JPH093528A - 鋼部材の表面処理方法及び表面処理鋼部材 - Google Patents
鋼部材の表面処理方法及び表面処理鋼部材Info
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- JPH093528A JPH093528A JP7345160A JP34516095A JPH093528A JP H093528 A JPH093528 A JP H093528A JP 7345160 A JP7345160 A JP 7345160A JP 34516095 A JP34516095 A JP 34516095A JP H093528 A JPH093528 A JP H093528A
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- C21D—MODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
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- C21D9/0068—Heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering, adapted for particular articles; Furnaces therefor for particular articles not mentioned below
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- C21D1/06—Surface hardening
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- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F16—ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
- F16C—SHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
- F16C2326/00—Articles relating to transporting
- F16C2326/01—Parts of vehicles in general
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- F16—ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
- F16H—GEARING
- F16H45/00—Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches
- F16H45/02—Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches with mechanical clutches for bridging a fluid gearing of the hydrokinetic type
- F16H2045/0273—Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches with mechanical clutches for bridging a fluid gearing of the hydrokinetic type characterised by the type of the friction surface of the lock-up clutch
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- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F16—ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
- F16H—GEARING
- F16H45/00—Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches
- F16H45/02—Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches with mechanical clutches for bridging a fluid gearing of the hydrokinetic type
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 被処理部材が薄板部品であっても所望表面部
位の安定した硬化等が可能な鋼部材の表面処理手段を確
立し、高性能表面処理鋼部材を提供する。 【構成】 高密度エネルギ−ビ−ム照射によって鋼部材
の被処理部を表層のみが溶融した状態となし、続いて該
溶融部の急冷を行う。また、この場合に、 a) 表層の溶
融部が全溶融層とこれに隣接する不完全溶融層とで構成
された状態になるようにする, b) 被処理部表層がオ−
ステナイト化温度に保持した場合の“オ−ステナイト変
態終了時間”以内の短時間で溶融状態となるようにす
る, c) 照射するエネルギ−ビ−ムを複数箇所に分配
し、複数箇所の被処理部表層が同時に溶融状態となるよ
うにする, c) 鋼部材全体の熱容量(又は肉厚)が被処
理部の熱容量(溶融部深さ)の4倍以上となるようにす
る,等の手立てを講じるのが好ましい。これにより、母
材金属が溶融し急冷凝固した表層部を備えて成る表面処
理鋼部材が得られる。
位の安定した硬化等が可能な鋼部材の表面処理手段を確
立し、高性能表面処理鋼部材を提供する。 【構成】 高密度エネルギ−ビ−ム照射によって鋼部材
の被処理部を表層のみが溶融した状態となし、続いて該
溶融部の急冷を行う。また、この場合に、 a) 表層の溶
融部が全溶融層とこれに隣接する不完全溶融層とで構成
された状態になるようにする, b) 被処理部表層がオ−
ステナイト化温度に保持した場合の“オ−ステナイト変
態終了時間”以内の短時間で溶融状態となるようにす
る, c) 照射するエネルギ−ビ−ムを複数箇所に分配
し、複数箇所の被処理部表層が同時に溶融状態となるよ
うにする, c) 鋼部材全体の熱容量(又は肉厚)が被処
理部の熱容量(溶融部深さ)の4倍以上となるようにす
