラズマを発生させることができ、
開口11aが小さい円筒状部材11の内周面11bに
も、硬質カーボン膜の形成が可能になる。
【0079】また、前述した中間層形成工程において
は、円筒状部材11を接地電位にしたが、直流負電圧を
印加してもよい。さらに、円筒状部材11がセラミック
等の絶縁性材料でできている場合には、接地も直流負電
圧の印加もせず浮遊電位にしておいても、その円筒状部
材11の内周面に補助電極23の中間層材料による中間
層を均一な膜厚で形成することができる。
【0080】〔二層の中間層を形成する工程の第1の
例:図3〕次に、図2に示したように円筒状部材11の
内周面11bに第1の中間層12aと第2の中間層12
bからなる二層の中間層12を形成する場合の中間層形
成工程について説明する。この場合も3種類の中間層形
成工程があるが、その第1の例について、再び図3を用
いて説明する。
【0081】この中間層形成工程では、図3に示すよう
に排気口17及びガス導入口15を有する真空槽13内
に円筒状部材11を、絶縁支持具10によって下部を真
空槽13に固定して配置する。この円筒状部材11の開
口11a内の中心部に、チタンやクロム等の第1の中間
層材料からなる第1の補助電極を、図示の補助電極23
と同様に挿入配置し、円筒状部材11を真空槽13と共
にアースに接続して接地電位にする。
【0082】そして、真空槽 13内を3×10-5 torr
の真空度になるまで排気口17から排気する。その後
ガス導入口15からスパツタガスとしてアルゴンガスを
真空槽13内に導入して、真空度を5×10-3 torr に
なるように制御する。さらに、直流電源35からマイナ
ス500Vの直流電圧を第1の補助電極に印加する。す
ると、円筒状部材11の開口11a内で第1の補助電極
の周囲領域にプラズマが発生して、そのプラズマ中のイ
オンによって第1の中間層材料からなる補助電極23の
表面をスパッタする。
【0083】そして、この第1の補助電極の表面からス
パッタにより叩き出された第1の中間層材料の分子が円
筒状部材11の内周面11bに付着し、チタン膜あるい
はクロム膜等の金属膜からなる円筒状部材11と密着性
のよい第1の中間層12aを形成する。その後、第1の
補助電極に代えてシリコン,ゲルマニウム等の第2の中
間層材料からなる第2の補助電極を、円筒状部材11の
開口11a内の中心部に図示の補助電極23と同様に挿
入して配置する。
【0084】そして、上述と同様にその第2の補助電極
に直流電源35から直流負電圧を印加して、円筒状部材
11の開口11a内の第2の補助電極の周囲にプラズマ
を発生させ、その第2の補助電極をなす第2の中間層材
料のスパッタにより、円筒状部材11の内周面11bの
第1の中間層12a上にシリコン膜あるいはゲルマニウ
ム膜等の硬質カーボン膜と結合性のよい第2の中間層1
2bを形成する。
【0085】この場合にも、図2に示した第1の中間層
12a及び第2の中間層12bは、円筒状部材11の内
周面11bの開口端側から奥側まで全域に亘って均一な
膜厚で形成される。このように二層膜構造の中間層12
を形成すると、下層の第1の中間槽12aを構成するチ
タン,クロム,アルミニウムなどは、円筒状部材11と
の密着性を保つ役割をもち、上層の第2の中間層12b
を構成するシリコンやゲルマニウムは、硬質カーボン膜
3と共有結合してそれと強く結合する役割をもつ。
【0086】〔二層の中間層を形成する工程の第2の
例:図5〕この中間層形成工程第2の例においても、上
述の第1の例と同様な処理を行なう。但し、前述した単
層の中間層を形成する工程の第2の例の場合と同様に、
図5に示すようにアースに接続した円筒状部材11の開
口11a内の中心部に、図示されている補助電極23に
代えてチタンやクロム等の第1の中間層材料からなる第
1の補助電極を配置する。
【0087】そして、真空槽13を排気してスパッタガ
スとしてアルゴンガスを導入した後、その第1の補助電
極に高周波電源36からマッチング回路19を介して高
周波電圧を印加する。それによって、第1の補助電極の
周囲にプラズマを発生させて、その第1の補助電極をな
す第1の中間層材料をスパッタして、円筒状部材11の
内周面11bに第1の中間層12aを均一な膜厚で形成
する。
【0088】その後、円筒状部材11の開口11a内に
配置した第1の補助電極を、シリコンやゲルマニウム等
の第2の中間層材料からなる第2の補助電極と交換す
る。そして、上述と同様にその第2の補助電極に高周波
電源36からマッチング回路19を介して高周波電圧を
印加する。それによって、第2の補助電極の周囲にプラ
ズマを発生させて、その第2の補助電極をなす第2の中
間層材料をスパッタして、円筒状部材11の内周面11
bの第1の中間層12a上に第2の中間層12bを均一
な膜厚で形成する。
【0089】その他の条件や作用・効果などは、前述の
単層の中間層を形成する工程の第2の例、および二層の
中間層を形成する工程の第1の例と同様であるので、そ
の説明は省略する。
【0090】〔二層の中間層を形成する工程の第3の
例:図6〕この中間層形成工程第3の例においても、上
述の第1の例と同様な処理を行なう。但し、前述した単
層の中間層を形成する工程の第3の例の場合と同様に、
図6に示すようにアースに接続した円筒状部材11の開
口11a内の中心部に、図示されている補助電極23に
代えてチタンやクロム等の第1の中間層材料からなる第
1の補助電極を配置する。
【0091】そして、真空槽13内を排気した後、第1
の補助電極に交流電源37によって交流電圧を印加し
て、この第1の補助電極をなす第1の中間層材料を抵抗
加熱して蒸発させる。その蒸発した分子を円筒状部材1
1の内周面11bに蒸着させることにより、円筒状部材
と密着性のよいチタン膜やクロム膜からなる第1の中間
層を形成する。
【0092】その後、第1の補助電極をシリコンやゲル
マニウム等の第2の中間層材料からなる第2の補助電極
