【発明の詳細な説明】
光崩壊性ポリエステル 発明の分野
本発明は、コポリマーを形成するために含有された時にポリエステルを光崩壊
性にする、ケトン、1,5−ビス−(4′−アルコキシカルボニルフェニル)−
3−ペンタノンに関する。発明の背景
ポリエステル、特に食品及び飲料包装用のポリエステルには、安全性及び輸送
コストの低さのような、いくつかの非常に望ましい特徴がある。しかし、これら
の容器がリサイクルされないかまたは不適切に廃棄される場合には、それらによ
って景観の美観が損われる。従って、これらのポリエステル包装材料の有用性を
保ちながらも、不適切に廃棄された場合に環境において自然に消散するポリエス
テルを開発することが非常に望まれている。
この問題への1つのアプローチは、太陽が自然に放射する強い紫外線の分解作
用を利用することであろう。ポリエステル鎖にいくつかのケトン含有部分を導入
するとポリエステルが紫外線感受性になり、その過程で脆くなることは、当業界
ですでに知られている。この脆性のため、ポリエステルは崩壊し、最終的には消
散する。
かかる分解には比較的短波長の紫外線、一般には 280〜320 ナノメーターの紫
外線が必要であることが報告されている。これらの波長は一般に通常のガラスに
よってフィルターされて、スペクトルから除かれる。従って、要求される紫外線
波長は屋内環境には存在しないので、屋内での分解速度は極めて遅い。
本発明者らは、ポリエステルに紫外線感受性を導入するケトンを見出した。
米国特許第4,965,399 号は、ポリエステル材料の製造に有用な1,5−ビス(
置換アリール)−3−ペンタノールを開示している。
米国特許第5,025,086 号は、1,5−ビス(4−カルボキシシクロヘキシル)
−3−ペンタノール及びそのエステルならびにそれらの製造方法を開示している
。
米国特許第3,878,169 号は、ポリエステルの主鎖ではなく、側鎖にケトン基を
含むポリエステルを開示している。
従って、本発明に使用したようなケトンをポリエステルの構造の反復単位とし
て使用することはまだ知られていない。発明の要約
本発明は、構造:
[式中、R1は水素、炭素数1〜6のアルキル及び炭素数6〜10のアリールから
なる群から選ばれ、R2は水素、炭素数1〜6のアルキル及び炭素数6〜10のア
リールからなる群から選ばれる]
の反復単位を含んでなるポリエステルに関する。
このケトンは、ポリエステルに紫外線感受性を導入する。この紫外線感受性は
、同一量のポリエステルが導入前には持っていなかったものである。
このケトンの別の利点は、望ましい光感受性を与えるのに必要な
量が比較的少ないので、この材料の導入はこれらのポリマーの通常の処理にはほ
とんど影響を与えないことである。ケトンはさらに、テレフタル酸ジメチルの製
造の際の安価で入手の容易な副生成物である4−ホルミル安息香酸メチルから誘
導されるという利点を有する。この副生成物は、このように使用しなければ、リ
サイクルさせるかまたは環境にとって健全なように廃棄されなければならないも
のである。好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、1,5−ビス−(4′−アルコキシカルボニルフェニル)−3−ペ
ンタノンのような置換3−ペンタノンに関する。ケトン、1,5−ビス−(4′
−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンはこの型のケトンのより具体
的な例である。
具体的には、本発明は、
[式中、R1は水素、炭素数1〜6のアルキル及び炭素数6〜10のアリールから
なる群から選ばれ、R2は水素、炭素数1〜6のアルキル及び炭素数6〜10のア
リールからなる群から選ばれる]
の反復単位を含んでなるポリエステルに関する。
本発明の目的では、炭素数1〜6のアルキルの例は、メチル、エチル、プロピ
ル、ブチル、ペンチル、イソブチル、イソプロピル及びヘキシルである。炭素数
6〜10のアリールの例は、フェニル、ナフチル及びキシリルである。R1及びR2
は共に水素、メチルまた
はフェニルであるのが好ましい。R1及びR2は水素であるのがより好ましい。
反復単位ケトンはポリエステル中に、二酸及びジエステルから誘導される反復
単位の 0.1〜100 モル%、好ましくは 0.1〜15モル%、より好ましくは 1.0〜5
モル%の量で存在するのが好ましい。
置換3−ペンタノンの製造方法の一例として、以下の具体例を挙げる:
1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンを以
下のようにして合成する:
4−ホルミル安息香酸メチルをアセトンと縮合させて、1,5−ビス−(4′
−メトキシカルボニルフェニル)−1,4−ペンタジエン−3−オンを生成し、
次に、水添触媒上で水素添加する。以下の図式は、これらの反応を表すものであ
る:
ベンズアルデヒドとケトン、特にアセトンとの二回縮合(bisconden sation)は公
知方法であり、R.Conrad 及びM.A.Dolliver,Org.Syn.,Coll.Vol.II,16
7(1943)に開示されている。図示した縮合は、塩基で触媒される。
本発明はまた、反復単位(A):
と、二酸またはジエステルの総モル数に基づき 0.5モル%未満の反復単位(B)
:
[式中、R1は水素、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールか
らなる群から選ばれ、R2は水素、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10
のアリールからなる群から選ばれる]を含んでなるポリエステルの製造方法であ
って、
(1)式:
を有する4−置換ベンズアルデヒドと式:
を有するケトンとを酸性または塩基性縮合触媒の存在下で反応させて、式:
を有する中間化合物を生成せしめ;
(2)触媒量の、混合銅−クロム酸化物及び担持第VIII貴金属から選ばれた水添
触媒の存在下において圧力及び温度の水添条件下で該中間化合物を水素添加して
、構造:
[式中、R1は水素、炭素数1〜6のアルキル及び炭素数6〜10のアリールから
なる群から選ばれ、R2は水素、炭素数1〜6のアルキル及び炭素数6〜10のア
リールからなる群から選ばれ、R3及びR4は水素及び炭素数1〜6、好ましくは
1〜2のアルキルからなる群から選ばれる]:
(3)該ジエステルを温度 200〜300 ℃及び圧力1000mm〜0.01mmにおいて他のジ
エステルまたは二酸及び1種または複数のジオールと重合させる
工程を含んでなる製造方法に関する。
前記方法の第1工程は、酸性または塩基性触媒の存在下でケトンモル当たり約
2モルのアルデヒドを反応させることによって実施する。
触媒として使用できる物質の例としては、アルカリ金属水酸化物、アルコキシ
ド及び炭酸塩;アルカリ土類金属水酸化物及び酸化物
;第四アンモニウム水酸化物、例えば、4個のアルキル残基が合計約20以下の炭
素原子を含むテトラ−未置換または置換アルキルアンモニウム水酸化物;アルキ
ル−及びアリール−スルホン酸;酸性イオン交換樹脂、例えば、Amberlyst 15;
ならびに鉱酸、例えば、硫酸及び塩酸が挙げられる。
縮合反応は通常、例えば炭素数が約6〜12の脂肪族及び芳香族炭化水素ならび
に炭素数が例えば約6以下のアルカノールのような不活性溶媒の存在下で実施す
る。
メタノールは、メチルエステルと相溶性であり且つ一般に反応成分を全て溶解
させるので、好ましい溶媒である。縮合工程の温度は、使用する反応体及び触媒
、触媒濃度など多数の要因に応じてかなり変化させることができる。−25℃もの
低温及び250℃もの高温もある環境下では使用できるが、縮合反応は通常は約0
〜140 ℃、好ましくは0〜50℃の範囲の温度で実施するものとする。
圧力は通常は縮合には重要ではない。大気圧より適度に高いか低い圧力も使用
できるが、第1工程は最も普通には周囲圧力で実施する。
第2工程の水素添加を触媒するのに使用できる第VIII族貴金属の例としては、
パラジウム及び白金が挙げられる。特に好ましい触媒はパラジウムである。第VI
II族貴金属を担持することができる物質の例としては、シリカ、アルミナ、アル
ミナシリカ、炭素、チタニアなどが挙げられる。
第VIII族金属触媒の濃度は、その触媒の活性及び/または選択性、触媒の表面
積、水素添加条件、操作方法などのような多数の要因によってかなり変化し得る
。例えば、高温高圧において水素雰囲気中で粒状形態の触媒の1種またはそれ以
上の固定層上またはその中を1,5−ビス(4′−置換アリール)ペンタ−1,
4−ジエン−
3−オンの溶液が流れる細流ベッド(tricklebed)水素添加系を使用する場合に
は、反応体を基準とする触媒の濃度は正確には測定できない。
温度及び圧力の水素添加条件は、例えば、触媒濃度に関して前に言及した要因
によって広範囲に変化し得る。さらに、温度と圧力はある程度は相互依存性であ
