JPH0950047A - 反強誘電性液晶表示素子 - Google Patents

反強誘電性液晶表示素子

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JPH0950047A
JPH0950047A JP8151831A JP15183196A JPH0950047A JP H0950047 A JPH0950047 A JP H0950047A JP 8151831 A JP8151831 A JP 8151831A JP 15183196 A JP15183196 A JP 15183196A JP H0950047 A JPH0950047 A JP H0950047A
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JP
Japan
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liquid crystal
alignment
crystal molecules
antiferroelectric
phase
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JP8151831A
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English (en)
Inventor
Tomio Tanaka
富雄 田中
Tetsushi Yoshida
哲志 吉田
Jun Ogura
潤 小倉
Satoru Shimoda
悟 下田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Casio Computer Co Ltd
Original Assignee
Casio Computer Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アクティブマトリクスタイプの反強誘電性液
晶表示素子に、明確な階調表示を行なわせることであ
る。 【解決手段】 アクティブマトリクス方式の液晶表示素
子に、液晶分子が2つの配向状態を有する反強誘電性液
晶を封止する。反強誘電性液晶に電圧を印加すると、印
加電圧に応じて、第1又は第2の配向状態にある液晶分
子が第2又は第1の配向状態に変化する。このため、第
1の配向状態にある液晶分子と第2の配向状態にある液
晶分子の割合が、印加電圧に応じて連続的に変化し、無
数の光学的中間状態を生成する。従って、この液晶表示
素子を駆動することにより、階調表示が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は反強誘電性液晶
(AFLC、AntiFerroelectric Liquid Crystal)を用
いた液晶表示素子に関し、特に、階調表示が可能なAF
LC液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】強誘電性液晶を用いる強誘電性液晶表示
素子は、ネマティック液晶を用いるTNモードの液晶表
示素子と比較して、高速応答、広い視野角が得られる等
の点で注目されている。
【0003】強誘電性液晶表示素子として、強誘電性液
晶を用いた強誘電性液晶表示素子と反強誘電性液晶を用
いた反強誘電性液晶表示素子とが知られている。
【0004】反強誘電性液晶表示素子は、反強誘電性液
晶が備える配向状態の安定性を利用して画像を表示する
ものである。即ち、反強誘電性液晶は、液晶分子の配向
に3つの安定状態を有し、第1のしきい値以上の電圧を
該液晶に印加したとき、印加電圧の極性に応じて液晶分
子が第1の方向に配列する第1の強誘電相または第2の
方向に配列する第2の強誘電相に配向し、前記第1のし
きい値より低い第2のしきい値以下の電圧を印加したと
き、第1と第2の強誘電相の中間の配列状態である反強
誘電相に配向する。液晶表示素子の両側に配置する一対
の偏光板の透過軸の方向を反強誘電相の光学軸を基準に
して設定することにより、図13に示すように、印加電
圧により光の透過率を制御して画像を表示することがで
きる。
【0005】反強誘電性液晶は、印加電圧が変化して
も、上記第1と第2のしきい値の間の範囲であれば、第
1または第2の強誘電相または反強誘電相に配向した状
態を維持するというメモリ性を有している。従来の反強
誘電性液晶表示素子は、このメモリ性を利用して単純マ
