JPH0978786A - プレキャスト製階段ユニットの取付け構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】ＰＣ階段の耐震性を向上させることを課題とし
ている。 【解決手段】ＰＣ階段ユニットＡは、階段部分１と踊場
部分２とが一体になるように成形されている。そのＰＣ
階段ユニットＡの延在方向両端部である各踊場部分２の
端面には、接合用の鉄骨部材３が配設されている。上記
ＰＣ階段ユニットＡは、建物の鉄骨躯体である柱４や梁
５等の建方と並行して吊り込まれ、当該ＰＣ階段ユニッ
トＡの延在方向両端部がそれぞれ対応する階層の梁５に
接合される。このＰＣ階段ユニットＡと梁５との接合
は、ファスナＣを介して行われる。そのファスナＣは、
梁５側に固定される梁側ファスナと階段側に固定される
階段側ファスナとを有し、上記梁側ファスナと階段側フ
ァスナとは横方向へ相対変位可能に結合される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、鉄骨構造物の鉄骨
躯体にプレキャスト製階段ユニット（以下、ＰＣ階段ユ
ニットと呼ぶ）を取り付けるＰＣ階段ユニットの取付け
構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来から、階段部分とその上下に設けら
れる踊場部分とを一体化したＰＣ階段ユニットを工場等
で作製し、そのＰＣ階段ユニットを建物の鉄骨建方と共
に先行して躯体に取り付けることが行われている。そし
て、上記のように、階段のＰＣ化により階段施工の現場
作業及び工数の低減による省力化と能率化を促進すると
共に、当該ＰＣ階段を仮設の作業通路として使用すると
共に本設の階段と利用することにより、階段施工と同時
に作業通路を確保して仮設通路の施工削減を図ってい
る。

【０００３】上記ＰＣ階段ユニットの鉄骨躯体への取付
けは、従来、例えば、特開平５−１７１７６９号公報等
に記載されているように施工されている。このＰＣ階段
ユニットの施工は、図６に示すように、階段部分２０、
その階段部分２０の上下端部にそれぞれ連続する踊場部
分２１、及び本設の手すり２２を一つのユニットとして
なるＰＣ階段ユニット２３を、工場又は工事現場サイト
等で製作する。このとき、階段部分２０及び踊場部分２
１の側面から接合用の多数の鉄筋２４を突設させると共
に、踊場部分２１の鉄骨躯体への接合面には、鉄骨躯体
に設けた図示しない凹部に係合可能な接合片２５を突設
させておく。

【０００４】そして、建物の鉄骨建方と並行して上記Ｐ
Ｃ階段ユニット２３を吊り込み、そのＰＣ階段ユニット
２３を、上記接合用の鉄筋２４及び接合片２５を介して
躯体側の梁や耐力壁へ剛接合することで当該ＰＣ階段ユ
ニット２３を躯体に取り付けていた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記のようなＰＣ階段
ユニットの取付け構造では、ＰＣ階段ユニットが梁等の
躯体構造物と一体的になっているために、建物に地震力
が入力されたとき、当該ＰＣ階段ユニットが耐震ブレー
スとして作用して上記地震力による建物の揺れに抵抗す
る。

【０００６】このとき、ＰＣ階段の延在方向両端部であ
る上側部分と下側部分とは、それぞれ建物の別の階層部
分の躯体に接合されるが、建物の各階層は、地震によっ
てそれぞれ異なる変位量や方向をもって横方向に揺れる
ために、ＰＣ階段の延在方向の上端部及び下端部にはそ
れぞれ異なる方向や異なる大きさの水平力等が入力され
る。この結果、従来のＰＣ階段ユニットの取付け構造で
は、上記水平力等の外力によって生じる剪断力等によっ
て当該ＰＣ階段は変形し、上記剪断力等が所定値以上に
なるほど建物が揺れると当該ＰＣ階段は破損してしまう
という問題がある。

【０００７】本発明は、上記のような問題点に着目して
なされたもので、ＰＣ階段の耐震性を向上させることを
目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のプレキャスト製階段ユニットの取付け構造
は、鉄骨構造物の鉄骨躯体にプレキャスト製階段ユニッ
トを支持させるプレキャスト製階段ユニットの取付け構
造であって、上記プレキャスト製階段ユニットの延在方
向両端部と上記鉄骨躯体とを、横方向へ相対変位可能な
接合機構を介して接合することを特徴としている。

