【発明の詳細な説明】
被検体の検出
本発明は、固体支持体上の被検体の改良された検出方法に関するものである。
特に、本発明の方法は、唾液、血清、全血及び尿等の体液のサンプルに使用可能
である。
免疫検定法による様々な体液における物質の検出は良く知られており、多様な
異なる目的にしばしば使用される。例えば、病原体の存在を示すものとしての、
即ち、様々な病気や症状の診断を目的とした血液、唾液、尿または他の体液サン
プルにおける抗体の検出が挙げられる。体液の他の検定法としては、妊娠試験や
血中のアルコール量を測定する試験が挙げられる。
このような試験は多量の液体検定(bulk liquid assay)として行われるが、被
検体に特異的な結合物質が固定される固体基材上にサンプルをスポットした後、
特異的な結合複合体(specific binding complex)の存在を検出することにより試
験を行うことのほうがより容易でより簡便であることが多い。このような試験は
、操作が比較的清潔かつ簡単であるため、一般的である。
しかしながら、固体基材上で試験を行うことに関連してはある欠点がある。第
一に、固体基材上で行われる多くの検定では、何も存在しない場合でさえサンプ
ル中に被検体の存在を示す偽陽性の結果が許容できないくらいの数で生じる。
第二の問題は、多孔性の固体基材に関するものである。このようなタイプの基
材は、理論的には、被検体は固定された特異的な結合分子に結合して表面に残し
たまま多量のサンプルを基材表面から除去できるため
特に有用である。しかしながら、実際には、基材を通るサンプルの流れは検定が
場合によっては20〜30分かかり得るくらい非常に遅いため、かなり困難であ
る。結果が非常に迅速に必要である試験、例えば、対診中に一般的な従事者によ
り行われる試験では、特に好ましくない。
上述した欠点は、細胞破壊物(cell debris)、大きなタンパク質、ムコ多糖や
他の高分子などの不必要な粒状物質が多くのサンプル中に存在することによって
いた。特異的な結合複合体の存在を検出しようとする前にサンプルを濾過するこ
とによってサンプル中のこのような不必要な材料の問題を解決しようとする試み
がなされてきた。
しかしながら、驚くべきことに、上記方法は特に効果的であるようには見えず
、許容できないくらい多くの偽陽性結果が依然として得られ、サンプルの流れ時
間(flow through time)もサンプルを基材に添加する前に2回濾過したときでさ
え依然として許容できないくらい長かった。これより、ムチンや粒状材料の存在
が偽陽性結果や長いサンプルの流れ時間の全ての原因ではないと考えられた。
しかしながら、偽要性結果及び遅いサンプルの流れの問題を解決しようとした
多くの試みの後、本発明者らは、検定が被検体及び多孔性の固体基材上に固定さ
れた特異的な結合分子間の特異的な結合複合体の検出を伴う際には、サンプルを
添加した後に単に基材表面をを拭きとる(wipe)ことによって試験の信頼性がかな
り改善できることを発見した。このようなことは、すべての混入物が従来試みら
れていた濾過段階によって除去されたと考えられていたため、最も予期できない
ことであったが、今回はそうではないと考えられる。
したがって、本発明においては、特異的な結合複合体を検出する前に基材表面
を拭きとり未吸着の混入物を除去することを特徴とする、特異的な結合物質が多
孔性の固体支持体上に固定された被検体と特異的な結
合複合体を形成可能な特異的な結合物質とサンプルを接触させ;さらに特異的な
結合複合体の存在を検出することからなる体液のサンプル中の被検体の存在を検
出する方法を提供するものである。
特異的な結合複合体を検出しようとする前に基材を拭きとるという簡単な段階
が検定の成功に顕著な効果を有する。サンプルが基材を流れるのにかかる時間が
20〜30分から少なくとも1〜2分は減少することができ、真に陽性の結果に
対する検定の感受性は残したまま、偽陽性結果がほとんど完全に排除できる。
拭きとりは手動で行っても、あるいはプロセスを自動化してもよい。通常、吸
収材料を用いて基材を拭きとり、適当な材料の例としては、綿、綿毛及び吸収紙
が挙げられる。
拭きとり段階は、特異的な結合分子に結合しない材料を基材表面から除去する
ために十分激しく行われなければならない。すべての不必要な材料が除去された
