JPH0988636A - ディーゼル機関用分配型燃料噴射ポンプにおける燃料の噴射時期制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ディーゼル機関用分配型燃料噴射ポンプにお
ける燃料の噴射時期を、高回転域での加速に際してのス
モークの発生抑制と、低回転域での加速に際してのＨＣ
及びＣＯの発生抑制との両方を同時に満足できるように
制御する。 【解決手段】 前記分配型燃料噴射ポンプのタイマピス
トン２７に対する一方のシリンダ室に、フィードポンプ
６の吐出側の燃料室２ａの圧力を導入し、他方のシリン
ダ室２９ｂをメイン通路３２を介して前記フィードポン
プの吸い込み側に連通する一方、前記他方のシリンダ室
２９ｂに、前記タイマピストンが進角方向に作動したと
き閉じるように構成したサブポート３３を設け、このサ
ブポートを前記フィードポンプの吸い込み側に連通す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ディーゼル機関に
使用する分配型の燃料噴射ポンプにおいて、その燃料の
噴射時期を、ディーゼル機関における負荷及び回転数に
応じて進角又は遅角制御する装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、ディーゼル機関における燃料の
最適噴射時期は、ディーゼル機関における回転数及び負
荷によって相違する。そこで、ディーゼル機関に使用さ
れる分配型燃料噴射ポンプにおいては、従来から良く知
られているように、これに設けたフィードポンプの吐出
側から燃料室内に送り込んだ燃料圧力が、ディーゼル機
関の回転数に比例して上昇することを利用して、この燃
料圧力を、タイマピストンに対する一方のシリンダ室に
導入し、タイマピストンの他方のシリンダ室を前記フィ
ードポンプの吸い込み側に連通し、前記燃料圧力とフィ
ードポンプの吸い込み側の圧力との圧力差によりタイマ
ピストンをそのタイマばねに抗して摺動作動し、このタ
イマピストンの摺動作動にて燃料噴射時期可変用ローラ
リングを回転変位すると言うオートマチックタイマによ
って、高負荷運転時における燃料の噴射時期を、図４に
実線で示す進角特性に沿って制御する一方、低負荷運転
に際しては、前記燃料室内における燃料の一部を、燃料
噴射量の減少に伴ってリークして、当該燃料室内におけ
る燃料圧力を燃料噴射量が多いときよりも下げると言う
ロードセンシングタイマによって、低負荷運転時におけ
る燃料の噴射時期を、図４に二点鎖線で示す進角特性に
沿って制御するように構成した噴射時期制御装置が設け
られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記した従来
における噴射時期制御装置は、ディーゼル機関の加速に
時において、前記タイマピストンを、フィードポンプの
吐出側の燃料室内における燃料圧力にて当該タイマピス
トンに対する他方のシリンダ室内の燃料をフィードポン
プの吸い込み側に押し出しながらそのタイマばねに抗す
る方向に摺動することによって、燃料の噴射時期を進角
するもので、加速に際しての噴射時期の進角速度を、高
回転域からの加速、及び低回転域からの加速の両方につ
いて略同じに構成している。

【０００４】従って、前記加速に際しての噴射時期の進
角速度を、高回転域での加速に際してスモークの発生を
抑制することができる最適進角速度になるように低い値
に設定すると、低回転域での加速に際しての噴射時期の
進角速度が、ＨＣ及びＣＯの発生を抑制することができ
る最適進角速度よりも遅くなるから、低回転域での加速
に際してＨＣ及びＣＯの発生を抑制できないことにな
る。

【０００５】一方、前記加速に際しての噴射時期の進角
速度を、低回転域での加速に際してＨＣ及びＣＯの発生
を抑制することができる最適進角速度になるように高い
値に設定すると、高回転域での加速に際しての進角速度
が、スモークの発生を抑制することができる最適進角速
度よりも早くなるから、高回転域での加速に際してスモ
ークの発生を抑制できないことになる。