と交換する。そして、上述と同様にその第2の補助電極
に交流電圧を印加して、その第2の補助電極をなす第2
の中間層材料を抵抗加熱して蒸発させる。その蒸着した
分子を円筒状部材11の内周面11bに蒸着させること
により、円筒状部材11の内周面11bの第1の中間層
12a上に、硬質カーボン膜3と結合性のよいシリコン
膜やゲルマニウム膜からなる第2の中間層12bを形成
する。
【0093】その他の条件や作用・効果などは、前述の
単層の中間層を形成する工程の第3の例、および二層の
中間層を形成する工程の第1の例と同様であるので、そ
の説明は省略する。
【0094】なお、これらの中間層形成工程の各例にお
いて、第1の補助電極を構成する第1の中間層材料とし
ては、チタン,クロム,およびアルミニウム、あるいは
チタン合金,クロム合金,アルミニウム合金などを適用
することができる。また、第2の補助電極を構成する第
2の中間層材料としては、シリコンやゲルマニウム,あ
るいはシリコンの化合物やゲルマニウムの化合物などを
適用することができる。
【0095】これらの中間層形成工程に続いて、前述し
た3種類の硬質カーボン膜形成工程のいずれかを実施し
て、内周面11bに二層の中間層12を形成した円筒状
部材11の第2の中間層上に、図2に示した硬質カーボ
ン膜3を形成する。その硬質カーボン膜形成工程は、前
述した中間層形成工程とは別の真空槽を使用して行なっ
ても、同じ真空槽内で連続して行なってもよいが、好ま
しくは同一の装置を用いて連続して中間層と硬質カーボ
ン膜とを形成する方がよいのは、単層の中間層を形成し
た場合と同様である。
【0096】また、上述した3種類の中間層形成工程
と、前述した3種類の硬質カーボン膜形成工程との組み
合わせは任意であること、その他のバリエーションなど
も前述の単層の中間層を形成した場合と同様である。
【0097】〔単層の中間層を形成する工程の第4の
例:図3〕次に、単層の中間層を形成する工程の先に説
明した3つの例とは異なる6種類の例について説明す
る。これらの中間層形成工程においては、補助電極の中
間層材料と、真空槽内に導入したガスに含まれる炭素あ
るいはシリコンとの化合物によって中間層を形成する。
【0098】そこでまず、第4の例を再び図3を用いて
説明する。この中間層形成工程においては、前述した第
1の例と同様に図3に示す装置を使用する。そして、ガ
ス導入口15と排気口17とを有する真空槽13内に、
基材である円筒状部材11を絶縁支持具10によって下
部を真空槽13に固定して配置する。そして、この円筒
状部材11の開口11a内の中心部に、中間層材料であ
るチタンTiからなるロッド状の補助電極23(第1の
例の場合と材料が異なるが便宜上同じ符号を使用する)
を挿入して配設する。円筒状部材11は真空槽13と共
にアースに接続して接地電位に保持する。
【0099】そして、真空槽13内部を真空度が3×1
0-5 torr 以下になるように排気口17から排気する。
その後、ガス導入口15からスパッタガスとしてのアル
ゴンガスと炭素を含むガスであるメタン(CH4 )ガス
との混合ガスを真空槽13内に導入して、真空槽13内
の圧力を8×10-3 torr になるように制御する。この
とき、アルゴンガスとメタンガスとの比率は、メタン流
量比40%から80%とする。
【0100】さらに、補助電極23に直流電源35から
マイナス500Vの直流負電圧を印加する。その結果、
円筒状部材11の開口11a内の補助電極23の周囲領
域にプラズマを発生させることができる。なお、円筒状
部材11は前述のように接地電位にしているが、マイナ
ス50V程度の直流負電圧を印加するようにしてもよ
い。
【0101】この補助電極23の周囲に発生したプラズ
マ中のイオンによりチタンからなる補助電極23をスパ
ッタし、そのスパッタによって叩き出されたチタン分子
とメタン中の炭素とが反応する反応性スパッタリングに
よって、円筒状部材11の内周面11bに炭化チタン
(TiCx )からなる中間層が形成される。このスパッ
タリング処理を30分間行ない、円筒状部材11の内周
面11bに0.5μm の均一に厚さの炭化チタン被膜か
らなる中間層2(図1参照)を形成する。
【0102】その他の条件や作用・効果等は、前述した
単層の中間層を形成する工程の第1の例の場合と同様で
あるのでその説明は省略する。
【0103】〔単層の中間層を形成する工程の第5の
例:図3〕次に、上述した中間層形成工程の第4の例と
真空槽内へ導入するガスが異なる第5の例について説明
する。この中間層形成工程においても図3の装置を使用
して、上述した第4の例の場合と同様に、真空槽13内
に円筒状部材11及びその開口11a内にチタン(T
i)からなる補助電極23を配置する。
【0104】そして、真空槽13内を真空度が3×10
-5 torr 以下になるように排気した後、ガス導入口15
からスパッタガスとしてのアルゴンガスとシリコン(S
i)を含むガス、例えばモノシラン(SiH4)との混
合ガスを真空槽13内に導入して、真空槽13内の圧力
を8×10-3 torr になるように制御する。
【0105】その後、補助電極23に直流電源35から
マイナス500Vの直流負電圧を印加し、補助電極23
の周囲領域にプラズマを発生させる。そのプラズマ中の
イオンによりチタンからなる補助電極23をスパッタ
し、そのスパッタによって叩き出されたチタン分子とモ
ノシラン中のシリコンとが反応する反応性スパッタリン
グによって、円筒状部材11の内周面11bに金属シリ
サイド(TiSi)からなる中間層が形成される。
【0106】このスパッタリング処理を30分間行な
い、円筒状部材11の内周面11bに0.5μm の均一
に厚さの金属シリサイド被膜からなる中間層2(図1参
照)を形成する。その他の条件や作用・効果等は、前述
した単層の中間層を形成する工程の第1の例の場合と同
様であるのでその説明は省略する。