る,等の手立てを講じるのが好ましい。これにより、母
材金属が溶融し急冷凝固した表層部を備えて成る表面処
理鋼部材が得られる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、鋼部材表層の局部的
溶融を伴う表面処理方法並びに表層の局部的な溶融・凝
固部を有した表面処理鋼部材に関するものである。
溶融を伴う表面処理方法並びに表層の局部的な溶融・凝
固部を有した表面処理鋼部材に関するものである。
【0002】近年、自動車等の性能は飛躍的な向上を遂
げているが、これに伴い、例えばその動力伝達系を構成
するトルクコンバ−タ等にも様々な改良が重ねられてき
た。図1(縦断面図)及び図2(要部の一部破断平面
図)で示すトルクコンバータも、従来以上に円滑な動力
伝達,燃費の更なる向上を図るために提案されたものの
1つである。このトルクコンバータは、ポンプインペラ
1,該ポンプインペラ1と共にトーラスを構成するター
ビンランナ2,ステータ3,ロックアップクラッチ装置
4及びダンパ装置5によって構成されている。
げているが、これに伴い、例えばその動力伝達系を構成
するトルクコンバ−タ等にも様々な改良が重ねられてき
た。図1(縦断面図)及び図2(要部の一部破断平面
図)で示すトルクコンバータも、従来以上に円滑な動力
伝達,燃費の更なる向上を図るために提案されたものの
1つである。このトルクコンバータは、ポンプインペラ
1,該ポンプインペラ1と共にトーラスを構成するター
ビンランナ2,ステータ3,ロックアップクラッチ装置
4及びダンパ装置5によって構成されている。
【0003】上記トルクコンバータにおいて、図示しな
いクランクシャフトを介して伝達されたエンジンの回転
は、フロントカバー6に伝達され、該フロントカバー6
に固定されたポンプインペラ1に伝達される。この場
合、該ポンプインペラ1が回転すると、トーラス内の油
が軸の周囲を回転し、遠心力が加わってポンプインペラ
1,タービンランナ2及びステータ3間を循環させられ
る。そして、ポンプインペラ1とタービンランナ2との
間に配置されているステータ3(内周側に一定方向にの
み回転を可能とするワンウェイクラッチ31が取付けられ
ている)等の作用により、車両の発進時等のように前記
ポンプインペラ1が回転を開始したばかりでタービンラ
ンナ2との回転速度差が大きい場合にはトルク変換機と
して作動してトルクを増幅させ、一方、前記タービンラ
ンナ2の回転速度が高くなってタービンランナ2とポン
プインペラ1との回転速度差が小さくなった場合には単
なる流体継手として作動するようになっている。
いクランクシャフトを介して伝達されたエンジンの回転
は、フロントカバー6に伝達され、該フロントカバー6
に固定されたポンプインペラ1に伝達される。この場
合、該ポンプインペラ1が回転すると、トーラス内の油
が軸の周囲を回転し、遠心力が加わってポンプインペラ
1,タービンランナ2及びステータ3間を循環させられ
る。そして、ポンプインペラ1とタービンランナ2との
間に配置されているステータ3(内周側に一定方向にの
み回転を可能とするワンウェイクラッチ31が取付けられ
ている)等の作用により、車両の発進時等のように前記
ポンプインペラ1が回転を開始したばかりでタービンラ
ンナ2との回転速度差が大きい場合にはトルク変換機と
して作動してトルクを増幅させ、一方、前記タービンラ
ンナ2の回転速度が高くなってタービンランナ2とポン
プインペラ1との回転速度差が小さくなった場合には単
なる流体継手として作動するようになっている。
【0004】なお、このトルクコンバータには前述した
ようにロックアップクラッチ装置4が設けられている
が、これは燃費改善等のために設けられたものである。
即ち、車輛が発進した後、予め設定された車速が得られ
ると、ロックアップクラッチ装置4のロックアップクラ
ッチピストン41が図示しないロックアップリレーバルブ
による油の供給切り換えにより作動して軸方向に移動
し、摩擦材42を介してフロントカバー6と係合する。こ
のため、エンジンの回転がトルクコンバータを介するこ
となく変速機構の入力軸に伝達されるので、燃費を良く
することができる。
ようにロックアップクラッチ装置4が設けられている
が、これは燃費改善等のために設けられたものである。
即ち、車輛が発進した後、予め設定された車速が得られ
ると、ロックアップクラッチ装置4のロックアップクラ
ッチピストン41が図示しないロックアップリレーバルブ
による油の供給切り換えにより作動して軸方向に移動
し、摩擦材42を介してフロントカバー6と係合する。こ
のため、エンジンの回転がトルクコンバータを介するこ
となく変速機構の入力軸に伝達されるので、燃費を良く
することができる。
【0005】また、トルクコンバータに取付けられた前
記ダンパ装置5は、ロックアップクラッチピストン41と
フロントカバー6との係脱時に発生する伝達トルクの変
動を吸収するためのものであり、ダボかしめ43によって
ロックアップクラッチピストン41に固定されており、前
記タービンランナ2と一体に回転させられるドリブンプ
レート51及びスプリング52,53等から成っている。
記ダンパ装置5は、ロックアップクラッチピストン41と
フロントカバー6との係脱時に発生する伝達トルクの変
動を吸収するためのものであり、ダボかしめ43によって
ロックアップクラッチピストン41に固定されており、前
記タービンランナ2と一体に回転させられるドリブンプ
レート51及びスプリング52,53等から成っている。
【0006】ここで、スプリング52はロックアップクラ
ッチピストン41の円周方向における8箇所に配設された
第1ステージ用のものであり、またスプリング53はロッ
クアップクラッチピストン41の円周方向における4箇所
に配設された第2ステージ用のものであって、このスプ
リング53はスプリング52内に一つ置きに配設される。な
お、前記スプリング53はスプリング52より径が小さく、
かつ短く設定され、スプリング52の捩じれ角が設定値に
なって伝達トルクが屈曲点トルクに到達した後に撓み始
める。従って、前記フロントカバー6から摩擦材42を介
して伝達された回転は前記ダンパ装置5を介してタービ
ンハブ7に伝達されるが、この際、スプリング52,53が
収縮して回転伝達時における伝達トルクの変動を吸収す
る。また、“エンジンの出力トルクの急激な変動”が図
示しない変速装置に伝達されることによって起きる振
動,騒音等を防止する役目も担っている。
ッチピストン41の円周方向における8箇所に配設された
