JPH0959616A - El蛍光体の製造方法 - Google Patents

El蛍光体の製造方法

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JPH0959616A
JPH0959616A JP7242567A JP24256795A JPH0959616A JP H0959616 A JPH0959616 A JP H0959616A JP 7242567 A JP7242567 A JP 7242567A JP 24256795 A JP24256795 A JP 24256795A JP H0959616 A JPH0959616 A JP H0959616A
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JP
Japan
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powder
activator
phosphor powder
phosphor
particles
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JP7242567A
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English (en)
Inventor
Etsuji Kimura
悦治 木村
Kazumi Shimura
一美 志村
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Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 発光輝度および発光寿命に優れたEL蛍光
体粉末の提供 【解決手段】 硫化亜鉛と付活剤ないし共付活剤とな
る金属化合物とを含む原料粉末を一次焼成して中間蛍光
体粉末を製造し、この中間蛍光体粉末に衝撃力を加えた
後に二次焼成してEL蛍光体を得ることを特徴とするE
L蛍光体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本発明は、硫化亜鉛を母体とし発
光の中心となる付活剤および共付活剤を含有する蛍光体
粉末、特に、高輝度で長寿命のエレクトロルミネッセン
ス(EL)蛍光体の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】ELパネルは電圧励起型の発光素子であ
り、分散型ELと薄膜型ELとが知られている。分散型
ELは、一般的には、粉末状のEL蛍光体を高誘電率の
バインダー中に分散したもので、少なくとも一方が透明
な二枚の電極の間に挟み込んだ構造を有し、両電極間に
交流電場を印加することにより発光する。分散型ELは
数mm以下の厚さに成形することが可能であり、発熱が
なく発光効率が良く大画面化が可能であるなど数多くの
利点を有するため、交通標識等の表示用発光パネル、各
種インテリアやエクステリア用の照明、液晶ディスプレ
イ等のフラットパネルディスプレイ用の光源など幅広い
用途が期待されている。
【0003】分散型ELパネルに用いられるEL蛍光体
粉末としては、硫化亜鉛を母体として、銅等の付活剤
(発光中心としての金属イオン)および塩素等の共付活
剤を添加したものが広く知られている。しかし、このよ
うな蛍光体粉末を用いて作成された分散型ELパネル
は、他の原理に基づく発光素子と比べて発光輝度が低
く、また発光寿命が短いという欠点があり、このため従
来から種々の改良が試みられてきた。例えば、特開昭61
-296085 号には、硫化亜鉛、銅化合物、ハロゲン化物の
混合物を1000〜1200℃で焼成することにより六
方晶系の中間蛍光体粉末を製造し、これに常温下で静水
圧を加えた後に700〜950℃で再焼成するか、また
は再焼成と同時に熱間プレスして立方晶系に転移させ、
高輝度、長寿命の蛍光体を製造する方法が記載されてい
る。また特開平6-33053 号には、中間蛍光体を大気中で
再焼成する方法に代えて、硫酸塩存在下で大気を遮断し
て再焼成し、エッチング後さらに大気中で比較的低温で
熱処理する製造方法が記載されている。これらの方法で
製造された蛍光体粉末は従来のものより発光輝度が高
く、寿命も長いが、さらなる高輝度化および長寿命化が
求められている。