【０００６】つまり、従来の噴射時期制御装置では、加
速に際しての噴射時期の進角速度が、低回転域での加速
と高回転域での加速との両方について略同じ値であるか
ら、加速に際しての進角速度を、高回転域での加速に際
してのスモークの発生抑制と、低回転域での加速に際し
てのＨＣ及びＣＯの発生抑制との両方を同時に満足でき
るように制御することができないと言う問題があった。

【０００７】本発明は、この問題を解消した噴射時期制
御装置を提供することを技術的課題とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この技術的課題を達成す
るため本発明は、「ディーゼル機関の分配型燃料噴射ポ
ンプにおける本体ケースに形成したシリンダ室内に、燃
料噴射時期可変用ローラリングを回転変位するためのタ
イマピストンを摺動自在に設け、このタイマピストン
に、これを遅角方向に付勢するタイマばねを設け、前記
シリンダ室のうち前記タイマピストンを挟んで一方のシ
リンダ室内に、前記分配型燃料噴射ポンプにおけるフィ
ードポンプの吐出側の燃料室内の燃料圧力を、当該燃料
圧力にて前記タイマピストンを進角方向に摺動作動する
ように導入する一方、前記シリンダ室のうち前記タイマ
ピストンを挟んで他方のシリンダ室を、メイン通路を介
して前記フィードポンプの吸い込み側に連通するように
構成して成る噴射時期制御装置において、前記シリンダ
室における他方のシリンダ室に、前記タイマピストンが
進角方向に作動したとき当該タイマピストンにて閉じる
ように構成したサブポートを設け、このサブポートを、
サブ通路を介して前記フィードポンプの吸い込み側に連
通する。」と言う構成にした。

【０００９】

【発明の作用・効果】この構成において、フィードポン
プの吐出側の燃料室とフィードポンプの吸い込み側との
間の圧力差にて摺動作動するタイマピストンは、高回転
域では他方のシリンダ室寄りの部位に位置し、サブポー
トを閉じていることにより、前記フィードポンプの吸い
込み側と他方のシリンダ室との間は、圧力が、メイン通
路を介してのみ出入りする状態になっている。

【００１０】しかし、前記タイマピストンは、低回転域
では、一方のシリンダ室寄りの部位に位置し、サブポー
トが他方のシリンダ室内に開口していることにより、前
記フィードポンプの吸い込み側と他方のシリンダ室との
間は、圧力が、メイン通路及びサブ通路の両方を介して
出入りする状態になることにより、前記タイマピストン
を前記圧力差で摺動作動するときの速度を早くすること
ができるから、低回転域での加速に際しての進角速度
を、前記高回転域での加速に際しての進角速度よりも高
い値にすることができる。

【００１１】従って、本発明によると、加速に際しての
燃料噴射時期の進角速度を、低回転域では高い値に、高
回転域では低い値にすることができるから、燃料噴射時
期を、高回転域での加速に際してのスモークの発生抑制
と、低回転域での加速に際してのＨＣ及びＣＯの発生抑
制との両方を同時に満足できるように制御することを確
実に達成できる効果を有する。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を、図面
（図１〜図３）について説明する。この図において符号
１は、従来から良く知られている分配型の燃料噴射ポン
プを示し、この分配型燃料噴射ポンプ１は、本体ケーシ
ング２と、ディーゼル機関（図示せず）のクランク軸に
連動するドライブ軸３と、プランジャバレル４内に回動
及び摺動自在に挿入したポンププランジャ５と、前記ド
ライブ軸３上に設けたフィードポンプ６とを備え、前記
フィードポンプ６は、燃料タンク７内の燃料を入口ポー
ト８から吸入したのち、吐出ポート９を介して前記本体
ケース２内における燃料室２ａ内に供給し、燃料室２ａ
内における余剰燃料は、オーバーフローポート１０から
前記燃料タンク７内に戻る一方、前記入口ポート８と、
吐出ポート９との間には、圧力調整弁１１が設けられて
いる。

【００１３】前記ポンププランジャ５は、プランジャば
ね１２にて燃料噴射時期可変用ローラリング１３におけ
るローラ１４に対して押圧付勢されるカムプレート１５
を備えると共に、ドライブ軸３に摺動自在なカップリン
グ１６にて連結され、ドライブ軸３の回転によってプラ
ンジャバレル４内を回転しながら往復動することによ
り、前記本体ケース２における燃料室２ａ内の燃料を、
ディーゼル機関における各気筒ごとに設けた吐出弁１７
より各気筒の噴射ノズル（図示せず）に対して供給する
ように構成されている。

