【発明の詳細な説明】
ガンマピロンの合成方法発明の分野
本発明は、乾燥中性溶媒を反応媒質として使用することを特徴とする、マルト
ールおよびエチルマルトールのような特定のガンマピロンの製造方法に関する。発明の背景
マルトールはカラマツの若木の樹皮、松葉およびチコリに見られる天然物質で
ある。マルトールは次の構造を有する:
マルトールは各種食品の風味および芳香を増す化合物であり、一般に式
(式中、Rは水素、(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、フェニル
またはベンジルである)
を有するカンマピロンと呼ばれる種類の化合物の1つである。Rがメチル(マル
トール)またはエチル(エチルマルトール)である化合物は、食品の風味強化剤
としての使用が規制されてる。さらに、これらの物質は香料またはエッセンスの
成分として用いられる。ピロメコン酸(式II、R=H)誘導体、例えば米国特許
第3,365,469号に記載の2−アルケニルピロメコン酸は、バクテリアお
よび菌類の成長を抑制し、食品および飲料の風味および芳香強化剤、並びに香水
の芳香強化剤として有用である。
マルトールについて多くの製法が報告されてきた。初期の市販品は木材の分解
蒸留からのものであった。3−ヒドロキシ−2−(1−ピペリジルメチル)−1
,4−ピロンからのマルトールの合成は、J.Am.Chem.Soc.、69
、2908(1947)においてSpielmanおよびFreifelder
によって報告されている。SchenckおよびSpielmanはJ.Am.
Chem.Soc.、67、2276(1945)においてストレプトマイシン
塩のアルカリ性加水分解によりマルトールを得ている。ChawlaおよびMc
GonigalはJ.Org.Chem.、39、3281(1974)、並び
にLichtenthalerおよびHeidelはAngew.Chem.、
81、998(1969)において保護された炭水化物誘導体からのマルトール
の合成を報告している。ShonoおよびMatsumuraはTetrahe
dron Letters No.17、1363(1976)においてメチル
フルフリルアルコールを用いて出発するマルトールの5段階合成について記して
いる。
ピロメコン酸、マルトール、エチルマルトールおよび他の2−置換−3−ヒド
ロキシ−ガンマピロンのようなガンマピロンの合成については、米国特許第3,
130,204号、第3,133,089号、第3,140,239号、第3,
159,652号、第3,365,469号、第3,376,317号、第3,
468,915号、第3,440,183号、第3,446,629号、第4,
082,717号、第4,147,705号、第4,323,506号、第4,
342,697号、第4,387,235号、第4,390,709号、第4,
435,584号、および第4,451,661号に記載がある。ガンマピロン
の一般的な製法はBrennan等の米国特許第4,435,584号に記載さ
れている。この特許には、特に、水性/プロトン性媒質中で一般に行われるワン
ポットのフルフリルアルコールに基づく合成法が記載されている。本発明は、フ
ルフリルアルコール先駆体を用いることができるが、対照的に、反応媒質として
乾燥中性溶媒を用いてハロエノンを所望のガンマピロン生成物へ変換することに
基づく。発明の概要
本発明の1つの態様は、式
(式中、Rは(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、フェニルまたは
ベンジルである)
を有する化合物の合成方法であって、約40℃以上の温度、好ましくは約60℃
以上の温度で、反応媒質としての乾燥中性溶媒中、式
(式中、Rは上記定義通りであり、R1は(C1−C6)アルキルまたはヒドロキ
シ(C2−C4)アルキルであり、Xはクロロまたはブロモである)
を有する化合物(ハロエノン)を、触媒的に有効な量の酸で処理して、上記化合
物IIIを上記化合物IIへ変換する上記の方法を提供するものである。200℃以
上の高い温度を用いることもできるが、約80〜約120℃で反応を行うのが最
も好ましい。
上の記載は、ハロエノンIIIをガンマピロンIIへ変換する反応を説明するもの
である。頭文字”H−T−GP”は便宜上、フレーズ”haloenone−t
o−gamma pyrone(ハロエノンからガンマピロンへ)”の省略とし
てここでは用いる。
式IIIのハロエノンは、次のスキームIに示すように、式IVの相当するフルフ
リルアルコールをハロゲン酸化体とアルコールR1OHの水溶液中で反応させる
ことによって得ることができる。スキームIはまた上記のH−T−GP変換工程
を示し、従って、本発明による化合物の全体的な製造方法を示す。
ハロエノンIIIのアルコキシ形は、他の成分の中でヒドロキシ形IIIaと平衡状態
にあると考えられ、この平衡は以後”アルコキシ−ヒドロキシ平衡”と呼ぶ。
