【発明の詳細な説明】
フェノールエーテルのカルボキシル化方法
本発明は、フェノールエーテルのカルボキシル化方法に関する。
より好ましくは本発明は、グアヤコール(即ち2−メトキシフェノール)及び
グアトール(即ち2−エトキシフェノール)のカルボキシル化方法に関する。
工業的用途を有するフェノールまたはフェノールエーテルのカルボキシル化方
法においては二酸化炭素が使用されている。
カルボキシル化は、コルベーシュミット反応またはMarasse反応に従っ
て行われる。
前者の場合には、塩の形態、一般にはナトリウム塩またはカリウム塩の形態の
フェノールまたはフェノールエーテルを圧力下で二酸化炭素と反応させる。この
種の反応の代表例は欧州特許出願公開第327,221号に記載されており、該
明細書は、CO2圧力下、250℃でグアヤコール酸ナトリウムをカルボキシル
化する方法を記載している。2−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸を生成させ
たい場合、即ちヒドロキシル基に対してオルト位でカルボキシル化を生じさせた
い場合にはこの方法
は好適である。
また、Marasse条件下で反応を惹起することも提案されている。即ち、
O.Baineらは〔J.Org.Chem.19,pp.510(1954)
〕、過剰量の炭酸カリウムの存在下、200℃でグアヤコールをCO2でカルボ
キシル化することによって2−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸を生成させる
方法を記載している。しかしながら、収率が47%しかなく、満足すべき値であ
るとは言い難い。
本発明の目的は、上記のような欠点を解消し得るフェノールエーテルのパラ位
カルボキシル化方法を提供することである。
塩基性の極性非プロトン性有機溶媒中、150℃以下の温度で塩の形態のフェ
ノールエーテルを二酸化炭素と反応させることから成るフェノールエーテルのカ
ルボキシル化方法が知見された。この方法が本発明の主題を構成する。
「フェノールエーテル」なる表現は、芳香核がヒドロキシル基を含み、OH基
に対してパラ位に水素原子が存在し、芳香核に直結した水素原子がエーテル基に
よって置換されている芳香族化合物を意味する。
本発明の以下の記載中、「芳香族」なる用語は、文献、特に
Jerry March,Advanced Organic Chemist
ry,第4版、John Wiley and Sons,1992,pp.4
0頁以降に定義されているような従来の芳香族性の概念を意味する。
より詳細には、本発明の主題は、一般式(I):
〔式中、
Aは、単環または多環の芳香族炭素環系の全部または一部を形成する環の残基
を示しており、系が少なくとも1つのOR′基を含んでおり、環残基は1つまた
は複数の置換基を有していてもよく、
Rは水素原子を示すか、1つまたは同じもしくは異なる複数の置換基を示し、
R′は、1〜24個の炭素原子を含む炭化水素基であって、直鎖状または分枝
状の飽和または不飽和の非環状脂肪族基を示すか、飽和または不飽和の脂環基ま
たは単環もしくは多環の芳
香族基を示すか、環状置換基を含む直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の脂
肪族基を示し、
nは3以下の整数を示す〕で示されるフェノールエーテルのカルボキシル化方
法である。
本文中では、R′−O−型のエーテル〔式中、R′は前記と同義〕を単に「エ
ーテル基」と呼ぶ。従って、R′は、飽和または不飽和の非環状脂肪族基または
脂環基または芳香族基、及び、環状置換基を含む飽和または不飽和の脂肪族基の
いずれをも包含する。
本発明方法で使用されるフェノールエーテルは一般式(I)〔式中、R′は、
直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の非環状脂肪族基を示す〕で示される。
R′はより好ましくは、1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する
直鎖状または分枝状アルキル基を示し、炭化水素鎖は任意に、ヘテロ原子(例え
ば酸素)、官能基(例えば−CO−)によって遮断されていてもよく及び/また
は置換基(例えばハロゲン)を有していてもよい。