るので、一方を増加させれば他方は低くできる。一般に、水素添加条件は約20〜
300 ℃及び約10〜500psig(水素)の範囲内である。好ましい範囲は約20〜200 ℃
及び約15〜25Opsig(水素)である。代表的には、水素添加は1,5−ビス(4′
−置換アリール)ペンタ−1,4−ジエン−3−オンに対して不活性な有機溶媒
の存在下で実施する。
使用できる溶媒の例としては、炭化水素、例えば、炭素数約6〜12の脂肪族、
脂環式及び芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、
プソイドクメン、ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタ
ンなど;カルボン酸エステル、例えば、炭素数約6以下のカルボン酸アルキル、
例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなど;炭素数約6以下のアルカノ
ール、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
溶媒中のペンタジエノン反応体の濃度は重要ではなく、使用する溶媒中における
反応体の溶解度及び経済的理由のみに限定される。ほとんどの反応体に好ましい
不活性有機溶媒はトルエン、キシレン、2−プロパノール及びメタノールである
。
オレフィン水素添加はほとんどの場合、簡単な方法であることは一般に認めら
れている。しかし、本発明者らは、1,5−ビス−(4′−アルコキシカルボニ
ルフェニル)−1,4−ペンタジエン−3−オンの1,5−ビス−(4′−アル
コキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンへの水素添加はごくわずかであっ
たことを見出
した。たいていの場合、副生成物として1,5−ビス(4′−アルコキシカルボ
ニルフェニル)−3−ペンタノールが得られる。不飽和ケトンの水素添加旧に対
する選択性の減少は従来から認められているが、本発明においては重大な結果を
もたらす。
いくつかの許容され得る実験技術、例えば、クロマトグラフィーを用いれば1
,5−ビス−(4′−カルボメトキシフェニル)−3−ペンタノンと1,5−ビ
ス−(4′−カルボメトキシフェニル)−3−ペンタノールとは分離可能である
が、工業レベルの製造をより行い易い方法、特に結晶化では、目的のケトンがか
なり減少する。
代表的には、かなりの量の1,5−ビス−(4′−アルコキシカルボニルフェ
ニル)−3−ペンタノールが存在する場合には、1,5−ビス−(4′−アルコ
キシカルボニルフェニル)−3−ペンタノン及び1,5−ビス−(4′−アルコ
キシカルボニルフェニル)−3−ペンタノールは約3:1の比で同時結晶化する
。
本発明プロセスをさらに複雑にするのは、少量の1,5−ビス−(4′−アル
コキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノールでさえ、次の重合に重大な結果
をもたらすという観察である。1,5−ビス−(4′−アルコキシカルボニルフ
ェニル)−3−ペンタノールは、ポリエステルの形成に関しては三官能価である
ので、二酸またはジエステルの総モル数に基づき約0.5 モル%より多量に存在す
る場合には、ポリエステルを枝分かれや架橋させるように作用し、その結果、許
容され得ない製品特性を生じる。
相当の収量のロス及び困難な操作が許容され得ない場合には、これには、この
方法に要求される純粋な1,5−ビス−(4′−アルコキシカルボニルフェニル
)−3−ペンタノンを得るための2つのアプローチのうち1つが必要である。1
,5−ビス−(4′−アル
コキシカルボニルフェニル)−1,4−ペンタジエン−3−オンの1,5−ビス
ー(4′−アルコキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンへの水素添加を極
めて高い選択性で進行させなければならない(好ましい方法である)か、副生成
物1,5−ビス−(4′−アルコキシカルボニル)−3−ペンタノールを1,5
−ビス−(4′−アルコキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンに再酸化し
なければならない。本発明者らは、いずれのアプローチも実施可能であることを
証明した。
この好ましいアプローチを成功させるかぎは、触媒の慎重な選択である。これ