式IVのフルフリルアルコールの製造の際の出発物質として有用な先駆体化合物
は、当業界ではアルコールの製造方法と共に周知である。式IVの化合物は、例え
ば、フルフラールを式RMgX(RおよびXは上記定義通りである)の適当な相
当するグリニャール試薬と反応させることによって製造することができる。本発
明に有用な多くのフルフリルアルコールは購入することもできる。
フルフリルアルコールIVをハロエノンIIIへ変換するスキームIの第1工程[
この第1工程はここでは”ATH変換”と省略する。”ATW”は”alcoh
ol−to−haloenone(アルコールからハロエノンへ)”の頭文字で
ある]、およびハロエノンIIIをガンマピロンIIへ変換する第2のH−T−GP
変換工程[この第2工程はここでは”H−T−GP変換”と省略する]は共に、
水と(C1−C6)アルコール、通常はメタノールもしくはエタノール、またはエ
チレングリコール、プロピレングリコールもしくはブチレングリコールのような
(C2−C4)ジオールとの混合物である溶媒中で行うのが一般的である。第1工
程
ATH変換では、変換をクリーンにかつ良好な収率で進めるために水/アルコー
ル溶液を用いるのが望ましい。しかしながら、理論に縛られたくないが、次の第
2H−T−GP変換工程での水/アルコール溶液の使用は、クリーンにするのが
難しいタール状残留物の形成を導き、これはプロセスの全体コストを高める一因
となると考えられる。タールは少なくとも一部は有用ハロエノン反応体の消費結
果として、主にヒドロキシの形で形成され、そのため、タールの形成が避けられ
たりまたは少なくとも減じることができたときに得られる収量に比べて、ガンマ
ピロンの収量は低下すると考えられる。従って、H−T−GP変換を、後でさら
に定義するような乾燥中性溶媒中で行うことにより、スキームIに示すアルコキ
シ−ヒドロキシ平衡は、タールの形成にたずさわることが比較的少ないまたは全
くないアルコキシ形IIIに実質的に有利にシフトされると考えられる。その結果
、タールの形成を減じることができ、収量はよくなる。
ハロエノンIIIはシスおよびトランス異性体として一般に生成されるが、異性
体混合物の存在は、両異性体がガンマピロン生成物の形成へつながるので、本発
明に特に影響しない。RおよびR1がメチルである式IIIのトランス異性体は、実
施例に示すように、溶媒により、溶液から自然に晶出しうる。
H−T−GP変換用の中性溶媒反応媒質は”乾燥”したものであり、水および
アルコールのようなプロトン性溶媒成分(すなわち、下記のような(C1−C6)
アルコールまたは(C2−C4)ジオールを含む)は、ハロエノン1当量当たり、
全体で約1当量未満であるべきであることを意味する。従って、ここで用いる”
乾燥”という用語は、全プロトン溶媒成分の含有率が比較的少ないことを指し、
水の含有率が少ないことを指すのではない。H−T−GP中性反応媒質はプロト
ン性溶媒成分を実質的に含まないのが好ましく、”実質的に含まない”とは、ハ
ロエノン1当量当たり、全プロトン性溶媒成分(水およびアルコールおよび/ま
たはジオール)が0.1当量未満であることを意味する。
本発明において有用なハロエノンIIIは、ATH水/アルコール反応媒質から
直接抽出する必要はない。むしろ、ハロエノンIIIはまず水/アルコール媒質か
ら単離するか、または当業界で公知の他の化学的手段によって誘導し、そしてH
−T
−GP変換に加えることができる。ハロエノンIIIの単離は、例えば溶媒を蒸発
させ、次に真空蒸留して実質的に純粋なハロエノンを得ることにより行うと都合
がよい。RおよびR1がメチルである特定のトランスハロエノン異性体は、水/
アルコール溶液から自然に結晶化する。この特定の化合物は簡単な濾過によって
集めると結晶が得られ、任意にその後、精製するためにヘキサンから再結晶して
もよい。
水/アルコールATH反応媒質の直接抽出を用いるならば、H−T−GP変換
は、ATH水/アルコール反応媒質からH−T−GP変換用の反応媒質として使
用される中性溶媒に持ち込まれる水および他のプロトン性成分(例えは、アルコ
ール)を少なくとも一部除去した後に行うのが好ましい。最も好ましいのは、H
−T−GP変換を、上記のように水もアルコールも実質的に含まない中性溶媒中
で行うことである。ATH変換から持ち込まれる水およびアルコールを、H−T
−GP反応媒質よりなる中性溶媒から除去する程度で、タールの形成を減じかつ
収率をよくすることができる。従って、ハロエノンIIIが、水および(C1−C6
)アルコールおよび/または(C2−C4)ジオールの混合物を反応溶媒として用
いるATH変換プロセスを経て製造される場合、本発明は式
(式中、Rは(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、フェニルまたは
ベンジルである)
を有する化合物の合成方法をさらに提供するものであり、その方法は次の工程
(A)式
(式中、Rは上記定義通りである)