ことを従事者に明瞭にするために、着色剤をサンプルに添加してもよい。サンプ
ルを基材に移す前に緩衝または界面活性剤溶液をサンプルに添加する場合には、
着色剤を緩衝または界面活性剤溶液中に含ませてもよいが、必ずしもそうでなく
ともよい。
着色剤は、基材上に残り体液の検定で生じる偽陽性の多くの問題の原因である
ムチン、細胞破壊物成分または他の混入物に特異的である染色剤(stain)等の物
質であってもよい。しかしながら、混入物には結合しないが粒子が基材の細孔を
通過するには大きすぎるため基材表面上には単に残るラテックス、アガロース、
ポリスチレンまたは他のポリマー等の着色粒状材料を着色剤として使用すること
が多くの場合より簡単である。したがって、粒子は当然基材の孔径(pore size)
よりは大きいが使用されるプレフィルターの孔径よりは小さくなければならない
。下記により詳細に説明するが、初期の精製段階で使用されるフィルターは3μ
mよりも大きい孔径を有するように選択できるので、約3μmの直径を有する粒
子を用いることが多くの場合で好ましいことが分かった。着色した粒子は、より
小さな粒子が基材を通過する際に偽陽性の問題を生じると考えられるムチン及び
粒状不純物に加えて基材表面上に残る。
このようにして、着色剤を用いる際に、従事者にとって着色剤を基材表面から
拭きとり、これによりすべての表面崩壊物を基材から予め除去できるようにする
ことは簡単なことである。
サンプルは、例えば、唾液、全血、血清または尿等のいずれの体液からなるも
のであってもよいが、概して、唾液及び全血はより多量の基材の細孔を通過でき
ない細胞破壊物、高分子量タンパク質、ムコ多糖及び他の高分子量物質を含む傾
向にあるので、唾液及び全血で最も優れた改良が見られる。
被検体は、特異的な結合物質と反応して特異的な結合複合体を形成できる特異
的な結合分子であってもよい。特異的な結合複合体の例としては、抗体−抗原複
合体が挙げられ、すなわち、被検体は抗体または抗原のいずれかであってもよい
。
被検体が抗体である場合には、いずれのイソタイプであってもよく、病原体に
対する抗体であってもよい。唾液または全血サンプルの分析は、ヘリコバクター
ピロリ(Helicobacter pylori)(以前はカンピロバクター ピロリ(Campylobac
ter pylori)として既知である)等の病原体によって引き起こされる胃の感染の
診断に特に有用である。ヘリコバクター ピロリ(H.pylori)による感染の存在
は唾液または血中のIgGの存在によって示されるため、試験の目的がヘリコバ
クター ピロリ(H.pylori)の感染を検出することであれば、被検体はヘリコバ
クターピロリ(H.pylori)抗原に特異的なIgGであってもよい。
「抗原」という表現は最も広範な意味で使用され、全病原体細胞また
は病原体からの均質な、均質に近い若しくは異質の抽出物を含むものであり、こ
の際すべてが体液のサンプルにおいて特異的な抗体に結合できる。
特異的な結合物質が抗原である際には、この物質はタンパク質、多糖若しくは
脂質またはこれらの組み合わせである。抗原である際の好ましい特異的な結合物
質としては、例えば、超音波処理、圧力砕解(pressure disintegration)、デタ
ージェント抽出(detergent extraction)若しくは分画によって調製された病原体
のタンパク質、リポ多糖または細胞抽出物が挙げられる。
本発明の方法を用いてヘリコバクター ピロリ(H.pylori)による感染を検出
する際には、特異的な結合物質はヘリコバクター ピロリ(H.pylori)由来の抗
原であってもよい。本発明の方法において特異的な結合物質として好ましく使用
されるヘリコバクター ピロリ(H.pylori)由来の抗原はW−A−932268
2号に開示されている。しかしながら、いずれのヘリコバクター ピロリ(H.py
lori)由来の抗原を特異的な結合物質として使用してもよい。
上述したように、基材は、被検体を特異的な結合物質に特異的に結合して表面
上に残しつつ大部分のサンプルが基材を流れるように多孔性である。基材は、ニ
トロセルロースまたは、例えば、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、
ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレン等の、他のポリマーから形
成されてもよいが、本発明はこれらに限定されない。
しかしながら、基材は、ニトロセルロース膜であることが好ましく、約0.5
〜8μm、好ましくは約1〜2μmの孔径を有する。
固体支持体が吸収吸上材料で裏打ちされていることが非常に好ましい。吸収紙
が、通常、コストの理由により、選択される材料であることが多
いが、吸収材料を上記目的に使用してもよい。
本発明において使用できる特異的な結合分子は固体表面に共有結合してもまた
は非共有(「受動的に」)結合してもよい。適当な結合プロセスは当該分野にお
いて既知であり、通常、固体支持体に抗原を架橋、共有結合、または物理的に吸
着することから構成される。
被検体の存在は、被検体と特異的な結合物質との複合体の形成を検出すること
によって本発明の手段によって診断される。したがって、検出手段の形態によっ
ては、特異的な結合複合体の存在(または、必要であれば、量)を同定すること
が必要である場合がある。
検出手段は、リポーター分子(reporter molecule)と複合し、特異的な結合複
合体に特異的に結合可能な、抗体であってもよい。
抗体を検出しようとする場合には、検出手段は、被検体抗体のイソタイプのす
べての抗体に特異的な標識された第二の抗体からなってもよい。ヒトのヘリコバ
クター ピロリ(H.pylori)に関する試験では、被検体抗体はしばしばIgGの
イソタイプを有し、この場合には第二の抗体は抗ヒトIgGである。
「リポーター分子」は、その化学的な性質によって、分析により同定可能な特
性を有するまたは抗原が結合した抗体の検出ができる分析により同定可能なシグ
ナルを提供する分子または一群である。検出は定性的であってもまたは定量的で
あってもよい。このようなタイプの検定において使用されるリポーター分子は、
酵素、発蛍光団または放射性核種を含有した分子(例えば、放射性同位元素)の
いずれかであってもよい。エンザイムイムノアッセイの場合には、酵素を、通常
グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸によって、第二の抗体に複合させる(conju
gate)。しかしながら、容易に認識されるように、当業者に容易に利用できる、
広範な様々な複合技術が存在する。一般的に使用される酵素としては、
これらのうち、西洋ワサビのペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−
ガラクトシダーゼ及びアルカリホスファターゼが挙げられる。特異的な酵素と共
に使用される発色団は、通常、対応する酵素による加水分解の際に、検出可能な
色の変化を生成するようなものが選択される。発色団は、目的とする用途によっ
て、可溶性であっても不溶性であってもよい。例えば、5−ブロモ−4−クロロ
−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(5-bromo-4-chlor
o-3-indolyl phosphate/nitroblue tetrazolium)がアルカリホスファターゼ複合
体(conjugate)と共に使用するのに好ましい;ペルオキシダーゼ複合体では、1
,2−フェニレンジアミン−5−アミノサリチル酸(1,2-phenylenediamine-5-am
inosalicylic acid)、3,3,5,5−テトラメチルベンジジン(3,3,5,5-tetra
methylbenzidine)、トリジン(tolidine)またはジアニシジン(dianisidine)が一
般的に使用される。また、上記した発色団ではなく、蛍光産物を産生する、発蛍
光団を用いることも可能である。発蛍光団の例としては、フルオレセイン及びロ
ーダミンがある。特定波長の光による照射によって活性化する際には、蛍光色素
で標識された抗体が光エネルギーを吸収して、分子の励起状態を誘導した後、一
般的に光学顕微鏡で肉眼で検出可能な特徴的な色の光を放射する。
しかしながら、本発明は、その結果が数分で利用でき対診の間に一般的な従事
者によって行える「インスタント診断(instant diagnosis)」として使用するた
めに特に良好に適用される。このような理由から、検出方法は可能な限り簡単で