【0107】〔単層の中間層を形成する工程の第6の
例:図5〕次に、中間層形成工程の第6の例を説明す
る。この中間層形成工程は、前述の第2の例と同様に図
5に示す装置を使用する。そして、上述した第4の例の
場合と同様に、真空槽13内に円筒状部材11及びその
開口11a内にチタン(Ti)からなる補助電極23を
配置する。
【0108】その後、真空槽13内を真空度が3×10
-5 torr 以下になるように排気した後、ガス導入口15
からスパッタガスとしてのアルゴンガスと炭素を含むガ
スであるメタン(CH4 )ガスとの混合ガスを真空槽1
3内に導入して、真空槽13内の圧力を8×10-3 tor
r になるように制御する。
【0109】そして、13.56MHzの発振周波数を
有する高周波電源36からマッチング回路19を介し
て、補助電極23に高周波電圧(電力400W)を印加
して、補助電極23の周囲領域にプラズマを発生させ
る。そのプラズマ中のイオンによりチタンからなる補助
電極23をスパッタし、そのスパッタによって叩き出さ
れたチタン分子と、メタンガス中の炭素とが反応する反
応性スパッタリングによって、円筒状部材11の内周面
11bに炭化チタン(TiCx)膜からなる中間層が均
一な膜厚で形成される。
【0110】その他の条件や作用・効果等は、前述した
単層の中間層を形成する工程の第2の例の場合と同様で
あるのでその説明は省略する。
【0111】〔単層の中間層を形成する工程の第7の
例:図5〕次に、上述した中間層形成工程の第6の例と
真空槽内へ導入するガスが異なる第7の例について説明
する。この中間層形成工程においても図5の装置を使用
して、上述した第6の例の場合と同様に、真空槽13内
に円筒状部材11及びその開口11a内にチタン(T
i)からなる補助電極23を配置する。
【0112】その後、第5の例の場合と同様に真空槽1
3内を排気した後、アルゴンガスとシリコン(Si)を
含むガスであるモノシラン(SiH4)との混合ガスを真
空槽13内に導入する。そして、高周波電源36からマ
ッチング回路19を介して、補助電極23に高周波電圧
を印加して、補助電極23の周囲領域にプラズマを発生
させる。
【0113】そのプラズマ中のイオンによりチタンから
なる補助電極23をスパッタし、そのスパッタによって
叩き出されたチタン分子と、モノシラン中のシリコンと
が反応する反応性スパッタリングによって、円筒状部材
11の内周面11bに金属シリザイド(TiSi)膜か
らなる中間層が均一な膜厚で形成される。その他の条件
や作用・効果等は、前述した単層の中間層を形成する工
程の第2の例及び第5の例の場合と同様であるのでその
説明は省略する。
【0114】〔単層の中間層を形成する工程の第8の
例:図6〕次に、中間層形成工程の第8の例を説明す
る。この中間層形成工程は、前述の第3の例と同様に図
6に示す装置を使用する。上述した第4の例の場合と同
様に、真空槽13内に円筒状部材11及びその開口11
a内にチタン(Ti)からなる補助電極23を配置す
る。
【0115】そして、真空槽13内を排気した後、アル
ゴンガスと炭素を含むガスであるメタン(CH4 )ガス
との混合ガスを真空槽13内に導入する。その後、交流
電源37から交流電圧を、電流が10A流れるように補
助電極23に印加する。それにより円筒状部材11の開
口11a内に配置されたチタンからなる補助電極23が
抵抗加熱され、その表面が溶融してチタン分子が蒸発す
る。
【0116】その蒸発したチタン分子とメタン中の炭素
が結合し、円筒状部材11の内周面11bに蒸着され
る。すなわち、抵抗加熱蒸着法により炭化チタン膜(炭
化金属膜)が、円筒状部材11の内周面11bに中間層
として形成される。その他の条件や作用・効果等は、前
述した単層の中間層を形成する工程の第3の例及び第5
の例の場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0117】〔単層の中間層を形成する工程の第9の
例:図6〕次に、上述した中間層形成工程の第8の例と
真空槽内へ導入するガスが異なる第9の例について説明
する。この中間層形成工程においても図6の装置を使用
して、上述した第6の例の場合と同様に、真空槽13内
に円筒状部材11及びその開口11a内にチタン(T
i)からなる補助電極23を配置する。
【0118】その後、第5の例の場合と同様に真空槽1
3内を排気した後、アルゴンガスとシリコン(Si)を
含むガスであるモノシラン(SiH4)との混合ガスを真
空槽13内に導入する。
【0119】その後、上述の第8の例と同様に、交流電
源37から交流電圧を、補助電極23に電流が10A流
れるように印加する。それにより補助電極23が抵抗加
熱され、その表面が溶融してチタン分子が蒸発する。そ
の蒸発したチタン分子とモノシラン中のシリコンが結合
し、円筒状部材11の内周面11bに蒸着される。すな
わち、抵抗加熱蒸着法により金属シリサイド(TiS
i)膜が、円筒状部材11の内周面11bに中間層とし
て均一な膜厚で形成される。
【0120】その他の条件や作用・効果等は、前述した
単層の中間層を形成する工程の第3の例及び第5の例の
場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0121】〔二層の中間層を形成する工程の第4の
例:図3〕次に、二層の中間層を形成する工程の先に説
明した3つの例とは異なる6種類の例について説明す
る。これらの中間層形成工程においては、補助電極の中
間層材料によって第1の中間層を形成し、補助電極の中
間層材料と真空槽内に導入したガスに含まれる炭素ある
いはシリコンとの化合物によって第2の中間層を形成す
る。そこでまず、第4の例を説明する。
【0122】この中間層形成工程は、二層の中間層を形
成する工程の第1の例と同様に図3に示す装置を使用す
る。そして、第1の中間層としてチタン被膜を形成し、