第1ステージ用のものであり、またスプリング53はロッ
クアップクラッチピストン41の円周方向における4箇所
に配設された第2ステージ用のものであって、このスプ
リング53はスプリング52内に一つ置きに配設される。な
お、前記スプリング53はスプリング52より径が小さく、
かつ短く設定され、スプリング52の捩じれ角が設定値に
なって伝達トルクが屈曲点トルクに到達した後に撓み始
める。従って、前記フロントカバー6から摩擦材42を介
して伝達された回転は前記ダンパ装置5を介してタービ
ンハブ7に伝達されるが、この際、スプリング52,53が
収縮して回転伝達時における伝達トルクの変動を吸収す
る。また、“エンジンの出力トルクの急激な変動”が図
示しない変速装置に伝達されることによって起きる振
動,騒音等を防止する役目も担っている。
【0007】ところで、上述のようなトルクコンバ−タ
では、前記ロックアップクラッチピストン41の正駆動時
(ロックアップクラッチ装置4が係合状態に置かれてロ
ックアップクラッチピストン41が図2における反時計回
り方向に回転する時)及び逆駆動時(エンジンブレ−キ
時等でロックアップクラッチピストン41が図2における
時計回り方向に回転する時)には前記スプリング52が圧
縮されるので、このスプリング52がロックアップクラッ
チピストン41の平板部411 と繰り返し摺動しがちとな
る。そのため、ロックアップクラッチピストン41の平板
部411 にはスプリング52との摺動による摩耗が生じると
いう問題があった。また、前記ロックアップクラッチピ
ストン41の回転に伴って、スプリング52は遠心力を受
け、ロックアップクラッチピストン41の立上がり部412
に押し付けられる。したがって、前記ロックアップクラ
ッチピストン41の正駆動時及び逆駆動時に、該ロックア
ップクラッチピストン41の立上がり部412 もスプリング
52と繰り返し摺動することになり、やはり摩耗が生じ
る。
では、前記ロックアップクラッチピストン41の正駆動時
(ロックアップクラッチ装置4が係合状態に置かれてロ
ックアップクラッチピストン41が図2における反時計回
り方向に回転する時)及び逆駆動時(エンジンブレ−キ
時等でロックアップクラッチピストン41が図2における
時計回り方向に回転する時)には前記スプリング52が圧
縮されるので、このスプリング52がロックアップクラッ
チピストン41の平板部411 と繰り返し摺動しがちとな
る。そのため、ロックアップクラッチピストン41の平板
部411 にはスプリング52との摺動による摩耗が生じると
いう問題があった。また、前記ロックアップクラッチピ
ストン41の回転に伴って、スプリング52は遠心力を受
け、ロックアップクラッチピストン41の立上がり部412
に押し付けられる。したがって、前記ロックアップクラ
ッチピストン41の正駆動時及び逆駆動時に、該ロックア
ップクラッチピストン41の立上がり部412 もスプリング
52と繰り返し摺動することになり、やはり摩耗が生じ
る。
【0008】
【従来技術及びその課題】一般に、このような“異なる
部材同士の摺動に起因した摩耗”を防止する手立てとし
て、まず構成部材を硬質材料で作成することが考えられ
る。しかし、そのような硬質材料では成形加工が困難で
あり、特にプレス成形やかしめ等の塑性加工が施される
前記ロックアップクラッチピストン11を硬質鋼等で構成
することは実際上採用することができない。そこで、上
述の如き鋼部材については、表層部のみを焼入れして硬
化させ、これによって耐摩耗性を付与する手段が採用さ
れている。
部材同士の摺動に起因した摩耗”を防止する手立てとし
て、まず構成部材を硬質材料で作成することが考えられ
る。しかし、そのような硬質材料では成形加工が困難で
あり、特にプレス成形やかしめ等の塑性加工が施される
前記ロックアップクラッチピストン11を硬質鋼等で構成
することは実際上採用することができない。そこで、上
述の如き鋼部材については、表層部のみを焼入れして硬
化させ、これによって耐摩耗性を付与する手段が採用さ
れている。
【0009】従来、このような表面硬化法としては、高
周波焼入れや、電子ビ−ム(EB)焼入れ,レーザ焼入
れ等といった高密度エネルギ−ビ−ム照射による表面焼
入れが知られている。なお、これらの方法は、被処理部
材表面を高周波加熱や高密度エネルギ−ビ−ム照射加熱
すると共に、その表層部が焼入温度(オーステナイト化
温度)になった時点(即ち表層部がオーステナイト化し
た時点)で加熱を停止し、引き続いての自己放冷による
急速冷却で表層部に生成されたオーステナイトをマルテ
ンサイトに変態させて硬化層とするものである。
周波焼入れや、電子ビ−ム(EB)焼入れ,レーザ焼入
れ等といった高密度エネルギ−ビ−ム照射による表面焼
入れが知られている。なお、これらの方法は、被処理部
材表面を高周波加熱や高密度エネルギ−ビ−ム照射加熱
すると共に、その表層部が焼入温度(オーステナイト化
温度)になった時点(即ち表層部がオーステナイト化し
た時点)で加熱を停止し、引き続いての自己放冷による
急速冷却で表層部に生成されたオーステナイトをマルテ
ンサイトに変態させて硬化層とするものである。
【0010】しかしながら、前記従来の表面焼入硬化法
では、焼入れを施すための表面加熱によって均一なオー
ステナイトを得ようとすると、部材表層部を“焼入温度
に対応させて設定されるオーステナイト変態時間(オ−
ステナイト変態終了時間)”だけ該焼入温度に保持する
必要がある。
では、焼入れを施すための表面加熱によって均一なオー
ステナイトを得ようとすると、部材表層部を“焼入温度
に対応させて設定されるオーステナイト変態時間(オ−
ステナイト変態終了時間)”だけ該焼入温度に保持する
必要がある。
【0011】なお、図3は炭素鋼のT−T−A曲線図で
あるが、これまでの表面焼入れ(電子ビ−ム焼入れ等)
では、図中の破線で示したように、加熱を開始してから
常温組織(フェライト・パ−ライト組織)が完全にオー
ステナイトへ変態し終えるまで待って焼入れすることが
肝要であった。
あるが、これまでの表面焼入れ(電子ビ−ム焼入れ等)
では、図中の破線で示したように、加熱を開始してから
常温組織(フェライト・パ−ライト組織)が完全にオー
ステナイトへ変態し終えるまで待って焼入れすることが
肝要であった。
【0012】そのため、被処理部材が例えば薄板部品で
ある場合には、オーステナイト変態時間の間に熱伝導に
より被処理部材の広範囲にわたって温度が上昇し、それ