は、見掛けよりもはるかにむずかしい。水添触媒はほとんど全てが目的とする1
,5−ビス−(4′−アルコキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンを生成
すると期待されたが、目的生成物に対して適当な高い選択性がある触媒を決定す
るには広範囲にわたる努力が必要であった。本発明者らは、ほとんど 100%の選
択率で目的とする転化に有効である少なくとも2つの触媒の組み合わせを見出し
た。これらは、わずかに高い温度及び大気圧において作用する炭素上5%パラジ
ウムと、高温高圧で作用する、キノリンが添加された、アルミナ上 0.5%白金で
あった。
反応媒体としてはさまざまな種類の溶媒が有用であるが、最も好ましい溶媒は
比較的低分子量のアルコール、エステル、ケトン、カルボン酸または芳香族炭化
水素である。これは、出発原料が、特に高温においてはかなり溶解するためであ
る。
この本発明方法の部分に関する温度及び圧力は、触媒及び溶媒の選択に非常に
左右されるであろうから、それを具体的に述べるのは困難なことがわかるであろ
う。例えば、トルエン中で175℃及び25Opsig において働く添加白金触媒は、50
℃及び15〜30psi において作用する炭素上パラジウム触媒と同様に作用するだろ
う。
しかしながら、目的とする1,5−ビス−(4′−アルコキシカルボニルフェ
ニル)−3−ペンタノンに対して高い選択性を有すると定義される満足すべき方
法は一般に、かなりの量の不所望のアルコールを生成する方法よりも低温低圧で
進行することが期待されるであろう。
副生成物として1,5−ビス−(4′−アルコキシアルボニルフェニル)−3
−ペンタノールを得る方法はまた、追加酸化プロトコールと共に使用することも
できるが、本発明方法全体に1工程を追加することになるので、好ましいアプロ
ーチではないのは明白である。アルコールの酸化方法は多数あり、当業者にはよ
く知られており、有機化学のよいテキストには全て記載されている。適当な試薬
としては、酢酸中次亜塩素酸ナトリウム及び硫酸水溶液中クロム酸が挙げられる
。
この再酸化アプローチを実証するために、我々は、オッペンハウアー(Oppenh
auer)酸化を使用する。これは、1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフ
ェニル)−3−ペンタノールと1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェ
ニル)−3−ペンタノンとの混合物を還流トルエン中触媒量のアルミニウムイソ
プロポキシドの存在下でシクロヘキサノンで処理することを伴う。
この処理では、1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−
ペンタノールと1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペ
ンタノンとの約1:1混合物は、目的とする1,5−ビス−(4′−メトキシカ
ルボニル)−3−ペンタノンが90%よりもかなり多い混合物に転化される。
1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンの共
重合は、ポリエステルの商業生産に使用するのと同様な条件を用いて行う。最初
は、比較的緩和な条件での酸及びグリコ
ールとの共重合反応に1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−
3−ペンタノンを微少量(ジエステルの総量に基づき<5モル%)で添加する。
これらの反応条件では、同一条件下で製造された未改質ポリ(エチレンテレフタ
レート)と同様な性質を有するポリマーが生成される。
本発明において有用なグリコールは、エチレングリコール;1,2−プロパン
ジオール;1,3−プロパンジオール;2,4−ジメチル−2−エチルヘキシレ
ン−1,3−ジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;2−エ
チル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−イソブチル−
1,3−プロパンジオール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール
;1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメ
チル−1,3−ペンタンジオール;チオジエタノール;1,2−シクロヘキサン
ジメタノール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;1,4−シクロヘキサン
ジメタノール;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール
;p−キシレンジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール;テ
トラエチレングリコール;ならびにペンタエチレン、ヘキサエチレン、ヘプタエ
チレン、オクタエチレン、ノナエチレン及びデカエチレングリコールまたはそれ
らの組み合わせからなる群から選ばれたジオールを含む。
本発明のポリエステルはさらに、蓚酸;マロン酸;ジメチルマロン酸;コハク
酸;グルタル酸;アジピン酸;トリメチルアジピン酸;ピメリン酸;2,2−ジ
メチルグルタル酸;アゼライン酸;セバシン酸;フマル酸;マレイン酸;イタコ
ン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボ
ン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボ
ン酸;フタル酸;テレフタル酸;イソフタル酸;2,5−ノルボルナンジカルボ
ン酸;1,4−ナフタル酸;ジフェン酸;4,4′−オキシ二安息香酸;ジグリ
コール酸;チオジプロピオン酸;4,4′−スルホニル二安息香酸;4,4′−
ビフェニルジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸またはそれらのエ
ステルならびにそれらの組み合わせからなる群から選ばれたジカルボン酸残基を
含む。
本発明のポリエステルは、シート、フィルム、繊維及び成形品の製造に有用で
ある。
比較的過酷な条件(比較的高い温度及び他の触媒系)では比較的高分子量の高
品質コポリマー(インヘレント粘度=0.60)が得られることを後に見出した。後
に、1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンを
5%よりはるかに高いレベルで共重合することに成功した。これらの反応の成功
は一般に、1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタ
ノンの純度に左右される。高純度の材料を使用する場合には、ほとんど直鎖のポ
リエステルが生成される。コポリエステル中の1,5−ビス−(4′−メトキシ
カルボニルフェニル)−3−ペンタノンの存在は、固相化(solid stating)に有
害な作用を持たない。従って、コポリエステルの分子量は、所望ならば、溶融相
において可能な分子量以上に増大させることができる。
1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンは、
テレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールの他に、1,4−ビス(ヒドロキ
シメチル)シクロヘキサン及びジエチレングリコールのようなモノマーと共重合
させることができる。
1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンから
製造できるコポリエステルの光崩壊は次のように論じ
られる:
G.M.Harlan及びA.Nicholas,Proceedings of Symposium on Degradable Pl
astics,The Society of the Plastics Industry,Inc.,Washington,D.C.,J
une 10,1987,14頁及びJ.E.Potts,“Plastics,Environmentally Degradabl
e,”for the Encyclopedia of Chemical Technology,John Wiley and Sons,Se
ction C-5,Oct.13,1982 に開示されたようにして、ケトンカルボニル基を低
レベル(0.1〜5%)でポリマー主鎖に取り入れることによって、ポリエチレンを
光崩壊性した。
エチレン−一酸化炭素(ECO)コポリマーを製造するための商業的方法は整って
いる。この材料は市販されている。これらの光崩壊性材料は、光崩壊性が望まし
い用途、例えば、6−リングバインダー及びゴミ袋にすでに使用されている。日