【0004】
【発明の解決課題】本発明は、従来のEL蛍光体におけ
る上記課題を解決したものであって、発光素子用として
十分な高輝度、長寿命特性を有するEL蛍光体の製造方
法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題の解決手段】EL蛍光体粉末のEL発光の中心
は、粒子内に存在する積層欠陥部に析出した付活剤の硫
化銅(Cu2 S)等の針状結晶と硫化亜鉛母体との界面
部分であると考えられている(『銅付活蛍光体』セラミ
ックス26(1991) No.7)。本発明者等はこの考えに
基づいて従来のEL蛍光体について検討し、従来のEL
蛍光体粉末で高輝度発光が得られない原因は発光中心が
粒子内に自然に存在する積層欠陥に依存しており、した
がって積層欠陥の密度が低いためであることを見出し、
これを克服する手段についてさらに検討した。その結
果、蛍光体粒子を加速して相互に衝突させるか固定面に
衝突させるなどして該粒子に衝撃力を与えると、粒子内
の積層欠陥密度が増加し、発光輝度が向上するという知
見を得て本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明によれば、以下の構成を
有するEL蛍光体の製造方法が提供される。 (1) 硫化亜鉛と付活剤ないし共付活剤となる金属化
合物とを含む原料粉末を一次焼成して中間蛍光体粉末を
製造し、この中間蛍光体粉末に衝撃力を加えた後に二次
焼成してEL蛍光体を得ることを特徴とするEL蛍光体
の製造方法。 (2) 中間蛍光体粉末の粒子を100〜800 m/s、
好ましくは150〜400 m/sの相対速度で相互に衝突
させて衝撃力を与える上記(1) の製造方法。 (3) 中間蛍光体粉末の粒子を100〜400 m/s、
好ましくは150〜300 m/sの速度で固定面に衝突さ
せて衝撃力を与える上記(1) の製造方法。 (4) 一次焼成温度が1000〜1300℃であり、
二次焼成温度が700〜1000℃である上記(1) 〜
(3) のいずれかに記載の製造方法。 (5) 付活剤が銅、マンガン、銀、金および希土類元
素から選択された少なくとも一種の金属イオンであり、
共付活剤が塩素、臭素、ヨウ素およびアルミニウムから
選択された少なくとも一種のイオンである上記(1) 〜
(4) のいずれかに記載の製造方法。
【0007】
【発明の実施形態】本発明のEL蛍光体の製造方法は、
以下のように、第1段階において常法に従い中間蛍光体
粉末を製造する工程と、第2段階において上記中間蛍光
体粉末に衝撃力を加えて積層欠陥の密度を高める工程と
を含む。
【0008】(1) 中間蛍光体粉末の製造 高純度の硫化亜鉛粉末に付活剤ないし共付活剤となる金
属化合物粉末および融剤を混合し、この原料粉末を一次
焼成した後に融剤を洗浄除去し、乾燥することにより中
間蛍光体粉末を製造する。
【0009】硫化亜鉛には高温安定型(1024℃以上)の
六方晶系ウルツ鉱型(β−ZnS)と低温安定型の立方
晶系閃亜鉛鉱型(α−ZnS)の2つの結晶形がある
が、本発明において蛍光体の母体として用いる硫化亜鉛
はいずれの結晶形のものでもよく、両者が混在していて
もよい。
【0010】発光中心となる付活剤は、付活剤として蛍
光体に一般に使用されているものであれば良く、例え
ば、銅、マンガン、銀、金および希土類元素等の各種の
金属イオンが好適に用いられる。具体的には、これらの
元素の酢酸塩、硫酸塩等が好適に用いられる。これらは
単独で用いても複数を組み合わせて用いてもよい。蛍光
発光の波長域(色)は付活剤の種類に依存しており、例
えば、青緑色(銅)、オレンジ色(マンガン)、青色
(銀)等の蛍光が得られる。付活剤の好ましい濃度は付
活剤の種類により異なるが、例えば、銅付活剤の場合は
最終製品で母体の硫化亜鉛に対して銅濃度で0.01〜
0.1wt%の範囲であればよい。0.01wt%未満では
十分な発光が得られず、0.1wt%を越えると輝度の低
下を招く。
【0011】共付活剤としては、従来、蛍光体に共付活
剤として使用されている、塩素、臭素、ヨウ素およびア
ルミニウム等を用いることができる。これらは各種の金
属塩等が好適に用いられる。これらは単独で用いてもよ
く、複数を組み合わせて用いてもよい。共付活剤の好ま
しい濃度は共付活剤の種類により異なるが、塩素の場
合、最終製品で母体の硫化亜鉛に対して0.01〜0.
