【発明の詳細な説明】
ヒドロキシル基を有するポリエステル少なくとも1つを含有する被覆剤、該被覆
剤の製法ならびに該被覆剤の下塗ラッカーとしての使用及び多層の保護被覆及び
/又は装飾被覆を得る方法への使用
本発明は、ヒドロキシル基を有するポリエステル少なくとも1つを含有する被
覆剤、殊に下塗ラッカーに関する。さらに本発明は、該被覆剤の製法ならびに支
持体表面上の多層の保護被覆及び/又は装飾被覆の製法に関する。さらに最後に
本発明の対象は、該被覆剤の下塗ラッカーとしての使用ならびに該被覆剤の、殊
に自動車車体の、補修ラッカー塗装への使用である。
良好な装飾作用及び同時に良好な腐食保護を備えた被覆が所望される、殊に自
動車ラッカー塗装の場合には、しかしながら他の分野の場合にも、支持体に複数
の相互に重ねられて配置された被覆層を備えることは、公知である。多層ラッカ
ー塗装は、支持体が顔料混入された下塗ラッカーで先ず被覆されかつ引き続き透
明ラッカーが塗布される場合には、たいへん重要である。
下塗ラッカーが短い曝気時間後に焼付過程なしで透明ラッカーで上塗されかつ
引き続き下塗ラッカー及び透明ラッカーが一緒に硬化される場合には、有利に、
いわゆる「ウェット・イン・ウェット方法」("nass−in−nass−Verfahren")に
従って作業は行なわれる。
下塗ラッカーの場合にはしばしば、いわゆるメタリック−ラッカー塗装が得ら
れる金属顔料が使用される。良好なメタリック効果の達成のために、ラッカー塗
膜中での金属顔料の良好な配置及び固着(Fixierung)が保証されていることは、
著しく重要である。このために、上塗ラッカー層が、前乾燥されているが、しか
しまだ硬化されていない上塗ラッカー層への透明ラッカー層の施与の際にもっぱ
ら、著しく僅かな溶解を示すかもしくは部分的に溶解を全く示さないことが必要
である。一方では、透明ラッカー層の施与の際の上塗ラッカー層の一定の溶解は
、上塗ラッカー層と透明ラッカー層との間の付着という理由からぜひとも所望さ
れる。
多層被覆の製造に、常用の(即ち溶剤不含の)下塗ラッカー及び透明ラッカー
ならびに水で希釈可能な系は、使用される。
例えば、ドイツ国特許出願公開第4024204号明細書及び国際公開番号W
O 88/02010の特許出願明細書から、使用される常用の下塗ラッカーが
ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、セルロースアセトブチレート及びアルミニウ
ムフレークを基礎とする多層被覆は、公知である。しかしながら、使用されるポ
リエステル樹脂及びセルロースアセトブチレートの種
類に関してのより詳細な記載は、上記2つの明細書には含まれていない。
さらにドイツ国特許第2818093号明細書から、使用される下塗ラッカー
が塗膜形成成分としてのポリエステル樹脂を基礎とする多層被覆は、公知であり
、この場合、しかしながら、ポリエステルの分子量に関する記載は、ドイツ国特
許第2818093号明細書には含まれていない。本発明によれば本質的である
成分として、ドイツ国特許第2818093号明細書に記載されている該下塗ラ
ッカーは、ポリマー微粒子を含有している。このポリマー微粒子によって、下塗
ラッカーの噴霧特性の改善が得られる。
従って本発明の課題は、公知の被覆剤と比較して改善された性質を有する被覆
剤、殊に下塗ラッカーを提供することである。殊に該被覆剤は、下塗ラッカーと
して使用される場合には、多層ラッカー塗装の良好な金属的効果ならびに上塗ラ
ッカー層上に配置された透明ラッカーへの良好な付着を保証する。その上、該被
覆剤は、該被覆剤が自動車補修ラッカー塗装に使用することができるようにする
ために、室温又は軽度に高められた温度で硬化すべきである。さらに該被覆剤は
、、通常下塗ラッカーに課せられる要求を満足させなければならない。従って該
被覆剤は、例えば速乾性でなければならず、貯蔵安定性でなければならず、かつ
上塗可能でなければならず、ならびに良好なプロップ
形成(Plopbildung)(良好な金属的効果)及び透明ラッカーへの良好な付着を示
さなければならない。
意外にも、上記課題は、
1.ヒドロキシル基を有するポリエステルが重量平均分子量Mw40000〜2
00000及び不均一度(Uneinheitlichkeit)Mw/Mn>8を有しており、か
つ
2.このポリエステルの製造のために芳香族ジカルボン酸もしくは該化合物のエ
ステル化可能な誘導体少なくとも50重量%が使用されており、この場合、しか
しながら無水フタル酸の含量は、最大80重量%であり、かつこの場合、重量%
の記載は、それぞれポリエステルの製造に使用される酸成分の全体重量に対する
ものである、
ことを特徴とする、ヒドロキシル基を有するポリエステル少なくとも1つを含有
する被覆剤、殊に下塗ラッカーによって解決される。
さらに本発明の対象は、上記被覆剤の製法である。
さらに本発明は、
1.下塗ラッカーを塗布し、
2.段階(1)の際に塗布された組成物からポリマー被膜を表面に形成させ、
3.このようにして得られた下塗ラッカー層上に透明な上塗ラッカーを塗布し、
かつ
4.上塗ラッカー層を下塗ラッカー層とともに硬化させることによって、
支持体上の多層の保護被覆及び/又は装飾被覆を製造する方法において、段階(
1)の際の下塗ラッカーとして本発明による被覆剤を使用することを特徴とする
多層の保護被覆及び/又は装飾被覆の製法にも関する。
最後にさらに本発明は、該被覆剤の下塗ラッカーとしての使用ならびに該被覆
剤の、補修ラッカー塗装、殊に自動車車体の補修ラッカー塗装への使用に関する
。
本発明によれば使用されるポリエステルによって、多層ラッカー塗装の良好な
金属的効果ならびに上塗ラッカー層上に配置された透明ラッカーへの良好な付着
を保証する被覆剤が得られることは、意外なことでありかつ予想できることでは
なかった。その上、該被覆剤は、該被覆剤が室温又は軽度に高められた温度で硬
化することができ、かつ従って自動車補修ラッカー塗装に使用することができる
利点を有している。さらに、本発明による被覆剤が、通常下塗ラッカーに課せら
れる要求を満足させることは、有利である。従って被覆剤は、例えば速乾性であ
り、貯蔵安定性でありかつ上塗可能であり、ならびに良好なプロップ形成?及び
透明ラッカーへの良好な付着を示す。さらに該被覆剤は、良好な色調の一致を、
相違した分子量及び分枝度を有する他のポリエステルを基礎とする下塗ラッカー
との混合の場合にも示す。
次に、本発明による被覆剤の各成分を詳説する。
被覆剤が結合剤として、重量平均分子量40000〜200000、特に50
000〜120000及び不均一度(この不均一度は、重量平均分子量Mwと数平
均分子量Mnとからの商として定義されている)>8、特に>8〜200、殊に
10〜100を有する、ヒドロキシル基を有するポリエステルを含有してること
は、本発明にとって本質的である。この場合には重量平均分子量及び数平均分子