【００１４】前記本体ケース２内におけるポンププラン
ジャ５には、そのスピルポート１８を開閉するためのス
ピルリング１９が回転及び摺動自在に被嵌され、このス
ピルリング１９の摺動によって、前記吐出弁１７からの
燃料噴射量を増減するように構成されている。符号２０
は、前記ドライブ軸３と平行に設けたガバナー軸を示
し、このガバナー軸２０には、ドライブ軸３からの回転
が伝達され、その回転が早くなればウエイト２１の開き
回動によってガバナースリーブ２２が突出動するように
したガバナー機構２３が設けられている。

【００１５】また、符号２４は、本体ケース２外に突出
するアクセルレバー２５の動き及び前記ガバナー機構２
３の動きによって、前記スピルリング１９を摺動制御す
るためのリンク機構を示し、このリンク機構２４と、前
記アクセルレバー２５とを制御ばね２６を介して連結し
て、前記アクセルレバー２５を、制御ばね２６を引っ張
る方向に回動すると、スピルリング１９が燃料噴射量増
の方向に、アクセルレバー２５を、制御ばね２６を緩め
る方向に回動すると、スピルリング１９が燃料噴射量減
の方向に摺動するように構成すると共に、前記ガバナー
スリーブ２２の突出動にて、前記スピルリング１９が燃
料噴射量増の方向に摺動するように構成されている。

【００１６】符号２７は、前記本体ケース２に形成した
シリンダ室２９内に、前記ドライブ軸３の軸線と直角方
向に摺動自在に設けたタイマピストンを示し、このタイ
マピストン２７には、前記燃料噴射時期可変用のローラ
リング１３がピン２８を介して連結され、且つ、当該タ
イマピストン２７を遅角方向に付勢するタイマばね３１
が設けられている。

【００１７】また、前記シリンダ室２９のうちタイマピ
ストン２７を挟んで一方のシリンダ室２９ａ内に、前記
本体ケース２における燃料室２ａ内の燃料を、タイマピ
ストン２７に穿設したポート３０より導入する一方、前
記シリンダ室２９のうちタイマピストン２７を挟んで他
方のシリンダ室２９ｂ内を、これに常時開口するメイン
通路３２を介して前記フィードポンプ６における吸い込
み側に連通する。

【００１８】これにより、前記燃料室２ａ内における燃
料の圧力が回転数に比例して高くなると、前記タイマピ
ストン２７は、前記燃料室２ａ内の圧力により他方のシ
リンダ室２９ｂ内の圧力をフィードポンプ６における吸
い込み側に逃がしながら、前記タイマばね３１に抗して
他方のシリンダ室２９ｂ寄りの部位に摺動して、この位
置で、前記タイマピストン２７を、前記燃料室２ａとフ
ィードポンプ６の吸い込み側との間の圧力差によって摺
動作動することにより、高負荷運転時における燃料の噴
射時期を、回転数に比例して進角制御するように構成さ
れている。

【００１９】更にまた、前記ガバナー軸２０には、燃料
の入口ポート８に連通する逃がしポート２０ａが穿設さ
れる一方、ガバナースリーブ２２には、オリフィスポー
ト２２ａが穿設され、ガバナースリーブ２２が、高負荷
の状態まで突出しているときには、そのオリフィスポー
ト２２ａは、前記逃がしポート２０ａに対して連通しな
いが、負荷の減少に伴って、ガバナースリーブ２２が後
退すると、そのオリフィスポート２２ａは、前記逃がし
ポート２０ａに対して連通する。

【００２０】これにより、燃料室２ａ内における燃料の
一部をリークして、当該燃料室２ａ内における燃料の圧
力を、燃料噴射量が多いときよりも低下することによ
り、前記タイマピストン２７が一方のシリンダ室２９ａ
寄りの部位に位置し、この位置で、前記タイマピストン
２７を、前記燃料室２ａとフィードポンプ６の吸い込み
側との間の圧力差によって摺動作動することにより、低
負荷運転時における燃料の噴射時期を、回転数に比例し
て進角制御するように構成されている。

