JP3624635B2 - 積層型アクチュエータおよび移動装置 - Google Patents

積層型アクチュエータおよび移動装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電バイモルフなどの平面変形素子が複数枚積層されて伸縮動作を行う積層型アクチュエータの技術分野と、同積層型アクチュエータを駆動源とする移動装置の技術分野に属する。要約すれば、本発明はマイクロマシンの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
顕微鏡の焦点調節機構やマイクロマシンの移動機構などの応用において、小型でありながら変位量(ストローク)と発生力との両方が大きいアクチュエータが希求されている。
この課題に対して、発明者らは積層型圧電アクチュエータを何種類か発明し、同一出願人の下で出願してきた。たとえば、特開平9−37571号公報(従来技術1)には発生力が大きい積層型圧電アクチュエータが開示されており、特開平7−193290号公報(従来技術2)にはストロークが大きな積層型圧電アクチュエータが開示されている。
【0003】
しかしながら、両従来技術のいずれにおいても、次のように一長一短があり、大きい発生力と長大なストロークとを切り替えて発揮することができなかった。
すなわち、従来技術1の積層型圧電アクチュエータでは、圧電バイモルフが複数枚積層されて、全ての圧電バイモルフの中央部が中央連結部材で連結され、全ての圧電バイモルフの外周部が外周連結部材により連結されていた。それゆえ、この積層型圧電アクチュエータによれば、発生力は積層枚数倍に増大するが、ストロークは単一の圧電バイモルフから増えることはなかった。
【0004】
一方、従来技術2の積層型圧電アクチュエータでは、圧電ユニモルフが交互に対向して配設され、各圧電ユニモルフの中央部と外周部とが互い違いに連結されていた。それゆえ、この積層型圧電アクチュエータによれば、ストロークは圧電ユニモルフの積層枚数倍に増大するが、発生力は単一の圧電ユニモルフから増えることはなかった。
【0005】
それゆえ、前述のいずれの積層型アクチュエータを駆動源として用いても、発生力は小さくとも高速移動ができる機能と、移動速度は小さくとも発生力が大きい移動機能(または輸送能力)とを兼備した変速可能な移動装置を実現することができなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、発生力と変位量(ストローク)とを段階的に調整することができる積層型アクチュエータと、同積層型アクチュエータを用いた変速可能な移動装置とを提供することを解決すべき課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題を解決するために、発明者らは以下の手段を発明した。
[積層型アクチュエータ]
(第1手段)
本発明の第1手段は、請求項1記載の積層型アクチュエータである。
【0008】
本手段では、複数枚が同軸に積層された平面変形素子は、中央連結部材および外周連結部材のうち少なくとも一方により隣同士が連結されているので、一つの積層型アクチュエータとして一体の構成を有する。そして、互いに隣り合う平面変形素子が中央連結部材で連結されていない部分には、中央当接部材が配設されていて両平面変形素子の中央部の間に押圧力だけは伝達される。一方、互いに隣り合う平面変形素子が外周連結部材で連結されていない部分には、外周当接部材が配設されていて両平面変形素子の外周部の間に押圧力だけは伝達される。
【0009】
ここで、中央当接部材と外周当接部材とは、軸長方向に所定間隔(たとえば、平面変形素子の一枚毎、二枚毎、三枚毎、・・・)で交互に配設されている。互いに最寄りの中央当接部材と外周当接部材との間の区間には、中央連結部材および外周連結部材によってそれぞれの中央部および外周部の両方が連結されている複数枚の平面変形素子が介在していても良い。
【0010】
本手段は以上のように構成されているので、発生力と変位量(ストローク)とが互いに異なる複数種類の運用モードで運用することができる。
たとえば、複数枚が積層された平面変形素子の全てを同一の方向へ変位させると、積層型アクチュエータの一端の中央部と他端の外周部との間に、平面変形素子の枚数分の発生力が発生する。なぜならば、外周部では外周連結部材および外周当接部材が押圧力を上記一端側から他端側へ伝達し、中央部では中央連結部材および中央当接部材が押圧力を他端側から一端側へ伝達するからである。ただしこの場合には、最大変位量は単独の平面変形素子と同等にしか得られない。
【0011】
次に、複数の平面変形素子を約半数ずつ軸長方向の一端側と他端側との二つのグループに分け、一方のグループの平面変形素子を一方に変位させ、他方のグループの平面変形素子を他方に変位させたとする。すると、本手段の両端の外周部の間では、平面変形素子の約半数分の発生力が得られ、平面変形素子単体の二倍の最大変位量が得られる。
【0012】
さらに、複数の平面変形素子を約三等分して三つのグループに分け、両端側の二つのグループの平面変形素子を一方に変位させ、中間部のグループの平面変形素子を他方に変位させたとする。すると、本手段の一端の中央部と他端の外周部との間では、平面変形素子の総積層枚数の約三分の一だけの発生力が得られ、平面変形素子単体の三倍の最大変位量が得られる。
【0013】
同様に、十分に多数が積層されている平面変形素子を約m等分してグループ分けし(mは自然数)、互いに隣り合うグループの平面変形素子を互いに逆方向に変位させたとする。すると、本手段積層型アクチュエータの両端部の間では、圧電バイモルフの積層枚数分の総発生力の約m分の1の発生力が得られ、平面変形素子単体のm倍の最大変位量が得られる。
【0014】
