JPH098340A - 光起電力素子及びその製造方法 - Google Patents

光起電力素子及びその製造方法

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JPH098340A
JPH098340A JP8144547A JP14454796A JPH098340A JP H098340 A JPH098340 A JP H098340A JP 8144547 A JP8144547 A JP 8144547A JP 14454796 A JP14454796 A JP 14454796A JP H098340 A JPH098340 A JP H098340A
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JP
Japan
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layer
gas
fluorine
photovoltaic element
power
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JP8144547A
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English (en)
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Toshimitsu Kariya
俊光 狩谷
Keishi Saito
恵志 斉藤
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Original Assignee
Canon Inc
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Publication date
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E10/00Energy generation through renewable energy sources
    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy

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  • Recrystallisation Techniques (AREA)
  • Light Receiving Elements (AREA)
  • Physical Deposition Of Substances That Are Components Of Semiconductor Devices (AREA)
  • Photovoltaic Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、ZnO/pin層界面での光励起
キャリアーの再結合の抑制を目的とする。 【構成】 本発明の光起電力素子は、フッ素を含有する
酸化亜鉛層の上に積層されたn型非晶質半導体層を有す
ることを特徴とする。また、本発明の光起電力素子の製
造方法は、真空容器内に基板を設置し、フッ素を含む酸
化亜鉛をターゲットとし、スパッタガスを導入し、RF
電力を印加し、プラズマを生起して、基板上にフッ素を
含有する酸化亜鉛層を堆積することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は非単結晶シリコン系
半導体材料からなるpin層を有する光起電力素子にお
いて、基板とpin層との間に酸化亜鉛薄膜層があるも
のに関する。該光起電力素子は太陽電池、フォトダイオ
ード、電子写真感光体、発光素子等に利用されるもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年より酸化亜鉛(ZnO)薄膜層を透
明導電膜として利用した光起電力素子の検討が精力的に
行われている。例えば、 "Optimization of Transparent and Reflecting Electr
odes for Amorphous Silicon Solar Cells." Gordon R G, Hu J, Musher J, Giunta C,US DOE Rep. p
p.44 1991 においてはフッ素をドープしたテクスチャー構造のZn
Oの改善を行っている。
【0003】"Research on amorphous silicon based t
hin film photovoltaic devices. TaskB:Research on stable high efficiency,large are
a amorphous silicon based submodules." Delahoy A E, Ellls F B Jr, Kampas F J, Tonon T, We
akllem H A,US DOE Rep. pp.48 1989(〜50Å/s) においては優れた高品位ドープZnOを用いた太陽電池
を報告している。
【0004】またマイクロ波プラズマCVD法(MWP
CVD法)を用いた太陽電池の検討も下記のごとくなさ
れている。 “マイクロ波プラズマCVD法によるa−Si太陽電
池” 東 和文、渡辺猛志、嶋田寿一、第50回応用物理学会
学術講演会予稿集 pp.566 等が挙げられる。この光起電力素子ではi層をMWPC
VD法で形成することによって良質、且つ堆積速度の速
いi層を得ている。
【0005】またドーピング層をMWPCVD法で形成
した例としては、例えば、 "High Efficiency Amorphous Solar Cell Employing EC
R-CVD Produced p-TypeMicrocrystalline SiC Film" Y. Hattori, D. Kruangam, T. Toyama, H. Okamoto and
Y. Hamakawa,Proceedings of the International PVSE
C-3 Tokyo Japan 1987 pp.171,
【0006】"HIGH-CONDUCTIVE WIDE BAND GAP P-TYPE
a-SiC:H PREPARED BY ECR CVD AND ITS APPLICATION TO
HIGH EFFICIECY a-Si BASIS SOLAR CELLS" Y. Hattori, D. Kruangam, K. Katou, Y. Nitta, H. Ok
amoto and Y. Hamakawa,Proceedings of 19th IEEE Pho
tovoltaic Specialists Conference 1987 pp.689 等が挙げられる。これらの光起電力素子ではp層にMW
PCVD法を用いることによって良質なp層を得てい
る。
【0007】またフッ素を含有する非単結晶シリコン系
半導体層やこれを用いた光起電力素子の検討も進められ
ている。例えば、 “アモルファス太陽電池の実用化研究 アモルファス太
陽電池高信頼性素子製造技術研究” サンシャイン計画研究開発の概況.太陽エネルギー1.
光利用技術 VOL. 1985pp.I.231-I.243 1986,
【0008】"The chemical and configurational basi
s of high efficiency amorphous photovoltaic cells" Ovshinsky S R,Proceedings of 17th IEEE Photovoltai
c Specialists Conference 1985 pp.1365,
【0009】"Development of the scientific and tec
hnical basis for integratedamorphoussiliconmodule
s. Reserch on a-Si:F:H(B)alloys and module testing
at IET-CIEMAT." Gutierrez M T, P Delgado L,Photovolt. Power Gene
r., pp.70-75 1988,
【0010】"The effect of fluorine on the photovo
ltaic properties of amorphous silicon." Konagai M, Nishihata K, Takahashi K, Komoro K,Proc
eedings of 15th IEEE PhotoVoltaic Specialists Conf
erence 1981 pp.906 等が挙げられる。しかし、これらの例においても光劣化
現象、熱的安定性については言及されているが、半導体
層の層剥離については述べられていない。
【0011】微結晶シリコンを含有する光起電力素子の
検討も精力的に行われているが、層剥離については言及
されていない。
【0012】USP4,400,409号特許明細書に
はロール・ツー・ロール(Roll toRoll)方式を採用し
た、半導体層を連続的に形成するプラズマCVD装置が
開示されている。本発明の光起電力素子はこのような装
置を用いて連続的に製造することが望ましい。この装置
によれば、複数の堆積室を設け、帯状、且つ可とう性の
基板を該基板が堆積室を順次通過する経路に沿って配置
し、前記堆積室にて所望の伝導型を有する半導体層を形
成しつつ、前記基板をその長手方向に連続的に搬送する
ことによって、pin接合を有する光起電力素子を連続
的に製造することができるとされている。なお、該明細
書においては、半導体層に各価電子制御剤を含有させる
ための原料ガスが他の堆積室に拡散し、他の半導体層中
に混入すること防止するために、ガスゲートが用いられ
ている。具体的には前記堆積室の間をスリット状の分離
通路によって相互に分離し、さらに各分離通路にAr、
2、He等の掃気用ガスを流入させ、各原料ガスの相