による熱歪により該部材に精度変形を来たしたり、自己
放冷が不十分となって焼入不良が発生したりする等の問
題を生じることが指摘された。
ある場合には、オーステナイト変態時間の間に熱伝導に
より被処理部材の広範囲にわたって温度が上昇し、それ
による熱歪により該部材に精度変形を来たしたり、自己
放冷が不十分となって焼入不良が発生したりする等の問
題を生じることが指摘された。
【0013】このようなことから、本発明が目的とする
のは、前記従来法に指摘された問題点を解決し、被処理
部材が薄板部品であっても精度変形を来たしたり焼入不
良を生じたりすることなく、高い処理能率でもって所望
表面部位の安定した硬化が可能な鋼部材の表面処理方法
を確立すると共に、それによって優れた機能を有せしめ
られた表面処理鋼部材を提供することである。
のは、前記従来法に指摘された問題点を解決し、被処理
部材が薄板部品であっても精度変形を来たしたり焼入不
良を生じたりすることなく、高い処理能率でもって所望
表面部位の安定した硬化が可能な鋼部材の表面処理方法
を確立すると共に、それによって優れた機能を有せしめ
られた表面処理鋼部材を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成すべく鋭意研究を行った結果、次のような知見を
得ることができた。 a) 従来の表面焼入処理では、鋼部材表層部の加熱は該
部分のオ−ステナイト化が達成できる温度までに止めら
れていて溶融させることはなかったが、この際の加熱に
高密度エネルギ−ビ−ム照射を適用すると共に照射部分
の表層を溶融状態にまでもって行き、これをそのまま自
己放冷させると、まず高密度エネルギ−ビ−ムの照射部
位表層が常温組織から局部的に短時間で溶融状態とな
り、かつ自己放冷の開始と同時に溶融状態から瞬時にオ
−ステナイト組織を経て、マルテンサイト組織へと変態
する。従って、該処理部位の表面硬度は焼入れ効果によ
って非常に高くなり、従来の表面焼入れのような比較的
長いオーステナイト変態時間を待つことなくその部位の
耐摩耗性が向上する。
を達成すべく鋭意研究を行った結果、次のような知見を
得ることができた。 a) 従来の表面焼入処理では、鋼部材表層部の加熱は該
部分のオ−ステナイト化が達成できる温度までに止めら
れていて溶融させることはなかったが、この際の加熱に
高密度エネルギ−ビ−ム照射を適用すると共に照射部分
の表層を溶融状態にまでもって行き、これをそのまま自
己放冷させると、まず高密度エネルギ−ビ−ムの照射部
位表層が常温組織から局部的に短時間で溶融状態とな
り、かつ自己放冷の開始と同時に溶融状態から瞬時にオ
−ステナイト組織を経て、マルテンサイト組織へと変態
する。従って、該処理部位の表面硬度は焼入れ効果によ
って非常に高くなり、従来の表面焼入れのような比較的
長いオーステナイト変態時間を待つことなくその部位の
耐摩耗性が向上する。
【0015】b) この場合、高密度エネルギ−ビ−ム照
射の出力や時間の調整等によって前記表層の溶融部が全
溶融層とこれに隣接する半溶融層とで構成された状態に
なるようにすると、溶融・凝固部に生じがちな波打ち状
の平滑不良をも安定して抑えることが可能となる。 c) 更に、高密度エネルギ−ビ−ム照射を行う際、照射
するエネルギ−ビ−ムを分配して(例えば偏向レンズで
偏向させて)複数箇所がほぼ同時に照射を受けるように
図れば、複数箇所の処理を一操作で容易に行うことがで
きる。
射の出力や時間の調整等によって前記表層の溶融部が全
溶融層とこれに隣接する半溶融層とで構成された状態に
なるようにすると、溶融・凝固部に生じがちな波打ち状
の平滑不良をも安定して抑えることが可能となる。 c) 更に、高密度エネルギ−ビ−ム照射を行う際、照射
するエネルギ−ビ−ムを分配して(例えば偏向レンズで
偏向させて)複数箇所がほぼ同時に照射を受けるように
図れば、複数箇所の処理を一操作で容易に行うことがで
きる。
【0016】d) そして、このように処理された鋼部材
は、薄肉材であっても良好な塑性加工性と形状精度とを
維持し、かつ焼入硬化による優れた耐摩耗性を備えた表
面部位を有するものとなる。
は、薄肉材であっても良好な塑性加工性と形状精度とを
維持し、かつ焼入硬化による優れた耐摩耗性を備えた表
面部位を有するものとなる。
【0017】本発明は上記知見事項等を基に完成された
ものであり、鋼部材の表面処理方法に係る本発明は「高
密度エネルギ−ビ−ム照射によって鋼部材の被処理部を
表層のみが溶融した状態となし、 続いて該溶融部の急冷
を行うことにより、 鋼部材に良好な塑性加工性と形状精
度とを維持させつつ、 高硬度で耐摩耗性に優れる表面部
位を備えた鋼部材の提供を可能にした点」に大きな特徴
を有している。
ものであり、鋼部材の表面処理方法に係る本発明は「高
密度エネルギ−ビ−ム照射によって鋼部材の被処理部を
表層のみが溶融した状態となし、 続いて該溶融部の急冷
を行うことにより、 鋼部材に良好な塑性加工性と形状精
度とを維持させつつ、 高硬度で耐摩耗性に優れる表面部
位を備えた鋼部材の提供を可能にした点」に大きな特徴
を有している。
【0018】なお、この場合に表層の溶融部が全溶融層
とこれに隣接する半溶融層とで構成された状態になるよ
うにすると、溶融・凝固部に生じがちな波打ち状の平滑
不良が抑えられるので好ましいことは前述した通りであ
る。また、これらの場合、被処理部表層がオ−ステナイ
ト化温度に保持した場合の“オ−ステナイト変態終了時
間”以内の短時間で溶融状態となるようにすれば、自己
放冷効果が向上すると共に、焼入硬化層の深さをより減
少させることができる。しかも、これらの場合、照射す
るエネルギ−ビ−ムを複数箇所に分配し、複数箇所の被
処理部表層が同時に溶融状態となるようにすれば、複数
箇所の処理を一操作で行えるので処理サイクル時間の更
なる短縮が可能となる。なお、これらの場合、“溶融部
の急冷”は自然放冷を行うだけで達成できるので操作が
簡単であるが、水冷等の強制冷却を適用しても良いこと
は言うまでもない。ただ、鋼部材全体の熱容量が被処理
部の熱容量の4倍以上となるように設定すれば、何れの
場合も急冷効果は一層確実となるので好ましい。但し、
鋼部材の肉厚が一様である場合には、この鋼部材の肉厚
を溶融部深さの4倍以上となるように設定すれば、上記
熱容量規制と同様の効果を得ることができる。
とこれに隣接する半溶融層とで構成された状態になるよ
うにすると、溶融・凝固部に生じがちな波打ち状の平滑
不良が抑えられるので好ましいことは前述した通りであ