最後に、積層されている平面変形素子のそれぞれを、隣り合う平面変形素子と互いに逆方向に変位させたとすると、本手段の積層型アクチュエータの両端部の間では、平面変形素子単体の積層枚数倍の変位量が得られ変位量が最大となる。ただし、無変位状態での発生力は平面変形素子単体と同じになり、以上の作動モードのうち最小の発生力しか得られない。
【0015】
このような発生力と変位量とを段階的に調整する作用は、最大発生力と最大変位量との積がほぼ一定であるという点で、多段変速ギヤによく似ている。しかしながら、多段変速ギヤのような複雑な機械的構成を必要としない点で、本手段の積層型アクチュエータの方が簡素であり安価に実施できる。
したがって本手段によれば、比較的簡素な構成でありかつ安価でありながら、発生力と変位量とを段階的に調整することが可能な積層型アクチュエータを提供することができるという効果がある。
【0016】
(第2手段)
本発明の第2手段は、請求項2記載の積層型アクチュエータである。
本手段では、上記第1手段において各平面変形素子は圧電バイモルフであるから、積層型アクチュエータをかなり小型に構成することができ、熱の発生はわずかでありながら応答性が良く高速で作動させることができるという効果がある。さらに、配線の如何と配電の如何とによって、前述の多様な運用モードで作動させることが容易であるという効果もある。
【0017】
また、上記第1手段では平面変形素子が圧電ユニモルフである構成も実施可能ではある。しかし同構成では、積層型アクチュエータの伸張作用と収縮作用とが同一特性を発揮できなくなるほか、各種作動モードでの伸縮作用が必ずしも適正に発揮されなくなるという不都合が生じる。そこで本手段のように平面変形素子が圧電バイモルフであれば、一方への変形と他方への変形とが発生力および変位量において互いに同等であるので、上記不都合を回避することが可能になるという効果がある。
【0018】
なお、本手段において、各圧電バイモルフの弾性板が導体であり、同じく導体である中央連結部材および外周連結部材のうち少なくとも一方により互いに隣り合う圧電バイモルフの弾性板同士が接続される構成を取ることができる。本構成では、全圧電バイモルフの弾性板と全ての中央連結部材および外周連結部材とが互いに導通しているので、そのうち一箇所をアース端子等に接続することにより配線を簡素化することができる。したがって本構成によれば、本手段の積層型アクチュエータを、配線が比較的簡素で製造が容易かつ安価にすることができるという効果がある。
【0019】
(第3手段)
本発明の第3手段は、請求項3記載の積層型アクチュエータである。
本手段では、各圧電バイモルフは、所定間隔おきに交互に異なる電源端子との接続手段を有するので、積層された複数の圧電バイモルフのうち所定間隔に収まる数の圧電バイモルフの積層ユニットを構成し、積層ユニット毎の変位方向の制御が可能である。ここで、各積層ユニット中の圧電バイモルフは、互いに中央連結部材および外周連結部材で連結されており、一体的に作動する。各積層ユニットは、隣接する積層ユニットとは中央連結部材および外周連結部材のうち一方で連結されており、中央当接部材および外周当接部材のうち他の一方で当接している。
【0020】
なお、所定間隔おきに交互に異なる電源端子との接続手段(表面電極に接続するリード線など)を有しながら、所定の順番で同一の電源端子と接続されていても良い。この配線の順番如何は、どのような作動モードで本手段の積層型アクチュエータを運用すべきかとの要求によって定まる設計事項である。
したがって本手段によれば、前述の作動モードを必要最小限に限定することにより、配線を共通化して簡略化し、積層型アクチュエータの製造を容易かつ安価にすることができるという効果がある。
【0021】
[移動装置]
(第4手段)
本発明の第4手段は、請求項4記載の移動装置である。
本手段では、発生力と変位量とを段階的に調整することが可能な前述の積層型アクチュエータを駆動源として有するので、本手段の移動装置にかかっている負荷の大小に応じて、移動力と移動速度とを段階的に調整することができる。
【0022】
たとえば、無負荷状態や負荷が小さい状態では、発生力は小さくとも変位量が大きい作動モードで積層型アクチュエータを作動させることにより、本手段の移動装置は高速で移動することができる。一方、上り坂で有償荷重(貨物)を運びあげるような負荷が大きい状態では、逆に変位量は小さくても発生力が大きい作動モードで積層型アクチュエータを作動させることにより、大きい負荷をかけた状態での本手段の移動装置の運用が可能になる。同様に、中程度の負荷がかかっている状態では、積層型アクチュエータの発生力および変位量を中程度に調整することにより、本手段の移動装置は適当な速度での移動(ないし有償荷重の運搬)が可能である。
【0023】
したがって本手段によれば、負荷の大小に応じて移動力および移動速度を適正に調整することができ、換言すれば変速可能な移動装置を提供することができるという効果がある。
(第5手段)
本発明の第5手段は、請求項5記載の移動装置である。
【0024】
本手段では、積層型アクチュエータの伸縮作用によって胴体が伸縮するので、これに伴って胴体の一端に固定されている前脚と他端に固定されている後脚との間隔が伸縮する。そこで、前脚に内蔵されている電磁石と後脚に内蔵されている電磁石とに、胴体の伸縮と同期して適正なタイミングで電流を流せば、壁面を伝わって本手段の移動装置が移動することができる。ただし、上記壁面は、側壁に限らず床面でも天井でも良いのであるが、軟磁性体等の磁性材料からなり電磁石の磁力で吸着できるものとする。
【0025】
具体的には、胴体が収縮している状態(積層型アクチュエータの不作動状態)で後脚に電磁力を発生させ、前脚には電磁力を発生させない状態を初期状態とする。この状態でそのまま胴体を伸張させて前脚を前進させ、前脚に電磁力を発生させると、胴体の一端に固定されている前脚は前進した位置で壁面に吸着して固定される。しかる後、後脚の電磁力をなくしてしまい、積層型アクチュエータの印加電圧を調整して胴体を収縮させれば、後脚は胴体の他端に固定されているから胴体の収縮によって前進移動する。胴体が収縮してしまい後脚の前進が止まったら、後脚に再び電磁力を発生させて壁面に吸着させる。以後は上記初期状態から同じことを繰り返せば、本手段の移動装置は尺取り虫が移動するように徐々に前進することができる。
