JPH10167984A - 筋ジストロフィー治療剤 - Google Patents

筋ジストロフィー治療剤

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JPH10167984A
JPH10167984A JP34245496A JP34245496A JPH10167984A JP H10167984 A JPH10167984 A JP H10167984A JP 34245496 A JP34245496 A JP 34245496A JP 34245496 A JP34245496 A JP 34245496A JP H10167984 A JPH10167984 A JP H10167984A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】筋ジストロフィーに対する安全でかつ有効な治
療剤を提供することである。 【解決手段】ヒト免疫グロブリンを主成分とする筋ジス
トロフィー治療剤、特に、厚生省生物学的製剤基準に基
づいて製造されうる筋ジストロフィー治療剤が提供され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、筋ジストロフィー
治療剤に関する。さらに詳しくは、ヒト免疫グロブリン
を主成分とする安全でかつ有効な筋ジストロフィー治療
剤に関する。
【0002】
【従来の技術】筋ジストロフィーとは、進行性筋ジスト
ロフィーとも呼ばれ、「筋線維の変性・壊死を主病変と
し、臨床的には進行性の筋力低下を伴う遺伝性疾患」と
定義されているいわゆる難病の一種である。その中で最
も代表的なものはX染色体劣性遺伝をとるDuchenne型筋
ジストロフィーである。そのほか、常染色体劣性遺伝を
とる先天型、肢帯型、優性遺伝をとる顔面・肩甲・上腕
型がある。いずれも筋力低下は進行性で、呼吸筋の筋力
低下による呼吸不全か、心不全で死の転帰をとることが
多い。
【0003】筋ジストロフィーに対する根本的治療法は
未だ見出されておらず、症状の進行を遅らせるためのリ
ハビリテーションや呼吸管理等が重要な意味をもつとさ
れている。筋ジストロフィーに対する薬物療法として
は、ATP(アデノシン3燐酸)製剤と末梢の循環不全
の改善のためビタミンEの定期的処方がなされている
が、根本的治療ではないうえその効果も十分ではない。
また、最近、ダントロレンナトリウムが血清クレアチン
キナーゼ(CK)値を下げ、筋力低下を防止するのでは
ないかと期待され、治験されているが、未だ研究段階に
ある。また、ステロイドホルモンが再認識されているが
副作用の点で一般化は困難である。このように、筋ジス
トロフィーに対する効果的で安全な治療剤は未だ存在せ
ずその提供が切望されているのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、筋ジストロフィーに対する安全でかつ有効な治療剤
を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、筋ジスト
ロフィーに効果を有する薬物を発見すべく鋭意研究を続
けたところ、従来より無又は低γグロブリン血症や特発
性血小板減少性紫斑病や川崎病や重症感染症に効果を有
することが知られているヒト免疫グロブリンを主成分と
する薬物が、意外にも、これらの疾病とは本質的に異な
る遺伝性疾患である筋ジストロフィーに対しても極めて
有効であることを発見した。本発明はかかる事実に基づ
き完成するに至ったものである。
【0006】即ち、本発明の要旨は、(1) ヒト免疫
グロブリンを主成分とする筋ジストロフィー治療剤、
(2) ヒト免疫グロブリンを90%以上含むことを特
徴とする前記(1)記載の筋ジストロフィー治療剤、
(3) 該ヒト免疫グロブリンが90%以上のIgGを
含むことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の筋ジ
