JPH0937571A - 積層型アクチュエータおよび移動装置 - Google Patents

積層型アクチュエータおよび移動装置

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JPH0937571A
JPH0937571A JP7182964A JP18296495A JPH0937571A JP H0937571 A JPH0937571 A JP H0937571A JP 7182964 A JP7182964 A JP 7182964A JP 18296495 A JP18296495 A JP 18296495A JP H0937571 A JPH0937571 A JP H0937571A
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bimorph
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Nobuyuki Oya
信之 大矢
Hitoshi Kanayama
斎 金山
Koji Idogaki
孝治 井戸垣
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 第1の課題は、比較的低電圧で作動しながら
発生する力およびストロークの大きい積層型アクチュエ
ータを提供することである。第2の課題は、低電圧で作
動しながら移動速度が高く、重いペイロードをも電力を
有効に利用しつつ輸送することができる移動装置を提供
することである。 【解決手段】 複数枚が重ねられ同軸に配置されている
バイモルフ1と、その中心部を軸長方向に互いに連結し
ている中心連結部材2と、外周部を軸長方向に互いに連
結している外周連結部材3とからなる積層型アクチュエ
ータ。このアクチュエータと、これに制御された波形の
印加電圧を供給する制御手段5とを持ち、中心連結部材
2および外周連結部材3のうち一方は他方より重いウエ
イトとして機能し、他方は脚部をもつ移動装置。低電圧
で大きな変位をおこすバイモルフ1を積層して並列に接
続したので、低電圧でありながら変位も力も十分なアク
チュエータが実現され、これを装備した移動装置は高い
移動能力を発揮する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の積層型アクチュエー
タは、圧電効果を利用した平面変形素子(バイモルフ/
ユニモルフ)による電圧駆動型アクチュエータの技術分
野に属する。本発明の移動装置は、上記積層型アクチュ
エータの応用技術分野に属し、同アクチュエータに駆動
される移動装置であって、自走能力のあるマイクロ・マ
シンや、各種配管内を自走して移動する孔内移動装置な
どの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】従来の圧電素子を用いた移動装置として
は、特開昭63−299785に数種類の実施例が開示
されている。そのうち一つ(第1従来技術)は、電歪効
果をもつ圧電板に正負の内部電極が交互に挟持されてい
る積層圧電体の伸縮作用を利用して、移動体本体に対し
て慣性体を前後に駆動するものである。すなわち、積層
圧電体の伸縮加速度が小さい場合には、移動体本体が床
面と当接して生じている摩擦力が支配的であって、慣性
体が移動する。逆に、その伸縮加速度が大きい場合に
は、慣性力が摩擦力を凌駕して支配的になり、移動体本
体が床面を滑って移動する。こうして、この移動挿置
は、積層圧電体への印加電圧によって慣性力を制御しつ
つ、摩擦力と慣性力を交互に利用して前進後退する。
【0003】もう一つ(第2従来技術)は、バイモルフ
型圧電素子の反り変形を利用して、その曲げモーメント
で慣性体を前後に駆動し、もって上記移動装置と同様の
作動原理で前進後退する移動装置である。ここで、バイ
モルフは片持ち梁(カンチレバー)状に取り付けられて
おり、慣性体はバイモルフで形成されたカンチレバーが
反ることによって前後に駆動されている。この移動装置
では、積層圧電体を使用した上記移動装置よりも、印加
電圧が比較的低いながら作動ストロークが大きく、移動
速度の向上が見込めるという利点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述の第1従来技術で
は、印加電圧が通常100V以上と比較的高く、漏電や
短絡による不具合が有った場合、被害が深刻なものにな
るという危険性をはらんでいた。また、積層圧電体の作
動ストロークが数μm程度と小さいので、ストロークあ
たりの移動距離(ピッチ)が小さく、高い移動速度は望
めないという不都合もあった。したがって、消費された
電気エネルギーの割合には移動距離が稼げないという、
エネルギー変換効率上の問題点も抱えていた。
【0005】一方、前述の第2従来技術では、比較的低
い印加電圧でまずまず大きなストロークは得られるの
で、エネルギー変換効率の向上は期待されうる。しかし
ながら、上記第1従来技術に比較して発生する力は桁違
いに小さいので、大きな慣性力を発揮させることはでき
ず、大きなペイロード(有償荷重)の輸送は無理という
問題点を抱えていた。
【0006】そこで、本発明は、比較的低電圧で作動し
ながら発生する力およびストロークの大きい積層型アク
チュエータを提供することを解決すべき第1の課題とす
る。また、同積層型アクチュエータを装備することによ
り、比較的低電圧で作動しながら移動速度が高く、比較
的重いペイロードをも電力を有効に利用しつつ輸送する
ことができる移動装置を提供することを第2の課題とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第1構成は、複
数枚が重ねられ同軸に配置されていて印加電圧により曲
率が変化する平面変形素子と、各該平面変形素子の中心
部を軸長方向に互いに連結している中心連結部材と、各
該平面変形素子の外周部を軸長方向に互いに連結してい
る外周連結部材とからなり、該平面変形素子の変形によ
