JPH10128577A - フラックス組成物 - Google Patents

フラックス組成物

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JPH10128577A
JPH10128577A JP8280606A JP28060696A JPH10128577A JP H10128577 A JPH10128577 A JP H10128577A JP 8280606 A JP8280606 A JP 8280606A JP 28060696 A JP28060696 A JP 28060696A JP H10128577 A JPH10128577 A JP H10128577A
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cream solder
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solder
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久男 池田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本願発明は、はんだ付け終了後にフロン等の
有機溶剤を用いず、水によってフラックス成分を洗浄・
除去することが出来、更に腐食性や耐熱性に優れたフラ
ックス組成物、及びフラックス組成物と溶融温度が40
〜450℃の金属粉とを配合してなるクリームはんだを
提供することである。 【解決手段】 本願発明は、トリス(2−ヒドロキシプ
ロピル)イソシアヌレートを含有するフラックス組成物
である。また、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソ
シアヌレートを含有するフラックス組成物と、40〜4
50℃の溶融温度を有する金属粉とを配合してなるクリ
ームはんだである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、電気・電子分野
において洗浄性、信頼性が良好なフラックス組成物、及
びこのフラックス組成物と溶融温度が40〜450℃の
金属粉とを配合してなるクリームはんだを提供する。
【0002】
【従来の技術】フラックスは、はんだ付け、銀ロウ付
け、電気溶接などの分野において、金属基材表面の酸化
物の溶解と除去、加熱中の再酸化防止、あるいははんだ
の表面張力を低下させてぬれ性を向上させてはんだ付け
を良好にする目的で用いられる。フラックスは樹脂、活
性剤およびその他の添加物を含有する組成物である。
【0003】流動性を有するフラックス組成物に金属粉
末を添加してペースト状にしたものがクリームはんだで
ある。クリームはんだは、スクリーンやマスクでプリン
ト基板のはんだ付け部に印刷塗布され、その上に電子部
品を設置した後、赤外線、レーザー光線、熱風、高温蒸
気等の加熱装置で加熱処理されてはんだ付けされる。ま
た、プリント基板の銅箔を長期間放置しておくと空気中
の酸素と結びついて表面に酸化物を生成したり、銅箔の
表面に油や汚れ等が付着する事がある。銅箔表面の酸化
や汚れは、はんだ付け時にはんだが完全に付着せずに不
良の原因になる。この酸化や汚れを防ぐためにプリント
基板表面に液状のフラックスで被覆するものがプリフラ
ックスである。
【0004】一方、フラックス組成物と金属粉を混合し
て魂状、線状等の固体状にしたものはヤニ入りはんだで
ある。電子部品等のプリント基板は近年ますます小型化
される傾向があり、部品の微小化、実装密度の上昇、高
密度集積化が進められ、電子材料の電極間距離やパター
ンの間隔はますます狭くなっている。従って、従来のは
んだ付け性、非腐食性、ぬれ性に加えて高い絶縁性の確
保、接合強度に関してフラックス組成物に対して高度な
要請がなされるに至っている。
【0005】電子部品の分野において、フラックス組成
物としては、従来からアビエチン酸などを主成分とする
ロジン系フラックスが主として使用されている。これは
ロジン、グリコールエーテル、油脂、および活性剤とし
て塩酸アミン等の各種のアミン塩を含むものである。特
開平2−205296号公報には、炭素数が8以下のモ
ノカルボン酸、ポリカルボン酸およびヒドロキシカルボ
ン酸から成る群から選ばれた1種または2種以上のカル
ボキシル基含有化合物とトリス−(2,3−エポキシプ
ロピル)イソシアヌレートとの反応生成物である樹脂状
物質を含有するフラックスとはんだ粉とを配合したクリ
ームはんだが開示されている。
【0006】特開平4−71797号公報には、水溶性