ストロフィー治療剤、(4) 該治療剤が厚生省薬務局
監修「生物学的製剤基準」に基づいて製造されうるもの
である前記(1)〜(3)いずれかに記載の筋ジストロ
フィー治療剤、(5) 該生物学的製剤基準が「乾燥ポ
リエチレングリコール処理人免疫グロブリン」である前
記(4)記載の筋ジストロフィー治療剤、(6) 該生
物学的製剤基準が「ポリエチレングリコール処理人免疫
グロブリン」である前記(4)記載の筋ジストロフィー
治療剤、(7) 該生物学的製剤基準が「pH4処理酸
性人免疫グロブリン」である前記(4)記載の筋ジスト
ロフィー治療剤、(8) 該生物学的製剤基準が「乾燥
pH4処理人免疫グロブリン」である前記(4)記載の
筋ジストロフィー治療剤、(9) 該生物学的製剤基準
が「乾燥イオン交換樹脂処理人免疫グロブリン」である
前記(4)記載の筋ジストロフィー治療剤、(10)
該生物学的製剤基準が「乾燥スルホ化人免疫グロブリ
ン」である前記(4)記載の筋ジストロフィー治療剤、
(11) 該生物学的製剤基準が「アルキル化人免疫グ
ロブリン」である前記(4)記載の筋ジストロフィー治
療剤、(12) 厚生省薬務局監修の生物学的製剤基準
「乾燥プラスミン処理人免疫グロブリン」に基づいて製
造されうる筋ジストロフィー治療剤、並びに(13)
厚生省薬務局監修の生物学的製剤基準「乾燥ペプシン処
理人免疫グロブリン」に基づいて製造されうる筋ジスト
ロフィー治療剤、に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明の治療剤はヒト免疫グロブリンを主成分と
する。すなわち、ヒト血漿を原料として製造されたヒト
免疫グロブリンを主成分とする製剤である。ヒト免疫グ
ロブリンはヒト免疫グロブリンG(ヒトIgG)、ヒト
IgM、ヒトIgA、ヒトIgD、ヒトIgEからなる
ことが知られているが、本発明の治療剤の主成分である
ヒト免疫グロブリンはヒトIgGが主体である。
【0008】ヒト血漿を原料として製造されたヒト免疫
グロブリン製剤は、これまで世界各国で麻疹の予防及び
治療や、伝染性肝炎及び輸血後黄疸の予防や、重症感染
症や、無及び低ガンマグロブリン血症などの免疫不全症
候群の治療等に静脈内投与して効果が認められており、
また特発性血小板減少紫斑病(ITP)(P. Imbachet.
al., The Lancet 1981, 1228) や川崎病急性期の治療
にその大量投与が有効であることが知られている。しか
し、これらの疾患とは本質的に異なる遺伝性の疾患であ
る筋ジストロフィーに対してかかるヒト血漿を原料とし
て製造されたヒト免疫グロブリン製剤の投与が極めて有
効であることは未だ全く知られておらず、予想すらされ
ていない。ヒト血漿を原料として製造されたヒト免疫グ
ロブリン製剤のこの筋ジストロフィー治療効果は、本発
明者らによって世界で初めて発見されたものである。
【0009】本発明の治療剤すなわち、ヒト免疫グロブ
リンを主成分とする筋ジストロフィー治療剤は、ヒト血
漿を原料とし、例えば、厚生省薬務局監修「生物学的製
剤基準」に基づいて製造されうるものであり、医薬品と
してヒトに投与できる程度に高度に精製されたヒト免疫
グロブリンを主成分とする製剤であれば、特に限定され
ない。ここに、ヒト免疫グロブリンを主成分とする筋ジ
ストロフィー治療剤とは、ヒト免疫グロブリンの含量が
筋ジストロフィー治療剤の90%以上を占めることを意
味し、より具体的にはその含量が90〜99%を占める
ことを意味する。また、本発明の筋ジストロフィー治療
剤のヒト免疫グロブリンの主成分はヒトIgGであり、
より具体的にはヒトIgGがヒト免疫グロブリンの90
%以上をしめる。さらに具体的にはヒトIgGの割合が
ヒト免疫グロブリン中の90〜99%を占めるものであ
る。
【0010】具体的には、本発明の治療剤は、例えば、
厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」の「乾燥ポリエ
チレングリコール処理人免疫グロブリン」に基づいて製
