JP4426076B2 - 低温活性ハンダペースト - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、保存安定性および塗れ性に優れたハンダペーストであり、ハンダ付けに際し空気中でのハンダ付けでよくまたハンダ付け後においても無洗浄でよい、主として回路板にハンダペーストをプリントし、電子部品を載置してハンダ付けをする場合に、低温(本発明においては250℃以下、ほぼ200〜250℃の範囲の温度を指す。)においてリフローを行い、ハンダ付けができるハンダペーストに関する。
【0002】
ハンダペーストはエレクトロニクス産業において電子部品を回路基板等に表面実装するために用いられており、そしてこれらの回路基板は、テレビ、DVD、8mmビデオなどの家電器具、自動車、電子玩具等の電子化率の増大、ワープロ、パソコン、電子複写機等のOA機器の普及率の増大、携帯電話の普及等による電子用機器の需要の増大に伴いその使用量は激増している。
この場合、電子部品の実装のために使用されるハンダペーストは多くの要望事項を克服することが要求される。すなわち順不同であるがハンダペーストとして保存安定性、回路基板への印刷適性、電子部品の載置性、適度のリフロー温度、金属表面への濡れ性、ハンダ付け後におけるフラックス成分が残らないこと(無洗浄性)等の性能が必要である。
【0003】
ハンダペーストに使用するフラックス(本発明ではペーストからハンダ粉末をのぞいた成分をいう。)は、主としてロジンまたは合成樹脂系の樹脂成分、有機ハロゲン化物、有機酸等の活性剤、溶剤、チクソトロピック剤、その他ハンダの酸化防止剤、有機ハロゲン化物の分解防止のための還元剤等が添加されることが多い。
有機ハロゲン化物などの活性剤は、ハンダ付けの際に接続部の金属面を活性化し、ハンダとの接着性を高める作用を有し極めて有効な成分ではあるが、ハンダ付け温度においては確実に分解して接着面を活性化する必要がある。一般の有機ハロゲン化物系の活性化剤は現実には常温でも徐々に分解が進行し、ハンダ粉末と反応して活性を失うとともにハンダを失活させることが多い。
【0004】
さらにリフローした後でも分解物として接着面に残存し、腐食を促進し電子部品の長期信頼性を失わせたりするために、ハンダ付け後に有機溶剤などによる十分な洗浄を必要とすることが多い。従って活性剤としては、常温においてはハンダ粉末とは反応せず、リフロー温度においては完全に分解して接着面を活性化するとともに、残存物が残らない物が好ましい。
常温での保存安定性、無洗浄性などの面ではすでに提案(特開平8−155676号公報)されているトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートはハンダ付けフラックス用活性剤としてはこの面で満足できる性能を有するが、低温分解性に欠け、ハンダ粉末を配合しないときの熱分解開始温度(化合物100重量%の内5重量%の重量が減少したときの温度)が284℃とされており、Pb系ハンダ粉末を配合したペーストにおいても260〜350℃のハンダ付け温度であって、250℃以下の低温度でのハンダペースト用の活性剤としては使用が困難であった。
【0005】
一方、近年回路基板、チップ部品、QFPなどの電子部品は小型化させるとともに、精密化され、材質も多種類の物を使用しているために耐熱性が低くなりつつある。このため電子部品の実装温度は安全性を見てこれまでの温度より低いことが要求されつつあり、今後その傾向はますます強くなるものと予想される。
またハンダペーストとしては、ハンダペーストを印刷法によりプリントし、その上に電子部品を載置し、リフロー熱源により一括してハンダ粉末を溶融し冷却することにより接着を行っている。従って印刷適性も重要な性能であり、印刷に適した粘度、チクソトロピックス性が必要である。これらの性質は溶剤およびチクソ剤の添加によって付与されている。
【0006】
ここで使用される溶剤もハンダの酸化を促進する水分を吸収せず、活性剤、チクソトロピック剤などの溶解性が高く、かつリフロー温度で完全に接着面には残らない溶剤が必要である。