トリクス駆動されている。
【0006】反強誘電性液晶の配向状態のメモリ性は、
液晶が第1または第2の強誘電相から反強誘電相に相転
移する電圧と、反強誘電相から第1または第2の強誘電
相に相転移する電圧との電圧差によって定まり、この電
圧差が大きいほど、配向状態のメモリ性が高い。即ち、
光学特性のヒステリシスが大きい程メモリ性が高い。こ
のため、従来の単純マトリクス駆動される反強誘電性液
晶表示素子では、反強誘電性液晶として、上記電圧差が
大きい液晶を用いている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、メモリ性の高
い反強誘電性液晶を用いる従来の反強誘電性液晶表示素
子は、光の透過率を任意に制御することができず、表示
階調の制御がほとんど不可能で、階調表示を実現するこ
とはできなかった。
【0008】この発明は上記実状に鑑みてなされたもの
で、明確な階調表示を実現できる反強誘電性液晶表示素
子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明の第1の観点にかかる反強誘電性液晶表示
素子は、対向する一対の基板の一方に画素電極を、他方
の基板に前記画素電極に対向する対向電極をそれぞれ形
成し、前記一対の基板間に、第1と第2の配向状態の液
晶分子がほぼ均一に混在する反強誘電相を有し、印加電
圧に応じて第1と第2の配向状態の一方の配向状態の液
晶分子の一部が他方の配向状態に変化することにより、
異なった配向状態の領域が可視光帯域の光の波長よりも
小さい距離内に複数形成されることにより、ダイレクタ
の平均的な方向が印加電圧に応じて変化する反強誘電性
液晶を封入し、階調表示を可能としたことを特徴とす
る。
【0010】また、この発明の第2の観点にかかる反強
誘電性液晶表示素子は、画素電極と画素電極に接続され
たアクティブ素子がマトリクス状に複数配列された一方
の基板と、前記画素電極に対向する対向電極が形成され
た他方の基板と、前記基板の間に封入され、液晶分子が
ほぼ第1の配向方向に配列した第1の強誘電相と液晶分
子がほぼ第2の配向方向に配列した第2の強誘電相と、
第1の配向方向に配列した液晶分子と第2の配向方向に
配列した液晶分子とが混在し、その平均的なダイレクタ
の方向がカイラルスメクチック相の層構造の層の法線方
向にほぼ一致する反強誘電相を有し、印加電圧に応じ
て、第1の配向方向と第2の配向方向の一方に配列した
液晶分子が他方の配向方向に配列して、可視光帯域の光
の波長より短い範囲で、異なった配向状態の領域が複数
形成され、前記第1の配向状態の領域と第2の配向状態
の領域の割合に応じて、ダイレクタの方向が変化する反
強誘電性液晶と、を備えることを特徴とする。
【0011】また、この発明の第3の観点にかかる反強
誘電性液晶表示素子は、一方の基板と、前記一方の基板
に対向する他方の基板と、前記一方と他方の基板の間に
封入され、液晶分子がほぼ第1の配向方向に配列した第
1の強誘電相と液晶分子がほぼ第2の配向方向に配列し
た第2の強誘電相と、第1の配向方向に配列した液晶分
子と第2の配向方向に配列した液晶分子とが混在し、そ
の平均的なダイレクタの方向がカイラルスメクチック相
の層構造の層の法線方向にほぼ一致する反強誘電相を有
し、印加電圧に応じて、第1の配向方向と第2の配向方
向の一方に配列した液晶分子が他方の配向方向に配列し
て、可視光帯域の光の波長より短い範囲で、異なった配
向状態の領域が複数形成され、前記第1の配向状態の領
域と第2の配向状態の領域の割合に応じて、ダイレクタ
の方向が変化する反強誘電性液晶と、前記液晶に電圧を
印加して、この印加電圧を変えることにより、前記異な
った配向状態の領域の割合を制御し、反強誘電性液晶の
ダイレクタの方向を前記第1と第2の配向方向の間の任
意の方向に設定する制御手段と、を備えたことを特徴と
する。
【0012】この発明の反強誘電性液晶表示素子によれ
ば、反強誘電性液晶の各液晶分子は、印加電圧に応じ
て、2つの配向状態の一方から他方に順次変化し、液晶
分子の配向方向が異なった領域が多数形成され、これら
2つの配向状態の割合が変化する。各領域のサイズが可
視光帯域の光の波長よりも小さいため、光学的には、こ
れらの複数の領域に存在する液晶分子全体の平均的な配
向方向が光学軸となる。このため、アクティブ素子、電
極等の制御手段により、印加電圧を制御することによ
り、強誘電相と反強誘電相の間に多数の中間配向状態に