造されうる乾燥ポリエチレングリコール処理ヒト免疫グ
ロブリン製剤、厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」
の「ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン」に
基づいて製造されうるポリエチレングリコール処理ヒト
免疫グロブリン製剤、厚生省薬務局監修「生物学的製剤
基準」の「pH4処理酸性人免疫グロブリン」に基づい
て製造されうるpH4処理酸性ヒト免疫グロブリン製
剤、厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」の「乾燥p
H4処理人免疫グロブリン」に基づいて製造されうる乾
燥pH4処理ヒト免疫グロブリン製剤、厚生省薬務局監
修「生物学的製剤基準」の「乾燥イオン交換樹脂処理人
免疫グロブリン」に基づいて製造されうる乾燥イオン交
換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤、厚生省薬務局監修
「生物学的製剤基準」の「乾燥スルホ化人免疫グロブリ
ン」に基づいて製造されうる乾燥スルホ化ヒト免疫グロ
ブリン製剤、厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」の
「アルキル化人免疫グロブリン」に基づいて製造されう
るアルキル化ヒト免疫グロブリン製剤、厚生省薬務局監
修「生物学的製剤基準」の「乾燥プラスミン処理人免疫
グロブリン」に基づいて製造されうる乾燥プラスミン処
理ヒト免疫グロブリン製剤、及び厚生省薬務局監修「生
物学的製剤基準」の「乾燥ペプシン処理人免疫グロブリ
ン」に基づいて製造されうる乾燥ペプシン処理ヒト免疫
グロブリン製剤等が好適に例示される。
【0011】厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」の
「ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン」に基
づいて製造されうるポリエチレングリコール分画処理ヒ
ト免疫グロブリン製剤は、通常次の方法により製造する
ことができる。すなわち、ヒト血漿を原料とし、免疫抗
体を変質させることなく、かつ、肝炎ウイルスその他の
病原微生物を可及的に除去できる適当な方法によって原
血漿を分画し、免疫グロブリンを集め、この画分につい
てポリエチレングリコール処理を行い原画分とする。つ
いで、原画分に適当な安定剤、等張化剤等を含む液を加
えて最終バルクを作り、分注する。さらに、凍結乾燥す
ると厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」の「乾燥ポ
リエチレングリコール処理人免疫グロブリン」に基づく
製剤が得られる。なお、ウイルス不活性化を目的とした
低温加熱殺菌、光照射、S/D処理及び/又はウイルス
除去を目的としたウイルス除去膜透過等の工程を上記の
製造工程の中にあるいは製造工程の後に適宜挿入するこ
とが好ましい。
【0012】上記の製造法に含まれる代表的な方法とし
ては、次の3方法を挙げることができる。すなわち、
コーン(Cohn)氏の低温エタノール分画法(Cohn, E. J.
ら,J. Am. Chem. Soc.,68, 459-475 (1946)) によって
得られる免疫グロブリン画分、又はコーン(Cohn)氏の低
温エタノール分画法の後にさらにオンクレーの分画法
(Oncley, J. L.ら, J. Am. Chem. Soc.,71, 541-550
(1949)) を適用して得られる免疫グロブリン画分を例え
ば高濃度のポリエチレングリコール(PEG4000)
を用いてさらに分画し、当該画分中に存在する凝集体を
除去したあと、PEG除去を行わず、そのまま安定剤と
して製剤中に残して調製する方法、低温エタノール分
画法によって得られる免疫グロブリン画分をヒドロキシ
エチルスターチの共存下にPEG4000で沈殿させ、
