JPH0971846A - 高Crフェライト系耐熱鋼 - Google Patents

高Crフェライト系耐熱鋼

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JPH0971846A
JPH0971846A JP22761695A JP22761695A JPH0971846A JP H0971846 A JPH0971846 A JP H0971846A JP 22761695 A JP22761695 A JP 22761695A JP 22761695 A JP22761695 A JP 22761695A JP H0971846 A JPH0971846 A JP H0971846A
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潤之 仙波
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】600℃を超えるような高温における長時間ク
リープ強度、耐水蒸気酸化性および常温における靱性に
優れた高Crフェライト系耐熱鋼を提供する。 【解決手段】C、Si、Mn、P、S、Cr、W、M
o、Co、V、Nb、Nd、N、B、O、Sol、Al
が特定された鋼において、下記(1)および(2)を満
足する高Crフェライト系耐熱鋼。 0≦PNd≦0.103 (1) 0.005≦PNb≦0.03 (2) PNd=Nd−6.01×O(酸素) PNb=0.151×Nb+0.0971×PNd (元素記号は、各元素の鋼中における含有率(重量%)
を表す)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高Crフェライト
系の耐熱鋼に関する。本発明の耐熱鋼は、高温における
長時間クリープ強度、耐水蒸気酸化性および常温におけ
る靱性に優れている。したがって、本発明の耐熱鋼は、
ボイラ、原子力発電設備、化学工業装置など高温、高圧
下で操業される装置用材料、具体的には、熱交換用の鋼
管あるいは圧力容器用の鋼板、タービン用材料等に適し
ている。
【0002】
【従来の技術】ボイラ、原子力発電設備、化学工業装置
等の装置は、高温、高圧下で長時間使用される。したが
って、これらの装置に用いられる耐熱鋼は、高温におけ
る強度、耐食性、耐酸化性および常温における靭性等に
優れていることが要求される。
【0003】これらの用途には、従来、オーステナイト
系ステンレス鋼(例えば、JIS−SUS321H、同
SUS347H鋼)、低合金鋼(例えば、JIS−ST
BA24(2・1/4Cr−1Mo))、さらには、9
〜12Cr系の高Crフェライト鋼(例えば、JIS−
STBA26(9Cr−1Mo鋼))などが用いられて
きた。なかでも、高Crフェライト鋼は、500〜65
0℃の温度域において、強度、耐食性の点で低合金鋼よ
りも優れている。また、高Crフェライト鋼は、オース
テナイト系ステンレス鋼に比べて安価であること、熱伝
導率が高く、かつ熱膨張率が小さいので、耐熱疲労性に
優れていること、またスケール剥離が起こりにくい特性
を備えていることといった特長がある。この他、高Cr
フェライト鋼は、応力腐食割れを起こさないことなどの
長所を持っているため、広く利用されている。
【0004】近年、火力発電においては、熱効率の向上
を図るために、ボイラの蒸気条件の高温化、高圧化が進
められている。すなわち、現状の超臨界圧条件538
℃、246気圧から、将来は650℃で350気圧とい
うような超々臨界圧条件での操業が計画されている。こ
のような蒸気条件の変化に伴って、ボイラ用鋼管に対し
て要求される性能は、ますます過酷化してきている。そ
のため、従来の高Crフェライト鋼は、上記のような高
温における長時間クリープ強度、耐酸化性等の特性、特
に耐水蒸気酸化性について、十分に応えられなくなって
きているのが実状である。なお、水蒸気酸化とは、高温
高圧の水蒸気に曝されるボイラー用鋼管等の表面で生じ
る酸化現象である。この酸化が起こり酸化皮膜(スケー
ル)が生成すると、ボイラーの温度変化にともなってス