直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の非環状脂肪族基は任意に環状置換基
を有し得る。環なる用語は、好ましくは、飽
和、不飽和または芳香族炭素環、好ましくは脂環式または芳香族の炭素環、特に
環に6個の炭素原子を含む脂環式炭素環またはベンゼン環を意味する。
非環状脂肪族基は、原子価結合、ヘテロ原子または官能基によって環に結合し
ていてもよく、それらの例は後述する。
環は任意に置換されていてもよく、環状置換基の例としては特に、式(Ia)
に関して詳細に定義するRのような置換基がある。
R′はまた、飽和環であるかまたは環に1個もしくは2個の不飽和を含み、一
般に3〜8個、好ましくは6個の炭素原子を環に有している炭素環基を示し得る
。この環はRのような置換基で置換されていてもよい。
また、R′は好ましくは、一般には少なくとも4個、好ましくは6個の炭素原
子を環に含む単環の芳香族炭素環基を示し得る。この環はRのような置換基で置
換されていてもよい。
本発明方法は、式中のR′が1〜4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状の
アルキル基またはフェニル基を示すような式(I)のフェノールエーテルに特に
好適である。
本発明によれば基R′の好適例としてメチル、エチル、プロ
ピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル
またはフェニルなどの基が挙げられる。
フェノールエーテルの一般式(I)中の、残基Aは、少なくとも4個、好まし
くは6個の炭素原子を有する単環の芳香族炭素環化合物残基を示すか、または、
少なくとも2個の芳香族炭素環から成り相互間にオルト縮合系またはオルトペリ
縮合系を形成している多環炭素環化合物残基を示すか、または、少なくとも一方
が芳香族である少なくとも2個の炭素環から成り相互間にオルト縮合系またはオ
ルトペリ縮合系を形成している多環炭素環化合物残基を示し得る。
残基Aは芳香核に1つまたは複数の置換基を含み得る。置換基Rの例を以下に
示すが、置換基Rはこれらの例に限定されない。所望の生成物の障害にならない
限りいかなる置換基が環に存在してもよい。
残基Aは特に複数のアルコキシ基を有し得るので、ポリアルコキシ化化合物を
本発明方法によってカルボキシル化することが可能である。
本発明方法は、式(Ia):
〔式中、
nは3以下、好ましくは0または1の数を示し、
基R′は、1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分
枝状のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、
イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルまたはフェニルなどの基を示し
、
1つまたは複数の基Rは、
水素原子を示すか、または
1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のア
ルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチ
ル、sec−ブチルまたはtert−ブチルなどの基、
1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のア
ルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキ
シ、イソブトキシ、sec
−ブトキシまたはtert−ブトキシなどの基、
ハロゲン原子、好ましくはフッ素、塩素または臭素などの原子、
トリフルオロメチル基
のような原子または基のいずれかを示し、
基R′及びRとベンゼン環の連続する2個の原子とが一緒に、任意にヘテロ原
子を含む5〜7個の原子を有する環を形成してもよい〕で示されるフェノールエ
ーテルに特に好適である。
nが1以上のとき、基R′及びRとベンゼン環の連続する2つの原子とは、2
〜4個の炭素原子を有するアルキレン、アルケニレンまたはアルケニリデン基に
よって互いに結合されて5〜7個の炭素原子を有する飽和、不飽和または芳香族
複素環を形成してもよい。1つまたは複数の炭素原子が別のヘテロ原子、好まし
くは酸素によって置換されてもよい。従って、基R′及びRはメチレンジオキシ
基またはエチレンジオキシ基を示し得る。