さらにこれらの処理剤を除去する方法、PEG400
0による沈殿の後DEAEイオン交換樹脂で処理する方
法である。なお、本発明の治療剤には必要に応じて、ヒ
ト血清アルブミンなどの凍結乾燥補助剤、PEG、ヒト
血清アルブミン、D−マンニトール、ソルビトール、グ
ルコースなどの安定剤、D−マンニトール、グルコース
などの溶解補助剤、塩化ナトリウムなどの等張化剤等が
適宜添加される。
【0013】厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」の
「乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン」
に基づく本発明の筋ジストロフィー治療剤の製造法をさ
らに詳細に例示すると以下のようになる。コーン氏の冷
エタノール分画法で得られた画分IIを1%グリシンの存
在下にpH6.0でタンパク質濃度が約3%になるよう
に溶解する。この溶液にポリエチレングリコール400
0を6.0%となるように加え、生じる免疫グロブリン
凝集体及び他の夾雑タンパク質の沈殿を除去した後、上
清をpH7.2に調整し、さらにポリエチレングリコー
ル4000を12%になるように加えて、抗補体活性の
低い高純度免疫グロブリンを沈殿として採取する。次い
で、この沈殿を溶解して得た高純度免疫グロブリン溶液
を陰イオン交換体カラムに負荷し、その通過液をさらに
ウイルス除去膜で処理したのち低温でエタノールを加え
て生じた沈殿を採取する事により、夾雑タンパク質や免
疫グロブリン凝集体を実質的に含まず、ポリエチレング
リコール濃度が低く抗補体活性の低い高純度免疫グロブ
リンを得る。得られた沈殿を0.9%塩化ナトリウムと
2.5%ブドウ糖を含む溶液で溶解した後、除菌濾過及
び凍結乾燥して静脈内投与が可能な製剤を得る。ただ
し、これらは例示にすぎず、当技術分野で公知の修正を
加えることに問題はない。
【0014】厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」の
「pH4処理酸性人免疫グロブリン」に基づいて製造さ
れうるpH4処理ヒト免疫グロブリン製剤は、通常次の
方法により製造することができる。すなわち、ヒト血漿
を原料とし、免疫抗体を変質させることなく、かつ、肝
炎ウイルスその他の病原微生物を可及的に除去できる適
当な方法によって原血漿を分画し、免疫グロブリンを集
め、この画分についてpH4の条件下で透析及び限外ろ
過の操作を行ってこれを原画分とし、ついで原画分に適
当な安定剤、等張化剤等を含む液を加えて最終バルクを
作り、分注して製剤とする。
【0015】また、厚生省薬務局監修「生物学的製剤基
準」の「乾燥pH4処理人免疫グロブリン」に基づいて
製造されうる乾燥pH4処理ヒト免疫グロブリン製剤
は、通常次の方法により製造することができる。すなわ
ち、ヒト血漿を原料とし、免疫抗体を変質させることな
く、かつ、肝炎ウイルスその他の病原微生物を可及的に
除去できる適当な方法によって原血漿を分画し、免疫グ
ロブリンを集め、この画分についてpH4で極微量のペ
プシンと共に処理を行った後、中性の原画分とし、この
原画分に適当な安定剤、等張化剤等を含む液を加えて最
終バルクを作り、分注あるいは分注後凍結乾燥して製剤
とする。
【0016】厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」の
「乾燥イオン交換樹脂処理人免疫グロブリン」に基づい
て製造されうる乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブ
リン製剤は、通常次の方法により製造することができ
る。すなわち、ヒト血漿を原料とし、免疫抗体を変質さ
せることなく、かつ、肝炎ウイルスその他の病原微生物
を可及的に除去できる適当な方法によって原血漿を分画
し、免疫グロブリン画分を集め、この画分についてDE
AEセファデックスなどのイオン交換樹脂処理を行って