量は、ゲル透化クロマトグラフィーによポリスチレン標準に対して測定される。
有利に、ヒドロキシル基を有するポリエステルは、OH価20〜150mgK
OH/g、特に60〜110mgKOH/gを有する。その上、有利に該ポリエ
ステルは、酸価5〜20mgKOH/g、特に10〜15mgKOH/g及び/
又はアミン価0〜40mgKOH/gを有する。
その上、このヒドロキシル基を有するポリエステルの製造に芳香族ジカルボン
酸少なくとも50重量%が使用され、この場合、しかしながら無水フタル酸の含
量は、最大80重量%であることは、本発明にとって本質的である。その上、有
利に脂環式ジカルボン酸20重量%未満は、使用される。この場合には重量%の
記載は、それぞれポリエステルの製造に使用される酸成分の全体重量に対するも
のである。初めて、広い分子量範囲を有する高い重量平均分子量と、構造成分と
しての芳香族ジカルボン酸の最小含量の使用とをこのように組み合わせることに
よって、被覆剤が、必要とされる良好な性質、殊に、良好な金属的効果とともに
良好な付着を示すことが保証される。
本発明によれば使用されるポリエステルは、
a)ポリカルボン酸もしくはそのエステル化可能な誘導体、及び場合によっては
モノカルボン酸、
b)ポリオール、及び場合によってはモノオール、
c)場合によっては別の改質成分ならびに
d)場合によっては、a)、b)及び場合によってはc)とからの反応生成物と
反応可能な成分
を反応させることによって得ることができる。
ポリエステルの製造に酸成分(a)として、ポリエステルの製造に使用される
カルボン酸の全体重量に対して芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル化可能
な誘導体少なくとも50重量%が使用されることは、本発明にとって本質的なこ
とである。ポリエステルの製造に無水フタル酸が使用される場合には、酸成分の
最大80重量%は、無水フタル酸からなっていてもよい。芳香族ジカルボン酸と
ともに、脂肪族及び/又は脂環式ポリカルボン酸50重量%までは、使用するこ
とができる。この場合には有利に脂環式ジ−もしくはポリカルボン酸20重量%
未満が使用され、かつ特に有利に全く使用されない。
本発明によるヒドロキシル基を有するポリエステル
の製造に適当な芳香族ジカルボン酸の例は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタ
ル酸、ハロゲンフタル酸、例えばテトラクロロフタル酸及びテトラブロモフタル
酸等である。
本発明によるヒドロキシル基を有するポリエステルの製造に適当な脂肪族ジカ
ルボン酸の例は、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル
酸、マレイン酸、コハク酸、ムコン酸、イタコン酸等である。
上記ポリカルボン酸のエステル化可能な誘導体、例えば該ポリカルボン酸とC
原子1〜4個を有する脂肪族アルコールもしくはC原子1〜4個を有するヒドロ
キシアルコールの一価もしくは多価のエステルもまた適当である。その上、上記
酸の無水物は、該無水物が存在する場合には使用することもできる。
場合によってはポリカルボン酸とともにモノカルボン酸、例えば安息香酸、t
−ブチル安息香酸、ラウリン酸、イソノナン酸及び天然産油の脂肪酸を使用する
こともできる。有利にモノカルボン酸としてイソノナン酸は、使用される。モノ
カルボン酸の含量は、ポリエステルの製造に使用されるカルボン酸の全体重量に
対して有利に20重量%未満である。
成分(a)として脂環式ジカルボン酸、例えばテトラヒドロフタル酸、ヘキサ
ヒドロフタル酸、シクロヘキサジカルボン酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸
、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、エン
ドメチレンヘキサヒドロフタル酸、ショウノウ酸、シクロヘキサンテトラカルボ
ン酸、シクロブタンテトラカルボン酸等20重量%未満が使用され、かつ有利に
全く使用されないことは、有利である。
ポリエステルの製造に適当なアルコール成分(b)は、多価アルコール、例え
ばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール
、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、
シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール、エチルブチルプロ
パンジオール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロ
ールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリット、ジペンタエリトリット、トリ
スヒドロキシエチルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン
グリコール、及び場合によっては一価アルコール、例えばブタノール、オクタノ
ール、ラウリルアルコール、エトキシ化もしくはプロピオキシル化(propyoxylie
rtem)されたフェノールである。
ポリエステルの製造のための成分(c)として、成分(d)として挙げられる
化合物を除く、特に、ポリエステルの官能基に対して反応性である基を有する化
合物は、適当である。改質された成分(c)として有
利にポリイソシアネート及び/又はジエポキシ化合物、場合によってはモノイソ
シアネート及び/又はモノエポキシ化合物も使用される。
適当なポリイソシアネートは、例えばトルイレンジイソシアネート、ヘキサメ
チレンジイソシアネートならびにイソホロンジイソシアネートである。ジエポキ
シ化合物とは、1分子あたり平均約2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のこ
とである。適当なモノエポキシ化合物は、例えば酸化オレフィン、例えば酸化オ
クチレン、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグ
リシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレシルグリシ
ジルエーテル、酸化スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルヘキサン
ビニルモノオキシド、ジペンテンモノオキシド、α−ピネンオキシドならびに第
三級カルボン酸のグリシジルエステルである。
ポリエステルの製造のための成分(d)として、例えば、ポリエステルの官能
基に対して反応性である基の他にさらにもう1個の第三級アミノ基を有する化合
物は、適当である。
(a)、(b)及び場合によっては(c)とからの反応生成物と反応可能であ