互拡散を防止している。
【0013】このロール・ツー・ロール方式の形成方法
は本発明のような光起電力素子を生産する際には有効で
ある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来の光起電力
素子では、ZnO/pin層界面、ZnO/基板界面近
傍での光励起キャリアーの再結合の抑制の向上が望まれ
ている。またこれらの光起電力素子では開放電圧、短絡
電流の向上が望まれている。
【0015】また長時間光を照射した場合、光電変換効
率が低下する、いわゆる光劣化が問題となっている。ま
た長時間振動を付与した場合、光電変換効率が低下す
る、いわゆる振動劣化が問題となっている。
【0016】さらに光起電力素子にバイアス電圧を印加
した時の光劣化、振動劣化が問題となっていた。
【0017】さらに基板にAg、Al、Inのうち少な
くとも一つの元素を含有する光起電力素子では、光起電
力素子にバイアス電圧を印加して長時間置いた場合、短
絡するといった問題があった。
【0018】また微結晶シリコンを含有する非単結晶シ
リコン系半導体層をZnO薄膜層上に形成した場合、微
結晶シリコンを含有しないものに比べて層剥離しやすい
という問題点があった。
【0019】またフッ素を含有する非単結晶シリコン系
半導体層は酸化亜鉛薄膜層上に形成するとフッ素を含ま
ないものに比べて層剥離しやすいという問題点があっ
た。
【0020】また前記ロール・ツー・ロール法で形成さ
れたZnO薄膜層はロール状にして巻かれた状態にして
長期保存または輸送等すると層剥離しやすいという問題
点があった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の問
題点を解決する光起電力素子を提供することを目的とし
ている。即ちZnO/pin層界面、近傍での光励起キ
ャリアーの再結合の抑制を目的とする。
【0022】また開放電圧、短絡電流を向上させ、光電
変換効率の向上を目的とする。また光劣化、振動劣化を
抑制することを目的とする。さらにバイアス電圧印加時
の光劣化、振動劣化を抑制することを目的とする。
【0023】さらに基板にAg、Al、Inのうち少な
くとも一つの元素を含有する光起電力素子では、光起電
力素子にバイアス電圧を印加して長時間置いたても、短
絡しないようにすることを目的とする。
【0024】また微結晶シリコンを含有する非単結晶シ
リコン系半導体層をZnO薄膜層上に形成した光起電力
素子においても層剥離しないようにすることを目的とし
ている。
【0025】またフッ素を含有する非単結晶シリコン系
半導体層を有する光起電力素子においても層剥離しない
ようにすることを目的とする。
【0026】ロール状に巻いた状態でも層剥離しにくい
光起電力素子を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明は従来の問題点を
解決し、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、
見いだされたものであって、本発明の光起電力素子は、
フッ素を含有する酸化亜鉛層の上に積層されたn型非晶
質半導体層を有することを特徴とする。
【0028】本発明では次の形態が望ましい。前記酸化
亜鉛層中のフッ素の含有量が層厚方向に変化し、前記n
型非晶質半導体層に向かって増大する。前記酸化亜鉛層
中のフッ素の含有量が0.1から10原子%である。前
記酸化亜鉛層がc軸配向性を有する結晶性であり、表面
に0.1から1.0μmの凹凸を有する。
【0029】前記酸化亜鉛層のc軸が前記酸化亜鉛層の
膜面に対してほぼ垂直である。前記酸化亜鉛層の結晶粒
界近傍にフッ素が多く含有されている。前記n型非晶質
半導体層が微結晶シリコンを含有する。前記n型非晶質
半導体層がフッ素を含有する。
【0030】本発明の光起電力素子の製造方法は、真空
容器内に基板を設置し、フッ素を含む酸化亜鉛をターゲ
ットとし、スパッタガスを導入し、RF電力を印加し、
プラズマを生起して、フッ素を含有する酸化亜鉛層を形
成することを特徴とする。
【0031】また、本発明の光起電力素子の製造方法
は、真空容器内に基板を設置し、少なくとも酸化亜鉛を
含む物質をターゲットとし、スパッタガス及びフッ素を
含有するガスを導入し、RF電力を印加し、プラズマを
生起して、フッ素を含有する酸化亜鉛層を形成すること
を特徴とする。
【0032】さらに、本発明の光起電力素子の製造方法
は、真空容器内に基板を設置し、フッ素を含む酸化亜鉛
をターゲットとし、スパッタガスを導入し、RF電力ま
たはDC電力を印加し、マイクロ波を前記スパッタガス
に照射し、プラズマを生起して、フッ素を含有する酸化
亜鉛層を形成することを特徴とする。
【0033】またさらに、本発明の光起電力素子の製造
方法は、真空容器内に基板を設置し、少なくとも酸化亜
鉛を含む物質をターゲットとし、スパッタガス及びフッ
素を含有するガスを導入し、RF電力またはDC電力を
印加し、マイクロ波を前記スパッタガスに照射し、プラ
ズマを生起して、フッ素を含有する酸化亜鉛層を形成す
ることを特徴とする。
【0034】本発明では次の形態が望ましい。前記RF
電力を時間的に変化させる。前記RF電力またはDC電
力を時間的に変化させる。前記フッ素を含有するガスの
導入量を時間的に変化させる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
を詳細に説明する。図1は本発明概念を説明するための
光起電力素子の模式的説明図である。図1において、本
発明の光起電力素子は基板101、表面に凹凸を有し、
且つc軸配向性を有するZnO薄膜層102、非単結晶
シリコン系半導体材料からなるpin層103、透明電
極104、集電電極105等から構成される。
【0036】図1の光起電力素子では通常、透明電極1
04側から光を照射して用いるが、基板101の裏面側
から光を照射して用いてもよい。その場合、基板101
は光を透過する材料からなり、また透明電極104の代
わりに金属材料からなる光反射層をpin層上に形成し
てもよい。
【0037】また本発明の光起電力素子のpin層10
3は、ZnO薄膜層102と接する側がn型であればよ
い。したがって、pin層103は、nip構造やni
pnip構造やnipnipnip構造等のnip構造
を積層したものであってもよい。
【0038】以下では、本発明の作用に関して説明す
る。本発明の光起電力素子ではZnO薄膜層102にフ
ッ素が含有され、その含有量がなめらかに変化し、pi
n層103に向かって徐々に多くなっているため、Zn
O薄膜層102とpin層103との界面での光励起キ
ャリアーの再結合を低減するものである。またZnO薄
膜層102とpin層103との界面で発生する内部応
力が低減されているため、光起電力素子の光劣化(長時
間の光照射による素子特性の低下)、振動劣化(長時間
の振動付与による素子特性の低下)を抑制するものであ
る。
【0039】すなわち光起電力素子の光劣化は光のエネ
ルギーによってウィークボンドが切れ、これが光励起キ
ャリアーの再結合中心となり、素子特性が低下すると考
えられる。また光起電力素子の振動劣化は振動エネルギ
ーによってウィークボンドが切れ、これが光励起キャリ
アーの再結合中心となり、素子特性が低下すると考えら
れる。このウィークボンドは応力が発生している領域に
局在していると考えられる。ZnO薄膜層とpin層と
の界面で発生する再結合中心の低減は特に重要である。
【0040】またZnO薄膜中で微量のフッ素は価電子
制御剤として働くため、膜の導電率を向上させることが
でき、しかもZnO薄膜の光の透過率を損なうことがな
い。すなわち透明電極104側から光を照射する場合に
はpin層で吸収しきれなかった光を効率よく透過する
ことができ、短絡電流を向上させることができる。また
基板101の裏側から光を照射する場合には効率よく光
をpin層に導くものである。
【0041】本発明においてはZnO薄膜層にc軸配向
性を有する結晶性のものを用いる。これにより図1のよ
うにZnO薄膜表面に凹凸が形成され、光を効率よくp
in層に導くことができ、光起電力素子の短絡光電流を
向上させることができる。すなわち光を透明電極側から
入射する場合には、透明電極表面、pin層表面で光が
屈折するため、pin層に入射してから結晶性ZnO層
表面に光が到達するまでの光路長が延び、より多くの光
をpin層で吸収することができる。さらに、基板が光
を反射する材料で構成されている場合には、pin層で
吸収しきれなかった光をもう一度pin層に基板側から
入射させ、吸収させることができる。その際、結晶性Z
nO薄膜層102の表面が凹凸をなすため、反射光をこ
こでも屈折させることができ、光路長を延ばすことがで
き、さらに有効に光を吸収させることができる。可視光
を吸収するにはこの凹凸は山の高さが0.1〜1.0μ
mであるとき、可視光を有効に吸収できる。
【0042】なかでもZnO薄膜層102の各結晶粒1
07がウルツ鉱型の結晶でc軸(6回回転軸)が、Zn
O薄膜層102の膜面に対してほぼ垂直であることが望
ましい。こうすることによってさらに有効にpin層に
光を導くことができる。ZnO薄膜層102のc軸をZ
nO薄膜層102の膜面に対してほぼ垂直にするにはZ
nO薄膜層をスパッタリング法で形成する際、DCバイ
アスまたは/及びRFバイアスを印加してプラズマ電位
を上げるか、あるいは基板に負のDCバイアスを印加す
る。また、ZnO薄膜層102のc軸をZnO薄膜層1
02の膜面に対してほぼ垂直にするには基板表面上に微
細な突起部を無数に形成すればよい。例えばステンレス
板の支持体上にAg薄膜層を支持体温度200〜600
℃で形成すればよい。またこの突起部はほぼ等間隔に形
成されていることが望ましい。
【0043】また結晶粒界106に多くのフッ素を含有
させることによって基板からの不純物の拡散を防止する
ことができる。すなわち、基板にpin層に悪影響を及
ぼす不純物(例えばある種の金属元素)を含有する材料
を用いる場合には、この不純物がpin層に拡散しない
