JPH0957069A - 浸透気化法による有機液体の精製方法及びそれに用いる装置並びにこれらを利用した蒸気乾燥 - Google Patents

浸透気化法による有機液体の精製方法及びそれに用いる装置並びにこれらを利用した蒸気乾燥

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JPH0957069A
JPH0957069A JP22196495A JP22196495A JPH0957069A JP H0957069 A JPH0957069 A JP H0957069A JP 22196495 A JP22196495 A JP 22196495A JP 22196495 A JP22196495 A JP 22196495A JP H0957069 A JPH0957069 A JP H0957069A
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Yoshiteru Kobayashi
芳照 小林
Yuji Tanaka
裕二 田中
Seiji Sudo
誠司 須藤
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Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Chemical Engineering Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
Mitsubishi Chemical Engineering Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 イオン性不純物や金属成分が少ない精製有機
液体を得る方法を提供する。 【解決手段】 水を選択的に透過させる浸透気化膜を用
いて水を除去する工程を含む、イオン性不純物と水分と
を含有する有機液体の精製方法において、浸透気化膜モ
ジュールに供給する前の液体及び浸透気化膜モジュール
から抜き出した膜を透過していない液体の一方又は両方
をイオン交換樹脂で処理する有機液体の精製方法及びそ
れを用いた蒸気乾燥方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は浸透気化法による有
機液体の精製方法及びそれに用いる装置、並びにそれら
の蒸気乾燥への応用に関する。詳しくは、イオン性不純
物と水分を含む有機液体からイオン性不純物及び水を除
去し精製した有機液体を得る方法及びそれに用いる装
置、並びにそれらの蒸気乾燥装置への応用に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、半導体ウェーハ等の加工に於い
ては、被処理物の水洗後に、イソプロピルアルコール
(以下IPAと称す)等のアルコール類の蒸気による乾
燥を行うため、いわゆる蒸気乾燥装置が使用される。蒸
気乾燥装置は、例えば特開昭62−106630号公報
に記載されているように、主として、水洗後の被処理物
の表面で、アルコール類を主成分とする薬液の蒸気を凝
縮させて乾燥を行う蒸気処理部、および該蒸気処理部か
ら排出される凝縮液を回収して処理する工程からなる。
該回収液中には水分が数%から数10%含まれているこ
とが多く、アルコール類と共沸混合液体または沸点の近
接した混合液体を形成する。このため、かつてはアルコ
ール類に含有される水分が多くなると薬液を廃棄処分し
ていた。近年、環境に対する配慮やコスト削減の要請か
ら、水分の多くなったアルコール等の薬液を分離膜モジ
ュールを使用した浸透気化法により精製して利用するこ
とが行われるようになった。水を選択的に透過する膜を
用いて浸透気化法により含水アルコール類から水分を除
去する場合、未精製アルコール類を分離膜の一方(1次
側)に供給し、他方(2次側)を減圧に保持するか、ま
たは不活性ガス等を流通させて、2次側の水蒸気分圧を
1次側の平衡蒸気圧よりも小さく保持することにより、
水分を1次側から2次側に透過させることによって水分
を除去している。
【0003】ところが、蒸気乾燥装置から回収された薬
液は水分以外にハロゲンイオン、硫酸イオン等のイオン
性不純物を含有している場合が多い。該イオン性不純物
は浸透気化法では分離できない。そればかりか、該イオ
ン性不純物は反応性に富むために、浸透気化膜を化学的
に侵し劣化を促進し、膜分離性能を低下させる恐れがあ
る。更には、浸透気化装置またはその周辺の金属材料の
