JP5080096B2 - 共重合芳香族ポリエステル組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の共重合芳香族ポリエステルは、エチレングリコールをグリコール成分として用いることから、副生物としてジエチレングリコール成分が生成されやすい。このことは、たとえばポリエチレンテルフタレートの合成反応などでも知られており、本発明における反応においても同様にジエチレングリコール成分が副生するが、このジエチレングリコール成分は、本発明の効果の点から、共重合芳香族ポリエステルの重量を基準として、2重量%以下であることが好ましい。なお、下限は特に制限されないが、通常は0.2%程度である。ジエチレングリコール成分の割合を上限以下にすることで、ジエチレングリコールがポリマー骨格に含まれることによる機械的特性の低下や耐熱性の低下を小さくすることができる。なお、このようなジエチレングリコール成分は、特許文献1〜4に示されるような6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸のエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるのではなく、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸とエチレングリコールとをエステル化反応させることで少なくすることができる。なお、ジエチレングリコールの含有量は、核磁気共鳴装置によって測定する事ができる。
本発明の共重合芳香族ポリエステルからなる成形品は、本発明の共重合芳香族ポリエステルを溶融紡糸することで繊維に、溶融製膜することでフィルムやシートに、そして射出成形することでボトルや容器などとして成形することができる。特に、本発明の共重合芳香族ポリエステルをフィルムとする場合、前述の通り、カリウムあるいはナトリウム化合物を含有することにより、単に樹脂の生産性に優れるだけでなく、溶融電気抵抗が低いことによって製膜するときのピンニング性にも優れることから、製膜性に優れた、例えば厚み斑のない均一なフィルムの製造に貢献することができる。
しかも、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、前述のとおり、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合していることから、低い温度膨張係数と湿度膨張係数を有する優れた寸法安定性なども具備している。
つぎに、本発明の共重合芳香族ポリエステルの製造方法について詳述する。
まず、第一反応工程として、芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体(ただし、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸およびそのエステル形成性誘導体は除く。)と、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールとを、エステル化反応もしくはエステル交換反応させる。このとき、重要なことは、前述の共重合芳香族ポリエステルで説明したとおり、全酸成分中の6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合を5モル%以上50モル%未満とすることと、カリウム化合物およびナトリウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を、得られる共重合芳香族ポリエステルの重量を基準として、金属元素量で20〜200ppmの範囲で存在させておくことである。なお、上述のエステル形成性誘導体とは、例えば炭素数1〜3の低級アルキルエステルが好ましく挙げられ、特にジメチルエステルやジエチルエステルなどが好ましく挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体(ただし、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸およびそのエステル形成性誘導体は除く。)としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、1,4−フェニレンジオキシジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体、例えばジメチルエステルやジエチルエステルなどが挙げられ、これらの中でもより機械的特性などを高度に維持しやすい観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸酸およびそれらのエステル形成性誘導体が好ましく、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体が好ましい。
このようにして第一反応工程によって得られた反応性生物は、さらにそれらを重縮合反応させる第二反応工程に導かれ、O−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定したときの固有粘度が0.4〜1.0の共重合芳香族ポリエステルとされる。もちろん、必要に応じて、さらに固相重合処理を行っても良い。
これらの触媒は単独でも、あるいは併用してもよい。かかる触媒量は、全酸成分のモル数に対して、0.001〜0.5モル%、さらには0.005〜0.2モル%が好ましい。
得られたポリエステルの固有粘度はO−クロロフェノール/テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いて、35℃の雰囲気下で測定し求めた。
(2)ガラス転移点および融点
得られたポリエステルのガラス転移点、融点はDSC(TA Instrumennts製、商品名:DSC2020)により昇温速度10℃/minで測定した。
(3)酸成分の共重合組成の分析
得られたポリエステルの試料50mgをp−クロロフェノール:重テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、400M 13C−NMR(日立電子製、JEOL A600)にて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を測定した。
(4)含有カリウム、ナトリウム元素量
含有アルカリ金属元素量については、得られたポリエステルの試料を灰化後、0.5N塩酸に溶解して、原子吸光分析装置(HITACHI製 Z−2300)にて測定した。
(5)含有チタン、リン元素量
得られたポリエステルの試料を溶融成型したのち、蛍光X線(リガク社製 ZSX100e)を用いて測定した。得られた元素量は、樹脂の重量を基準とした値として示す。
(6)溶融電気抵抗
305℃に溶融保持した樹脂中に電極を1cmの間隔をおいて投入し、電極間に直流1000Vの電圧をかけて、このときの電気抵抗値を計測した。
なお、電気抵抗値は、以下の式から算出した。
電気抵抗値(MΩ・cm)=V×S/(I×D)
ここで、Vは印加電圧(V)、Sは電極の面積(cm2)、Iは測定電流(A)、Dは電極間距離(cm)である。
(7)生産性
容積300mlの三ツ口フラスコに攪拌機を取り付け、ウイグリュー式精留塔およびコンデンサを設置し、マントルヒーターにて加熱して、メタノール、水、エチレングリコールなどを留去させながらエステル化またはエステル交換反応を行い、留出が始まってから反応液が透明になるまでの所要時間を測定した。
(8)DEG分析
ヒドラジンにより樹脂を加水分解し、遊離したジエチレングリコールをガスクロマトグラフィー(Hewlett Packard社製6990)にて分析した。
<ベースモノマー(種オリゴマー)の合成>
精留塔およびコンデンサ付き300ミリリットル容器に、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル122g、エチレングリコール62g、テトラ−n−ブチルチタネート0.025gを入れ加温し、メタノールを留出させながら250℃まで昇温し、ポリエチレンナフタレートのモノマーを合成した。このときの留出液は32gであった。