光の紫外線はケトン基の近くのポリマー鎖を開裂するので、これらのポリマーは
光崩壊性である。
本発明において、低レベル(0.5〜10モル%)の1,5−ビス−(4′−メトキ
シカルボニルフェニル)−3−ペンタノンから製造されるコポリエステルもまた
、光崩壊性であることがわかっている。紫外線への暴露時に、1,5−ビス−(
4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンから製造されたコポリエ
ステルは、同様なECO コポリマーほど速くはその構造保全性を失わなかった。こ
れらのコポリエステルから製造された非晶質フィルムはWeather-Ometer(AATCC-1
6-E)及び日光の両者で光崩壊した(その構造保全性を失った)。ウェザオメータ
ー(Weather-Ometer)(AATCC-16-E)における条件は次の通りであった:キセノン
アークランプ、63℃及び相対湿度30%。フィルムが光の周囲を軌道を描いて回る
時に光がフィルムの一側を直接照らすように、フィルムを取り付けた。崩壊は、
照射されたフィルムがしわにった時に観察される脆性及び分子量分布(Z平均分
子量と数平均分子量との比)の大きな増加によって立証された。未改質ポリ(エ
チレン)テレフタレートの分子量分布は、Weather-Ometer中で 400時間の照射時
に増加しない。テネシーにおける約3ヶ月(2月〜4月)の日光への暴露は、63
℃及び相対湿度30%においてキセノンアークWeather-Ometerでの約 400時間の暴
露に相当した。
その後の実験は、配向(又は延伸)フィルムについて行った。本発明のポリエ
ステルは、そのガラス転移温度より高温においてフィルムを伸張することによっ
て、一方向または両方向に配向(又は延伸)できる。最適延伸温度はガラス転移
温度より10〜40℃高い。これらの配向フィルムはまた、紫外線への暴露時に崩壊
した。これは、伸びと引張強さの低下によって立証された。ポリエステルから得
られた多くの製品は二次加工プロセスの間に配向されるので、これは重要である
。
本発明をさらに、その好ましい実施態様の以下の例によって説明することがで
きる。ただし、これらの例は、単に説明のために記載するのであって、特に断ら
ない限り、本発明の範囲を限定するために記載するのではないことを理解された
い。出発原料は特に断らない限り、市販されている。特に断らない限り、全ての
百分率は重量に基づく。略語
:
mL=ミリリットル;L=リットル:g=グラム;hr=時間;s=一重線;d=
二重線;Hz=ヘルツ;MHz =メガヘルツ;HNMR=水素に関する核磁気共鳴分光法
;IR=赤外線スペクトル法;psi −ポンド/平方インチ;mm=ミリメーター;pp
m =百万分率;mPa =メガパスカル。実施例 例1
−4−ホルミル安息香酸メチルとアセトンとの縮合
この操作は、4−ホルミル安息香酸メチルとアセトンとの、代表的な塩基触媒
縮合を説明する。これは一般的に使用される操作である。
機械的攪拌機を用いて不活性雰囲気下で4−ホルミル安息香酸メチル0.55モル
(90.3g)の溶液を調製した。(反応の間中不活性雰囲気を保持して、4−ホル
ミル安息香酸メチルの酸化を最小にする。)この溶液に、アセトン0.25モル(14
.5g、18.3mL)を添加した。冷水道水を満たした蒸発皿のみから成る冷却浴を反
応容器の下に置き、添加漏斗を用いてNaOH2.5g(0.0625モル)の1:1メタノ
ール/水25mL中溶液を徐々に添加した。添加速度は反応温度によって決まる。反
応温度は35℃未満に保持する。
反応が開始した時、溶液は最初は黄色になり、次に、淡黄色の沈殿が形成され
た。それは、最後には粘稠なスラリーになった。
2.5 時間後、反応混合物を濾過し、洗液が濃くなくなるまでメタノールで洗浄
した。生成物をフィルター上で風乾して、1,5−ビス−(4′−メトキシ−カ
ルボニルフェニル)−1,4−ペンタジエン−3−オン82.9g(収率95%)を生
成した。
生成物は酢酸またはキシレンから容易に再結晶できた。HNMR(CDCl3)270 MHz
δ=3.93(s,6H),7.15(d,2H,J=16 Hz),7.68(d,4H,J=10 Hz),7.76(d,
2H,J=16 Hz),8.09(d,4H,J=10Hz).IR(KBr):1720,1653,1284cm-1.元素
分析:計算値(C21H12O5):C,71.99;H,5.18.実測値:C,71.98;H,5.15.