の液状またはペースト状フラックスと粉末はんだを混和
したクリームはんだにおいて、該フラックス中に固有粘
度が0.05〜3.0であるポリビニルピロリドンを、
0.01〜5重量%添加した事を特徴とするクリームは
んだが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のロジン系フラッ
クスはフラックス残渣がはんだ付け後に残りやすく、ク
リームはんだでははんだボールの生成が起こり、ピンコ
ンタクト不良や腐食、短絡などの原因となり信頼性の低
下や不良を招く。この為はんだ付け後のフラックス残渣
の除去のため、ハロゲン系溶剤による洗浄が施されてい
る。
【0008】ここで、本明細書中の「信頼性」と言う語
は、はんだ付け後の劣化、腐食等のはんだ付けの確実性
を表現する単語として用いる。近年フラックス組成物で
は、地球を取り巻くオゾン層の破壊や地下水の汚染等の
重篤な公害問題を引き起こすために、従来使用されてき
たフロン系、ハロゲン系溶剤の使用が制限され、水洗浄
への移行が強く求められている。
【0009】水洗浄は、有機溶剤洗浄と比較した場合に
次の利点がある。(1)溶剤としては不燃性で取り扱い
が極く簡便である。(2)環境破壊が無い。(3)有機
溶剤より安価である。(4)クリームはんだに使われる
活性剤等のイオン性物質の溶解、洗浄にとっては最良で
ある。クリームはんだを例にとると要求される一般的な
特性として、(a)適度な粘稠性を有し、印刷性が良好
であること。(b)はんだ付け性が良いこと。(c)毒
性や臭気が無いこと。(d)長期間に粘度変化がなく、
表面の皮はり等が無く保存安定性に優れていることがあ
げられる。
【0010】油溶性クリームはんだにおいては、前記
(a)〜(d)の性能をほぼ満足するものが製品化され
ているが、水溶性クリームはんだの場合は、まだ不十分
で特に印刷性、洗浄性、腐食性、耐熱性が問題となって
いる。この原因の一つは、フラックスのベースキャリア
ーに求めることが出来る。すなわち、油溶性クリームは
んだではフラックスのベースキャリアーにロジンが使用
されているのに対し、水溶性クリームはんだのフラック
スでは、上記の諸性能を同時発現し、なおかつ水に溶け
るベースキャリアとなる好適な材料の選定が極めて難し
い。
【0011】現在の水溶性クリームはんだでは、ポリエ
チレングリコールやポリプロピレングリコールが常用さ
れているが、しかし、これらをベースキャリアーとした
クリームはんだは、スキージでスクリーンマスク上を移
動させた場合、粘稠性並びに粘着力に欠けるため、十分
にローリングせず、横滑りして、スクリーン開口部への
はんだの充填が不十分となり、基板への印刷塗布性を悪
くしている。
【0012】本発明の目的は、はんだ付け終了後、フロ
ン等の有機溶剤を一切用いず、水によってフラックス成
分を洗浄・除去することが出来、更に腐食性や耐熱性に
優れたフラックス組成物、又はフラックス組成物と溶融
温度が40〜450℃の金属粉とを配合してなるクリー
ムはんだを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本願第1発明は、トリス
(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートを含有す
るフラックス組成物である。また、本願第2発明は、ト
リス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートを含
有するフラックス組成物と、40〜450℃の溶融温度
を有する金属粉とを配合してなるクリームはんだであ
る。
【0014】
【発明の実施の形態】本願発明に用いられるトリス(2
−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートは式(1);
【0015】
【化1】
【0016】で表される多価アルコール化合物である。
上記のトリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレ
ートは、如何なる製法で得られるものも使用する事が出
来る。例えば、シアヌル酸と式(2):
【0017】
【化2】
【0018】で表されるプロピレンオキシドとを、トリ
アリールホスフィン、トリアルキルホスフィン又は第4
級ホスフォニウム塩を触媒として溶媒中で反応させて得
られるトリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレ
ートを使用する事が出来る。上記製法で使用されるシア