先のモノマーを冷却後細かく裁断して76gを用意し、モノマー合成と同様の反応容器に入れ、続いてカリウム化合物を含有する6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸(カリウム元素量で300ppm)を60.3g、エチレングリコール37.2gを加えたのち、前述の(7)の生産性の評価方法で示した方法に沿って加温しつつ流動性が出てきたところから攪拌も開始し、エステル化反応により水および少量のエチレングリコールを留出させた。フラスコ内は白濁状態が続いていたが、内温250℃を超える時点で反応液は急激に透明になった。引き続き255℃まで昇温し反応終了とした。所要時間は昇温に30分、留出が始まってから3時間15分を要した。
実施例1の共重合ポリマーの合成において、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸として精製することでカリウム元素濃度を50ppm以下まで下げたものに変えた他は、実施例1と同様に反応を進めたが、3時間経ても反応は進行せず水を留出させることが出来なかった。このため、テトラ−n−ブチルチタネートをチタン元素として、最初に加えた6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の30ミリモル%相当量を加えて反応を再開し、最終的に5時間15分後に反応を完結させた。続いて実施例1に沿って重縮合反応を行い、最終的に20Paにて反応を終了させ、固有粘度0.68のポリマーを得た。得られたポリマーは、樹脂の重量を基準として、カリウム元素の濃度が10ppm、溶融電気抵抗値は58MΩcmと実施例1に比べ抵抗値の高いポリマーであった。
得られたポリマーの特性を表1に示す。
実施例1のベースモノマーの合成に代えて、市販の試薬であるビスヒドロキシエチレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレートモノマーに相当)を63.5g用意し、これにテレフタル酸ジメチル24.3g、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸(カリウム元素量で300ppm)50.3gを酸成分として加え、更にエチレングリコール46.5gを添加して、実施例1の共重合ポリマーの合成の前段に記した合成方法によりモノマーを合成した。このときの反応時間は250℃を超えたあたりで反応液が透明になるまで4時間を要し、留出液は25gであった。この液にテトラ−n−ブチルチタネートを全酸成分のモル数に対して、15ミリモル%となるように加え255℃にて反応を終了させた。
続いて冷却後取り出した共重合モノマーを裁断して、このうち120gを実施例1と同様に重縮合反応用フラスコに入れ反応に供した。重合所要時間は60分、溶融電気抵抗値は25MΩcmと良好であった。得られたポリマーの特性を表1に示す。
実施例1と同様な操作を繰り返して、テトラ−n−ブチルチタネートを添加する前の反応生成物、すなわち6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分と2.6ナフタレンジカルボン酸成分と残留エチレングリコールとを含有するモノマー混合物を作成し、そのモノマー混合物77.9gに、さらに2.6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル24.4g、カリウム化合物を含有する6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸(カリウム元素量が300ppm)40.2gおよびエチレングリコール37.2gを加えたものを、前述の(7)の生産性の評価方法で示した方法に沿って反応を行なった。反応時間は3時間40分であった。その後テトラ−n−ブチルチタネートを全酸成分の10ミリモル%相当量を加えこのモノマーを系外に取り出し、冷却後細かく裁断し120gを実施例1と同様の方法で重縮合反応を行いIV0.67のポリマーを得た。重合所要時間は56分、溶融電気抵抗値は11MΩcmと良好であった。得られたポリマーの特性を表1に示す。
比較例1において、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を添加する際に、酢酸ナトリム(三水塩)0.100gをさらに加えた他は比較例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリマーの溶融電気抵抗は9MΩcmと良好であった。得られたポリマーの特性を表1に示す。
1リットルの圧力容器に2.6ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル152.5g、カリウム化合物の含有量をカリウム元素量で50ppm以下まで精製した6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸150.8g、エチレングリコール170.5gにテトラ−n−ブチルチタネート0.153g(全酸成分に対し45mmol%相当)を加えて窒素(N2)にて反応圧力を0.25MPaにあげ、内圧を同じ圧力にコントロールしつつ加温し、メタノールと水を留去させ、内温250℃にて、留出水が出なくなるまで4時間かけたのち反応を終了させた。このモノマーを実施例1と同様に重縮合反応に供しIV0.67のポリマーを得た。このポリマーの溶融電気抵抗を測定したところ、78MΩcmでありかつジエチレングリコール濃度も2.1重量%と高いものであった。
Claims (5)
- 6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分以外の芳香族ジカルボン酸成分が、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分および2,7−ナフタレンジカルボン酸成分からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル組成物。
- DSCにおける融点が200〜260℃の範囲にある請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル組成物。
- ジエチレングリコール成分の含有量が、共重合芳香族ポリエステルの重量を基準として、0.2から2重量%の範囲である請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル組成物。
- 芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体(ただし、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸およびそのエステル形成性誘導体は除く。)、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールとを、エステル化反応およびエステル交換反応からなる群より選ばれる少なくとも一種の反応を行なう第一反応工程と、第一反応工程によって得られたポリエステルの前駆体をさらに重縮合反応させる第二反応工程とからなる共重合芳香族ポリエステル組成物の製造方法であって、
全酸成分中の6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合が5モル%以上50モル%未満であること、そして、
第一反応工程が、カリウム化合物およびナトリウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を、得られる共重合芳香族ポリエステルの重量を基準として、金属元素量で20〜200ppmの範囲で存在下で行なうことを特徴とする共重合芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
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