JP4587010B2 - 圧電式アクチュエータ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、圧電効果による媒体の変位を利用して負荷を駆動するようにした圧電アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、比較的大きな変位量を生じさせることができる圧電アクチュエータとして、図1に示すように、予め蛇行するようにプレス成型した長尺板状の圧電シート1′の各わん曲部分の外側に、同じ曲率をもって予めわん曲させた可撓性を有する複数片の基材2′をそれぞれ貼り付けたものをアクチュエータ本体(変位媒体)3′として、その一端を固定側に支持して、圧電シート1′への通電制御を行わせることによってアクチュエータ本体3′の他端に変位を生じさせて負荷を駆動するようにした圧電アクチュエータが本願と同一出願人によって開発されている(特願平11−38687号参照)。
【0003】
その圧電シート1′としては、図2および図3に示すように、例えば、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)からなる長尺板状の圧電材4の両面に、アルミニウムまたは銅に金メッキした薄板状の電極材5′が接着されたものからなっている。
【0004】
このような圧電アクチュエータにあっては、圧電シート1′の圧電材4が収縮する方向の極性をもって電極材5′に電圧を印加したとき、圧電シート1′の各わん曲部分の外側に基材2′がそれぞれ貼り付けられているために、圧電材4が収縮すると圧電シート1′のわん曲の程度が大きくなって、アクチュエータ本体3′が全体に−δだけ収縮する方向に変位する。そして、圧電材4が伸長する方向の極性をもって電極材5′に電圧を印加したときには、前述の場合とは逆に、圧電シート1′のわん曲の程度が小さくなって、アクチュエータ本体3′が全体に+δだけ伸長する方向に変位するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、圧電アクチュエータを製造するに際して、予め蛇行させた圧電シートの各わん曲部分の外側に、わん曲させた基材の内面に接着剤を塗布して1枚ずつ貼り付るようにするのでは、その作業が煩雑で、複数の基材の貼り付けが不均一となって、製品の変位特性にバラツキを生じてしまうものになっていることである。
【0006】
また、予め蛇行させた圧電シートの各わん曲部分の外側に複数片の基材をそれぞれ貼り付けたものをアクチュエータ本体とするのでは、圧電シートの各わん曲部分が、いわゆる基板の片面に圧電シートを貼り付けたユニモルフ型のものでしかなく、アクチュエータ本体の変位による負荷駆動力を大きくするべく、基板の両面に圧電シートがそれぞれ貼り付けられたバイモルフ型のものにすることが困難になっていることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、圧電効果による変位が長手方向に生ずるように形成した圧電シートに可撓性をもった基板を貼り合せたアクチュエータ本体の一端を固定側に支持して、圧電シートへの通電制御を行わせることによってアクチュエータ本体の他端に変位を生じさせて負荷を駆動するようにした圧電式アクチュエータにあって、比較的大きな変位量を確保しながらも、変位特性が安定した品質の均一な製品を簡単に製造することができるとともに、ユニモルフ型のものからバイモルフ型のものに容易に発展させることができるようにしている。
【0008】
そのため、本発明では、その圧電シートを、蛇行するように形成した長尺板状の圧電材の両面に、その圧電材における蛇行の一方のわん曲部分にそれぞれ対応する第1の電極部と、その蛇行の他方のわん曲部分にそれぞれ対応する第2の電極部とが隙間を介して噛合するように組み合せた電極材を接合した構造のものとして、第1の電極部と第2の電極部とに互いに異なる極性をもって通電を行わせるようにしている。
【0009】
【実施例】
本発明による圧電アクチュエータにあっては、図4に示すように、圧電効果による変位が長手方向に生ずるように、予め蛇行するようにプレス成型した長尺板状の圧電シート1の片面に可撓性をもった一枚の基板2を貼り合せることによってユニモルフ型のアクチュエータ本体3を構成するようにしている。そして、そのアクチュエータ本体3の一端を固定側に支持した状態で、コントローラ6により圧電シート1への通電制御を行わせることによって、アクチュエータ本体3の他端に変位を生じさせて負荷7を駆動するように構成されている。
【0010】
圧電シート1としては、図5に示すように、長尺板状の圧電材4の両面に薄板状の電極材5が接着された構造からなっている。そして、その電極材5が、図6に示すように、圧電材4を蛇行させたときの一方(右方)のわん曲部分にそれぞれ対応する第1の電極部51と、その蛇行の他方(左方)のわん曲部分にそれぞれ対応する第2の電極部52とが隙間sを介して噛合するように組み合せたものであり、コントローラ6の制御下で、第1の電極部51と第2の電極部52とに互いに異なる極性をもって同時に通電が行われるようになっている。
【0011】
圧電材4には、可撓性を有して、圧電効果による伸縮量が比較的大きな特性をもったPVDFなどが用いられる。基板2には、必要な弾力性を維持しながら適度な可撓性をもった素材として最適なポリエチレンフタレート(PET)などが用いられる。その基板2は、一枚構造のものでも、積層構造のものであってもよい。また、電極材5には、例えば、アルミニウムまたは銅に金メッキしたものなどが用いられる。
【0012】
このように構成された圧電アクチュエータにあって、電極材5における第1の電極部51間に圧電シート1が収縮する方向の極性をもって電圧+Eを印加し、第2の電極部52間に圧電シート1が伸長する方向の極性をもって−Eの電圧を印加すると、図4に示すアクチュエータ本体3における右方の各わん曲部分にあっては、図7に示すように圧電シート1が収縮するが、この部分では基板2がわん曲の外側にあるために圧電シート1のわん曲の程度が大きくなる。同時に、アクチュエータ本体3における左方の各わん曲部分にあっては、図8に示すように圧電シート1が伸長するが、この部分では基板2がわん曲の内側にあるために圧電シート1のわん曲の程度が大きくなる。したがって、アクチュエータ本体3の全体が−δだけ収縮する方向に変位することになる。