従って、ハンダペーストとしては、常温安定性があり、低温で分解して活性があり、かつリフロー温度で完全に分解し無洗浄ハンダ付けが可能なハンダペーストの開発が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハンダペーストとして、印刷適性に優れ、吸湿性が小さく、常温安定性があり、リフロー温度は低くとも十分な活性があり、かつ活性剤はリフロー温度で完全に分解して無洗浄ハンダ付けが可能なハンダペーストの開発を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1] ハンダ付け用フラックスの活性剤としてトリス(2,3一シブロモプロピル)イソシアヌレートを、また溶剤としてグリコールエーテル系溶剤を使用し、さらにハンダとしてZnを含有するハンダ粉末を使用した低温活性ハンダペースト、
[2] Znを含有するハンダ粉末が、Sn−Zn系ハンダ粉末である上記[1]に記載の低温活性ハンダペースト、
[3] 溶剤がジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール−モノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−モノ2−エチルヘキシルエーテルおよびプロピレングリコールモノフェニルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも一種である上記[1]に記載の低温活性ハンダペースト、
【0009】
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載の低温活性ハンダペーストを回路板上にプリントし、電子部品を載置し、該ハンダペーストをリフローして実装することを特徴とする回路板の低温ハンダ付け方法、および
[5] 上記[4]に記載の回路板の低温ハンダ付け方法により製造した電子部品を実装した接合物、を開発することにより上記の課題を解決した。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明のハンダペーストに使用するフラックスは、ロジンまたは合成樹脂系の樹脂成分、活性剤、溶剤、チクソトロピック剤、さらに必要に応じて安定剤、pH調節剤等を配合したものである。
【0011】
本発明のハンダペーストに配合される樹脂成分としては、従来フラックスに配合されている周知の樹脂を用いることができ、例えば、天然ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジン、変性ロジン、ロジンエステルなどのロジン誘導体、合成樹脂としてはポリエステル、ポリウレタン、アクリル系樹脂その他が用いられる。
【0012】
また印刷性を改善するために添加されるチクソトロピック剤としては、微細なシリカ粒子、カオリン粒子などの無機系のもの、または水添ヒマシ油、アマイド化合物などの有機系のものが使用される。
【0013】
溶剤としては、ハンダペーストとしたときに、印刷適性が必要であり、樹脂成分、活性剤、チクソトロピック剤などの溶解性が高く、リフロー後に残ってはならず、またハンダペーストとして印刷性がよい有機溶剤が必要である。沸点は、溶剤の沸点があまり低いと、印刷時には解放されるので、溶剤が蒸発してペーストの粘度が高くなり著しく作業性が低下する。沸点があまりに高いと、リフローしても揮散せずハンダ表面にベタベタしたフラックス残査が残り、見た目にも絶縁抵抗などの信頼性の観点からも好ましくない。
また、特にハンダ粉末として反応性の高いZn系のものを選択したために、吸湿性の溶剤を使用したときは吸収した水分と反応して一気にペーストの劣化が進み、保存安定性を著しく低下させる。また印刷時には解放されるので吸湿が避けられないので吸湿性の高いアルコール系の溶剤はハンダ粉末として亜鉛系ハンダを選択した場合には吸湿性の低い溶剤を選択しなければならない。
【0014】
このためには従来汎用されてきたアルコール類、グリコール類は吸湿性のために不適当であり、芳香族系等の炭化水素系溶剤はロジン類の溶解性が不十分のために不適当である。
このために、本発明のハンダペーストに使用可能な溶剤としては、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−モノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなどのグリコールの中級または高級アルコールのエーテル系溶剤、またはそれらの混合溶剤が用いられる。
【0015】