腐食を誘発し、鉄、クロム、ニッケル等の金属類がアル
コール側に溶出して不純物となる恐れがある。これらの
金属不純物の量はppbオーダーであるが、精製有機液
体を半導体等の洗浄に利用する場合には問題となること
がある。また、このような金属不純物は微量であるた
め、蒸留により除去することは難しく、蒸留により精製
するとコスト高の要因となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記従来技術
における欠点を解決し、浸透気化法に於ける分離膜の分
離性能の低下を抑制し、且つ金属不純物の混入を防止し
たコスト的により有利な有機液体の精製方法を提供する
ことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、水を選択
的に透過させる浸透気化膜を用いて水を除去する工程を
含む、イオン性不純物と水分とを含有する有機液体の精
製方法において、浸透気化膜モジュールに供給する前の
液体及び浸透気化膜モジュールから抜き出した膜を透過
していない液体の一方又は両方をイオン交換樹脂で処理
することを特徴とする有機液体の精製方法、により解決
することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。本発明の方法で精製される有機液体
としてはイオン性不純物及び水分を含有する有機液体で
あれば特に制限はなく、例えば、ペンタン、ヘキサン、
ヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、メタノ
ール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリ
コール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコ
ール類、アセトン、アセトアルデヒド、テトラヒドロフ
ラン、ジメチルスルホキシド等の極性有機液体、その他
ハロゲン化炭化水素類が例示できる。この内、アルコー
ル類の精製方法に適用することが好ましく、IPAの精
製方法に適用することが特に好ましい。水分を含むアル
コール類を使用する場合、イオン交換樹脂によるイオン
成分の除去効率の点から、その水分量は100ppm以
上、好ましくは500ppm以上、特に好ましくは10
00ppm以上であることが好ましい。
【0007】イオン性不純物としてはフッ化物イオン、
塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲンイオン、硫酸
イオン、硝酸イオン、沸酸イオン等の無機イオン、蓚酸
イオン、酢酸イオン等の有機イオン、ナトリウム、カリ
ウム,鉄、クロム、銅等の金属イオン、その他のイオン
性成分が挙げられる。これらのイオン性不純物は浸透気
化法では除去されず、また、微量のため単蒸留では除去
し難い。更に、これらのイオン性不純物、特に無機イオ
ンは、それ自身が精製有機液体中に不純物として残留す
るだけではなく、膜素材や膜分離性能に対して悪影響を
及ぼし、装置材料に対する腐食、更には腐食によって惹
起される金属イオンの精製有機液体への混入等の問題の
原因となる。これらの中で酸性又はアルカリ性を示すイ
オン、特に酸性を示すイオンは上記問題を引き起こすこ
とが多い。特に、ハロゲンイオンでは問題が顕著とな
る。
【0008】本発明では、このような問題となりうるイ
オン性不純物を有機液体から取り除くために、有機液体
を浸透気化膜モジュールに導入する前及び/又は浸透気
化膜モジュールから膜を透過していない液(以下、「非
透過液」と呼ぶ)を抜き出した後にイオン交換樹脂で処
理する。浸透気化膜による分離とイオン交換樹脂による
処理との順序は、粗有機液体中に含まれるイオン性不純
物が、分離膜への悪影響の少ない炭酸イオン、蓚酸イオ
ン等の弱酸性イオンの場合には、イオン交換樹脂塔によ
る処理前に浸透気化膜による分離を行ってもよいが、分
離膜の劣化を防止するためにはイオン交換樹脂による処
理を先に行う方が好ましい。
【0009】イオン性不純物による浸透気化膜の劣化を
考慮しなくてもよい場合であっても、浸透気化膜による
分離の後では有機液体中に含有する水分が少なくなって
いるため、イオン交換を効率的に行うことができない場
合がある。そのような場合にもイオン交換樹脂での処理
を先に行う方がよい。また、浸透気化膜による分離は、
粗有機液体を加熱して行うため、抜き出された非透過液
が高温となっている場合がある。このような場合にも、