対応させて光学軸の方向を変化させて、任意の階調の表
示が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。まず、本実施の形態の反強誘電性
液晶表示素子の構成を説明する。図1は反強誘電性液晶
表示素子の断面図、図2は画素電極とアクティブ素子を
形成した基板の平面図である。
【0014】この反強誘電性液晶表示素子は、アクティ
ブマトリクス方式のものであり、一対の透明基板(例え
ば、ガラス基板)11、12のうち、図1において下側
の基板(以下、下基板)11には透明な画素電極13と
画素電極13に接続されたアクティブ素子14とがマト
リクス状に配列形成されている。
【0015】アクティブ素子14は、例えば、薄膜トラ
ンジスタ(以下、TFT)から構成される。TFT14
は、基板11上に形成されたゲート電極と、ゲート電極
を覆うゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜の上に形成された
半導体層と、半導体層の上に形成されたソース電極及び
ドレイン電極とから構成される。
【0016】さらに、下基板11には、図2に示すよう
に、画素電極13の行間にゲートライン(走査ライン)
15が配線され、画素電極13の列間にデータライン
(階調信号ライン)16が配線されている。各TFT1
4のゲート電極は対応するゲートライン15に接続さ
れ、ドレイン電極は対応するデータライン16に接続さ
れている。
【0017】ゲートライン15は、端部15aを介して
行ドライバ(行駆動回路)31に接続され、データライ
ン16は端部16aを介して列ドライバ(列駆動回路)
32に接続される。行ドライバ31は、後述するゲート
信号を印加して、ゲートライン15をスキャンする。一
方、列ドライバ32は、表示データ(階調データ)を受
け、データライン16に表示データに対応するデータ信
号を印加する。
【0018】ゲートライン15は端子部15aを除いて
TFT14のゲート絶縁膜(透明膜)で覆われており、
データライン16は前記ゲート絶縁膜の上に形成されて
いる。画素電極13は前記ゲート絶縁膜の上に形成され
ており、その一端部においてTFT14のソース電極に
接続されている。
【0019】図1において、上側の基板(以下、上基
板)12には、下基板11の各画素電極13と対向する
透明な対向電極17が形成されている。対向電極17は
表示領域全体にわたる面積の1枚の電極から構成され、
基準電圧V0が印加されている。
【0020】下基板11と上基板12の電極形成面に
は、それぞれ配向膜18、19が設けられている。配向
膜18、19はポリイミド等の有機高分子化合物からな
る水平配向膜であり、その対向面には同一方向にラビン
グによる配向処理が施されている。
【0021】下基板11と上基板12は、その外周縁部
において枠状のシール材20を介して接着されており、
基板11、12間のシール材20で囲まれた領域には液
晶21が封入されている。
【0022】液晶21は、スメクチックCA*相(SmC
A*相)の反強誘電性液晶(以下、AFLC)から構成さ
れ、その層の厚さは、透明なギャップ材22により規制
されている。ギャップ材22は液晶封入領域内に点在状
態で配置されている。
【0023】AFLC21は、十分高い電圧が印加され
た時、印加された電圧の極性に応じて、液晶分子が図3
に示す第1の配向方向21Aに配列した第1の強誘電相
と前記第1の配向方向と異なる第2の配向方向に配列し
た第2の強誘電相、及び液晶分子のダイレクタの平均的
な方向がSmCA*相の層構造の層(スメクチック層)の
法線方向21Cに揃った状態の反強誘電相と、これらの
多数の中間状態を呈する。
【0024】液晶表示素子の上下には、一対の偏光板2
3、24が配置されている。偏光板23、24の光学軸
(以下、透過軸とする)は、AFLC21の液晶分子の
配向方向に基づいて設定されている。即ち、図3に示す
ように、下側の偏光板23の透過軸23Aはスメクチッ
ク層の法線方向とほぼ平行に設定され、上側偏光板24
の透過軸24Aは下偏光板23の透過軸23Aにほぼ直
角に設定されている。
【0025】図3に示すように、偏光板23、24の透
過軸を設定した反強誘電性液晶表示素子は、液晶分子の
ダイレクタが第1又は第2の配向方向21A、21Bに
ほぼ配向した強誘電相の時に透過率がほぼ最大(表示が
最も明るく)になり、液晶分子のダイレクタの平均的方
向がスメクチック層の法線方向21Cに向くようにほぼ
