JPH0990562A - 写真用吸光染料 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】高い吸光度を有し、かつ現像処理後の残色汚染
が極めて少なく、そして経時安定性に優れた写真用吸光
染料を提供する。 【解決手段】化１で示される写真用吸光染料。 【化１】 ［式中Ｒ₁ 〜Ｒ₄ はアルキル基を表す。Ｚ₁ 、Ｚ₂ はベ
ンゼン環、ナフタレン環を形成するのに必要な原子群を
表す。Ｌ₁ 〜Ｌ₄ は２価の連結基を表す。Ｌ₅〜Ｌ₉ は
メチン基を表す。Ｍ⁺ はカチオンを表し、ｎは１〜５の
整数を表す。］

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、写真用吸光染料に関
し、さらに詳しくは、ハロゲン化銀写真感光材料に用い
る光吸収染料に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ハロゲン化銀写真感光材料において、そ
の感光乳剤層中での有害な反射、散乱、拡散光などを吸
収したり、乳剤層と支持体ベース境界面および支持体背
面からの望ましくない反射光を吸収することによって、
イラジエーションおよびハレーションを防止して、仕上
がった写真画像の鮮鋭度を向上させることは良く知られ
ている。又、乳剤層の上や、重層カラー写真感光材料の
様に写真乳剤層が複数存在するときには、それらの中間
に着色層（フィルター層）を設けることにより、写真乳
剤層に入射すべき分光組成を制御させることも良く知ら
れている。

【０００３】イラジエーションおよびハレーションを防
止するために、感光乳剤層や乳剤層と支持体の間、ある
いは、支持体裏塗層に投与したり、フィルター層中に投
与される染料（以下単に染料と記す）は、以下のような
条件を満足することが必要である。

【０００４】（１）使用目的に応じた適性な分光吸収を
有すること。 （２）吸光度が充分に高いこと。 （３）写真化学的に不活性であること。 （４）（写真乳剤）塗液調製中や乳剤製造中および保存
中に変退色などの経時変化をおこさないこと。 （５）（写真乳剤）塗液中に添加した際に、粘度の上昇
をきたして、塗布故障の原因とならないこと。 （６）写真処理過程において脱色されるか、または溶解
除去されて、処理後の写真感光材料上に有害な着色を残
さないこと。 この様な条件を満足させるために、従来から赤外光〜可
視光〜紫外光を吸収する多くの染料が提案されてきてい
る。

【０００５】一方、近年、スキャナー方式の写真記録用
光源として、Ｈｅ−Ｎｅレーザー、赤色ＬＤ、赤色ＬＥ
Ｄといった赤色光源が広く普及してきている。この様な
赤色光領域に感光性を有する写真感光材料用の染料とし
ては、例えば特公昭３９−２２０６９号、同昭４３−１
３１６８号等に記載されているピラゾロンオキソノール
染料が良く知られており、また、特開平２−２５１８４
３号等にはインドレニン系ジカルボシアニン染料が記載
されている。

【０００６】しかしながらこれら公知の染料は、現像処
理時の脱色性が必ずしも充分でなく、そのために残色汚
染が生じやすいという欠点を有していた。

【０００７】また、特開平７−１１４１４０号に記載さ
れているインドレニン系トリカルボシアニン染料は、赤
外ＬＤ用の染料としては有用な染料であるが、赤色光用
の染料としては吸収波長が長すぎるために充分な吸光度
を得にくく、また塗布後の保存条件によっては変色して
しまい、所望の吸収波長が得られないという欠点を有し
ていた。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、赤色光に対して優れたイラジエーション防止効
果、ハレーション防止効果およびフィルター効果を有し
ており、かつ現像処理後の残色汚染が極めて少なく、そ
して経時安定性に優れた写真用吸光染料を提供すること
にある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明者らは種々検討の
結果、化１で示される染料が上記目的を満足させる優れ
た染料であることを見出だした。

【００１０】式中Ｒ₁ 〜Ｒ₄ はアルキル基（例えばメチ
ル、エチル、ｎ−プロピル、ｎ−ブチル基、ｎ−ペンチ
ル基など）を表す。またＲ₁ とＲ₂ 、Ｒ₃ とＲ₄ が互い
に連結して、炭素数５〜７の炭化水素環を形成していて
も良い。Ｚ₁ 、Ｚ₂ はベンゼン環、ナフタレン環を形成
するのに必要な原子群を表し、中でも置換基として、例
えばスルホ基、カルボキシ基、スルファモイル基、メタ
ンスルホンアミド基などの水溶性基や親水性基を有する
ものが好ましい。Ｌ₁ 〜Ｌ₄ は２価の連結基（例えば炭
素数１〜８のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニ
レン基など）を表し、中でも炭素数１〜４のアルキレン
基、アルケニレン基、アルキニレン基が好ましい。Ｌ₅
〜Ｌ₉ はメチン基を表す。またこれらのメチン基はアル
キル基（例えばメチル、エチル、ｎ−プロピル、ｎ−ブ
チル基、ｎ−ペンチル基など）などの置換基で置換され
ていても良い。Ｍ⁺ はカチオン（例えば、カリウム、ナ
トリウムなどのアルカリ金属カチオンなど）を表し、ｎ
は１〜５の整数を表す。