第2の中間層としてチタンと炭素の化合物である炭化チ
タン被膜を形成する。
【0123】図3に示すように、ガス導入口15と排気
口17とを有する真空槽13内に、基材である円筒状部
材11を、絶縁支持具10によって下部を真空槽13に
固定して配置する。そして、この円筒状部材11の開口
11a内の中心部に、中間層材料であるチタン(Ti)
からなる補助電極23を挿入した配設する。円筒状部材
11は真空槽13と共にアースに接続して接地電位にす
るが、−50V程度の直流負電圧を印加してもよい。
【0124】そして、真空槽13内を真空度が3×10
-5 torr 以下になるように排気した後、ガス導入口15
からスパッタガスとしてアルゴンガスを真空槽13内に
導入して、真空槽13内の圧力を8×10-3 torr にな
るように制御する。その後、補助電極23に直流電源3
5からマイナス500Vの直流負電圧を印加する。その
結果、円筒状部材11の開口11a内に配置された補助
電極23の周囲領域にプラズマが発生する。
【0125】そのプラズマ中のイオンによってチタンか
らなる補助電極23をスパッタし、そのスパッタによっ
て叩き出されたチタン分子が円筒状部材11の内周面1
1bに付着して、チタン被膜からなる第1の中間層を形
成する。このスパッタリング処理を30分間行ない、円
筒状部材11の内周面11bの全域に膜厚0.5μm の
チタン被膜からなる第1の中間層12a(図2)を均一
な膜厚で形成することができる。
【0126】引き続きこの第1の中間層12aの上面に
第2の中間層12bを形成する工程を説明する。この工
程は第1の中間層を形成した円筒状部材11を別の真空
槽に移して行なうこともできるが、好ましくは同一の真
空槽内で連続して行なう方がよい。
【0127】真空槽13内で連続して行なう場合には、
図3においてガス導入口15からスパッタガスとしての
アルゴンガスと炭素を含むガスであるメタン(CH4 )
との混合ガスを真空槽13内に導入して、真空槽13内
の圧力を8×10-3torrになるように制御する。こ
のときアルゴンとメタンとの比率は、メタン流量比40
%から80%とする。
【0128】そして、第1の中間層形成時に使用したチ
タンからなる補助電極23に、直流電源35から再びマ
イナス500Vの直流負電圧を印加する。その結果、円
筒状部材11の開口11a内に配置された補助電極23
の周囲領域にプラズマが発生する。
【0129】そのプラズマ中のイオンによってチタンか
らなる補助電極23をスパッタし、そのスパッタによっ
て叩き出されたチタン分子とメタン中の炭素とが反応す
る反応性スパッタリングによって、円筒状部材11の内
周面11bに炭化チタン(TiCx )からなる第2の中
間層が形成される。このスパッタリング処理を30分間
行なうと、円筒状部材11の内周面11bに0.5μm
の均一な膜厚で炭化チタン被膜からなる第2の中間層1
2b(図2)を形成することができる。したがって、二
層の中間層12を均一な膜厚で形成できる。
【0130】その他の条件や作用・効果などは、二層の
中間層を形成する第1の例の場合と同様であるので、詳
細な説明は省略する。
【0131】〔二層の中間層を形成する工程の第5の
例:図3〕次に、上述の第4の例と第2の中間層を金属
シリサイドによって形成する点だけが相違する第5の例
を説明する。この中間層形成工程の第5の例においても
図3の装置を使用する。そして、第1の中間層の形成工
程は、上述の第4の例と全く同じである。
【0132】円筒状部材11の内周面11bに第1の中
間層を形成した後、その上に第2の中間層を形成する際
には、図3においてガス導入口15からスパッタガスと
してのアルゴンガスとシリコンを含むガスであるモノシ
ランとの混合ガスを真空槽13内に導入する。そして、
補助電極23には直流電源35からマイナス500Vの
直流負電圧を印加する。その結果、円筒状部材11の開
口11a内に配置された補助電極23の周囲領域にプラ
ズマが発生する。
【0133】そのプラズマ中のイオンによってチタンか
らなる補助電極23をスパッタし、そのスパッタによっ
て叩き出されたチタン分子とモノシラン中のシリコンと
が反応する反応性スパッタリングによって、円筒状部材
11の内周面11bの第1の中間層上に金属シリサイド
(TiSi)からなる第2の中間層が均一な膜厚で形成
される。
【0134】その他の条件や作用・効果などは、二層の
中間層を形成する第1の例及び第4の例の場合と同様で
あるので、詳細な説明は省略する。
【0135】〔二層の中間層を形成する工程の第6の
例:図5〕次に、二層の中間層を形成する工程の第6の
例を説明する。この中間層形成工程は、単層の中間層を
形成する工程の第2の例と同様に図5に示す装置を使用
する。そして、この第6の例において、前述の第4の例
と異なるのは、円筒状部材11の開口11a内に配設し
た中間層材料のチタンからなる補助電極23に、高周波
電源36からマッチング回路19を介して13.56M
Hzの高周波電圧(電力400W)印加してプラズマを
発生させる点だけである。
【0136】そして、第1の中間層を形成する工程で
は、真空槽13内にスパッタガスとしてのアルゴンガス
のみを導入し、チタン被膜の第1の中間層を円筒状部材
11の内周面に形成する。第2の中間層を形成する工程
では、真空槽13内にスパッタガスとしてのアルゴンガ
スと炭素を含むガスとしてのメタン(CH4 )ガスとの
混合ガスを導入し、炭化チタン(TiCx )膜からなる
第2の中間層を円筒状部材11の内周面11bの第1の
中間層上に形成する。
【0137】その他の条件や作用・効果などは、二層の
中間層を形成する第2の例及び第4の例の場合と同様で
あるので、詳細な説明は省略する。
【0138】〔二層の中間層を形成する工程の第7の
例:図5〕次に、上述の第6の例と第2の中間層を金属
シリサイドによって形成する点だけが相違する第7の例