ようにしなければならない。図1のような結晶性ZnO
薄膜層の場合には結晶粒界を通して不純物が拡散してし
まい、素子特性を低下させることがある。特に素子にバ
イアス電圧を長時間印加する場合、特に顕著に現れ、シ
ャント抵抗が極端に小さくなり、光電変換効率などの特
性を悪化させる。
【0044】これは結晶粒界には空隙やボイドが存在す
るため、不純物が拡散しやすいものと考えられる。そこ
で結晶粒界にフッ素を多く含有させることによって、こ
れらの空隙やボイドを減少させ、拡散を防止するもので
ある。また結晶粒界にフッ素を多く含有させることによ
って、未結合手を増加させ、拡散してきた不純物と反応
し、拡散を防止するものである。フッ素の含有量として
は結晶バルク内部よりも数倍多いことが望ましい。
【0045】本発明においてはZnO薄膜層と接するn
層がフッ素を含有しているものである。フッ素を含有す
るn層はフッ素を含有しないものに比べて導電率が高
く、光劣化が少なく、熱的に安定であるという有利な特
徴を有するが、膜が緻密となるため、層剥離しやすいと
問題があった。しかし本発明ではZnO薄膜層の表面に
多くのフッ素を含有させているため、応力を緩和し、層
間結合力を増し、層剥離しにくいものである。
【0046】本発明の光起電力素子ではp層またはn
層、及びi層はRFプラズマCVD法(RFPCVD
法)またはマイクロ波プラズマCVD法(MWPCVD
法)を用いて形成するのが望ましい。特にMWPCVD
法は堆積速度が速く、スループットを向上させることが
でき、さらには原料ガスの利用効率を向上させることが
できるため、生産性を向上させることができる。ドーピ
ング層をMWPCVD法で形成すると、光起電力素子と
して良好な特性を有するドーピング層が得られる。すな
わち、該ドーピング層は光の透過性がよく、電気伝導度
が高く、活性化エネルギーが小さいためドーピング層と
して優れている。さらにMWPCVD法で形成すると良
質な微結晶シリコン系半導体材料、またはバンドギャッ
プの広い良質な非晶質シリコン系半導体材料を比較的容
易に形成することができ、ドーピング層の形成方法とし
て有効である。またi層はp層、n層に比べて層厚が厚
く、特に有効である。
【0047】本発明のZnO薄膜層はスパッタリング法
で形成するのがよい。なかでも堆積速度の速いマグネト
ロンスパッタリング法や、以下に説明するマイクロ波ス
パッタリング法が適している。マイクロ波スパッタリン
グ法は「真空容器内部に不活性ガスまたは反応性ガスを
導入し、該ガスにマイクロ波を照射することによってイ
オンを発生させ、ターゲットに電磁エネルギーを印加す
ることによって、イオンを加速してターゲット表面上に
照射し、該ターゲットをスパッタリングして堆積膜を基
板表面上に高速に形成する方法」である。該電磁エネル
ギーはRF電力またはDC電力が適している。
【0048】本発明の光起電力素子は可とう性を有する
帯状の基板上にpin層とZnO薄膜層が形成されてい
るため、ロール状に巻くことができ、保管または輸送な
どにスペースをとることがなく、取扱いが容易となる。
またロール・ツー・ロール法を用いた製造方法にも適し
たもので、生産性を飛躍的に向上させることができる。
【0049】本発明の光起電力素子では前記のごとくZ
nO薄膜層中にフッ素が含有されているため、ロール状
に巻いた状態でも層剥離しにくいものである。
【0050】以上pin構造の光起電力素子について説
明したが、図4(a)に示したpin層を2つ積層した
構造や、図4(b)に示したpin層を3つ積層した構
造の光起電力素子についても適用できるものである。
【0051】図2は本発明の光起電力素子を作製するの
に適した堆積装置の模式的説明図である。該堆積装置2
00は、堆積室201、真空計202、バイアス電源2
03、基板204、ヒーター205、導波管206、コ
ンダクタンスバルブ207、バルブ208、リークバル
ブ209、バイアス電極210、ガス導入管211、ア
プリケーター212、誘電体窓213、スパッタ電源2
14、基板シャッター215、ターゲット216、ター
ゲットシャッター217、マイクロ波電源219、トロ
イダルコイル221、不図示の真空排気ポンプ、原料ガ
ス供給装置などから構成される。真空排気ポンプは図の
排気口220に接続され、原料ガス供給装置は原料ガス
ボンベ、バルブ、マスフローコントローラーから構成さ
れ、ガス導入管に接続される。前記誘電体窓はアルミナ
セラミクス、石英、窒化ホウ素などのマイクロ波をよく
透過する材料からなる。
【0052】本発明の光起電力素子の作製は以下のよう
に行われるものである。まず図2の堆積室201内に設
置されたヒーター205に基板204を密着させ、堆積
室内を1×10-5Torr以下に十分に排気する。この
排気にはターボ分子ポンプまたは油拡散ポンプまたはク
ライオポンプが適している。その後、Ar等の不活性ガ
スを堆積室内に導入し、ヒーターのスイッチを入れ、基
板を加熱する。基板温度が所定の温度で安定したら、コ
ンダクタンスバルブ207を調整して所定の圧力に設定
し、以下に詳細に説明するZnO薄膜層の形成方法を実
施する。次に、以下に詳細に説明するpin層の形成方
法を実施する。次に、真空中でターゲットをIn23
SnO2(5wt%)のものに交換し、堆積室内にO2
スを導入し、DCマグネトロンスパッタリング法を行
い、pin層上にITOを形成する。次に堆積室をリー
クし、ITO表面上に櫛形の集電電極を電子ビーム真空
蒸着法で形成し、光起電力素子の作製を終える。
【0053】pin層はMWPCVD法、RFPCVD
法で形成するのがよい。
【0054】(A)pin層をMWPCVD法で形成す
る場合 pin層をMWPCVD法で形成する場合、原料ガスを
堆積室に導入し、圧力をコンダクタンスバルブ207で
調整し、マイクロ波を導波管213、アプリケーター2
12を通して原料ガスに照射して、プラズマを生起す
る。pin層形成中の圧力は、非常に重要な因子であ
り、最適な堆積室内の圧力は0.5〜50mTorrが
好適である。また堆積室内に導入されるMW電力は、重
要な因子である。該MW電力は堆積室内に導入される原
料ガスの流量によって適宜決定されるものであるが、好
ましい範囲としては、100〜5000Wである。MW
電力の好ましい周波数の範囲としては0.5〜10GH
zが挙げられる。特に2.45GHz付近の周波数が適
している。所望の層厚を形成した後はMW電力の導入を
止め、堆積室内を十分排気し、H2、He、Ar等のガ
スで十分パージしてから次の層を形成する。
【0055】pin層を形成する際、MW電力とともに
RF電力をバイアス電極210に印加してもよい。この
場合、導入するMW電力は堆積室に導入する原料ガスを
100%分解するのに必要なMW電力よりも小さいこと
が望ましく、さらに同時に導入されるRF電力は、前記
MW電力よりも大きいことが望ましい。同時に導入され
るRF電力の好ましい範囲としては、200〜1000
0Wである。RF電力の好ましい周波数の範囲としては
1〜100MHzが挙げられる。特に13.56MHz
が最適である。RF電力供給用のバイアス電極の面積が
アースの面積よりも狭い場合、RF電力供給用の電源側
のセルフバイアス(DC成分)をアースした方が良いも
のである。またバイアス電極にDC電圧を印加しても良
い。DC電圧の好ましい範囲としては、30〜300V
程度である。またバイアス電極にRF電力とDC電圧を
同時に印加しても良い。
【0056】(B)pin層をRFPCVD法で堆積す
る場合、容量結合型のRFPCVD法が適している。
【0057】該RFPCVD法でpin層を形成する場
合、原料ガスを堆積室に導入し、バイアス電極にRF電
力を印加してプラズマを生起する。基板温度は100〜
500℃、圧力は0.1〜10Torr、RF電力は1
〜2000W、堆積速度は0.1〜2nm/secが最
適条件として挙げられる。所望の層厚を形成した後はR
F電力の導入を止め、堆積室内を十分排気し、H2、H
e、Ar等のガスで十分パージしてから次の層を形成す
る。
【0058】フッ素を含有し、含有量が変化しているZ
nO薄膜層を形成するには以下の方法が挙げられる。
【0059】(1)スパッタリング法で形成する場合 形成速度の速いRFマグネトロンスパッタリング法が適
している。その場合にはターゲットの回りにトロイダル
コイルを設置した堆積室内に、Arガス、O2ガスを導
入し、フッ素を含有させたZnO:Fからなるターゲッ
トをターゲット電極209に装着し、基板温度を200
〜600℃にし、RF(1〜100MHz)電力を印加
し、プラズマを生起して、基板上にZnO薄膜層を形成
する。
【0060】この際、堆積室内の圧力は堆積膜の形成速
度に密接に関係するパラメーターなので導入するガスの
種類、堆積装置の大きさなどにより適宜決定されるもの
であるが、本発明の場合、通常1〜30mTorrであ
る。また上記のガスはガスボンベからマスフローコント
ローラーを介して所定の量を堆積室に導入されるが、そ
の導入量は、堆積室の体積によって適宜決定されるもの
である。またArガスに加えてO2ガスを導入してもよ
い。
【0061】また、フッ素含有量を層厚方向に変化させ
るには、RF電力を時間的に変化させればよい。すなわ
ちZnOとフッ素ではスパッタ率のRF電力依存性が異
なるため、高いRF電力ではフッ素含有量は多く、低い
とフッ素含有量は少なくなる。
【0062】また、結晶粒界でフッ素含有量を多くする
には、各結晶粒が近隣の結晶粒と接触する直前にRF電
力を高くすればよい。
【0063】(2)スパッタリング法+RFPCVD法
で形成する場合 上記のRFマグネトロンスパッタリング法において新た
にF2ガス、HFガス等のフッ素を含有するガスを導入
し、その導入量を時間変化させればよい。この場合、フ
ッ素を含有しないZnOからなるターゲットを用いても
よい。
【0064】また、結晶粒界でフッ素含有量を多くする
には、各結晶粒が近隣の結晶粒と接触する直前にフッ素
を含有するガスを多く流せばよい。
【0065】(3)マイクロ波スパッタリング法で形成