【００１１】上記化１で示される本発明の染料で着色さ
れたハロゲン化銀写真感光材料は、目的とする波長領域
において、幅広い吸収帯を有しているにも拘らず、他の
波長領域にはほとんど不要な副吸収がなく、又、本発明
の染料はいずれも高い分子吸光係数を有しており、カブ
リ、減感等の写真特性への悪影響を引き起こすこと無
く、少ない使用量で優れたイラジエーション防止、ハレ
ーション防止およびフィルター効果を十分に発揮するこ
とができる。

【００１２】又、現像処理工程後には感光材料中から完
全かつ迅速に染料が脱色、溶出するので、仕上がった写
真画像には前記目的で含有させた染料の残存はもちろん
のこと、脱色染料の復色による色汚染、さらには現像処
理液の着色による再染着は見受けられない。

【００１３】又、本発明の染料は染料溶液調製時の変退
色等の変化は起こらず、感光乳剤製造中や、その後の保
存中における湿熱等の外的条件に対しても影響をうける
ことなく安定であるという利点を有している。

【００１４】次に化１によって表される本発明の染料の
代表的な例を示す。但し、本発明の染料がこれらに限定
されるものではない。

【００１５】

【化２】

【００１６】

【化３】

【００１７】

【化４】

【００１８】次に、染料の合成法について代表例を具体
的に述べる。

【００１９】Ｄ１の合成 ２，３，３−トリメチル−５−スルホインドレニン１２
ｇ、Ｎ−（２−スルホエチル）ブロモアセトアミド ナ
トリウム塩（米国特許第５，０９１，２９８号明細書等
に従って合成）２３ｇ、炭酸ナトリウム２．６ｇとを水
５ｍｌ、スルホラン２５ｍｌの混合溶媒中に加え、浴温
１００〜１１０℃にて８時間加熱撹拌した。冷後メタノ
ール７０ｍｌ、トリエチルアミン１４ｍｌとを加えて室
温にて撹拌し、均一となってからマロンジアルデヒドジ
アニール塩酸塩７．４ｇと無水酢酸２８ｍｌとを加え
た。そのまま室温にて２時間撹拌後、酢酸カリウム溶液
（９．８ｇ／メタノール３０ｍｌ＋水５ｍｌ）を加えて
さらに１時間撹拌し、ついで析出した結晶を濾取した。
この様にして得られた染料粗結晶を酢酸カリウム水溶液
（２ｇ／４０ｍｌ）に加熱溶解し、ついで熱エタノール
１２０ｍｌを注加した。熱時に析出した結晶を濾取し、
含水エタノール（水／エタノール＝１／４）、メタノー
ル、エーテルの順に洗浄後、乾燥して６．５ｇのＤ１を
得た。（融点２８０℃以上、吸収極大（水）６４２ｎ
ｍ、ε（水）２．０×１０⁵ ）

【００２０】本発明の染料をハロゲン化銀写真乳剤また
は保護コロイド溶液中に添加するには、水溶液または、
メタノール、エタノール、セルソルブ類、グリコール
類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピ
リジン等の溶液として、または、これらの有機溶媒と水
との混合溶液として乳剤層、裏塗層、下引層、中間層、
保護層、紫外線吸収層中に添加し、存在せしめることが
できる。

【００２１】これら染料の使用量は適用する写真層によ
って異なるが、一般には感光材料の面積１ｍ² あたり５
〜１，０００mgになるように塗布される。

【００２２】本発明の染料が用いられるハロゲン化銀写
真乳剤としては、例えば塩化銀、臭化銀または、塩臭化
銀、よう臭化銀、塩よう臭化銀の如き混合ハロゲン化銀
のような種々の銀塩を含む乳剤などがある。

【００２３】また、本発明の染料が用いられるハロゲン
化銀写真乳剤は、特開昭５９−１９１０３２号、同昭５
９−１９２２４２号、同昭６２−１０８２４１号等に記
載の通常用いられるシアニン、メロシアニン色素等で分
光増感されていてもよい。そしてさらに公知の方法によ
って、アミノ基、あるいはアンモニウム基を含むポリマ
ー、含窒素複素環を含むポリマー等の塩基性媒染剤、安
定剤、およびその前駆体、界面活性剤、硬膜剤、紫外線
吸収剤、蛍光増白剤、現像主薬およびその前駆体などの
ような添加剤を含有していてもよい。ハロゲン化銀写真
乳剤がカラー感光材料に用いられるときには、カラーカ
プラーやその分散剤を含有させることもできる。