ヌル酸(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオ
ール、C3333)は、互変異性体であるイソシアヌ
ル酸と平衡関係にあり、上記製法ではシアヌル酸、イソ
シアヌル酸又は両者の混合物を使用することが出来る。
【0019】上記プロピレンオキシドはシアヌル酸の1
モルに対して、3.0〜3.6モル、好ましくは3.1
〜3.3モルの比率で用いる。上記製法に使用する触媒
は、式(3):R345Pで表されるトリアリールホ
スフィン、式(4):R678Pで表されるトリアル
キルホスフィン、又は式(5):R9101112+
-で表される第4級ホスフォニウム塩を用いることが好
ましい。
【0020】式(3):R345Pで表されるトリア
リールホスフィンにおいて、R3、R 4及びR5は炭素数
6〜10のアリール基であり、例えばフェニル基、トリ
ル基が挙げられる。R3、R4及びR5の3個のアリール
基は、同一の有機基とする事も異なる有機基とする事も
出来る。これらトリアリールホスフィンとしては、トリ
フェニルホスフィン、トリトリルホスフィンが挙げられ
る。
【0021】式(4):R678Pで表されるトリア
ルキルホスフィンにおいて、R6、R 7及びR8は炭素数
2〜10のアルキル基であり、例えばブチル基、ヘキシ
ル基、オクチル基が挙げられる。R6、R7及びR8の3
個のアルキル基は、同一の有機基とする事も異なる有機
基とする事もできる。これらトリアルキルホスフィンと
しては、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィ
ン、トリオクチルホスフィンが挙げられる。
【0022】式(5):R9101112+-で表さ
れる第4級ホスフォニウム塩において、R9、R10、R
11及びR12は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基
又はアラルキル基であるが、好ましくはR9、R10、R
11及びR12の4つの有機基の内で3つの有機基がフェニ
ル基又は置換されたフェニル基であり、例えばフェニル
基やトリル基を例示することが出来る。また他の1つの
有機基は炭素数1〜18のアルキル基又はアラルキル基
である。また、陰イオン(Y-)は、塩素イオン(C
-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等
のハロゲンイオンや、カルボキシラート(−CO
-)、スルホナート(−SO3 -)、アルコラート(−
-)等の酸基を挙げることができる。式(4)の第4
級ホスフォニウム塩は、例えばハロゲン化テトラn−ブ
チルホスフォニウム、ハロゲン化テトラn−プロピルホ
スフォニウム等のハロゲン化テトラアルキルホスフォニ
ウム、ハロゲン化トリエチルベンジルホスフォニウム等
のハロゲン化トリアルキルベンジルホスフォニウム、ハ
ロゲン化トリフェニルメチルホスフォニウム、ハロゲン
化トリフェニルエチルホスフォニウム等のハロゲン化ト
リフェニルモノアルキルホスフォニウム、ハロゲン化ト
リフェニルベンジルホスフォニウム、ハロゲン化テトラ
フェニルホスフォニウム、ハロゲン化トリトリルモノア
リールホスフォニウム、或いはハロゲン化トリトリルモ
ノアルキルホスフォニウム(ハロゲン原子は塩素原子又
は臭素原子)が挙げられる。
【0023】上記製法に用いる触媒としては、式(5)
の第4級ホスフォニウム塩が好ましい。特に、好ましい
触媒としては、ハロゲン化トリフェニルメチルホスフォ
ニウム、ハロゲン化トリフェニルエチルホスフォニウム
等のハロゲン化トリフェニルモノアルキルホスフォニウ
ム、ハロゲン化トリフェニルベンジルホスフォニウム等
のハロゲン化トリフェニルモノアラルキルホスフォニウ
ム、ハロゲン化トリトリルモノメチルホスフォニウム等
のハロゲン化トリトリルモノアルキルホスフォニウム
(ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)を例示する事
が出来る。
【0024】上記のトリアリールホスフィン、トリアル
キルホスフィン又は第4級ホスフォニウム塩は、シアヌ
ル酸とプロピレンオキシドの反応における触媒として作
用する。トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフ
ィン又は第4級ホスフォニウム塩は、シアヌル酸とプロ
ピレンオキシドの合計量に対して0.03〜5重量%の
割合で存在させることが好ましい。0.03重量%未満
では反応速度の促進が期待できず、また5重量%を越え
て添加してもそれ以上の効果は期待できない。
【0025】シアヌル酸は殆どの有機溶媒に不溶乃至僅