また、本発明のハンダペーストにおいては、還元性物質を安定剤として併用することで、保存安定性を向上させることができる。
上記還元剤としては、通常樹脂などの酸化防止剤として使用されており、溶剤に溶解可能なフェノール系化合物、りん系化合物、硫黄系化合物、トコフェロール及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0016】
具体的には、フェノール系化合物としては、ハイドロキノン、カテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。りん系化合物としては、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト等が挙げられる。また、硫黄系化合物としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。アスコルビン酸誘導体の具体例としては、アスコルビン酸−2−リン酸、アスコルビン酸−2,6−ジステアレ−ト、アスコルビン酸−6−パルミテート等が挙げられる。また、トコフェロール誘導体の具体例としては、トコール、酢酸トコフェロール、リン酸トコフェロール、ソルビン酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等が挙げられる。
【0017】
これらの還元剤は、単独であってもまたは混合して使用してもよい。還元剤の添加量は、フラックス、ハンダペーストの保存安定性、特にはんだ粉末と活性剤中の有機ハロゲン化合物との反応の防止を充分に確保するに足る量であればよいが、一般的にはフラックス全量に対し0.005質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。添加量が少なすぎると安定化効果が無く、20質量%以上添加しても高濃度添加に見合うだけの効果の向上が認められないので好ましくない。
【0018】
還元剤の作用機構は十分に解明できていないが、おそらくはこれらの還元剤がハンダペースト中の溶存酸素あるいは空気中の酸素に働き、酸化されやすいZn系ハンダ金属の酸化を抑制することによると思われる。また、これらの還元剤はハロゲン含有成分から遊離してくるハロゲンのアクセプターとして働くので、遊離したハロゲンがハンダ金属、特にハンダ金属中のZnと反応するのを効果的に防止しているためと考えられる。
【0019】
また、はんだペーストのpHも、所定の範囲4〜9、より好ましくは6〜8の範囲にあることが、はんだ粉とフラックスとの反応を抑制する意味で好ましい。この場合、pH調整剤として、アルカノールアミン類、脂肪族第1〜第3級アミン類、脂肪族不飽和アミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類などのアミン化合物を用いることが好ましい。
【0020】
これらアミン化合物の具体的な化合物としては、エタノールアミン、ブチルアミン、アミノプロパノール、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンラウレルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メトキシプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、エチルへキシルアミン、エトキシプロピルアミン、エチルへキシルオキシプロピルアミン、ビスプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミンなどを挙げることができる。
【0021】
アミン化合物の使用量は、はんだペーストのフラックスの全量に対し、0.05〜20質量%とすることが好ましい。0.05質量%未満ではpH調整剤としての効果が十分でなく、20質量%を超えると一般にpHが9を超え、アルカリ側に移行し、はんだペーストが吸湿しやすくなる。
更に回路の銅を防錆するためフラックス中に、アゾール類、例えばベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、トリルトリアゾールなどを添加しても良い。防錆剤の添加量は、フラックス全量に対して0.05〜20質量%が好ましい。
【0022】