を有する化合物を、(C1−C6)アルコールまたは(C2−C4)ジオールを含有
する水溶液中、反応性臭素または塩素を含有するハロゲン酸化体で処理して、式
(式中、R1は(C1−C6)アルキルまたはヒドロキシ(C2−C4)アルキルで
あり、Xはクロロまたはブロモである)
を有する化合物の水溶液を得ること;
(B)工程(A)で製造された水溶液を有機溶媒(ここでは抽出溶媒と呼ぶ)
で抽出して、上記化合物IIIおよび上記有機溶媒よりなる溶液を生成すること;
並びに
(C)工程Bで抽出した上記化合物IIIを、約40℃以上の温度で、乾燥中性
溶媒中、触媒的に有効な量の酸で処理して、上記化合物IIIの上記化合物IIへの
変換を行うこと
を含んでなるものである。
好ましい態様では、工程(C)の中性反応媒質は水およびアルコールを実質的
に含まない。発明の詳細な説明
本発明は、まずATH変換を、米国特許第4,435,584号、第4,32
3,506号、第4,368,331号および第4,387,235号に記載の
ような当業界で公知のように行うことによって一般に実施する。一般に、フルフ
リルアルコールIVは、低級アルコールまたはジオールの水溶液中、ハロゲン酸化
剤で処理すると、ハロエノンIIIとなる。水対アルコールの比は、反応の化学量
論を満たすのに十分なアルコールでありさえすれば限定されない。水/アルコー
ル比は通常、約20:1〜約1:20(v/v)であり、1:1が一般的である
。
後でさらに説明するように、入手しやすさ、低コストおよびH−T−GP変換
を行う前のストリッピングのしやすさから、アルコールとしてはメタノールが好
ましい。エタノールおよびプロピルアルコールの異性体も、水にあらゆる割合で
混和しうるので好ましい。ジオールを用いるならば、エチレングリコール、プロ
ピレングリコールまたはブチレングリコールのようなグリコールを使用するのが
好ましい。
水と2相系を形成するアルコールも使用可能であり、ATH変換は2相系で行
われる。しかしながら、2相系の場合、ハロエノン生成物はアルコール層に、よ
り可溶性となる。従って、ハロエノンはH−T−GP工程の場合、アルコール層
を分離し、そしてアルコールを蒸発させた後に、残留物として有利に得ることが
でき、その後、残留物をH−T−GP反応媒質として作用する中性溶媒に加える
。次に、H−T−GP変換をここに記載のように行う。ATH反応媒質の中間抽
出は行う必要がない。この方式での本発明の実施は、ATH変換に用いるアルコ
ールが水溶性であるときほどは好ましくない。
一般に少なくとも2当量のハロゲン酸化剤をATH変換で用いる。ハロゲン酸
化剤は塩素、臭素、塩化臭素、次亜塩素酸もしくは次亜臭素酸またはこれらの混
合物である。塩化臭素は市販されているガスである。ハロゲン酸化剤はこれを水
/アルコール反応媒質全体に単にまき散らすことによって加えることができる。
これはまた、塩素を臭化ナトリウムもしくはカリウム溶液に加えることによって
、または臭素を塩化ナトリウムもしくはカリウム溶液に加えることによってその
場で製造することもできる。次亜塩素酸もしくは次亜臭素酸は、水性酸(HCl
、H2SO4、HBr等)をアルカリもしくはアルカリ土類金属ハイポハライト、
例えばNaOCl、KOClまたはCa(OCl)2の溶液に加えることによっ
てその場で都合よく発生させることができる。コストファクターに基づく好まし
いハロゲン酸化剤はその場で製造される塩素および塩化臭素である。
ATH変換は、当業界で公知のように、一般には約−50〜約50℃、好まし
くは−10〜10℃および周囲圧にて、ハロゲンガスをハロゲン酸化剤として用
いるならば適当なガス抜き能力をもつ反応容器内で行うことができる。反応時間
は一般に約1/2時間以下程度であるが、必要ならば数分〜数時間またはそれ以
上で行うように設定してもよい。
水/アルコール反応媒質中でATH変換を行った後、反応媒質は、反応媒質と
2相液−液抽出系を形成し、かつ水/アルコール反応媒質に対して、ハロエノン
への溶解度にかなりの差があるため、ハロエノンを効果的に分配する有機溶媒で
抽出することができる。抽出は分液漏斗のようなどのような一般的な手段で行っ
てもよい。新しい抽出溶媒での多段抽出が有利である。厳密には必ずしもそうで
はないが、水/アルコールと2相抽出系を形成するならば、抽出溶媒はH−T−
GP変換に用いる中性溶媒と同じものであると有利でありかつ都合がよい。適し
た抽出溶媒は、例えば水と2相系を形成する下記中性溶媒のいずれでもよく、例
えば、トルエン、ベンゼン、o−、m−もしくはp−キシレン、飽和(C5−C1 0
)アルカン異性体、例えば脂肪族ヘキサンまたはヘプタン、シクロヘキサン、
酢酸(C2−C4)アルキル、プロピオン酸(C2−C4)アルキルもしくは酪酸(
C2−C4)アルキル、例えば酢酸エチルおよび酢酸ブチル、(C3−C10)ケト
ン、例えばメチルイソブチルケトン、およびジ(C1−C6)アルキルエーテル、