配向した反強誘電相の時に透過率がほぼ最小(表示が最
も暗く)になる。
【0026】すなわち、液晶分子が第1または第2の方
向21A、21Bを向いた状態では、入射側の偏光板2
3の透過軸23Aを通過した直線偏光はAFLC21の
複屈折作用により非直線偏光となり、出射側偏光板24
の透過軸24Aと平行な成分が出射し、表示は明るくな
る。一方、液晶分子の平均的なダイレクタがスメクチッ
ク層の法線方向21Cを向いた状態では、その光学軸が
層の法線方向に向くため、入射側の偏光板23を通った
直線偏光はAFLC21の複屈折作用をほとんど受け
ず、直線偏光のままAFLC21を通過し、そのほとん
どが出射側の偏光板14で吸収され、表示が暗くなる。
また、AFLC21が光学的中間状態の時は、液晶分子
のダイレクタの平均的な方向に応じた階調が得られる。
【0027】次に、AFLC21についてより詳細に説
明する。AFLC21は、例えば、コーンアングルが3
0゜から45゜(望ましくは、35゜以上)と大きく、
I、SmA、SmCA*というシーケンスで相転移するS
mCA*相の液晶から構成され、バルクの状態では図4に
示すように分子配列の層構造と螺旋構造を有している。
通常の強誘電性液晶と異なり、隣接する液晶分子は層毎
にコーンのほぼ180゜シフトして螺旋を描いた二重螺
旋構造を有する。また、AFLC21は反強誘電的相互
作用(層毎に液晶分子の配向方向が反転する作用)と共
に強誘電的相互作用(各液晶分子が一方方向に平行に配
列して強誘電相になりやすい作用)が強い液晶である。
反強誘電的相互作用が一番強い。
【0028】上記特性を有するAFLC21は、例え
ば、化1−(I)〜(III)に示す骨格構造を有する液晶
を、(I)と(II)を5〜50重量%、(III)を残りとし
て混合することにより得られる。この液晶は、コーンア
ングルが約30°、I、SmA、SmCA*というシー
ケンスで相転移するSmCA*相の液晶であり、バルク
の状態では分子配列の層構造と二重螺旋構造を有してい
る。
【0029】
【化1】
【0030】Rf:炭素数1又は2のフルオロアルキル
基 R1:炭素数3〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基 R2、R3、R4:それぞれ独立な水素又は炭素数1〜
15の直鎖又は分岐鎖アルキル基又は炭素数2から15
のアルケニル基又は炭素数7〜10のアラルキル基 X1:カルボキシル基又はエーテル基又は単結合 X2:カルボキシル基又はエーテル基又はメトキシ基又
は単結合 X3:カルボキシル基又はメトキシ基又はエーテル基又
は単結合 X4:エーテル基又はカルボキシル基又は単結合 A、B:それぞれ独立な置換されても良い6員環基 n :0又は1 R6:置換基を有しても良い炭素数1〜15のアルキル
基又はアルコキシ基 R7:置換基を有しても良い炭素数1〜15のアルキル
基 Q :エーテル基又はカルボキシル基、ウレタン基、又
は単結合 E :ベンゼン環又はビリミジン環
【0031】AFLC21の層の厚さ(セルギャップ)
は、AFLC21の螺旋構造の1ピッチ(ナチュラルピ
ッチ)よりも小さく形成されている。このため、AFL
C21は、図5に模式的に示すように、二重螺旋構造が
消失した状態で基板11、12間に封止されている。な
お、セルギャップをAFLC21の螺旋構造の1ピッチ
よりも大きくし、代わりに、配向膜18、19の表面を
安定化することにより、表面安定化効果により、二重螺
旋構造を消失させてもよい。
【0032】図6は、印加電圧による液晶分子の配向を
説明するための図である。各液晶分子は、分子長軸が第
1の配向方向21A又は第2の配向方向21Bに向いた
2つの配向状態を有する。電圧無印加の状態では、図6
(A)に示すように、液晶分子は第1と第2の配向方向
21Aと21Bを層毎に交互に向いた状態となる。即
ち、層毎に第1の配向状態と第2の配向状態を繰り返す
状態になる。この状態では、層内では自発分極が発生す
るが、隣接する層の永久双極子が互いに反対方向を向
き、双極子モーメントが互いに打ち消しあって総合的に
は自発分極は存在せず、反強誘電相となる。空間的に平
均されたAFLC21の光学軸は液晶分子の平均的な配
向方向であるスメクチック層の法線方向21Cにほぼ一
致する。
【0033】AFLC21にある一定値Ec以上の電圧
(飽和電圧)を印加することにより、図6(D)及び
(G)に示すように、印加電圧の極性に応じて液晶分子