m.p.221〜223 ℃.例2
−1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノン の合成
1Lの3つ口フラスコ中で、1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニル−フ
ェニル)−1,4−ペンタジエン−3−オン71.7g、炭素上5%Pd 3.8g及び2
−プロパノール 650mLの不均質混合物を調製した。混合物を機械的に攪拌し、50
℃に加熱した。系を水素で洗浄した後、水素を連続的に約20psi で供給した。水
素の取り込みは最初は非常に速いが、徐々に遅くなった。水素の取り込みがほと
んどなくなった時、水素供給源をはずした。容器を75〜80℃に加熱し、窒素で充
分にパージした。熱い生成物を、濾過助剤のパッドを含む蒸気ジャケット付きブ
フナー漏斗を通して濾過した。熱い濾液は直ちに生成物を沈殿し始めた。
濾液を室温に冷却させた後、−15℃の冷凍庫に入れて、生成物の沈殿を完了さ
せた。生成物を濾過し、乾燥させて、1,5−ビス−(メトキシカルボニルフェ
ニル)−3−ペンタノン58.21g(収率80%)を生成した。容量を約 200mLに減
少させ且つ冷却することによって、さらに生成物が1.59g得られ、全収率は82%
になった。HNMR(CDCl3)270 MHz δ=2.72(t,4H),2.93(t,4H),3.91(s,6H)
,7.21(d,4H),7.94(d,2H).FDMS(M+/e):354.元素分析:計算値(C21H16
O5):C,71.17;H,6.26.実測値:C,71.27; H,6.33.m.p.105〜108 ℃.例3
この例は、別の触媒が有用であることを示す。水素添加オートクレーブ中で、
1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−1,4−ペンタジエン
−3−オン10.0g、アルミナ上 0.5%Pt触媒 1.0g、キノリン 0.2mL及びトルエ
ン 100mLの不均質混合物を調製した。オートクレーブを水素で25psi まで加圧し
た後、175 ℃に加熱した。所望の温度に達した時、圧力を水素で250psiに調製し
た。これらの条件を5時間保持し、反応を室温に冷却させ、生成物
を濾過した。固体生成物はガスクロマトグラフィー分析によって純粋な1,5−
ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンであることが測
定された。例4
この例は、所望の1,5−ビス−(メトキシカルボニルフェニル)−3−ペン
タノンが不所望の過水素添加生成物、1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニ
ルフェニル)−3−ペンタノールとの混合物として得られる事例を示す。水素添
加オートクレーブ中で1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−
1,4−ペンタジエン−3−オン10.0g、炭素上5%ロジウム触媒 1.0g及びシ
クロヘキサン 100mLの不均質混合物を調製した。オートクレーブを水素で25psi
まで加圧した後、175 ℃に加熱した。所望の温度に達した時、圧力を水素で250p
siに調製した。これらの条件を5時間保持し、反応を室温に冷却させ、生成物を
濾過した。固体生成物組成物はガスクロマトグラフィー分析によって、1,5−
ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノン75%及び1,5
−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノール19%である
ことが測定された。例5
この例は、水素添加においてしばしば得られる、所望の1,5−ビス−(4′
−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンと不所望の過水素添加生成物
、1,5−ビス−(メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノールとの混合
物を、所望の1,5−ビス−(メトキシ−カルボニルフェニル)−3−ペンタノ
ンを高濃度で含む混合物に転化するために酸化プロトコールの一例を示す。アル
ミニウムイソプロポキシド 2.0gのトルエン 100mL中溶液を調製し、濾過して、
残留不溶解物質を全て除去した。この溶液に、1,5
−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノンと1,5−ビ
ス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノールとの1:1混合
物20g及びシクロヘキサノン25mLを添加した。反応を一晩還流しながら加熱した