する場合 堆積室内に、Arガスを導入し、上記のZnO:Fから
なるターゲットをターゲット電極209に装着し、基板
温度を200〜600℃にし、RF(1〜100MH
z)電力またはDC電力(100〜600V)を印加す
る。マイクロ波電源より発生したマイクロ波電力を伝送
させ、アプリケーター内で拡大し、誘電体窓213を通
して上記のガスに照射し、プラズマを生起して基板上に
ZnOの薄膜層を形成する。
【0066】この際、堆積室内の圧力は堆積膜の形成速
度に密接に関係するパラメーターなので導入するガスの
種類、堆積装置の大きさなどにより適宜決定されるもの
であるが、本発明の場合、通常0.1〜10mTorr
である。また上記のガスはガスボンベからマスフローコ
ントローラーを介して所定の量を堆積室に導入される
が、その導入量は、堆積室の体積によって適宜決定され
るものである。またArガスに加えてO2ガスを導入し
てもよい。
【0067】また、フッ素含有量を層厚方向に変化させ
るには、RF電力またはDC電力を時間的に変化させれ
ばよい。すなわちZnOとフッ素ではスパッタ率のRF
電力(DC電力)依存性が異なるため、高いRF電力
(DC電力)ではフッ素含有量は多く、低いとフッ素含
有量は少なくなる。
【0068】また、結晶粒界でフッ素含有量を多くする
には、各結晶粒が近隣の結晶粒と接触する直前にRF電
力(DC電力)を高くすればよい。
【0069】(4)マイクロ波スパッタリング法+MW
PCVD法で形成する場合 上記のマイクロ波スパッタリング法において新たにF2
ガス、HFガス等のフッ素を含有するガスを導入し、そ
の導入量を時間変化させればよい。この場合フッ素を含
有しないZnOからなるターゲットを用いてもよい。
【0070】また、結晶粒界でフッ素含有量を多くする
には、各結晶粒が近隣の結晶粒と接触する直前にフッ素
を含有するガスを多く流せばよい。
【0071】(5)ロール・ツー・ロール方式で形成す
る場合 上記のマイクロ波スパッタリング法または通常のスパッ
タリング法において基板温度を200〜600℃にし、
新たにF2ガス、HFガス等のフッ素を含有するガスを
導入し、その導入量を基板の移動方向に対して空間的に
変化させればよい。
【0072】また、結晶粒界でフッ素含有量を多くする
には、各結晶粒が近隣の結晶粒と接触する所にフッ素を
含有するガスを多く流せばよい。
【0073】また前記のpin層を形成する方法におい
て、原料ガスとしては以下のガスまたはバブリングでガ
ス化し得る化合物が適している。
【0074】シリコン原子を含有させるための原料ガス
しては、SiH4、SiD4、Si26、SiF4、Si2
6が適している。
【0075】フッ素原子を含有させるための原料ガスし
ては、F2、HF、SiF4、GeF 4、CF4、PF5
BF3が適している。
【0076】炭素原子を含有させるための原料ガスとし
ては、CH4、CD4、C22、CF 4が適している。
【0077】ゲルマニウム原子を含有させるための原料
ガスとしては、GeH4、GeD4、GeF4が適してい
る。
【0078】スズ原子を含有させるための原料ガスとし
ては、SnH4、SnD4、Sn(CH34が適してい
る。
【0079】p層に周期律表第III族原子を導入する
ための原料ガスとしては、B26、B(CH33、B
(C253、Al(CH33、BF3が適している。
【0080】n層に周期律表第V族原子を導入するため
の原料ガスとしては、PH3、AsH3、PF5が適して
いる。
【0081】n層に周期律表第VI族原子を導入するた
めの原料ガスとしては、H2S、H2Seが適している。
【0082】pin層中に酸素原子を含有させるための
原料ガスとしては、O2、CO2、CO、NOが適してい
る。
【0083】pin層中に窒素原子を含有させるための
原料ガスとしては、N2、NO、NO2、N2O、NH3
が適している。
【0084】またこれらの原料ガスを、H2、D2、H
e、Ar等のガスで適宜希釈して堆積室に導入しても良
い。
【0085】上記のフッ素を含有するZnO薄膜層を形
成する場合、ターゲットとしてはZnOまたはZnO:
Fを用いるが、酸素を含有しないZnまたはZn:Fで
もよい。酸素を含有しないターゲットを用いる場合はO
2ガスを堆積室内に導入する必要がある。ZnO薄膜層
中にフッ素を含有させるために導入されるガスとして
は、F2、HF、SiF4、Si26、CF4等が適して
いる。
【0086】基板 基板は導電性材料、絶縁性材料の単体で構成されたもの
でもよく、または導電性材料、絶縁性材料からなる支持
体上に薄膜層を形成したものであってもよい。
【0087】導電性材料としては、例えば、NiCr、
ステンレス、Al、Cr、Mo、Au、Nb、Ta、
V、Ti、Pt、Pb、Sn等の金属、またはこれらの
合金が挙げられる。これらの材料を支持体として使用す
るにはシート状、あるいは帯状のシートを円筒体に巻き
付けたロール状であることが望ましい。
【0088】絶縁性材料としては、ポリエステル、ポリ
エチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、
ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデ
ン、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂、またはガ
ラス、セラミックス、紙などが挙げられる。これらの材
料を支持体として使用するにはシート状、あるいは帯状
のシートを円筒体に巻き付けたロール状であることが望
ましい。
【0089】本発明の光起電力素子では支持体の一方の
表面に導電性薄膜層を形成し、該導電性薄膜層を形成し
た表面上にZnO薄膜層を形成することが望ましい。
【0090】例えば、ガラスであれば表面上に、NiC
r、Al、Ag、Cr、Mo、Ir、Nb、Ta、V、
Ti、Pt、Pb、In23、SnO2、ITO(In2
3−SnO2)等の材料またはその合金からなる導電性
薄膜層を形成し、ポリエステルフィルム等の合成樹脂シ
ートであれば表面上に、NiCr、Al、Ag、Pb、
Zn、Ni、Au、Cr、Mo、Ir、Nb、Ta、
V、Tl、Pt等の材料またはその合金からなる導電性
薄膜層を形成し、ステンレスであれば、NiCr、A
l、Ag、Cr、Mo、Ir、Nb、Ta、V、Ti、
Pt、Pb、In 23、SnO2、ITO(In23
SnO2)等の材料またはその合金からなる導電性薄膜
層を形成する。
【0091】形成方法としては真空蒸着法、スパッタリ
ング法、スクリーン印刷法等で形成する。基板表面形状
は平滑あるいは山の高さが平均0.1〜1.0μmの凹
凸であることが望ましい。基板の厚さは所望通りの光起
電力素子を形成し得るように適宜決定するが、光起電力
素子としての柔軟性が要求される場合には、支持体とし
ての機能が十分発揮される範囲で可能な限り薄くするこ
とができる。しかしながら、支持体の製造上および取扱
い上、機械的強度等の点から、通常は10μm以上とさ
れる。
【0092】本発明の光起電力素子における望ましい基
板形態としては、上記支持体上にAg、Al、Cu、A
lSi等の可視光から近赤外で反射率の高い金属からな
る導電性薄膜層を形成することである。この層は光反射
層として機能し、光反射層としてのこれらの金属の層厚
としては10nmから5000nmが適した層厚として
挙げられる。光反射層の表面を凹凸化(テクスチャー
化)するためには形成時の基板温度を200℃以上とす
れば良い。
【0093】ZnO薄膜層 上記の方法によって形成されたフッ素を含有するZnO
薄膜層の光の透過率は波長400nm〜900nmにか
けて透過率が85%以上のもので、また抵抗率は3×1
-4Ω・cm以下のものである。フッ素の含有量は基板
との界面で最小値(Cmin)をとり、pin層方向に徐
々に多くなっていく。また結晶粒界にてフッ素含有量の
最大値(Cmax)をとる。Cminとしては0.1%程度、
maxとしては10%程度が適している。フッ素含有量
の層厚方向の変化パターンとしては図3−aのように基
板側から直線的に増加するもの、図3−bのように基板
側から指数関数的に増加するもの、図3−cのようにp
in層との界面近傍で急激に増加するものが適してい
る。
【0094】p層、n層 この層は光起電力素子の特性を左右する重要な層で、非
晶質シリコン系半導体材料、または微結晶シリコン系半
導体材料、または多結晶シリコン系半導体材料から構成
される。非晶質(a−と略記する)シリコン系半導体材
料としてはa−Si、a−SiC、a−SiGe a−
SiGeC、a−SiO、a−SiN、a−SiON、
a−SiCON等が挙げられる。微結晶(μc−と略記
する)シリコン系半導体材料としては、μc−Si、μ
c−SiC、μc−SiGe、μc−SiO、μc−S
iGeC、μc−SiN、μc−SiON、μc−Si
OCN等が挙げられる。多結晶(poly−と略記す
る)シリコン系半導体材料としては、poly−Si、
poly−SiC、poly−SiGe等が挙げられ
る。
【0095】特に光入射側の層としては、光吸収の少な
い結晶性の半導体材料かバンドギャップの広い非晶質半
導体層が適している。具体的にはa−SiC、a−Si
O、a−SiN、a−SiON、a−SiCON、μc
−Si、μc−SiC、μc−SiO、μc−SiN、
μc−SiON、μc−SiOCN、poly−Si、
poly−SiCが適している。
【0096】伝導型をp型またはn型にするために導入
される価電子制御剤の導入量は、1000ppm〜10
%が好ましい範囲として挙げられる。
【0097】また含有される水素(H、D)及びフッ素
は未結合手を補償する働きをし、ドーピング効率を向上
させるものである。水素及びフッ素含有量は0.1〜3
0at%が最適量として挙げられる。特に結晶性の場
合、0.01〜10at%が最適量として挙げられる。
【0098】酸素、窒素原子の導入量は0.1ppm〜
20%、微量に含有させる場合には0.1ppm〜1%
が好適な範囲である。
【0099】電気特性としては活性化エネルギーが0.