2wt%の範囲であればよい。0.01wt%未満では十分
な発光が得られず、0.2wt%を超えると輝度の低下を
招く。
【0012】融剤の例としては、アルカリやアルカリ土
類金属のハロゲン化物およびアンモニアのハロゲン化物
等が挙げられる。2種類以上を同時に添加してもよい。
これらの融剤は硫化亜鉛母体の結晶成長を行うと同時
に、共付活剤の供給源となる。融剤の添加量は、原料の
硫化亜鉛に対して、好ましくは5〜20wt%程度を用い
る。
【0013】上記各原料を含む粉末を十分に混合した
後、1000〜1300℃の温度で3〜9時間かけて一
次焼成を行なう。一次焼成によって得られる中間蛍光体
粉末は焼成粉末が脆く結合した塊であり、水中に投入す
ると塊が容易に崩れて焼成粉末が水中に分散する。この
焼成粉末をイオン交換水で繰り返し洗浄してアルカリ金
属ないしアルカリ土類金属および過剰の付活剤、共付活
剤を除く。
【0014】(2) 衝撃力印加処理 一次焼成により得た中間蛍光体粒子の内部には、自然に
生じた積層欠陥が低密度ながらも存在する。これにある
範囲の大きさの衝撃力を加えることにより、粒子を破壊
することなく積層欠陥を増加させる。衝撃力を加える方
法としては、粒子を加速して固定面に衝突させるか相互
に衝突させる方法などが挙げられる。
【0015】粉末粒子を固定面に衝突する方法は、具体
的には、中間蛍光体粉末をノズルから高圧気体とともに
噴射しテフロン、シリコンゴム等などの保護層で被覆さ
れた固定面に衝突させる。なお、テフロンなどの保護層
は、衝突面構成材料による蛍光体粒子の汚染を防止し、
一方で粒子が破壊されるのを防止することを目的とす
る。粉末粒子を噴射する速度は粒子の密度や粒径にもよ
るが、概ね100〜400 m/s、好ましくは150〜3
00 m/sが適当である。
【0016】粉末粒子を相互に衝突させる方法は、互い
に向き合わせた複数のノズルから、高圧流によって粉末
粒子を噴射して粒子どうしを衝突させる。あるいは粉末
粒子が分散された気流中に他の粉末粒子をノズルから高
圧気体とともに噴射する。またはこれらの組み合わせに
より行なうことができる。気流の速さまたは噴射条件は
粒子の密度や粒径にもよるが、概ね100〜800 m/
s、好ましくは150〜400 m/sの相対速度が適当で
ある。 固定面に衝突させる場合も粒子相互を衝突させ
る場合も、流速が小さいと衝突エネルギーが不十分であ
り積層欠陥が十分に増加しない。また流速が大きすぎる
と衝突エネルギーが過大となり粒子自体が破壊して微粉
化するので好ましくない。
【0017】また、上記方法の他にも、中間蛍光体粉末
を剛性球とともに容器に装入して容器ごと激しく振動す
ることにより衝撃力を与える方法でも良い。振動は一方
向のみならず多方向に行い、かつ回転と共に行うと良
い。剛性球および容器の材質の例としてはアルミナ、ジ
ルコニアなどの磁製材料が硬度および汚染防止の点から
好ましい。振動条件は、容器の形状や容積、中間蛍光体
と磁製球の装入量あるいはその量比によって異なるが、
蛍光体粒子の破壊が起こらない範囲で最大限の衝撃力を
与え得るように振動のストロークの大きさならびに振動
数および回転数を定める。なお、以上の各衝撃方法の中
では、衝突の際に汚染が生じる虞が無い点で中間蛍光体
粒子を相互に衝突させる方法が最も好ましい。
【0018】(3) 二次焼成処理 粉体粒子に衝撃力を加えて粒子内の積層欠陥の密度を高
めた後に、二次焼成を行い、この積層欠陥に付活剤を析
出させる。二次焼成は、好ましくは700〜1000℃
で2〜10時間加熱することにより行なわれる。二次焼
成後、エッチングにより粒子表面の酸化亜鉛膜を除去す
る。この際、粒子中の付活剤金属が溶解して表面に析出
することがあるため、これを適当な薬品、例えば銅の場
合ではEDTAなどを用いて除き、水洗、乾燥、分級を
経て、目的とする粒径のEL蛍光体粉末を得る。以上の
方法により、積層欠陥の平均面間隔を0.2〜10nm程
度まで高めたEL蛍光体粉末を得ることができる。
【0019】蛍光体粉末の粒径は25μm 以下が好まし