。混合物をガスクロマトグラフィー分析によって分析し、1,5−ビス−(メト
キシカルボニルフェニル)−3−ペンタノン93%及び1,5−ビス−(メトキシ
カルボニルフェニル)−3−ペンタノール7%を含むことが測定された。例6
−1,5−ビス−(メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノン、テレ フタル酸ジメチル及びエチレングリコールの共重合
テレフタル酸ジメチル(0.475モル、92.2g)、1,5−ビス−(4′−メトキ
シカルボニルフェニル)−3−ペンタノン(0.025モル、8.85g)、エチレングリ
コール(1.00モル、62g)、二酢酸マンガン(マンガン55ppm)、二酢酸コバルト(
コバルト80ppm)及び三酸化アンチモン(アンチモン220ppm)をフラスコ中で合し
、窒素下で200 ℃において1時間、210 ℃において1.25時間及び 220℃において
1時間攪拌した。この時間内に、反応から理論量のメタノールが蒸留された。次
いで、温度を 270℃に上昇させた。10分後、真空をゆっくり適用した。温度は、
0.05mmHgの真空において1.67時間、270 ℃に保持した。淡緑色の結晶性ポリマー
が得られた。インヘレント粘度=0.60[フェノール/テトラクロロエタン(60:
40)中0.5重量%溶液]。核磁気共鳴分光法によって、ポリエステルがケトン含
有モノマーからの反復単位を5モル%含むことがわかる。Tg=76.0℃;Tm=245
℃。例7
−例1からのコポリエステルの固相化
例6に記載したコポリエステルの粒子(約3mm)を 207℃に加熱し、8時間窒
素を連続的にフラッシュした。インヘレント粘度は0.
60から0.88に増加した。このことは分子量がかなり増加したことを示す。ゲル透
過クロマトグラフィーによって、コポリエステルはこの方法の間、ほとんど直鎖
のままであったことがわかった。例8
−コポリエステルの非晶質フィルムの風化
低レベルの1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペン
タノンで改質されたポリ(エチレン)テレフタレートの非晶質フィルム(150〜20
0 ミクロン)を調製し、キセノンアークWeather-Ometer(AATCC-16-E)中で 400時
間風化させた。以下の表は、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定されたZ
−平均分子量と数平均分子量の比の変化を示す。約5.0 より高い比は、ほとんど
直鎖でないポリエステルを示す。
例9−コポリエステルの配向フィルムの風化
例7に記載したのと同一組成のコポリエステル(インヘレント粘度=0.88)を
、厚さ 500ミクロンのフィルムに押出した。このフィルムを95℃において配向し
(4×4)、得られた透明なフィルムは厚さが約40ミクロンであった。この配向
フィルムをキセノンアークWeather-Ometer(AATCC-16-E)の 400時間の輻射に暴露
した。この時間内に、伸びは約40%(84%から53%まで)減少し、引張り強さは
約50%(223MPaから 121MPa まで)低下した。ポリ(エチレン)テレフタレート
の伸び及び引張り強さは、Weather-Ometer中に置かれ且つ輻射から保護された場
合のケトン含有コポリエステルと同様に
これらの条件下では基本的に風化に影響を受けない。例10
−1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニルフェニル)−3−ペンタノン 、テレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールの共重合
テレフタン酸ジメチル(72.8g)、1,5−ビス−(4′−メトキシカルボニ
ルフェニル)−3−ペンタノン(44.3g)、エチレングリコール(52g)、二酢
酸マンガン(マンガン55ppm)、二酢酸コバルト(コバルト80ppm)及び三酸化アンチ
モン(アンチモン220ppm)をフラスコ中で合し、N2下で 200℃において1時間
、210 ℃において1.25時間及び 220℃において1時間攪拌した。温度を 270℃〜
275 ℃に1.67時間上昇させ、真空を0.10mmHgまで急速に減少させた。淡緑色の非
晶質ポリマーが得られた。インヘレント粘度は、フェノール/テトラクロロエタ
ンの60:40溶液中で 0.5重量%で測定した時に0.74であった。Tg=66℃。1HNMR
はケトン含有モノマーが28モル%であることを示す。
本発明を、特にその好ましい実施態様に関して詳述したが、本発明の精神及び
範囲内で変更及び修正が可能なことを理解されたい。さらに、前記の全ての特許
、特許出願(公告または未公告、外国または国内)、参考文献または他の刊行物
は、参照することによって、本発明の実施に関連した全ての開示を本明細書中に
取り入れる。