を説明する。この中間層形成工程の第7の例においても
図5の装置を使用する。そして、第1の中間層の形成工
程は、上述の第6の例と全く同じである。
【0139】円筒状部材11の内周面11bに第1の中
間層を形成した後、その上に第2の中間層を形成する際
には、図5においてガス導入口15からスパッタガスと
してのアルゴンガスとシリコンを含むガスであるモノシ
ランとの混合ガスを真空槽13内に導入する。
【0140】そして、高周波電源36からマッチング回
路19を介して13.56MHzの高周波電圧を補助電
極23に印加して、その周辺領域にプラズマを発生させ
る。そのプラズマによるスパッタで叩き出されたチタン
分子とモノシラン中のシリコンとが反応する反応性スパ
ッタリングによって、円筒状部材11の内周面11bの
第1の中間層上に金属シリサイド(TiSi)からなる
第2の中間層が均一な膜厚で形成される。
【0141】その他の条件や作用・効果などは、二層の
中間層を形成する第2の例及び第6の例の場合と同様で
あるので、詳細な説明は省略する。
【0142】〔二層の中間層を形成する工程の第8の
例:図6〕次に、二層の中間層を形成する工程の第8の
例を説明する。この中間層形成工程は、単層の中間層を
形成する工程の第3の例と同様に図6に示す装置を使用
する。
【0143】この第8の例において、前述の第4の例と
異なるのは、円筒状部材11の開口11a内に配設した
中間層材料のチタンからなる補助電極23に、交流電源
37によって交流電圧を印加して、補助電極23に電流
が10A流れるようにする点だけである。
【0144】それにより補助電極23が抵抗加熱され、
その表面が溶融してチタン分子が蒸発する。その蒸発し
たチタン分子が、円筒状部材11の内周面11bに蒸着
され、抵抗加熱蒸着法によりチタン(Ti)膜が、円筒
状部材11の内周面11bに第1の中間層として均一な
膜厚で形成される。
【0145】その後、真空槽13内にアルゴンガスと炭
素を含むガスとしてのメタン(CH4 )ガスとの混合ガ
スを導入し、上述と同様に補助電極23に交流電圧を印
加し、抵抗加熱蒸着法により補助電極23から蒸発した
チタン分子とメタンの炭素とが反応させて、炭化チタン
(TiCx )膜からなる第2の中間層を円筒状部材11
の内周面11bの第1の中間層上に形成する。
【0146】その他の条件や作用・効果等は、前述した
二層の中間層を形成する工程の第3の例及び第4の例の
場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0147】〔二層の中間層を形成する工程の第9の
例:図6〕次に、上述の第8の例と第2の中間層を金属
シリサイドによって形成する点だけが相違する第9の例
を説明する。この中間層形成工程の第9の例においても
図6の装置を使用する。そして、第1の中間層の形成工
程は、上述の第8の例と全く同じである。
【0148】円筒状部材11の内周面11bに第1の中
間層を形成した後、その上に第2の中間層を形成する際
には、図6においてガス導入口15からアルゴンガスと
シリコンを含むガスであるモノシランとの混合ガスを真
空槽13内に導入する。そして、交流電源37から補助
電極23に交流電圧を印加して、抵抗加熱蒸着法により
補助電極23から蒸発したチタン分子とモノシラン中の
シリコンとを反応させ、円筒状部材11の内周面11b
の第1の中間層上に金属シリサイド(TiSi)からな
る第2の中間層を形成する。
【0149】その他の条件や作用・効果などは、二層の
中間層を形成する第3の例及び第5の例の場合と同様で
あるので、詳細な説明は省略する。
【0150】上述の各二層の中間層を形成する工程で
は、補助電極23としてチタンを用いた例で説明した
が、チタン(Ti)以外にもモリブデン(Mo),タン
グステン(W),タンタル(Ta),アルミニウム(A
l)なども適用可能である。これらの材料からなる補助
電極を使用して、上述した各中間層形成工程を実施する
と、第1の中間層としては補助電極の材料による金属膜
が形成され、第2の中間層としてはその材料の金属炭化
物膜あるいは金属シリサイド膜が形成されることにな
る。
【0151】また、第2の中間層を形成する工程で真空
槽内にアルゴンガスと混合して導入する炭素を含むガス
としてメタン(CH4 )を使用する例について説明した
が、エチレンなどを使用することもできる。またさら
に、シリコンを含むガスとしてモノシラン(SiH4 )
を使用する例について説明したが、ジシラン(SiH6)
などを使用することもできる。
【0152】これらの中間層形成工程に続いて、前述し
た第1〜第3の3種類の硬質カーボン膜形成工程のいず
れかを実施して、内周面に単層あるいは二層の中間層を
形成した円筒状部材の中間層上に、硬質カーボン膜を形
成する。その硬質カーボン膜形成工程は、前述した各中
間層形成工程とは別の真空槽を使用して行なってもよい
が、同じ真空槽内で連続して行なった方が、中間層と硬
質カーボン膜との密着性が強固になる。
【0153】また、上述した各種の中間層形成工程と、
前述した3種類の硬質カーボン膜形成工程との組み合わ
せは任意であること、その他のバリエーションなども前
述した実施例の場合と同様である。
【0154】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、この発明
による円筒状部材の内周面への被膜形成方法における中
間層形成工程、および硬質カーボン膜形成工程において
は、いずれも基材である円筒状部材の開口内に補助電極
を挿入して、プラズマを発生させたり、抵抗加熱蒸着を
行なったりして、中間層あるいは硬質カーボン膜形成工
程を形成する。
【0155】そのため、同電位の電極同士が対向してい
る円筒状部材の開口内に、接地電位あるいは直流負電圧
が印加された補助電極が存在することとなり、同電位同
士が対向することがなくなる。このような電位状態は、