【0026】
後退するときには、以上の説明の前脚と後脚とを取り替えて作用させれば、前進と同様にして後退することができる。本手段の移動装置は、同様にして上り坂でも下り坂でも運用することができ、電磁石による磁気吸引力が十分に大きければ、垂直な壁面上やオーバハングおよび天井面上をも移動することができる。
この際、軽負荷状態では積層型アクチュエータを変位量が大きい作動モードで作動させれば、伸縮動作の一サイクルあたりの移動距離(ピッチ)が大きく取れるので、高速移動が可能である。逆に、重負荷状態では積層型アクチュエータを発生力が大きい作動モードで作動させれば、ピッチこそ大きく取れないが、低速でも確実に移動することが可能になる。同様に、中程度の負荷状態では、適正な程度の発生力を発揮する作動モードで積層型アクチュエータを作動させることにより、ある程度高速での移動が可能になる。
【0027】
したがって本手段によれば、前述の第4手段の効果に加えて、前脚および後脚と壁面との間に十分な磁気吸引力が得られれば、いかなる向きの壁面にでも沿って確実に前進および後退を行うことができるという効果がある。
(第6手段)
本発明の第6手段は、請求項6記載の移動装置である。
【0028】
本手段では、荷重センサで移動装置に加わる荷重が検知され、その情報に基づいて制御装置が積層型アクチュエータの発生力および変位量を制御する。すなわち、人間の判断力では移動装置にかかっている荷重ないし負荷が不明である場合にも、荷重センサの検知情報により適正な作動モードで作動するように、制御装置が積層型アクチュエータを自動的に制御する。
【0029】
それゆえ、積層型圧電アクチュエータの作動モードを誤って、発生力が負荷に及ばずに移動装置が移動しなかったり、逆に発生力が大きすぎて移動装置の移動速度が不要に遅くなってしまったりする不都合が防止される。
したがって本手段によれば、前述の第4手段の効果に加えて、移動装置にかかる荷重が検知され負荷の大小に応じて積層型アクチュエータの適正な作動モードが自動的に選ばれるので、移動装置を常に適正な速度で駆動することが可能になるという効果がある。
【0030】
【発明の実施の形態および実施例】
本発明の積層型アクチュエータおよび移動装置の実施の形態については、当業者に実施可能な理解が得られるよう、以下の実施例で明確かつ十分に説明する。[実施例1]
(実施例1の構成)
本発明の実施例1としての積層型アクチュエータは、図1(a)〜(b)に示すように、圧電バイモルフ1A〜1Hと、中央連結部材2および外周連結部材3と、中央当接部材4および外周当接部材5と、各圧電バイモルフ1A〜1Hへの配線とからなる。
【0031】
圧電バイモルフ1A〜1Hは、平面変形素子であって、八枚が重ねられ同軸に配置されていて中央部と外周部との間に軸長方向の変位を生じる。八枚の圧電バイモルフ1A〜1Hは、互いに同一の規格で製造されていて互換性があり、後述の圧電板12(図2参照)の分極方向も同一方向(図1中の上方向)にそろえられている。
【0032】
中央連結部材2は、ステンレス鋼からなる所定の長さの円柱体であって、互いに隣り合う各圧電バイモルフ1A〜1Hの中央部にレーザ溶接で固定されており、同中央部を軸長方向に互いに連結している。一方、外周連結部材3は、中央連結部材2と同寸のステンレス鋼からなる部材であって、互いに隣り合う各圧電バイモルフ1A〜1Hの外周部の四方を軸長方向に互いに連結している。外周連結部材3と中央連結部材2とは、各圧電バイモルフ1A〜1Hの一枚を挟んで交互に配設されている。
【0033】
中央当接部材4は、中央連結部材2と同一の直径で軸長方向の長さが半分の円筒体であり、二つの中央当接部材4が対向面Tを互いに当接させて、互いに隣り合う圧電バイモルフ1A〜1Hの中央部で軸長方向に押圧力を伝達する。そして各一対の中央連結部材2は、互いに背向する面を互いに隣り合う圧電バイモルフ1A〜1Hの中央部に当接させてレーザ溶接で固定されている。
【0034】
一方、外周当接部材5は、中央当接部材4と同寸のステンレス鋼製の円筒体部材であり、二つの外周当接部材5が対向面Tを互いに当接させて、互いに隣り合う圧電バイモルフ1A〜1Hの四方の外周部で軸長方向に押圧力を伝達する。そして、各一対の外周連結部材3は、互いに背向する面を互いに隣り合う圧電バイモルフ1A〜1Hの四方の外周部に当接させてレーザ溶接で固定されている。
【0035】
互いに隣り合う圧電バイモルフ1A〜1Hの中央部が一対の中央当接部材4を介して互いに当接する軸長方向の位置では、圧電バイモルフ1A〜1Hの四方の外周部は、四つの外周連結部材3によりそれぞれ連結されている。逆に、互いに隣り合う圧電バイモルフ1A〜1Hの四方の外周部が四対の外周当接部材5を介して互いに当接する軸長方向の位置では、圧電バイモルフ1A〜1Hの中央部は、中央連結部材2により互いに連結されている。
【0036】
すなわち、中央連結部材2と外周連結部材3とは、圧電バイモルフ1B〜1Gの一枚を挟んで軸長方向に所定間隔で交互に配設されている。同様に、一対の中央当接部材4と一対の外周当接部材5とは、圧電バイモルフ1B〜1Gの一枚を挟んで軸長方向に所定間隔で交互に配設されている。
換言すれば、本実施例の積層型圧電アクチュエータの中央部では、四対の中央当接部材4と三つの中央連結部材2とが、圧電バイモルフ1B〜1Gの一枚を挟んで交互に配設され、同軸的に並んでいる。同様に、本実施例の積層型圧電アクチュエータの四方の外周部では、それぞれ四つの外周連結部材3と三対の外周当接部材5とが、圧電バイモルフ1B〜1Gの一枚を挟んで交互に配設され、同軸的に並んでいる。
【0037】
なお、本実施例の積層型圧電アクチュエータの軸長方向の両端部は、それぞれ圧電バイモルフ1Aおよび1Hによって形成されているが、応用目的に応じて、圧電バイモルフ1Aおよび1Hにそれぞれアタッチメント等を適宜接合するを得る。