代表的な例はジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルまたはジイソブチルエ
ーテルである。水と2相系を形成しない中性溶媒(すなわち、それらが水溶性で
あるために)は適さない。水/アルコール反応媒質および抽出溶媒を加熱すると
、相間の分配平衡を促進するのに有利である。
抽出完了後、抽出溶媒(ハロエノンを含有する)をATH水/アルコール反応
媒質から留去するかまたは別の方法で分離して次の工程を行う。次の工程は、H
−T−GP変換を行うのに望ましい個々の中性溶媒によって変えることができる
。第1の場合は、H−T−GP変換に望ましい中性溶媒が、水/アルコールAT
P変換反応媒質に自由に可溶性である、例えばTHF、DMSOまたはグリムで
あるような場合であり、抽出工程での使用が不適当であり、抽出に適した溶媒と
は異なる溶媒を用いることを意味する場合である。この場合、抽出溶媒は、例え
ば簡単な蒸留によってまず除去し、その後、望ましい(水溶性)中性溶媒をハロ
エノン含有残留物に加え、そしてH−T−GP変換を行う。この第1の場合、一
部は、蒸留による、例えばハウスバキュームを用いる簡単な回転蒸発による除去
が容易であるという理由で、沸点の低い抽出溶媒(例えば脂肪族ヘキサン異性体
のいずれか)が好ましい。
第2の場合は、H−T−GP変換に用いるのが望ましい中性溶媒がまた水/ア
ルコールATP反応媒質と2相系を形成し、そしてまた抽出溶媒としても有用で
ある場合である。そのような溶媒は、一部は、上記のような中間蒸留工程を必要
としないというために、本発明において好ましい。この場合に好ましい溶媒は、
ATH反応媒質に用いる水およびアルコールに対して低い溶解度を有することが
理想的であり、従って、水およびアルコールをほとんど持ち越さないものである
。
第3の場合は、H−T−GP溶媒自体が抽出溶媒として作用することができて
も、抽出溶媒と異なるH−T−GP中性溶媒の使用が望ましい場合である。従っ
て、例えば、ヘキサンを抽出溶媒として、そしてトルエンまたは酢酸アルキルを
H−T−GP溶媒として用いるのが望ましい。この場合、抽出溶媒(例えば、ヘ
キサン)を例えば蒸発によってまず除去し、次に、中性溶媒(例えば、トルエン
)を残留物に加える。
上述のように、抽出工程を利用しない別の場合がある。ハロエノンは例えば溶
媒の蒸発後、真空蒸留を行うことによってATH変換後にハロエノンを単離する
ことができ、蒸発の程度および/または完了により、溶媒残留物含有ハロエノン
または実質的に純粋なハロエノンが得られる。この残留物は中性溶媒へ直接加え
ることができ、そしてH−T−GP変換を行う。この場合は、ATH水/アルコ
ール反応媒質の直接抽出を行う場合ほどは好ましくない。
H−T−GP変換を行う反応媒質として適した中性溶媒は、液体で、熱安定性
であり、そして酸を用いる反応に不活性な公知のどのようなものでもよく、例え
ば、トルエン、ジオキサン、ベンゼン、ハロベンゼン、例えばクロロベンゼン、
飽和脂肪族(C5−C10)アルカン異性体、例えばヘキサンおよびヘプタン、o
−、m−もしくはp−キシレン、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド(DM
SO)、ニトロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジ(C1−C6)アルキ
ルエーテル、代表例はジエチルエーテル、シイソプロピルエーテルまたはジブチ
ルエーテル、酢酸(C2−C4)アルキル、プロピオン酸(C2−C4)アルキルも
しくは酪酸(C2−C4)アルキル、例えば酢酸エチルおよび酢酸ブチル、対称ま
たは非対称(C3−C10)ケトン、例えばメチルイソブチルケトン;および式
R″O−(R′O)n−R″
(式中、R″はメチル、R′はエチル、そしてnは1〜3である)
のメトキシでキャップされたエチレンオキシドエーテル、代表例はグリム、シグ
リムおよひトリグリムである。上記中性溶媒の1種以上の混合物も有用である。
いくつかの理由で中性溶媒の1種または混合物がH−T−GP変換反応媒質に
好ましい。好ましい溶媒の1つのグループの例は、沸点が100℃を越えるもの
であるか、あるいは沸点がこれより低いならば、H−T−GP変換に用いる温度
より高い沸点を有するものである。この種の特に好ましい溶媒はトルエンである
。好ましい溶媒の第2のグループの例は、ハロエノンの抽出に用いることができ
、そしてATH変換反応媒質の水および/またはアルコール成分への溶解度が比
較的低いものである。これらの溶媒はハロエノン抽出およびH−T−GP変換の
いずれにも用いることができ、ATH変換から持ち込まれる水および/またはア
ルコールの量はほんの少量となる。中性溶媒の第3のグループは、水と共沸混合
物を形成する能力のあるものが好ましく、例えばトルエンおよびベンゼンである
。トルエンおよびトルエン/中性補助溶媒混合物、例えばトルエン/THF、ト
ルエン/ジイソプロピルエーテル、トルエン/酢酸エチルおよびトルエン/酢酸