かに溶解する為に、円滑に反応を進行させるため種々の
反応媒体が提案されている。例えばジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリド
ン、脂肪族ニトリル、モルホリン、ジメチルスルホキシ
ド、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテ
ル、エーテル、テトラヒドロフラン、アルキレンハライ
ド、ジアルキルカーボネート等がある。
【0026】シアヌル酸とプロピレンオキシドを反応さ
せてトリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレー
トを製造する時に、反応途中乃至反応終点付近で分解反
応が起こることが知られている。特に溶媒としてジメチ
ルホルムアミドやジメチルスルホキシドを用いた場合
は、分解物が多量に生成し収率も低下する。溶媒として
アルコール、グリコール、グリコールエーテル、ケト
ン、エーテル或いは水等が提案されている。これらは溶
媒自身がオニウム塩を形成しシアヌル酸のプロピレンオ
キシド付加体を接触的に分解するような心配はないが、
やはり化学量論量のプロピレンオキシドを反応させよう
としたり、熱履歴が長い場合は多量の循環使用の出来な
い分解物が生成し、安定な操業が困難でしかも純度と収
率が向上しない。
【0027】上記製法ではグリコールエーテル、即ちセ
ロソルブを溶媒に用いることが純度と収率を向上させる
点で好ましい。セロソルブとしては、2−メトキシエタ
ノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノ
ール、2−フェノキシエタノールが挙げられる。上記の
シアヌル酸とプロピレンオキシドとの反応は、ステンレ
ス製オートクレーブ等の反応容器を用い、1気圧〜10
気圧の圧力下で、60〜150℃の温度で、5〜50時
間で行うことが出来る。
【0028】本願発明に用いるトリス(2−ヒドロキシ
プロピル)イソシアヌレートは、クリームはんだ用フラ
ックスのみならず、プリフラックス、又はヤニ入りはん
だ用フラックスの有効成分として使用することが出来
る。本願発明のフラックス組成物は、必須成分としてト
リス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートを含
有し、更に任意成分として樹脂、活性剤、及び溶媒を添
加する事が出来る。しかし、流動性を有するクリームは
んだ用フラックスやプリフラックスとする場合は溶媒を
添加して、所望の粘度を有するペースト状ないし液状の
フラックス組成物とする。
【0029】本願発明のはんだ付け用フラックス組成物
中のトリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレー
トの配合量はフラックスの種類、用途により異なる。ク
リームはんだ用フラックスの場合はフラックス組成物中
で3〜60重量%、好ましくは10〜60重量%であ
る。プリフラックスの場合はフラックス組成物中で3〜
80重量%、好ましくは15〜60重量%である。ヤニ
入りはんだ用フラックスの場合はフラックス組成物中で
3〜80重量%、好ましくは15〜60重量%である。
【0030】本発明のフラックス組成物に配合される樹
脂および活性剤は、従来のはんだ付け用フラックスに常
用されている一般成分を使用することが出来る。その配
合量は使用成分、用途に基づいて適時選定される。樹脂
としては例えばロジン、不均化ロジン、水素添加ロジ
ン、マレイン化ロジン、重合ロジンなどが例示される。
その配合量はクリームはんだ用フラックスの場合はフラ
ックス全量の5〜80重量%、好ましくは5〜50重量
%である。プリフラックスの場合はフラックス全量の3
〜80重量%、好ましくは15〜60重量%である。ヤ
ニ入りはんだ用フラックスの場合はフラックス全量の3
〜80重量%、好ましくは15〜60重量%である。
【0031】活性剤としては例えば、含窒素塩基のハロ
ゲン化水素塩、有機酸塩、有機酸、アミノ酸等が例示さ
れる。その配合量はクリームはんだ用フラックスの場合
はフラックス全量の0〜10重量%、好ましくは0.2
〜5重量%である。プリフラックスの場合はフラックス
全量の3〜80重量%、好ましくは15〜60重量%で
ある。ヤニ入りはんだ用フラックスの場合はフラックス
全量の0〜10重量%、好ましくは0.2〜4重量%で
ある。
【0032】本発明のフラックス組成物をクリームはん
だ用フラックス、プリフラックスとして調整する際は、
常法のごとく溶媒や粘度調整剤を用いることが出来る。