2eV以下のものが好ましく、0.1eV以下のものが
最適である。また抵抗率としては100Ωcm以下が好
ましく、1Ωcm以下が最適である。さらに層厚は1〜
50nmが好ましく、3〜30nmが最適である。
【0100】特に前述した光吸収の少ない結晶性の半導
体材料かバンドギャップの広い非晶質半導体層を形成す
る場合は、H2、D2、He等のガスで2〜100倍に原
料ガスを希釈し、比較的高いMW電力またはRF電力を
導入するのが好ましい。
【0101】また本発明の光起電力素子ではZnO薄膜
層にフッ素が含有され、pin層に向かって徐々に含有
量が多くなっているため、特に高いMW電力を用いてZ
nO薄膜層と接するp層またはn層を形成しても、Zn
O薄膜層へのダメージ、すなわち界面準位が低減できる
ものである。
【0102】i層 本発明の光起電力素子において、i層は光励起キャリア
ーを発生、輸送する最も重要な層である。i層としては
僅かにp型、僅かにn型の層も使用でき、水素を含有す
る非晶質シリコン系半導体材料から構成され、例えばa
−Si、a−SiC、a−SiGe、a−SiGeC、
a−SiSn、a−SiSnC、a−SiSnGe、a
−SiSnGeC等が挙げられる。
【0103】i層に含有される水素(H、D)及びフッ
素は、i層の未結合手を補償する働きをし、i層でのキ
ァリアの移動度と寿命の積を向上させるものである。ま
た界面の界面準位を補償する働きをし、光起電力素子の
光起電力、光電流そして光応答性を向上させる効果のあ
るものである。i層の水素及びフッ素含有量は1〜30
at%が最適な含有量として挙げられる。
【0104】酸素、窒素原子の導入量は0.1ppm〜
1%が好適な範囲である。
【0105】i層の層厚は、光起電力素子の構造(例え
ばpin、pinpin、nip)及びi層のバンドギ
ャップに依存するが、0.05〜1.0μmが最適な層
厚として挙げられる。
【0106】本発明のi層は価電子帯側のテイルステイ
トが少ないものであって、テイルステイトの傾きは60
meV以下であり、且つ電子スピン共鳴(ESR)によ
る未結手の密度は1017/cm3以下である。
【0107】i層の形成にはMWPCVD法を用い、望
ましくは前述したようにMWPCVD法においてRF電
力を同時に導入するか、または前述したようにMWPC
VD法においてRF電力とDC電力を同時に導入する。
【0108】バンドギャップの広いa−SiCを形成す
る場合はH2、D2、He等ガスで2〜100倍に原料ガ
スを希釈し、比較的高いMW電力を導入するのが好まし
い。
【0109】透明電極 透明電極はインジウム酸化物(In23)、スズ酸化物
(SnO2)、ITO(In23−SnO2)が適した材
料であり、これらの材料にフッ素を含有させてもよい。
【0110】透明電極の形成にはスパッタリング法と真
空蒸着法が最適である。スパッタリング法で形成する場
合、金属ターゲット、あるいは酸化物ターゲット等のタ
ーゲットを適宜組み合わせて用いられる。
【0111】スパッタリング法で形成する場合、基板温
度は重要な因子であって、20℃〜600℃が好ましい
範囲として挙げられる。また透明電極をスパッタリング
法で形成する場合のスパッタリング用のガスとして、A
rガス等の不活性ガスが挙げられる。また前記不活性ガ
スに酸素ガス(O2)を必要に応じて添加することが好
ましいものである。特に金属をターゲットにしている場
合、酸素ガス(O2)は必須のものである。さらに前記
不活性ガス等によってターゲットをスパッタリングする
場合、圧力は効果的にスパッタリングを行うために、
0.1〜50mTorrが好ましい範囲として挙げられ
る。透明電極の堆積速度は、圧力や導入する電力に依存
し、最適な堆積速度としては、0.01〜10nm/s
ecの範囲である。
【0112】真空蒸着法において透明電極を形成するの
に適した蒸着源としては、金属スズ、金属インジウム、
インジウム−スズ合金が挙げられる。また透明電極を形
成するときの基板温度としては25℃〜600℃の範囲
が適した範囲である。さらに、酸素ガス(O2)を導入
し、圧力が5×10-5Torr〜9×10-4Torrの
範囲で形成することが必要である。この範囲で酸素を導
入することによって蒸着源から気化した前記金属が気相
中の酸素と反応して良好な透明電極が形成される。上記
条件による透明電極の好ましい堆積速度の範囲としては
0.01〜10nm/secである。堆積速度が0.0
1nm/sec未満であると生産性が低下し、10nm
/secより大きくなると粗な膜となり透過率、導伝率
や密着性が低下する。
【0113】透明電極の層厚は、反射防止膜の条件を満
たすような条件にするのが好ましいものである。具体的
な層厚としては50〜500nmが好ましい範囲として
挙げられる。
【0114】集電電極 光起電力層であるi層により多くの光を入射させ、発生
したキャリアーを効率よく電極に集めるためには、集電
電極の形(光の入射方向から見た形)、及び材質は重要
である。通常、集電電極の形は櫛型が使用され、その線
幅、線数などは、光起電力素子の光入射方向から見た
形、及び大きさ、集電電極の材質などによって決定され
る。線幅は通常、0.1mm〜5mm程度である。集電
電極の材質としてはFe、Cr、Ni、Au、Ti、P
d、Ag、Al、Cu、AlSi、C(グラファイト)
等が用いられ、通常抵抗率の小さい、Ag、Cu、A
l、Crなどの金属、あるいはこれらの合金が適してい
る。集電電極の層構造としては単一の層からなるもので
あってもよいし、さらには複数の層からなるものであっ
てもよい。これらの金属は、真空蒸着法、スパッタリン
グ法、メッキ法、印刷法等で形成するの望ましい。
【0115】真空蒸着法で形成する場合、集電電極形状
をなしたマスクを透明電極上に密着させ、真空中で所望
の金属蒸着源を電子ビームまたは抵抗加熱で蒸発させ、
透明電極上に所望の形状をした集電電極を形成する。
【0116】スパッタリング法で形成する場合、集電電
極形状をなしたマスクを透明電極上に密着させ、真空中
にArガスを導入し、所望の金属スパッタターゲットに
DC電力を印加し、グロー放電を発生させることによっ
て、金属をスパッタさせ、透明電極上に所望の形状をし
た集電電極を形成する。
【0117】印刷法で形成する場合には、Agペース
ト、Alペースト、あるいはカーボンペーストをスクリ
ーン印刷機で印刷する。
【0118】これらの金属の層厚としては10nm〜
0.5mmが適した層厚として挙げられる。
【0119】
【実施例】以下、非単結晶シリコン系半導体材料からな
る太陽電池およびフォトダイオードの作製によって本発
明の光起電力素子を詳細に説明するが、本発明はこれに
限定されるものではない。
【0120】(実施例1)図2に示す堆積装置を用いて
図1の構成をした太陽電池を作製した。
【0121】図2の堆積装置には原料ガス供給装置(不
図示)がガス導入管を通して接続されている。原料ガス
ボンベはいずれも超高純度に精製されたもので、SiH
4ガスボンベ、SiF4ガスボンベ、CH4ガスボンベ、
GeH4ガスボンベ、SnH4ガスボンベ、PH3/H
2(希釈度:100ppm)ガスボンベ、B26/H
2(希釈度:100ppm)ガスボンベ、H2ガスボン
ベ、Arガスボンベを接続した。ターゲットはAgとZ
nO:F(1%)があり、それぞれ真空中で切り替えて
スパッタリングを行うことができる。バイアス電源には
RF電源を用いた。
【0122】まず、基板の作製を行った。厚さ0.5m
m、50×50mm2のステンレス板をアセトンとイソ
プロパノールで超音波洗浄し、温風乾燥させた。スパッ
タ電源としてDC電源を接続し、DCマグネトロンスパ
ッタリング法を用いてAg光反射層を形成した。図2の
ヒーターにこのステンレス板を密着させ、油拡散ポンプ
が接続された排気口220から堆積室を真空排気した。
圧力が1×10-6TorrになったらArガスを50s
ccm導入し、圧力が7mTorrになるようにコンダ
クタンスバルブで調節した。基板温度が150℃になっ
たらトロイダルコイルに電流を流し、スパッタ電源から
400VのDC電力を印加し、Arプラズマを生起し
た。ターゲットシャッター、基板シャッターを開けてス
テンレス板表面上に層厚0.3μmのAgの光反射層を
形成したところで2つのシャッターを閉じ、プラズマを
消滅させ、基板の作製を終えた。
【0123】次に(1)の形成方法で層厚方向にフッ素
含有量が変化しているZnO薄膜層を形成した。ターゲ
ット電極をRF電源に切り替え、堆積室にArガスを5
0sccm導入し、基板温度を350℃、圧力を5mT
orr、スパッタ電源からRF電力300Wをターゲッ
ト電極に印加し、Arプラズマを生起した。ターゲット
シャッター、基板シャッターを開け、RF電力を時間に
対して単調増加させて、Ag光反射層表面上に層厚2.