る。また、これらの場合、被処理部表層がオ−ステナイ
ト化温度に保持した場合の“オ−ステナイト変態終了時
間”以内の短時間で溶融状態となるようにすれば、自己
放冷効果が向上すると共に、焼入硬化層の深さをより減
少させることができる。しかも、これらの場合、照射す
るエネルギ−ビ−ムを複数箇所に分配し、複数箇所の被
処理部表層が同時に溶融状態となるようにすれば、複数
箇所の処理を一操作で行えるので処理サイクル時間の更
なる短縮が可能となる。なお、これらの場合、“溶融部
の急冷”は自然放冷を行うだけで達成できるので操作が
簡単であるが、水冷等の強制冷却を適用しても良いこと
は言うまでもない。ただ、鋼部材全体の熱容量が被処理
部の熱容量の4倍以上となるように設定すれば、何れの
場合も急冷効果は一層確実となるので好ましい。但し、
鋼部材の肉厚が一様である場合には、この鋼部材の肉厚
を溶融部深さの4倍以上となるように設定すれば、上記
熱容量規制と同様の効果を得ることができる。
【0019】一方、表面処理鋼部材に係る本発明は「表
面処理鋼部材を、 母材金属が溶融し急冷凝固した表層部
を局部的に備えて成る如く構成することにより、 良好な
塑性加工性と、 高硬度で耐摩耗性に優れる表面部位を備
えしめ得るようにした点」に大きな特徴を有している。
面処理鋼部材を、 母材金属が溶融し急冷凝固した表層部
を局部的に備えて成る如く構成することにより、 良好な
塑性加工性と、 高硬度で耐摩耗性に優れる表面部位を備
えしめ得るようにした点」に大きな特徴を有している。
【0020】ここで、上記表面処理鋼部材において、
“母材金属が溶融し急冷凝固した表層部”はその熱容量
が部材全体の熱容量の 1/4以下であるか、あるいは“母
材金属が溶融し急冷凝固した表層部”はその深さが部材
肉厚の 1/4以下であることが、“より高い溶融・凝固処
理部硬度の確保”や“表面処理鋼部材自体の薄肉化”に
とって有利である。なお、上記表面処理鋼部材は、その
溶融・凝固した表層部を耐摩耗面として使用する用途に
供した場合にその性能が一層顕著となる。
“母材金属が溶融し急冷凝固した表層部”はその熱容量
が部材全体の熱容量の 1/4以下であるか、あるいは“母
材金属が溶融し急冷凝固した表層部”はその深さが部材
肉厚の 1/4以下であることが、“より高い溶融・凝固処
理部硬度の確保”や“表面処理鋼部材自体の薄肉化”に
とって有利である。なお、上記表面処理鋼部材は、その
溶融・凝固した表層部を耐摩耗面として使用する用途に
供した場合にその性能が一層顕著となる。
【0021】
【作用及び発明の効果】鋼部材の表面処理方法に係る本
発明は、前述した如く「高密度エネルギ−ビ−ム照射に
よって鋼部材の被処理部を表層のみが溶融した状態とな
し、 続いて該溶融部の急冷を行うこと(以降“溶融焼入
れ”と称する)」を特徴としているが、鋼部材の表面に
電子ビ−ム(EB)やレ−ザビ−ム等の高密度エネルギ
−ビ−ムを照射すると、鋼部材表層部を局部的にかつ極
く浅い範囲で短時間(殆ど瞬時)に溶融状態とすること
ができる。
発明は、前述した如く「高密度エネルギ−ビ−ム照射に
よって鋼部材の被処理部を表層のみが溶融した状態とな
し、 続いて該溶融部の急冷を行うこと(以降“溶融焼入
れ”と称する)」を特徴としているが、鋼部材の表面に
電子ビ−ム(EB)やレ−ザビ−ム等の高密度エネルギ
−ビ−ムを照射すると、鋼部材表層部を局部的にかつ極
く浅い範囲で短時間(殆ど瞬時)に溶融状態とすること
ができる。
【0022】そして、この状態で高密度エネルギ−ビ−
ムの照射位置をずらすと、前記の加熱・溶融層が極く薄
いために母材部への抜熱速度が速く、強制冷却を行わな
くても溶融層は急冷されて瞬時に凝固し、更に低温域に
まで急速に温度低下する。ここで、本発明者等は、前記
溶融層の凝固と同時に該凝固層(一部その下層の極く薄
い熱影響部も含まれる)は瞬時に均一なオ−ステナイト
組織となる事実を確認したことを報告する。しかし、こ
のオ−ステナイト組織が現出するのも極く一瞬であり、
前述した急速な自己放冷のためにオ−ステナイト組織は
瞬く間に焼入組織(マルテンサイト組織)に変態してし
まう。従って、鋼部材表面の急速溶融され急冷された部
位は高硬度となり、優れた耐摩耗性が付与される。
ムの照射位置をずらすと、前記の加熱・溶融層が極く薄
いために母材部への抜熱速度が速く、強制冷却を行わな
くても溶融層は急冷されて瞬時に凝固し、更に低温域に
まで急速に温度低下する。ここで、本発明者等は、前記
溶融層の凝固と同時に該凝固層(一部その下層の極く薄
い熱影響部も含まれる)は瞬時に均一なオ−ステナイト
組織となる事実を確認したことを報告する。しかし、こ
のオ−ステナイト組織が現出するのも極く一瞬であり、
前述した急速な自己放冷のためにオ−ステナイト組織は
瞬く間に焼入組織(マルテンサイト組織)に変態してし
まう。従って、鋼部材表面の急速溶融され急冷された部
位は高硬度となり、優れた耐摩耗性が付与される。
【0023】ところで、前述したように、従来の表面焼
入硬化法では被処理部材の表層が溶融されることはな
く、融点以下のオ−ステナイト化温度に加熱し、該オ−
ステナイト化温度にオ−ステナイト化が終了するまで保
持してから焼入れ(急冷)が施される。しかし、この手
法では、オ−ステナイト化が終了するまでに本発明法と
比べ比較的長い時間を要するため、熱伝導によって処理
部以外の部分までもが加熱され、焼入硬化層の深さが深
くなって薄肉材の処理が不可能となったり、熱歪による
被処理部材の形状精度の悪化を招いたり、更には自己冷
却能を低下させてベイナイトの形成を誘発するといった
焼入れ不良を引き起したりしがちである。
入硬化法では被処理部材の表層が溶融されることはな
く、融点以下のオ−ステナイト化温度に加熱し、該オ−
ステナイト化温度にオ−ステナイト化が終了するまで保
持してから焼入れ(急冷)が施される。しかし、この手
法では、オ−ステナイト化が終了するまでに本発明法と
比べ比較的長い時間を要するため、熱伝導によって処理
部以外の部分までもが加熱され、焼入硬化層の深さが深
くなって薄肉材の処理が不可能となったり、熱歪による
被処理部材の形状精度の悪化を招いたり、更には自己冷
却能を低下させてベイナイトの形成を誘発するといった
焼入れ不良を引き起したりしがちである。
【0024】しかるに、本発明に係る前記溶融焼入れ法
によると、瞬時になされる被処理部材表層の溶融と凝固
によって該部分のオ−ステナイト化も瞬時に達成され、
そのまま瞬時に焼入れがなされるので、従来法のような