これらの含有量は使用成分、用途に基づいて適時選定さ
れる。溶剤としては、有機溶剤、アルコール類、脂肪族
および芳香族炭化水素類縁体、テルペン類、エステル、
エーテル類、グリコールエーテル類が例示される。その
配合量はクリームはんだ用フラックスの場合はフラック
ス全量の5〜80重量%、好ましくは30〜70重量%
である。プリフラックスの場合はフラックス全量の0〜
40重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
【0033】粘度調整剤としては、硬化ヒマシ油等のワ
ックス類、超微粒子シリカ等が例示される。これらの配
合量は使用成分、用途によって適時選択される。さらに
本発明のフラックス組成物には、酸化防止剤(例えば
2,6−ジブチル−p−クレゾール等)、可塑剤(例え
ばフタル酸ジオクチル等)、および消泡剤(例えばシリ
コン系消泡剤等)等、通常用いる添加剤を適宜配合して
もよい。
【0034】本願発明によれば、はんだ付け終了後、水
によってフラックス成分を洗浄・除去することの出来る
クリームはんだとすべく、フラックス成分に使用する樹
脂状物質は、水溶性であることはもちろんのこと、クリ
ームはんだに使用する有機溶剤にも溶解すると言う、両
親媒性でなければならず且つ、はんだの溶融加熱時に分
解することのないものでなければならない。
【0035】従って、この条件を満たすものとして本願
発明では、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシア
ヌレートを使用する事が好ましい。すなわち、トリス
(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートは1分子
中に3個の水酸基を有しているため水溶性に優れ、更に
トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートは
1分子中に3個のメチル基を有することから、有機溶剤
への溶解性にも優れる。更に、トリス(2−ヒドロキシ
プロピル)イソシアヌレートは分子中に剛直なトリアジ
ン環を有することから耐熱性にも優れる。第1表にトリ
ス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートの各種
溶媒への溶解性を示した。
【0036】
【表1】表1 溶媒\成分 THPI PEG NR 水 任意の割合に可溶 可溶 不溶 MeOH 可溶 可溶 可溶 THF 易溶 可溶 可溶n−HX 不溶 不溶 可溶 表1中で、MeOHはメタノール、THFはテトラヒド
ロフラン、n−HXはヘキサン、THPIはトリス(2
−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、PEGはポ
リエチレングリコール、及びNRは天然ロジンを示す。
【0037】本願発明のフラックス組成物は、撹拌機付
きのガラス製又はステンレス製の容器を用いて混合する
事により得られる。これらの混合は、20〜150℃の
温度で、0.5〜2時間で行うことが出来る。一方、本
願発明のフラックス組成物及びクリームはんだにおい
て、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレー
トの代わりに、式(3)で表されるトリス(2−ヒドロ
キシエチル)イソシアヌレートを使用することも出来
る。
【0038】
【化3】
【0039】しかし、トリス(2−ヒドロキシエチル)
イソシアヌレートは広範な有機溶媒への溶解度が低いた
めフラックス組成物にする際に、特定の溶媒を選択しな
ければならない。トリス(2−ヒドロキシエチル)イソ
シアヌレートが可溶な溶媒としては、例えばメタノール
があり、この溶媒を使用する必要がある。けれども、ト
リス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを使用
したフラックス組成物、そのフラックス組成物を利用し
たクリームはんだは、はんだ付け後の水での洗浄・除去
を容易に行うことが出来るので、トリス(2−ヒドロキ
シエチル)イソシアヌレートを使用することは可能であ
る。
【0040】本願発明のクリームはんだは、トリス(2
−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートを含有した流
動性のあるフラックス組成物と、これに金属粉(はんだ
粉)を配合したペースト状態で得られる。本願発明のク
リームはんだは、ディスペンサー等のはんだ付け装置や
スクリーン印刷機等で使用することが出来る程度の粘度