る成分(d)として有利に、第三級アミノ基少なくとも1個を有するモノイソシ
アネートは使用される。このような化合物は、例えば、適当なジイソシアネート
、例えばイソホロンジイソ
シアネートを第三級アミノ基を有するアミノアルコール、例えばヒドロキシエチ
ルピリジンもしくはジメチルアミノエタノール、又は第三級アミノ基少なくとも
1個及び第二級もしくは第一級アミノ基少なくとも1個を有するポリアミンと反
応させることによって得ることができる。モノイソシアネートは、ポリエステル
の遊離ヒドロキシル基との反応によって、ウレタン形成下に結合剤系に結合され
る。成分(d)として第三級アミノ基少なくとも1個及び第一級もしくは第二級
アミノ基少なくとも1個を有するポリアミンは、使用することもできる。このよ
うな化合物の例として、ジメチルアミノプロピルアミンが挙げられる。
成分(d)の使用(重合体類似の反応(polymeranaloge Umsetzung))による
他に、第三級アミノ基は、アミノ基を有するポリオール及び/又はポリカルボン
酸の使用によってポリエステル中に導入することもできる。
成分(a)として、例えば、ポリカルボン酸とともに第三級アミノ基少なくと
も1個を有するアミノカルボン酸は、使用することができる。このような化合物
の例は、ピリジン−2−カルボン酸、ピリジン−3−カルボン酸、ピリジン−4
−カルボン酸及びピリジン−2,6−ジカルボン酸である。その上、第三級アミ
ノ基少なくとも1個を有するアミノアルコールとポリカルボン酸無水物の反応生
成物ならびに第三級アミノ
基少なくとも1個及び第一級もしくは第二級アミノ基少なくとも1個を有するポ
リアミンとポリカルボン酸無水物とからの反応生成物は、使用することができる
。
アルコール成分(b)として第三級アミノ基少なくとも1個を有するアミノア
ルコールは、使用することができる。このような化合物の例として、2−ヒドロ
キシエチルピリジン、ジメチルアミノプロパノール、メチルエタノールアミン、
メチルジプロパノールアミン及びジヒドロキシエチルアニリンが挙げられる。
同様にアルコール成分(b)として、エポキシ樹脂とカルボン酸及び/又はア
ミンとの反応生成物は、使用することができる。従ってアルコール成分(b)と
して、低分子量エポキシ樹脂とポリカルボン酸及び/又はポリカルボン酸無水物
及び第三級アミノ基少なくとも1個を有するアミノカルボン酸との反応生成物は
、使用することができ、この場合、引き続き、場合によってはさらに酸成分及び
アルコール成分を用いてエステル化され、かつ場合によってはポリイソシアネー
トを用いて改質される。低分子量エポキシ樹脂とは、分子量約2000未満を有
するエポキシ樹脂のことである。エポキシ樹脂の使用の場合には、塩素が少ない
種類が使用されなければならず、それというのも、そうでなければ生成物の著し
い変色が生じる可能性があるからである。
ポリエステルの製造は、公知かつ常用の方法によって実施することができ、例
えば、このような方法は、種々の基準的な参考文献、例えば
1.Temple C.Patton,Alkyd Resin Technology,Interscience Publishers Joh
n Wiley & Sons,New York,London 1962;
2.Dr.Johannes Schreiber,Chemie und Technologie der kuenstlichen 樹脂
e,Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH,Kahl−Hanser−Verlag Stutt
gart,1943
3.Hans Wagner及びHans−Friedrich Sarx,Lackkunstharze,第4版,Karl−H
anser−Verlag, Muenchen,1959
4.Ullmanns Encyklopaedie der Technischen Chemie,第14巻,80〜106
頁(1963)
に記載されている。
ポリエステルの製造の場合には遊離する反応水もしくは遊離するアルカノール
は、連続的に除去される。エステル化は、ほぼ定量的に進行し、かつ酸価及びO
H価の測定によって追跡することができる。この場合にはポリエステルの分子量
及び分枝度は、簡単かつ当業者によく知られた方法でアルコール成分(ジオール
及びポリオール)とジ−ないしはポリカルボン酸との使用比によって調整するこ
とができる。従って、ポリエステルの重量平均分子量Mw及び不均一度Mw/M
nは、OH基/酸基の比が1に近づけば近づくほど、かつ分枝度が高められれば
高められるほど高くなる。このことは、ポリオールのわずかな過剰量のみが使用
されかつ縮合が>98%の高い変換率まで進行することによって達成される。分
枝度は、より高い官能価の化合物の含量によって上昇する。分枝度、縮合度及び
ポリオールのモル比は、縮合物のゲル化を回避するために、相互に入念に一致さ
れなければならない。ポリエステルの分枝度は、三官能価及びより高い官能価の
構造成分の含量が高くなれば高くなるほど、高くなる。本発明による被覆剤が、
他の分子量及び分枝度を有する他のポリエステルを基礎とする下塗ラッカーと混
合される場合には、分枝度が減少すれば減少するほど、色調のずれは、より僅か
に現われる。有利に分枝度は、ポリエステル樹脂(固体)1000gあたり分枝
0.6〜1.2である。
通常、エステル化条件は、反応ができるだけ完全であるように選択される。即
ち、反応は、所望の酸価が達成されるまで時間続行される。
この場合には反応は、通常、温度180〜280℃で、場合によっては適当な
エステル化触媒、例えばオクタン酸リチウム、ジブチルスズオキシド、ジブチル
スズラウレート、p−トルエン−スルホン酸及び類似物の存在下に行なわれる。
通常、ポリエステルの製造は、連行剤としての適当
な溶剤の少量の存在下に実施される。連行剤として、例えば芳香族炭化水素、例
えば特にキシレン、及び脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、は、使用され
る。
反応がエステル化触媒の存在下に行なわれる場合は、該エステル化触媒は、通
常、ポリエステル樹脂溶液の固体に対して0.01〜0.5重量%の量で使用さ
れる。
本発明による被覆剤は、通常、それぞれ被覆剤の全体重量に対して、及びポリ
エステル樹脂溶液の固体含量に対して、ヒドロキシル基を有するポリエステル2
0重量%まで、有利に6〜9重量%を含有している。
さらなる成分として、本発明による被覆剤は、有利に少なくとも1つのセルロ
ースエステルを、それぞれ被膜形成固体物の固体に対して、かつセルロースエス
テル溶液の固体に対して有利に10〜40重量%、特に有利に15〜30重量%
の量で含有している。適当なセルロースエステルの例は、セルロースニトレート
、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセトブチレ
ート、セルロースアセトプロピオネート、これらの混合物及び類似物である。有
利にセルロースアセトブチレートは、使用される。
殊に、本発明による被覆剤がメタリック−下塗ラッカーとして使用される場合
には、有利に、アセチル基12〜16重量%、ブチリル基35〜43重量%及び
ヒドロキシル基1〜2.5重量%を有しかつ重量平均分子量100000〜25
0000(数平均分子量35000〜65000)を有するセルロースエステル
は、使用される。以下、このセルロースアセトブチレートは、CAB1と略記さ
れる。
場合によっては、メタリック−下塗ラッカーの製造に付加的にもう1つのセル
ロースアセトブチレート(以下、CAB2と略記される)は、使用することがで
きる。このCAB2は、アセチル基1〜5重量%、ブチリル基48〜52重量%
及びヒドロキシル基1〜2.5重量%を有しかつ重量平均分子量100000〜
250000を有する。メタリック−下塗ラッカーの製造に、CAB1とCAB
2の混合物は、使用することができ、この場合、CAB1の含量は、有利に、C
ABの全体含量に対して少なくとも60重量%である。顔料混入された単色下塗
ラッカー(Unibasislacken)の製造に、同様に有利にCAB1のタイプ又はCAB
1とCAB2の混合物は、セルロースエステルとして使用される。しかし、さら
に、CAB2を単独で使用することも可能である。
さらに本発明による被覆剤は、少なくとも1つの溶剤を、それぞれ被覆剤の全
体重量に対して通常60〜90重量%、特に70〜85重量%含有する。
適当な溶剤の例は、既にポリエステルの製造の場合に記載された溶剤ならびに
ケトン、例えばアセトン、
メチルイソブチルケトン及び類似物である。
有利に溶剤としてエステル、例えばブチルアセテート、1−メトキシプロピル
アセテート、エチレングリコールジアセテート、2−エトキシエチルアセテート
、ブチルグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート及び類似物は、
使用される。さらに同様に、高級置換された芳香族化合物、例えばソルベント・
ナフタ(Solvent Naphta(登録商標))、重ベンゾール(Schwerbenzol)、種々のソ
ルベッソ(Solvesso(登録商標))のタイプ、種々のシェルソル(Shellsol(登録商標
))のタイプ及びディーソル(Deasol(登録商標))ならびに高沸点の脂肪族及び脂環
式の炭化水素、例えば種々のホワイトスピリット(Testbenzin)、ミネラルターペ
ン油(Mineralterpentinoel)、テトラリン、デカリン、デパノール(Depanol)及び
類似物は、適当である。
溶剤の選択の基準は、他の所望の性質の中で特に、該溶剤が被膜形成物質と反
応しないこと及び該溶剤が塗布処理及び硬化処理の際に容易に除去することがで
きることである。妥当な塗布に配慮するために?、溶剤量は、被覆剤が被膜を平滑
な表面に仕上げることができる程度もしくは被覆剤が溶融されうる程度に制御さ
れる。粘性噴霧塗布方法(Viskositaetsspruehauftragungsmethoden)の場合には
被覆の粘度は、十分に多量の溶剤の添加によって、材料塊状物が取扱い可能であ
る程度及び噴霧方法の場合に生じることが知られている
欠点なしに適当な被覆の形成下に塗布することができる程度に制御される。
場合によっては、被覆剤は、なお1つの、ヒドロキシル基を有するポリエステ
ルに対して反応性である架橋剤を含有していてもよい。しかし、物理的乾燥性被
覆剤、即ち架橋剤不含の被覆剤の配合も可能である。被覆剤が架橋剤を含有する
場合には、該架橋剤は、被覆剤の全体重量に対して通常5〜20重量%の量で使
用される。
例えば、架橋剤としてポリイソシアネート、例えば芳香族イソシアネート、例
えば2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネー
ト及びこれらの混合物、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フ
ェニレン−、p−フェニレン−、4,4−ジフェニル−、1,5−ナフタレン−
、1,4−ナフタレン−、4,4−トルイジン−、キシリレンジイソシアネート
ならびに置換された芳香族系、例えばジアニシジンジイソシアネート、4,4−
ジフェニルエーテルジイソシアネートもしくはクロロジフェニレンジイソシアネ
ート及びより高い官能価の芳香族イソシアネート、例えば1,3,5−トリイソ
シアナトベンゼン、4,4′,4″−トリイソシアナトトリフェニルメタン、2
,4,6−トリイソシアナトトルエン及び4,4′−ジフェニルジメチルメタン
−2,2′,5,5′−テトライソシアネート;脂環
式イソシアネート、例えば1,3−シクロペンタン−、1,4−シクロヘキサン
−、1,2−シクロヘキサン−及びイソホロンジイソシアネート;脂肪族イソシ
アネート、例えばトリメチレン−、テトラメチレン−、ペンタメチレン−、ヘキ
サメチレン−、トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート及びトリ
ス−ヘキサメチレントリイソシアネートは、使用することができる。
しかし、さらにポリイソシアネートは、より高い分子量を有する前重合体に結
合していてもよい。?この場合には、トルイレンジイソシアネートとトリメチロ
ールプロパンとの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート3分子から形成され
たビウレットならびにヘキサメチレンジイソシアネートの三量体及び3,5,5
−トリメチル−1−イソシアナト−3−イソシアナトメチルシクロヘキサンが挙
げられる。
しかし、上記の、常用のキャッピング剤(Verkappungsmittel)、例えばフェノ
ール、アルコール、アセト酢酸エステル、ケトキシム−及びε−カプロラクタム
、と反応させたイソシアネートは、使用することもできる。この組合せ物は、室
温で安定であり、かつ通常、100℃を超える温度で初めて硬化する。特に、例
えばアセト酢酸エステルがキャッピング(Verkappung)に使用される場合には、1
00℃未満で既に架橋が生じる可能性もある。
使用される架橋剤の量は、通常、架橋剤のイソシアネート基とポリエステルの
ヒドロキシル基の比が1:3〜3:1の範囲内にある程度に選択される。
ポリイソシアネート及び/又はイソシアネート基を有する樹脂を含有する組合
せ物は、室温ですら急速に硬化する。
さらに架橋剤としてアミノ可塑性樹脂、例えばメラミン−ホルムアルデヒド縮
合生成物、ベンゾグアナミン−は、ホルムアルデヒド縮合生成物、尿素樹脂及び
類似物は、使用することができる。適当なアミノ可塑性樹脂の例は、例えば、市
販のメラミン、ヘキスト社(Hoechst AG)の樹脂マプレナル(Maprenal)MF600、MF