ケールが剥離する。剥離したスケールは、鋼管内の詰ま
り等のトラブルの原因にもなるので、水蒸気酸化の防止
は重要な課題となっている。
【0005】オーステナイト系ステンレス鋼は、上記の
要求に応えることができる性能を持っている。しかし、
オーステナイト系ステンレス鋼は、価格が高いために、
経済性の観点から、商業的な設備への使用範囲は限られ
ている。したがって、オーステナイト系ステンレス鋼に
比べて安価な高Crフェライト鋼の特性を改良し、使用
可能範囲を広げようとする努力が払われている。
【0006】高Crフェライト鋼の特性の改良対策とし
て、従来の高Crフェライト鋼にWを含有させた耐熱鋼
が開発されている。例えば、特開平3−97832号公
報には、従来よりもW含有率を高くし、さらに、高温に
おける耐酸化性を向上させるためにCuを含有させた高
Crフェライト鋼が開示されている。また、特開平4−
371551号公報および特開平4−371552号公
報には、WおよびMoを含有させ、MoとWの含有率の
適正な割合を選択するとともに、CoおよびBの両者を
含有させることにより、高温における強度と靭性を高め
た高Crフェライト鋼が提案されている。
【0007】これらの高Crフェライト鋼は、Wを多量
に含有しているので、高温クリープ強度に優れている。
しかし、Wは、Mo、Cr等と共にフェライト生成元素
であるため、多量に含有する場合には、鋼中にδ−フェ
ライトが生成する。その結果、高Crフェライト鋼の靭
性が低下するという弊害が生じる。
【0008】靱性低下の防止には、高Crフェライト鋼
の組織をマルテンサイト組織単相とすることが有効であ
る。その点を考慮して、特開平5−263196号公報
には、Cr含有率を低くすることにより、マルテンサイ
ト組織単相とした耐熱鋼が開示されている。また、特開
平5−311342号、同5−311343号、同5−
311344号、同5−311345号、同5−311
346号公報には、高Crフェライト鋼に対して、オー
ステナイト生成元素であるNi、Cu、Co等を含有さ
せることによって、靭性を向上させた高Crフェライト
鋼が提案されている。
【0009】上記の特開平5−263196号公報に開
示されている高Crフェライト鋼においては、Mo、N
i等が、鋼の表面に生成する緻密で安定なコランダム型
のCr2 3 からなるスケール層を破壊するために、耐
水蒸気酸化性に劣るという欠点がある。また、特開平5
−311342号公報等に開示されている高Crフェラ
イト鋼は、Ni、Cu等を多量に含有しているので、A
1 変態点およびAc3 変態点が低い。そのために、焼
きもどし軟化抵抗が小さいので、長時間クリープ強度が
低い。また、これらの元素が含まれると、Cr2 3
主体とする酸化物の構造が変わるので、高Crフェライ
ト鋼の耐水蒸気酸化性が悪くなるという欠点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、高温高
圧の超々臨界圧条件下における長時間クリープ強度、耐
水蒸気酸化性および靭性のすべての特性を満足する高C
rフェライト系の耐熱鋼は、未だに開発されていないの
が実状である。
【0011】本発明は、上記の実状を考慮してなされた
ものであって、600℃を超えるような高温において、
高温長時間クリープ強度、耐水蒸気酸化性および常温に
おける靱性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼を提供す
ることを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】発明者らは、600℃を
超える温度における長時間クリープ強度、耐水蒸気酸化
性および常温における靱性を備える高Crフェライト系
の耐熱鋼の開発を目標として、研究開発を行った。その
ために、高Crフェライト鋼の高温長時間クリープ強
度、靱性および耐水蒸気酸化性等の特性と、鋼の化学組
成および金属組織(ミクロ組織)との関係について詳細
に検討した。その結果、次のような新たな知見を得た。
【0013】−長時間クリープ強度および靱性について