イオン交換樹脂の耐熱性の問題があるので、イオン交換
樹脂での処理を先に行うことが好ましい。
【0010】イオン交換樹脂の種類は、粗有機液体中に
含有されるイオン性不純物の種類及び濃度に応じて適宜
定められる。問題となるイオン性不純物がアニオンだけ
の場合にはアニオン交換樹脂だけで処理すればよく、問
題となるイオン性不純物がカチオンだけの場合にはカチ
オン交換樹脂だけで処理すればよい。アニオン及びカチ
オンがイオン性不純物として含まれる場合、アニオン交
換樹脂塔とカチオン交換樹脂塔とを組み合わせて使用し
てもよいが、双方のイオン交換樹脂が適当な比率で混合
された混床イオン交換樹脂塔に導入して処理することが
好ましい。
【0011】本発明で用いる浸透気化膜としては、対象
有機液体の浸透気化法に通常用いられる透水性の分離膜
であればいずれでもよい。浸透気化法に用いられる分離
膜としては、セルロース系、キトサン系、ポリイミド
系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリアクリロニト
リル系、ポリビニルアルコール系の素材からなる分離
膜、或いはこれらの素材を組み合わせた分離膜が例示で
きる。これらのうち、特にポリイミド系分離膜、セルロ
ース系分離膜が好適である。分離膜の形状としては、中
空糸状、平膜状、スパイラル状等が例示できる。
【0012】浸透気化膜による分離は、粗有機液体を加
熱後、浸透気化膜モジュールの1次側に供給し、膜の2
次側を減圧にするか、または不活性ガスを流すことによ
り、1次側の透過成分の蒸気圧と2次側の透過成分の分
圧との差を利用して行われる。浸透気化法は、透過成分
が気化しつつ膜を透過するため、気化熱により1次側の
液の熱が奪われることになる。1次側の液温度が下がる
と透過成分の蒸気圧が低くなり、1次側と2次側との蒸
気圧差が小さくなり、甚だしい場合には分離を行うこと
ができなくなる。このため、1次側に潜熱を効率的に供
給するために、非透過液の一部を加熱後、再び元の浸透
気化膜モジュールに循環させる方法(特開平5ー313
33号公報)や4〜60段の浸透気化膜モジュールを直
列に連結させ、各段の間に加熱器をもうける方法(特公
平2ー21288号公報)などが行われる。
【0013】前者の非透過液の一部を加熱後、元の浸透
気化膜モジュールに循環させる方法は、潜熱を効率的に
供給するためばかりではなく、粗有機液体の組成変化に
よる影響を希釈し、分離性能を安定化させる効果もある
ので特に好ましい。非透過液の一部を循環させる場合、
循環路から抜き出される液量を1としたとき、元の浸透
気化膜モジュールに再循環させる液量は、通常1以上、
好ましくは5〜200である。循環液量が少なすぎると
上記の効果が十分に得られず、他方、循環液量が多すぎ
ると分離膜モジュールや配管径を大きくする必要がある
ので好ましくない。
【0014】以下、蒸気乾燥槽から回収された粗IPA
を精製する場合を例に採って、図面を参照しながら本発
明の実施の形態を更に説明するが、本発明はこれに限定
されるものではない。図1は本発明の実施の一態様を説
明するための模式図である。図中、2はイオン交換樹脂
塔であり、4は加熱器であり、5は浸透気化膜モジュー
ルであり、10は蒸留装置である。図1ではポンプ等の
常套手段は省略されている。
【0015】粗IPAは管路1を通じてイオン交換樹脂
塔2へ供給される。イオン交換樹脂塔に充填されるイオ
ン交換樹脂の種類は、粗IPA中に含まれるイオン性不
純物の種類、濃度等によって適宜定められる。通常、も
っとも問題となるイオン性不純物は酸性を示すアニオン
(硫酸イオン、ハロゲンイオン等)であるので、通常は
これらのアニオンを除去することができるイオン交換樹
脂が使用される。また、金属イオン等のカチオン不純物
は最終的な精製IPA中に含まれると不都合なので、好
ましくはカチオン交換樹脂も併用する。なお、図1には
イオン交換樹脂塔は1つだけ描かれているが、アニオン
交換樹脂塔とカチオン交換樹脂塔とを連結した態様も本
発明に含まれる。最も好ましい態様は混床イオン交換樹
脂を用いることである。混床イオン交換樹脂を用いれ
ば、イオン交換樹脂塔が1つでよく、装置のコンパクト
化が可能になる。
【0016】イオン交換樹脂塔での処理条件は公知のイ
オン交換樹脂の使用条件でよく、通常、温度は20〜3
0℃で、被処理液の導入速度は0.5〜10リットル/
リットル・hrの範囲である。イオン交換樹脂で処理さ
れた粗IPAは管路3を通して加熱器4に供給され、加