あり特殊な設備を必要としないことは非常に好ましい。したがって、本発明にお
いて好ましいリポーター分子は、コロイド金若しくは炭素等の着色試薬、ポリス
チレンまたはラッテクス粒子である。
このようなタイプのリポーター物質を用いる際には、付着した(attac
hed)色素物質と結合した(bound)第二の抗体が明瞭に目視できるように、結合し
なかった第二の抗体を除去することが重要である。したがって、このようなこと
は、余分な第二の抗体は膜を通過しパッド中に吸収されてニトロセルロース膜表
面には結合した第二の抗体及び会合した色素物質のみが残るので、本発明におい
て使用される吸収パッドで裏打ちされた多孔質膜で特に好ましい。
上述したように、遅いサンプルの流れ及び偽陽性結果の問題を完全には解決し
ないものの、1つまたはそれ以上の初期の濾過段階を本発明の方法に含まれるこ
とがしばしば好ましい。
具体的には、本方法において使用されるフィルターは、約1〜15μm、好ま
しくは3〜8μmの有効孔径を有すると考えられる。これは、どのようなタイプ
のフィルターを用いても達成されるが、好ましいタイプは、プラスチック材料か
ら作製され約5〜10μmの典型的な実際の孔径を有するフリット(frit)である
。このようなタイプのフリット(frit)では、フリットは比較的深く細孔が整列し
ていない(out of alignment)ので、有効孔径は実際の孔径より小さい。
濾過段階前に含まれるさらなる段階としては、サンプルを綿または綿毛パッド
等の粗いフィルターに通す一次分離段階がある。この段階は、恐らく唾液サンプ
ル中に存在するムコ多糖の大部分は除去されるため唾液サンプルの粘度を減少す
るのに特に有用であるが、他のタイプの体液の検定にも有用である。
偽陽性の結果の排除を補助する方法のさらなる改良法としては、検出試薬と反
応できるコントロール試薬を基材上に提供することがある。コントロール試薬は
特異的な結合分子とは異なる位置に存在し、検出物質と特異的に結合することが
可能である。したがって、例えば、検出試薬が抗ヒトIgGである際には、コン
トロール試薬はヒトIgGである。
コントロール試薬の存在は、その存在が検出されない際には明らかにその検出方
法が正確に働いていないので、本発明の方法の実行可能性をモニターする手段で
ある。
サンプルを基材に添加する前に、緩衝液および/または界面活性剤を含む溶液
でサンプルを処理することがしばしば好ましい。全血サンプルでは、ライジング
バッファー(lysing buffer)を使用してもよい。緩衝液は、一般的に、約6.8
〜7.8のpH、好ましくは7.2のpHを有する。緩衝液は、通常、0.05
〜1容量%、好ましくは約0.1容量%の量で存在するトリトン X−100(T
RITON X-100)の商標(ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスチッ
クス カンパニー インコーレポイテッド(Union Carbide Chemicals and Plast
ics Co.,Inc))で販売される非イオンポリオキシエチレンエーテル等の界面活
性剤を含む。
拭きとり段階と緩衝液を組み合わせて使用することにより、全血サンプルの流
れ時間が20〜30分から120〜180秒減少できる。
体液が唾液である際には、唾液を、パルミチン酸および/またはステアリン酸
のポリオキシエチレンソルビタン誘導体からなり、約6.8〜7.8、好ましく
は約7.4のpHにまで緩衝化された(buffered)溶液で処理することが好ましい
。
適当な界面活性剤は、トゥイーン40(TWEEN 40)、トゥイーン60(TWEEN 60)
、トゥイーン61(TWEEN 61)、トゥイーン65(TWEEN 65)及びトゥイーン80(T
WEEN 80)の商標で市販されている。
界面活性剤が40〜65%のステアリン酸誘導体を含むことが特に好ましく、
約55%のステリン酸誘導体を含み残りはパルミチン酸誘導体であるトゥイーン
60(TWEEN 60)が特に好ましく、ほとんどの他の界面活性剤よりもかなり信頼性
の高い結果が得られる。
界面活性剤の存在量は、基材中を通るサンプルの流れを最大限にするように選
択されることが好ましい。流れは、界面活性剤が0.1〜1容量%、特に約0.