− 高Crフェライト鋼の金属組織は、焼きならしおよ
び焼き戻し処理によって、炭窒化物が析出したマルテン
サイト組織となる。この出発組織によって、鋼の初期強
度が決定される。しかし、600℃を超える温度で使用
される場合には、マルテンサイト組織が時間とともに回
復軟化するので、クリープ強度が維持されない。
【0014】 600℃を超える温度においても、高
Crフェライト鋼の長時間クリープ強度を向上させるた
めには、長時間の使用中に金属組織内に微細なFe7
6 型(Cr、Moを含む場合の形態は、例えばFe55
22(Mo,W)23)のμ相を均一に分散析出させるこ
とが極めて有効である。このμ相は、マルテンサイト組
織の回復軟化後もクリープ強度を維持できる働きを持っ
ているからである。
【0015】 微細なμ相を分散して析出させるため
には、Wを単独で多量に含有させるか、またはWとMo
を複合で用いる場合はWに対するMoの割合を低くする
ことが有効である。その理由は、Moが多い場合には、
μ相が旧オーステナイト粒界やマルテンサイトラス界面
に局所的に析出するのに対して、Wが多い場合には、W
の拡散速度が遅いために、μ相が粒界の他に粒内にも析
出するためである。また、μ相が安定に存在できる温度
の上限が高いので、高い温度までμ相の効果を発揮させ
るのに有利である。
【0016】 微細なμ相が分散して析出した状態で
は、μ相に起因する靱性の低下は起こらない。
【0017】−耐水蒸気酸化性について− 高Crフェライト鋼の表面に生成するスケール層
は、Cr酸化物を主体とするコランダム型の緻密な酸化
物からなっており、これらによって水蒸気酸化は抑制さ
れる。しかし、スケール中にMoが存在する場合には、
スケール層がスピネル型の脆い構造に変わるので、耐水
蒸気酸化性が著しく低下する。Wは耐水蒸気酸化性に対
して悪影響を及ぼすことがない。したがって、Wを含有
させ、Moを減らすことによって、耐水蒸気酸化性を向
上させることができる。
【0018】 酸化物を生成する傾向が極めて強いN
d(ネオジウム)を鋼に含ませることによって、耐水蒸
気酸化性に対するMoの影響を軽減することができる。
【0019】 Ndの添加により、高温における窒化
物の析出形態が変化する。特に、Nb(ニオブ)を添加
した鋼では、微細なNbNが分散して析出し、このNb
Nが靱性を向上させている。
【0020】 上記のNdの効果を十分に発揮させる
ためには、NdとO(酸素)含有率の関係およびNbと
NdならびにOの含有率との関係を厳密に制御すること
が重要である。
【0021】本発明は、上記の知見を基に完成されたも
のであって、下記の技術的な思想を基本としている。
【0022】a)長時間クリープ強度および靱性は、F
7 6 型を主体とする微細なμ相を分散して析出させ
ることによって向上させる。
【0023】b)耐水蒸気酸化性に有害なMoの含有率
は、母材の強度を得るのに必要な量に抑える。Moの減
少分はWで補う。
【0024】c)Ndを含有させることによって、Mo
の弊害を抑制するとともに、靱性の向上を図る。
【0025】d)NdとO含有率の関係、NdとNbと
O含有率関係を制御する。
【0026】上記の技術的思想に基づく本発明は、「重
量%で、 C :0.02 〜0.15%、 Si:0 〜1.0%、 Mn:0.05 〜1.5%、 P :0.030%以下、 S :0.015% 以下 Cr:8.0 〜13.0%、 W :1.5〜3.5%、 Mo:0 〜1.0%、 Co:2.5〜6.0%、 V :0.10〜0.50%、 Nb:0.030〜0.14%、 Nd:0.001 〜0.17%、 N :0.020〜0.12%、 B :0 〜0.030%、 O :0.010% 以下、 sol.Al:0.001〜0.050% を含有し、残部:Feおよび不可避の不純物からなる化
学組成を備え、さらに、下記(1)式および(2)式を
満足する高Crフェライト系耐熱鋼。」 0≦PNd≦0.103 (1) 0.005≦PNb≦0.03 (2) PNd=Nd−6.01×O(酸素) PNb=0.151×Nb+0.971×PNd (元素記号は、各元素の鋼中における含有率(重量%)