熱される。加熱器4はスチーム加熱や電気加熱等が好適
に用いられる。粗IPAは加熱器4により沸点近くまで
加熱される。管路中の圧力が大気圧以上の場合には、大
気圧での沸点(約83℃)以上に加熱してもよい。浸透
気化膜モジュールへの供給は液体状態で行うことが装置
のコンパクト化のために好ましいので、管路中の圧力で
のIPAの沸点未満の温度とすることが好ましい。な
お、本発明は浸透気化膜モジュール5への供給液中に気
相が含まれる、いわゆる気液2相流の場合を除外するも
のではない。
【0017】粗IPAは加熱後、浸透気化膜モジュール
5の1次側に供給される。浸透気化膜モジュール5の2
次側は透過流体排気管6を通じて真空ポンプにより減圧
されている。通常、2次側の全圧は1〜300Torr
である。浸透気化膜7は水を選択的に透過する膜である
ので、粗IPA中の水分は、1次側と2次側の水蒸気の
分圧の差により膜を透過する。なお、2次側を減圧せず
に、乾燥した不活性ガスを流すことにより2次側の水蒸
気の分圧を低く保つことも可能である。
【0018】IPAは浸透気化膜7を透過せず、非透過
液として浸透気化膜モジュール5の1次側から抜き出さ
れる。非透過液の一部は管路9を通じて循環路から抜き
出され蒸留装置10に供給され、残部は循環管路8を通
じて加熱器4で再加熱後、浸透気化膜モジュール5に循
環される。なお、図1では浸透気化膜モジュールが1つ
であり、循環管路がある場合が示されているが、本発明
はこれに限定されるものではない。例えば、1段の浸透
気化分離では所望の水分濃度まで水分を除去できない場
合には、浸透気化膜モジュールを直列に連結することが
可能である。また、処理液量が多い場合には、浸透気化
膜モジュールを並列に連結して処理量を増やすこともで
きる。また、循環管路8を設けず、非透過液の全量を蒸
留装置10に供給することも可能である。
【0019】管路9中のIPAは多くのイオン性不純物
及び水分が除去されており、精製IPAの用途によって
は、蒸留せずに利用可能であるが、半導体基板等の蒸気
乾燥に用いる場合は蒸留を併用することが好ましい。本
発明で行われる蒸留は、通常、単蒸留で十分であり、蒸
留装置10としては公知の蒸留装置が適用できる。
【0020】図2は蒸気乾燥装置と有機液体精製装置を
連結させたときの一態様を説明するための模式図であ
る。図中、12は有機薬液貯留部であり、13は加熱器
であり、14は被処理物であり、15は冷却コイルであ
り、16は精密濾過膜である。蒸気乾燥は概略、次のよ
うにして行われる。表面に水分が付着した被処理物14
が蒸気処理室に導入される。有機薬液貯留部12には乾
燥したIPAが貯留されており、加熱器13で加熱さ
れ、IPA蒸気を発生させている。被処理物14の表面
では、IPA蒸気が凝縮する。IPAは被処理物14の
表面に付着した水分と共に下に滴下する。被処理物14
の表面で凝縮しなかったIPA蒸気は冷却コイル15で
凝縮する。
【0021】有機薬液貯留部12に貯留されるIPAと
しては、できるだけ水分が少なく、純度の高いIPAが
好ましい。IPAの純度は通常、90%以上、好ましく
は98%以上、特に好ましくは99%以上である。IP
Aの純度が低く、水分が多いと、半導体基板の乾燥に用
いた場合に、ウォーターマーク等の原因となる恐れがあ
る。
【0022】しかし、蒸気乾燥をしばらく続けると、被
処理物14に付着していた水分や、被処理物14を導入
するときに同伴した空気中の水分により有機薬液貯留部
12のIPAの水分量が増加する。そのため、有機薬液
貯留部12のIPAの一部を管路1から抜き出して本発
明の有機液体の精製装置に導入して精製を行う。すなわ
ち、有機薬液貯留部12から抜き出されたIPAはイオ
ン交換樹脂塔2で処理された後に、浸透気化膜モジュー
ル5で水分が除去され、必要に応じてさらに蒸留装置1
0で単蒸留される。精製IPAは必要に応じてさらに精
密濾過を行った後に有機薬液貯留部12に還流される。
【0023】粗IPAの抜き出しは、有機薬液貯留部1
2からだけではなく、被処理物14の下方に凝縮液受皿
(図示せず)を設け、該凝縮液受皿の凝縮液を抜き出す
ことにより行ってもよい。本発明の蒸気乾燥装置は、有
機液体の精製工程等での金属イオン等の溶出が抑えられ
ているため、有機薬液貯留部12のIPA中の不純物が
少なくなるので、半導体基板等の乾燥に適用した場合、
乾燥工程で良導体が付着することによる半導体等の不良
の発生を抑制することができる。本発明の蒸気乾燥装置