5容量%の量で存在する際に、一般的に最大になる。このような量の界面活性剤
により、特異的な結合、即ち、本発明の方法を用いて得られる検出の閾値には大
きな影響を与えずに非特異的な結合を排除して最良の結果が得られる。
他の物質が、試験試薬への試験サンプル中のムチンや粒状材料の非特異的な結
合を最小限にするために溶液中存在していてもよい。このような物質としては、
塩化ナトリウム等の無機塩及びウシの血清アルブミン(BSA)等のタンパク質
が挙げられる。
塩化ナトリウムは約0.1〜0.2Mの濃度で存在する。特異的な結合を損な
いやすいので、0.2Mの濃度の上限は超えないことが非常に好ましい。特に好
ましくは、溶液中に存在する塩化ナトリウムの濃度は約0.125Mである。
BSAは、存在する際には、約0.05重量%〜0.5重量%、好ましくは0
.1重量%の量で含まれる。
リン酸緩衝液が、血液サンプル及び唾液サンプルを処理するのに特に好ましい
緩衝液であるが、溶液のpHを好ましい範囲内にするように使用できる他の緩衝
液の例も当業者には既知である。
ナトリウム塩がしばしば最良の結果を出すが、ナトリウム、カリウムまたはア
ンモニウム塩等の水溶性の塩を緩衝溶液の調製に使用してもよい。効果的な緩衝
作用(buffering)は0.001〜0.05M、好ましくは約0.02Mのリン酸
ナトリウム溶液を用いて得られることが分かった。
上記で簡潔に述べたように、基材表面から拭きとられるであろう混入物を目に
見えるようにするための着色剤を、緩衝または界面活性剤溶液
中に含ませてもよい。緩衝または界面活性剤溶液に含ませる際には、粒状着色剤
を約0.005〜0.05重量%、好ましくは約0.01〜0.02重量%の量
で存在させてもよい。しかしながら、染色剤を使用する際には、濃度は幾分上記
より高くなってもよい。
着色剤を含む緩衝および/または界面活性剤溶液は新規であり、それ自体本発
明の一部を形成する。
したがって、本発明の第二の概念においては、界面活性剤及び着色剤からなる
検定されるべき体液のサンプルの処理を目的とした緩衝溶液を提供するものであ
る。
上述したように、着色剤は、除去されることが望ましいある混入物に特異的で
あってもよいが、ラテックス、アガロース、ポリスチレンまたは他のポリマー等
の着色粒状材料からなることが好ましい。粒子は当然基材の孔径よりは大きいが
使用されるプレフィルターの孔径よりは小さくなければならない。フィルターは
、約3μmの直径を有する粒子を用いることが多くの場合好ましいことが分かっ
た。
緩衝溶液は本発明の方法を行うためのキットに含まれてもよく、このキット自
身が本発明のさらなる概念を形成する。
本発明の上記概念においては、以下よりなるキットを提供するものである:
i. 界面活性剤及び着色剤からなる緩衝溶液;
ii. 多孔質基材上に固定され被検体と特異的な結合複合体を形成
することが可能な特異的な結合物質;および
iii.特異的な結合複合体の存在を検出するための検出試薬。
本発明は、ヘリコバクター ピロリ(H.pylori)に感染した患者の唾液中に存
在するヘリコバクター ピロリ(H.pylori)に対する抗体を検出するのに、特に
有用である。上述したように、ヘリコバクター ピロ
リ(H.pylori)は、感染によってIgGのイソタイプの抗体が唾液中に存在する
ようになる点で一般的ではない。
したがって、本発明の第四の概念においては、以下よりなる、ヘリコバクター
ピロリ(H.pylori)に特異的なIgGの検出用キットを提供するものである:
i. 界面活性剤及び着色剤からなる緩衝溶液;
ii. 多孔質基材上に固定されたヘリコバクター ピロリ(H.pylo
ri)由来の抗原;および