【０００９】なお、上記横方向とは、水平方向及びほぼ
水平方向を指す。また、上記プレキャスト製階段ユニッ
トの延在方向とは、階段を昇り降りする移動方向を指
す。そして、上記のように取り付けられたＰＣ階段ユニ
ットでは、当該ＰＣ階段ユニットの延在方向両端部をそ
れぞれ支持する各鉄骨躯体が別方向に変位したり変位量
が異なっていても、各鉄骨躯体とＰＣ階段ユニットとは
横方向へ相対変位可能に接合されているので、建物に揺
れに従ってＰＣ階段ユニットと鉄骨躯体との間に各揺れ
に応じた相対変位が生じて、ＰＣ階段ユニットは各鉄骨
躯体の揺れにさほど抵抗しない。この結果、建物の揺れ
によって鉄骨躯体からＰＣ階段ユニットの延在方向両端
部にそれぞれ入力される水平力等の外力は低減され、も
って、建物の揺れによってＰＣ階段ユニットに生じる剪
断力等は低減する。

【００１０】また、階段ユニットと鉄骨躯体とを横方向
へ相対移動可能な接合機構を介して接合することで、取
り付け時に位置の微調整が可能となる。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明する。まず構成について説明する。本実施の形
態のＰＣ階段ユニットＡは、図１及び図２に示すよう
に、階段部分１と、その階段部分１の延在方向の上端部
及び下端部にそれぞれ連続する踊場部分２とが一体に成
形されている。このＰＣ階段ユニットＡは、予め、工場
又は工事現場サイト等で製作する。そのＰＣ階段ユニッ
トＡの延在方向両端部である各踊場部分２の端面には、
接合用の鉄骨部材３が配設されている。

【００１２】そして、上記ＰＣ階段ユニットＡは、上記
図１及び図２に示すように、建物の鉄骨躯体である柱４
や梁５等の建方と並行して吊り込まれ、当該ＰＣ階段ユ
ニットＡの延在方向両端部がそれぞれ対応する階層の梁
５に接合されることで、鉄骨躯体である梁５に支持され
る。なお、図２中、Ｂは別のＰＣ階段ユニットと示し、
６は、ＰＣ階段ユニットＡ，Ｂ間に配設される耐力壁の
位置を示している。

【００１３】このＰＣ階段ユニットＡと梁５との接合
は、図３から図５に示すような接合機構を構成するファ
スナＣを介して行われる。このファスナＣは、梁５側に
固定される梁側ファスナ７と階段側に固定される階段側
ファスナ８とを有し、上記梁側ファスナ７と階段側ファ
スナ８とは、横方向へ相対変位可能に結合されるように
なっている。

【００１４】上記梁側ファスナ７は、梁５の取付け部上
面に固定された板状の基部金具７ａと、その基部金具７
ａの中央から上方に突設するボルト部材７ｃと、上記基
部金具７ａに固定されると共に上記ボルト部材７ｃの周
りに配設させる積層ゴム７ｂと、から構成されている。
なお、図４中、１５は、上記ボルト部材７ｃを固定する
ためのナットであり上記積層ゴム７ｂ内に隠れている。

【００１５】また、階段側ファスナ８は、断面Ｌ字形状
の金具から構成され、立上り部８ａがＰＣ階段ユニット
Ａの鉄骨部材３に結合されていると共に、上記立上り部
８ａの上端部から水平に延びる水平部８ｂが上記梁側フ
ァスナ７に結合可能となっている。上記水平部８ｂには
矩形状の開口部８ｃが開設されている。その開口部８ｃ
は、上記ボルト部材７ｃを所定隙間をもって遊挿可能と
なっている。また、上記水平部８ｂには、後述のレベル
調整用ボルト１１を貫通可能な穴が開設されていると共
にその上面に当該レベル調整用ボルト１１を螺合固定す
るナット１２が固着されている。なお、上記開口部８ｃ
の所定隙間は、ＰＣ階段ユニットＡの取付け部における
梁５に対する横方向への相対変位量となる。

【００１６】そして、上記のように階段側ファスナ８の
立上り部８ａが固定されているＰＣ階段をクレーン等で
吊り上げ、続けて対象とする梁５間に向けて吊り降ろす
ことで、梁５に固定した梁側ファスナ７の上に階段側フ
ァスナ８を載せ、ＰＣ階段ユニットＡの延在方向両端部
を梁５に支持させる。このとき、上記階段側ファスナ８
の開口部８ｃに対して、梁側ファスナ７のボルト部材７
ｃを挿通させる。その後、図３に示すように、レベル調
整用ボルト１１を上記ナット１２に螺合し取付けてレベ
ル調整を実施した後、上記ボルト部材７ｃに滑り座金９
を取付け、さらに、当該ボルト部材７ｃの先端部にナッ
ト１０を螺合することで上記階段側ファスナ８と梁側フ
ァスナ７とを結合する。これによって、ＰＣ階段ユニッ
トＡは、鉄骨躯体である梁５に取り付けられたことにな
る。