0μmのフッ素を含有するZnO薄膜層を形成したとこ
ろで2つのシャッターを閉じ、プラズマを消滅させた。
【0124】次にZnO薄膜層上にn層、i層、p層を
順次形成した。a−Siからなるn層、a−Siからな
るi層はRFPCVD法で形成し、a−SiCからなる
p層はMWPCVD法で形成した。
【0125】a−Siからなるn層を形成するには、H
2ガスを300sccm導入し、堆積室内の圧力が1.
0Torr、基板温度が250℃で安定したところで、
SiH4ガス2sccm、PH3/H2ガス200scc
m、H2ガス100sccmを導入し、堆積室内の圧力
は1.0Torrとなるように調整した。RF電源の電
力を5Wに設定し、バイアス電極にRF電力を印加し、
プラズマを生起させ、基板シャッターを開け、ZnO薄
膜層上にn層の形成を開始し、層厚20nmのn層を形
成したところで基板シャッターを閉じ、RF電源を切っ
て、プラズマを消滅させ、n層の形成を終えた。堆積室
内へのSiH4ガス、PH3/H2の流入を止め、5分
間、堆積室内へH2ガスを流し続けたのち、H2の流入も
止め、堆積室内およびガス配管内を1×10-5Torr
まで真空排気した。
【0126】a−Siからなるi層を形成するには、H
2ガスを500sccm導入し、圧力が1.5Tor
r、基板温度が250℃になるようにした。基板温度が
安定したところで、SiH4ガスを流入させ、SiH4
ス流量が50sccm、H2ガス流量が500scc
m、堆積室内の圧力が1.5Torrとなるように調整
した。次に、RF電源の電力を50Wに設定し、バイア
ス電極に印加し、プラズマを生起させ、基板シャッター
を開け、n層上にi層の形成を開始し、層厚250nm
のi層を形成したところで基板シャッターを閉じ、RF
電源を切って、プラズマを消滅させ、i層の形成を終え
た。SiH4ガスの流入を止め、5分間、H2ガスを流し
続けたのち、H2ガスの流入も止め、堆積室内およびガ
ス配管内を1×10-5Torrまで真空排気した。
【0127】a−SiCからなるp層を形成するには、
2ガスを500sccm導入し、堆積室内の圧力が
0.02Torr、基板温度が200℃になるように設
定した。基板温度が安定したところでSiH4ガス、C
4ガス、B26/H2ガスを流入させた。この時、Si
4ガス流量が10sccm、CH4ガス流量が2scc
m、H2ガス流量が100sccm、B26/H2ガス流
量が500sccm、圧力が0.02Torrとなるよ
うに調整した。その後、MW電源の電力を500Wに設
定し、誘電体窓を通してMW電力を導入し、プラズマを
生起させ、基板シャッターを開け、i層上にp層の形成
を開始し、層厚10nmのp層を形成したところで基板
シャッターを閉じ、MW電源を切って、プラズマを消滅
させ、p層の形成を終えた。SiH4ガス、CH4ガス、
26/H2ガスの流入を止め、5分間、H2ガスを流し
続けたのち、H2ガスの流入も止め、堆積室内およびガ
ス配管内を1×10-5Torrまで真空排気し、堆積室
をリークした。
【0128】次に、p層上に、透明電極として、層厚7
0nmのITOを抵抗加熱真空蒸着法で真空蒸着した。
次に透明電極上に櫛型の穴が開いたマスクを乗せ、Cr
(40nm)/Ag(1000nm)/Cr(40n
m)からなる櫛形の集電電極を電子ビーム真空蒸着法で
真空蒸着した。
【0129】以上で太陽電池の作製を終えた。この太陽
電池を(SC実1)と呼ぶことにする。
【0130】(比較例1−1)ZnO薄膜層を形成する
際に、RF電力を時間的に一定とする以外は、実施例1
と同じ条件で太陽電池(SC比1−1)を作製した。
【0131】(比較例1−2)ZnO薄膜層を形成する
際に、ターゲットにフッ素を含有しないZnOを用いた
以外は、実施例1と同じ条件で太陽電池(SC比1−
2)を作製した。
【0132】(比較例l−3)ZnO薄膜層を形成する
際に、基板温度を80℃とする以外は、実施例1と同じ
条件で太陽電池(SC比1−3)を作製した。
【0133】太陽電池(SC実1)及び(SC比1−
1)、(SC比1−2)、(SC比1−3)をそれぞれ
6個づつ作製し、初期光電変換効率(光起電力/入射光
電力)、振動劣化、光劣化の測定を行った。
【0134】初期光電変換効率の測定は、作製した太陽
電池を、AM−1.5(100mW/cm2)光照射下
に設置して、V−I特性を測定することにより得られ
る。
【0135】振動劣化の測定は、予め初期光電変換効率
を測定しておいた太陽電池を湿度50%、温度25℃の
暗所に設置し、振動周波数60Hzで振幅0.1mmの
振動を500時間加えた後の、AM−1.5光照射下で
の光電変換効率の低下率(振動劣化試験後の光電変換効
率/初期光電変換効率)により行った。
【0136】光劣化の測定は、予め初期光電変換効率を
測定しておいた太陽電池を、湿度50%、温度25℃の
環境に設置し、AM−1.5光を500時間照射後の、
AM−1.5光照射下での光電変換効率の低下率(光劣
化試験後の光電変換効率/初期光電変換効率)により行
った。
【0137】測定の結果、(SC実1)に対して(SC
比1−1)、(SC比1−2)、(SC比1−3)の初
期光電変換効率、光劣化後の光電変換効率の低下率、及
び振動劣化後の光電変換効率の低下率は以下のようにな
った。これらの差は主に開放電圧の差及び短絡光電流の
差が起因していた。
【0138】 初期光電変換効率 振動劣化 光劣化 (SC実1) 1.00倍 1.00倍 1 00倍 (SC比1−1) 0.91倍 0.90倍 0.91倍 (SC比1−2) 0.92倍 0.90倍 0.89倍 (SC比1−3) 0.90倍 0.91倍 0.91倍
【0139】まず、太陽電池の表面を電子顕微鏡で観察
したところ、(SC実1)、(SC比1−1)、(SC
比1−2)では図1のように表面が凹凸(テクスチャ
ー)化しており、表面粗さ計を用いて表面の凹凸を調ベ
たところ、平均の山の高さが約0.12μmであること
が分かった。(SC比1−3)の表面の凹凸は0.05
μm以下であった。
【0140】次に4つの太陽電池に用いたZnO薄膜層
のサンプルを作製して、X線回折装置で結晶性を評価し
たところ、(SC実1)、(SC比1−1)、(SC比
1−2)ではc軸配向性を有しているが、(SC比1−
3)では結晶性を有していないことが分かった。
【0141】次にSIMSを用いて、作製した(SC実
1)の層厚方向に対するフッ素含有量の変化を求めたと
ころ、ZnO薄膜層内では図3−aのようになり、フッ
素含有量がスパッタ電源のRF電力に依存して変化して
いることが分かった。また(SC比1−1)では層厚方
向の変化はなく、(SC比1−2)ではフッ素は検出さ
れず、(SC比1−3)では(SC実1)と同様な変化
が得られた。
【0142】以上のように本発明の太陽電池(SC実
1)が、従来の太陽電池(SC比1−1)、(SC比1
−2)、(SC比1−3)よりもさらに優れた特性を有
することが分かった。
【0143】(実施例2)ZnO薄膜層102のc軸が
ZnO薄膜層102の膜面に対してほぼ垂直で、結晶粒
界でフッ素含有量が多くなっている図1の構成を有する
太陽電池を作製した。実施例1においてAg光反射層を
形成する際、基板温度を350℃にした。スパッタ電源
のRF電力は各々の結晶粒が接触する直前に急激に高く
する以外は実施例1と同様にして太陽電池(SC実2)
を作製した。そこで実施例1と同様な測定を行ったとこ
ろ、振動劣化、光劣化は同程度であったが、(SC実
2)の太陽電池は(SC実1)よりもさらに優れた初期
光電変換効率を有することが分かった。これは表面凹凸
形状が適正化され、短絡電流が向上したためである。
【0144】(比較例2−1)ZnO薄膜層を形成する
際、フッ素を含有しないターゲットを用いた以外は実施
例2と同様な太陽電池を作製した(SC比2−1)。
【0145】(比較例2−2)ZnO薄膜層を形成する
際、スパッタ電源のRF電力を一定にした以外は実施例
2と同様な太陽電池を作製した(SC比2−2)。
【0146】(比較例2−3)ZnO薄膜層を形成する
際に、基板温度を80℃とする以外は、実施例2と同様
な太陽電池(SC比2−3)を作製した(SC比2−
1)。
【0147】まず、太陽電池の表面を電子顕微鏡で観察
したところ、(SC実2)、(SC比2−1)、(SC
比2−2)では図1のように表面が凹凸(テクスチャ
ー)化しており、表面粗さ計を用いて表面の凹凸を調べ
たところ、平均の山の高さが約0.21μmであること
が分かった。
【0148】(SC比2−3)の凹凸は山の高さが0.