650、MF800である。
この場合によっては使用されるアミノ可塑性樹脂の使用量は、被覆剤の重量に
対して通常3〜8重量%である。
さらに、本発明による被覆剤は、場合によってはなお別の樹脂、例えばポリウ
レタン樹脂を含有することができる。適当なポリウレタン樹脂は、通常、数平均
分子量3000〜7000を有する。
例えば、欧州特許出願公開第355433号明細書、ドイツ国特許出願公開第
3545618号明細書及びドイツ国特許出願公開第3813866号明細書に
記載されたポリウレタン樹脂は、使用することができる。しかしこの他に、下塗
ラッカーに常用される他の
ポリウレタン樹脂の使用も可能である。この場合によっては添加されるポリウレ
タン樹脂の使用量は、被覆剤の重量に対して、かつ固体ポリウレタン樹脂に対し
て通常15〜40重量%である。
さらに本発明による被覆剤は、なおエポキシエステル樹脂、例えばエポキシ樹
脂とカルボン酸の反応生成物、エポキシ改質されたアクリレートならびにエポキ
シ改質されたポリエステルを含有していてもよい。例えば、市販のエポキシ改質
された脂肪酸−ポリエステル、DSM クンストハルツェ社(DSM Kunstharze
GmbH)のウララック(Uralac)AB733X−90は、使用することができる。
この場合によっては添加されるエポキシ改質された樹脂の使用量は、被覆剤の
重量に対して通常0〜4重量%である。
本発明による被覆剤が下塗ラッカーとして使用される場合には、該被覆剤は、
更なる成分としてなお、被覆技術で常用されている顔料を含有する。このような
顔料は、1〜50μmの範囲内の粒度を有することができ、かつ無機物質、例え
ば二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛もしくはカーボンブラック、
又は有機物質、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルバ
ゾールバイオレット、アントラピリミジンイエロー、フラバントロンイエロー(V
lavathrongelb)、イソインドリンイエロー、インダン
トロンブルー、キナグリンドンバイオレット(Chinagrindonviolett)及びフェリ
ーレンレッド(Pherylenrot)を有することができる。この関連では金属顔料は、
特に重要であり、この場合、この金属顔料は、アルミニウム、銅、スズ、ニッケ
ルもしくはステンレス鋼のフレークからなり、即ち、それというのもこのフレー
クによっていわゆる金属効果を達成することができるからであり、この金属効果
によって種々の光反射が層の角度に応じて達成される。上記顔料の使用量は、被
覆剤の全体重量に対して通常0〜40重量%である。
その上、被覆剤は、さらに常用の充填剤、例えば珪酸、タルク、カオリン、金
属酸化物、シリケート、スルフィド及び類似物を含有していてもよい。これら充
填剤は、被覆剤の重量に対して通常0〜10重量%の量で使用される。その上、
本発明による被覆剤は、常用の助剤及び添加剤を常用の量、有利に、被覆剤の全
体重量に対して0.01〜10重量%で含有する。適当な助剤及び添加剤の例は
、レベリング剤、例えばシリコーン油、可塑剤、例えばリン酸エステル及びフタ
ル酸エステル、粘度調整添加剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤及び類似物
である。
その上さらに被覆剤は、有利に、架橋触媒を被覆剤の重量に対して通常10重
量%までの量で含有する。
ポリエステルが既に第三級アミノ基を有している場合には、架橋触媒の使用は
、通常なくともよい。
適当な架橋触媒の例は、例えばリン酸、p−トルエンスルホン酸、スズジブチ
ルジラウレート、スズジオクチルジラウレート、アミン、例えば脂肪族ジアミン
、例えばエチレンジアミン、ヘキサンジアミン、脂肪族ポリアミン、例えばジエ
チレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、脂
環式アミン、例えばピペリジン、ピペラジン、芳香族アミン、エタノールアミン
、トリエチルアミン、ジアザビシクロオクタン、アミジン、例えばジアザビシク
ロノネン、ジアザビシクロウンデセン及び低分子量塩基性シロキサンである。有
利にポリエステル100重量部に対して触媒(固体)1〜10重量部が使用され
る。
被覆剤の製造は、公知方法で、各成分の混合及び場合によっては分散によって
行なわれる。本発明による被覆剤は、吹付、フローコーテイング、浸漬、ローラ
塗布、ナイフ塗布もしくは刷毛塗りによって支持体上に被膜の形で塗布すること
ができ、この場合、引き続き、該被膜は、固着した被覆が得られるまで硬化され
る。
この被覆剤の硬化は、通常室温もしくは軽度に高められた温度、特に100℃
未満の温度、殊に80℃未満の温度で行なわれる。しかし被覆剤は、焼付条件下
で、即ち少なくとも100℃の温度で硬化させることもできる。
支持体として殊に金属ならびに木材、プラスチック、ガラス及び類似物は、適
当である。
短い硬化時間及び低い硬化温度のため、本発明による被覆剤は、有利に自動車
補修ラッカー塗装に使用される。しかし、該被覆剤は、使用される架橋剤に応じ
て、流れ作業式自動車ラッカー塗装に使用することもできる。
本発明による被覆剤は、混合物系、特に補修ラッカー塗装の範囲内の混合物系
のベースカラー(Basisfarbe)としても適当である。特に有利に本発明による被覆
剤は、常用の被覆剤の製造のための混合物系に使用される。この種の混合物系は
、例えば未公開のドイツ連邦共和国特許出願第P4232721.0号明細書に
記載されている。このドイツ連邦共和国特許出願明細書に記載されている混合物
系は、該混合物系が、
A)水5重量%未満、着色顔料及び/又は効果顔料少なくとも1つ、有機溶剤、
水で希釈可能かもしくは水に分散可能な結合剤少なくとも1つならびに場合によ
っては助剤及び添加剤を含有している種々のベースカラーA、
B)水5重量%までを含有していてもよい、溶剤含有、結合剤含有かつ顔料不含
の成分B少なくとも1つならびに場合によっては、
C)架橋剤少なくとも1つを含有している成分C及び
D)有機溶剤、場合によっては水ならびに場合によっ
ては添加剤及び触媒を含有している成分D
を含有していることを特徴とする。この場合には、ヒドロキシル基を有するポリ
エステル及びセルロースアセトブチレートを基礎とする、本発明による被覆剤は
、成分Bの製造に使用される。この場合には殊に、得られる被覆剤の良好な色調
の一致は、特に、本発明による、ポリエステル樹脂(固体)1000gあたり分
枝0.6〜1.2の分枝度を有するヒドロキシル基を有するポリエステルが使用
される場合には、有利である。
架橋剤(C)として、例えば上記架橋剤は、使用される。しかし、物理的乾燥
性被覆剤は、上記混合物系を用いて製造することもでき、この場合、成分(C)