は第1又は第2の配向状態の一方になる。この状態で
は、隣接する層の永久双極子が互いに同一方向を向き、
自発分極が存在し、第1又は第2の強誘電相となる。
【0034】前述のように、AFLC21は、強誘電性
的相互作用が強い。即ち、液晶分子が第1の配向状態又
は第2の配向状態のいずれかに揃って配向しようとする
力が強い。このため、飽和電圧Ec未満の電圧Eを印加
すると、図6(B)及び(C)に示すように、印加電圧
Eの大きさに応じて、第2の配向状態にある液晶分子の
一部が第1の配向状態に変化する。配向状態が変化する
分子の数(割合)は、印加電圧Eが大きくなるに従って
多くなる。このため、印加電圧の上昇に伴って液晶分子
のダイレクタの平均的な方向は第1の配向方向21Aに
向かって連続的に変化する。
【0035】また、逆極性で飽和電圧Ec未満の電圧E
を印加すると、図6(E)及び(F)に示すように、印
加電圧Eの大きさに応じて、第1の配向状態にある液晶
分子の一部は第2の配向状態に変化する。配向状態が変
化する分子の数(割合)は印加電圧が大きくなるに従っ
て大きくなる。このため、印加電圧の絶対値の上昇に伴
って液晶分子のダイレクタの平均的な方向は第2の配向
方向21Bに向かって連続的に変化する。
【0036】換言すると、図7に模式的に示すように、
第1の配向状態に液晶分子が配列した微小領域と第2の
配向状態に液晶分子が配列した微小領域が、可視光帯域
の光の波長よりも短い距離内に多数形成され、これらの
微小領域の面積又は数の割合が印加電圧に応じて変化す
る。また、各微小領域のサイズが可視領域の光の波長よ
りも小さいため、光学的には、これらの微小領域の光学
特性が平均化され、液晶分子の平均的なダイレクタの方
向がAFLC21の実質的な光学軸となる。この光学軸
は、印加電圧の変化に伴う液晶分子の配向の変化、即
ち、第1の配向状態と第2の配向状態の液晶分子の割合
の変化に応じて連続的に変化する。
【0037】このため、偏光板23、24を図3に示す
ように配置し、0.1Hz程度の十分低周波の三角波電
圧を画素電極13と対向電極17との間に印加して得ら
れる光学特性は、図8に示すように、印加電圧0V近傍
において平坦な部分がなく、印加電圧の絶対値の上昇に
伴って光学特性も連続的になめらかに変化するものとな
る。さらに、印加電圧の極性に対して透過率のカーブも
対称となる。また、絶対値が一定の値(Ec)以上の電
圧が印加されると、螺旋が消失して透過率は飽和する。
さらに、ヒステリシスが非常に小さい。
【0038】このような光学特性を示す液晶表示素子に
よれば、印加電圧に対し表示階調が一義的に定まり、し
かも、任意の階調を得ることができる。従って、上述の
ように、液晶表示素子をアクティブマトリクス型とし
て、各画素の非選択期間に、印加電圧を表示階調に対応
するほぼ一定値に維持することにより、任意の階調が表
示可能となる。なお、階調表示を安定して行うために
は、透過光量が最大値の50%となる位置での電圧幅
(ヒステリシス幅)Δ50が、ほぼ0.1V以下となるA
FLC21が望ましい。
【0039】次に、上記構成の液晶表示素子に階調表示
を行わせる場合の駆動方法について説明する。図9
(A)は、行ドライバ31が第1行のTFT14に接続
されたゲートライン15に印加するゲート信号の波形を
示し、図9(B)は、列ドライバ32がデータライン1
6に印加するデータ信号の波形を示し、図9(C)は各
画素に保持される電圧を示す。なお、理解を容易にする
ため、第1行の画素用のデータ信号のみ示し、他の行用
のデータ信号は図示しない。
【0040】図9(A)〜図9(C)において、TFは
1フレーム期間、TSは第1行の画素の選択期間、TO
は非選択期間を示す。各選択期間TSは、例えば、約6
0μ秒である。この実施の形態においては、図9(B)
に示すように、連続する2つのフレームの選択期間TS
に、表示階調に応じ、極性が反対で絶対値が同一の電圧
値VD、−VDを有する駆動パルス(書き込みパルス)
をデータライン16に印加する。即ち、1つの映像信号
(表示データ)について、電圧値が+VDと−VDの2
つの駆動パルスを2つのフレームの各選択期間TSにそ
れぞれ1つずつAFLC21に印加する。駆動パルスの
極性及び電圧値は、データ信号の基準電圧V0に対する
極性と電圧である。基準電圧V0は対向電極17に印加
する電圧と同一である。
【0041】この駆動方法では、書き込み電圧VDの最
小値をV0とし、最大値Vmaxを透過率の飽和が起こる