は、先に例示の半導体基板の乾燥だけではなく、光学レ
ンズや液晶基板等の他の精密部品の乾燥にも好ましく適
用できる。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に
説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これ
ら実施例によりなんら限定されるものではない。なお、
本実施例の分析値は以下の装置によって測定されたもの
である。 イオン性不純物:イオンクロマトグラフィ(金属カチオ
ンの検出下限は0.1ppb、アニオンの検出下限は
0.1ppm) 金属類:原子吸光法 水分量:カールフィシャー法
【0025】実施例1 図1に模式的に示される装置を用いて下記のように有機
液体の精製を行った。IPA90%、水分10%、イオ
ン性不純物として、塩素イオン2.2ppm、硫酸イオ
ン0.5ppm、ナトリウムイオン1.8ppb、鉄イ
オン4.7ppb、ボロン9.3ppbを含有する液体
を室温下、0.2リットル/分の速度で、導入管1を通
してイオン交換樹脂塔へ導入した。イオン交換樹脂塔2
はイオン交換樹脂「SMT−100」(三菱化学社製、
カチオン樹脂:アニオン樹脂の2:1の混合物)が10
リットル充填された混床イオン交換樹脂塔である。該イ
オン交換樹脂塔2で処理された粗IPAは管路3を通し
て浸透気化ユニットへ導入される。
【0026】浸透気化膜の一次側は管路8を通じて循環
系を形成しており、熱交換器4により85℃に保持され
ている。この時、浸透気化膜モジュールの二次側は管路
6を通して真空ポンプにより10Torrの圧力に保持
されている。なお、本実施例では、浸透気化膜モジュー
ルとしてポリイミドからなる中空糸の一端をポリエポキ
シ接着剤で封止し、他端を同接着剤で集束固定した浸透
気化膜モジュールを使用している。こうして、管路9を
通して得られた精製IPAの組成を分析したところ水分
は0.5%、イオン性不純物として塩素イオン、硫酸イ
オン及びボロンはいずれも検出されなかった。金属類と
しても鉄成分が1.5ppb検出されたに過ぎなかっ
た。
【0027】更に、配管9を通して単蒸留装置10に導
入し、大気圧下に82.4℃で蒸留を行ったところ、精
製IPAの組成として水分0.7%、鉄成分は検出限界
(0.1ppb)以下であった。その他の金属成分及び
イオン成分も検出限界以下であった。また、イオン性不
純物が減少した結果、膜の窒素透過量も1年間連続使用
した後においても2.5×10-7[Ncc/cm2・sec・cmHg]
と、ほぼ初期の値(2.3×10-7[Ncc/cm2・sec・cmH
g])を維持し、結果的に膜モジュール寿命の向上が確認
された。
【0028】比較例1 実施例1において、イオン交換樹脂塔2を使用しない以
外は同様にして粗IPAを精製したところ、管路9から
得られた精製IPAの組成で水分量は0.5%と変化が
なかったが、イオン製不純物として塩素イオンが0.7
ppm、硫酸イオンが0.2ppm及び鉄成分9.5p
pb、ボロンが8.9ppbあり、特に鉄成分は原料の
未精製IPAよりも高い濃度になっていた。
【0029】更に、実施例1のように単蒸留装置10に
導入して単蒸留を行ったところ、得られたIPAの組成
は水分0.7%、塩素イオンが0.8ppm、硫酸イオ
ン0.3ppm及び鉄成分が9.8、ボロンが8.8p
pbであった。以上から単蒸留を実施してもイオン性不
純物ばかりか鉄成分に代表される金属成分も低減せず、
むしろ原料粗IPA中よりも増加している。
【0030】
【発明の効果】本発明の方法によれば、半導体産業等で
使用された有機液体を再使用できる程度まで精製できる
ので、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の有機液体の精製装置の一態様を説明
するための模式図である。
【図2】 本発明の蒸気乾燥装置の一態様を説明するた
めの模式図である。
【符号の説明】
1 原料液供給管 2 イオン交換樹脂塔 3 イオン交換樹脂塔処理液排出管 4 加熱器 5 浸透気化膜モジュール 6 透過流体排出管路 7 浸透気化膜 8 循環管路 9 非透過液抜き出し管路 10 蒸留装置 11 精製有機液体抜き出し管路 12 有機薬液貯留部 13 加熱器 14 被処理物 15 冷却コイル 16 精密濾過膜