にする事が好ましい。
【0041】本願発明のクリームはんだは、撹拌機付き
のガラス製又はステンレス製の容器を用いて混合する事
により得られる。これらの混合は、20〜150℃の温
度で、0.5〜2時間で行うことが出来る。本願発明で
使用する金属粉は特に限定されるものではなく、通常ク
リームはんだにおいて使用される同様の種類、粒度のも
のであるが、溶融温度は40〜450℃、好ましくは1
50〜350℃の範囲のものを使用する事が出来る。こ
の金属粉は例えば、Sn−Pb、Sn−Pb−Ag、S
n−Ag、Sn−Pb−Si、Pb−In等の合金が用
いられる。これらのはんだ合金の粒度は、200〜40
0メッシュのふるい目を通過する粒子に相当するもので
ある。
【0042】本願発明のクリームはんだは、フラックス
組成物の5〜50重量%と、金属粉の95〜50重量%
を混合して得られる。更に好ましくは、フラックス組成
物の8〜20重量%と、金属粉の92〜80重量%を混
合して得られる。従来のフラックス組成物中に存在する
塩素イオンは、洗浄後、フラックス残渣として基板に残
り絶縁性の低下や配線腐食の原因となる。しかしながら
本願発明に用いられるトリス(2−ヒドロキシプロピ
ル)イソシアヌレート中には、それら塩素イオンは含ま
れず絶縁性の低下や配線腐食の危険は無い。
【0043】本願発明では、本願のプリフラックス組成
物で処理した上に、本願のクリームはんだではんだ付け
した場合は、両者のフラックス成分は相溶性が良く、ま
た水によってこれらのフラックス成分を容易に除去する
ことができる。
【0044】
【実施例】下記の材料を準備してフラックス組成物を作
製した。 A1:トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレ
ート〔日産化学工業(株)製〕 A2:ポリエチレングリコール〔市販の試薬、数平均分
子量約1500〕 A3:ポリエチレングリコール〔市販の試薬、数平均分
子量約600〕 A4:ジエタノールアミン〔市販の試薬〕 A5:ブチルカルビトール〔市販の試薬〕 A6:ジエチルアミン・HCl〔市販の試薬〕 A7:りんご酸〔市販の試薬〕 A8:乳酸〔市販の試薬〕 実施例1 60gのトリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌ
レート、36.5gのブチルカルビトール、1.5gの
ジエチルアミン塩酸塩、及び2gのりんご酸を60℃の
温度で1時間、反応フラスコで混合してフラックス組成
物を得た。
【0045】実施例2〜3 実施例1と同様に表2記載の配合組成で混合してフラッ
クス組成物を得た。 比較例1 40gのポリエチレングリコール(数平均分子量約15
00)、20gのポリエチレングリコール(数平均分子
量約600)、10gのジエタノールアミン、26.5
gのブチルカルビトール、1.5gのジエチルアミン塩
酸塩、及び2gのりんご酸を60℃の温度で1時間、反
応フラスコで混合してフラックス組成物を得た。
【0046】比較例2 比較例1と同様に表2記載の配合組成で混合してフラッ
クス組成物を得た。
【0047】
【表2】 表2 成分\例 実施例1 実施例2 実施例3 比較例1 比較例2 A1 60 60 60 − − A2 − − − 40 40 A3 − − − 20 20 A4 − − − 10 10 A5 36.5 35 35 26.5 25 A6 1.5 − − 1.5 − A7 2 5 − 2 5 A8 − − 5 − − 実施例4 実施例1で得られたフラックス組成物10重量部と、金
属粉(Sn/Pb重量比が63/37、200メッシュ
のふるい目通過品、球状粉末)90重量部を40℃の温
度で撹拌機付きステンレス製容器で混合してクリームは
んだを得た。
【0048】実施例5 実施例1のフラックス組成物の代わりに、実施例2で得
られたフラックス組成物を用いる以外は、実施例4と同
様に行いクリームはんだを得た。 実施例6 実施例1のフラックス組成物の代わりに、実施例3で得
られたフラックス組成物を用いる以外は、実施例4と同
様に行いクリームはんだを得た。
【0049】比較例3 比較例1で得られたフラックス組成物10重量部と、金
属粉(Sn/Pb重量比が63/37、200メッシュ
のふるい目通過品、球状粉末)90重量部を40℃の温
度で撹拌機付きステンレス製容器で混合してクリームは
んだを得た。 比較例4 比較例1のフラックス組成物の代わりに、比較例2で得
られたフラックス組成物を用いる以外は、比較例3と同
様に行いクリームはんだを得た。
【0050】上記実施例4〜6及び比較例3〜4で得ら