iii.ヒトのIgGに特異的に結合できる標識抗体の溶液。
キットが全血または唾液サンプルの検定用である際には、溶液の好ましい成分
は、本発明の第一の概念の方法で記載したのと同様である。好ましい基材及び検
出試薬もまた本発明の第一の概念の方法で記載したのと同様である。
キットはまた、検出される体液に使用される収集器を有するものであってもよ
い。サンプルの予備濾過用の綿または綿毛パッド等の粗いフィルターが含まれて
いてもよく、必要であれば、唾液収集器の一部を形成していてもよく、必要であ
れば、唾液収集器の一部を形成するものであってもよい。さらに、キットは、サ
ンプルから粒状材料を除去するためのフィルターを含むものであってもよい。第
一の概念の方法に関して説明したように、フィルターは、約1〜15μm、好ま
しくは3〜8μmの有効孔径を有する。これは、どのようなタイプのフィルター
を用いても達成されるが、好ましいタイプはプラスチック材料から作製され約5
〜10μmの典型的な実際の孔径を有するフリットである。
本発明を、下記実施例を参照しながら詳細に説明する。実施例1
唾液サンプル用の緩衝化界面活性剤溶液の調製
緩衝化界面活性剤溶液を、室温で混合することによって下記成分から調製した
:
0.02M リン酸ナトリウム溶液 100ml
塩化ナトリウム 0.73g
ウシの血清アルブミン 0.1g
トゥイーン60(商標) (TWEEN 60TM) 0.5g
紺青色のラテックス粒子(直径;3.0μm) 0.1g
紺青色のラテックス粒子はポリマー ラボラトリーズ(Polymer Laboratories)
(英国)から市販されている。実施例2
ヘリコバクター ピロリ(H.pylori)由来抗原の調製
ヘリコバクター ピロリ(H.pylori)由来の抗原を、WO−A−932268
2号の実施例1に記載された方法に従って調製した。要約すると、ヘリコバクタ
ー ピロリ(H.pylori)の未精製超音波処理物を調製し、分画した。440kD
aのタンパク質を除去すると、265及び340kDaのタンパク質を含む混合
物が残った。実施例3
試験装置の調製
1〜5μlの0.05%(w/w)の実施例2の抗原溶液を基材上にスポット
して試験領域を形成した。基材は、吸上材料として作用するシュレイシャー ア
ンド シュエル クロマトグラフィー紙 No.3469(Schleicher & Schuel
l chromatography paper No.3469)(アンダーマン アンド コーポレイション(
Anderman & Co.)、キンストン アポン テムズ(Kinston upon Thames)、英国よ
り市販)の基材層(backing layer)上に支持された1.2μmのサルトリウス(
商標)(SARTORIUSTM)のニトロセルロース膜であった。
1〜5μlの0.005%(w/w)の精製された正常ヒトIgG(シグマ
ケミカル カンパニー リミテッド(Sigma Chemical Company Ltd.)製、プール
、ドーセット(Poole,Dorset)、英国)溶液を試験領域から離れたコントロール
領域の基材上にスポットした。実施例4
検出剤の調製
検出剤(disclosing agent)は、520nm、路長1cmでの吸光度が0.5吸
光単位になるように、トゥイーン20(TWEEN 20)の商標で市販されている界面活
性剤 0.05容量%及びBSA 0.1重量%を含むリン酸緩衝液(PBS)
でヤギ抗ヒトIgG(重及び軽鎖)(バイオセル リサーチ ラボラトリーズ(B
iocell Research Laboratories)製、カーディフ(Cardiff)、英国)と複合する(c
onjugate)コロイド金を希釈することによって調製された。実施例5