図2に示すように、各圧電バイモルフ1A〜1Hは、それぞれ一枚のステンレス鋼製の円盤状の弾性板11と、弾性板11の両面に接合されているリング状の圧電板12と、各圧電板12の表面にそれぞれ形成されている表面電極13とから構成されている。各圧電板12は、図示のように同一方向に分極されたPZT製のリング状の板材であり、それぞれ弾性板11の両面に接合されて形成されている。
【0038】
そして、中央部の中央連結部材2および四方に配設された四本の外周連結部材3は、それぞれレーザ溶接により各圧電バイモルフ1A〜1Hの弾性板11に接合されている。それゆえ、各圧電バイモルフ1A〜1Hの弾性板11と内周連結部材2と外周連結部材3とは互いに導通しており、再び図1(b)および図2に示すように、アース端子Eに接続されて接地されている。
【0039】
各圧電バイモルフ1A〜1Hの両表面電極13は、再び図1(b)に示すように、所定間隔おきに交互に異なる電源端子A,Bとの接続手段を有する。すなわち、各圧電バイモルフ1A〜1Hの両表面電極13は、リード線により、一枚おきの交互に電源端子Aと電源端子Bとに接続されている。具体的には、圧電バイモルフ1B,1D,1F,1Hの各両表面電極13は電源端子Aに接続されており、圧電バイモルフ1A,1C,1E,1Gの各両表面電極13は電源端子Bに接続されている。
【0040】
それゆえ、電源端子AまたはBに所定の電圧が印加されると、各圧電バイモルフ1A〜1Hの両表面電極13と弾性板11との間に所定の強度の電界が発生する。その結果、両圧電板12のうち一方は面内方向に伸張し他方は面内方向に収縮するので、各圧電バイモルフ1A〜1Hは曲率を持って軸対称に反り、中央部と外周部との間に軸長方向の変位が生じる。
【0041】
(実施例1の作用効果)
本実施例の積層型圧電アクチュエータは、以上のように構成されているので、以下のような作用効果を発揮する。
先ず、本実施例の積層型圧電アクチュエータが非作動状態にあるときには、図3に示すように、積層型アクチュエータは軸長方向に最短の長さLで収まっている。この際、両電源端子A,Bの電位はいずれもゼロ(アース端子Eの地電位と同電位)であるから、圧電バイモルフ1A〜1Hのいずれも変形しておらず中央部と外周部との間で変位がない。それゆえ、全ての中央当接部材4のそれぞれの対の対向面(対向する端面)Tは、(一対の中央当接部材4は外周連結部材3と軸長方向に同寸であるから)互いに軽く当接している。同様に、全ての外周当接部材5のそれぞれの対の対向面Tは、(一対の外周当接部材5は中央連結部材2と軸長方向に同寸であるから)互いに軽く当接している。
【0042】
次に、図4に示すように、作動モード1として両電源端子A,Bに正の電圧を同電位で印加すると、八枚が積層された圧電バイモルフ1A〜1Hの全てが、中央部を図中上方の同一方向へ変位させる。すると、積層型アクチュエータの一端(図中上端)の中央部と他端(図中下端)の外周部との間に、圧電バイモルフ1A〜1Hの八枚分の発生力が発生する。
【0043】
なぜならば、外周部では全ての外周連結部材3および外周当接部材5が押圧力を一端側から他端側へ伝達し、中央部では全ての中央連結部材2および中央当接部材4が押圧力を他端側から一端側へ伝達するからである。ただしこの場合には、全長はL’止まりであって、最大変位量は単独の圧電バイモルフ(1A〜1Hのうちの一枚)と同等にしか得られない。
【0044】
最後に、図5に示すように、作動モード2として電源端子Aに正の電圧+Vを印加し逆に電源端子Bに負の電圧−Vを印加すると、積層されている圧電バイモルフ1A〜1Hのそれぞれは、隣り合う圧電バイモルフ1A〜1Hと互いに逆方向に変位する。すると、本実施例の積層型アクチュエータの両端部の中央部の間では、全長がL”にまで伸張し、圧電バイモルフ1A〜1H単体の積層枚数倍すなわち八倍の変位量が得られ変位量が最大となる。
【0045】
この際、全ての中央当接部材4および外周当接部材5の対向面Tは互いに離間して、両対向面Tの間に圧電バイモルフ1A〜1H二枚分の変位に相当する間隔が形成される。ただし、本作動モードでは、無変位状態での最大発生力は圧電バイモルフ1A〜1H単体と同じになり、最小の発生力しか得られない。
このような発生力と変位量とを二段階で調整する作用は、図6に示すように、最大発生力と最大変位量との積が一定であるという点で、二段変速ギヤによく似ている。しかしながら、二段変速ギヤのような複雑な機械的構成を必要としない点で、本実施例の積層型アクチュエータの方が簡素であり、より安価に実施できる。
【0046】
したがって本実施例の積層型圧電アクチュエータによれば、比較的簡素な構成でありかつ安価でありながら、発生力と変位量とを二段階で調整することが可能になる積層型アクチュエータを提供することができるという効果がある。
なお、本実施例では、平面変形素子として圧電バイモルフ1A〜1Hが採用されているがゆえに得られる次のような付随的な効果もある。
【0047】
第1に、積層型アクチュエータをかなり小型に構成することができ、熱の発生はわずかでありながら応答性が良く、高速で作動させることができるという効果がある。
第2に、各圧電バイモルフ1A〜1Hの弾性板11が導体であり、同じく導体である中央連結部材2および外周連結部材3のうち一方により、互いに隣り合う圧電バイモルフ1A〜1Hの弾性板11同士が互いに接続されている。それゆえ、全圧電バイモルフ1A〜1Hの弾性板11と全ての中央連結部材2および外周連結部材3とが互いに導通しているので、そのうち一箇所(たとえば図中下端の中央部)をアース端子Eに接続することにより配線を簡素化することができる。したがって本実施例の積層型アクチュエータによれば、配線が比較的簡素で製造が容易であり、安価に提供できるという効果がある。
【0048】
(実施例1の変形態様1)