電圧ECよりも若干低い値として、V0〜Vmaxの範囲で
書き込み電圧VDを制御する。
【0042】上記のような波形のゲート信号とデータ信
号とを用いて上記反強誘電性液晶表示素子を駆動する
と、各行の選択期間TSに、駆動パルスの電圧(書き込
み電圧)VDがゲート信号によりオンしているTFT1
4を介して画素電極13に印加される。ゲート信号がオ
フし、非選択期間TOになると、TFT14がオフ状態
になり、図9(C)に示すように、書き込み電圧VD
が、画素電極13と対向電極17とその間のAFLC2
1とで形成される容量(画素容量)に保持される。この
ため、図9(C)に示すように非選択期間TOの間、そ
の画素の透過率が、画素容量の保持電圧に対応する値に
維持される。
【0043】この実施の形態では、AFLC21として
印加電圧の変化に対する明確な閾値を有さず、透過率が
連続的に変化するものを使用し、しかも、図3に示す光
学配置を採用しているので、書き込み電圧VDの絶対値
に対する透過率が一義的に定まり、書き込み電圧VDの
絶対値により透過率を制御して、明確な階調表示を実現
できる。
【0044】また、連続する2つのフレームにより、1
つの画素データに対する正負逆極性の電圧+VDと−V
DをAFLC21に印加しているので、正負の電圧に対
する光学特性が若干異なっていてもこれらの光学的変化
の平均値として観察されるので、正負逆極性の電圧に対
する光学的特性に差があっても明確な階調表示が可能で
ある。
【0045】また、連続する2つのフレームで、極性が
逆で絶対値が等しい電圧+VDと−VDを各画素(AF
LC21)に印加するので、AFLC21に直流電圧成
分が片寄って印加されることがない。従って表示の焼き
付き現象やAFLC21の劣化を生ずることもない。
【0046】
【実施例】化1に示す液晶材料を混合して形成される反
強誘電性液晶材料を用いて形成した液晶表示素子の印加
電圧に対する透過率の関係を図10に示す。図10の特
性は、対向する電極17と13との間に±20V、0.
1Hzの三角波を印加して得られたものであり、中間階
調を安定的に表示できることが理解できる。
【0047】この液晶において、印加電圧に応じた上述
の分子の挙動が行われていることは、例えば、図11
(A)〜(I)に示す偏光顕微鏡写真の図等から判別す
ることができる。例えば、図11(I)〜(A)は、こ
の順に、無電界状態から充分高い電圧を印加した状態ま
でのテストセルの偏光顕微鏡による透過率の変化を示し
ている。
【0048】ここで、無電界状態では、図11(I)に
示すように、ほとんど全面が「黒」である。即ち、第1
の配向状態の液晶分子と第2の配向状態の液晶分子がほ
ぼ均等に存在し、液晶分子のダイレクタ(平均的な配向
方向)は第1の配向方向21Aと第2の配向方向21B
のほぼ中間方向である法線方向21Cを向いている。
【0049】印加電圧を上昇すると、図11(I)〜
(B)に示すように、「白」の領域の面積が増加し、
「黒」の領域の面積が減少する。また、「白」及び
「黒」の各領域の透過率は変化していない。このこと
は、「黒」の領域の第1又は第2の配向状態にある液晶
分子が微小領域単位で第2又は第1の配向状態に変化し
たことを示している。即ち、その微小領域の液晶が強誘
電相に変化したことを示している。
【0050】さらに、印加電圧を上昇すると、図11
(A)に示すように、ほぼ全面が「白」、即ち、ほぼ全
ての液晶分子が第1又は第2の配向方向の一方に配向
し、AFLC21の分子全体が一方向に配列した強誘電
相になる。
【0051】このように、この具体例の液晶の液晶分子
は、印加電圧に応じて、第1又は第2の配向状態から第
2又は第1の配向状態にコーンに沿って順次180°反
転する。そして、液晶分子の平均的な配向方向が印加電
圧に応じて連続的に変化し、透過率が連続的に変化す
る。
【0052】また、図12はAFLC21として、分子
構造が基本的に同一で、I−SA転移温度が92℃、SA
−SCA*転移温度が68℃、自発分極が130nc/c
2、チルト角が27°(コーンアングル54°)、且
つ、上述の構造を有する反強誘電性液晶を使用し、配向
処理方向及び偏光板の透過軸の方向を図3に示したよう
に設定し、各選択期間TSを60μ秒とし、図9(B)
に示すように絶対値が同一の電圧を有する駆動パルスを
2つのフレームで異なった極性とし、書き込み電圧を0
V〜10Vの範囲で変化させた場合の印加電圧と透過率