ブチルの溶液が中性溶媒として特に好ましい。酢酸(C2−C4)アルキルも特に
好ましい。
H−T−GP変換を行うための触媒として有用な酸の例は、H−T−GP変換
を行うのに触媒的に有効な非酸化強酸である。一般に、H−T−GP変換に用い
る条件下で非反応性であり、そして水中のpKaが約3未満であるどのような酸
も用いることができる。適した酸の例は、p−トルエンスルホン酸、メタンスル
ホン酸、弗化水素、塩化水素、臭化水素、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプ
ロピオン酸、トリクロロ酢酸、リン酸、シュウ酸および硫酸である。SnCl4
、ZnCl2およびTiCl4のようなルイス酸も本発明において有用である。酸
は可能ならばそのまま用いる。硫酸のように、水を溶媒として通常必要とするこ
れらの酸は濃縮形で用いられる。
中性溶媒は使用する特定の酸に対して、かなりの溶解度を有していると有用で
ある。酸としてのHClまたはHBrを、H−T−GP変換を所望の速度で進め
るほど十分には酸を溶解しない特定の溶媒と組み合わせて用いるのが望ましい場
合、さらに以下で説明するように、ガス状HClまたはHBrで加圧することに
よって反応を行う必要がある。
上述のように、H−T−GP変換は、前に定義したように乾燥している中性溶
媒中で行うべきである。乾燥中性溶媒は少量のプロトン性溶媒成分を含有してお
り、そのような他の(プロトン性)溶媒成分は、ATH変換から抽出溶媒中に持
ち込まれた水およびアルコール(および/またはジオール)を一般に含んでいる
。必要ならば、残留した(持ち込まれた)水およびアルコールを、当業界で周知
の多くの一般的な方法のいずれかによって測定および/または調査してもよい。
水は周知のカールフィッシャー滴定法によって測定することができる。水および
個々のアルコールまたはジオールはまたガスクロマトグラフィーで測定すること
もできる。
必要ならば、H−T−GP変換を行う前に、過剰の残留アルコールおよび水を
除去したり、あるいはH−T−GP反応媒質を構成する全ての溶媒成分中、ハロ
エノン1当量当たり1当量未満となるところまで少なくとも減少させることがで
きる多くの方法がある。”アルコール”の除去とは、ATH変換反応媒質中に反
応体/補助溶媒として用いることができる1種以上の(C1−C6)アルコールま
たは(C2−C4)ジオールの除去を指すことは無論のことである。H−T−GP
変換を行う前の水/アルコール除去法をここで”ストリッピング”法と呼ぶこと
もあることに留意してほしい。
水およびアルコールのようなプロトン性溶媒成分を除去し、その後、酸を中性
溶媒反応媒質へ加え、そして中性溶媒を中性溶媒の沸点に、または中性溶媒の沸
点より低い温度であるが水および/またはアルコールを留去する温度を越える温
度に加熱することによってH−T−GPを行うことができる。大気圧で加熱する
ことによって効果的に水およびアルコールを留去するには、中性溶媒の沸点は有
利には100℃を越えるべきである。特に、ストリッピングを真空下で行うとき
は、100℃より下の温度でも可能である。大気圧で100℃未満の温度を用い
てもよいが、水およびアルコールの除去が不完全となる。
水およびアルコールはまた、まず中性溶媒を乾燥剤、例えはこの目的のために
広く知られておりかつ市販されている分子ふるいで、または広く知られている無
水塩、例えば無水硫酸ナトリウムで処理して、水和形に変えることによって液体
を乾燥することにより除去することもできる。水を乾燥剤で除去した後、中性溶
媒を残留アルコールを留去する温度に加熱してよく、この温度はメタノールおよ
び/またはエタノールを用いる場合は100℃以下の温度にすることができる。
水と共沸混合物を形成するトルエンおよびベンゼンのようないくつかの溶媒の
場合、溶媒を大気圧で、水を水/溶媒共沸混合物として除去しうる温度(100
℃以下の温度)に加熱し、その後、必要ならば、加熱して残留アルコールを留去
することができる。
水/アルコールストリッピングについての上の記載は、H−T−GP変換に用
いる中性溶媒が、ATH変換後のATH反応媒質用の抽出溶媒としても用いられ
ると仮定している。当業者であれば、抽出溶媒およびH−T−GP中性溶媒が異
なるとき、適切ならば、ATH抽出溶媒、H−T−GP変換溶媒または両方に上
記ストリッピングを行うことが可能であることは理解できるであろう。
上述のように、ATH変換の場合、一部は、入手しやすく、安価であるといる
理由で、メタノールがアルコール補助溶媒として好ましい。それはまた抽出溶媒
からその後容易にストリップすることができるので好ましい。エタノールはまた
ストリップが容易であり、やはり好ましい。
乾燥しており、好ましくは水およびアルコールを実質的に含まない中性反応媒
質は、H−T−GP変換を行うのに触媒的に十分な量の酸で処理することができ
る。酸は過剰量で、例えばハロエノン1当量当たり、酸を2〜5当量で有利に用
