JPH0987008A - アルミナ質焼結体及びその製法 - Google Patents

アルミナ質焼結体及びその製法

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JPH0987008A JP7250735A JP25073595A JPH0987008A JP H0987008 A JPH0987008 A JP H0987008A JP 7250735 A JP7250735 A JP 7250735A JP 25073595 A JP25073595 A JP 25073595A JP H0987008 A JPH0987008 A JP H0987008A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来のアルミナ質焼結体では、強度または靱性
のいずれかが低く、高い強度と高い靱性を兼ね備えた焼
結体が得られていない。 【解決手段】Al2 3 粉末に、Al2 3 との共晶点
が1600℃以下の金属酸化物を添加混合し、成形後、
焼成するに際し、マイクロ波等の手段を用いて室温から
焼成温度までを8℃/min以上の昇温速度で昇温し
て、長径が3μm以下、アスペクト比が1.5以下の等
方性Al2 3 結晶粒を全量中15〜80体積%、長径
が10μm以上、アスペクト比が3以上の異方性Al2
3 結晶粒を全量中20〜85体積%の割合で含有する
アルミナ質焼結体を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強度、靱性に優れ
たアルミナ質焼結体およびその製造方法に関わり、特
に、航空・宇宙業界,製錬業界,化学業界等で用いられ
たり、ガスタ−ビン,エンジン用部品等に使用される耐
高温構造材料のアルミナ質焼結体およびその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、アルミナ質焼結体は、耐高温
の構造部材として、耐環境性,強度ともに優れることで
注目されてきた。また、その強度と破壊靭性をさらに向
上させるために、種々の組織制御および複合化が試みら
れている。例えば、低温焼成や、粒成長を抑制する助剤
を添加することにより、微粒な焼結組織を形成すること
は一般的に知られている。また、Al2 3 −SiC複
合材料、Al2 3 −ZrO2 複合材料、形状異方性の
β−Al2 3 結晶分散アルミナ材料が知られており
(特開昭61−122164号公報、特開昭63−13
9044号公報、特開昭63−134551号公報等参
照)、このような複合材料によれば、純粋なアルミナ質
焼結体よりも強度および靭性を向上することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記A
2 3 −SiC複合材料では、非酸化物のSiCを分
散含有するため、高温酸化雰囲気において耐酸化性に欠
け、Al2 3 −ZrO2 複合材料は900℃付近の温
度で強度が急激に低下するという問題があり、SiCや
ZrO2 などの第2相を含まない系での強度および靱性
の向上が望まれる。
【0004】また、前記微粒組織のアルミナ質焼結体
は、強度が向上されたものの、破壊靭性はむしろ低下す
る傾向にあるという問題があり、強度とともに靱性の向
上には至っていない。また、β−Al2 3 分散アルミ
ナ材料は、β−Al2 3 結晶のヤング率が低く、また
粒成長速度が低いために形状異方性粒子が成長しにくい
等の理由から、靭性の向上に対する寄与が小さく、例え
ば、室温における破壊靱性は、せいぜい3.2〜3.4
MPa・m1/2 であった。(特開昭63−134551
号)。
【0005】本発明は、これらの問題を解決し、強度と
破壊靭性に優れたアルミナ質焼結体およびその製造方法
を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、アルミナの
室温強度および破壊靭性を同時に上げるためには、微細
な等方性結晶と異方性形状を有する結晶を共存させるこ
とが有効であり、また、異方性形状結晶は高ヤング率を
有するとともに、サイズと形状を制御することが重要で
あるという見地に基づいて研究を重ねた結果、長径が3
μm以下、アスペクト比が1.5以下の等方性Al2
3 結晶粒と、長径が10μm以上、アスペクト比が3以
上の異方性Al2 3 結晶粒の混合組織を持つアルミナ
質焼結体は強度と破壊靭性がともに優れることを見いだ
し、本発明に至った。
【0007】また、Al2 3 粉末に、Al2 3 との
共晶点が1600℃以下である金属酸化物を添加混合
し、成形後、焼成するに際し、室温から焼成温度までを