の関係を示す。このグラフから明らかなように、この液
晶表示素子及びこの駆動方法によれば、書き込み電圧を
変化させることにより、透過率が連続的に変化し、さら
に、書き込み電圧に応じて表示階調がほぼ一義的に定ま
り、階調表示が可能になる。
【0053】この発明は上記実施の形態に限定されず、
種々の変形が可能である。例えば、液晶表示素子の駆動
方法、駆動波形等は任意に変更可能である。また、偏光
板23の透過軸23Aと偏光板24の透過軸24Aを平
行に設定してもよい。また、偏光板の光学軸は吸収軸で
もよい。また、一方の偏光板の光学軸を第1又は第2の
配向方向21A又は21Bに平行又は直角とし、他方の
偏光板の光学軸を一方の偏光板の光学軸に平行又は直交
させてもよい。また、本発明はTFTをアクティブ素子
とする反強誘電性液晶表示素子に限らず、MIMをアク
ティブ素子とする反強誘電性液晶表示素子にも適用可能
である。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の反強誘電
性液晶表示素子は、分子レベルで第1と第2の配向状態
を有し、印加電圧に応じて液晶分子の配向状態が第1又
は第2の配向状態から第2又は第1の配向状態にそれぞ
れ変化する。このため、配向状態の異なる部分領域が可
視領域の光の波長の中に複数発生する。このため、これ
らの光学特性が平均化され、強誘電相と反強誘電相の間
の多数の中間的な状態を生成できる。従って、この中間
的な状態を用いて明確な階調表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態にかかる液晶表示素子
の構造を示す断面図である。
【図2】図1に示す液晶表示素子の下基板の構成を示す
平面図である。
【図3】偏光板の透過軸と液晶分子の配向方向の関係を
示す図である。
【図4】反強誘電性液晶の液晶分子の描く二重螺旋構造
を説明するための図である。
【図5】基板間に封止された液晶分子の配向状態を説明
するための図である。
【図6】印加電圧と液晶分子の配向との関係を示す図で
あり、(A)は電圧を印加していない時の液晶分子の配
向を説明するための図であり、(B)と(C)は第1の
極性の中間電圧を印加した時の液晶分子の配向を説明す
るための図であり、(D)は第1の極性で十分大きい電
圧を印加した時の液晶分子の配向を説明するための図で
あり、(E)と(F)は第2の極性の中間電圧を印加し
た時の液晶分子の配向を説明するための図であり、
(G)は第2の極性で十分大きい電圧を印加した時の液
晶分子の配向を説明するための図である。
【図7】可視光帯域の光の波長より短い距離内に配向状
態の異なる領域が形成された状態を模式的に示した図で
ある。
【図8】この発明の一実施の形態の反強誘電性液晶表示
素子に低周波の三角波電圧を印加した時の、印加電圧−
透過率特性を示すグラフである。
【図9】この発明の一実施の形態の液晶表示素子の駆動
方法を説明するためのタイミングチャートであり、
(A)はゲート信号、(B)はデータ信号、(C)は各
画素に保持される電圧を示すタイミングチャートであ
る。
【図10】この発明の一実施の形態のAFLCの具体例
を封入した液晶表示素子の印加電圧−透過率特性を示す
図である。
【図11】(A)〜(I)はこの発明の一実施の形態の
AFLCの具体例を封入した液晶表示素子の偏光顕微鏡
写真を示す図である。
【図12】図9に示す駆動方法を用いてこの発明の一実
施例の液晶表示素子を駆動した時の印加電圧−透過率特
性を示す図である。
【図13】従来の反強誘電性液晶表示素子に低周波の三
角波電圧を印加した時の、印加電圧−透過率特性を示す
グラフである。
【符号の説明】
11・・・透明基板(下基板)、12・・・透明基板(上基
板)、13・・・画素電極、14・・・アクティブ素子(TF
T)、15・・・ゲートライン(走査ライン)、16・・・デ
ータライン(階調信号ライン)、17・・・対向電極、1
8・・・配向膜、19・・・配向膜、20・・・シール材、21・
・・反強誘電性液晶(AFLC)、22・・・ギャップ材、
23・・・偏光板(下偏光板)、24・・・偏光板(上偏光
板)、31・・・行ドライバ(行駆動回路)、32・・・列ド
ライバ(列駆動回路)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 下田 悟 東京都八王子市石川町2951番地の5 カシ オ計算機株式会社八王子研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】対向する一対の基板の一方に画素電極を、
