JP3559413B2 - アルミナ質焼結体およびその製造方法 - Google Patents

アルミナ質焼結体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度、高靭性に優れたアルミナ質焼結体に関するもので、特に耐摩耗性部品、エンジン部品等に使用される高温構造材料として有用なアルミナ質焼結体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、アルミナ質焼結体は、構造部材として、耐熱性、耐環境性、強度ともに優れることで注目されてきた。また、その強度をさらに向上し、特にその破壊靭性を改善するために、種々の複合化も試みられている。例えばアルミナに対して、SiC、ZrO、La含有系β−Alを分散した複合材料が知られており(特開昭61−122164号、特開昭63−139044号、特開昭63−134551号)、このような複合材料によれば、一般のアルミナ質焼結体よりも強度および靭性を向上することができることが報告されている。
【0003】
一方、アルミナ質焼結体中に、形状異方性を有する板状のアルミナ結晶を存在させることにより焼結体の破壊靭性が改善する試みが提案されている。このような組織形成は、アルミナに対して液相を生成することのできる酸化物系助剤を添加し焼成することによって行われている(例えば、J.Amer.Cer.Soc.,73(1990)2077−85 およびJ.Mat.Sci., 28(1993)5953−56 )。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のアルミナ質焼結体の強化手法として、SiCを分散させた場合、高温酸化雰囲気で使用される場合は化学的安定性に欠けるという問題があった。また、ZrOを分散した焼結体は、900℃以上の温度では強度特性が急激に低下するという問題があった。さらに、La系β−Alを分散させたアルミナ質焼結体は、強度と靭性がともに高く、高温での強度低下も小さいが、β−Al相はヤング率が低いために20体積%以上含まれると焼結体の硬度が低下したり、耐摩耗性が低くなるなどの問題があった。
【0005】
一方、板状アルミナを成長させて分散させた焼結体では、通常、液相生成助剤として、総量1モル%以下のSiO−MgO、CaO−SiO、NaO−SiOなどの添加が検討されているが、板状アルミナの成長過程で粒子が異常粒成長し、また、液相生成助剤が焼結体中の粒界に残存するために、室温と高温での強度が著しく低下する欠点があった。
【0006】
従って、本発明は、上記の課題を解決し、室温から1200℃の高温において優れた強度を有するとともに高靱性を有するアルミナ質焼結体とのその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、破壊靭性を改善するためにアスペクト比が高い板状アルミナ結晶を得ると同時に、微粒子分散により強度特性を改善する方法について検討を重ねた結果、アルミナに対して、TiO、MgOおよびSiOを所定比率で配合すると、これらの成分の相互作用によって焼結過程で液相生成促進効果が発揮され、アルミナ結晶が部分的板状に生成されるとともに、Tiおよび/或いはMgがアルミナ結晶中に固溶させ、当該固溶体を適当な熱処理によりTi或いはMgを含む酸化物がアルミナ結晶から析出し、アルミナの粒内および粒界に微細に分散した組織を形成することにより、高強度と高靭性のアルミナ質セラミックス焼結体が得られることを見いだし、本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明のアルミナ質焼結体は、Alを主体とし、TiをTiO換算で0.1〜5重量%、MgをMgO換算で0.05〜2重量%、SiをSiO換算で0.01〜2重量%の割合で含有する焼結体であって、該焼結体中の20体積%以上をアスペクト比5以上、平均長径20μm以下のAl結晶により構成するとともに、Tiおよび/またはMgを含む酸化物を平均粒径0.3μm以下の結晶粒子として分散させたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のアルミナ質焼結体の製造方法によれば、Alを主体とし、TiをTiO換算で0.1〜5重量%、MgをMgO換算で0.05〜2重量%、SiをSiO換算で0.01〜2重量%の割合で含有する成形体を、Tiおよび/またはMgのAl結晶中への固溶量が多くなる条件で熱処理してTiおよびMgが固溶したAl固溶体を作製した後、前記Tiおよび/またはMgのAl結晶中への固溶量が少なくなる条件で熱処理して、アスペクト比5以上、平均長径20μm以下のAl結晶を20体積%以上の割合で生成させるとともに、Tiおよび/またはMgを含む酸化物を平均粒径0.3μm以下の結晶粒子として析出分散させたことを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のアルミナ質焼結体は、アルミナを主成分とするものであり、さらに他の成分として、TiをTiO換算で0.1〜5重量%、特に0.5〜3重量%、MgをMgO換算で0.05〜2重量%、特に0.3〜2重量%、さらにSiをSiO換算で0.01〜2重量%、特に0.03〜1重量%の割合で含有する。