8℃/min以上の昇温速度で昇温すれば、上記組織特
徴を有するアルミナ質焼結体が得られることを見いだ
し、本発明に至った。なお、上記製造方法の中、焼成が
マイクロ波により加熱することで、所定の昇温速度を実
現できる上に、前記組織の形成が促進されることを見い
だし、本発明に至った。
【0008】さらに、マイクロ波による加熱焼成中に、
焼結体に対して圧力を加えることにより得られた前記組
織特徴を有する焼結体は、緻密性が向上し、より優れた
強度と破壊靭性を示すことを見いだし、本発明に至っ
た。
【0009】
【作用】本発明におけるアルミナ質焼結体は、粒径3μ
m以下の微細な等方性Al2 3 結晶粒と、長径が10
μm以上、アスペクト比が3以上の異方性Al2 3
晶粒を共存させることにより、強度と破壊靭性がともに
優れたアルミナ質焼結体を得ることができる。しかも、
SiCやZrO2 などの第2相を含まないことから、A
2 3 が有する優れた高温での耐酸化性や急激な強度
劣化を招くこともない。
【0010】また、Al2 3 粉末に、Al2 3 との
共晶点が1600℃以下である金属酸化物をを添加混合
し、成形後、焼成するにあたって、少なくとも室温から
焼成温度までの温度領域を8℃/min以上の昇温速度
で昇温することにより、昇温過程で液相成分が急激に生
成されるために液相が不均一に生成され、その結果、部
分的な粒成長を引き起こし、等方性Al2 3 結晶粒
と、異方性Al2 3 結晶粒とが共存した焼結体を作製
することができる。
【0011】なお、焼成時の加熱をマイクロ波により行
えば、15℃/min以上もの高い昇温速度を実現する
することができ、さらに、マイクロ波加熱焼成と同時に
圧力を付与することにより、さらに高密度化を促進し、
高強度、高靱性のアルミナ質焼結体を作製することがで
きる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳述する。本発明
のアルミナ質焼結体は、組織上、微粒な等方性Al2
3 結晶粒と形状異方性Al2 3 結晶粒が共存すること
を特徴とする。
【0013】ここで、微粒な等方性結晶とは、長径が3
μm以下、アスペクト比(長径/短径)が1.5以下の
結晶粒を言う。この微粒な等方性結晶の存在は、焼結体
の強度向上に寄与することが知られている。本発明で
は、このような微粒かつ等方性の結晶は焼結体全体の1
5〜80体積%の割合で存在することが重要である。こ
のような微粒結晶の存在量が15体積%より少ないと、
強度向上の効果が小さくなり、逆に、その量が80体積
%より多くなると、粒界に沿ってクラックが容易に進展
し、材料の破壊靭性が低下する。この等方性結晶は、焼
結体全体の30〜70体積%の割合で存在することが望
ましい。
【0014】また、本発明のアルミナ質焼結体中には、
形状異方性Al2 3 結晶粒の存在が重要である。ここ
で言う形状異方性Al2 3 結晶粒は、長径が10μm
以上、アスペクト比が3以上の柱状あるいは板状Al2
3 結晶である。微粒のAl2 3 結晶組織の中上記柱
状あるいは板状Al2 3 結晶の存在は、クラックの進
展に対して、ディフラクション効果またはブリジング効
果により材料の破壊靭性を著しく向上する。しかし、こ
の柱状あるいは板状結晶が20体積%より少ないと靭性
向上効果が小さく、また85体積%を越えるような場合
では、異常成長結晶が多く現れ、焼結体の強度を著しく
低下させる。従って、上記形状異方性Al2 3 結晶粒
は焼結体全体の20〜85体積%、特に40〜80体積
%であることがより望ましい。
【0015】上記の本発明のアルミナ質焼結体は、Al
2 3 粉末に、Al2 3 との共晶点が1600℃以下
である金属酸化物を添加し、混合、成形後、かかる成形
体を室温から焼成温度までを8℃/min以上の昇温速
度で昇温した後、焼結することにより製造される。ここ
で、上記昇温速度は、室温から焼成温度までの平均昇温
速度であって、焼成温度と室温(25℃)との差を室温
から焼成温度に達するまでの時間で割った値で算出され
る。
【0016】かかる製造方法によれば、Al2 3 との
共晶点が1600℃以下の金属酸化物の添加が重要であ
る。上記金属酸化物の添加により、焼成中に液相を一定
量生成し、結晶の異方性成長を促進する。Al2 3
の共晶点が1600℃以下になるなら、単一種類の添加
剤あるいは複数の添加物どちらでも良い。その種類は特
に限定しないが、例えば、Na、Mg、Ca、Sr、B
a、Ti、Fe、Mn、W、Si、および周期律表第3
A族元素の酸化物から選ぶ1種類以上のものである。ま
た、その添加量は、添加種類および焼成条件に応じて調
整するが、組織制御と材料特性の向上の見地から、0.