本実施例の変形態様1として、互いに接合している中央連結部材2と中央当接部材4とを連続した丸棒材で形成し、同様に互いに接合されている外周連結部材3と外周当接部材5とを連続した丸棒材で形成した積層型アクチュエータの実施も可能である。
【0049】
すなわち、本変形態様では、各圧電バイモルフ1B〜1Gの弾性板11を挟んでレーザ溶接で互いに接合されている中央連結部材2と中央当接部材4とが、連続した丸棒材で形成される。当然、各弾性板11の中央部には貫通孔が形成されており、上記丸棒材は各貫通孔に挿入されて嵌合し、各弾性板11レーザ溶接されている。
【0050】
同様に、各圧電バイモルフ1A〜1Hの弾性板11を挟んで互いに接合されている外周連結部材3と外周当接部材5とが、連続した丸棒材または角棒材で形成される。同棒材は、その側面で各弾性板11の外周縁に当接し、レーザ溶接で同外周縁に固定されている。
本変形態様の積層型アクチュエータによれば、実施例1と同等の伸縮作用が得られながら、部品点数とレーザ溶接箇所とが低減されるので、製作が容易になりコストダウンできるという効果がある。
【0051】
(実施例1の変形態様2)
本実施例の変形態様2として、図7(a)〜(b)に部分的に示すように、各一対の中央当接部材4と各一対の外周当接部材5とが、それぞれ中央連結部材2および外周連結部材3と同一の円柱体部材4’,5’で代替されている積層型アクチュエータの実施が可能である。
【0052】
本変形態様では、当接部材としての各円柱体部材4’,5’の一端は当該弾性板11にレーザ溶接で固定されており、他端は対向面T’を形成して隣接する圧電バイモルフ1A〜1Hの弾性板11の表面に対向または当接している。それゆえ、本変形態様の積層型アクチュエータによっても、実施例1の積層型アクチュエータと同等の伸縮作用が得られる。
【0053】
本変形態様によれば、実施例1で中央当接部材4および外周当接部材5の製造とレーザ溶接にかかった工数が半減されるので、その分製作が容易になりコストダウンできるという効果がある。
[実施例2]
(実施例2の構成)
本発明の実施例2としての積層型アクチュエータは、図8に一作動状態で示すように、リード線の配線以外は実施例1の積層型アクチュエータと同一の構成である。ただし、リード線のうちアース端子Eに接続されるものだけは、実施例1と同様である。
【0054】
本実施例において配線が実施例1と異なる点は、軸長方向の半分で二つのグループにリード線が分かれているという点である。すなわち、実施例1の端子Aに接続されているリード線(図4参照)は、図中上半部の二つの圧電バイモルフ1H,1Fと端子Aとを接続するリード線と、図中下半部の二つの圧電バイモルフ1D,1Bと端子Bとを接続するリード線とに置換されている。同様に、実施例1の端子Aに接続されているリード線は、図中上半部の二つの圧電バイモルフ1G,1Eと端子Cとを接続するリード線と、図中下半部の二つの圧電バイモルフ1C,1Aと端子Bとを接続するリード線とに置換されている。それゆえ、本実施例の積層型圧電アクチュエータでは、図中上半部と下半部とを別個に制御することが可能である。
【0055】
(実施例2の作用効果)
本実施例の積層型圧電アクチュエータは、以上のように構成されているので、以下のような作用効果を発揮する。
先ず作動モード1として、再び図8に示すように、電源端子A〜Dの全てに正の電圧を印加すると、実施例1の作動モード1と同様に、圧電バイモルフ1A〜1Hの八枚分の発生力と一枚分の変位量とが発揮される。
【0056】
次に作動モード2として、図9に示すように、図中上半部の圧電バイモルフ1E〜1Hに接続されている電源端子A,Dに負の電圧を印加し、図中下半部の圧電バイモルフ1A〜1Dに接続されている電源端子B,Cに正の電圧を印加する。すると、図中上半部の圧電バイモルフ1E〜1Hと図中下半部の圧電バイモルフ1A〜1Dとは、互いに対向して中央部を突出させて変形し、両端の外周部の間で圧電バイモルフ1A〜1H二枚分の変位量が得られる。その際、図中上半部の圧電バイモルフ1E〜1Hと図中下半部の圧電バイモルフ1A〜1Dとが互いに一体になって変形するので、圧電バイモルフ1A〜1H四枚分の発生力が得られる。
【0057】
すなわち、上記作動モード2で本実施例の積層型圧電アクチュエータが運用されれば、前述のように圧電バイモルフ1A〜1Hのうち四枚分の発生力と二枚分の変位量とが発揮される。
最後に作動モード3として、図10に示すように、電源端子A,Bに正の電圧を印加し電源端子C,Dに負の電圧を印加すると、圧電バイモルフ1A〜1Hに互い違いに正負の電圧が印加される。この印加電圧の状態は実施例1の作動モード2と同様であるから、本作動モードでも実施例1の作動モード2と同様に、圧電バイモルフ1A〜1Hの八枚分の変位量と一枚分の発生力とが発揮される。
【0058】
このような発生力と変位量とを三段階で調整する作用は、図11に示すように、最大発生力と最大変位量との積が一定であるという点で、三段変速ギヤによく似ている。しかしながら、三段変速ギヤのような複雑な機械的構成を必要としない点で、本実施例の積層型アクチュエータの方が簡素であり、より安価に実施できる。
【0059】
したがって本実施例の積層型圧電アクチュエータによれば、比較的簡素な構成でありかつ安価でありながら、発生力と変位量とを三段階で調整することが可能になる積層型アクチュエータを提供することができるという効果がある。
なお、本実施例でも、平面変形素子として圧電バイモルフ1A〜1Hが採用されているので、実施例1と同様な付随的な効果がある。
【0060】
(実施例2の変形態様)
本実施例の積層型圧電アクチュエータについても、前述の実施例1の変形態様1および変形態様2と同様な変形態様の実施が可能であり、それぞれ実施例1の各変形態様と同様な作用効果が得られる。
[実施例3]
(実施例3の構成)