不都合は生じない。即ち、本発明に係る前記融焼入れ法
によれば、処理時間の短縮が叶うだけではなく、短時間
(瞬時)に表層のオ−ステナイト化が達成できるので処
理部周辺への伝導熱が少なくなってその部位が温度上昇
するのが抑えられ、そのため“被処理部材の形状精度悪
化の防止",“熱の蓄積による自己冷却能の低下”を図る
ことができる。そして、自己放冷等によって溶融・凝固
部は短時間(殆ど瞬時)でマルテンサイトの変態開始温
度以下に冷却されるので、“焼入硬化層深さの減少",
“ベイナイト形成による焼入れ不良の防止”等も図るこ
とができる。従って、薄肉部材に対しても的確な処理を
行うことができ、処理部以外には良好な塑性加工性と形
状精度とを維持させつつ、高硬度で耐摩耗性に優れる表
面部位を備えた鋼部材を得ることが可能となる。しか
も、鋼部材の被処理部表層は一旦溶融せしめられた後に
再凝固させられるので、重力や表面張力の作用等によっ
て該部位の表面粗さの改善(平滑化)もなされることと
なる。
によると、瞬時になされる被処理部材表層の溶融と凝固
によって該部分のオ−ステナイト化も瞬時に達成され、
そのまま瞬時に焼入れがなされるので、従来法のような
不都合は生じない。即ち、本発明に係る前記融焼入れ法
によれば、処理時間の短縮が叶うだけではなく、短時間
(瞬時)に表層のオ−ステナイト化が達成できるので処
理部周辺への伝導熱が少なくなってその部位が温度上昇
するのが抑えられ、そのため“被処理部材の形状精度悪
化の防止",“熱の蓄積による自己冷却能の低下”を図る
ことができる。そして、自己放冷等によって溶融・凝固
部は短時間(殆ど瞬時)でマルテンサイトの変態開始温
度以下に冷却されるので、“焼入硬化層深さの減少",
“ベイナイト形成による焼入れ不良の防止”等も図るこ
とができる。従って、薄肉部材に対しても的確な処理を
行うことができ、処理部以外には良好な塑性加工性と形
状精度とを維持させつつ、高硬度で耐摩耗性に優れる表
面部位を備えた鋼部材を得ることが可能となる。しか
も、鋼部材の被処理部表層は一旦溶融せしめられた後に
再凝固させられるので、重力や表面張力の作用等によっ
て該部位の表面粗さの改善(平滑化)もなされることと
なる。
【0025】また、本発明に係る前記溶融焼入れ法を実
施する際、高密度エネルギ−ビ−ム照射条件の調整(出
力の低減,照射時間を多少長くする等)などによって鋼
部材表層に形成させる局部的溶融層を“全溶融層”とこ
の下に隣接する“不完全溶融層”とで構成された状態に
制御した場合には、この状態から自己放冷等による冷却
がなされると、前記不完全溶融層の部位が緩衝材の役割
を担って低温変態(マルテンサイト変態)時の歪を吸収
するためと考えられるが、ややもすると被処理部(溶融
凝固部)の表面に生じがちな“波打ち状の平滑不良”も
安定して防止される。もっとも、この“波打ち状の平滑
不良”は焼入硬化層深さが小さいことによっても改善さ
れる。なお、前記半溶融層は、処理後の溶融焼入れ部材
の断面観察によって確認することができる。
施する際、高密度エネルギ−ビ−ム照射条件の調整(出
力の低減,照射時間を多少長くする等)などによって鋼
部材表層に形成させる局部的溶融層を“全溶融層”とこ
の下に隣接する“不完全溶融層”とで構成された状態に
制御した場合には、この状態から自己放冷等による冷却
がなされると、前記不完全溶融層の部位が緩衝材の役割
を担って低温変態(マルテンサイト変態)時の歪を吸収
するためと考えられるが、ややもすると被処理部(溶融
凝固部)の表面に生じがちな“波打ち状の平滑不良”も
安定して防止される。もっとも、この“波打ち状の平滑
不良”は焼入硬化層深さが小さいことによっても改善さ
れる。なお、前記半溶融層は、処理後の溶融焼入れ部材
の断面観察によって確認することができる。
【0026】ただ、何れにしても、高密度エネルギービ
−ム照射で加熱することによる鋼部材表層部の溶融は、
オ−ステナイト化温度(融点直下の温度)に保持した場
合における“オーステナイト変態終了時間”よりも短い
時間の加熱によって実施するのが好ましい。このような
“オーステナイト変態終了時間”以内の短時間加熱であ
っても十分に表層部の溶融が可能であり、しかもこの融
体を凝固させることによって瞬時に均一なオ−ステナイ
ト組織が達成されるので、通常熱処理におけるようにオ
ーステナイト変態終了時間を待たなくても焼入れ処理が
可能である。従って、加熱時間の短縮は処理の能率化に
つながり、また長時間加熱によって起きる熱蓄積が及ぼ
す前述の不都合を回避する結果にもなる。
−ム照射で加熱することによる鋼部材表層部の溶融は、
オ−ステナイト化温度(融点直下の温度)に保持した場
合における“オーステナイト変態終了時間”よりも短い
時間の加熱によって実施するのが好ましい。このような
“オーステナイト変態終了時間”以内の短時間加熱であ
っても十分に表層部の溶融が可能であり、しかもこの融
体を凝固させることによって瞬時に均一なオ−ステナイ
ト組織が達成されるので、通常熱処理におけるようにオ
ーステナイト変態終了時間を待たなくても焼入れ処理が
可能である。従って、加熱時間の短縮は処理の能率化に
つながり、また長時間加熱によって起きる熱蓄積が及ぼ
す前述の不都合を回避する結果にもなる。
【0027】ところで、電子ビ−ム等の高密度エネルギ
−ビ−ムは偏向レンズ等を使えば照射箇所を複数箇所に
分配させ得ることが知られている。従って、前述した本
発明に係る表面処理方法を実施するに際し、高密度エネ
ルギ−ビ−ムを分配して被処理部表層の複数箇所を同時
に溶融状態とすることもできる。そして、このようにす
れば複数領域の処理を一操作で実施することができ、処
理能率が一層高まる。また、この場合、熱伝導によって
被熱処理部材が広範囲にわたって温度上昇することがな
いので、各処理領域間での熱的な干渉がなく、互いの焼
入硬化箇所に不本意な焼きもどし,焼きなまし等が発生
することもない。
−ビ−ムは偏向レンズ等を使えば照射箇所を複数箇所に
分配させ得ることが知られている。従って、前述した本
発明に係る表面処理方法を実施するに際し、高密度エネ
ルギ−ビ−ムを分配して被処理部表層の複数箇所を同時
に溶融状態とすることもできる。そして、このようにす
れば複数領域の処理を一操作で実施することができ、処
理能率が一層高まる。また、この場合、熱伝導によって
被熱処理部材が広範囲にわたって温度上昇することがな
いので、各処理領域間での熱的な干渉がなく、互いの焼
入硬化箇所に不本意な焼きもどし,焼きなまし等が発生