唾液サンプルの検定
唾液(1ml)を、オムニサル(OMNISAL)の商標(サリヴァ ダイアグノステ
ィック システムズ(Saliva Diagnostic Systems)製、ヴァンクーヴァー、ワシ
ントン(Vancouver,Washington)、アメリカ)で市販されている収集器を用いて
収集し、サンプルを粗いフィルターとしても作用するパッド中に集めた。次に、
サンプルを含む収集器を実施例1の溶液1.0mlを含むチューブに移した。集
められた唾液を、約5μmの排除を有するポーレックス ウルトラファイン血清
分離器(Porex Ultrafine serum separator)を用いて瀘過した後、実施例3で調
製された試験装置に添加した。
希釈唾液サンプルをニトロセルロース膜を通してクロマトグラフィー紙の基材
層(backing layer)中に予め流した後、青色ラテックス粒子が
基材表面上に単層を形成した。この層を、青色がなくなるまで、綿毛でしっかり
とだがやさしく拭きとることによって除去した。
さらに、実施例4の検出剤(disclosing agent)0.5mlを試験装置に加えた
。この検出剤をニトロセルロース膜を通して排出させた後、試験を読んだ。
コントロール領域における単一のピンク色のスポットは目視できるが陰性の試
験結果を示すのに対して、試験領域でスポットをおよびコントロール領域でもス
ポットを生じる試験は陽性結果を示す。
この試験は、0.8単位(0〜10までの範囲で)という低いレベルの抗ヘリ
コバクター ピロリ(H.pylori)IgGを検出することが可能であり、偽陽性の
結果は生じなかった。実施例6
血液サンプル用の緩衝化界面活性剤溶液の調製
緩衝化界面活性剤溶液を、室温で混合することによって下記成分から調製した
:
0.02M リン酸ナトリウム溶液 100ml
トリトン X−100 0.1ml
紺青色のラテックス粒子(直径;3.0μm) 0.1g
紺青色のラテックス粒子はポリマー ラボラトリーズ(Polymer Laboratories)
(英国)から市販されている。実施例7
血液サンプルの検定
血液サンプルをユニスティック 2(商標)(UNISTIK 2TM)収集器及びヴォラ
ック(商標)(VOLACTM)ヘパリン化ガラス管を用いて集めた以外は実施例5の方
法に従って検定を行った。血液サンプルは、実施例1の溶液ではなく実施例6の
溶液で処理された。
繰り返すが、コントロール領域における単一のピンク色のスポットは目視でき
るが陰性の試験結果を示すのに対して、試験領域でスポットをおよびコントロー
ル領域でもスポットを生じる試験は陽性結果を示すものである。
この試験は、0.8単位(0〜10までの範囲で)という低いレベルの抗ヘリ
コバクター ピロリ(H.pylori)IgGを検出することが可能であり、偽陽性の
結果は生じなかった。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
G01N 33/543 525 0276−2J G01N 33/543 525C
33/569 0276−2J 33/569 F
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB
,GE,HU,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LK,LR,LT,LU,LV,MD,MG,M
N,MW,MX,NL,NO,NZ,PL,PT,RO
,RU,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,
TT,UA,UG,US,UZ,VN