プラズマ化学気相成長(CVD)法にとって最も望まし
い状態であり、異常放電であるホロー放電は発生しな
い。そのため、密着性の良好な中間層および硬質カーボ
ン膜を形成することができる。
【0156】しかも、中間層および硬質カーボン膜は、
円筒状部材の内周面にその開口端側から奥側まで全域に
亘って均一な膜厚で形成される。二層の中間層を形成し
た後、その上に硬質カーボン膜を形成すれば、その密着
性はより強固になる。
【0157】したがって、この発明の被膜形成方法によ
って、各種ガイドブッシュ,ピストンシリンダ,ベアリ
ング等の内周面が他の部材と摺動する円筒状部材(部
品)の内周面に、中間層を介して硬質カーボン膜を形成
すれば、内周面の耐摩耗性を大幅に高めることができ、
ひいてはその部材を使用する機械等の寿命を飛躍的に延
ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による被膜形成方法によつて円筒状部
材の内周面に形成される被膜構成の例を拡大して示す模
式図である。
【図2】この発明による被膜形成方法によつて円筒状部
材の内周面に形成される被膜構成の他の例を拡大して示
す模式図である。
【図3】この発明による被膜形成方法における中間層形
成工程の一例を説明するための断面図である。
【図4】円筒状部材の内周面にこの発明による中間層形
成工程で中間層を形成した場合の膜厚分布を示す線図で
ある。
【図5】この発明による被膜形成方法における中間層形
成工程の他の例を説明するための断面図である。
【図6】この発明による被膜形成方法における中間層形
成工程のさらに他の例を説明するための断面図である。
【図7】この発明による被膜形成方法における硬質カー
ボン膜形成工程の一例を説明するための断面図である。
【図8】この発明による被膜形成方法における硬質カー
ボン膜形成工程の他の例を説明するための断面図であ
る。
【図9】この発明による被膜形成方法における硬質カー
ボン膜形成工程のさらに他の例を説明するための断面図
である。
【図10】硬質カーボン膜の下層に形成する従来の中間
層の形成方法を説明するための断面図である。
【図11】硬質カーボン膜の従来の形成方法を説明する
ための断面図である。
【図12】円筒状部材の内周面に従来の方法で中間層を
形成した場合の膜厚分布を示す線図である。
【符号の説明】
2:中間層 3:硬質カーボン膜 10:絶縁支持具 11:円筒状部材 11a:開口 11b:内周面 12:中間層 12a:第1の中間層 12b:第2の中間層 13:真空槽 15:ガス導入口 17:排気口 19:マッチング回路 21,36:高周波電源 23,23′:補助電極 25,27,35:直流電源 29,37:交流電源 31:アノード 33:フィラメント
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C30B 29/04 C30B 29/04 Q // F16C 33/16 F16C 33/16 (72)発明者 戸井田 孝志 埼玉県所沢市大字下富字武野840番地 シチズン時計株式会社所沢事業所内 (72)発明者 関根 敏一 東京都田無市本町6丁目1番12号 シチ ズン時計株式会社田無製造所内 (56)参考文献 特開 昭62−182278(JP,A) 特開 平5−230658(JP,A) 特開 平2−54768(JP,A) 特開 平6−279998(JP,A) 特開 昭56−75569(JP,A) 特開 昭52−40487(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 16/00 - 16/56 B01J 19/08 C01B 31/02 C23C 14/00 - 14/58 C30B 29/04 F16C 33/16

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円筒状部材の内周面に中間層を形成する
    中間層形成工程と、その中間層上に硬質カーボン膜を形
    成する硬質カーボン膜形成工程とからなり、 前記中間層形成工程が、 真空槽内に円筒状部材を配置するとともに、該円筒状部
    材の内周面を形成する開口内に、第1の中間層材料から
    なる第1の補助電極を挿入し、前記円筒状部材を接地又
    は浮遊電位にして、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内にスパッタガス
    を導入し、 前記第1の補助電極に電圧を印加して前記円筒状部材の
    開口内の前記第1の補助電極の周囲にプラズマを発生さ
    せ、該第1の補助電極をなす第1の中間層材料のスパッ
    タにより、前記円筒状部材の内周面に該円筒状部材と密
    着性のよい第1の中間層を形成した後、 前記第1の補助電極に代えて第2の中間層材料からなる
    第2の補助電極を前記円筒状部材の開口内に挿入し、 該第2の補助電極に電圧を印加して前記円筒状部材の開
    口内の該第2の補助電極の周囲にプラズマを発生させ、
    該第2の補助電極をなす第2の中間層材料のスパッタに
    より、前記円筒状部材の内周面の前記第1の中間層上に
    硬質カーボン膜と結合性のよい第2の中間層を形成する
    工程であり、 前記硬質カーボン膜形成工程が、 真空槽内に前記内周面に第1,第2の中間層を形成した
    円筒状部材を配置し、 該円筒状部材の内周面を形成する開口内に補助電極を挿
    入し、該補助電極を接地電位にして、 前記真空槽内を前記排気口から排気した後、該真空槽内
    に炭素を含むガスを導入し、 前記円筒状部材に電圧を印加して前記真空槽内にプラズ
    マを発生させ、該円筒状部材の内周面の前記第2の中間
    層上に硬質カーボン膜を形成する工程である、 ことを特徴とする円筒状部材の内周面への被膜形成方
    法。
  2. 【請求項2】 円筒状部材の内周面に中間層を形成する
