JP3318466B2 - 窒化珪素質焼結体およびその製造方法 - Google Patents

窒化珪素質焼結体およびその製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、室温から1000℃の
高温までの強度特性に優れ、且つ耐熱衝撃抵抗に優れた
自動車用部品やガスタ−ビンエンジン用部品等に使用さ
れる窒化珪素質焼結体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、窒化珪素質焼結体は、耐熱
性、耐熱衝撃性および耐酸化性に優れることからエンジ
ニアリングセラミックス、特にタ−ボロ−タ−等の熱機
関用として応用が進められている。
【0003】この窒化珪素質焼結体を作製するには、焼
結助剤としてY2 3 などの希土類酸化物やAl
2 3 、AlNなどのアルミニウム化合物、SiO2
どを添加して焼成して緻密化することが特公昭52−3
649号、特公昭58−5190号にて提案されてい
る。
【0004】また、このような焼結体に対しては、さら
にWやMoなどのケイ化物を分散させることにより特性
の改善を図ることも特公昭63−62474号等に提案
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする問題点】これらの焼結助剤に
おいては、希土類酸化物とAl2 3 を併用することに
より、低温で液相が生成されるために、焼結性が高めら
れ、比較的低温焼成で緻密化することが可能であり、室
温強度や1000℃の高温強度もある程度向上させるこ
とができる。
【0006】しかしながら、実用面からは、強度として
は低く、ケイ化物を分散した系でも強度が高信頼性を得
るには不十分であり、さらなる強度の向上が望まれてい
る。
【0007】また、窒化珪素質焼結体は、耐熱衝撃性に
対してはセラミックスの中でも最も優れた材料である
が、その耐熱衝撃性は800℃程度であり、この熱衝撃
性に対してもさらなる改善が求められている。
【0008】よって、本発明の目的は、室温から高温ま
で自動車用部品やガスタ−ビンエンジン用部品等で使用
されるに充分な機械的特性、特に室温から1000℃の
高温までの抗折強度に優れ、耐熱衝撃抵抗に優れた窒化
珪素質焼結体およびその製造方法を提供するにある。
【0009】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、焼結体
の機械的、熱的特性を高めるためには、焼結体の主結晶
相および窒化珪素相の粒界に存在する副相を制御するこ
とが重要であるという見地に基づき検討を重ねた結果、
β−窒化珪素結晶相、希土類元素、珪素、アルミニウ
ム、酸素および窒素からなる粒界相を含む焼結体中に、
微細なSi2 2 O結晶粒子とWケイ化物粒子を分散さ
せたところ、強度と耐熱衝撃性が向上することを見いだ
した。
【0010】即ち、本発明の窒化珪素質焼結体は、β−
窒化珪素結晶相と、希土類元素、珪素、アルミニウム、
酸素および窒素からなる粒界相を含む窒化珪素焼結体中
に、平均粒径3〜20μmのSi2 2 O結晶粒子と平
均粒径0.5〜10μm以下のWケイ化物粒子を分散さ
せたことを特徴とし、かかる焼結体を作製する方法とし
て、窒化珪素を主成分として、希土類酸化物粉末、酸化
アルミニウム粉末とともに、平均粒径3μm以下のSi
2 粉末及びW化合物粉末を添加混合して成形体を作製
した後、この成形体を10torr以下の減圧中800
℃〜1400℃の温度で加熱することによりSi2 2
O結晶及びWケイ化物粒子を析出させた後、非酸化性雰