本発明方法は、式中のnが1であり、基R及びR′が双方とも同じかまたは異
なるアルコキシ基を示している式(Ia)のフェノールエーテルに特に好適であ
る。式中のnが0であり基
R′がアルコキシ基を示す式(Ia)のフェノールエーテルには更に好適である
。
式(I)で示される化合物の代表例としては特に、
−グアヤコール、3−メトキシフェノール、グアトール、3−エトキシフェノ
ール、2−イソプロポキシフェノール、3−イソプロポキシフェノール、2−メ
トキシ−5−メチルフェノール、2−メトキシ−6−メチルフェノール、2−メ
トキシ−6−tert−ブチルフェノール、3−クロロ−5−メトキシフェノー
ル、2,3−ジメトキシ−5−メチルフェノール、2−エトキシ−5−(1−プ
ロペニル)フェノール及び2−メトキシ−1−ナフトールなどのモノエーテル類
、
−2,3−ジメトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール及び3,5
−ジメトキシフェノールなどのジエーテル類、がある。
本発明方法が特に有利に使用できる化合物はグアヤコール及
フェノールエーテルは塩の形態で本発明方法に使用される。周期律表の(Ia
)族の金属元素の塩またはアンモニウム塩が好ましい。
元素の定義に関しては、Bulletin de la Societe C
himique de France,No.1(1966)に所収の元素の周
期律表を参照するとよい。
実用上及び経済上の見地からナトリウム塩またはカリウム塩を使用する。
本発明方法では、極性及び塩基性である特性を示す極性非プロトン性有機溶媒
を使用する。このような溶媒の存在は反応の構造選択性を改善し得る。
有機溶媒の選択はいくつかの必須要件に支配される。
有機溶媒の第一の特徴は、非プロトン性であり反応混合物中で安定でなければ
ならないことである。
非プロトン性溶媒とは、ルイス説で遊離すべきプロトンを有していない溶媒を
意味する。
反応混合物中で安定でない溶媒または反応条件下で反応し易い溶媒は本発明か
ら除外される。
本発明においては極性有機溶媒を使用する。
本発明によれば、15以上の誘電定数を有する有機溶媒を選択する。上限値に
関しては厳密な意味での制約は全く存在しな
い。高い誘電定数、好ましくは25〜75の範囲の誘電定数を有する有機溶媒を
使用するのが好ましい。
有機溶媒が上記誘電定数条件に適合するか否かを判断するためには、特に、文
献Techniques of Chemistry,II−Organic s
olvents−p.536以降、第3版(1970)に所収の表を参照すると
よい。
溶媒の選択を支配する別の条件は、溶媒が塩基性であるといういくつかの特性
に適合していなければならないことである。実際、溶媒は塩基性でなければなら
ない。溶媒がこの要件を満たしているか否かを判断するために、溶媒の「ドナー
数」を参照することによって溶媒の塩基性を評価する。20を上回る、好ましく
は25以上のドナー数を有する極性有機溶媒を選択する。上限値に関しては厳密
な意味での制約は全く存在しない。25〜75、好ましくは25〜50のドナー
数を有する有機溶媒が好ましく選択される。
使用される有機溶媒の塩基性に関する要件に関しては、略号DNで表されるド
ナー数が溶媒の求核性の指標となること、従って溶媒の二重線供与能力を示すこ
とを想い出すとよい。
Christian Reinhardt,〔Solven
ts and Solvent Effects in Organic Ch
emistry−VCH p.19(1988)〕の著作に「ドナー数」が定義
されており、その定義によれば、ドナー数は、ジクロロエタンの希釈溶液中の溶
媒と五塩化アンチモンとの相互作用のエンタルピー(キロカロリー/モル)の負
数(−ΔH)である。
本発明方法に使用できる上記の塩基性特性に適合する極性非プロトン性有機溶
媒の例としては特に、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジ
エチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド
のような直鎖状もしくは環状のカルボキサミド類、または1−メチル−2−ピロ
リジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホ
トリアミド(HMT)、テトラメチルウレアがある。
また、混合溶媒を使用してもよい。
上記溶媒のうちでも、直鎖状または環状のカルボキサミド類が好ましく使用さ
れる。
有機溶媒の使用量は、選択された有機溶媒の種類に従って決定される。
有機溶媒中の基質の濃度が好ましくは1〜50重量%、より好ましくは10〜
40重量%となるように有機溶媒の使用量を決定する。
本発明方法によれば、塩の形態のフェノールエーテルと二酸化炭素とを上記に
定義したような有機溶媒中で反応させる。
フェノールエーテルを直前に調製した塩の形態で使用してもよく、フェノール
エーテルと塩基とを反応させることによってin situで塩を調製してもよ
い。
従って、本発明方法で使用する塩基は無機塩基でも有機塩基でもよい。
好ましくは、強塩基、即ち、12を上回るpKbを有する塩基を選択する。p
Kbは、水性媒体中、25℃で測定した塩基の解離定数の余対数と定義される。
アルカリ金属塩のような無機塩基、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムな
どのアルカリ金属水酸化物が本発明方法に特に好適に使用される。
また、第四級水酸化アンモニウムを使用することも可能である。
好ましく使用される水酸化第四級アンモニウムの例としては、
同じまたは異なる複数のアルキル基が1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原
子を有する直鎖状または分枝状のアルキル鎖を示すような水酸化テトラアルキル
アンモニウムまたは水酸化トリアルキルベンジルアンモニウムがある。
水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムまたは水
酸化テトラブチルアンモニウムを選択するのが特に好ましい。
本発明によればまた、水酸化トリアルキルベンジルアンモニウム、特に水酸化
トリメチルベンジルアンモニウムを使用してもよい。
経済上の理由からは、すべての塩基のうちでも水酸化ナトリウムまたは水酸化
カリウムを選択するのが好ましい。
塩基性出発溶液の濃度は厳密に限定されない。使用されるアルカリ金属水酸化
物の溶液は一般に10〜50重量%の濃度を有している。
反応混合物に導入される塩基の量は、フェノールエーテルのヒドロキシル官能
基の塩を形成するために必要な量に基づく。
化合物がヒドロキシル基以外にも塩を形成し得る官能基を有する場合、全部の
塩形成性官能基を塩に転化するために必要な
量の塩基を導入する。
フェノールエーテルに対する量で表される塩基の量は一般に化学量論的量の9
0〜120%の範囲である。
好ましくは25℃〜100℃の範囲の温度でフェノールエーテルを塩基と反応
させることによってフェノールエーテルの塩を形成する。
二酸化炭素の導入に先立って、塩形成反応中に形成された水を、大気圧下もし
くは1mmHg〜大気圧の範囲の減圧下で蒸留させることによって除去するかま
たは乾燥することによって除去する。混合物中の水が完全に除去されてから二酸
化炭素を導入する。
二酸化炭素とフェノールエーテルとのモル比によって表される二酸化炭素の使
用量は、1〜100の範囲、より好ましくは1〜2の範囲である。
本発明方法は、150℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは12
0℃以下の温度で行うのが有利である。反応の選択性をいっそう向上させるため
には90℃〜110℃の反応温度を選択する。
一般には大気圧下で、撹拌状態に維持された反応混合物に二
酸化炭素を吹込むことによって反応させる。
また、大気圧〜約100バールの範囲の二酸化炭素の圧力下で反応させること
も可能である。1〜20バールの圧力が好ましい。
本発明の好ましい実施態様は、溶媒とフェノールエーテルと塩基とを導入し、
蒸留によって水を除去し、二酸化炭素を導入する段階から成る。
最終段階で、パラ−カルボキシル化フェノールエーテルを公知の方法で反応混
合物から回収する。
反応終了後、例えば塩酸、硫酸または硝酸などの無機酸の水溶液を添加するこ
とによってpHを5.0〜8.0に調整する。塩酸及び硫酸が好ましい。酸の濃
度は厳密に限定されない。酸の濃度は市販製品の濃度に対応するのが好ましく、
例えば、塩酸の場合には37重量%、硫酸の場合には92または96重量%であ
る。