を表す)を要旨としている。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の高Crフェライト系の耐
熱鋼(以下、本発明鋼と記す)に含まれる各合金元素と
鋼の特性との関係および各合金元素の含有率の範囲とそ
の限定理由について、以下に説明する。
【0028】C:Cは炭化物MC(Mは合金元素)、M
7 3 、M236 型の炭化物を形成する(炭窒化物M
(C、N))等の形態をとる場合もある)。この炭化物
は、本発明鋼の特性に著しい影響を及ぼす。高Crフェ
ライト鋼は、通常、焼きならしおよび焼きもどし処理に
よって焼きもどしマルテンサイト組織とし、その状態で
使用される。長時間、高温下で使用される場合には、V
C、NbC等の微細な炭化物の析出が進行する。これら
の炭化物は、長時間クリープ強度を維持する働きをす
る。この炭化物の効果を得るためには、0.02重量%
(以下、化学組成の%表示は重量%)以上のCが必要で
ある。一方、C含有率が0.15%を超えると、高温下
で使用される際、初期段階から炭化物の凝集と粗大化が
起こり、長時間のクリープ強度が低下する。したがっ
て、C含有率は0.02〜0.15%が適当である。好
ましくは、0.06〜0.12%である。
【0029】Si:Siは、溶鋼の脱酸剤として用いら
れる。この外、高温における耐水蒸気酸化性を向上させ
るのに有効な元素である。しかし、過剰な場合は、鋼の
靭性が低下するので、1%以下がよい。溶鋼が十分なA
l量で脱酸される場合には、特にSiを含む必要はな
い。
【0030】Mn:Mnは、通常、SをMnSとして固
定し、鋼の熱間加工性を向上させるために添加される。
本発明鋼においては、Mnは高応力下での短時間クリー
プ強度を向上させる効果もある。その効果を得ることが
できるMn含有率は、0.05%以上である。一方、
1.5%を超えると、鋼の靭性が低下する。したがっ
て、Mn含有率は0.05〜1.5%とした。好ましく
は、0.10〜1.0%である。
【0031】Cr:Crは、本発明鋼の高温における耐
食性、耐酸化性、特に耐水蒸気酸化性を確保するため
に、必要不可欠な元素である。Crを含有する場合に
は、鋼の表面にCr酸化物を主体とする緻密な酸化皮膜
が形成される。この酸化皮膜が、本発明鋼の高温におけ
る耐食性や耐酸化性、特に耐水蒸気酸化性を向上させ
る。
【0032】また、Crは、炭化物を形成してクリープ
強度を向上させる働きを持っている。
【0033】これらの効果を得るためには、Cr含有率
8.0%以上が必要である。一方、13.0%を超える
と、δ−フェライトが生成しやすくなるので、靭性の低
下が起こる。したがって、Cr含有率は8.0〜13.
0%とした。
【0034】W:Wは、本発明鋼において、クリープ強
度を高める上で重要な元素の1つである。Wは、鋼が高
温下で使用される場合に、Fe7 6 型のμ相を主体と
する金属間化合物を形成する。この金属間化合物は、結
晶粒内に細かく分散して析出するので、長時間クリープ
強度を向上させる。また、WはCr炭化物中にも一部固
溶し、炭化物の凝集、粗大化を抑制する働きがあるの
で、本発明鋼の高温における強度の維持にも有効な元素
である。Wのこの効果を得るためには、含有率1.5%
以上が必要である。一方、3.5%を超えるとδ−フェ
ライトが生成しやすくなり、靭性が低下する。したがっ
て、W含有率は1.5〜3.5%とした。
【0035】Mo:Moは、主に母材に固溶することに
よる固溶強化および析出物の形成による析出強化といっ
た働きをする。特に、Moを含むM236 、あるいはM
7 3 型炭化物は、高温で安定であるために、長時間ク
リープ強度の確保に対して極めて有効な元素である。し
かし、Moは前述のように、耐水蒸気酸化性に対しては
有害な元素である。前述のように、Ndの添加によって
その弊害は軽減できる。しかし、その場合でも1.0%
を超える多量の添加は靭性の低下を招く。したがって、
Moを含有させる場合の上限は1.0%とした。本発明
鋼では、Moを含んでいなくてもよい。
【0036】Co:Coは、本発明鋼においてFe7