【0013】
また、電極材5における第1の電極部51間に前述とは逆極性の電圧−Eを印加し、第2の電極部52に前述とは逆極性の電圧+Eを印加すると、図4に示すアクチュエータ本体3における右方の各わん曲部分にあっては、図9に示すように圧電シート1が伸長するが、この部分では基板2がわん曲の外側にあるために圧電シート1のわん曲の程度が小さくなる。同時に、アクチュエータ本体3における左方の各わん曲部分にあっては、図10に示すように圧電シート1が収縮するが、この部分では基板2がわん曲の内側にあるために圧電シート1のわん曲の程度が小さくなる。したがって、アクチュエータ本体3の全体が+δだけ伸長する方向に変位することになる。
【0014】
しかして、圧電シート1に基板2を貼り合せることによってある程度の剛性をもたせたうえで、全体をわん曲形状にすることによって、アクチュエータ本体3に充分な負荷駆動力を発生させることができるようになる。そして、基板2の厚さを変えることによって、所望の負荷駆動力の特性をもたせることができるようになる。
【0015】
また、本発明にあっては、図11に示すように、同様に蛇行するようにプレス成型した2枚の圧電シート11,12を可撓性をもった一枚の基板2の両面に貼り合せることによって、バイモルフ型のアクチュエータ本体8を容易に構成することができるようになる。
【0016】
図12は、バイモルフ型のアクチュエータ本体8を用いて、印加電圧の大きさを変化させたときの変位量の実測データの特性を示している。
【0017】
ここでは、圧電シート11,12における各圧電材の厚さが20μm、基板2の厚さが50μm、わん曲の半径が6mm、そのわん曲数が5つのアクチュエータ本体8を用い、負荷7の重さを2gおよび10gとしている。図中、Aは負荷7の重さが2gのときの特性を示し、Bは負荷7の重さが10gのときの特性を示している。
【0018】
また、同一の条件によるユニモルフ型のアクチュエータ本体3を用いて、負荷7の重さを2gとしたときの実測した変位量との差は約1.5倍であった。
【0019】
【発明の効果】
以上、本発明による圧電アクチュエータにあっては、予め蛇行するように形成した長尺板状の圧電材の両面に、その圧電材における蛇行の一方のわん曲部分にそれぞれ対応する一方極性となる電極部と、その蛇行の他方のわん曲部分にそれぞれ対応する他方極性となる電極部とが隙間を介して噛合するように組み合せた電極材を接着した構造の圧電シートの片面に、可撓性をもった1枚の基板を貼り合せることによってアクチュエータ本体を構成するようにしているので、圧電シートと基板との貼合せを容易にバラツキなく行わせることができるようになり、充分な変位量を生じさせて、変位特性が安定した品質の均一な製品を簡単に製造することができるようになる。
【0020】
また、本発明によれば、基板の一面に圧電シートを貼り付けるようにしているので、その基板の他面に同様に蛇行させた別の圧電シートを貼り付けるだけで、ユニモルフ型の圧電アクチュエータものからバイモルフ型の圧電アクチュエータに容易に発展させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の圧電アクチュエータにおけるアクチュエータ本体の構造を示す正面図である。
【図2】その従来のアクチュエータ本体における圧電シートの平面図である。
【図3】その従来のアクチュエータ本体における圧電シートの左側面図である。
【図4】本発明の一実施例によるユニモルフ型の圧電アクチュエータの正面図である。
【図5】同実施例における圧電シートの平面図である。
【図6】同実施例における圧電シートの左側面図である。
【図7】同実施例によるアクチュエータ本体の収縮時における右方のわん曲部分における変位状態を示す図である。
【図8】同実施例によるアクチュエータ本体の収縮時における左方のわん曲部分における変位状態を示す図である。
【図9】同実施例によるアクチュエータ本体の伸長時における右方のわん曲部分における変位状態を示す図である。
【図10】同実施例によるアクチュエータ本体の伸長時における左方のわん曲部分における変位状態を示す図である。
【図11】本発明によるバイモルフ型のアクチュエータ本体の構造を示す正面図である。
【図12】本発明によるバイモルフ型のアクチュエータ本体を用いたときの印加電圧に対する変位量の実測データにもとづく特性図である。
【符号の説明】
1 圧電シート
2 基板
3 アクチュエータ本体
4 圧電材
5 電極材
6 コントローラ
7 負荷
8 アクチュエータ本体
11 圧電シート
12 圧電シート
Claims (3)
- 圧電効果による変位が長手方向に生ずるように形成した圧電シートに可撓性をもった基板を貼り合せたアクチュエータ本体の一端を固定側に支持して、圧電シートへの通電制御を行わせることによってアクチュエータ本体の他端に変位を生じさせて負荷を駆動するようにした圧電式アクチュエータであって、その圧電シートが、蛇行するように形成した長尺板状の圧電材の両面に、その圧電材における蛇行の一方のわん曲部分にそれぞれ対応する第1の電極部と、その蛇行の他方のわん曲部分にそれぞれ対応する第2の電極部とが隙間を介して噛合するように組み合せた電極材を接合したものであり、第1の電極部と第2の電極部とに互いに異なる極性をもって同時に通電を行わせるようにしたことを特徴とする圧電式アクチュエータ。
- 基板の片面に圧電シートを貼り付けたことを特徴とする請求項1の記載による圧電式アクチュエータ。
- 基板の両面に圧電シートをそれぞれ貼り付けたことを特徴とする請求項1の記載による圧電式アクチュエータ。
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