本発明の実施例3としての積層型アクチュエータの構成は、図12に示すように、八枚の圧電バイモルフ1A〜1Hが積層されている点では実施例1と同様である。しかし、中央連結部材2と中央当接部材4との軸長方向の配置が実施例1と異なっており、同様に外周連結部材3と外周当接部材5との軸長方向の配置が実施例1と異なっている。
【0061】
すなわち、中央連結部材2は中間部で三つ連続して配設されており、外周連結部材3は両端部で三つ連続して配設されている。ただし、互いに隣り合う圧電バイモルフ1A〜1Hの中央部が中央当接部材4で当接する位置では、外周部は外周連結部材3により連結されている点では、実施例1と同様である。また、互いに隣り合う圧電バイモルフ1A〜1Hの外周部が外周当接部材5で当接する位置では、中央部は中央連結部材2により連結されている点でも、実施例1と同様である。さらに、中央当接部材4と外周当接部材5とは、軸長方向に所定間隔で交互に配設されている点も、中間に挟まれている圧電バイモルフ1A〜1Hの数が一枚から二枚に増えている点を除いて、実施例1と同様である。
【0062】
換言すると、本実施例の積層型圧電アクチュエータは、圧電バイモルフ1A〜1Hのうち二枚ずつが一組になった積層ユニットU1〜U4が四つ積層されて構成されている。すなわち、積層ユニット1は圧電バイモルフ1A,1Bを含み、積層ユニット2は圧電バイモルフ1C,1Dを含み、積層ユニット3は圧電バイモルフ1E,1Fを含み、積層ユニット4は圧電バイモルフ1G,1Hを含んでいる。
【0063】
各積層ユニットU1〜U4の圧電バイモルフ1A〜1H二枚は、それぞれ互いに中央連結部材2および外周連結部材3で連結されているので、各積層ユニットU1〜U4はそれぞれ一体に変形する。すなわち各積層ユニットU1〜U4は、それぞれ圧電バイモルフ1A〜1H二枚分の発生力と一枚分の変位量とを発揮する。
【0064】
これに伴い、本実施例のリード線の配線も実施例1と異なっているが、リード線のうちアース端子Eに接続されるものだけは、実施例1と同様である。本実施例の配線では、電源端子Aに接続されているリード線は積層ユニットU2,U4に接続されており、電源端子Bに接続されているリード線は積層ユニットU1,U3に接続されている。
【0065】
(実施例3の作用効果)
本実施例の積層型圧電アクチュエータは、以上のように構成されているので、以下のような作用効果を発揮する。
先ず作動モード1として、図13に示すように、両電源端子A,Bに正の電圧を印加すると、実施例1の作動モード1と同様に、圧電バイモルフ1A〜1Hの八枚分の発生力と一枚分の変位量とが発揮される。
【0066】
次に作動モード2として、図14に示すように、電源端子Aに正の電圧を印加し、電源端子Bに負の電圧を印加すると、互いに隣り合う積層ユニットU1〜U4は互いに対向または背向して変位を生じる。その際、二対の中央当接部材4および一対の外周当接部材5は、対向面Tを圧電バイモルフ1A〜1H二枚分の変位量だけ離間させて対向している。
【0067】
上記作動モード2で本実施例の積層型圧電アクチュエータが運用されれば、圧電バイモルフ1A〜1H二枚分の発生力と四枚分の変位量とが発揮される。
このような発生力と変位量とを二段階で調整する作用は、図15に示すように、最大発生力と最大変位量との積が一定であるという点で、二段変速ギヤによく似ている。しかしながら、二段変速ギヤのような複雑な機械的構成を必要としない点で、本実施例の積層型アクチュエータの方が簡素であり、より安価に実施できる。
【0068】
したがって本実施例の積層型圧電アクチュエータによれば、比較的簡素な構成でありかつ安価でありながら、発生力と変位量とを二段階で調整することが可能になる積層型アクチュエータを提供することができるという効果がある。なお、再び図15に示すように、本実施例の作動状態2は実施例1の作動モード2(図6参照)とは異なるので、本実施例の積層型圧電アクチュエータは実施例1よりも中低速での作動に好適である。
【0069】
また、本実施例でも、平面変形素子として圧電バイモルフ1A〜1Hが採用されているので、実施例1と同様な付随的な効果がある。
(実施例3の変形態様)
本実施例の積層型圧電アクチュエータについても、前述の実施例1の変形態様1および変形態様2とほぼ同様な変形態様の実施が可能であり、それぞれ実施例1の各変形態様とほぼ同様な作用効果が得られる。
【0070】
[実施例4]
(実施例4の構成)
本発明の実施例4としての移動装置は、図16(a)〜(b)に示すように、鋼管等の孔内の内周壁面Wに沿って移動する孔内移動体であり、胴体6と前脚71および後脚72とから構成されている。
【0071】
胴体6は、駆動源として実施例1の積層型アクチュエータを内蔵して保持しており、同積層型アクチュエータの伸縮作用によって先端と後端と間の長さが伸縮する。すなわち、図17(a)〜(b)に示すように、胴体6の前端部は、ステンレス鋼製で略円盤状の前端部材61で構成されており、胴体6の後端部も同様に、ステンレス鋼製で略円盤状の後端部材62で構成されている。前端部材61の外周面と後端部材62の外周面とは、比較的薄いシリコンゴム製のベローズ63で気密に接続されているので、前端部材61と後端部材62との間隔は所定の範囲で伸縮自在である。
【0072】
胴体6は、前端部材61および後端部材62とベローズ63とで密封されている内部空間に、駆動源として実施例1の積層型アクチュエータ100を内蔵している。前端部材61の中央部には後方に突出した突起があって、前端部材61は同突起の後端部で積層型アクチュエータ100の先端の圧電バイモルフの中央部にレーザ溶接で接合されている(前端部材61には、レーザビームを通すための貫通孔が複数個形成されているが、同貫通孔は前脚71との接合により全て封止される)。一方、後端部材62の外周部には前方に突出したリング状の突条があって、後端部材62は同突条で積層型アクチュエータ100の後端の圧電バイモルフの外周部にレーザ溶接で固定されている。それゆえ、前端部材61と後端部材62とは積層型アクチュエータ100によって力学的に接合されており、前端部材61と後端部材62との間隔は積層型アクチュエータ100の伸縮動作に伴って伸縮する。