り該中心連結部材と該外周連結部材とが同軸的に相対移
動可能としたことを特徴とする積層型アクチュエータで
ある。
【0008】本発明の第2構成は、上記第1構成におい
て、前記平面変形素子は、バネ弾性材料からなる平板と
該平板の少なくとも片面に接合固定された板状の圧電体
である圧電板とを有する圧電ユニモルフまたは圧電バイ
モルフであることを特徴とする。本発明の第3構成は、
上記第1構成または第2構成において、前記平面変形素
子に前記印加電圧を導通する回路を持ち、該回路は、該
平面変形素子の全てを同一方向に曲率を変化させるもの
であることを特徴とする。
【0009】本発明の第4構成は、上記第3構成におい
て、前記中心連結部材は、前記平面変形素子の一方の電
極へ導通する導電部を持ち、前記外周連結部材は、前記
平面変形素子の他方の電極へ導通する他の導電部を持っ
ており、前記回路は、両該導電部から構成されているこ
とを特徴とする。以上は、本発明の積層型アクチュエー
タの構成であり、以下は、本発明の移動装置の構成であ
る。
【0010】本発明の第5構成は、複数枚が重ねられ同
軸に配置されていて印加電圧により曲率が変化する平面
変形素子と、各該平面変形素子の中心部を軸長方向に互
いに連結している中心連結部材と、各該平面変形素子の
外周部を軸長方向に互いに連結している外周連結部材
と、該平面変形素子に制御された波形の印加電圧を供給
する制御手段とを持ち、該中心連結部材および該外周連
結部材のうち一方は、他方より重いウエイトとして機能
し、該中心連結部材および該外周連結部材のうち他方
は、周囲の壁面または床面に当接する脚部をもつことを
特徴とする移動装置である。
【0011】ここで、該中心連結部材および該外周連結
部材のうち一方は、他方より軽量ながらウエイトとして
機能し、該中心連結部材および該外周連結部材のうち他
方は、周囲の壁面または床面に当接する脚部をもつ構成
も可能ではある。しかし、同構成の移動装置では、平面
変形素子の変位(ストローク)のうちわずかの部分しか
移動距離に転換されないので、移動装置としての性能は
著しく劣ったものとならざるを得ない。
【0012】本発明の第6構成は、上記第5構成におい
て、前記脚部は、バネ弾性材料からなる複数のクランプ
脚で形成されていることを特徴とする。本発明の第7構
成は、上記第5構成または第6構成において、前記脚部
は、軸長方向両端部に二組が配設されていることを特徴
とする。本発明の第8構成は、上記第5〜7構成のうち
いずれかにおいて、前記中心連結部材および前記外周連
結部材のうち重いほうの前記一方は、センサ、前記制御
手段、電池、受信装置、送信装置、発振器、アイソトー
プ、マーカ、薬剤およびタンクの内いずれかを持つこと
を特徴とする。
【0013】
【作用および発明の効果】本発明の第1構成の積層型ア
クチュエータでは、複数枚の平面変形素子の各々の発生
する力が枚数分足し合わされて、中心連結部材と外周連
結部材との間に作用する。また、各平面変形素子の変位
の略平均値が、中心連結部材と外周連結部材との間の変
位になる。ここで、積層圧電体に比較して平面変形素子
は比較的低い印加電圧で大きな変位を生じるので、中心
連結部材と外周連結部材との間に生じるストローク(変
位)は比較的大きい。
【0014】したがって、本構成によれば、比較的低電
圧で作動しながら発生する力およびストロークの大きい
積層型アクチュエータを提供することができる。すなわ
ち、本構成の積層圧電体によれば、比較的低電圧でも十
分に大きな力とストロークが得られるという効果があ
る。本発明の第2構成では、平面変形素子が圧電ユニモ
ルフまたは圧電バイモルフであるので、信頼性と応答性
の高い積層型アクチュエータを構成できる。例えば直径
10mm程度のバイモルフでは、無負荷フルストローク
でkHzオーダの振動を発生することが可能である。
【0015】したがって、本構成によれば、信頼性と応
答性の極めて高い積層型アクチュエータを提供できると
いう効果がある。本発明の第3構成では、電圧印加時に
全ての平面変形素子の変形方向が同一であるので、各平
面変形素子の作用がお互いの邪魔をすること無く、協調
して作用する。
【0016】したがって、本構成によれば、積層型アク
チュエータの作用が無駄なく発揮されるので、効率がよ
いという効果がある。本発明の第4構成では、中心連結
部材および外周連結部材はそれぞれ導電部を有し、平面
変形素子に印加電圧を導電する回路を構成しているの
で、各平面変形素子にそれぞれリード線等を接続する必
要がない。すなわち、印加電圧の接続は、中心連結部材
および外周連結部材のそれぞれの導電部に対してなされ
れば、リード線等を要さない。
【0017】したがって、本構成によれば、積層型アク
チュエータのリード線の破断などによる接続不良がなく
なり、故障率が大幅に減って信頼性が大きく向上すると
いう効果がある。また、製造工程で印加電圧の接続に関
する工数が低減して、製品のコストダウンになるという
効果もある。さらに、本構成の積層型アクチュエータを
実地に使用する際に、配線(リード線)が動作の邪魔に
ならず、重量軽減にもなるという効果も生じる以上は、
本発明の積層型アクチュエータの作用効果であり、以下
は、本発明の移動装置の作用効果である。
【0018】本発明の第5構成の移動装置では、複数枚
が積層された平面変形素子と、その中心部を連結してい
る中心連結部材と、その外周部を連結している外周連結
部材とからなる、前述の積層型アクチュエータを駆動装
置として持っている。同アクチュエータには、制御手段
から制御された波形の印加電圧が供給されるので、各平
面変形素子は適正な曲率の曲げ変形を生じ、中心連結部
材と外周連結部材との間に軸長方向の変位が生じる。
【0019】その際、中心連結部材および外周連結部材
のうち一方は他方より重いので、慣性質量が大きく、小
さな加速度でも慣性力を生じる(加速されにくく慣性空
間に留まろうとする)。逆に、中心連結部材および外周
連結部材のうち他方(軽いほう)には、周囲の壁面また
は床面に当接する脚部で軸長方向(前後)に摩擦力が作