することもない。
【0028】なお、これらの場合、“溶融部の急冷”は
自然放冷を行うだけで達成できるので操作が簡単である
が、水冷等の強制冷却も適用できることは既に述べた通
りである。ここで、急冷効果をより高めるためには、鋼
部材全体の熱容量が被処理部の熱容量の4倍以上となる
ように設定するのが良い。このようにすれば、溶融部か
ら母材部への抜熱がより速やかになされて急冷効果は一
層確実となる。そのため、更に薄肉の鋼部材に対して安
定な処理を行うことも可能となる。この効果は自然放冷
を採用した場合に一段と顕著である。また、鋼部材の肉
厚が一様である場合には、この鋼部材の肉厚を溶融部深
さの4倍以上となるように設定すれば、上記熱容量規制
と同様の効果を得ることができる。
自然放冷を行うだけで達成できるので操作が簡単である
が、水冷等の強制冷却も適用できることは既に述べた通
りである。ここで、急冷効果をより高めるためには、鋼
部材全体の熱容量が被処理部の熱容量の4倍以上となる
ように設定するのが良い。このようにすれば、溶融部か
ら母材部への抜熱がより速やかになされて急冷効果は一
層確実となる。そのため、更に薄肉の鋼部材に対して安
定な処理を行うことも可能となる。この効果は自然放冷
を採用した場合に一段と顕著である。また、鋼部材の肉
厚が一様である場合には、この鋼部材の肉厚を溶融部深
さの4倍以上となるように設定すれば、上記熱容量規制
と同様の効果を得ることができる。
【0029】そして、表面処理鋼部材に係る本発明は
「鋼部材を、 母材金属が溶融し急冷凝固した表層部(溶
融焼入れ部)を備えて成る構成にしたこと」を特徴とし
ているが、そのため、本発明に係る表面処理鋼部材は溶
融焼入れ表層部が高硬度となっていて高い耐摩耗性等を
示し、一方、溶融焼入れ表層部以外の部分においては焼
入硬化がなされることがないので良好な塑性加工性を示
す。なお、このような表面処理鋼部材は、肉厚の薄い板
状部材を素材とした場合にも再現性良く安定して得られ
ることは先に述べた通りである。従って、本発明に係る
表面処理鋼部材は、局所(例えば表層のみあるいは表層
の一部のみ)に耐摩耗性部位が必要で、かつその他の部
位に良好な塑性加工性が求められる薄肉部品等の用途に
好適なものである。
「鋼部材を、 母材金属が溶融し急冷凝固した表層部(溶
融焼入れ部)を備えて成る構成にしたこと」を特徴とし
ているが、そのため、本発明に係る表面処理鋼部材は溶
融焼入れ表層部が高硬度となっていて高い耐摩耗性等を
示し、一方、溶融焼入れ表層部以外の部分においては焼
入硬化がなされることがないので良好な塑性加工性を示
す。なお、このような表面処理鋼部材は、肉厚の薄い板
状部材を素材とした場合にも再現性良く安定して得られ
ることは先に述べた通りである。従って、本発明に係る
表面処理鋼部材は、局所(例えば表層のみあるいは表層
の一部のみ)に耐摩耗性部位が必要で、かつその他の部
位に良好な塑性加工性が求められる薄肉部品等の用途に
好適なものである。
【0030】ところで、本発明に係る上記表面処理鋼部
材は、溶融焼入れ部の熱容量が部材全体の熱容量の 1/4
以下となるように設計するか、あるいは鋼部材が一様肉
厚のものであれば溶融焼入れ部の深さが部材肉厚の 1/4
以下となるように設計するのが、表面処理鋼部材を薄肉
化する上で好ましい。勿論、従来の電子ビ−ム表面焼入
れ部材等では熱伝導の関係で焼入れ部深さを極端に浅く
することは不可能であるが、前記溶融焼入れによれば、
冷却が速やかになされるので極めて浅い焼入れ部深さを
実現でき、そのため従来にない薄肉の部分的表面焼入れ
製品を高精度を保ちつつ提供することが可能となる。
材は、溶融焼入れ部の熱容量が部材全体の熱容量の 1/4
以下となるように設計するか、あるいは鋼部材が一様肉
厚のものであれば溶融焼入れ部の深さが部材肉厚の 1/4
以下となるように設計するのが、表面処理鋼部材を薄肉
化する上で好ましい。勿論、従来の電子ビ−ム表面焼入
れ部材等では熱伝導の関係で焼入れ部深さを極端に浅く
することは不可能であるが、前記溶融焼入れによれば、
冷却が速やかになされるので極めて浅い焼入れ部深さを
実現でき、そのため従来にない薄肉の部分的表面焼入れ
製品を高精度を保ちつつ提供することが可能となる。
【0031】続いて、本発明を、「前記図1及び図2で
示したトルクコンバ−タの構成部材である“ロックアッ
プクラッチピストン41”の平板部411 と立ち上がり部41
2 のスプリング52との対向面(即ち図に示す環状の被処
理領域AR1 又はAR2 )に電子ビーム照射による溶融焼入
れを施す例」に基づいてより具体的に説明する。
示したトルクコンバ−タの構成部材である“ロックアッ
プクラッチピストン41”の平板部411 と立ち上がり部41
2 のスプリング52との対向面(即ち図に示す環状の被処
理領域AR1 又はAR2 )に電子ビーム照射による溶融焼入
れを施す例」に基づいてより具体的に説明する。
【0032】
【実施例】まず、図4に示す溶融焼入れ装置を用意し
た。この溶融焼入装置おいて、符号81は密封構造を有す
る真空加工室ケース、82は該真空加工室ケース81によっ
て包囲された真空加工室、83は該真空加工室82内に真空
を形成するための真空排気系である。前記真空加工室82
内には、被処理物支持軸84が軸芯回りに回転自在に配設
され、前記真空加工室ケース81の外に配設されたモータ
85によって回転させられる。また、前記真空加工室ケー
ス81には、ビーム管86が接続され、該ビーム管86の一端
に電子ビームガン87が配設される。そして、該電子ビー
ムガン87の下流側に、電子ビームガン87において発生さ
せられた電子ビームBMを集束させる集束レンズ88が、該
集束レンズ88の下流側に電子ビームBMを偏向して照射位
置を変える偏向レンズ89が配設される。また、前記電子
ビームガン87には高電圧電源90が接続され、前記集束レ
ンズ88及び偏向レンズ89には、EB集束・偏向制御装置
91が接続されるとともに、前記真空排気系83,モ−タ8
5,高電圧電源90及びEB集束・偏向制御装置91を総合
制御装置92によって制御することができるようになって
いる。
た。この溶融焼入装置おいて、符号81は密封構造を有す
る真空加工室ケース、82は該真空加工室ケース81によっ
て包囲された真空加工室、83は該真空加工室82内に真空
を形成するための真空排気系である。前記真空加工室82
内には、被処理物支持軸84が軸芯回りに回転自在に配設
され、前記真空加工室ケース81の外に配設されたモータ