原画分とし、この原画分に適当な安定剤、等張化剤等を
含む液を加えて最終バルクを作り、分注した後凍結乾燥
して製剤とする。
【0017】厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」の
「乾燥スルホ化人免疫グロブリン」に基づいて製造され
うる乾燥スルホ化ヒト免疫グロブリン製剤は、通常次の
方法により製造することができる。すなわち、ヒト血漿
を原料とし、免疫抗体を変質させることなく、かつ、肝
炎ウイルスその他の病原微生物を可及的に除去できる適
当な方法によって原血漿を分画し、免疫グロブリン画分
を集め、この画分について免疫グロブリンを構成する鎖
間のジスルフィド結合がスルホ化されるような、例えば
亜硫酸ナトリウムとテトラチオン酸ナトリウムなどの適
当なスルホ化剤を用いて、正常免疫グロブリンGと同じ
易動度を示す成分含量が5%以下になるようにスルホ化
処理を行い、処理後スルホ化剤を除去してこれを原画分
とし、原画分に適当な安定剤、等張化剤等を含む液を加
えて最終バルクを作り、分注した後凍結乾燥して製剤と
する。
【0018】厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」の
「アルキル化人免疫グロブリン」に基づいて製造されう
るアルキル化ヒト免疫グロブリン製剤は、通常次の方法
により製造することができる。すなわち、ヒト血漿を原
料とし、免疫抗体を変質させることなく、かつ、肝炎ウ
イルスその他の病原微生物を可及的に除去できる適当な
方法によって原血漿を分画して免疫グロブリン画分を集
め、この画分について免疫グロブリンを構成する鎖間の
ジスルフィド結合を還元しアルキル化するような例えば
ジチオスレイトールなどの適当な還元剤及びヨードアセ
トアミドなどのアルキル化剤を用いて正常免疫グロブリ
ンGと同じ易動度を示す成分含量が7%以下になるよう
に還元及びアルキル化処理を行い、処理後還元剤及びア
ルキル化剤を除去してこれを原画分とし、原画分に適当
な安定剤、等張化剤等を含む液を加えて最終バルクを作
り分注して製剤とする。
【0019】本発明の治療剤すなわち、ヒト血漿を原料
として製造されたヒト免疫グロブリン製剤は、実質上重
合型免疫グロブリンを含まず、IgG、スルホ化IgG
又はアルキル化IgGとしての純度は90%以上を示
す。抗補体活性は5%タンパク質濃度で測定して20単
位以下である。なお、IgGの純度及び抗補体価はそれ
ぞれ厚生省薬務局監修「生物学的製剤基準」一般試験法
のセルロースアセテート膜電気泳動試験法及び抗補体性
否定試験法により測定される。
【0020】本発明の治療剤としては、より具体的に
は、日本製薬社製「献血グロベニン−I−ニチヤク」、
ミドリ十字社製「献血ヴェノグロブリンIH」、化血研
製「ベニロン」、富士レビオ社製「グロブリンN」、バ
イエル社製「ポリグロビンN」、サンド社製「サングロ
ポール」等が例示される。
【0021】本発明の治療剤は、注射用蒸留水、例え
ば、「日局」注射用水にタンパク質として10〜100
mg/ml程度、好ましくは50mg/ml程度に溶解
して、点滴又は静注等にて投与することが好ましい。
【0022】本発明の治療剤の投与対象は、筋ジストロ
フィー患者であれば特に限定されない。
【0023】本発明の治療剤の投与量は、体重、症状、
性別などによって変わり得るが、通常は、1回約50〜
1000mg(1〜20ml)/kg体重程度、好まし
くは50〜400mg(1〜8ml)/kg体重程度で
ある。通常は上記の量を1日1回の割合で数日間投与す
る。
【0024】本発明の治療剤は他の用途において既に臨
床に供されており、その毒性については特に問題はな
い。例えば、日本製薬社製「献血グロベニン−I−ニチ
ヤク」についての急性毒性試験、亜急性毒性試験、慢性
毒性試験、生殖試験、抗原性、変異原性等に関する試験
の結果は以下のとおりである。急性毒性(LD50,g/kg) マウスに対しては、静注で7.5より大、皮下で15.