フロントページの続き (72)発明者 須藤 誠司 福岡県北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱化学株式会社黒崎事業所内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水を選択的に透過させる浸透気化膜を用
    いて水を除去する工程を含む、イオン性不純物と水分と
    を含有する有機液体の精製方法において、浸透気化膜モ
    ジュールに供給する前の液体及び浸透気化膜モジュール
    から抜き出した膜を透過していない液体の一方又は両方
    をイオン交換樹脂で処理することを特徴とする有機液体
    の精製方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の方法で有機液体を精製
    した後に、さらに蒸留を行うことを特徴とする有機液体
    の精製方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の方法において、
    イオン交換樹脂で処理する液体が浸透気化膜モジュール
    に供給する前の液体であることを特徴とする有機液体の
    精製方法。
  4. 【請求項4】 原料有機液体中の水分含有量が100p
    pm以上である請求項1〜3のいずれか1つに記載の有
    機液体の精製方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1つに記載の有
    機液体の精製方法において、浸透気化膜モジュールから
    抜き出された液体の一部分を加熱し、再び該浸透気化膜
    モジュールに循環させることを特徴とする有機液体の精
    製方法。
  6. 【請求項6】 少なくともイオン交換樹脂塔、イオン交
    換樹脂塔から抜き出された液体を加熱して浸透気化膜モ
    ジュールに供給するための配管、水を選択的に透過させ
    る膜を用いた浸透気化膜モジュール、膜を透過した成分
    を排出するための機構及び膜を透過していない成分を回
    収するための機構を備えた有機液体の精製装置。
  7. 【請求項7】 少なくともイオン交換樹脂塔、イオン交
    換樹脂塔から抜き出された液体を加熱して浸透気化膜モ
    ジュールに供給するための配管、水を選択的に透過させ
    る膜を用いた浸透気化膜モジュール、膜を透過した成分
    を排出するための機構、膜を透過していない成分を蒸留
    器に供給するための配管、蒸留器及び留出液を回収する
    ための機構を備えた有機液体の精製装置。
  8. 【請求項8】 請求項6又は7に記載の有機液体の精製
    装置において、膜を透過していない成分の一部を再加熱
    後、再度、前記浸透気化膜モジュールに供給するための
    配管を有する有機液体の精製装置。
  9. 【請求項9】 請求項6〜8のいずれか1つに記載の有
    機液体の精製装置において、浸透気化膜モジュールを複
    数個有し、これらが1つの浸透気化膜モジュールの膜を
    透過していない成分の抜き出し液を他の浸透気化膜モジ
    ュールの供給液とするように連結されている有機液体の
    精製装置。
  10. 【請求項10】 有機薬液の蒸気を用いて被対象物を乾
    燥する蒸気乾燥方法において、有機薬液の一部を抜き出
    し、これを請求項1〜5のいずれか1つに記載の精製方
    法にて精製した後に、蒸気乾燥に再利用することを特徴
    とする蒸気乾燥方法。
  11. 【請求項11】 少なくとも蒸気処理部、有機薬液貯留
    部及び加熱器を有する蒸気乾燥槽と、請求項6〜9のい
    ずれか1つに記載の有機液体の精製装置と、前記有機薬
    液貯留部から薬液を抜き出し、該薬液を上記有機液体の
    精製装置に供給するための配管と、前記有機液体の精製
    装置で精製された有機液体を前記有機薬液貯留部に還流
    させるための配管とを有する蒸気乾燥装置。
  12. 【請求項12】 少なくとも蒸気処理部、有機薬液貯留
    部、凝縮液受器及び加熱器を有する蒸気乾燥槽と、請求
    項6〜9のいずれか1つに記載の有機液体の精製装置
    と、前記凝縮液受器から凝縮液を抜き出し、該凝縮液を
    上記有機液体の精製装置に供給するための配管と、前記
    有機液体の精製装置で精製された有機液体を前記有機薬
    液貯留部に還流させるための配管とを有する蒸気乾燥装
    置。
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