本発明では活性剤として、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを使用することが必要である。該活性剤は、熱分解開始温度が284℃であり安定性に富み、結合ハロゲンが全くイオン性のないハロゲン化合物であり、ハンダ粉末と混合しても常温では全く反応しないものである。しかし該化合物はリフローしたときはイオン性のない臭素分子を発生してハンダ付け面の活性化を行うと共に、残りの部分は炭酸ガス、水に分解して残存物を残さないため、ハンダ付け面が無洗浄でよい極めて優れた活性剤の性能を有している。
【0023】
しかし上記の通りに、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートは熱分解開始温度が284℃と高いため、通常のPb系ハンダを使用したハンダペーストの低温度のハンダ付けには効果がないものであった。本発明においては、Znを含有するハンダ粉末を使用することによりトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが低温度においても熱分解が起こることを見出し、それがグリコールエーテル系溶剤を用いることにより極めて常温安定性を増し、Znの劣化を防止することが可能であることと組合わさることにより本発明を完成したものである。
【0024】
本発明においては上記の化合物に加え、プレヒート時にハンダ金属の表面酸化物を除去し良好な結合を得るために従来公知の有機ハロゲン化合物、各種有機塩基のハロゲン化水素酸塩、および/または有機酸成分等の活性剤を併用添加してもよい。これらの物質は、それぞれ1種またはそれ以上を使用することを妨げない。
【0025】
その一例としては、トリス(2,3−ジクロロプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2,3−ジクロロプロポキシ)−3,5−ジクロロフェニル]プロパン、2,3−ジブロモプロピオンアミド、2,3−ジクロロプロピオンアミド、2,3−ジブロモプロピルカルバメート、2,3−ジクロロプロピルカルバメート、2,3−ジブロモプロピルアクリレート、2,3−ジクロロプロピルアクリレート、1,2−ジブロモエチル エチルエーテル、1,2−ジクロロエチル エチルエーテル等が挙げられる。
【0026】
その他の公知の有機ハロゲン化合物としては、1−ブロモ−2−ブタノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、1,4−ジブロモ−2,3−ブタンジオール、1−ブロモ−3−メチル−1−ブテン、1,4−ジブロモブテン、2,3−ジブロモプロペン、α−ブロモカプリル酸エチル、β−ブロモプロピオン酸エチル、α−ブロモ酢酸エチル、2,3−ジブロモコハク酸、2,2−ジブロモアジピン酸、2,4−ジブロモアセトフェノン、1,1−ジブロモテトラクロロエタン、4−ステアロイルオキシベンジルブロマイド、4−ステアリルベンジルブロマイド、4−ブロモメチルベンジルステアレート、4−ステアロイルアミノベンジルブロマイド、2,4−ビスブロモメチルべンジルステアレート、4−パルミトイルオキシベンジルブロマイド、4−ラウロイルオキシべンジルブロマイド、4−ウンデカノイルオキシベンジルブロマイド、9,10,12,13,15,16−へキサブロモステアリン酸メチルエステル、9,10,12,13,15,16−へキサブロモステアリルアルコール、9,10,12,13−テトラブロモステアリルアルコール、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン等の臭化物が挙げられるがこれらの例示に限定されるものではない。また臭素の代わりに、塩素、ヨウ素を含む有機ハロゲン化合物を用いても良い。
【0027】
有機塩基のハロゲン化水素酸塩としては、例えばイソプロピルアミン臭化水素酸塩、ブチルアミン塩化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩等のハロゲン化水素酸アミン塩、1,3−ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩等が挙げられる。
【0028】