未反応のフェノールエーテルは相分離させる。有機相と水相とを分けることに
よって除去する。
残留水溶液に上記のような酸性水溶液を添加することによってpH3以下、好
ましくはpH1〜2まで酸性化し、置換4−
ヒドロキシ安息香酸を沈殿させる。
固液分離を行う従来技術、好ましくは濾過によって、得られた酸を反応混合物
から回収する。
本発明方法によれば、芳香核に少なくとも1つのエーテル基を有する4−ヒド
ロキシ安息香酸が容易に得られる。この生成物は、カルボキシル官能基をアルデ
ヒド官能基に還元することによって対応する4−ヒドロキシベンズアルデヒドを
製造するための中間体として使用できる。
本発明によって得られた4−ヒドロキシ安息香酸を対応するアルデヒドに還元
するためには、特に欧州特許出願公開第0,539,274号に記載の方法を使
用し得る。この方法では、ルテニウム/スズ型の二金属触媒の存在下、蒸気相中
で水素によって還元させる。
従って、本発明によれば、夫々p−バニリン酸及び4−ヒドロキシ−3−エト
キシ安息香酸を上記方法で還元させることによってバニリン及びエチルバニリン
を製造することが可能である。
本発明の応用としては、本発明方法によって得られた少なくとも1つのエーテ
ル基を芳香核に有する4−ヒドロキシ安息香
酸から、1〜8個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキルエステルを
、当業者に公知の任意の方法で製造し得る。
エステルの製造方法としてはいくつかの方法が存在し得る。
第一の方法として、酸を適当なアルコールと反応させる方法がある。
また、有機溶媒の存在下でエステル化を行うことも可能である。有機溶媒は、
水と共沸混合物を形成し、水との共沸混合物の沸点が導入されるアルコールの沸
点よりも低い値になるものを選択する。溶媒の例としては特にトルエン、クメン
またはプソイドクメンなどが挙げられる。
1〜5個の炭素原子を有するアルコールの場合には、有機溶媒の非存在下での
直接エステル化を選択するのが好ましい。
5個を上回る炭素原子を有する重アルコールの場合には、有機溶媒の存在下で
反応させるのが好ましい。
種々の反応は慣用の酸型触媒の存在下で慣用の方法で行われる。特に、硫酸、
塩酸、p−トルエンスルホン酸、チタン酸アルキル、好ましくはチタン酸イソプ
ロピルまたはn−ブチル、酸化アンチモンを使用し得る。
このようにして、芳香核に少なくとも1つのエーテル基を含
む4−ヒドロキシ安息香酸のエステル、特に好ましくはp−バニリン酸及び4−
ヒドロキシ−3−エトキシ安息香酸のメチルエステルが容易に得られる。
以下の実施例は本発明を非限定的に例示する。
実施例中の、収率は以下の定義に対応する。
収率:RY=(形成された4−ヒドロキシ−3−安息香酸のモル数)/(導入さ
れたグアヤコール酸ナトリウムのモル数)%実施例
種々の実施例で繰返し用いられた処理手順を以下に示す。
1−グアヤコール酸カリウムの合成
中央撹拌器とVigreuxカラムと100mlの滴下漏斗とを備えた1,0
00ml容の三つ口フラスコに62.05g(0.5モル)のグアヤコールと5
0mlのトルエンとを充填する。
28.6重量%の濃度の97.8gの水酸化カリウム水溶液を室温で30分間
を要して導入する。
混合物中に懸濁する白色沈殿物が形成される。
混合物を還流下に加熱する。混合物が均一になり緑色を帯び
た混合物が得られる。
水/トルエン共沸混合物を蒸留させる。導入及び形成された水の91%が留去
すると、混合物がペースト状になり撹拌し難くなる。
混合物を窒素流下に冷却する。
No.4焼結ガラスフィルターで濾過する。Aldrichから市販の無水ト
ルエンを50mlずつ2回用いて沈殿物を洗浄する。
1〜2mmHgの圧力下、100℃のオーブンで一定重量になるまで固形分を
乾燥する。
乳鉢で磨砕する。
75.61gの褐色微粉の形態の沈殿物が得られる。収率は100%である。
無水リン酸P2O5を入れたデシケーターに生成物を保存する。
2−グアヤコール酸ナトリウムの合成
中央撹拌器とVigreuxカラムと100mlの滴下漏斗とを備えた1,0
00ml容の三つ口フラスコに62.09g(0.5モル)のグアヤコールと5
0mlのトルエンとを充填
する。
濃度30.8重量%の65.2gの水酸化ナトリウム水溶液を室温で25分間
を要して導入する。
混合物中に懸濁する白色沈殿物が形成される。