【0011】
Tiは、還元性雰囲気ではTiO換算で6重量%以下、また、酸化雰囲気では同じ原子比率のTiとMgとはTiOおよびMgO換算の総量で5重量%以下の割合でアルミナ結晶の格子中に固溶できる。このような固溶度が高いイオンはアルミナ結晶の 001 方向の成長を抑制する効果が大きく、結晶の高異方性成長を促進することができる。したがって、Tiの単独添加あるいはTiとMgの同時添加は板状アルミナ結晶の成長促進に効果がある。しかし、Ti単独添加では結晶粒径が粗大に成長する傾向にあるため、Mgと同時に添加することによって粒成長抑制効果が発揮される。
【0012】
一方、アルミナ結晶の板状成長は、適当な量と適当な粘度の液相の存在が不可欠である。この条件を満足させるために、上記のTi成分およびMg成分の配合に加え、適量のSiOの配合が有効である。また、液相を形成するのに必要な量よりもやや多めにSiOを配合すると、アルミナとの反応によって少量のムライトが生成し、これによりアルミナの粒成長を効果的に抑制できる。
【0013】
従って、上記Ti、Mg、Siのうちのいずれか1つの添加量が本発明の組成範囲より少ないと上記の効果が発揮できず、逆にいずれか1つの添加量が多いと、板状結晶の成長を抑制したり、粗大な粒界反応相が生成したりすることにより、焼結体の強度と靭性を低下させてしまう。
【0014】
また、本発明の焼結体は、上記組成成分を制御するのに伴い、アスペクト比5以上の板状アルミナ結晶を全量中20体積%以上、特に30〜90体積%以上含み、このような板状アルミナ結晶を前記所定量含むことにより、クラック進展の偏向により焼結体の靱性を高めることができる。また、この板状アルミナ結晶は、その平均長径が20μm以下、特に14μm以下であることも重要である。この板状アルミナ結晶の平均長径が20μmを越えると、この板状アルミナ結晶が破壊源となり、焼結体の強度を低下せしめるためである。特に、長径が30μmを越える結晶は存在しないか、存在しても2体積%以下であることが望ましい。なお、上記板状アルミナ結晶以外のアルミナ結晶粒子は、平均長径3μm以下の微細な粒子として存在することが高強度化を図る上で望ましい。
【0015】
さらに、本発明によれば、かかる焼結体中には、Ti或いはMgを含む酸化物の結晶粒子が平均粒径0.3μm以下、特に0.2μm以下の微細な結晶粒子としてアルミナ結晶粒内或いは粒界に分散して存在することが焼結体の強度改善にとって重要である。ここで、Ti或いはMgを含む酸化物とは、AlTiO、TiO、MgAlなどである。このような微細な結晶粒子の存在により、分散結晶粒子の周囲に応力場を発生させて焼結体の強度向上に寄与する。上記結晶粒子の平均粒径は特に0.1μm以下であることが、強化機構をより大きく発揮するために特に好ましい。
【0016】
本発明のアルミナ質焼結体を作製するには、先ず、アルミナ粉末に、Ti含有化合物、Mg含有化合物、およびSi含有化合物を添加する。化合物としては、酸化物粉末、金属粉末、有機塩類、無機塩類およびその溶液のいずれであってもよい。
【0017】
これらの添加量は、アルミナ粉末中に含まれる不純物も含めた総量で、TiをTiO換算で0.1〜5重量%、特に0.5〜3重量%、MgをMgO換算で0.05〜2重量%、特に0.3〜2重量%、SiをSiO換算で0.01〜2重量%、特に0.03〜1重量%の割合で含むように調製される。
【0018】
上記のようにして秤量混合された混合物を所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、射出成形、押出し成形、鋳込成形、シート状成形等により任意の形状に成形する。
【0019】
次に、この成形体を公知の焼結法、例えば、ホットプレス法、常圧焼成法、ガス加圧焼成法、マイクロ波加熱焼成法、さらにこれらの焼成後に熱間静水圧処理(HIP)処理、およびガラスシール後(HIP)処理する等、種々の焼結手法によって焼結して、所定のアスペクト比と粒径のアルミナ組織を有し、かつTi及び/或いはMgを固溶した対理論密度95%以上の緻密体を得る。
【0020】
本発明によれば、この焼結過程で、まず、TiおよびMgがアルミナ結晶中に固溶したアルミナ固溶体を作製する。この固溶体の作製は、上記成形体を水素などの還元雰囲気で焼成することによりTiを主にアルミナ中に固溶させることができるが、大気などの酸化性雰囲気で焼成すると、TiおよびMgを、ほぼ同原子比でアルミナ結晶中に固溶させることができる。また、この固溶体化処理時の焼成温度は、原料と添加物の量により適宜調整できるが、特に1350〜1650℃の範囲が好適である。
【0021】
次に、上記の固溶体化処理に引き続き、TiあるいはMgを含む酸化物の微細な結晶粒子の析出処理を行う。この析出処理は、前記Tiおよび/またはMgのAl結晶中への固溶量が少なくなる条件で加熱処理する。この析出処理においては、前記固溶体化処理時の温度より低い温度で加熱することも可能であるが、析出量を増やすためには、Tiを主に固溶した焼結体を大気などの酸化性雰囲気で処理するとAlTiOやTiOを析出させることができ、TiとMgを等量に固溶した焼結体を還元性雰囲気で処理するとMgAlを析出させることができる。また、析出処理時の温度は析出速度および析出粒子と母相であるアルミナ結晶の粒成長を抑制する見地から、1000℃〜1650℃の範囲が好適である。