【００２１】この場合、本発明においては、前記シリン
ダ室２９における他方のシリンダ室２９ｂに、前記タイ
マピストン２７が進角方向に作動したとき当該タイマピ
ストン２７にて閉じるように構成したサブポート３３を
設け、このサブポート３３を、サブ通路３４を介して前
記フィードポンプ６の吸い込み側に連通するように構成
する。

【００２２】このように構成することにより、フィード
ポンプ６の吐出側の燃料室２ａとフィードポンプ６の吸
い込み側との間の圧力差にて摺動作動するタイマピスト
ン２７は、図２に示すように、高回転域では他方のシリ
ンダ室２９ｂ寄りの部位に位置し、サブポート３３を閉
じていることにより、前記フィードポンプ６の吸い込み
側と他方のシリンダ室２９ｂとの間は、圧力が、メイン
通路３２を介してのみ出入りする状態になっている。

【００２３】しかし、前記タイマピストン２７は、低回
転域では、図３に示すように、一方のシリンダ室２９ａ
寄りの部位に位置し、サブポート３３が他方のシリンダ
室２９ｂ内に開口していることにより、前記フィードポ
ンプ６の吸い込み側と他方のシリンダ室２９ｂとの間
は、圧力が、メイン通路３２及びサブ通路３４の両方を
介して出入りする状態になることにより、前記タイマピ
ストン２７を前記圧力差で摺動作動するときの速度を早
くすることができるから、低回転域での加速時における
進角速度を、前記高回転域での加速時における進角速度
よりも高い値にすることができるのである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例による分配型燃料噴射ポンプの
縦断正面図である。

【図２】図１の要部を示す図で高負荷運転域の状態を示
す図である。

【図３】図１の要部を示す図で低負荷運転域の状態を示
す図である。

【図４】従来における進角特性を示す図である。

【符号の説明】

１ 分配型燃料噴射ポンプ ２ 本体ケース ２ａ 燃料室 ３ ドライブ軸 ４ プランジャバレル ５ プランジャポンプ ６ フィードポンプ １４ ローラリング １５ カムプレート １６ カップリング １７ 吐出弁 １９ スピルリング ２０ ガバナー軸 ２１ ウエイト ２２ ガバナースリーブ ２３ ガバナー機構 ２４ リンク機構 ２５ アクセルレバー ２６ 制御ばね ２７ タイマピストン ２９ シリンダ室 ２９ａ 一方のシリンダ室 ２９ｂ 他方のシリンダ室 ３０ ポート ３１ タイマばね ３２ メイン通路 ３３ サブポート ３４ サブ通路

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ディーゼル機関の分配型燃料噴射ポンプに
   おける本体ケースに形成したシリンダ室内に、燃料噴射
   時期可変用ローラリングを回転変位するためのタイマピ
   ストンを摺動自在に設け、このタイマピストンに、これ
   を遅角方向に付勢するタイマばねを設け、前記シリンダ
   室のうち前記タイマピストンを挟んで一方のシリンダ室
   内に、前記分配型燃料噴射ポンプにおけるフィードポン
   プの吐出側の燃料室内の燃料圧力を、当該燃料圧力にて
   前記タイマピストンを進角方向に摺動作動するように導
   入する一方、前記シリンダ室のうち前記タイマピストン
   を挟んで他方のシリンダ室を、メイン通路を介して前記
   フィードポンプの吸い込み側に連通するように構成して
   成る噴射時期制御装置において、前記シリンダ室におけ
   る他方のシリンダ室に、前記タイマピストンが進角方向
   に作動したとき当該タイマピストンにて閉じるように構
   成したサブポートを設け、このサブポートを、サブ通路
   を介して前記フィードポンプの吸い込み側に連通するこ
   とを特徴とするディーゼル機関用分配型燃料噴射ポンプ
   における燃料の噴射時期制御装置。