用する。
【0020】それゆえ、上記積層型アクチュエータの変
位に伴う加速度が大きく、慣性力が摩擦力を凌駕してい
れば、上記一方(重いほう)はあまり動かず、上記他方
(軽いほう)は、脚部に作用する摩擦力に打ち勝って壁
面等に対し前後に移動する。逆に、上記積層型アクチュ
エータの変位が緩やかで、これに伴う加速度が小さけれ
ば、摩擦力が慣性力を凌駕する。すると、上記一方(重
いほう)が緩やかに移動し、上記他方(軽いほう)は、
脚部に作用する摩擦力によって壁面等に対し固定されて
いる。
【0021】そこで、重いほうの一方を加速する際に、
前方の加速は緩やかに、後方への加速は急激になるよう
に、制御手段により印加電圧が制御されていれば、この
移動装置は、慣性力と摩擦力とを交互に利用して前進す
る。そして、制御手段により逆の操作がなされれば、移
動装置は後退する。こうして、制御手段が印加電圧を制
御された波形で加えることにより、本構成の移動装置は
前進および後退のいずれの移動も自在になすことができ
る。
【0022】したがって、本構成によれば、前述の作用
効果をもつ積層型アクチュエータを装備しているので、
次のような効果をもつ移動装置を提供することができ
る。すなわち、本構成の移動装置によれば、比較的低電
圧で作動しながら移動速度が高く、比較的重いペイロー
ドをも電力を有効に利用しつつ輸送することができると
いう効果がある。さらに、積層型アクチュエータを構成
している平面変形素子は、積層圧電体と比較して低い印
加電圧でも大きなストロークを生じるので、エネルギー
変換効率も改善されるという効果もある。
【0023】本発明の第6構成では、脚部がバネ弾性を
もつ複数のクランプ脚からなるので、脚部は、孔を形成
する周囲の壁面の凹凸にも追従することができ、ほぼ一
定の押圧力で周囲の壁面に当接する。したがって、本構
成によれば、シンプルかつ安価でありながら、周囲の壁
面等の径や断面形状の変化にも適応性のある脚部が構成
されるので、摩擦力はほぼ一定に保たれ、移動特性が一
定に保たれるという効果がある。
【0024】本発明の第7構成では、脚部が前後二組装
備されているので、壁面または床面に前後両端で支持さ
れる(自動車のホイールベースに相当する)。その結
果、移動装置の姿勢が安定し、脚部の装備されていない
ほう(つまり重いほうの一方)が壁面または床面に接触
することが防止される。したがって、本構成によれば、
上記一方を壁面または床面に対してより一定した距離で
支持し、移動装置全体の姿勢も安定するという効果があ
る。この効果は、壁面からの距離を一定に保つことが重
要である装備を搭載している場合や、孔内の軸線に沿っ
て姿勢を保持される必要がある装備を搭載している場合
には、よりいっそう重要である。前者の装備には、例え
ば渦電流センサがあり、後者の装備には、例えばCCD
カメラがある。
【0025】本発明の第8構成では、上記一方(重いほ
う)に各種装置を搭載(包含)しているので、装置の質
量も上記一方の慣性質量の一部として作用する。したが
って、本構成によれば、上記搭載装置の質量も有効に作
用して無駄がないので、移動能力が向上するという効果
がある。なお、センサ、送信装置、発振器、アイソトー
プ、マーカ、薬剤およびタンクなどを搭載していれば、
計測と送信、または各種検査や各種処理が可能になる。
さらに、制御手段および電池を搭載していれば、有線に
よる印加電圧の伝送が不要になり、スタンドアロンで自
走することも可能になる。
【0026】
〔実施例1〕
(実施例1の構成の概要)本発明の実施例1としての移
動装置は、図1に示すように、複数枚積層された圧電バ
イモルフ1と、それらの中心部を連結している中心連結
部材2および外周部を連結している外周連結部材3,4
とを有する孔内移動装置である。本装置は、図示しない
制御手段と接続され、同制御手段から印加電圧を供給さ
れて周囲の孔を形成する壁面Wに沿って前進または後退
する。
【0027】圧電バイモルフ1のそれぞれは、印加電圧
により曲率が変化する平面変形素子である。圧電バイモ
ルフ1は、等間隔を開けて複数枚が重ねられ、同軸に配
置されている。中心連結部材2は、大きく分けて、全て
のバイモルフ1の中心部を軸長方向に互いに連結してい
る中心連結部21と、中心連結部21の先端に固定され
たペイロード部20とから構成されている。ペイロード
部20は、大きな質量を有する剛性の高い部分で、通常
はセンサなどのミッション・ペイロード(移動体挿入の
目的とする作用をもつ有償荷重)を搭載している。ただ
し、移動することのみを目的とする場合には、ペイロー
ド部20は剛性の高いウエイトでもよい。
【0028】外周連結部材3,4は、バネ弾性を有する
導電性の棒状部材であって、全てのバイモルフ1の外周
部を軸長方向に互いに連結している。ここで、平面変形
素子であるバイモルフ1の変形により、中心連結部材2
と外周連結部材3,4とが同軸的に相対移動可能なの
で、この三者により積層型アクチュエータが構成されて
いる。
【0029】各外周連結部材3の前後の両端には、遠心
方向に突出して橇状に屈曲したクランプ脚31が形成さ
れている。クランプ脚31は、外周連結部材3の一部と
してバネ弾性材料からなる脚部であるので、バネ弾性に
より周囲の壁面Wに当接し、壁面Wとの摩擦力は多少の
壁面Wの凹凸に係わらずほぼ一定に保たれる。本実施例
では、クランプ脚31をもつ外周連結部材3が二本、外
周連結部材4が四本、円周方向に等間隔で配設されてい
るものとしたが、外周連結部材4を略した構成も可能で
ある。あるいは、前後一対のクランプ脚31をもつ外周
連結部材3を三つ、四つ、またはそれ以上備えた構成を
とることも可能である。
【0030】なお、クランプ脚31を備えた外周連結部
材3の本数が少なく(例えば四本以下)、バイモルフ1
の外周縁部が変形してバイモルフ1の発生する力や変位
が外周連結部材3に十全に伝達されない場合には、次の
ような構成で対処できる。すなわち、バイモルフ1の外
周縁部を立てたり、外周縁付近に同心円状に波状の凹凸