6 型のμ相の析出を促進し、クリープ強度の向上に寄与
する。また、Coはオーステナイト生成元素であり、マ
ルテンサイト組織の安定化に寄与する元素である。その
効果を得るためには、含有率2.5%以上が必要であ
る。一方、6.0%を超えると、鋼のAc1変態点の低下
が著しく、高温強度が低下する。したがって、Co含有
率は2.5〜6.0 %とした。
【0037】V:Vは、微細な炭窒化物を形成してクリ
ープ強度の向上に寄与する元素である。Vの効果は、含
有率0.10%以上で現れる。一方、含有率が0.50
%を超えると、その効果は飽和するので、V含有率は
0.10〜0.50%とした。
【0038】Nb:Nbは、窒化物および炭窒化物の形
成により、鋼の強度および靱性を向上させる。特にNd
と併用されると、微細なNbN型窒化物が高温下で分散
して析出し、効果的に靱性を向上させる。その効果を得
るには、Nb含有率0.03%以上を必要とする。ただ
し、0.14%を超えると、Nbの効果は飽和するの
で、Nb含有率は、0.03〜0.14%が適当であ
る。
【0039】Nd:NdはO(酸素)と結合する傾向が
極めて強く、溶鋼中で酸化物を形成する。Ndを適量含
む場合には、微細なNd酸化物が鋼中に均一に分散して
存在する。一方、高Crフェライト鋼が高温、高圧の水
蒸気雰囲気に曝されると、その表面にCr酸化物を主体
とする皮膜が形成される。その際、鋼の表面に分散して
いる微細なNd酸化物は、Cr酸化物の成長を抑制する
ピン止め効果を発揮する。そのために、スケールの成長
が抑制されるとともに、スケールが緻密化する。したが
って、適正量のNdを含む場合には、鋼の耐水蒸気酸化
性が飛躍的に向上する。また、Ndは、Nd酸化物とし
て鋼中の酸素を固定するので、Nb等が酸素と結合して
酸化物となるのを防止する。そのために、Nbが窒化物
および炭窒化物を形成するのを助ける働きがあるので、
間接的に鋼の強度、靱性を向上させる作用をもってい
る。このような効果が得られるのは、Nd含有率0.0
01〜0.17%の範囲である。0.17%を超える
と、Ndの害が現れて鋼の靱性が低下する。
【0040】Ndは、さらにNdC2 等の炭化物を形成
する。この炭化物は、他のREM炭化物に比べて、マト
リックスとの格子不整合(ミスフィット)が小さく、微
細かつ安定に存在する。したがって、Ndはクリープ強
度の向上にも寄与する。
【0041】N:Nは、窒化物および炭窒化物を形成し
てクリープ強度、靭性の向上に寄与する重要な元素の1
つである。その効果を得るためには、0.02%以上含
有することが必要である。しかし、含有率0.08%を
超えると窒化物の粗大化が進行し、靭性の低下が著しい
ので、N含有率は0.02〜0.08%とした。
【0042】B:Bが微量、鋼中に含まれる場合、M23
6 型炭化物が微細に分散して析出する。そのために、
高温長時間クリープ強度が向上する。また、厚肉材など
で熱処理後の冷却速度が遅い場合には、焼き入れ性を高
めて高温強度を向上させる働きがある。本発明鋼では、
Bを含有しなくてもよいが、高温強度を高める目的で含
有させてもよい。Bの効果は、0.0005%以上で顕
著となるので、含有させる場合は0.0005%以上と
するのが望ましい。しかし、0.020%を超えると粗
大な析出物を形成し、靭性を低下させるので、その上限
は0.020%とした。
【0043】sol.Al:Alは、おもに溶鋼の脱酸
剤として添加される。鋼中には、酸化物としてのAl
と、酸化物以外の形態で存在するAlがあり、通常後者
のAlは分析上、塩酸可溶Al(sol.Al)として
区別されている。脱酸効果を得るためには、sol.A
l含有率0.001%以上が必要である。一方、0.0
50%を超えるとクリープ強度の低下を招く。したがっ
て、sol.Al含有率は、0.001〜0.050%
とした。
【0044】P、S:PおよびSは、不可避の不純物と
して鋼中に含有され、熱間加工性、溶接部の靭性等に悪
影響を及ぼす元素である。いずれも、含有率はできるだ
け低い方がよい。P、Sの含有率は、それぞれ0.03
0%以下、0.015%以下が望ましい。