を省略することができる。
有利に本発明による被覆剤は、ベースコート−/クリアコートタイプの多層ラ
ッカー塗装のための下塗ラッカー塗料として使用される。
上記混合物系は、殊に経済的な観点において、水で希釈可能もしくは水に分散
可能な結合剤を含有するベースカラーAによって、専ら1つのベースペースト系
(Basispastenreihe)を水性系ならびに有機溶液系(organisch geloeste Systeme)
に使用することを可能にするという特別な利点を有している。その上、本発明に
よる、本質的に水不含の、有利に完全に水不含のベースカラーの使用は、該ベー
スカラーの貯蔵に、(例え
ば相応する内部ラッカー塗装によって)水による腐食に対して保護されている必
要のない容器を使用することができるという利点を提供する。さらに、ベースカ
ラーの配合に、一定の前提条件下で、水に対して不安定な顔料も使用可能となり
、このことによって、提供される顔料の選択が著しく拡大される。
次に、本発明による混合物系の各成分を詳説する。
混合物系の成分Aは、顔料が短い時間内に(成分AとBが一緒に撹拌されてか
らラッカーが適用されるまでの時間)水と反応しないこと及び水に溶解しないこ
とを前提条件として、ラッカーに常用の全ての顔料を含有していてもよい。この
場合には成分Aは、無機もしくは有機の物質を基礎とする着色顔料及び/又は効
果顔料を含有していてもよい。できるだけ総合的な使用範囲を保証するために、
かつできるだけ多くの色調の実現を可能にするために、着色顔料のみを含有する
成分A及び効果顔料のみを含有する成分Aを基礎とする混合物系を合成すること
は、有利である。
成分Aの製造に、水性被覆剤の製造に常用の全ての効果顔料は、使用すること
ができる。適当な効果顔料の例は、市販のアルミニウム青銅、ドイツ国特許出願
公開第3636183号明細書によってクロメート処理されたアルミニウム青銅
、市販のステンレス鋼青銅ならびに他の常用の金属小片及び金属フレーク顔料で
ある。成分Aの製造には、非金属効果顔料、例えば真
珠光沢−ないしは干渉色顔料も適当である。無機物を基礎とする適当な着色顔料
の例は、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等である。有機物を基礎とす
る適当な着色顔料の例は、インダスレンブルー、クロモフタルレッド、イルガジ
ンオレンジ、シコトランイエロー、ヘリオゲングリーン等である。
成分Aに使用するための結合剤として、通常水性被覆剤に使用されかつ有機溶
液の形で存在することができる、全ての水希釈可能ないしは水分散可能な結合剤
は、適当である。この場合には、樹脂の水希釈可能性ないしは水分散可能性は、
補助溶剤ないしは溶剤としての相応する溶解助剤の使用によって調整することも
できる。結合剤の選択にとって一方では、有機溶剤での良好な貯蔵安定性、殊に
また顔料の沈澱を回避する能力、ならびにもう一方では、成分B中へのベースカ
ラーの問題のない混入可能性ないしはベースカラー中への成分Bの問題のない混
入可能性は、決定的である。
殊に成分Aのための結合剤として、水希釈可能ないしは水分散可能な、かつ有
機溶剤の形で存在しうるポリウレタン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステ
ル樹脂及びアミノプラスト樹脂ならびにこれらの混合物は、使用される。
ベースカラー中の結合剤として使用されるポリウレタン樹脂は、原理的に公知
である。例えば、水性下塗ラツカー(Wasserbasislacken)への使用に関する参考
文献に記載されているポリウレタン樹脂は、該ポリウレタン樹脂が(各参考文献
に記載されている製造の変法の場合に)有機溶液の形で存在しうる場合には、適
当である。
適当なポリウレタン樹脂の例は、次の明細書記載されている樹脂である:欧州
特許出願公開第355433号明細書、ドイツ国特許出願公開第3545618号明細書、ド
イツ国特許出願公開第3813866号明細書ならびにドイツ国特許出願公開第4005961
号明細書。
適当なポリアクリレート樹脂の例は、例えばドイツ国特許出願公開第3832826
号明細書に記載されている樹脂である。成分Aのための結合剤として、水希釈可
能ないしは水分散可能でありかつ有機溶液の形で存在しうるポリエステル樹脂及
びアミノプラスト樹脂もまた適当である。
従って、本発明の対象は、
1.下塗ラッカーを塗布し、
2.段階(1)の際に塗布された組成物からポリマー被膜が表面上に形成され、
3.このようにして得られた下塗層に透明上塗ラッカーを塗布し、かつ
4.この上塗層を下塗層とともに硬化させ、
この場合、下塗ラッカーとして段階(1)の際に、本発明による被覆剤を使用する
ことを特徴とする、
支持体表面上の多層の保護及び/又は装飾被覆の製法
である。
即ち、上記方法の場合には、下塗被覆組成物の塗布後直ちに、有利に短い曝気
時間後に焼付段階なしに、透明な上塗被覆組成物が塗布される。引き続き、下塗
層は、上塗層とともに焼き付けられる("ウェット・イン・ウェット方法")。
下塗層及び上塗層の上記の硬化は、自動車補修ラッカー塗装の場合には、通常
100℃未満、有利に80℃未満の温度で行なわれる。他の場合には、硬化は、通常
、100〜150℃の温度及び15〜30分間の時間で行なわれる。得られた下塗層の乾燥
被膜の層の厚さは、通常8〜20μmであり、上塗ラッカー層の乾燥被膜の層の厚さ
は、通常20〜60μmである。
上記方法のための透明ラッカーとして、例えば欧州特許出願公開第379598号明
細書に記載されているヒドロキシル基を有する成分、セルロースエステル及びイ
ソシアネートを基礎とする透明ラッカーは、適当である。さらに、ドイツ国特許
出願公開第3942803号明細書に記載されている、シリル基を有する重合体を基礎
とする透明ラッカーならびにドイツ国特許出願公開第4024204号明細書に記載さ
れているヒドロキシル基を有する重縮合生成物及び重付加生成物を基礎とする透
明ラッカーは、透明ラッカーとして適当である。
次に本発明を例につき詳説する。部及びパーセンテージに関する全ての記載は
、他に明確に確定されてい
ない場合には、重量による記載である。
1.1ヒドロキシル基を有するポリエステル1の製造
撹拌機、頭頂部温度検出器を有する蒸気加熱蒸留塔及び蒸気分離器が備えられ
た、4lのステンレス鋼容器(Edelstahlkessel)中に次の材料を装入する:
ネオペンチルグリコール 1038.0部
トリメチロールプロパン 611.2部
無水フタル酸 1264.6部
アジピン酸 831.7部
キシレン 145.8部。
1時間で、温度135℃に加熱し、この場合には、蒸留の開始を観察することがで
きる。さらに、100℃未満の蒸留塔頭頂部温度の厳守下に、最大の生成物温度210
℃になるまで徐々に加熱する。
この生じた水連続的に共沸蒸留する。酸価12〜14mg KOH/g及び粘度18〜19dPa.