1〜10mol%の範囲で添加することが望ましい。ま
た、Al2 3 原料中の一部の不純物は添加する金属酸
化物と作用し、低融点相を形成することも可能である。
【0017】上記金属酸化物は公知の原料、例えば酸化
物粉末、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩などの酸化物形成粉
末、金属粉末、当該金属を含む有機、無機物およびその
溶液を用いることができる。
【0018】上記金属酸化物をAl2 3 と混合し、公
知の成形技術、例えば、金型プレス,鋳込み成型,押出
成型,射出成型,冷間静水圧プレスなどにより任意の形
状に成形する。この成形体を公知の焼結法で焼成する
が、本発明によれば、焼成時において室温から焼成温度
までの昇温速度が8℃/min以上であることが重要で
ある。このような条件で昇温すると、焼結体中に不均一
的に液相が生成する。液相が多く生成する箇所では一部
の形状異方性結晶の成長が促進されるが、液相が少ない
領域では等方性結晶が微粒のままで焼成できるため、形
状異方性結晶と等方性結晶が混在した焼結体が生成され
る。
【0019】なお、焼成温度は、その組成にもよるが、
緻密化と組織形成の見地から、液相形成温度以上、17
00℃以下、さらに具体的には、1200℃〜1700
℃がよい。
【0020】また、本発明の製造方法によれば、成形体
を加熱手段としてマイクロ波を用いることが有効であ
る。通常の抵抗加熱方法では、焼結体の外部から内部へ
熱が伝わるため、サイズが大きな焼結体には、高速昇温
には困難である。これに対して、マイクロ波加熱では、
焼結体自体を発熱させることができるために、本発明の
ような高い昇温速度を実現しやすい。その上、組成によ
りマイクロ波を選択的に吸収し発熱する現象を利用し、
異方性結晶の発達を促進されると同時に、焼成時間が短
縮でき、微粒結晶の存在割合を増やすことができる。加
熱手段として用いるマイクロ波は出力1KW以上、特に
5KW以上がよい。
【0021】さらに、本発明の製造方法によれば、上記
マイクロ波加熱により昇温または焼成中に、焼結体に圧
力を加えることはが有効である。本発明の焼結体を製造
するには、異方性粒子を発達すると同時に、微粒な等方
性粒子の成長を抑制することが重要である。従って、焼
成温度の低温化及び焼成時間の短縮は組織の形成にとっ
て好ましい。しかし、焼成温度を下げたり、焼成時間を
短縮することで、焼結体が充分に緻密化できないことが
ある。そこで、昇温、焼成中に圧力を加えることによ
り、制御された組織と充分な密度を有する焼結体が得ら
れる。圧力付与としては、ガス圧力あるいは機械的圧力
を用いることが可能であり、例えば、50kg/cm2
以上、特に200kg/cm2 以上の機械的圧力を付与
したり、熱間静水圧焼成炉を用いてガス圧力を付与する
こともできるが、装置上の簡略性からは、機械的圧力を
加えることが有効である。
【0022】
【実施例】純度99.9%のアルミナ粉末、酸化マグネ
シウム粉末、酸化チタン粉末、酸化ランタンニウム粉末
および酸化珪素粉末を用い、表1に示すような組成にな
るように調合した。それぞれの組成系の共晶温度は、原
料中に不純物としての酸化珪素(約500ppm)の存
在から1300℃〜1400℃であると推定された。上
記混合粉末を1t/cm2 の圧力でプレス成形した後、
さらに3t/cm2の圧力で静水圧処理を加えた。上記
成形体を大気中に表1に示す加熱方式で室温から焼成温
度までを表1の昇温速度で昇温し、表1の条件で焼成し
た。なお、試料No.8、11については、ホットプレス
法に基づき100〜300kg/cm2 の圧力を付与し
た。
【0023】得られた焼結体の密度を測定し、鏡面に研
磨後、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で組織を観察
し、長径が3μm以下、アスペクト比が1.5以下の等
方性Al2 3 結晶粒と、長径が10μm以上、アスペ
クト比が3以上の異方性Al2 3 結晶粒との存在割合
をルーゼックスによる画像解析から求めた。
【0024】さらに、各焼結体をJIS−R1601に
て指定されている形状まで研磨し抗折試料を作製した。
この試料についてJIS−R1601に基づく室温で4
点曲げ抗折強度試験を実施した。また、ビッカース圧痕
法により破壊靭性(K1c)を測定した。密度、組織定量
化測定の結果および強度と破壊靭性測定の結果を表2に
示す。なお、試料No.5の焼結体の組織の模写図を図1
に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】表2の結果から、本発明に基づいて得られ
た等方性Al2 3 結晶粒と異方性Al2 3 結晶粒と
が所定の割合で混在したアルミナ質焼結体は、従来のア
ルミナ質焼結体および本発明以外のアルミナ質焼結体に
比べて、より優れた強度と破壊靭性を示し、室温強度5
00MPa以上、靱性4.0MPa・m1/2 以上の優れ
た特性が得られた。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、等方性Al2 3 結晶
粒と異方性Al2 3 結晶粒を共存させることにより、
強度と破壊靭性がともに優れたアルミナ材料を得ること
ができる。また、Al2 3 粉末とAl2 3 との共晶
点が1600℃以下である金属酸化物との混合物からな
る成形体を、焼成温度まで高速昇温して焼成することに
より、容易に本発明のアルミナ質焼結体を製造すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミナ質焼結体の組織を示す模写図
である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】長径が3μm以下、アスペクト比が1.5
    以下の等方性Al2 3 結晶粒を全量中15〜80体積
    %、長径が10μm以上、アルペクト比が3以上の異方
    性Al2 3 結晶粒を全量中20〜85体積%の割合で
    含有することを特徴とするアルミナ質焼結体。
  2. 【請求項2】Al2 3 粉末に、Al2 3 との共晶点
    が1600℃以下の金属酸化物を添加混合し、成形後、
    焼成するに際し、室温から焼成温度までを8℃/min
    以上の昇温速度で昇温することを特徴とするアルミナ質
    焼結体の製造方法。
  3. 【請求項3】前記昇温、焼結をマイクロ波による加熱に
    よって行う請求項2記載のアルミナ質焼結体の製造方
    法。
  4. 【請求項4】前記昇温、焼結を圧力を付与した状態で行
    う請求項3記載のアルミナ質焼結体の製造方法。
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