れたクリームはんだを、下記試験で評価した。 試験(1);スクリーン印刷性試験 基板上に実施例4〜6及び比較例3〜4で得られたクリ
ームはんだをメタルマスクで印刷し、にじみ、かすれ、
ブリッジ(銅箔回路間をはんだが短絡する事による不
良)等の印刷不良の有無を目視で観察した。上記の印刷
不良が全く存在していなければ記号(○)を、僅かでも
印刷不良があれば記号(△)を、基板上に全面的に印刷
不良があれば記号(×)を表3に記載した。
【0051】試験(2);はんだ付け性試験 実施例4〜6及び比較例3〜4で得られたクリームはん
だを基板上にメタルマスクで印刷した後、加熱によりリ
フローさせて基板上に広げ、はんだの濡れ性とはんだボ
ール(十分にリフローせずに魂状のはんだとして残る現
象)の発生量を調べ目視で観察した。上記の濡れ性不良
やはんだボールが全く存在していなければ記号(○)、
僅かでも濡れ性不良やはんだボールがあれば記号
(△)、基板上に全面的に濡れ性不良やはんだボールが
あれば記号(×)を表3に記載した。
【0052】試験(3);洗浄性試験 実施例4〜6及び比較例3〜4で得られたクリームはん
だを基板上にメタルマスクで印刷した後、加熱によりリ
フローさせて基板上に広げ、60℃の温水に5分間浸漬
してからすすぎ洗いを行い、フラックス残渣の有無を目
視で調べた。フラックス残渣が全く存在していなければ
記号(○)、僅かでもフラックス残渣があれば記号
(△)、多くのフラックス残渣が存在していれば(×)
を表3に記載した。
【0053】試験(4);耐熱性試験 実施例4〜6及び比較例3〜4で得られたクリームはん
だを、アルミナ基板上にアプリケーターを用いて厚さ1
mmに塗布した。これらを350℃のオーブン炉中で3
分間加熱し、炉から取り出し冷却後に塗布されたクリー
ムはんだの変色の有無を目視で調べた。全く変色が無け
れば記号(○)、僅かでも変色していれば記号(△)、
大きく変色していれば記号(×)で表3に記載した。
【0054】試験(5);加熱後の洗浄性試験 試験(4)が終了した後のサンプルを、40℃の水で3
0秒間の振動させながら洗浄を行い、水に不溶な物質が
存在するか否か(フラックス残渣の有無)を目視で調べ
た。フラックス残渣が全く存在していなければ記号
(○)、僅かでもフラックス残渣があれば記号(△)、
多くのフラックス残渣が存在していれば(×)を表3に
記載した。
【0055】
【表3】 表3 試験番号\例 実施例4 実施例5 実施例6 比較例3 比較例4 試験(1) ○ ○ ○ △〜× △〜× 試験(2) ○ ○ ○ △ △ 試験(3) ○ ○ ○ △ △ 試験(4) ○ ○ ○ × × 試験(5) ○ ○ ○ × × 本願発明のフラックス組成物によって得られたクリーム
はんだは、上記各試験で良好な結果が得られた。
【0056】
【発明の効果】本願発明では、化学式(1)で示される
多価アルコール化合物であるトリス(2−ヒドロキシプ
ロピル)イソシアヌレートを使用することによりクリー
ムはんだ用フラックス、プリフラックス、ヤニ入りはん
だ用フラックスを作製する事が出来る。特に、トリス
(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートに有機溶
媒を添加してペースト状にしたフラックスは、クリーム
はんだ用フラックスに用いる事が出来る。このペースト
状フラックスと金属粉を混合して得られるクリームはん
だは、従来品のクリームはんだより印刷性、耐熱性に極
めて優れた特性を示すと共に、水のみで容易に洗浄除去
することが出来るので、有機溶剤洗浄タイプのクリーム
はんだのような環境破壊の心配がなく、労働衛生上の面
からも安全である。
【0057】また、耐熱性、洗浄性等の特徴から電気溶
接、ワイヤーボンディング、銀ロウ付け等の前処理用の
フラックスとしても好適であるばかりでなく、金属表面
の洗浄剤としても良好なフラックス組成物である。また
近年のファインピッチ化に伴い開発されたパッケージで
あるボールグリッドアレイ用のフラックスとしても好適
である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソ
    シアヌレートを含有するフラックス組成物。
  2. 【請求項2】 トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソ
    シアヌレートを含有するフラックス組成物と、40〜4
    50℃の溶融温度を有する金属粉とを配合してなるクリ
    ームはんだ。
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