s(キシレン中60%、平板−球粘度計(Platte-Kegel−Viskosimeter、23℃で測定
された)の達成後に、冷却し、かつブチルアセテートを用いて固体含量80%に溶
解する。このようにして得られたポリエステル樹脂1は、粘度(平板−球粘度計を
用いて、23℃で、キシレン中60%で測定された)14.2dPa.s及び数平均分子量3000
ならびに重量平均分子量105000を有していた(ゲル透化クロマトグラフィーによ
って、標準としてのポリスチレンに対して、測定された)。不均一度Mw/Mnは35で
あり、かつOH価は96.5mg KO
H/gであった。
1.2ヒドロキシル基を有するポリエステル2の製造
例2は、例1からの組成物の樹脂に相応するが、しかし、ジブチルスズオキシド
0.05%(固体の装入物質に対して)を触媒として使用する。製造方法は、同様であ
り、酸価12〜14mg KOH/g及び粘度13〜15dPa.s(キシレン中60%、平板−球粘度計
により、23℃で測定された)の達成後に冷却し、6%のキシレンを用いて溶解し、
かつさらに、120℃未満の温度の達成後にブチルアセテートを用いて固体含量65
%に溶解する。このようにして得られたポリエステル樹脂2は、粘度(平板−球粘
度計を用いて23℃で、ブチルアセテート中60%で測定された)13.5dPa.s及び数平
均分子量3100ならびに重量平均分子量155000を有していた(ゲル透化クロマトグ
ラフィーによって、標準としてのポリスチレンに対して測定された)。不均一度M
w/Mnは、52であり、かつOH価は、96mg KOH/gであった。
1.3ヒドロキシル基を有するポリエステル3の製造
撹拌機、頭頂部温度検出器を有する蒸気加熱蒸留塔及び蒸気分離器が備えられ
た、4lのステンレス鋼容器中に次の材料を装入する:
トリメチロールプロパン 198部
ネオペンチルグリコール 892部
無水フタル酸 437部
イソフタル酸 490部
ジブチルスズオキシド 1.15部
上記成分を混合し、かつ不活性ガス雰囲気下に徐々に溶解する。140℃で蒸留
は開始する。さらに1時間ごとに試料取り出し、かつ透明の溶融物が得られるか
否かを視覚的に検査する。酸価約45mg KOH/gで、溶融物は透明になった。さらに
溶融物に次のさらなる成分を添加する:
アジピン酸 575部
キシレン 24部。
その後に最大100℃の蒸留塔頭頂部温度の厳守下に220℃に8〜12時間にわたり
さらに加熱する。この混合物を15mg KOH/g未満の酸価になるまで縮合し、粘度は
、なお約9.8dPa.sであった(キシレン中60%で測定された)。この酸価の達成後に
、この樹脂をキシレンを用いて理論値の90%の固体含量に、かつブチルアセテー
トを用いて理論値の65%の固体含量に溶解する。このポリエステル樹脂溶液は、
ブチルアセテートを含有する60%の希釈液中で粘度9.8dPa.s(ICI平板−球粘度
計により、23℃で測定された)ならびに酸価11.6mg KOH/g(固体に対して)を有し
ていた。
このようにして得られたポリエステルは、数平均分子量4500g/モル、重量平均
分子量65500g/モル(GPCによって、標準としてのポリスチレンに対して)及びOH
価
57mg KOH/gならびに不均一度Mw/Mn15を有していた。
1.4ヒドロキシル基を有するポリエステルV1の製造
撹拌機、頭頂部温度検出器を有する蒸気加熱蒸留塔及び蒸気分離器が備えられ
た、4lのステンレス鋼容器中に、次の材料を装入する:
ネオペンチルグリコール 730.3部
トリメチロールプロパン 537.4部
無水フタル酸 890.0部
アジピン酸 585.0部
キシレン 114.3部
上記材料を温度135℃に約1時間加熱し、この場合、蒸留の開始を観察すること
ができる。さらに、100℃未満の蒸留塔頭頂部温度の厳守下に最大の生成物温度2
10℃になるまで徐々に加熱する。
生じた水を連続的に共沸蒸留する。酸価12〜14mg KOH/g及び粘度6.1dPa.s(1−
メトキシプロピルアセテート中60%、平板−球粘度計により、23℃で測定された
)の達成後に冷却し、かつブチルアセテートを用いて固体含量60%に溶解する。
このようにして得られたポリエステル樹脂V1は、粘度(平板−球粘度計を用いて2
3℃で測定された)2.6dPa.s及び数平均分子量2050ならびに重量平均分子量9100を
有していた(ゲル透化クロマトグラフィーによって、標準としてのポリスチレン
に対して):不均一度Mw/Mnは、5であり、OH価は、14
6mg KOH/gであった。
1.5ヒドロキシル基を有するポリエステルV2の製造
撹拌機、頭頂部温度検出器を有する蒸気加熱蒸留塔及び蒸気分離器が備えられ
た、4lのステンレス鋼容器中に、次の材料を装入する:
トリメチロールプロパン 992.8部
イソノナン酸 365.8部
安息香酸 282.9部
無水ヘキサヒドロフタル酸 528.1部
シクロヘキサンジカルボン酸 589.8部
キシレン 115部
上記成分を混合し、かつ不活性ガス雰囲気下に徐々に溶解する。140℃で蒸留
は開始する。その後に最大100℃の蒸留塔頭頂部温度の厳守下に220℃に5〜7時間
さらに加熱する。この混合物を15mg KOH/g未満の酸価になるまで縮合し、粘度は
、なお8.5dPa.sであった(ブチルアセテート中55%、平板−球粘度計により、23
℃で測定された)。上記酸価の達成後に、溶融物としての樹脂を流出させる。樹
脂の後処理可能な溶液は、所望の溶剤中での溶融及び溶解によって製造すること
ができる。粘度は、キシレン中で、固体含量55%で9.1dPa.sであった(平板−球
粘度計により、23℃で測定された)。このようにして得られたポリエステルV2は
、数平均分子量2250ならびに重量平均分子量247000を有して
いた(ゲル透化クロマトグラフィーによって、標準としてのポリスチレンに対し
て)。不均一度Mw/Mnは、110であり、OH価は、111mg KOH/gであった。
1.6ヒドロキシル基を有するポリエステルV3の製造
撹拌機、頭頂部温度検出器を有する蒸気加熱蒸留塔及び蒸気分離器が備えられ
た、4lのステンレス鋼容器中に、次の材料を装入する:
ネオペンチルグリコール 1006.1部
トリメチロールプロパン 356.3部
アジピン酸 1763.4部
ジブチルスズオキシド 0.675部