0より大、経口で15.0より大であり、ラットに対し
ては静注で約6.0、皮下で15.0より大、経口で1
5.0より大であった(今井 清等、応用薬理、26:
887(1983))。亜急性毒性 ラットに250、500又は1000mg/kg/日を
5週間連日静脈内投与したが、本発明の治療剤の直接的
毒性を示唆する異常は認められなかった(土谷稔等、応
用薬理、26:895(1983))。慢性毒性 ラットに125、250又は500mg/kg/日を2
6週間連日静脈内投与したが、本発明の治療剤の直接的
毒性を示唆する異常は認められなかった(土谷稔等、応
用薬理、27:39(1984))。
【0025】生殖試験 ラットによる妊娠前及び妊娠初期投与試験、ラット及び
ウサギによる器官形成期投与試験並びにラットによる周
産期及び授乳期投与試験を実施したが、本発明の治療剤
のラット及びウサギの生殖及び催奇形性作用に及ぼす影
響は認められなかった(斎藤 実等、応用薬理、27:
63(1984)、斎藤 実等、応用薬理、27:17
3(1984)、佐藤利和等、応用薬理、27:191
(1984)、斎藤 実等、応用薬理、27:199
(1984))。
【0026】抗原性 健康成人3例に21日間隔で2.5g/回を3回静脈内
投与し、初回投与後7、8、9週目の血清についてモル
モットを用いた受身皮膚アナフィラキシー反応(PC
A)を実施したが、すべて陰性であった(若林芳久、臨
床薬理、14:515(1983))。
【0027】変異原性 本発明の治療剤は、ネズミチフス菌5株及び大腸菌1株
を用いた復帰変異試験において変異原性を全く示さず、
また、ラット肝ミクロゾームを用いた代謝活性化法によ
る復帰変異試験でも変異原性を全く示さなかった(岩原
繁雄等、(財)食品薬品安全センター秦野研究所報告
(1981))。
【0028】
【実施例】以下、実施例及び臨床例により本発明をさら
に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等により
なんら限定されるものではない。
【0029】実施例1 下記に示す4例の筋ジストロフィー患者に対して本発明
の治療剤を投与するため、市販のヒト免疫グロブリンを
主成分とする本発明の治療剤を使用した。具体的には、
臨床例1の場合は、本発明の治療剤としてミドリ十字社
製「ヴェノグロブリン−IH」5.0gを、臨床例2の
場合は、本発明の治療剤として日本製薬社製「献血グロ
ベニン−I−ニチヤク」5.0gを添付の日本薬局方注
射用水100mlに溶解し、臨床例3及び臨床例4の場
合は、本発明の治療剤としてバイエル社製「ポリグロビ
ンN」2.5g製剤1本及び2本をそれぞれ使用し、点
滴静注により患者に投与した。
【0030】臨床例1 患者(M.K.): 22歳の女性である。 診断: 筋ジストロフィー(肢体型)である。 病歴: 4歳頃から歩行時転倒傾向があった。小学校ま
でしか体育の授業を受けられなかった。17歳時、肺炎
による呼吸不全で夜間のみ体外式呼吸器を装着した。 所見: 顔面及び近位筋優位の四肢の筋萎縮、筋力低下
を認めた。呼吸不全のため夜間のみ呼吸器を装着してい
た。 処置: 本発明の治療剤として、静注用ヒト免疫グロブ
リン製剤「ヴェノグロブリン−IH」を5.0g/日の
投与量で6日間投与した。 投与の前後の肺活量、握力及び血清CK(クレアチンキ
ナーゼ)値は表1に示すとおりである。
【0031】
【表1】
【0032】表1から明らかなように、呼吸機能及び上
肢遠位筋力の改善並びに血清CKの改善が認められた。
【0033】臨床例2 患者(A.H.): 50歳の女性である。 診断: 遺伝性遠位型ミオパチーである。 所見: ベッド上の寝たきり状態で四肢の筋力低下が高
度であった。上肢の挙上も不可能であった。心機能が悪
く心不全として長期入院していた。 処置: 5日間と、2カ月後の5日間にかけて、静注用
ヒト免疫グロブリン製剤「献血グロベニン−I−ニチヤ
ク」5.0g/日を投与した。 投与前後の握力、血清CK値、及び臥位での上肢挙上を
調べた結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】表2から明らかなように、握力及び血清C
K値に変化は見られなかったが、臥位での上肢挙上に著
しい改善が認められ、投与前に不可能であった上肢挙上
が可能となった。従って、四肢の筋力低下が高度な患者
であっても、本発明の治療剤の投与により上肢近位筋の
筋力の改善が認められた。