【0073】
さて、再び図16(a)に示すように、前脚71は、胴体6の先端に固定されており、電磁石を内蔵していて磁気吸引力により壁面Wに吸着することができる。後脚72は、胴体6の後端に固定されており、前脚71と同様に、電磁石を内蔵していて磁気吸引力により壁面Wに吸着することができる。
積層型アクチュエータへの駆動電源と前脚71の電磁石および後脚72の電磁石にそれぞれ通電する電磁石電源とは、一つのケースに収容されて図示しない孔外に配置されている。上記駆動電源と上記電磁石電源とは、互いに同期を取りながら、同じく図示しないリード線により孔内移動体に給電している。
【0074】
(実施例4の作用)
本実施例の移動装置は、以上のように構成されているので、以下のような作用効果を発揮する。
図18(a)〜(c)に示すように、本実施例の移動装置は、胴体6の伸縮作用と同作用に同期した前脚71および後脚72の電磁石のオン/オフ作用とにより、孔内の壁面Wに沿って前進および後退することができる。
【0075】
具体的には、先ず図18(a)に示すように、胴体6が収縮している状態(積層型アクチュエータ100の不作動状態)で後脚72に電磁力を発生させ、前脚71には電磁力を発生させない状態を初期状態とする。次に図18(b)に示すように、この状態でそのまま胴体6を伸張させて前脚71を前進させ、前脚71に電磁力を発生させると、胴体6の前端に固定されている前脚71は前進した位置で壁面Wに吸着して固定される。しかる後、後脚72の電磁力をなくしてしまい、積層型アクチュエータ100の印加電圧を調整して(たとえば逆電圧をかけて)胴体6を収縮させれば、図18(c)に示すように、後脚72は胴体6の後端に接合されているから胴体6の収縮によって前進移動する。胴体6が収縮してしまい後脚72の前進が止まったら、後脚72に再び電磁力を発生させて壁面Wに吸着させる。以後は上記初期状態から同じことを繰り返せば、本実施例の移動装置は尺取り虫が移動するように徐々に前進することができる。
【0076】
後退するときには、以上の説明の前脚71と後脚72とを取り替えて作用させれば、前進と同様にして後退することができる。本実施例の移動装置は、同様にして上り坂でも下り坂でも運用することができる。
ところで、本実施例の移動装置は、運搬する有償荷重(ペイロード)がなく登坂状態にもない軽負荷状態では、再び図17(b)に示すように、積層型アクチュエータ100を作動モード2で伸縮作動させる。すると、最大変位量(ストローク)が圧電バイモルフ七枚分(後端の一枚は伸縮作用に関与しない)と非常に大きく得られるので、伸縮動作の一サイクルでの前進のピッチが大きく取れ、高速移動が可能になる。
【0077】
逆に、本実施例の移動装置は、図19に示すように重い有償荷重Pの運搬中で登坂状態にある重負荷状態では、前述の軽負荷状態とは積層型アクチュエータ100の作動モードを変更して運用される。すなわち、再び図17(a)に示すように、積層型アクチュエータ100を作動モード1で伸縮作動させる。すると、変位量すなわち前進のピッチこそ小さくなるが、発生力は圧電バイモルフ八枚分と非常に大きく得られるので、強力な力で有償荷重Pを押し上げながら登坂することが可能になる。もちろん、前脚71および後脚72の電磁石は、十分に強力な磁気吸引力で壁面Wに吸着し、有償荷重Pを押し上げるに足りる静摩擦力を壁面Wとの間に発生させている。
【0078】
したがって、本実施例の移動装置によれば、負荷状態の如何によって積層型アクチュエータ100の作動モードを切替えることにより、軽負荷状態では高速移動が可能であり、重負荷状態では低速でも確実な移動が可能になるという効果がある。すなわち、本実施例の移動装置によれば二段階で変速が可能であり、軽負荷状態でのトップスピードを高く保ちながら、運用可能な負荷状態の範囲が拡がるという効果がある。
【0079】
(実施例4の変形態様1)
本実施例の変形態様1として、積層型アクチュエータ100を実施例2または実施例3の積層型アクチュエータで代替した移動装置の実施が可能である。いずれの場合にも、それぞれの積層型アクチュエータの特性を反映した移動装置の移動特性が発揮される。
【0080】
(実施例4の変形態様2)
本実施例の変形態様2として、電磁石を内蔵した前脚71および後脚72に代えて、バネ弾性力を調整して壁面Wとの摩擦力を調整する脚や、後方に向かって植毛された摩擦力の異方性を持つ脚などを有する移動装置の実施が可能である。それぞれの脚の特性によって、本変形態様の移動装置は様々な特性を発揮することができる。
【0081】
[実施例5]
(実施例5の構成)
本発明の実施例5としての移動装置は、図20に示すように、前述の実施例4と同様に孔内移動体であって、実施例4と同一の前脚71および後脚72と胴体6とを有する。本実施例の移動装置が実施例4と異なる点は、前脚71の前端面に荷重センサとしてのロードセル8が接合されている点と、ロードセル8の出力を検知する制御装置9を孔外に有する点とである。
【0082】
すなわち、ロードセル8は、本実施例の移動装置の先端部に装着されていて、本移動装置が運搬する有償荷重Pにより本移動装置に加わる荷重を検知する荷重センサである。制御装置9は、ロードセル8で検知される荷重に基づいて、積層型アクチュエータ100(図17(a)〜(b)参照)を適正な作動モードで伸縮作動させ、積層型アクチュエータ100の発生力および変位量を制御する。
【0083】
(実施例5の作用効果)
本実施例の移動装置は、以上のように構成されているので、以下のような作用効果を発揮する。
本実施例の移動装置では、荷重センサとしてのロードセル8で本移動装置に加わる荷重が検知され、その情報に基づいて制御装置9が積層型アクチュエータ100の発生力および変位量を制御する。すなわち、運用者たる人間には本移動装置にかかっている荷重ないし負荷が不明である場合にも、ロードセル8の検知情報により適正な作動モードで作動するように、制御装置9が積層型アクチュエータ100を自動的に制御する。