有機酸成分としては、従来周知のコハク酸、フタル酸、ステアリン酸、セバシン酸等が挙げられ、リフロー温度に達した時に有機酸を発生する化合物である有機酸誘導体は好適に用いられる。その例としては、各種脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族スルホン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル等が挙げられる。具体的な例としては、パラトルエンスルホン酸−n−プロピル、パラトルエンスルホン酸イソプロピル、パラトルエンスルホン酸イソブチル、パラトルエンスルホン酸−n−ブチル、ベンゼンスルホン酸−n−プロピル、ベンゼンスルホン酸イソプロピル、ベンゼンスルホン酸イソブチル、サリチル酸−n−プロピル、サリチル酸イソプロピル、サリチル酸イソブチル、サリチル酸−n−ブチル、4−ニトロ安息香酸イソプロピル、4−ニトロ安息香酸−t−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、マロン酸−t−ブチル、ブロモ酢酸−t−ブチルなどが挙げられる。
【0029】
上記の分解性の有機酸エステルは、単独ではリフロー温度においても分解性が低いため、分解を促進するためには少量のエステル分解触媒の添加が有効である。エステル分解触媒としては、分解性の有機酸エステルがリフロー温度で分解して酸の発生を促進する作用を有する触媒であればよいが、その中で特に有機塩基のハロゲン化水素酸塩が有効である。
ただし、常温安定性、溶剤への溶解性、リフロー温度における活性および無洗浄性を確保するためには活性剤としてトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート単独使用が最も確実である。
【0030】
本発明のハンダペーストに用いられるフラックスは、フラックス全量に対し、20〜60質量%の樹脂成分、0.04〜20質量%のチクソトロピック剤、0.02〜20質量%の有機ハロゲン化合物、残部として溶剤その他を用いる。このフラックスを、はんだペースト全量に対し14〜8質量%と、はんだ粉末86〜92質量%とを混練して本発明のはんだペーストとする。混練はプラネタリーミキサー等公知の装置を用いて行われる。
【0031】
本発明のハンダペーストに使用するハンダ粉末の金属組成としては、例えばSn−Zn系、Sn−Ag−Zn系、Sn−Bi−Sb−Zn系、Sn−Bi−Cu−Zn系、Sn−Ag−Sb−Zn系、Sn−Ag−Cu−Zn系、Sn−Zn−Bi系が挙げられる。
【0032】
上記の具体例としては、たとえば市販品として91Sn/9Zn、95.5Sn/3.5Ag/1Zn、51Sn/45Bi/3Sb/1Zn、84Sn/10Bi/5Sb/1Zn、88.2Sn/10Bi/0.8Cu/1Zn、88Sn/4Ag/7Sb/1Zn、97Sn/1Ag/1Sb/1Zn、91.2Sn/2Ag/0.8Cu/6Zn、89Sn/8Zn/3Bi、86Sn/8Zn/6Bi、89.1Sn/2Ag/0.9Cu/8Znなどが挙げられる。また本発明のハンダ粉末として、上記のハンダを主体とし、これらとは異なる組成のハンダ粉末を2種類以上併用したものでもよい。
【0033】
上記のハンダ粉末の中でも好ましくはSnおよびZn元素を含有するハンダから選ばれた合金組成を用いて本発明のハンダペーストを作製した場合、活性剤としてトリス(2,3−ブロモプロピル)イソシアヌレートを使用しているにもかかわらず、Sn−Pb系のハンダペーストに比してリフロー温度を大幅に下げられるため、実装部品の長寿命化がはかられ、また部品の多様化にも対応できる。特に高温度ハンダで一旦電子部品を実装した後にさらに該回路板に他の電子部品を実装するときなどは、リフロー温度を大幅に低下させ先のハンダ付けに影響を与えないような実装を容易にすることが可能となる。
【0034】
本発明のハンダペーストは、低温度におけるハンダ付けにおいて極めて有効ではあるが、250℃を超えて使用することももちろん可能であり、基板、例えば、プリント配線板と電子部品を低温で接合して接合物を製造する際に好適に使用される。本発明のハンダペーストの使用方法、並びに電子部品接合物の製造方法では、例えば、ハンダ付けを所望する部分に、印刷法等でハンダペーストを塗布し、電子部品を載置し、その後加熱してハンダ粒子を溶融し凝固させることにより電子部品を基板に接合することができる。
【0035】