05μm以下であった。またX線回折装置を用いてその
結晶性を調べたところ、(SC実2)、(SC比2−
1)、(SC比2−2)ではc軸配向性があり、c軸が
基板に対して垂直になっていることが分かった。(SC
比2−3)は配向性がなく、結晶性がないことが分かっ
た。
【0149】また順バイアスを印加して振動劣化、及び
光劣化の測定を行った。予め初期光電変換効率を測定し
ておいた太陽電池(SC実2)、(SC比2−1)、
(SC比2−2)、(SC比2−3)を湿度50%、温
度25℃で、順方向バイアス電圧として0.8Vを印加
し、振動劣化と光劣化の測定を行った。測定の結果、
(SC比2−1)、(SC比2−2)、(SC比2−
3)よりも(SC実2)のほうが優れた特性を有するこ
とが分かった。
【0150】(実施例3)図1の層構成を有するフォト
ダイオード(PD実3)を作製した。まず、基板の作製
を行った。厚さ0.5mm、20×20mm2のガラス
基板をアセトンとイソプロパノールで超音波洗浄し、温
風乾燥させた。真空蒸着法を用いて室温でガラス基板表
面上に層厚0.1μmのAlの光反射層を形成し、基板
の作製を終えた。
【0151】実施例1と同様な方法で基板上にZnO薄
膜層、n層(a−Si、RFPCVD法)、i層(a−
Si、RFPCVD法)、p層(a−SiC、MWPC
VD法)を順次形成した。ZnO薄膜層を形成する際、
(2)の方法で行い、フッ素を含有しないターゲットを
用い、フッ素を含有するガスとしてFを導入し、流量を
時間変化させて、図3−bのようにフッ素含有量を変化
させた。次に、p層上に実施例1と同様な透明電極と集
電電極を形成した。
【0152】(比較例3−1)ZnO薄膜層を形成する
際、F2ガスの流量を時間変化させない以外は、実施例
3と同じ条件でフォトダイオード(PD比3−1)を作
製した。
【0153】(比較例3−2)ZnO薄膜層を形成する
際、F2ガスを導入しない以外は、実施例3と同じ条件
でフォトダイオード(PD比3−2)を作製した。
【0154】(比較例3−3)ZnO薄膜層を形成する
際、基板温度を80℃にする以外は、実施例3と同じ条
件でフォトダイオード(PD比3−3)を作製した。
【0155】作製したフォトダイオドのオンオフ比(A
M−1.5光を照射したときの光電流/暗電流、測定周
波数10kHz)を測定した。これを初期オンオフ比と
呼ぶことにする。次に実施例1と同様な光劣化と振動劣
化の測定をオンオフ比について行った。その結果、本発
明のフォトダイオード(PD実3)は従来のフォトダイ
オード(PD比3−1)、(PD比3−2)、(PD比
3−3)よりもさらに優れた特性を有することが分かっ
た。
【0156】(実施例5)n層にフッ素を含有する太陽
電池(SC実5)を作製した。n層を形成する際、Si
4を1sccm新たに導入する以外は実施例2と同じ
条件で作製した。
【0157】〈比較例5〉ZnO薄膜層を形成する際、
フッ素を含有しないZnOターゲットを用いる以外は実
施例5と同じ条件で太陽電池(SC比5)を作製した。
【0158】実施例1と同様な測定を行ったところ、太
陽電池(SC実5)は(SC比5)と同等な特性を有し
ていることが分かった。しかし(SC実5)では層剥離
は観察されなかったが、(SC比5)ではわずかに層剥
離が観察された。
【0159】(実施例6)ガラス基板上に実施例2と同
様なZnO薄膜層を形成し、i層を形成する際、SnH
4ガスを10sccm流す以外は実施例1と同様なp
層、n層を形成し、pin層上にAlからなる層厚0.
5μmの光反射層を有する太陽電池(SC実6)を作製
した。光反射層は電子ビーム真空蒸着法で形成した。
【0160】(比較例6)ZnO薄膜層を形成する際、
フッ素を含有しないターゲットを用いて形成した以外は
実施例6と同様な太陽電池(SC比6)を作製した。
【0161】ガラス基板の裏面から光を照射して実施例
1と同様な測定を行ったところ、(SC実6)は(SC
比6)よりも優れた特性を有することが分かった。
【0162】(実施例7)図5のロール・ツー・ロール
法を用いた堆積装置を使用して、図4−aのpinpi
n型の太陽電池を作製した。基板(支持体)は長さ30
0m、幅30cm、厚さ0.1mmの帯状ステンレスシ
ートを用いた。
【0163】図5はロール・ツー・ロール法を用いた光
起電力素子の連続形成装置の概略図である。この装置は
基板送り出し室510と、複数の堆積室501〜509
と、基板巻き取り室511を順次配置し、それらの間を
分離通路512で接続してなり、各堆積室には排気口が
あり、内部を真空にすることができる。帯状の基板51
3はこれらの堆積室、分離通路を通って、基板送り出し
室から基板巻き取り室に巻き取られていく。同時に各堆
積室、分離通路のガス入り口からガスを導入し、それぞ
れの排気口からガスを排気し、それぞれの層を形成する
ことができるようになっている。
【0164】堆積室501ではAlSi(9:1)から
なる光反射層を、堆積室502ではフッ素を含有するZ
nO薄膜層を、堆積室503〜508ではpinpin
層を、堆積室509ではITOからなる透明電極を形成
する。各堆積室には基板を裏から加熱するハロゲンラン
プヒーター518が内部に設置され、各堆積室で所定の
温度に加熱される。
【0165】堆積室501ではDCマグネトロンスパッ
タリング法を行い、ガスの入り口526からArガスを
導入し、ターゲットにはAlSi(9:1)を用いる。
堆積室502ではRFマグネトロンスパッタリング法を
行い、Arガスを導入し、ターゲットにはフッ素を含有
しないZnOを用いる。堆積室509ではRFマグネト
ロンスパッタリング法を行い、O2ガスとArガスを導
入し、ターゲットにはITO(In23−SnO2(5
wt%))を用いた。
【0166】550は堆積室503〜508を上から見
た図で、各堆積室には原料ガスの入り口514と排気口
515があり、RF電極516あるいはマイクロ波アプ
リケーター517が取り付けられ、原料ガスの入り口5
14には原料ガス供給装置(不図示)が接続されてい
る。各堆積室の排気口には油拡散ポンプ、メカニカルブ
ースターポンプなどの真空排気ポンプ(不図示)が接続
され、堆積室に接続された分離通路512には掃気ガス
を流入させる入り口519があり、図のような掃気ガス
を導入する。
【0167】堆積室503、508では通常のMWPC
VD法を、堆積室504、507ではバイアスを印加す
るMWPCVD法を、堆積室505、506では通常の
RFPCVD法を実施することができる。i層の堆積室
である堆積室503と507にはバイアス電極531が
配置されており、電源としてRF電源(不図示)が接続
されている。
【0168】540は堆積室502を横から見た図で、
層厚方向に対してフッ素含有量を徐々に変化させるため
に、堆積室502と堆積室503の間の分離通路に導入
する掃気ガスにはHFガスを用いた。こうすることによ
ってHFガスの一部は堆積室502に流入し、しかもp
in層との界面近傍543では多くのフッ素が含有さ
れ、Ag光反射層との界面541に向かって徐々に減少
するような含有量の変化が得られる。
【0169】基板送り出し室には送り出しロール520
と基板に適度の張力を与え、常に水平に保っためのガイ
ドローラー521があり、基板巻き取り室には巻き取り
ロール522とガイドローラー523がある。
【0170】まず、前記のステンレスシートを送り出し
ロールに巻き付け(平均曲率半径30cm)、基板送り
出し室にセットし、各堆積室内を通過させた後に基板の
端を基板巻き取りロールに巻き付ける。装置全体を真空
排気ポンプで真空排気し、各堆積室のランプヒーターを
点灯させ、各堆積室内の基板温度が所定の温度になるよ
うに設定する。装置全体の圧力が1mTorr以下にな
ったら掃気ガスの入り口519から図5に示すような掃
気ガスを流入させ、基板を図の矢印の方向に移動させな
がら、巻き取りロールで巻き取っていく。各堆積室にそ
れぞれの原料ガスを流入させる。この際、各堆積室に流
入させる原料ガスが他の堆積室に拡散しないように各分
離通路に流入させるガスの流量、あるいは各堆積室の圧
力を調整する。次にRF電力、またはMW電力を導入し
てプラズマを生起し、それぞれの層を形成していく。
【0171】基板上に堆積室501でAlSi光反射層
(基板温度350℃、層厚 300nm)を形成し、堆
積室502でZnO薄膜層(基板温度350℃、層厚6
00nm)、堆積室503でn1層(a−Si、層厚2
0nm)を形成し、堆積室504でi1層(a−SiG
e、層厚180nm)、堆積室505でp1層(μc−
Si、層厚10nm)、堆積室506でn2層(μc−