い。発光輝度は粒径によっても影響を受け、粒径が小さ
いほうが有利である。蛍光体粉末の粒径が40μm 以上
になると発光輝度が大幅に低下するので好ましくない。
蛍光体粉末の粒径は主に中間蛍光体粉末を製造する一次
焼成によって定まり、一般に焼成温度を下げて融剤量を
減らせば粒径は小さくなるが、従来の蛍光体粉末では焼
成温度や融剤量を下げると付活剤および共付活剤のドー
プ量のバランスが崩れるために発光輝度は必ずしも向上
せず、色調も変化するが、本発明の蛍光体では付活剤が
高密度に粒子全体に均一に分布しているのでこのような
欠点を生じない。
【0020】
【発明の効果】EL蛍光体粉末の製造方法としては、原
料の硫化亜鉛粉末を付活剤となる金属化合物および共付
活剤となるハロゲン化物などと共に一次焼成して中間蛍
光体粉末を製造し、引き続き、二次焼成する方法が一般
的である。一次焼成した段階で中間蛍光体粉末の結晶内
部には刃状転位や双晶などの面状の積層欠陥が自然に存
在する。具体的には、硫化亜鉛には立方晶系 (α−ZnS)
と六方晶系 (β−ZnS)の2つの結晶形が存在し、前者で
は最密原子面{(111) 面}はABCABC……の三層構
造をなし、後者ではc軸に垂直な最密原子面がABAB
……の二層構造を形成しているが、例えばα−ZnS でC
面が抜けると部分的にABABのβ−ZnSとなり刃状転
位が生じ、またAB面が逆転すると双晶が生じる。この
状態で二次焼成すると付活剤が拡散し、面状の積層欠陥
に沿って付活剤が析出する。このため、積層欠陥の密度
が高いと発光輝度を高めるうえで有利となる。
【0021】本発明の製造方法では、一次焼成後の硫化
亜鉛結晶に衝撃力を加えることにより、例えば、最密原
子面のすべりなどが生じて刃状転位や双晶などの積層欠
陥が粒子内部に均一にかつ著しく増加させることができ
る。従って、本発明の製造方法により得られる蛍光体
は、発光中心となる付活剤が析出する積層欠陥部分が母
体の硫化亜鉛結晶全体にわたって均一に分布し、かつ高
密度に存在するため、高い発光輝度が得られる。また、
EL蛍光体の発光寿命が失われるのは付活剤の逆拡散が
起こるためであるが、本発明の蛍光体粉末は、付活剤が
粒子全体に均一に分布しているので輝度低下の影響が少
なく、また付活剤の析出密度が高いために付活剤の逆拡
散自体が抑制されるので発光寿命が長い。
【0022】
【実施例】実施例1 高純度硫化亜鉛粉末(不純物金属元素含有量<0.1ppm)
150gに2.0gの酢酸銅水和物 Cu(CH3 C00)2 ・H
2 O を加え、さらに融剤および共付活剤の塩素源として
10gの塩化マグネシウムMgCl2 ・6H2 O 、5gの塩化
バリウムBaCl2・2H2 O および10gの塩化アンモニウ
ムNH4 Clを混合したものを、鉄心入りナイロン球150
gと共に容器に装入し、30分間回転させてよく混合し
た。次いで、この原料粉体を磁製ルツボに封入し、12
00℃で6時間焼成した後、イオン交換水3リットルで10
回洗浄し・濾過を繰り返して融剤を完全に洗い流し、乾
燥して中間蛍光体粉末(平均粒径28μm )を得た。
【0023】次に、上記蛍光体粉末に衝撃力を加えて粉
末内部の積層欠陥の高密度化を図った。用いた衝撃力印
加装置の概要を図1に模式的に示す。図示した衝撃力印
加装置1は、ステンレス製の円筒容器2(直径:15cm 、
高さ:4cm)とこれに斜めに差し込まれた粒子噴射管3を
備えている。噴射管3の上端4は高圧空気導入部であ
り、噴射管3のはぼ中央には粒子を装入するためのホッ
パーが設けられている。一方、噴射管3の下端はノズル
5(口径:1mm)を形成しており、ノズル5の噴射方向
の延長線上には、テフロン・プレート6が着脱可能に固
定されている。また、容器2には噴射管3とほぼ反対側
に排気口7が設けられ、これは集塵部9を有するサイク
ロン8を経てバグフィルタ(図示省略)に連通してい
る。なお金属不純物の混入を防止するため容器内壁には
ウレタンゴムが内張りされている。
【0024】上記装置を用い、定量フィーダー10と振
動フィーダー11からなる供給手段により中間蛍光体粉