    中間層形成工程と、その中間層上に硬質カーボン膜を形
    成する硬質カーボン膜形成工程とからなり、 前記中間層形成工程が、 真空槽内に円筒状部材を配置し、該円筒状部材の内周面
    を形成する開口内に、第1の中間層材料からなる第1の
    補助電極を挿入し、前記円筒状部材を接地又は浮遊電位
    にして、 前記真空槽内を前記排気口から排気した後、前記第1の
    補助電極に交流電圧を印加して、該第1の補助電極をな
    す第1の中間層材料の抵抗加熱蒸着により前記円筒状部
    材の内周面に該円筒状部材と密着性のよい第1の中間層
    を形成した後、 前記第1の補助電極に代えて第2の中間層材料からなる
    第2の補助電極を前記円筒状部材の開口内に挿入し、 該第2の補助電極に交流電圧を印加して、該第2の補助
    電極をなす第2の中間層材料の抵抗加熱蒸着により、前
    記円筒状部材の内周面の前記第1の中間層上に硬質カー
    ボン膜と結合性のよい第2の中間層を形成する工程であ
    り、 前記硬質カーボン膜形成工程が、 真空槽内に前記内周面に第1,第2の中間層を形成した
    円筒状部材を配置し、 該円筒状部材の内周面を形成する開口内に補助電極を挿
    入し、該補助電極を接地電位にして、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内に炭素を含むガ
    スを導入し、 前記円筒状部材に電圧を印加して前記真空層内にプラズ
    マを発生させ、該円筒状部材の内周面の前記第2の中間
    層上に硬質カーボン膜を形成する工程である、 ことを特徴とする円筒状部材の内周面への被膜形成方
    法。
  3. 【請求項3】 円筒状部材の内周面に中間層を形成する
    中間層形成工程と、その中間層上に硬質カーボン膜を形
    成する硬質カーボン膜形成工程とからなり、 前記中間層形成工程が、 真空槽内に円筒状部材を配置するとともに、該円筒状部
    材の内周面を形成する開口内に、中間層材料からなる金
    属の補助電極を挿入し、前記円筒状部材を接地又は浮遊
    電位にして、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内にアルゴンガス
    を導入し、 前記補助電極に電圧を印加して前記円筒状部材の開口内
    の前記補助電極の周囲にプラズマを発生させ、該補助電
    極をなす中間層材料のスパッタリングによって、前記円
    筒状部材の内周面に金属被膜からなる第1の中間層を形
    成し、 その後、前記真空槽内を排気した後、該真空槽内にアル
    ゴンガスと炭素を含むガスとの混合ガスを導入し、 前記補助電極に電圧を印加して前記円筒状部材の開口内
    の前記補助電極の周囲にプラズマを発生させ、該補助電
    極をなす中間層材料からスパッタにより叩き出された分
    子と前記炭素を含むガス中の炭素とが反応する反応スパ
    ッタリングによって、前記円筒状部材の内周面に金属炭
    化物被膜からなる第2の中間層を形成する工程であり、 前記硬質カーボン膜形成工程が、 真空槽内に前記内周面に前記第1,第2の中間層を形成
    した円筒状部材を配置し、 該円筒状部材の内周面を形成する開口内に補助電極を挿
    入し、該補助電極を接地電位にして、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内に炭素を含むガ
    スを導入し、 前記円筒状部材に電圧を印加して前記真空槽内にプラズ
    マを発生させ、該円筒状部材の内周面の前記第2の中間
    層上に硬質カーボン膜を形成する工程である、 ことを特徴とする円筒状部材の内周面への被膜形成方
    法。
  4. 【請求項4】 円筒状部材の内周面に中間層を形成する
    中間層形成工程と、その中間層上に硬質カーボン膜を形
    成する硬質カーボン膜形成工程とからなり、 前記中間層形成工程が、 真空槽内に円筒状部材を配置し、該円筒状部材の内周面
    を形成する開口内に、中間層材料からなる金属の補助電
    極を挿入し、前記円筒状部材を接地又は浮遊電位にし
    て、 前記真空槽内を前記排気口から排気した後、前記真空槽
    内にアルゴンガスを導入し、 前記補助電極に交流電圧を印加して、該補助電極をなす
    中間層材料の抵抗加熱蒸着により前記円筒状部材の内周
    面に金属被膜からなる第1の中間層を形成し、 その後、前記真空槽内を排気した後、該真空槽内にアル
    ゴンガスと炭素を含むガスとの混合ガスを導入し、 前記補助電極に交流電圧を印加して、該補助電極をなす
    中間層材料の抵抗加熱蒸着により、前記円筒状部材の内
    周面の前記第1の中間層上に金属炭化物被膜からなる第
    2の中間層を形成する工程であり、 前記硬質カーボン膜形成工程が、 真空層内に前記内周面に第1,第2の中間層を形成した
    円筒状部材を配置し、 該円筒状部材の内周面を形成する開口内に補助電極を挿
    入し、該補助電極を接地電位にして、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内に炭素を含むガ
    スを導入し、 前記円筒状部材に電圧を印加して前記真空槽内にプラズ
    マを発生させ、該円筒状部材の内周面の前記第2の中間
    層上に硬質カーボン膜を形成する工程である、 ことを特徴とする円筒状部材の内周面への被膜形成方
    法。
  5. 【請求項5】 円筒状部材の内周面に中間層を形成する
    中間層形成工程と、その中間層上に硬質カーボン膜を形
    成する硬質カーボン膜形成工程とからなり、 前記中間層形成工程が、 真空槽内に円筒状部材を配置するとともにも、該円筒状
    部材の内周面を形成する開口内に、中間層材料からなる