いることができる。酸対ハロエノンの比をより高くすることも可能であるが、好
ましくない。トリフルオロ酢酸およびトリクロロ酢酸のような酸は、本発明に有
用な種類の有機中性溶媒への溶解度が優れているために好ましい。HBrまたは
HClのようなガス状鉱酸を用いるならば、いずれかのグリム(グリム、ジグリ
ムまたはトリグリム)のように使用中性溶媒が酸に対して十分な溶解度を有して
いれば、H−T−GP変換は加圧下で行う必要はない。HClまたはHBrを酸
として用い、そしてこれらの特定の酸に対する溶解度が低い中性溶媒を用いるの
が望ましい場合、H−T−GP変換は、HClまたはHBrを中性反応媒質全体
にまき散らしながら、80〜120℃のような高温で行うことが可能である。H
−T−GP変換をHClおよび/またはHBrの加圧下で行うことも有用である
。この状況で圧力を用いると、圧力を用いないときの収量に比べて所望のガンマ
ピロンの収量が増し、これは好ましい態様となる。初期圧は、ガス状HBrまた
はHClを閉じたまたはシールした反応容器へ単に送入することによって周囲圧
よりも10〜15ポンド/インチ2(psi)[69〜103.5ミリパスカル
、mPa]高く設定する。次に、ガス送入口を閉じ、加熱することにより、圧力
を上げることができる。これは圧を加える好ましい方式である − HClまた
はHBrで所望の限界圧にし、次いで、システムを閉じ、所望の圧に達するまで
加熱する。一般に、用いる圧が高いほど、ガンマピロンの収率がよい。従って、
必要ならば、用いる個々の反応容器および装置の安全表示に一致する所望のどの
ようなレベルにまでも、圧力を上げることができる。一般に、高圧安全限界で装
置を用いることを避けるために、約50〜約500psi[345〜3450m
Pa]、好ましくは50〜150psi[345〜1035mPa]の圧力を用
いるのが好ましい。
H−T−GP変換は通常、実質的に完了するまで進める。80〜120℃の好
ましい温度範囲内で操作するとき、一般に反応時間は0.5〜6時間である。最
終ガンマピロン生成物は一般に、溶媒を蒸発させ、その後、必要ならば、水、メ
タノールまたはこれらの組み合わせから再結晶することによって単離することが
できる。反応の進行は一般に、例えば、最適な分離が得られるように割合を調整
したイソクラティック溶出剤としてのリン酸塩バッファー含有アセトニトリルを
用いる逆相方式でのC−18カラムを使用する、高性能液体クロマトグラフィー
によって調べることができる。一般に、溶出剤のpHは約2.2〜7.4である
。反応が完了する前に停止するのが望ましいならば、最終ガンマピロン生成物は
、一般的には例えばシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって残留ハ
ロ
エノンから分離してもよい。
本発明を次の実施例でさらに説明するが、これらは本発明を限定するものでは
ない。
実施例1
この実施例は、市販のフルフリルアルコールを出発物質として用いる本発明の
方法を説明するものである。実施例1a
−ハロエノンIIIの形成(ATH変換)
ガラスライニングを施した反応器に32.7kgの水および49.4kgのメ
タノールを入れ、撹拌しながら−5℃に冷却した。エチルフルフリルアルコール
(IV、R=エチル、17.8kg、純度97.2%、クオーカー オーツ社から
入手)および塩素(19.9kg)を、温度が−5〜0℃に維持される速度で反
応器へ同時に加えた。イソクラティック移動相として、85%燐酸(J.T.B
aker)で最終pHを2.2に調整した、400mlのメタノール、600m
lの蒸留水および20mlのアセトニトリルを用いるC−18カラム(ウォータ
ーズ社、ミリポアー部門)逆相での高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)
で調べたところ、これによって、エチルフルフリルアルコール出発物質は本質的
に完全に消費された。生成物(式III、R1=メチル、R=エチル)の水性アルコ
ール溶液を実施例1bの出発物質反応混合物として用いた。実施例1b
−中性溶媒へのハロエノンIIIの抽出
全部で1199gの実施例1aからの反応混合物を、2リットル三つ口フラス
コへ入れ、次いで400gのトルエンを加えると、2相抽出混合物が形成された
。混合物を60〜65℃で4時間撹拌しながら加熱して、ハロエノンIII(R1=
メチル、R=エチル)を抽出した。トルエン層を分離し、水性層を200gの新
しいトルエンと共にさらに1時間加熱して、抽出を完了した。トルエン層を合わ
せ、500mlの5%NaHCO3溶液で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。
このトルエン抽出物はハロエノンIIIをシスおよびトランス異性体の混合物とし
て含んでいた。実施例1c
−ガンマピロンの形成(H−T−GP変換)
100mlの丸底フラスコに実施例1bからのトルエン抽出物34.8gを入