キシレン 112.5部
上記成分を混合し、かつ徐々に溶解する。135℃で蒸留は開始する。その後に
最大100℃の蒸留塔頭頂部温度の厳守下に220℃に5〜7時間さらに加熱する。この
混合物を酸価16mg KOH/gになるまで縮合し、粘度は、なお8.5dPa.sであった(キ
シレン中60%、平板−球粘度計により、23℃で測定された)。設定値の達成後に
、冷却し、キシレンを用いて固体含量90%に、かつさらにブチルアセテートを用
いて固体含量65%に希釈する。樹脂溶液の粘度は、17.8dPa.s(平板−球粘度計に
より、23℃で測定された)であり、酸価は、15.5mg KOH/gであった。このように
して得られたポリエステルV3は、数平均分子量3294ならびに重量平均分子量2600
00を有して
いた(ゲル透化クロマトグラフィーによって、標準としてのポリスチレンに対し
て);不均一度Mw/Mnは、79であり、OH価は、75mg KOH/gであった。
1.7ヒドロキシル基を有するポリエステルV4の製造
撹拌機、頭頂部温度検出器を有する蒸気加熱蒸留塔及び蒸気分離器が備えられ
た、4lのステンレス鋼容器中に次の材料を装入する:
トリメチロールプロパン 188.0部
ネオペンチルグリコール 829.0部
無水ヘキサヒドロフタル酸 1443.0部
キシレン 96.0部。
その上、この成分に、固体の装入物質に対してスズ触媒0.05%を添加する(水
素化モノブチルスズオキシド、商品名Fascat4100、Atochem Nederland)。
上記成分を混合し、かつ不活性ガス雰囲気下に徐々に溶解する。140℃で蒸留
は開始する。その後に最大100℃の蒸留塔頭頂部温度の厳守下に220℃に5〜7時間
さらに加熱する。この混合物を10mg KOH/g未満の酸価になるまで縮合し、粘度は
、なお約14.5dPa.sであった(キシレン中60%で測定された)。
上記酸価の達成後に、この樹脂をキシレンを用いて理論値の90%の固体含量に
、かつブチルアセテートを用いて理論値の65%の固体含量に溶解する。このポリ
エステル樹脂溶液は、ブチルアセテートを含有する、60%の希釈液中で粘度8.8d
Pa.s(ICI平板−球粘度計により、23℃で測定された)ならびに酸価8.0mg KOH/g(
固体に対して)を有していた。
このようにして得られたポリエステルは、数平均分子量3250g/モル、重量平均
分子量61000g/モル(GPCによって、標準としてのポリスチレンに対して)を有して
おり、かつ不均一度MW/Mn19及びOH価46mg KOH/gを有していた。
2.1セルロースアセトブチレート溶液1
CAB15%及びブチルアセテート85%を含有するセルロースアセトブチレート溶
液を使用した。この使用されたセルロースアセトブチレートは、アセチル基13〜
16%、ブチリル基36〜42%、ヒドロキシル基1〜2%を含有しており、かつ重量平
均分子量約40000を有していた。
2.2セルロースアセトブチレート溶液2
使用されたセルロースアセトブチレート溶液2は、セルロースアセトブチレー
ト15%及びブチルアセテート85%を含有していた。このセルロースアセトブチレ
ートは、アセチル基2.5〜4%、ブチリル基36〜42%及びヒドロキシル基1〜2%を
有していた。セルロースアセトブチレートの重量平均分子量は、約40000であっ
た。
3. 下塗ラッカー1〜4及びV1〜V5の製造
本発明による被覆剤の製造を常法で、先ずワックス沈殿物(Wachsfaellung)を
、該ワックス沈殿物がむらがなくなる(stippenfrei)まで前撹拌することによっ
て行なう。さらに、急速に撹拌しながらセルロースアセトブチレート溶液を添加
する。その後にアルミニウム顔料が得られるまでの他の成分及び溶剤を添加する
。このアルミニウム顔料を先ずブチルアセテート5部で混練し、かつこの混練物
を他の成分に撹拌しながら添加する。さらになお溶剤の残量を添加する。下塗ラ
ッカー1〜4及びV1〜V5の組成物は、表1に記載されている。下塗ラッカーの塗布
を40x60cmの大きさの薄板に行なう。基剤(Untergrund)として、市販の、常用の
充填剤(エポキシ官能性結合剤及びアミノ官能性硬化剤を含有する、商品Glasuri
t Grundfueller EP AC 01-1492、グラズリート社(Glasurit GmbH)、Muenster)を
使用した。この充填剤を吹付によってを塗布し、かつ10分間の曝気時間後にさら
に80℃で20分間乾燥した。充填剤の乾燥した層の厚さは、50〜80μmであった。
その後に、それぞれの下塗ラッカーを吹付塗布により塗布し、この場合、先ず第
1の吹付過程及び5分間の曝気時間後に第2の吹付過程を行なった。20分間の曝
気時間後に、同様に室温で透明ラッカーを塗布し、透明ラッカーとして、グラズ
リート社(Glasurit GmbH)の、ポリア
クリレートを基礎とする、市販の透明ラッカー、グラズリート(Glasurit)AF23−
0185(Macrynal(登録商標)SM513、ヘキスト社(Hoechst AG)に類似している)を、
グラズリート社(Glasurit GmbH)の、イソシアネートを基礎とする硬化剤SC29−
0173(ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートを基礎
とする、三量化された、イソシアヌレート基を有するイソシアネートからの混合
物)と2:1の比で混合した形で、上塗りした。透明ラッカー塗布を吹付によって行
ない、この場合、吹付過程及び2分間の曝気時間後の第2の吹付過程を実施し、
周囲温度での10分間の曝気時間後にさらに60℃で30分間乾燥した。下塗層の層の
厚さは、20〜25μmであり、透明ラッカー層の層の厚さは、60〜80μmであった。
被覆の試験の結果は、表2にまとめられている。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),BG,BR,BY,CA,C
Z,GE,HU,JP,KG,KZ,LT,LV,MD
,PL,RO,RU,SI,SK,TJ,UA,US,
UZ
(54)【発明の名称】 ヒドロキシル基を有するポリエステル少なくとも1つを含有する被覆剤、該被覆剤の製法ならび
に該被覆剤の下塗ラッカーとしての使用及び多層の保護被覆及び/又は装飾被覆を得る方法への
使用