基板と電子部品の接合方法(実装方法)としては、例えば表面実装技術(SMT)があげられる。この実装方法は、まずハンダペーストを印刷法により基板、例えば配線板上の所望する箇所にプリントする。次いで、チップ部品やQFPなどの電子部品をハンダペースト上に載置し、リフロー熱源により一括してハンダ付けする。リフロー熱源には、熱風炉、赤外線炉、蒸気凝縮ハンダ付け装置、光ビームハンダ付け装置等を使用することができる。
【0036】
本発明のリフローのプロセスはハンダ合金組成で異なるが、91Sn/9Zn、89Sn/8Zn/3Bi、86Sn/8Zn/6BiなどのSn−Zn系の場合、プレヒートとリフローの2段工程で行うのが好ましく、それぞれの条件は、プレヒートが温度130〜180℃、好ましくは、130〜150℃、プレヒート時間が60〜120秒、好ましくは、60〜90秒、リフローは温度が210〜230℃、好ましくは、210〜220℃、リフロー時間が30〜60秒、好ましくは、30〜40秒である。
【0037】
本発明のハンダペーストでは上記のリフロープロセスを窒素中でも大気中でも実施することが可能である。窒素リフローの場合は酸素濃度を5vol%以下、好ましくは0.5vol%以下とすることで大気リフローの場合より配線板などの基板へのハンダの濡れ性が向上し、ハンダボールの発生も少なくなり信頼性の高い処理ができる。
【0038】
この後、基板を冷却し表面実装が完了する。この実装方法による電子部品接合物の製造方法においては、プリント配線板等の基板(被接合板)の両面に接合を行ってもよい。なお、本発明のハンダペーストを使用することができる電子部品としては、例えば、LSI、抵抗器、コンデンサ、トランス、インダクタンス、フィルタ、発振子・振動子等があげられるが、これに限定されるものではない。
【0039】
また本発明は、あらかじめ基板の所定の表面、例えばプリント基板の回路金属の、所定の表面にのみ化学反応により粘着性皮膜を形成し、これにハンダ粉末を付着させた後フラックスを塗布し、ハンダの溶融温度まで加熱してリフローさせ、ハンダバンプを形成した回路基板(特開平7−7244公報)上に、本発明のハンダペーストを用いてSMT(表面実装技術)で実装した場合、ハンダ中のボイドが減少する等の優れた接合物の信頼性が得られる。
【0040】
【実施例】
以下実施例をもって本発明の内容をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
[試験法]
▲1▼ハンダペーストの保存安定性
ハンダペースト製造後、25℃で7日間保存する加速試験を行い、有機ハロゲン化合物の分解率と水素発生量を測定した。本加速試験の条件は大略5℃で3ケ月間の冷蔵保管に相当する。有機ハロゲン化合物の分解率は、ぺ一スト1gにクロロホルム5mlを加えて攪拌し、フラックス分を溶解した後、純永10mlを加えてハロゲンイオンを水により抽出し、イオンクロマトグラフで測定した。また水素発生量は、ハンダペースト50gを100mlの試験管に入れ、シリコンゴム製栓で密閉した状態で25℃、7日間保存した後、ゴム栓を通して気体を採取してガスクロマドグラフにより気体中の水素濃度を測定した。また、製造時および25℃、7日後のハンダペーストの粘度をマルコム社製PCU−205型スパイラル粘度計を用いて測定した。
【0042】
▲2▼ボイドの観察(接合の信頼性)
60mm平方の銅板に厚さ150ミクロンのメタルマスクを用いて、直径6mm×6個のパターンを印刷後、大気雰囲気下でリフローし、次いでカッタでハンダと共に銅板を切断した後、該ハンダ部分を顕微鏡により観察し、ボイドの発生状混を観察した。6個のパターンについて大きさが10μm以上のボイドを計測し、1個のパターン当たりの平均個数が2個以上であった場合を不合格とした。
【0043】
(実施例1〜2、比較例1〜2)
〈フラックス及ぴハンダペーストの製造〉
樹脂成分として重合ロジン17.5質量%、不均化ロジン27.5質量%、チクソトロピック剤として水添ヒマシ油6質量%、活性剤としてシクロヘキシルアミン臭化水素酸塩0.1質量%と活性剤としてトリス(2,3一ジブロモプロピル)イソシアヌレート3.0質量%を、また還元剤として、ヒドロキノン1質量%を、更にpH調整剤としてトリエタノールアミン2質量%、防錆剤としてベンゾトリアゾールを1質量%加え、ジエチレングリコ一ルヘキシルエーテル(実施例1、比較例,2)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(実施例2)、ベンジルアルコール(比較例1)の溶剤を加えて100質量%とするフラックスを調製した。