れた。メタノールおよびトルエンを真空(−100mmHg)下で浴温度<40
℃の抽出物から、残留物質が約15gとなるまで留去した。残留濃縮トルエン溶
液を次に、加圧下で反応を行うことができる反応器に移した。全重量が55gに
なるまで、新しい乾燥トルエンを反応器へ加えた。無水HClガス(5.0g)
を次に加圧下で反応器へ計り入れた。撹拌しながら、反応混合物を2時間、〜1
00℃で加熱した。この間、圧力は〜110psiに上昇した。反応完了後、反
応器を冷却し、過剰のHClをガス抜きし、反応混合物をエチルマルトール(II
、R=エチル)の量についてHPLCによって分析した(既知濃度の標準エチル
マルトール溶液と比較した)。II(R=エチル)の収率は、実施例1aで述べた
ようにエチルフルフリルアルコール(IV、R=エチル)の量に基づいて72%で
あることが分かった。エチルマルトールの最終溶液は黒ずんでいた;しかしなが
ら、タールは溶液から分離するほどは形成されなかった。
実施例2−一般的な方法
この実施例では、ハロエノン中間体を本発明によるような中性溶媒からなる媒
質に抽出するのではなく、水性アルコール反応媒質を用いる一般的な方法による
ガンマピロンの形成を説明する。
実施例1aで得たハロエノン含有水性アルコール混合物の一部を、水性混合物
を85〜100℃で3時間加熱することによってエチルマルトール(II、R=エ
チル)に変換した。ハロエノンのエチルマルトールへの変換に用いた酸は、フル
フリルアルコール塩素化からの副生成物としてその場で発生させたHClであっ
た。HClまたは他の酸はそれ以上加えなかった。特に実施例1と比べて、かな
りの量のタールが形成し、これらは反応容器内に存在するのが見えた。HPLC
によるエチルマルトール(II、R=エチル)の収率は、エチルフルフリルアルコ
ール(IV、R=エチル)に基づいて69%であった。
実施例3 実施例3a
−ハロエノンの形成(ATH変換)
実施例1aと同じ手順を用いて、メチルフルフリルアルコール(IV、R=メチ
ル、クオーカー オーツ社から入手)と塩素とを水/メタノール溶液中で反応さ
せた。この混合物は以後”塩素化混合物と呼ぶ。”実施例3b
−中性溶媒よりなる媒質へのトランス異性体の抽出
実施例1bと同じ手順を用いて、実施例3aで製造された水性ハロエノン含有
混合物からハロエノンIII(R1=R=メチル)のトルエン抽出物を生成した。必
要ならば、III(R1=R=メチル)のトランス異性体は、溶液を0〜−10℃に
数時間放置することによって塩素化混合物から白色針状結晶として単離すること
ができ、便宜上、この場合はトランス異性体を単離した。実施例3c
無水HClガス(4.0g、109.5mmol)を、反応器中の純粋なトランス
メチルメトキシクロロエノン(III、R1=R=メチル、5.0g、28.5ミリ
モル)(トランス−MMCE)を含む50gの乾燥トルエン溶液へ計り入れた。
トランス異性体に基づくマルトール(I)の収率は、HPLC分析により83%
であった。
実施例4−比較実施例
H−T−GP反応媒質として無水中性溶媒を用いる利点を説明する実施例3と
の比較として、実施例3bで生成された純粋なトランスメチルメトキシクロロエ
ノンを、50%メタノールおよび50%濃塩酸を含有する混合物中、100℃で
2時間反応させた。マルトール(I)の収率は、HPLC分析により73%であ
った。
実施例5
80%トルエンおよび20%テトラヒドロフランを含有する溶媒混合物を用い
る以外は、トランス−MMCEを使用して実施例3cと同じ手順を用いた。マル
トール(I)の収率は、トランス−MMCE出発物質の量に基づいて88%であ
った。
実施例6
グリムを溶媒として用いた以外は、トランス−MMCEを使用して実施例3c
と同し手順を用いた。マルトール(I)の収率は89.3%であった。
実施例7−25
出発物質として実施例3cで単離したトランス−MMCE異性体を用いて多く
のH−T−GP変換を行った。これらを表1に示す。上欄の”圧力”は、表示温
度で用いた酸の圧力を示し、酸が初めは液体であるか(TiCl4、トリクロロ
酢酸または濃硫酸)、あるいは反応媒質として表示されている溶媒に自由に可溶
性である場合、圧力は大気圧である。溶媒混合物の表示の場合、溶媒比はそれぞ
れ重量に基づいて4/1であった。反応はHPLCによって調べ、トランス−M
MCE異性体ピークが本質的にベースラインに落ちたとき、従って、生成物のガ
ンマピロンピークが平らになったとき、反応は完了したと考える。一般に、反応
時間は約2〜約5時間であった。
実施例26 実施例26a
−ハロエノンIIIの形成(ATH変換)
12.54kgの純粋なメチルフルフリルアルコール(IV、R=メチル)をエ
チルフルフリルアルコールの代わりに用い、全体で15.90kgの塩素を加え
、実施例1aに従った。実施例26b
−ハロエノンIIIの中性溶媒への抽出
−20〜−10℃に保った実施例26aからの新しい塩素化混合物(400.