    他方の基板に前記画素電極に対向する対向電極をそれぞ
    れ形成し、前記一対の基板間に、第1と第2の配向状態
    の液晶分子がほぼ均一に混在する反強誘電相を有し、印
    加電圧に応じて第1と第2の配向状態の一方の配向状態
    の液晶分子の一部が他方の配向状態に変化し、配向状態
    が異なる複数の領域が可視光帯域の光の波長よりも小さ
    い距離内に形成され、第1の配向状態の領域と第2の配
    向状態の領域の割合に応じて、ダイレクタの方向が変化
    する反強誘電性液晶を封入し、階調表示を可能としたこ
    とを特徴とする反強誘電性液晶表示素子。
  2. 【請求項2】画素電極と画素電極に接続されたアクティ
    ブ素子がマトリクス状に複数配列された一方の基板と、 前記画素電極に対向する対向電極が形成された他方の基
    板と、 前記基板の間に封入され、液晶分子がほぼ第1の配向方
    向に配列した第1の強誘電相と液晶分子がほぼ第2の配
    向方向に配列した第2の強誘電相と、第1の配向方向に
    配列した液晶分子と第2の配向方向に配列した液晶分子
    とが混在し、その平均的なダイレクタの方向がカイラル
    スメクチック相の層構造の層の法線方向にほぼ一致する
    反強誘電相を有し、印加電圧に応じて、第1の配向方向
    と第2の配向方向の一方に配列した液晶分子が他方の配
    向方向に配列して、可視光帯域の光の波長より短い範囲
    で、異なった配向状態の領域が複数形成され、前記第1
    の配向状態の領域と第2の配向状態の領域の割合に応じ
    て、ダイレクタの方向が変化する反強誘電性液晶と、 を備えたことを特徴とする反強誘電性液晶表示素子。
  3. 【請求項3】一方の基板と、 前記一方の基板に対向する他方の基板と、 前記一方と他方の基板の間に封入され、液晶分子がほぼ
    第1の配向方向に配列した第1の強誘電相と液晶分子が
    ほぼ第2の配向方向に配列した第2の強誘電相と、第1
    の配向方向に配列した液晶分子と第2の配向方向に配列
    した液晶分子とが混在し、その平均的なダイレクタの方
    向がカイラルスメクチック相の層構造の層の法線方向に
    ほぼ一致する反強誘電相を有し、印加電圧に応じて、第
    1の配向方向と第2の配向方向の一方に配列した液晶分
    子が他方の配向方向に配列して、可視光帯域の光の波長
    より短い範囲で、異なった配向状態の領域が複数形成さ
    れ、前記第1の配向状態の領域と第2の配向状態の領域
    の割合に応じて、ダイレクタの方向が変化する反強誘電
    性液晶と、 前記液晶に電圧を印加して、この印加電圧を変えること
    により、前記異なった配向状態の領域の割合を制御し、
    反強誘電性液晶のダイレクタの方向を前記第1と第2の
    配向方向の間の任意の方向に設定する制御手段と、を備
    えたことを特徴とする反強誘電性液晶表示素子。
  4. 【請求項4】強誘電相の領域と反強誘電相の領域が混在
    することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の反強
    誘電性液晶表示素子。
  5. 【請求項5】前記反強誘電性液晶は、カイラルスメクチ
    ックCA相の液晶が螺旋構造を消失された状態で前記基
    板間に封止されて構成されている、ことを特徴とする請
    求項1、2、3又は4に記載の反強誘電性液晶表示素
    子。
  6. 【請求項6】前記反強誘電性液晶表示素子は、さらに、
    前記反強誘電相における液晶分子の平均的な配向方向に
    平行又は直交する方向に光学軸が配置された第1の偏光
    板と、 前記液晶を介して前記第1の偏光板に対向し、前記第1
    の偏光板の光学軸に平行又は直交するように光学軸が設
    定された第2の偏光板を備える、 ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載
    の反強誘電性液晶表示素子。
JP8151831A 1995-05-31 1996-05-24 反強誘電性液晶表示素子 Pending JPH0950047A (ja)

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