を設けたり、外周縁部に同心円状に段差を設けたりする
構成をとって、外周縁部の剛性を増すことで対処でき
る。あるいは、バイモルフ1の外周縁の剛性を増して補
強する補強材を有する構成も可能である。以上のように
バイモルフ1の外周縁の剛性が高い構成をとれば、たと
え外周連結部材3が二本のみの構成であっても、バイモ
ルフ1は有効に作用することができる。
【0031】(実施例1の構成の詳細)さて、以上の説
明で本実施例の孔内移動装置の構成の概要が明らかにさ
れたので、次に、同構成の詳細と作用を説明する。詳細
説明の内容は、主にバイモルフ1の構成および印加電圧
の導電路に関するものである。本実施例の孔内移動装置
の構成は、図2に示すように、大きく分けてバイモルフ
1複数枚、中心連結部材2、外周連結部材3,4、およ
び制御手段5からなる。
【0032】各バイモルフ1は、バネ弾性材料からなる
平板である導電性の円盤10と、その両面に接合固定さ
れた板状の圧電体である円盤状の圧電板11,12とを
有する。円盤10の前面には圧電板11が、後面には圧
電板12がそれぞれ接合されており、圧電板11,12
の外面には導電性の外部電極膜(図中太線)が形成され
ている。
【0033】中心連結部材2は、前述のようにペイロー
ド部20と中心連結部21とからなるが、中心連結部2
1は、さらに導電性で機械強度にも優れた一本の中心軸
22と、その周囲に複数個が直列に配設された導電性カ
ラー23とを有する。すなわち、中心軸22は、先端部
にペイロード部20を固定保持するとともに、全てのバ
イモルフ1とカラー23とを両者の中心で交互に連通し
て同軸に固定保持している。ペイロード部20と先頭の
バイモルフ1との間には、カラー23が同軸に挿置され
ている。このカラー23により、ぺイロード部20と先
頭のバイモルフ1との間に所定の間隔が保たれている。
【0034】同様に、互いに前後に隣接する各バイモル
フ1の間にも、軸長方向に所定の長さのカラー23が挿
置されていて、各バイモルフ1の間に所定の間隔が保た
れている。後尾のバイモルフ1の後方にも、カラー23
が中心軸22に保持されていて、バイモルフ1を前後の
カラー23で挟持している。ここで、先頭のカラー23
と後尾のカラー23とは、それぞれ中心軸22に溶接固
定されて、その間に挟持された全てのバイモルフ1およ
びカラー23を軸長方向に押圧固定している。
【0035】全ての導電性カラー23は、導電性の中心
軸22に貫かれて機械的に保持されているばかりではな
く、電気的にも導通している。そして、各カラー23
は、その端部でバイモルフ1の中央部に当接し、外部電
極膜11,12に導通している。一方、外周連結部材3
は、前述のように導電性であり、溶接等によってバイモ
ルフ1の円盤10の外周部に機械的に接合されていると
ともに、電気的にも導通している。それゆえ、中心軸2
2と外周連結部材3との間に電位差が生じれば、その電
位はそれぞれバイモルフの外部電極膜11,12および
円盤10に伝達され、上記電位差は印加電圧として作用
する。
【0036】すなわち、バイモルフ1に印加電圧を導入
するための導電路が、外周連結部材3と中心軸22およ
びカラー23とによって形成されている。したがって、
本実施例の構成によれば、リード線等による配線を省略
することができ、組み立て工数の低減等によるコストダ
ウンと、断線の可能性の排除による信頼性の向上という
効果が得られる。
【0037】上記印加電圧は、制御手段5により制御さ
れた波形で各バイモルフ1に印加される。制御手段5の
一極から印加電圧を中心軸22に導く導電路51は、細
いリード線で形成されている。一方、他の一極から印加
電圧を外周連結部材3に導く導電路52も、細いリード
線で形成されているが、アースをもってこれに代えるこ
とができる。
【0038】すなわち、孔を形成する配管等が導電性を
有する場合には、制御手段5の上記の他の一極が孔の壁
面Wにアースされており、クランプ脚31の当接により
壁面Wと外周連結部材3との導通が確保されていれば、
孔を形成する配管等をもって導電路52に代えることが
可能である。この場合、バイモルフ1、中心連結部材2
および外周連結部材3,4からなる移動体と、これに印
加電圧を与える制御手段5とを結ぶ導電路51としての
リード線(中心軸22に接続)は一本で済む。したがっ
て、移動体が牽引すべきリード線またはケーブルは細く
かつ軽量になるので、移動体の移動にかかる負担が減る
という効果が上がり、移動装置の運用上たいへん都合が
よい。
【0039】(バイモルフと回路構成)前述のバイモル
フ1の中央部と中心連結部材21との接合部は、図3に
示すように、バイモルフ1と、これを前後の両側から挟
持する二つの導電性カラー23と、両者の中心を同軸に
貫く導電性の中心軸22と、絶縁ブッシュ24とから構
成されている。絶縁ブッシュ24は、バイモルフ2の中
央に前後に貫通した孔の内周面と中心軸22の外周面と
の間に入って両者にそれぞれ当接している。絶縁ブッシ
ュ24には、バイモルフ1の円盤10と中心軸22との
間隔を空けて絶縁する作用とともに、バイモルフ1の内
周面の位置を中心軸22に対し同軸に保つ作用もある。
【0040】一方、バイモルフ1は、より詳しくは前後
方向(厚み方向)に対称な7層構造をしている。すなわ
ち、導電性のバネ弾性材からなる円盤10と、その前後
両面に接合された圧電板11,12と、圧電板11,1
2を円盤10の両面に接合している薄い内部電極膜1
5,16と、圧電板11,12の表面を覆っている薄い
外部電極膜13,14とから、バイモルフ1は構成され
ている。
【0041】バイモルフ1の表面を形成している外部電
極膜13,14は、カラー23を介して中心軸22に導
通しており、円盤10は、前述のように外周連結部材3
と導通している。したがって、全てのバイモルフ1およ
びその圧電板11,12は、電気的に並列に接続されて
いる。ここで、バイモルフ1の圧電板11,12の分極
方向Pは、図4に示すように同一方向を向いており、対
向していたり背向していたりはしない。したがって、制