【0045】O(酸素):Oは、不可避の不純物として
鋼中に含有され、粗大な酸化物として偏在すると靭性等
に悪影響を及ぼす元素である。特に、靭性を確保するた
めには、極力低い方がよい。O含有率0.010%以下
の場合には、本発明鋼の靭性への影響は小さいので、上
限は、0.010%とした。
【0046】NdとNbとOの関係:前述のように、N
dおよびNbは、酸素と結合し酸化物を形成する傾向が
極めて強い。Nbの窒化物、炭窒化物等を析出させるた
めには、(1) NbNが析出する時点で酸素と結合してい
ないNd、Nbを確保するために下記の(1)式、(2)
微細なNbNを分散して析出させるために下記の(2)
式を満足させる必要がある。
【0047】 0≦PNd≦0.103 (1) 0.005≦PNb≦0.03 (2) PNd=Nd−6.01×O(酸素) PNb=0.151×Nb+0.0971×PNd (元素記号は、各元素の含有率(重量%)を表す) 本発明鋼は、通常工業的に用いられている製造設備およ
び製造プロセスによって製造することができる。本発明
鋼の化学組成の鋼を得るには、電気炉、転炉などの炉に
よって精錬し、脱酸剤および合金元素の添加によって成
分調整すればよい。前記の(1)式、(2)式の関係
は、経験的に求められている脱酸後の溶鋼中のO含有
率、各合金元素の添加歩留まり等を考慮して各合金元素
を添加することによって満足させることができる。特
に、厳密な成分調整を必要とする場合には、合金元素を
添加する前に、溶鋼に真空処理を施す方法を採ってもよ
い。
【0048】所定の化学組成に調整された溶鋼は、連続
鋳造法または造塊法によって、スラブ、ビレットまたは
鋼塊に鋳造される。これらのスラブ、鋼塊などから、鋼
管、鋼板などを製造する。継ぎ目無し鋼管を製造する場
合には、例えば、ビレットを押し出し製管すればよい。
また、鋼板を製造する場合には、スラブを熱間圧延する
ことによって熱延鋼板を得ることができる。冷延鋼板を
製造する場合には、熱延鋼板をさらに冷間圧延すればよ
い。なお、得られた鋼管、鋼板については、必要に応じ
て焼鈍等の熱処理を施し、所定の特性に調整する。ま
た、熱間加工後、冷間圧延等の冷間加工を行う場合に
は、通常冷間加工に先だって、焼鈍および酸洗処理を施
す。
【0049】
【実施例】本発明鋼の性能を実施例によって、以下に説
明する。実施例における試験方法とその結果は下記のと
おりである。
【0050】表1および表2に、本試験に用いた供試材
の化学組成を示す。表1には、本発明鋼の供試材の化学
組成を示し、表2には、比較鋼(従来鋼を含む)の供試
材の化学組成を示した。なお、表2の中で、No.48
〜51は従来の高Crフェライト鋼(従来鋼)であり、
No.48はJIS−STBA26、No.49は火S
TBA27(火力原子力技術協会規格)、No.50は
ASTM−A213−T91、No.51はDIN−X
20CrMoWV121に規定されている化学組成の供
試材である。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】各供試材の製造方法は次のとおりである。
まず、容量50Kgの真空高周波誘導炉よって原料を溶
解し、所定の化学組成に成分調整した後、直径144m
mの鋼塊に鋳造した。得られたインゴットを温度130
0〜1000℃で熱間鍛造して、幅200mm、長さ4
00mm、厚さ25mmの供試材を作製した。各供試材
に対しては、次の熱処理を行った。No.48およびN
o.49の供試材に対しては、通常、これらの鋼に施さ
れる950℃で1時間保持後、空冷の焼きならし処理
と、さらに750℃で1時間保持後、空冷の焼きもどし
処理を施した。その他の供試材に対しては、1050℃
で1時間保持後、空冷の焼きならし処理と、さらに78
0℃で1時間保持後、空冷の焼きもどし処理を施した。
これらの供試材から、鋼の高温クリープ強度、耐水蒸気
酸化性および靱性評価用の試験片を採取した。
【0054】高温クリープ強度、耐水蒸気酸化性および
靭性の評価方法は下記の通りである。
【0055】[高温クリープ強度]高温クリープ強度
は、下記の試験条件によるクリープ破断試験によって評