Si、層厚20nm)、堆積室507でi2層(a−S
i、層厚250nm)、堆積室508でp2層(μc−
SiC、層厚10nm)、堆積室509で透明電極(I
TO、層厚75nm)を順次形成した。
【0172】基板の巻き取り終わったところで、すべて
のMW電源、RF電源、スパッタ電源を切り、プラズマ
を消滅させ、原料ガス、掃気ガスの流入を止めた。装置
全体をリークし、巻き取りロールを取りだした。
【0173】次にスクリーン印刷法で層厚5μm、線幅
0.5mmのカーボンペーストを印刷し、その上に層厚
10μm、線幅0.5mmの銀ペーストを印刷し、集電
電極を形成し、ロール状の太陽電池を250mm×10
0mmの大きさに切断した。
【0174】以上でロール・ツー・ロール法を用いたp
inpin型太陽電池(SC実7)の作製を終えた。
【0175】(比較例7)堆積室502と503の間の
分離通路に流す掃気ガスをArガスに変更し、ZnO薄
膜層にフッ素を含有しないようにする以外は、実施例7
と同じ条件で太陽電池(SC比7)を作製した。
【0176】実施例1、実施例2と同様な測定を行った
ところ、本発明の太陽電池(SC実7)は、従来の太陽
電池(SC比7)よりもさらに優れた特性を有すること
が分かった。また実施例1と同様にX線回折装置で結晶
性を評価したところ、(SC実7)、(SC比7)とも
にc軸配向性を有することが分かった。また(SC実
7)ではZnO薄膜層内でのフッ素含有量が図3−bの
ように変化していることがSIMSで分かった。(SC
比7)ではフッ素は含有していなかった。またロール状
に巻いた(SC実7}と(SC比7)を3カ月間暗所で
保存していたところ、(SC実7)では層剥離はみられ
なかったが、(SC比7)ではわずかに層剥離がみられ
た。
【0177】以上のように、本発明の光起電力素子の効
果は、素子構成、素子材料によらずに発揮されることが
実証された。
【0178】
【発明の効果】本発明の光起電力素子は、ZnO/pi
n層界面での光励起キャリアーの再結合の抑制し、開放
電圧、短絡電流の向上させ、光電変換効率を向上させる
ことができる。
【0179】また光起電力素子の光劣化、振動劣化を抑
制することができる。さらに光起電力素子にバイアス電
圧印加した場合の光劣化、振動劣化、短絡を抑制するこ
とができる。
【0180】また微結晶シリコンを含有する非単結晶シ
リコン系半導体層をZnO薄膜層上に形成した光起電力
素子においても層剥離しないものである。またフッ素を
含有する非単結晶シリコン系半導体層をZnO薄膜層上
に形成した光起電力素子においても層剥離しないもので
ある。ロール状に巻いた状態でも層剥離しないものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る光起電力素子の層構成図
である。
【図2】本発明の実施例に係る光起電力素子の堆積装置
の概念図である。
【図3】ZnO薄膜層中のフッ素含有量の層厚方向変化
を示す図である。
【図4】本発明の光起電力素子の層構成図(他の例)で
ある。
【図5】ロール・ツー・ロール法の堆積装置の概念図で
ある。
【符号の説明】
101 基板、 102 ZnO薄膜層、 103 pin層、 104 透明電極、 105 集電電極、 106 結晶粒界、 107 結晶粒、 200 堆積装置、 201 堆積室、 202 真空計、 203 バイアス電源、 204 基板、 205 ヒーター、 206 導波管、 207 コンダクタンスバルブ、 208 バルブ、 209 リークバルブ、 210 バイアス電極、 211 ガス導入管、 212 アプリケーター、 213 誘電体窓、 214 スパッタ電源、 215 基板シャッター、 216 ターゲット、 217 ターゲットシャッター、 219 マイクロ波電源、 220 排気口、 221 トロイダルコイル、 510 基板送り出し室、 501〜509 堆積室、 511 基板巻き取り室、 512 分離通路、 513 帯状の基板、 514 原料ガスの入り口、 515 排気口、 516 RF電極、 517 マイクロ波アプリケーター、 518 ハロゲンランプヒーター、 519 掃気ガスを流入させる入り口、 520 基板送り出し室には送り出しロール、 521 ガイドローラー、 522 巻き取りロール、 523 ガイドローラー、 526 ガスの入り口、 527 ターゲット電極、 528 ターゲット、 531 バイアス電極、 540 堆積室502を横から見た図、 543 界面近傍、 541 Ag光反射層との界面、 550 堆積室503〜508を上から見た図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 31/10 H01L 31/10 A

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フッ素を含有する酸化亜鉛層の上に積層
    されたn型非晶質半導体層を有することを特徴とする光
    起電力素子。
  2. 【請求項2】 前記酸化亜鉛層中のフッ素の含有量が層
    厚方向に変化し、前記n型非晶質半導体層に向かって増
    大することを特徴とする請求項1記載の光起電力素子。
  3. 【請求項3】 前記酸化亜鉛層中のフッ素の含有量が
    0.1から10原子%であることを特徴とする請求項1
    記載の光起電力素子。
  4. 【請求項4】 前記酸化亜鉛層がc軸配向性を有する結
    晶性であり、表面に0.1から1.0μmの凹凸を有す
    ることを特徴とする請求項1記載の光起電力素子。
  5. 【請求項5】 前記酸化亜鉛層のc軸が前記酸化亜鉛層
    の膜面に対してほぼ垂直であることを特徴とする請求項
    4記載の光起電力素子。
  6. 【請求項6】 前記酸化亜鉛層の結晶粒界近傍にフッ素
    が多く含有されていることを特徴とする請求項1記載の
    光起電力素子。
  7. 【請求項7】 前記n型非晶質半導体層が微結晶シリコ
    ンを含有することを特徴とする請求項1記載の光起電力
    素子。
  8. 【請求項8】 前記n型非晶質半導体層がフッ素を含有
    することを特徴とする請求項1記載の光起電力素子。
  9. 【請求項9】 真空容器内に基板を設置し、フッ素を含
    む酸化亜鉛をターゲットとし、スパッタガスを導入し、
    RF電力を印加し、プラズマを生起して、フッ素を含有
    する酸化亜鉛層を形成することを特徴とする光起電力素
    子の製造方法。
  10. 【請求項10】 真空容器内に基板を設置し、少なくと
    も酸化亜鉛を含む物質をターゲットとし、スパッタガス
    及びフッ素を含有するガスを導入し、RF電力を印加
    し、プラズマを生起して、フッ素を含有する酸化亜鉛層
    を形成することを特徴とする光起電力素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記RF電力を時間的に変化させるこ
    とを特徴とする請求項9または10記載の光起電力素子
    の製造方法。
  12. 【請求項12】 真空容器内に基板を設置し、フッ素を
    含む酸化亜鉛をターゲットとし、スパッタガスを導入
    し、RF電力またはDC電力を印加し、マイクロ波を前
    記スパッタガスに照射し、プラズマを生起して、フッ素
    を含有する酸化亜鉛層を形成することを特徴とする光起
    電力素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 真空容器内に基板を設置し、少なくと
    も酸化亜鉛を含む物質をターゲットとし、スパッタガス
    及びフッ素を含有するガスを導入し、RF電力またはD
    C電力を印加し、マイクロ波を前記スパッタガスに照射
    し、プラズマを生起して、フッ素を含有する酸化亜鉛層
    を形成することを特徴とする光起電力素子の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記RF電力またはDC電力を時間的
    に変化させることを特徴とする請求項12または13記
    載の光起電力素子の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記フッ素を含有するガスの導入量を
    時間的に変化させることを特徴とする請求項10または
    13記載の光起電力素子の製造方法。
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