囲気中で1600〜2000℃の温度で焼成し緻密化す
ることを特徴とするものである。
【0011】以下、本発明を詳述する。本発明の窒化珪
素質焼結体は、β−窒化珪素を主結晶相とするものであ
るが、この窒化珪素結晶粒子間には、焼結助剤に基づく
希土類元素、珪素、アルミニウム、酸素および窒素を含
む粒界相が存在する。
【0012】本発明によれば、上記の焼結体中に、平均
粒径が3〜20μm、好ましくは5〜15μmのSi2
2 O結晶粒子と、平均粒径が0.5〜10μm、好ま
しくは1〜5μmのWケイ化物粒子を分散させることが
重要である。なお、Wケイ化物としては、具体的にはW
Si2 、W5 Si3 などがある。
【0013】これらの分散粒子の粒径を上記に限定した
のは、Si2 2 O結晶粒子が20μmより大きい、あ
るいはWケイ化物粒子が10μmより大きいとそれ自身
が破壊源となり焼結体の強度を低下させてしまい、目的
の強度が得られないためである。また、Si2 2 O結
晶粒子が3μmより小さかったり、Wケイ化物粒子が
0.5μmより小さいとピニング効果が低下し、目的の
強度、耐熱衝撃性が得られない。
【0014】また、Si2 2 O結晶粒子と、Wケイ化
物粒子とを分散させることにより、お互いの相の核形成
速度が促進し、より多くの結晶粒子が生成する。しか
も、その後の粒成長は、お互いに抑制しあうため、単独
のときよりもより微細で、多量の結晶が生成する。ま
た、これらの結晶粒子は、窒化珪素結晶粒子の粒界に分
散される。
【0015】このSi2 2 O結晶粒子は1〜20重量
%、特に3〜10重量%の割合で存在させることが望ま
しい。また、Wケイ化物は、1〜10重量%、特に2〜
5重量%の割合で存在させることが望ましい。
【0016】また、本発明の焼結体は、焼結助剤成分と
して、Y、Dy、Er、Yb、Lu、Smなどの周期律
表第3a族元素を酸化物換算で1〜10重量%、特に3
〜7重量%、Alを酸化物換算で0.1〜10重量%、
特に2〜7重量%の割合で含有するのが、焼結性を高め
る上で望ましい。なお、周期律表第3a族元素の中で
は、Y、Er、Yb、Lu、Sm等が好適に挙げられ
る。これらの中でもYは安価に入手できる点で望まし
い。
【0017】次に、上記の焼結体を作製する方法として
は、まず、主原料粉末として窒化珪素粉末を用いる。窒
化珪素粉末としては、α−Si3 4 、β−Si3 4
のいずれでも用いることができ、それらの粒径は0.4
〜1.2μmが好ましい。
【0018】次に、焼結助剤成分として、周期律表第3
a族元素酸化物粉末、酸化アルミニウム粉末を用いる。
W化合物としてはWO3 、WC、WN、WSi2 等いず
れでもかまわないが、安価で微粉末が得られやすいこと
からWO3 が好ましい。これら焼結助剤成分のうち、周
期律表第3a族元素酸化物を1〜10重量%、特に3〜
7重量%、酸化アルミニウム粉末を0.1〜10重量
%、特に2〜7重量%で添加する。また、Si2 2
結晶粒子およびWケイ化物粒子を生成させるための原料
として、酸化珪素粉末およびW化合物粉末を添加する。
酸化珪素は1〜10重量%、特に2〜5重量%、W化合
物をWSi2 換算で1〜10重量%、特に2〜5重量%
の割合で添加する。
【0019】なお、酸化珪素粉末およびW化合物は、い
ずれも平均粒径3μm以下の粉末を用いることが必要で
ある。これは、これらの粉末の平均粒径が3μmより大
きいと、Si2 2 O結晶粒子が生成されず、また、微
細なWケイ化物粒子が形成されないためである。
【0020】このようにして得られた混合粉末を公知の
成形方法、例えば、プレス成形、鋳込み成形、押出し成