混合物を還流下に加熱する。
水/トルエンの13.5/86.5%の共沸混合物を84℃で蒸留させる。
導入及び形成された水の91%が留去すると、混合物がペースト状になり、撹
拌し難くなる。
混合物を窒素流下に冷却する。
No.4焼結ガラスフィルターで濾過する。Aldrichから市販の無水ト
ルエンを50mlずつ2回用いて沈殿物を洗浄する。
1〜2mmHgの圧力下、100℃のオーブンで一定重量になるまで固形分を
乾燥する。
乳鉢で磨砕する。
68.18gの白色針状微粉の形態の沈殿物が得られる。収率は93.3%で
ある。
無水リン酸P2O5を入れたデシケーターに生成物を保存す
る。
3−CO2圧力下でのグアヤコール酸ナトリウムのカルボキシル化
羽根形タービンを備えたハステロイB2から成る50ml容のBurton
Corbelin反応器に2.79g(19.1ミリモル)の無水グアヤコール
酸ナトリウムと20mlのAldrichから市販の無水1−メチル−2−ピロ
リジノンとを充填する。
反応器をCO2流でパージする。少量の発熱が生じる。
CO2圧力を20バールに維持しながら反応器を100℃で7時間加熱する。
反応器を室温に冷却後、20mlの水を添加する。
5N塩酸溶液をpH約2.0になるまで導入する。沈殿が生じる。
アセトニトリルを添加して反応混合物を均一にする。
高速液体クロマトグラフィーを用いて定量する。高速液体クロマトグラフィー
のカラムはMerck社製のLichro Cart RP18−5μm−25
0/4mm、溶出剤は800mlのH2O/200mlのCH3CN/3.5ml
の
H3PO4、流速は1ml/分、UV検出は240μm、温度は室温である。
4−大気圧下でのCO2流によるグアヤコール酸カリウムのカルボキシル化
ガラスタービンとCO2導入用浸漬管と直立コンデンサーとを備えた100m
l容の三つ口フラスコに5.3011g(32.7ミリモル)の無水グアヤコー
ル酸カリウムと30mlのAldrichから市販の無水1−メチル−2−ピロ
リジノンとを充填する。
混合物を流速約3.0リットル/時のCO2流下、100℃で7時間加熱する
。
混合物を氷水浴で急激に室温に冷却する。20mlの水を添加する。
5N塩酸溶液をpH約2.0になるまで導入する。沈殿が生じる。
アセトニトリルを添加して反応混合物を均一にする。
高速液体クロマトグラフィーを用いて定量する。高速液体クロマトグラフィー
のカラムはMerck社製のLichro Cart RP18−5μm−25
0/4mm、溶出剤は
800mlのH2O/200mlのCH3CN/3.5mlのH3PO4、流速は
1ml/分、UV検出は240μm、温度は室温である。実施例1〜6 比較試験a
上述の処理手順を使用し、1−メチル−2−ピロリジノンを極性塩基性溶媒と
して用い、反応温度、圧力及び出発グアヤコール酸塩の種類を変更して一連の試
験を実施する。
処理条件及び得られた結果を表Iに示す。
反応温度が過度に高温のとき反応の選択性が低下することが観察される。実施例7及び8 比較試験b〜d
以下の2つの実施例、即ち実施例7及び8では、N,N−ジメチルホルムアミ
ド(実施例7)及びN,N−ジメチルアセトアミド(実施例8)を塩基性の極性
非プロトン性溶媒として用いてグアヤコールのカルボキシル化反応を行う。
比較のために、本発明に好適でない種々の溶媒中でグアヤコールのカルボキシ
ル化を行う。使用した溶媒は、
−ブタノールのようなプロトン性溶媒(試験c)、
−トルエンのような弱極性弱塩基性非プロトン性溶媒(試験c)、
−ピリジンのような塩基性の弱極性非プロトン性溶媒(試験d)である。
処理条件及び得られた結果を表IIに示す。
得られた結果を比較すると、パラ位カルボキシル化反応の選択性が本発明の条
件では極めて優れているが比較試験では極めて劣っていることが理解されよう。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AM,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
N,CZ,EE,FI,GE,HU,IS,JP,KG
,KP,KR,KZ,LK,LR,LT,LV,MD,
MG,MN,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,S
G,SI,SK,TJ,TM,TT,UA,US,UZ
,VN