【0022】
このような析出処理により、固溶していたTi或いはMgがアルミナ結晶から微細な酸化物の結晶粒子として析出させ、アルミナ結晶の粒内或いは粒界に分散させることができる。
【0023】
【実施例】
平均粒径0.5μmのアルミナ粉末、平均粒径0.7μmの酸化チタン(TiO)粉末、平均粒径が0.6μmの水酸化マグネシウム(Mg(OH))、さらにSiO源としてテトラエチルシリケートを用い、Ti、MgおよびSi量の各総量(不純物も含む)が表1に示す組成になるように秤量混合して混合粉末を得た。そして、この混合粉末を1t/cmの圧力で金型成形し、さらに3t/cmの圧力で静水圧処理を加えて成形体を作製した。そして、この成形体を1500℃、2時間で表1の雰囲気中で熱処理して固溶体を形成した後、表1に示した温度、時間、雰囲気中で析出処理を施した。
【0024】
得られた各焼結体に対して、X線回折測定を行い結晶相の同定を行い、Al以外の結晶相について表2に示した。また、焼結体断面を鏡面加工し、エッチング後の電子顕微鏡写真に対して画像解析を行い、観察されるアスペクト比5以上のアルミナ結晶の全体に対する面積比率を求めこれを体積比率とみなした。また、観察された板状アルミナ結晶の平均長径、およびアルミナ結晶粒内或いは粒界に析出した微細結晶粒子の粒径を電子顕微鏡写真より求め、その結果を表2に示す。
【0025】
また、機械的特性として、JISR1601に基づく室温および1200℃での4点曲げ強度を測定した。また、焼結体鏡面のビッカース硬度を測定し、圧痕法により破壊靭性を算出した。これらの特性測定の結果も表2に示した。
【0026】
【表1】
Figure 0003559413
【0027】
【表2】
Figure 0003559413
【0028】
表1、表2より、本発明に基づいて得られた焼結体は、室温曲げ強度は560MPa以上、1200℃強度430MPa以上、破壊靱性4.7MPa・m1/2 以上、ビッカース硬度17GPa以上の優れた特性を示した。
【0029】
これに対して、Ti量が少ない試料No.1および析出処理を施していない試料No.4、15では析出相が認められず、本発明の焼結体より機械的特性が低いものであった。
【0030】
また、析出処理温度が高い試料No.9とTi量が5重量%よりも多い試料No.11では、平均粒径が0.3μmを越えるチタン酸アルミニウムが多量に生成していることによって機械的特性が低い。
【0031】
また、Mg量が0.05重量%よりも少ない試料No.12では、粒成長がみられ板状アルミナ結晶の平均長径が20μmを越え、強度、靱性、硬度がともに低かった。Mg量が2重量%を越える試料No.17でも板状アルミナ結晶の割合が少なく靱性の低いものであった。
【0032】
さらに、SiO量が0.01重量%よりも少ない試料No.18、また、SiO量が2重量%を越える試料No.22では、いずれも板状アルミナ結晶の生成が少なく靱性が低かった。
【0033】
特に、本発明品は、TiのTiO換算量が0.5〜3重量%、MgのMgO換算量が0.3〜2重量%、SiのSiO換算量が0.03〜1重量%であり、板状Al結晶の体積分率が30〜90体積%、微細析出結晶粒子径が0.2μm以下の試料は、室温強度570MPa以上、1200℃強度440MPa以上、破壊靱性5.0MPa・m1/2 以上、ビッカース硬度17.5GPa以上が達成された。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明は、高アスペクト比の板状アルミナ結晶を生成させるとともに、アルミナ結晶の粒内あるいは粒界にTi或いはMgを含む微細な酸化物の結晶粒子を分散させることにより、室温から高温まで高い強度と靱性を有する焼結体を得ることができる。

Claims (2)

  1. Alを主体とし、TiをTiO換算で0.1〜5重量%、MgをMgO換算で0.05〜2重量%、SiをSiO換算で0.01〜2重量%の割合で含有する焼結体であって、該焼結体中の20体積%以上をアスペクト比5以上、平均長径20μm以下のAl結晶により構成するとともに、Tiおよび/またはMgを含む酸化物を平均粒径0.3μm以下の結晶粒子として分散させたことを特徴とするアルミナ質焼結体。
  2. Alを主体とし、TiをTiO換算で0.1〜5重量%、MgをMgO換算で0.05〜2重量%、SiをSiO換算で0.01〜2重量%の割合で含有する成形体を、Tiおよび/またはMgのAl結晶中への固溶量が多くなる条件で熱処理してTiおよびMgが固溶したAl固溶体を作製した後、前記Tiおよび/またはMgのAl結晶中への固溶量が少なくなる条件で熱処理して、アスペクト比5以上、平均長径20μm以下のAl結晶を20体積%以上の割合で生成させるとともに、Tiおよび/またはMgを含む酸化物を平均粒径0.3μm以下の結晶粒子として析出分散させたことを特徴とするアルミナ質焼結体の製造方法。
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