価した。
【0056】 [耐水蒸気酸化性]耐水蒸気酸化性は、下記の試験条件
による水蒸気酸化試験によって評価した。
【0057】 試験環境 : 水蒸気雰囲気、温度 700℃ 保持時間 : 1000時間 測定項目 : スケール層の厚さ [靱性]靱性は、下記の試験条件によるシャルピー衝撃
試験によって評価した。
【0058】 表3および表4に、これらの試験結果を示した。表3は
本発明鋼の供試材、表4は比較鋼(従来鋼を含む)の供
試材に関する試験結果である。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】表3に示すように、本発明鋼の供試材N
o.1〜21については、650℃、98MPaにおけ
るクリープ破断時間は10000時間以上、衝撃値は1
20J/cm2 以上、水蒸気酸化によるスケール層の厚
さは93μm以下であった。この結果から、本発明鋼
は、高温クリープ強度、耐水蒸気酸化性および靱性のす
べての特性を同時に満足していることが確認された。
【0062】一方、表4に示すように、比較鋼の供試材
No.22〜51については、一部の供試材にクリープ
破断時間、水蒸気酸化スケール層厚さあるいは衝撃値の
測定値に、本発明鋼並みの高い値が認められた。しか
し、3つの特性すべてを満足する供試材はない。特に、
供試材No.48〜51の従来鋼では、いずれも、65
0℃、98MPaの条件におけるクリープ破断時間が、
900時間未満であり、高温クリープ強度が著しく低
い。水蒸気酸化におけるスケール層の厚さも100μm
を超えるものが多く、耐水蒸気酸化性にも劣っている。
また、いずれかの元素の含有率が、本発明鋼の化学組成
の範囲外である供試材No.22〜47については、上
記のように3つの特性の内のいずれか、またはすべてが
本発明鋼に比べて劣っている。比較鋼の供試材No.2
7、34および37〜47ならびに従来鋼の48〜51
については、前記(1)式を満足しておらず、また、比
較鋼の供試材No.37および40ならびに従来鋼の4
8、49および51については、(2)式を満足してい
ない。この場合には、一部の特性値に本発明鋼並みの値
も見られるが、高温クリープ強度、耐水蒸気酸化性ある
いは靱性のいずれかが著しく劣っていた。
【0063】上述のように、本発明鋼は比較鋼または従
来鋼に比べて、高温クリープ強度、耐水蒸気酸化性およ
び靱性が格段に優れていることが実証された。
【0064】
【発明の効果】本発明の高Crフェライト系の耐熱鋼
は、600℃を超える高温における長時間クリープ強
度、耐水蒸気酸化性および常温における靱性に優れてい
る。したがって、ボイラー、原子力発電設備、化学工業
装置など高温、高圧下で操業される装置用材料、例えば
熱交換用の鋼管あるいは圧力容器用の鋼板、タービン用
材料等として好適である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、 C :0.02 〜0.15%、 Si:0 〜1.0%、 Mn:0.05 〜1.5%、 P :0.030%以下、 S :0.015% 以下 Cr:8.0 〜13.0%、 W :1.5〜3.5%、 Mo:0 〜1.0%、 Co:2.5〜6.0%、 V :0.10〜0.50%、 Nb:0.030〜0.14%、 Nd:0.001 〜0.17%、 N :0.020〜0.12%、 B :0 〜0.030%、 O :0.010% 以下、 sol.Al:0.001〜0.050% を含有し、残部:Feおよび不可避の不純物からなる化
    学組成を備え、さらに、下記(1)式および(2)式を
    満足する高温における長時間クリープ強度、耐水蒸気酸
    化性および靱性に優れた高Crフェライト系耐熱鋼。 0≦PNd≦0.103 (1) 0.005≦PNb≦0.03 (2) PNd=Nd−6.01×O(酸素) PNb=0.151×Nb+0.0971×PNd (元素記号は、各元素の鋼中における含有率(重量%)
    を表す)
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