形、射出成形、冷間静水圧成形などにより所望の形状に
成形する。
【0021】次に、この成形体を焼成するが、本発明に
よれば、焼結体中にSi2 2 O結晶粒子およびWケイ
化物粒子を分散させるために、焼成に先立ち、成形体を
10torr以下の減圧中800℃〜1400℃の温度
域で加熱することが必要である。高温の減圧下で加熱す
ることにより、SiO2 及びW化合物と窒化珪素との反
応が促進され、かつ窒化や、反応の際に生成する一酸化
珪素や、窒素を成形体外部へ迅速に排出し、粒界相組成
の変化やボイドの生成を防ぐことができる。
【0022】この前処理において、10torr以上の
減圧下、あるいは800℃未満の温度ではいずれも生成
ガスの排出が十分でなく、Si2 2 O結晶粒子及び、
Wケイ化物粒子の生成と粒成長が不十分で目的の強度が
得られない。また1400℃を越えると、窒化珪素自身
が分解し始めるからである。また、上記のようにSiO
2 及びW化合物の添加量が10重量%を越えると、Si
2 及びW化合物と窒化珪素との反応が完全には行われ
ず粒子も巨大化する。また1重量%以下では、Si2
2 O結晶粒子及びWケイ化物粒子の生成量、粒径が不十
分でいずれも目的の強度が得られない。
【0023】そして、上記のようにして熱処理した成形
体を公知の焼成方法、例えば、ホットプレス方法、常圧
焼成、窒素ガス圧力焼成、さらには、これらの焼成後の
熱間静水圧焼成(HIP)およびガラスシ−ルによるH
IP焼成等で焼成し、緻密化を図る。この時の焼成温度
は、高温すぎると主相であるβ−窒化珪素結晶が粒成長
し強度が低下するため、1600〜2000℃、特に1
650〜1850℃の窒素ガス含有の非酸化性雰囲気で
あることが望ましい。
【0024】なお、本発明の焼結体においては、上記の
成分以外に、Ti、Ta、V、Moなどの周期律表第4
a、5a、6a族金属や、それらの炭化物、窒化物、珪
化物、またはSiCなどを分散粒子やウィスカ−として
本発明の焼結体に分散させても特性を劣化させるような
影響が少ないことから、これらを周知技術の基づき、適
量添加して複合材料として特性の改善を行うことも当然
可能である。
【0025】
【作用】本発明によれば、粒界相を希土類元素、珪素、
アルミニウム、酸素および窒素により構成し、さらに、
微細で耐熱性が高く、しかも耐酸化特性に優れるSi2
2 O結晶粒子及びWケイ化物粒子を分散含有させるこ
とにより高温における粒界相の軟化をこれらの粒子のピ
ニング効果により防ぐのである。それにより、窒化珪素
焼結体の耐熱衝撃性や室温から1000℃まで優れた強
度を付与することができる。
【0026】また、Si2 2 O結晶粒子とWケイ化物
粒子を同時に分散させることにより、お互いの粒子の核
形成速度が促進され、より多くの結晶粒子が生成する。
しかも、その後の粒成長はお互いに抑制しあうため、単
独で分散させた場合に比較してより微細で、多量の結晶
がそれぞれ生成させることができる。
【0027】また、Si2 2 O結晶粒子およびWケイ
化物粒子を生成するために、焼成に先立ち、成形体を1
0torr以下の減圧中800℃〜1400℃の温度域
で加熱することにより、SiO2 及びW化合物と窒化珪
素との反応が促進され、かつ窒化や、反応の際に生成す
る一酸化珪素や、窒素を成形体外部へ迅速に排出し、粒
界相組成の変化やボイドの生成を防ぐことができる。
【0028】
【実施例】
実施例1 窒化珪素粉末(BET比表面積9m2 /g、α率98
%、酸素量1.2重量%)と各種の周期律表第3a族元
素酸化物粉末と酸化アルミニウム粉末、平均粒径が0.