【００２４】本発明に用いられる親水性コロイドとして
は、ゼラチン、コロイド状アルブミン、カゼインなどの
蛋白質、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘
導体、寒天、アルギン酸ナトリウム、澱粉等の糖誘導
体、ポリビニールアルコール、ポリアクリルアミド等の
合成ポリマー等があり、それらを単独あるいは適当な比
率で混合して用いることができる。

【００２５】本発明に用いられる支持体としては、セル
ロースアセテートフイルム、ポリエチレンテレフタレー
トフイルム等のフイルム類やバライタまたはポリエチレ
ン、ポリプロピレン等を塗布またはラミネートした紙等
の通常写真感光材料に用いられているものであればいず
れでもよい。

【００２６】本発明の染料が用いられるハロゲン化銀写
真感光材料にはこれらの他に帯電防止剤、可塑剤、マッ
ト剤等の各種化合物を材料の性質をコントロールするた
めに含むことができる。以下、実施例により本発明を具
体的に説明する。

【００２７】

【実施例】

【００２８】実施例１ ゼラチン１．５５ｇを水１５．０ｍｌに加えて膨潤させ
た後、４０．０℃に加温してゼラチンを溶解した。この
ゼラチン溶液に本発明の染料と後記比較染料（添加量２
×１０^-4ｍｏｌ／ｍ² ）の水溶液と硬膜剤、界面活性剤
を加え、さらに水を加えて全量を２０．０ｍｌにした。
次にこの着色溶液を下引きを施したポリエステルフィル
ムベース上に塗布量が８０ｇ／ｍ² になるように塗布
し、４０．０℃で２４時間加温処理後、８．０×１１．
５ｃｍの長方形に裁断して残色試験の試料とした。また
その一部をとり、５０℃、相対湿度８０％の条件下に５
日間保存し、強制経時試験の試料とした。

【００２９】こうして得られた残色試験の試料を３０．
０℃のＤ−７２現像液に５秒および１５秒間浸漬した
後、流水中で１０秒間水洗し、付着した水滴を濾紙では
さんで吸いとり、乾燥して処理済の試料とした。これら
の各試料ついて、６００ｎｍ〜７００ｎｍでのλｍａｘ
に於ける光学濃度測定を島津ＵＶ−２２００を用いて行
った。また強制経時試験の試料については、変色の度合
いを５（全くない）から１（著しい）までの５段階で眼
視評価した。得られた結果を表１に示す。

【００３０】

【化５】

【００３１】

【表１】

【００３２】表１より、本発明の染料は初期濃度の高い
のに加えて、現像処理後の残色汚染が極めて少なく、ま
た強制経時の条件下でも変色が少なく安定であることが
わかる。

【００３３】実施例２ 染料の１％水溶液を１０％ゼラチン水溶液に加え、８０
ｇ／ｍ² の塗布層とした場合の光学濃度が１．０となる
ように調整し、１０％サポニン水溶液をゼラチン水溶液
１５０ｍｌに対し５ｍｌ、１０％ホルマリンを１．５ｍ
ｌ加えて得られた着色したゼラチン水溶液を用いて実施
例１と同様な操作により硬膜された光学濃度１．０の塗
布層を得る。この塗布層の上に純臭化銀乳剤を塗布し、
下記組成の現像液を用いて２０℃で９０秒間現像した後
常法に従い定着、水洗、乾燥した。

【００３４】実施例１で行った方法を用いて、得られた
処理済のフィルムの光学濃度を測定したところ、本発明
の染料を含む各試料の処理後濃度はすべて０．０２であ
った。（ただし、ベース濃度０．０２）

【００３５】現像液の組成 メトール ３ｇ 亜硫酸ナトリウム ４５ｇ ハイドロキノン １２ｇ 炭酸ナトリウム（１水塩） ８０ｇ 臭化カリウム ２ｇ 水を加えて全量１ｌとする。

【００３６】また、本発明の染料を含む各試料は、カブ
リや減感などの写真特性にたいする悪影響がなく、極め
て優れたハレーション防止効果を有する感光材料であっ
た。

【００３７】

【発明の効果】本発明の染料は、高い吸光度を有し、か
つ現像処理後の残色汚染が極めて少なく、そして経時安
定性に優れた染料である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 下記化１で示される写真用吸光染料。 【化１】 ［式中Ｒ₁ 〜Ｒ₄ はアルキル基を表す。Ｚ₁ 、Ｚ₂ はベ
   ンゼン環、ナフタレン環を形成するのに必要な原子群を
   表す。Ｌ₁ 〜Ｌ₄ は２価の連結基を表す。Ｌ₅〜Ｌ₉ は
   メチン基を表す。Ｍ⁺ はカチオンを表し、ｎは１〜５の
   整数を表す。］