末15をホッパーから連続的に噴射管3に導入し、管内
には8 kg/cm2 の高圧空気を送入し、中間蛍光体粉末を
ノズル5からテフロン・プレート6に向けて噴射した。
プレート6に衝突した粉末粒子は気流に乗ってサイクロ
ン8に搬送され、これを集塵部9において回収した。得
られた粉末粒子の透過電子顕微鏡像を図3に示した。図
中、細い縞模様は積層欠陥(主として双晶面)であり、
母体の硫化亜鉛粒子全体に均一に分布している。積層欠
陥相互の平均面間隔は約2.5nmである。
【0025】このように衝撃力を加えた中間蛍光体粉末
を700℃で6時間かけて二次焼成した後、5%塩酸水
溶液中で30分間撹拌して表面エッチング処理を行な
い、水洗、乾燥、分級して、平均粒径23μm のEL蛍
光体粉末を得た。この蛍光体粉末について発光特性試験
を行った。この結果を表1に示した。
【0026】実施例2 衝撃力印加装置として図2に示す装置を用いた他は実施
例1と同様にして中間蛍光体粉末を製造した。本例の衝
撃力印加装置21は、ステンレス製の円筒容器22(直
径:18cm、高さ:4cm )とこれにほぼ水平に差し込まれ
た粒子噴射管23を備えており、各噴射管はその軸線が
容器のほぼ中央の1点で交わるように配設されている。
図示する装置では、その軸線が互いに120°の角をな
す3本の噴射管が設けられているが、3本に限らず、互
いに360/n度の角度で向き合ったn本(n≧2)の
噴射管を備えた装置であれば良い。噴射管23はそれぞ
れ図1の装置の場合と同様に粉体導入部と高圧空気導入
部(図示省略)およびノズル24が形成されている。ま
た円筒容器2はノズル部25が円筒容器の壁に沿って差
し込まれたガス噴射管(ノズル部のみ図示)を複数備え
ている。ガス噴射管は噴射されたガスが円筒容器2の周
面に沿ってその軸方向を中心とした渦流を形成するよう
に配設されている。これにより、噴射された粒子が容器
の内壁に直接衝突するのを防止している。円筒容器の中
央上部26には排出口27が設けられており、これは集
塵部29を有するサイクロン28を経てバグフィルタ
(図示省略)に連通している。なお、金属不純物の混入
を防止するため容器内壁にはウレタンゴムが内張りされ
ている。
【0027】上記装置を用い、中間蛍光体粉末を適当な
供給手段で連続的に噴射管23に導入し、管内には8kg
/cm 2 の高圧空気を送入して中間蛍光体粉末をノズル2
5から噴射した。噴射された粉末は容器中央で衝突し、
気流に乗ってサイクロン28に搬送され、これを集塵部
29において回収した。この粒子を顕微鏡で観察し、積
層欠陥の平均間隔を求めた。結果を表1に示す。このよ
うに衝撃力を加えた中間蛍光体粉末を700℃で6時間
かけて二次焼成した後、5%塩酸水溶液中で30分間撹
拌して表面エッチング処理を行ない、水洗、乾燥、分級
して、平均粒径21μm のEL蛍光体粉末を得た。この
蛍光体粉末について実施例1と同様の発光特性試験を行
った。
【0028】比較例1 実施例1と全く同様の方法で中間蛍光体粉末を製造した
後に、衝撃力を加えずに二次焼成して蛍光体粉末を製造
した。この蛍光体粉末の透過電子顕微鏡像を図4に示し
た。図3と同様に細い縞模様は積層欠陥であり、相互の
平均面間隔は26nmである。実施例1の蛍光体粉末に比
べて積層欠陥の平均面間隔は約10倍程度大きい。衝撃
を加えた後、焼成条件および表面処理方法など全て実施
例1と同一の条件で処理し蛍光体粉末を得た。さらに、
この蛍光体粉末について実施例1と同様の発光特性試験
を行った。
【0029】蛍光体粉末の発光特性試験 実施例および比較例で得た蛍光体粉末について、各々の
蛍光体粉末0.6gとひまし油0.3gを混合しペース
ト状にして導電膜付きガラスに塗布し、これに厚さ10
0μmの絶縁スペーサーを介在させ、さらに1枚の導電
膜付きガラスを重ねてEL発光素子を作製した。この発
光素子に室温で120V、1 kHzの交流電圧を印加して
各々の輝度を測定した。各発光素子における相対輝度お
よび相対輝度半減寿命を表1に示した。なお相対輝度お
よび半減寿命は比較例1の蛍光体粉末を用いた発光素子