【0036】臨床例3 患者(E.S.): 43歳の女性である。 診断: 遺伝性遠位型ミオパチーである。 病歴: 35歳から階段の登り降り、爪先立ちができな
くなった。40歳頃から床から立ち上がれなくなった。 所見: 四肢遠位筋の筋力低下と筋萎縮を認め、下肢は
近位筋も筋力低下をきたしていた。車椅子を使用し、ベ
ッドと車椅子の移動には全面介助が必要であった。 処置・経過: 本発明の治療剤として、静注用ヒト免疫
グロブリン製剤「ポリグロビンN」2.5g/日を6日
間投与した。
【0037】ベッドと車椅子の移動について投与直後は
僅かに体が軽い感じがした程度であった。投与後1週間
で体の安定性が増してきたようで、投与後1か月間程度
はかなり体が軽く感じ、足で踏ん張れるようになったと
の自覚症状の改善をきたした。薬剤投与による副作用は
見られなかった。投与前後の血中ミオグロビン、血清C
K、血清GOT、血清GPTのデータを比較した結果を
表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】表3から明らかなように、薬剤投与後、血
中ミオグロビン、血清GOT、血清GPTの値が正常化
した。また、投与前と投与後の同患者の筋力検査では、
投与後に四肢・躯幹の筋力低下の改善が認められた。
【0040】臨床例4 患者(N.H.): 25歳の男性である。 診断: 遺伝性遠位型ミオパチーである。 病歴: 15歳頃から四肢・躯幹の筋力が緩徐に低下し
てきた。 所見: 車椅子の利用が必要であり、ベッドと車椅子の
移動には介助が必要である。 処置・経過: 本発明の治療剤として、静注用ヒト免疫
グロブリン製剤「ポリグロビンN」5.0g/日を6日
間投与した。薬剤投与による副作用は見られなかった。
投与前の血清CKは306であったが、投与後には血清
CKは92に改善していた。自覚症状、筋力低下の改善
は認められなかった。 以上の結果をまとめると、本発明の治療剤の投与によ
り、血清CK値の改善が認められた。
【0041】
【発明の効果】筋ジストロフィー患者に本発明の治療剤
を投与すると、筋力低下が自・他覚的に改善しあるいは
クレアチンキナーゼ(CK)値が改善するなどの筋ジス
トロフィーの症状の改善が観察される。また、有害な副
作用は観察されない。従って、本発明により、筋ジスト
ロフィーの治療に極めて有効で安全な治療剤が提供され
る。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト免疫グロブリンを主成分とする筋ジ
    ストロフィー治療剤。
  2. 【請求項2】 ヒト免疫グロブリンを90%以上含むこ
    とを特徴とする請求項1記載の筋ジストロフィー治療
    剤。
  3. 【請求項3】 該ヒト免疫グロブリンが90%以上のI
    gGを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載
    の筋ジストロフィー治療剤。
  4. 【請求項4】 該治療剤が厚生省薬務局監修「生物学的
    製剤基準」に基づいて製造されうるものである請求項1
    〜請求項3記載の筋ジストロフィー治療剤。
  5. 【請求項5】 該生物学的製剤基準が「乾燥ポリエチレ
    ングリコール処理人免疫グロブリン」である請求項4記
    載の筋ジストロフィー治療剤。
  6. 【請求項6】 該生物学的製剤基準が「ポリエチレング
    リコール処理人免疫グロブリン」である請求項4記載の
    筋ジストロフィー治療剤。
  7. 【請求項7】 該生物学的製剤基準が「pH4処理酸性
    人免疫グロブリン」である請求項4記載の筋ジストロフ
    ィー治療剤。
  8. 【請求項8】 該生物学的製剤基準が「乾燥pH4処理
    人免疫グロブリン」である請求項4記載の筋ジストロフ
    ィー治療剤。
  9. 【請求項9】 該生物学的製剤基準が「乾燥イオン交換
    樹脂処理人免疫グロブリン」である請求項4記載の筋ジ
    ストロフィー治療剤。
  10. 【請求項10】 該生物学的製剤基準が「乾燥スルホ化
    人免疫グロブリン」である請求項4記載の筋ジストロフ
    ィー治療剤。
  11. 【請求項11】 該生物学的製剤基準が「アルキル化人
    免疫グロブリン」である請求項4記載の筋ジストロフィ
    ー治療剤。
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