0g)を、400.0gのトルエン、58.0gの濃塩酸、22.0gの水およ
び60.0gのメタノールの十分に撹拌した60℃の2相混合物へ2時間かけて
加えた。混合物を60℃で1時間撹拌した。層を分離し、底の水性層を100m
l部の塩化メチレンで2回抽出した。有機層を合わせ、回転蒸発器で約50ml
に濃縮した。乾燥トルエン(250ml)を加え、この物質を約50mlに再濃
縮した。この手順を3回繰り返して残留水を除いた。得られた乾燥抽出物を乾燥
トルエンで200.0gに希釈した。HPLC分析を行ったところ、メチルフル
フリルアルコールIVからのメチルメトキシクロロエノン(III、R、R1=メチル
、X=Cl)の収率は86.9%であった。実施例26c
−ガンマピロンの形成(H−T−GP変換)
100mlのテフロン反応ボンベに、50.0gの実施例26bからのトルエ
ン抽出物、12.5gの乾燥酢酸エチルおよび5gの無水ガス状HClを入れた
。ボンベを密閉し、反応混合物を100℃で2時間加熱した。次に、反応器を冷
却し、内容物をメタノールに溶解した。HPLC分析を行ったところ、メチルメ
トキシクロロエノンIIIからのマルトール(I)の収率は92.8%およびメチ
ルフルフリルアルコールIVからの全体収率は80.7%であった。
実施例27−従来技術による実施例26aの加水分解
この実施例は、実施例26で用いたものと同じ出発物質を使用する一般的な方
法によるガンマピロンの形成を説明するものである。短路蒸留ヘッドおよび受け
器を備えた三つ口丸底フラスコに20.0gの実施例26aからの塩素化混合物
を入れた。フラスコを85℃で2時間、95℃で10分間、そして100℃で1
0分間加熱した。得られたスラリーをメタノールに溶解した。HPLC分析を行
ったところ、メチルフルフリルアルコールIVからのマルトールの収率は55.7
%であった。
実施例28
実施例1aからの反応混合物1リットル部を、1リットルのヘキサン、50m
lの濃HClおよび50mlのメタノールの55℃溶液に4時間かけて加える。
層を分離し、次に、水性層をヘキサンで2時間以上連続して抽出する。合わせた
ヘキサン層を減圧下、蒸発させて黄色油を得る。無水酢酸ブチル(1リットル)
、次いで127gの無水HClガスを加える。撹拌しながら、反応混合物を80
℃
に2時間加熱する。この間、圧力は約40psiに上昇する。反応完了後、反応
器を冷却し、過剰のHClをガス抜きし、反応混合物を約350gの50%水酸
化カリウム水溶液で冷却して、約10.0のpHにする。層を分離し、有機層を
減圧下で蒸発させて粗エチルマルトール(II)を得る。
実施例29
ハロエノンの形成(ATH変換)の際にメタノールの代わりにイソプロパノー
ルを用い、そしてガンマピロンの形成(H−T−GP変換)の際に酢酸ブチルの
代わりに酢酸イソプロピルを用いる以外は、実施例28に記載のように反応させ
た。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1996年2月7日
【補正内容】
34条補正
原英文明細書第1頁32行ないし第2頁30行(和文明細書第2頁1行ないし
第3頁7行)を下記と差し替える。
マルトールについて多くの製法が報告されてきた。初期の市販品は木材の分解
蒸留からのものであった。3−ヒドロキシ−2−(1−ピペリジルメチル)−1
,4−ピロンからのマルトールの合成は、J.Am.Chem.Soc.、69
、2908(1947)においてSpielmanおよびFreifelder
によって報告されている。SchenckおよびSpielmanはJ.Am.
Chem.Soc.、67、2276(1945)においてストレプトマイシン
塩のアルカリ性加水分解によりマルトールを得ている。ChawlaおよびMc
GonigalはJ.Org.Chem.、39、3281(1974)、並び
にLichtenthalerおよびHeidelはAngew.Chem.、
81、998(1969)において保護された炭水化物誘導体からのマルトール
の合成を報告している。ShonoおよびMatsumuraはTetrahe
dron Letters No.17、1363(1976)においてメチル
フルフリルアルコールを用いて出発するマルトールの5段階合成について記して
いる。
ピロメコン酸、マルトール、エチルマルトールおよび他の2−置換−3−ヒド
ロキシ−ガンマピロンのようなガンマピロンの合成については、米国特許第3,
130,204号、第3,133,089号、第3,140,239号、第3,
159,652号、第3,365,469号、第3,376,317号、第3,
468,915号、第3,440,183号、第3,446,629号、第4,
082,717号、第4,147,705号、第4,323,506号、第4,
342,697号、第4,387,235号、第4,390,709号、第4,
435,584号、および第4,451,661号に記載がある。ガンマピロン
の一般的な製法はBrennan等の米国特許第4,435,584号に記載さ
れている。この特許には、全ての反応を水性/プロトン性媒質中で一般に行われ
るワンポットのフルフリルアルコールに基づく合成法が記載されている。本発明
は、フルフリルアルコール先駆体を用いることができるが、対照的に、中性溶媒
よりなる反応媒質を用いて、ハロエノンを所望のガンマビロン生成物へ変換する
ことに基づく。発明の概要
本発明の1つの態様は、式
(式中、Rは(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、フェニルまたは
ベンジルである)
を有する化合物の合成方法であって、約40℃以上の温度、好ましくは約60℃
以上の温度で、反応媒質としての乾燥中性溶媒中、式
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フロントページの続き
(72)発明者 スウェナートン,ジェームズ・イー
アメリカ合衆国コネチカット州06385,ウ
ォーターフォード,ギャラップ・レーン
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