【００１７】上記のようなファスナＣでは、ボルト部材
７ｃが階段側ファスナ８の開口部８ｃ内を横方向へ移動
可能に挿通されると共に、上記階段側ファスナ８が弾性
変形可能な積層ゴム７ｂを介して梁側ファスナ７の基部
金具７ａに結合した状態となる。このために、当該階段
側ファスナ８は、積層ゴム７ｂが横方向に弾性変性する
ことで、梁側ファスナ７の基部金具７ａに対して任意の
横方向へ相対変位可能となっている。

【００１８】ここで、上記施工の際に、上記のようにレ
ベル調整用ボルト１１によって容易にレベル調整が行わ
れ、また、上記ボルト部材７ｃは上記階段側ファスナ８
の開口部８ｃに遊挿状態で挿通されるので横方向の取付
け位置の微調整が可能となっている。以上のように取り
付けられたＰＣ階段ユニットＡは、仮設の作業通路とし
て使用されると共に、建物の構築完了後は本設の階段と
して利用される。このように、階段をＰＣ化することで
階段施工の現場作業及び工数の低減による省力化と能率
化が促進され、且つ、鉄骨建方と並行してＰＣ階段を取
り付けることで、階段施工と同時に作業通路を確保可能
となる。

【００１９】また、本実施の形態のＰＣ階段ユニットＡ
では、延在方向両端部のみが躯体に取り付けられる構造
であるので、従来のようにＰＣ階段の幅方向両側面には
建物からの外力が負荷させることはない。そして、地震
によって建物が揺れて、ＰＣ階段の上端部及び下端部を
それぞれ支持する各梁５が異なる方向や異なる変位量で
横方向に変位すると、その変位による外力が、各ＰＣ階
段ユニットＡと梁５との接合部にそれぞれ入力される。
しかし、本実施の形態のＰＣ階段ユニットと梁との取付
け構造では、その外力に追従して積層ゴム７ｂが横方向
に弾性変位することで、梁側ファスナ７の基部金具７ａ
に対して階段側ファスナ８が横方向に相対変位し、階段
の延在方向両端部に入力される外力が低減する。この結
果、当該ＰＣ階段に生じる剪断力等、ＰＣを変形させる
ような力の入力が低減する。従って、従来のＰＣ階段ユ
ニットの取付け構造を採用したＰＣ階段ユニットでは破
損するような揺れが建物に生じても、当該実施の形態の
ＰＣ階段ユニットＡでは破損することはない。つまり、
本実施の形態のＰＣ階段ユニットの取付け構造を採用す
ると、取付けられたＰＣ階段ユニットの耐震性が向上す
る。

【００２０】なお、上記ファスナの構造は一例であり、
ＰＣ階段ユニットを鉄骨躯体に対して横方向へ相対変位
可能に結合可能な構造であれば、他の公知のファスナを
採用してもよい。また、上記レベル調整用ボルト９は必
ずしも必要ではない。また、上記実施の形態では、直線
状に延在するＰＣ階段ユニットＡを例に説明しているが
螺旋状など曲線状に延在する形状のＰＣ階段ユニットに
対して上記取付け構造を採用しても構わない。

【００２１】

【発明の効果】以上説明してきたように、本発明のプレ
キャスト製階段ユニットの取付け構造では、建物の揺れ
に追従してＰＣ階段が横方向に相対変位可能となってい
るので、ＰＣ階段に生じる剪断力等が低減されて、当該
ＰＣ階段の耐震性が向上するという効果がある。

【００２２】また、取付け時に位置調整が容易に実施で
きるので、プレキャスト製階段ユニットの取付け精度が
向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施の形態に係るＰＣ階段ユニットの
取付け状態を示す側面図である。

【図２】本発明の実施の形態に係るＰＣ階段ユニットの
取付け状態を示す平面図である。

【図３】本発明の実施の形態に係るＰＣ階段ユニットと
鉄骨躯体との接合に使用されるファスナを示す側面図で
ある。

【図４】本発明の実施の形態に係るＰＣ階段ユニットと
鉄骨躯体との接合に使用されるファスナを示す側面図で
ある。

【図５】本発明の実施の形態に係るＰＣ階段ユニットと
鉄骨躯体との接合に使用されるファスナを示す平面図で
ある。

【図６】従来のＰＣ階段ユニットの取付け状態を示す斜
視図である。

【符号の説明】

Ａ ＰＣ階段ユニット １ 階段部分 ２ 踊場部分 ５ 梁 Ｃ ファスナ ７ 梁側ファスナ ８ 階段側ファスナ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鉄骨構造物の鉄骨躯体にプレキャスト製
   階段ユニットを支持させるプレキャスト製階段ユニット
   の取付け構造であって、上記プレキャスト製階段ユニッ
   トの延在方向両端部と上記鉄骨躯体とを、横方向へ相対
   変位可能な接合機構を介して接合することを特徴とする
   プレキャスト製階段ユニットの取付け構造。