御手段5から導電路51,52を介して外部電極膜1
3,14と円盤10(内部電極膜15,16は図略)と
の間に電圧が印加されれば、圧電板11,12のうち一
方は横に伸び、他方は横に縮む。その結果、バイモルフ
1は、横に伸びている圧電板の方を凸に曲率をもって軸
対象に変形する。その曲率は所定の範囲では印加電圧に
ほぼ比例し、印加電圧の正負が逆転すれば曲率の正負も
逆転する。
【0042】なお、全てのバイモルフ1の圧電板11,
12の分極方向Pは同一である。ここで、バイモルフ1
の変形により中心連結部材2と外周連結部材3との間に
同軸的に生じる変位(積層型アクチュエータの変位)
は、全てのバイモルフ1の変形による変位の平均値であ
る。それゆえ、同一のバイモルフ1を同方向で積層して
あれば、積層型アクチュエータの変位は一つのバイモル
フ1の変位に等しく、積層型アクチュエータの発生する
力は全てのバイモルフ1の発生力の総和である。したが
って、本移動装置の組み立ての際にバイモルフ1の表裏
を間違えることなく組み立てられていることが肝要で、
さもないと移動装置の性能を大きく損なうことになる。
【0043】ちなみに、直径10mm程度のバイモルフ
1に20V程度の印加電圧がかけられると、変位無しで
の最大発生力は10gf程度、最大変位(ストロークの
片振幅)は10μm程度である。したがって、五枚重ね
のバイモルフ1による積層型アクチュエータによれば、
20Vの印加電圧で50gf程度の力が生じ10μm程
度の変位が得られる。本実施例の移動装置は、この積層
型アクチュエータを装備しているので、10Vオーダの
低い印加電圧(電流はごく微弱)によっても十分な性能
を発揮することができる。
【0044】(実施例1の作用効果)本実施例の移動装
置においては、バイモルフ1が積層された積層型アクチ
ュエータに印加される印加電圧が所定の波形に制御され
ていて、前進または後退の移動をする。すなわち前述の
ように、積層型アクチュエータの変位の加速度が急激で
慣性力が支配的な運動と、加速度が緩慢で摩擦力が支配
的な運動との、二つの運動フェーズを交互に繰り返すこ
とにより、本実施例の移動装置は移動する。
【0045】上記印加電圧は、制御手段5が発生するも
のであるが、例えば図5(a)および図5(b)に示す
ように、鋸刃状の波形の周期信号電圧を印加することに
より上記移動体を前進および後退させることができる。
まず、前進移動から説明する。図5(a)のグラフにお
いて、電圧(変位に対応)が緩やかに変化する期間f
は、加速度が緩慢で摩擦力が支配的な摩擦力運動フェー
ズである。
【0046】本フェーズでは、電圧が緩やかに上昇する
のにしたがって質量の大きい方である中心連結部材2が
緩やかに前方に進出する(図2参照)。この間、大きな
慣性力は働かないので、外周連結部材3は壁面3に当接
するクランプ脚31の生じる摩擦力により、壁面に対し
て静止している。逆に、電圧が急激に変化する期間i
は、積層型アクチュエータの変位の加速度が大きく、中
心連結部材2の慣性力が外周連結部材3の摩擦力を凌駕
している慣性力運動フェーズである。
【0047】本フェーズでは、中心連結部材2はその大
きな質量のゆえにもとの位置(前進しきった位置)に留
まろうするので、大きな慣性力が生じる。この慣性力
は、外周連結部材3のクランプ脚31と壁面Wとの間に
作用する摩擦力を凌駕しており、外周連結部材3は、急
速に前方に引きつけられて滑り、壁面W上の位置を前方
に移動する。外周連結部材3の移動距離は、慣性力に比
べて摩擦力が無視しうるほど小さい場合には、積層型ア
クチュエータのストロークと、中心連結部材2と外周連
結部材3との質量比とに従って、概ね定まる。
【0048】以上のような摩擦力運動フェーズfと慣性
力運動フェーズiとを交互に繰り返すことにより、本実
施例の移動体は壁面Wの形成する孔内を積層型アクチュ
エータのストロークの数十%程度(100%未満)のピ
ッチで前進する。したがって、移動速度を向上させるた
めの要諦は、中心連結部材2と外周連結部材3との質量
比が十分に大きいこと、積層型アクチュエータのストロ
ークが大きくとれること、積層型アクチュエータの振動
数が高いことの3点である。
【0049】なお、後退時には、前述の前進時の信号を
逆時間で加えればよい。すなわち、図5(b)に示すよ
うに、急激に電圧が立ち上がる慣性力運動フェーズi’
では外周連結部材3が壁面Wを滑って後退し、緩やかに
電圧が下降する摩擦力運動フェーズf’では重い方であ
る中心連結部材2が緩やかに後退する。こうして、慣性
力運動フェーズi’と摩擦力運動フェーズf’とを繰り
返すことにより、本実施例の移動体は孔内を後退するこ
とができる。
【0050】本実施例の移動装置は、以上のような構成
と作用をもつので、次のような効果を上げることができ
る。すなわち、本実施例の移動装置によれば、比較的低
電圧で作動しながら移動速度が高く、比較的重いペイロ
ードをも電力を有効に利用しつつ輸送することができる
という効果がある。さらに、積層型アクチュエータを構
成しているバイモルフ1は、積層圧電体と比較して低い
印加電圧でも大きなストロークを生じるので、エネルギ
ー変換効率も改善されるという効果もある。
【0051】また、外周連結部材3のクランプ脚31の
バネ弾性作用で、脚部はほぼ一定の押圧力で周囲の壁面
Wに当接する。それゆえ、本実施例の移動装置では、シ
ンプルかつ安価でありながら、周囲の壁面Wの径や断面
形状の変化にも適応性のある脚部が構成されており、摩
擦力はほぼ一定に保たれるので、移動特性が一定に保た
れるという効果がある。
【0052】また、本実施例の移動装置には、脚部であ
るクランプ脚31が前後二組装備されており、壁面Wに
前後両端で支持されるので、姿勢が安定する。その結
果、ペイロード部20が壁面Wに接触することが防止さ
れているとともに、壁面Wとの距離もほぼ等距離に保た
れるので、各種センサ等のペイロードの搭載に都合がよ
いという効果もある。
【0053】さらに、本実施例の移動装置では、中心連
結部材2のペイロード部20に各種装置を搭載している