【0084】
それゆえ、積層型圧電アクチュエータ100の作動モードを誤って、発生力が負荷に及ばずに本移動装置が移動しなかったり、逆に発生力が大きすぎて本移動装置の移動速度が無用に遅くなってしまったりする不都合が防止される。
したがって本実施例の移動装置によればさらに、本移動装置にかかる荷重が検知され負荷の大小に応じて積層型アクチュエータ100の適正な作動モードが自動的に選ばれるので、本移動装置を常に適正な速度で移動させることが可能になるという効果がある。
【0085】
(実施例5の変形態様1)
本実施例の変形態様1として、ロードセル8に代えて、歪みゲージや所定の押圧力で切り替わるスイッチなどを採用した移動装置の実施も可能である。また、ロードセル8の他に、半導体加速度計などのセンサチップをも装備した移動装置の実施も可能であり、新たなセンサチップからの情報に基づいて、積層型アクチュエータ100をより適正な作動モードで作動させることができるという効果がある。
【0086】
(実施例5のその他の変形態様)
本実施例の移動装置に関しても、前述の実施例4の変形態様1および変形態様2に相当する各種の変形態様を実施することが可能であり、同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1としての積層型アクチュエータの構成を示す組図
(a)平面図 (b)側端面図
【図2】実施例1の圧電バイモルフの構成を示す側端面図
【図3】実施例1の積層型アクチュエータの非作動状態を示す側端面図
【図4】実施例1の積層型アクチュエータの作動モード1を示す側端面図
【図5】実施例1の積層型アクチュエータの作動モード2を示す側端面図
【図6】実施例1としての積層型アクチュエータの伸張作用を示すグラフ
【図7】実施例1の変形態様2の積層型アクチュエータの構成を示す組図
(a)非作動状態での部分側端面図
(b)作動モード2での部分側端面図
【図8】実施例2の積層型アクチュエータの作動モード1を示す側端面図
【図9】実施例2の積層型アクチュエータの作動モード2を示す側端面図
【図10】実施例2の積層型アクチュエータの作動モード3を示す側端面図
【図11】実施例2としての積層型アクチュエータの伸張作用を示すグラフ
【図12】実施例3としての積層型アクチュエータの構成を示す側端面図
【図13】実施例3の積層型アクチュエータの作動モード1を示す側端面図
【図14】実施例3の積層型アクチュエータの作動モード2を示す側端面図
【図15】実施例3としての積層型アクチュエータの伸張作用を示すグラフ
【図16】実施例4としての移動装置の構成を示す組図
(a)側面図 (b)後面図
【図17】実施例4の移動装置の胴体の構成および作用を示す組図
(a)作動モード1での胴体の側端面図
(b)作動モード2での胴体の側端面図
【図18】実施例4の移動装置の移動作用を示す組図
(a)初期状態での側面図
(b)伸張状態での側面図
(c)収縮状態での側面図
【図19】実施例4としての移動装置の運搬作用を示す側面図
【図20】実施例5としての移動装置の構成を示す側面図
【符号の説明】
1A〜1H:圧電バイモルフ(平面変形素子)
11:弾性板 12:圧電板 13:表面電極
2:中央連結部材 3:外周連結部材
4,4’:中央当接部材 5,5’:外周当接部材
T,T’:対向面 U1〜U4:積層ユニット(圧電バイモルフ二枚)
6:胴体
61:前端部材 62:後端部材 63:ベローズ
100:積層型アクチュエータ(実施例1のもの)
71:前脚(電磁石入り) 72:後脚(同)
8:ロードセル(荷重センサ) 9:制御装置
F:前進方向 P:有償荷重 W:内壁面

Claims (6)

  1. 複数枚が重ねられ同軸に配置されていて中央部と外周部との間に軸長方向の変位を生じる平面変形素子と、
    互いに隣り合う該平面変形素子の該中央部を軸長方向に互いに連結している中央連結部材と、
    互いに隣り合う該平面変形素子の該外周部を軸長方向に互いに連結している外周連結部材と、
    互いに隣り合う該平面変形素子の該中央部で軸長方向に押圧力を伝達する中央当接部材と、
    互いに隣り合う該平面変形素子の該外周部で軸長方向に押圧力を伝達する外周当接部材と、
    を有し、
    互いに隣り合う該平面変形素子の該中央部が該中央当接部材により互いに当接する位置では、該外周部は該外周連結部材により連結されており、
    互いに隣り合う該平面変形素子の該外周部が該外周当接部材により互いに当接する位置では、該中央部は該中央連結部材により連結されており、
    該中央当接部材と該外周当接部材とは、軸長方向に所定間隔で交互に配設されていることを特徴とする、
    積層型アクチュエータ。
  2. 各前記平面変形素子は、圧電バイモルフである、
    請求項1記載の積層型アクチュエータ。
  3. 各前記圧電バイモルフは、前記所定間隔おきに交互に異なる電源端子との接続手段を有する、
    請求項2記載の積層型アクチュエータ。
  4. 請求項1〜3のうちいずれかに記載の積層型アクチュエータを駆動源として有することを特徴とする、
    移動装置。
  5. 前記積層型アクチュエータを保持しており、該積層型アクチュエータの伸縮作用によって一端と他端との間の長さが伸縮する胴体と、
    該胴体の該一端に固定され電磁石を内蔵して壁面に吸着する前脚と、
    該胴体の該他端に固定され電磁石を内蔵して壁面に吸着する後脚と、
    を有する、
    請求項4記載の移動装置。
  6. 前記移動装置に加わる荷重を検知する荷重センサと、
    該荷重センサで検知される該荷重に基づき前記積層型アクチュエータの発生力および変位量を制御する制御装置とを有する、
    請求項4記載の移動装置。
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