    金属の補助電極を挿入し、前記円筒状部材を接地又は浮
    遊電位にして、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内にアルゴンガス
    を導入し、 前記補助電極に電圧を印加して前記円筒状部材の開口内
    の前記補助電極の周囲にプラズマを発生させ、該補助電
    極をなす中間層材料のスパッタリングによって、前記円
    筒状部材の内周面に金属被膜からなる第1の中間層を形
    成し、 その後、前記真空槽内を排気した後、該真空層内にアル
    ゴンガスとシリコンを含むガスとの混合ガスを導入し、 前記補助電極に電圧を印加して前記円筒状部材の開口内
    の前記補助電極の周囲にプラズマを発生させ、該補助電
    極をなす中間層材料からスパッタにより叩き出された分
    子と前記シリコンを含むガス中のシリコンとが反応する
    反応スパッタリングによって、前記円筒状部材の内周面
    に金属シリサイド被膜からなる第2の中間層を形成する
    工程であり、 前記硬質カーボン膜形成工程が、 真空槽内に前記内周面に前記第1,第2の中間層を形成
    した円筒状部材を配置し、 該円筒状部材の内周面を形成する開口内に補助電極を挿
    入し、該補助電極を接地電位にして、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内に炭素を含むガ
    スを導入し、 前記円筒状部材に電圧を印加して前記真空槽内にプラズ
    マを発生させ、該円筒状部材の内周面の前記第2の中間
    層上に硬質カーボン膜を形成する工程である、ことを特
    徴とする円筒状部材の内周面への被膜形成方法。
  6. 【請求項6】 円筒状部材の内周面に中間層を形成する
    中間層形成工程と、その中間層上に硬質カーボン膜を形
    成する硬質カーボン膜形成工程とからなり、 前記中間層形成工程が、 真空槽内に円筒状部材を配置し、該円筒状部材の内周面
    を形成する開口内に、中間層材料からなる金属の補助電
    極を挿入し、前記円筒状部材を接地又は浮遊電位にし
    て、 前記真空槽内を前記排気口から排気した後、前記真空槽
    内にアルゴンガスを導入し、 前記補助電極に交流電圧を印加して、該補助電極をなす
    中間層材料の抵抗加熱蒸着により前記円筒状部材の内周
    面に金属被膜からなる第1の中間層を形成し、 その後、前記真空槽内を排気した後、該真空槽内にアル
    ゴンガスとシリコンを含むガスとの混合ガスを導入し、 前記補助電極に交流電圧を印加して、該補助電極をなす
    中間層材料の抵抗加熱蒸着により、前記円筒状部材の内
    周面の前記第1の中間層上に金属シリサイド被膜からな
    る第2の中間層を形成する工程であり、 前記硬質カーボン膜形成工程が、 真空槽内に前記内周面に第1,第2の中間層を形成した
    円筒状部材を配置し、 該円筒状部材の内周面を形成する開口内に補助電極を挿
    入し、該補助電極を接地電位にして、 前記真空槽内を排気した後、該真空槽内に炭素を含むガ
    スを導入し、 前記円筒状部材に電圧を印加して前記真空槽内にプラズ
    マを発生させ、該円筒状部材の内周面の前記第2の中間
    層上に硬質カーボン膜を形成する工程である、 ことを特徴とする円筒状部材の内周面への被膜形成方
    法。
  7. 【請求項7】 前記中間層形成工程において、前記補助
    電極に直流負電圧を印加してプラズマを発生させること
    を特徴とする請求項3又は5に記載の円筒状部材の内周
    面への被膜形成方法。
  8. 【請求項8】 前記中間層形成工程において、前記第1
    の補助電極に直流負電圧を印加して該第1の補助電極の
    周囲にプラズマを発生させ、前記第2の補助電極に直流
    負電圧を印加して該第2の補助電極の周囲にプラズマを
    発生させることを特徴とする請求項1記載の円筒状部材
    の内周面への被膜形成方法。
  9. 【請求項9】 前記中間層形成工程において、前記補助
    電極に高周波電圧を印加してプラズマを発生させること
    を特徴とする請求項3又は5に記載の円筒状部材の内周
    面への被膜形成方法。
  10. 【請求項10】 前記中間層形成工程において、前記第
    1の補助電極に高周波電圧を印加して該第1の補助電極
    の周囲にプラズマを発生させ、前記第2の補助電極に高
    周波電圧を印加して該第2の補助電極の周囲にプラズマ
    を発生させることを特徴とする請求項1記載の円筒状部
    材の内周面への被膜形成方法。
  11. 【請求項11】 前記硬質カーボン膜形成工程におい
    て、前記円筒状部材に直流電圧を印加して前記真空槽内
    にプラズマを発生させることを特徴とする請求項1乃至
    10のいずれか一項に記載の円筒状部材の内周面への被
    膜形成方法。
  12. 【請求項12】 前記硬質カーボン膜形成工程におい
    て、前記真空槽として内部にアノードとフィラメントを
    備えたものを使用し、前記円筒状部材に直流電圧を印加
    するとともに、前記アノードに直流電圧を、フィラメン
    トに交流電圧をそれぞれ印加して、該真空槽内にプラズ
    マを発生させることを特徴とする請求項1乃至11のい
    ずれか一項に記載の円筒状部材の内周面への被膜形成方
    法。
  13. 【請求項13】 前記硬質カーボン膜形成工程におい
    て、前記円筒状部材に高周波電圧を印加して前記真空槽
    内にプラズマを発生させることを特徴とする請求項1乃
    至11のいずれか一項に記載の円筒状部材の内周面への
    被膜形成方法。
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