ので、装置の質量も中心連結部材2の慣性質量の一部と
して作用する。したがって、搭載装置の質量も有効に作
用して無駄がないので、本実施例の移動装置の移動能力
はいっそう向上するという効果がある。 (実施例1の変形態様1)本変形態様は、前述の実施例
1の中心連結部21の構成に関する変形態様である。す
なわち、図6に示すように、本変形態様の中心連結部2
1’は、バイモルフ1’を前後両面から挟持する円筒体
で導電性の永久磁石25と、両永久磁石25をバイモル
フ1’中央の貫通孔を介して互いに導通させている導電
性の接着剤26とからなる。
【0054】一方、バイモルフ1’は、その中央部の貫
通孔の周辺の構成が、実施例1のそれと若干異なってい
る。すなわち、円盤10’の孔の内周面100は、接着
剤26と接触して短絡することがないように拡げられて
おり、接着剤26との間に適正なギャップgが形成され
ている。また、内周面100の直径は、永久磁石25の
直径よりも小さく、バイモルフ1’がこれを挟持する永
久磁石25の押圧力に耐えうる構成になっている。
【0055】円盤10’だけではなく、内部電極膜1
5’,16’の内周縁も拡がっており、接着剤26と接
触して短絡することがないように配慮されている。同様
に、外部電極膜13’,14’の内周縁も拡がっている
が、これは主として永久磁石25と圧電板11,12と
の接合を強固にする目的で取られた構成である。本変形
態様によれば、バイモルフ1’を挟んで異極が対向する
永久磁石25の磁気吸引力により組み立てが容易になる
という効果がある。なお、上記構成の中心連結部21’
では、圧縮応力には耐えても引張応力に弱いので、軸長
方向に積層されているバイモルフ1’の固定保持は、外
周連結部材3,4によるところが大きい。
【0056】(実施例1の変形態様2)本変形態様も、
前述の実施例1の中心連結部21の構成に関する変形態
様である。すなわち、図7に示すように、本変形態様の
中心連結部21”は、バイモルフ1’の中心を前後に貫
通する中心軸22と、導電性の中空円筒体であるカラー
23’とからなる。実施例1と異なる点は、カラー2
3’の形状が単純な中空円筒体になっている点と、絶縁
ブッシュ24が無くなっている点である。絶縁ブッシュ
24無しでもバイモルフ1の円盤10と中心軸22とが
短絡しないように、円盤10の中心の貫通孔を形成して
いる内周面100は、変形態様1のそれ同様に中心軸2
2の外径より大きい内径を有している。
【0057】本変形態様の構成によれば、実施例1より
も部品の形状がシンプルでその数も少ないので安価に中
心連結部21”を製造できるうえ、前述の変形態様1よ
りも機械強度に優れた中心連結部21”が形成されると
いう効果がある。 (実施例1の変形態様3)本変形態様は、前述の変形態
様2の導電性カラー23が、薄いワッシャ状の金具に変
更されているものである(図略)。あるいは、中心軸2
2に導通するとともに、前後に隣合っているバイモルフ
1’の中心の貫通孔の周縁部で、隣接するバイモルフ1
の外部電極膜13,14を互いに導通している導電性接
着剤からなる導電膜が、ワッシャに代えて設けられてい
てもよい。
【0058】本変形態様によれば、バイモルフ1’を軸
長方向に高密度で集積することが可能になる。一般に孔
内移動装置の全長は、通過すべき孔の最大曲率などによ
って制限を受けるが、本変形態様では限られた全長に多
数のバイモルフ1’を集積することが可能になっている
ので、十分な移動性能を有する孔内移動装置を製造する
ことができる。
【0059】(実施例1の変形態様4)本変形態様の孔
内移動装置では、図8に示すように、バイモルフ1”の
圧電板11,12’の分極方向Pが互いに対向してい
る。したがって、本構成のバイモルフ1”を屈曲変形せ
しめるには、外部電極膜13,14の間に電位差を与え
て電圧を印加する必要がある。この場合、圧電板11,
12’は直列に結合されているので、同じだけの変位を
得るためには、制御手段5による印加電圧も前述の実施
例1および各変形態様の二倍に昇圧されている必要があ
る。
【0060】また、前述の変形態様2または変形態様3
に相当する構造(図7参照)で、中心軸22が絶縁性で
ある中心連結部21”の構成をとれば、先頭の導電性カ
ラー23’と後尾のカラー23’との間に全てのバイモ
ルフ1”が電気的にも直列に接続される。先頭の導電性
カラー23’に接続するリード線は、中心軸22を中空
としてその中を通して配線されていれば、スマートであ
る。
【0061】本変形態様の孔内移動装置は、何らかの理
由(例えば電流を少なくしてリード線を一層細くしたい
など)により、比較的高い電圧で印加電圧が与えられる
場合に適している。 〔実施例2〕 (実施例2の構成)本発明の実施例2としての移動装置
は、図9に示すように、複数枚積層された圧電ユニモル
フ1Uと、それらの中心部を連結している中心連結部材
2’および外周部を連結している外周連結部材3とを有
する孔内移動装置である。本装置は、制御手段5に導電
路51,52を介して接続され、制御手段5から印加電
圧を供給されて周囲の孔を形成する壁面Wに沿って移動
する。
【0062】本実施例の移動装置が実施例1と異なる点
は、平面変形素子として圧電ユニモルフ1Uを採用して
いることと、これに伴って中心連結部材2の中心連結部
21Uの構成が若干異なることの二点である。各ユニモ
ルフ1Uは、バネ弾性を有する平板である導電性の円盤
10と、円盤10の背面に接合された圧電板12と、圧
電板12の背面に形成された外部電極膜14とから構成
されている。圧電板12および外部電極膜14には、中
央に中心軸22を通す貫通孔が形成されており、この貫
通孔の内周面は中心軸22の外周面に当接している。ま
た、円盤10には、もう一回り大きい貫通孔が形成され
ており、絶縁性のブッシュ24’が嵌合している。
【0063】中心連結部材2’は、大きく分けて、全て
のユニモルフ1Uの中心部を軸長方向に互いに連結して
いる中心連結部21Uと、中心連結部21Uの先端に固