【0044】
上記のフラックス11質量%、に89Sn/8Zn/3Bi(実施例1〜2、比較例1)、67Sn/37Pb(比較例2)のハンダ粉末89質量%を添加し、プラネタリーミルで混練し、3kgのハンダペーストを製造した。
【0045】
〈電子部品接合物の製造〉
実装方法としてSMTを用いた。実施例1〜2、比較例1〜2の組成のハンダペーストをそれぞれ1枚の回路板に印刷し、LSI、チップ抵抗、チップコンデンサーをハンダペースト上に載置した後、リフロー熱源により加熱してハンダ付けした。リフロー熱源には熱風炉を用いた。リフロー条件はプレヒート温度が130℃、プレヒート時間が80秒、リフローはピーク温度が220℃、200℃以上のリフロー時間を50秒とした。
【0046】
作製したプリント配線板および用いたハンダペーストについて前述した測定法により特性を比較した。測定結果を表1に示す。
比較例1において、ベンジルアルコールは吸湿性が強いため上記リフロー条件ではボイドが発生した。比較例2において、ハンダ粉末がZnを含まないためボイドが発生した。
また実施例1において、91Sn/9Zn、86Sn/8Zn/6Biのハンダ粉末を使用して同様の実験を行ったが、実施例1と同様の結果を得た。
【0047】
実施例および比較例から見て、トリス(2,3一ジブロモプロピル)イソシアヌレート活性剤の熱分解温度は264℃であり、実施例で使用したZn系ハンダ合金の融点は固相線で187℃、液相線で197℃であり、比較例2のPb系ハンダ合金は共晶温度が183℃である。従って同一のリフロー条件(ピーク温度220℃、200℃以上の時間が50秒)では同等の濡れ性を示してよいはずであるが、Pb系ハンダの場合にボイドが発生し、Zn系ハンダでは問題がないのは、Zn系ハンダは活性剤の熱分解がうまく進行するのにPb系ハンダでは低温では活性剤の分解がうまくゆかないためと推定される。
【0048】
【表1】
Figure 0004426076
【0049】
【発明の効果】
本発明のハンダペーストは、ハンダ合金とフラックスの活性剤との反応が大幅に抑制され、極めて優れた保存安定性が得られた。また本発明のハンダペーストの関発により、実装配線板のファインピッチ化、部品の多様化に対応した信頼性の高い回路板のハンダ付け方法、ハンダ付けした接合物を提供することか可能となった。

Claims (7)

  1. ハンダ付け用フラックス14〜8質量%とZnを含有するハンダ粉末86〜92質量%からなるハンダペーストであって、該フラックスは、フラックス全量に対し、樹脂分20〜60質量%、活性剤としてトリス(2,3一ブロモプロピル)イソシアヌレートもしくはこれを含む有機ハロゲン化合物0.02〜20質量%、及びグリコールエーテル系溶剤とを含む低温活性ハンダペースト。
  2. チクソトロピック剤をフラックス全量に対し0.04〜20質量%含む請求項1に記載の低温活性ハンダペースト。
  3. 還元剤をフラックス全量に対し0.005〜20質量%含む請求項1または2に記載の低温活性ハンダペースト。
  4. Znを含有するハンダ粉末が、Sn−Zn系ハンダ粉末である請求項1〜3のいずれかに記載の低温活性ハンダペースト。
  5. グリコールエーテル系溶剤がジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール−モノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−モノ2−エチルヘキシルエーテルおよびプロピレングリコールモノフェニルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載の低温活性ハンダペースト。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の低温活性ハンダペーストを回路板上にプリントし、電子部品を載置し、該ハンダペーストをリフローして実装することを特徴とする回路板の低温ハンダ付け方法。
  7. 請求項6に記載の回路板の低温ハンダ付け方法により製造した電子部品を実装した接合物。
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