の輝度および輝度半減寿命を1とした。
【0030】
【表1】 No. 平均粒径 結晶欠陥 相対輝度 輝度半減寿命 実施例1 23μm 2.5nm 11.20 2.11 〃 2 21μm 2.3nm 11.50 2.05 比較例1 24μm 26 nm 1.00 1.00 (注)結晶欠陥は積層欠陥の平均面間隔
【0031】従来のEL蛍光体粉末は、その大部分が中
間蛍光体粉末に自然に存在する積層欠陥を利用して付活
剤を析出させているため、図4に示すように、積層欠陥
の平均面間隔が本発明の蛍光体粉末に比べて広い。一
方、本発明により製造される蛍光体粉末は、面状の積層
欠陥が硫化亜鉛の母体全体に均一かつ高密度に生じてお
り、その平均面間隔は概ね0.2〜10nmである。図3
は本発明の製造方法によって得た蛍光体の断面図であ
り、付活剤の硫化亜鉛が高密度に形成された積層欠陥に
析出している。同図において基質部分は母体の硫化亜鉛
であり、縞状の部分がその積層欠陥の部分である。図3
は面状に広がる積層欠陥に対してほぼ直角の断面を示し
ている。図示するように本発明の蛍光体粉末では各積層
欠陥の平均面間隔が極めて狭い。このような面間隔の狭
い高密度の積層欠陥は、中間蛍光体粉末に衝撃力を加え
ることによって生じたものであり、かかる高密度の積層
欠陥に付活剤が析出するので粒子全体に付活剤が均一に
分散される。因みに、本発明の蛍光体粉末における積層
欠陥相互の平均面間隔は、従来の蛍光体粉末の約10分
の1であり、積層欠陥の密度が格段に高く、かつ母体粒
子全体に均一に分散している。この結果、従来品に比べ
輝度で10倍以上、寿命で2倍以上のEL蛍光体粉末を
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法で用いる衝撃力印加装置の模
式断面図。
【図2】本発明の製造方法で用いる衝撃力印加装置の他
の模式断面図。
【図3】本発明に係る蛍光体粒子の組織状態を表わす透
過電子顕微鏡写真。
【図4】比較例に係る蛍光体粒子の組織状態を表わす透
過電子顕微鏡写真。
【符号の説明】
1−衝撃力印加装置、 3−粒子噴射管、 6−テフロ
ン・プレート 8−サイクロン、 9、29−集塵部、 15−中間蛍
光体粉末 21−衝撃力印加装置、 23−粒子噴射管、 25−
高圧空気噴射ノズル 28−サイクロン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H05B 33/14 H05B 33/14

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硫化亜鉛と付活剤ないし共付活剤となる
    金属化合物とを含む原料粉末を一次焼成して中間蛍光体
    粉末を製造し、この中間蛍光体粉末に衝撃力を加えた後
    に二次焼成してEL蛍光体を得ることを特徴とするEL
    蛍光体の製造方法。
  2. 【請求項2】 中間蛍光体粉末の粒子を100〜800
    m/s、好ましくは150〜400 m/sの相対速度で相互
    に衝突させて衝撃力を与える請求項1の製造方法。
  3. 【請求項3】 中間蛍光体粉末の粒子を100〜400
    m/s、好ましくは150〜300 m/sの速度で固定面に
    衝突させて衝撃力を与える請求項1の製造方法。
  4. 【請求項4】 一次焼成温度が1000〜1300℃で
    あり、二次焼成温度が700〜1000℃である請求項
    1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 付活剤が銅、マンガン、銀、金および希
    土類元素から選択された少なくとも一種の金属イオンで
    あり、共付活剤が塩素、臭素、ヨウ素およびアルミニウ
    ムから選択された少なくとも一種のイオンである請求項
    1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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