定されたペイロード部20とから構成されている。ペイ
ロード部20は、実施例1のものと同様である。一方、
中心連結部21Uは、一本の中心軸22と、ユニモルフ
1Uと同数の絶縁ブッシュ24’と、ユニモルフ1Uよ
り一つ多い導電性カラー23’とから構成されている。
【0064】導電性カラー23’は、実施例1の変形態
様2と同様のもので、その内周面で中心連結部21Uの
外周面に当接して導通しており、前端面ではユニモルフ
1Uの背面を形成している外部電極膜14に導通してい
る。したがって、中心軸22と外部電極膜14とは、導
電性カラー23’を介して互いに導通している。絶縁ブ
ッシュ24’は、外周面が円盤10の貫通孔に嵌合する
中空円筒部と、その前端部に形成されたフランジ部とか
らなる。同フランジ部は、背面で円盤10の貫通孔の周
縁部に当接しており、前面では前方のカラー23’に当
接していて、カラー23’(およびカラー23’に導通
している中心軸22)と円盤10とを絶縁している。
【0065】脚部としてのクランプ脚31を前後両端に
有する外周連結部材3は、実施例1と同様のものであ
る。制御手段5の機能および制御手段5とユニモルフ1
Uとの接続についても、実施例1と同様である。ここ
で、平面変形素子であるユニモルフ1Uの変形により、
中心連結部材2と外周連結部材3とが同軸的に相対移動
可能なので、本実施例でもこの三者により積層型アクチ
ュエータが構成されている。
【0066】(実施例2の作用効果)本実施例の孔内移
動装置でも、前述の実施例1同様の作動原理で前進およ
び後退の移動をすることができる。すなわち、摩擦力運
動フェーズfと慣性力運動フェーズiとを交互に繰り返
すこと(図5参照)により、本実施例の移動体は壁面W
の形成する孔内を、積層型アクチュエータのストローク
の数十%程度(100%未満)のピッチで移動する。
【0067】本実施例の孔内移動装置が、ユニモルフ1
Uを採用していることによって生じる実施例1との作用
効果上の違いは、印加電圧の許容値が大幅に高まること
である。すなわち、前進時に圧電板12の分極方向Pに
対して高い逆電圧をかける必要がないので、バイモルフ
1を採用している実施例1よりも高い電圧を印加して、
より大きな力とより大きなストロークとを発生させるこ
とができる。
【0068】(実施例2の各種変形態様)本実施例の孔
内移動装置に関しても、実施例1に対する各変形態様に
相当する変形態様が可能で、実施例1のそれに準ずる作
用効果を上げることができる。 〔実施例3〕 (実施例3の構成)本発明の実施例3としての移動装置
は、図10に示すように、複数枚積層された圧電バイモ
ルフ1と、それらの中心部を連結している中心連結部材
2”および外周部を連結している外周連結部材3’とを
有する孔内移動装置である。本装置は、導電路51,5
2を介して制御手段5と接続され、制御手段5から制御
された波形の印加電圧を供給されて周囲の孔を形成する
壁面Wに沿って前進または後退する。
【0069】本実施例の孔内移動装置が実施例1と明瞭
に異なる点は、中心連結部材2”と外周連結部材3’と
の構成が異なり、脚部29が中心連結部材2”に、ペイ
ロード部30が外周連結部材3’に装備されている点で
ある。(実施例1ではこの逆である。) すなわち、中心連結部材2”の方が外周連結部材3’よ
りも軽く、脚部29をもって壁面Wに当接している。脚
部29は、中心連結部21”の後端部に中央部を結合さ
れている脚基台27と、脚基台27の外縁部に一端を固
定され他の一端付近で壁面Wに当接する複数のクランプ
脚28とで構成されている。
【0070】中心連結部21”の構成は、前述の実施例
1の変形態様2のそれに等しい。脚基台27は、曲げ剛
性の高い軽量な部材であって、軽量化のために水平断面
形が星型をしており、星型の遠心方向へ突出した角部分
でクランプ脚28を固定保持している。クランプ脚28
は、バネ弾性に富む線材から形成されており、脚基台2
7の外縁部から後方へ伸びるとともに遠心方向へ拡がっ
て、バネ弾性力により付勢されて後端部付近を壁面Wに
当接している。クランプ脚28の壁面Wに当接する後端
部付近は、遠心側に凸に円弧状に曲げて形成されてお
り、壁面Wの凹凸に引っ掛かることがないように配慮さ
れている。
【0071】一方、外周連結部材3’の方が中心連結部
材2”よりも圧倒的に重く、大きな慣性質量をもってい
る。外周連結部材3’は、全てのバイモルフ1の外周縁
に接合された数枚の外周連結板32と、全ての外周連結
板32の先端に接合固定されたペイロード部30とから
構成されている。外周連結板32は、バイモルフ1の外
周縁に沿う一次曲面により形成された内周面をもつ矩形
の導電性の金属板である。外周連結板32は、全部で六
枚あってバイモルフ1の外周縁に沿って等間隔で配設さ
れている。
【0072】ペイロード部30は、基本的に実施例1の
ペイロード部20と同様である。ただし、本実施例では
脚部29が後方にしかなく、壁面Wにペイロード部30
の前端部の周囲が当接することがあるので、同前端部の
外周部には面取りや曲面が形成されてることが望まし
い。これは、ペイロード部30が壁面Wの凹凸に引っ掛
からないようにするための配慮である。
【0073】ここで、平面変形素子であるバイモルフ1
の変形により、中心連結部材2”と外周連結部材3’と
が同軸的に相対移動可能なので、この三者により積層型
アクチュエータが構成されている。制御手段5は、実施
例1のものと同様である。ただし、脚部29が中心連結
部材2”に属し、外周連結部材3’の方が重くてウエイ
トとしての作用を持つので、印加電圧の正負は実施例1
と逆転している。
【0074】導電路51,52についても実施例1と同
様で、導電路51は中心連結部21”を介して各外部電
極膜11,12に導通しており、導電路52は外周連結
板32を介して各円盤10に導通している。同通路51
については、導電性の鋼管等で孔が形成されている場合
には、同鋼管等に導電路51がアースされ、壁面Wに当
接しているクランプ脚28を介して中心連結部21”に
導通する構成も可能である。この場合には、壁面Wとの