5μmの酸化珪素粉末、平均粒径が2μmのW化合物粉
末を用いて、表1に示す組成になるように調合後、1t
/cm2 で金型成形した。成形体を炭化珪素質の匣鉢に
入れて表1の条件で前処理および焼成をおこなった。
【0029】得られた焼結体をJIS−R1601にて
指定されている形状まで研磨し試料を作製した。この試
料についてJIS−R1601に基づく室温および10
00℃での4点曲げ抗折強度試験を実施した。さらに、
所定の温度からの水中投下後のクラックの有無により耐
熱衝撃性を評価した。また鏡面仕上げを行ったサンプル
の光学顕微鏡観察によりSi2 2 O結晶粒子及び、W
ケイ化物粒子の大きさを測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】表1および表2の結果によると、本発明に
基づきSi2 2 O結晶粒子およびWケイ化物粒子を析
出させた本発明品は、いずれも室温で900MPa以
上、1000℃においても900MPa以上の優れた機
械的強度を示し、耐熱衝撃性も1000℃以上と高いも
のであった。
【0033】これに対して、SiO2 及びW化合物の添
加量が1重量%よりも少ないか、または10重量%を越
える試料No.8、9、22、23、24は、本発明品に
比較して高温強度および耐熱衝撃性が低下した。また、
前処理における温度が800℃より低いか、もしくは1
400℃を越えるか、もしくは、15torrを越える
圧力下で処理した試料No.18、20はいずれも強度特
性および耐熱衝撃性が低下し、試料No.19はSiの溶
融が生じた。
【0034】実施例2 窒化珪素粉末(BET比表面積9m2 /g、α率98
%、酸素量1.2重量%)とY2 3 5重量%、Al2
3 5重量%、SiO2 2重量%、WO3 、WSi2
WCのW化合物を(WSi2 換算)3重量%の割合で添
加し、SiO2 およびW化合物の平均粒径が表1の種々
のものを用いて調合後、1t/cm2 で金型成形した。
成形体を炭化珪素質の匣鉢に入れて1torr下の減圧
下で1100℃で5時間熱処理した後、窒素9気圧下、
1800℃で5時間焼成した。
【0035】得られた焼結体をJIS−R1601にて
指定されている形状まで研磨し試料を作製した。この試
料についてJIS−R1601に基づく室温および10
00℃での4点曲げ抗折強度試験を実施し、さらに実施
例1と同様にして耐熱衝撃性を評価した。また鏡面仕上
げを行ったサンプルの光学顕微鏡観察によりSi2 2
O結晶粒子及び、Wケイ化物粒子の大きさを測定した。
【0036】
【表3】
【0037】表3の結果によると、SiO2 粉末または
W化合物粉末の平均粒径が3μmを越える試料No.2
6、27、28はいずれも焼結体中に生成されたSi2
2 O結晶粒子あるいはWケイ化物粒子の粒径が大きく
なり、その結果、室温強度、1000℃強度および耐熱
衝撃性のいずれも低下していた。これらの比較例に対し
て、その他の本発明に基づく試料は、いずれも抗折強度
および耐熱衝撃性に優れていた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/584 - 35/596

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】β−窒化珪素結晶相と、希土類元素、珪
    素、アルミニウム、酸素および窒素からなる粒界相とを
    含む焼結体中に、平均粒径3〜20μmのSi22
    結晶粒子と、平均粒径0.5〜10μmのWケイ化物粒
    子とを分散含有させたことを特徴とする窒化珪素質焼結
    体。
  2. 【請求項2】窒化珪素を主成分とし、焼結助剤として希
    土類酸化物粉末および酸化アルミニウム粉末を添加し、
    さらに平均粒径が3μm以下のSiO2 粉末を1〜10
    重量%、平均粒径が3μm以下のW化合物をWSi2
    算で1〜10重量%の割合で添加した混合物を成形した
    後、この成形体を10torr以下の減圧中にて800
    ℃〜1400℃の温度で加熱してSi2 2 O結晶粒子
    及びWケイ化物粒子を析出させた後、非酸化性雰囲気中
    で1600〜2000℃の温度で焼成したことを特徴と
    する窒化珪素質焼結体の製造方法。
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