間で短絡が起きないように、外周連結部材3’の外周面
および前端面には、絶縁被服が形成されている必要があ
る。
【0075】(実施例3の作用効果)本実施例の孔内移
動装置においても、実施例1とほぼ同様の作用で、摩擦
力運動フェーズfと慣性力運動フェーズiとを交互に繰
り返すこと(図5参照)により、孔内を移動することが
できる。ただし、クランプ脚28が中心連結部材2”に
あり、慣性質量の大半がペイロード部30を有する外周
連結部材3’にあるので、中心連結部材2”と外周連結
部材3’との作用の分担は実施例1と逆転している。
【0076】本実施例の孔内移動装置によっても、前述
の実施例1と同様の効果を上げることができる。 (実施例3の変形態様)本実施例の外周連結板32に代
えて、全てのバイモルフ1の全周囲を覆う中空円筒状の
外周連結筒を採用した構成の変形態様も可能である。本
変形態様によれば、腐食性の環境や積層型アクチュエー
タの短絡が心配される環境においても、全てのバイモル
フ1が上記外周連結筒内に保護されているので、使用に
耐えるという効果がある。なお、後尾のバイモルフ1の
背面には、防食処理が施されているものとする。
【0077】その外にも、実施例1の変形態様1〜4に
対応する各種変形態様や、実施例1に対する実施例2に
相当するユニモルフ1Uを採用した変形態様をも取るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の孔内移動装置の構成を示す斜視図
【図2】 実施例1の孔内移動装置の構成と作用を示す
垂直端面図
【図3】 実施例1のバイモルフ中央部付近の構成を示
す拡大端面図
【図4】 実施例1のバイモルフの構成と作用を示す模
式図
【図5】 実施例1の制御手段で発生する印加電圧の波
形を例示する組図 (a)前進時の印加電圧の波形を模式的に示すグラフ (b)後進時の印加電圧の波形を模式的に示すグラフ
【図6】 変形態様1のバイモルフ中央部付近の構成を
示す拡大端面図
【図7】 変形態様2のバイモルフ中央部付近の構成を
示す拡大端面図
【図8】 変形態様4のバイモルフの構成と作用を示す
模式図
【図9】 実施例2の孔内移動装置の構成と作用を示す
垂直端面図
【図10】実施例3の孔内移動装置の構成と作用を示す
垂直端面図
【符号の説明】
1,1’,1”:圧電バイモルフ(平面変形素子) 1U:圧電ユニモルフ(平面変形素子) 10,10’:円盤(バネ弾性材料からなる平板) 11,12,12’:圧電板 13,13’,14,14’:外部電極膜 15,15’,16,16’:内部電極膜 2,2’,2”:中心連結部材 20:ペイロード部 21,21’,21”,21U:中心連結部 22:
中心軸(導電性) 23,23’:導電性カラー 24,24’:絶縁ブ
ッシュ 25:導電性磁石 26:導電性接着剤 27:脚基台 28:クランプ脚 29:脚部 3:外周連結部材(導電性) 31:クランプ脚 30:ペイロード部 32:外周連結板 4:外周連結部材 5:制御手段 51,51’,52,52’:導電路 P:分極方向 W:壁面(孔を形成する内周壁面)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数枚が重ねられ同軸に配置されていて
    印加電圧により曲率が変化する平面変形素子と、 各該平面変形素子の中心部を軸長方向に互いに連結して
    いる中心連結部材と、 各該平面変形素子の外周部を軸長方向に互いに連結して
    いる外周連結部材とからなり、 該平面変形素子の変形により該中心連結部材と該外周連
    結部材とが同軸的に相対移動可能としたことを特徴とす
    る積層型アクチュエータ。
  2. 【請求項2】 前記平面変形素子は、バネ弾性材料から
    なる平板と該平板の少なくとも片面に接合固定された板
    状の圧電体である圧電板とを有する圧電ユニモルフまた
    は圧電バイモルフである請求項1記載の積層型アクチュ
    エータ。
  3. 【請求項3】 前記平面変形素子に前記印加電圧を導通
    する回路を持ち、該回路は、該平面変形素子の全てを同
    一方向に曲率を変化させるものである請求項1および請
    求項2のうちいずれかに記載の積層型アクチュエータ。
  4. 【請求項4】 前記中心連結部材は、前記平面変形素子
    の一方の電極へ導通する導電部を持ち、 前記外周連結部材は、前記平面変形素子の他方の電極へ
    導通する他の導電部を持っており、 前記回路は、両該導電部から構成されている請求項3記
    載の積層型アクチュエータ。
  5. 【請求項5】 複数枚が重ねられ同軸に配置されていて
    印加電圧により曲率が変化する平面変形素子と、 各該平面変形素子の中心部を軸長方向に互いに連結して
    いる中心連結部材と、 各該平面変形素子の外周部を軸長方向に互いに連結して
    いる外周連結部材と、 該平面変形素子に制御された波形の印加電圧を供給する
    制御手段とを持ち、 該中心連結部材および該外周連結部材のうち一方は、他
    方より重いウエイトとして機能し、 該中心連結部材および該外周連結部材のうち他方は、周
    囲の壁面または床面に当接する脚部をもつことを特徴と
    する移動装置。
  6. 【請求項6】 前記脚部は、バネ弾性材料からなる複数
    のクランプ脚で形成されている請求項5記載の移動装
    置。
  7. 【請求項7】 前記脚部は、軸長方向両端部に二組が配
    設されている請求項5および請求項6のうちいずれかに
    記載の移動装置。
  8. 【請求項8】 前記中心連結部材および前記外周連結部
    材のうち重いほうの前記一方は、センサ、前記制御手
    段、電池、受信装置、送信装置、発振器、アイソトー
    プ、マーカ、薬剤およびタンクの内いずれかを持つ請求
    項5〜7のうちいずれかに記載の移動装置。
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