85によって回転させられる。また、前記真空加工室ケー
ス81には、ビーム管86が接続され、該ビーム管86の一端
に電子ビームガン87が配設される。そして、該電子ビー
ムガン87の下流側に、電子ビームガン87において発生さ
せられた電子ビームBMを集束させる集束レンズ88が、該
集束レンズ88の下流側に電子ビームBMを偏向して照射位
置を変える偏向レンズ89が配設される。また、前記電子
ビームガン87には高電圧電源90が接続され、前記集束レ
ンズ88及び偏向レンズ89には、EB集束・偏向制御装置
91が接続されるとともに、前記真空排気系83,モ−タ8
5,高電圧電源90及びEB集束・偏向制御装置91を総合
制御装置92によって制御することができるようになって
いる。
【0033】次に、上記溶融焼入装置を使い、成形が容
易な低炭素鋼(S22C)で造られたロックアップクラ
ッチピストン材の被処理領域AR1 又はAR2(図1及び図2
を参照)の溶融焼入れを実施した。なお、溶融焼入れ
は、溶融焼入装置の被加工物支持軸85上に中心を合わせ
てロックアップクラッチピストン材を支持し、これを中
心軸回りに回転させつつ被熱処理領域AR1 又はAR2 に電
子ビームBM(出力:4.6KW)を照射する手法で行われ
た。ここで、被熱処理領域の回転による移動速度は16.7
m/minに調整された。
易な低炭素鋼(S22C)で造られたロックアップクラ
ッチピストン材の被処理領域AR1 又はAR2(図1及び図2
を参照)の溶融焼入れを実施した。なお、溶融焼入れ
は、溶融焼入装置の被加工物支持軸85上に中心を合わせ
てロックアップクラッチピストン材を支持し、これを中
心軸回りに回転させつつ被熱処理領域AR1 又はAR2 に電
子ビームBM(出力:4.6KW)を照射する手法で行われ
た。ここで、被熱処理領域の回転による移動速度は16.7
m/minに調整された。
【0034】さて、ロックアップクラッチピストン素材
の被処理部に電子ビーム照射がなされると該部位の表層
は1500℃以上の溶融温度に加熱されて溶融するが、
ロックアップクラッチピストン素材が回転しているため
に電子ビーム照射部位は円周方向の隣接位置へ連続的に
移動する。そのため、表層溶融部の熱が急速(殆ど瞬
時)に母材部へ奪われて凝固し(この時点で瞬時に溶融
・凝固部はオ−ステナイト組織となる)、更にこの自己
放冷によって焼入れがなされる。
の被処理部に電子ビーム照射がなされると該部位の表層
は1500℃以上の溶融温度に加熱されて溶融するが、
ロックアップクラッチピストン素材が回転しているため
に電子ビーム照射部位は円周方向の隣接位置へ連続的に
移動する。そのため、表層溶融部の熱が急速(殆ど瞬
時)に母材部へ奪われて凝固し(この時点で瞬時に溶融
・凝固部はオ−ステナイト組織となる)、更にこの自己
放冷によって焼入れがなされる。
【0035】つまり、この処理を通じての被処理部の組
織は、図5で示す“鉄−炭素系平衡状態図”に記入した
一点鎖線L1に沿って変化する。まず、電子ビーム照射に
よって常温組織(フェライト・パーライト)が加熱され
溶融せしめられて融体Lになり、続く自己放冷により凝
固してオーステナイトになる。そして、オーステナイト
になった直後、自己放冷による更なる急冷がなされて焼
きが入り低温変態組織であるマルテンサイトになる。従
って、被熱処理部の表面の硬度を高くすることができる
ので、耐摩耗性を向上させることができる。
織は、図5で示す“鉄−炭素系平衡状態図”に記入した
一点鎖線L1に沿って変化する。まず、電子ビーム照射に
よって常温組織(フェライト・パーライト)が加熱され
溶融せしめられて融体Lになり、続く自己放冷により凝
固してオーステナイトになる。そして、オーステナイト
になった直後、自己放冷による更なる急冷がなされて焼
きが入り低温変態組織であるマルテンサイトになる。従
って、被熱処理部の表面の硬度を高くすることができる
ので、耐摩耗性を向上させることができる。
【0036】なお、図6は、このようにして得られた溶
融焼入れ部材断面の組織を示したものであり、また図7
は該断面に関する硬度分布の測定結果をグラフで表した
ものである。これらの結果からも、本発明に係る溶融焼
入れ法によった場合には、非常に浅いにもかかわらず十
分な耐摩耗性を示す高硬度で平滑な焼入表層が得られる
ことを確認できる。また、図6からは、全溶融層と該全
溶融層に隣接した溶融部と溶融しない加熱部とが混在す
る不完全溶融層とが得られることも確認できる。
融焼入れ部材断面の組織を示したものであり、また図7
は該断面に関する硬度分布の測定結果をグラフで表した
ものである。これらの結果からも、本発明に係る溶融焼
入れ法によった場合には、非常に浅いにもかかわらず十
分な耐摩耗性を示す高硬度で平滑な焼入表層が得られる
ことを確認できる。また、図6からは、全溶融層と該全
溶融層に隣接した溶融部と溶融しない加熱部とが混在す
る不完全溶融層とが得られることも確認できる。
【0037】ところで、既に述べたことであるが、前記
被処理部に該部分を溶融させない通常の電子ビ−ム表面
焼入れを施した場合には、前記図3のT−T−A曲線図
から分かるように、加熱温度を高くするほど“被処理部
の組織をオーステナイトにするのに必要なオーステナイ
ト変態時間”が短くなるものの、それでもオーステナイ
ト化が終了するまでにかなりの時間が必要である。とこ
ろが、本発明に係る溶融焼入れを施した場合は、150
0℃以上の溶融温度へ短時間(瞬時)に加熱して溶融し
放冷するだけで被処理部の組織を瞬時にオーステナイト
にすることができ、また自己放冷により引続き直ちに焼
入れがなされてしまう。この場合、加熱から0.05秒程度
で溶融させて焼入れしても、また溶融時間を 0.5秒程度
としても、あるいは溶融後に一定時間だけ溶融状態に保
持してから(例えば加熱から1秒程度経ってから)焼入
れを行っても同じ結果となるが、処理効率や熱伝達によ
る悪影響等を考慮すれば、0.05秒以内のわずかな時間で
溶融させ焼入れするようにするのが有利である。つま
り、短時間処理によると熱伝導により被処理部周辺の温
度が上昇するのを抑制することができるので、被処理部
材に蓄積される熱量がその分少なくなり、自己放冷効果
を高くすることができる上、熱歪を生じる等の弊害も抑
えられる。
被処理部に該部分を溶融させない通常の電子ビ−ム表面
焼入れを施した場合には、前記図3のT−T−A曲線図
から分かるように、加熱温度を高くするほど“被処理部
の組織をオーステナイトにするのに必要なオーステナイ
ト変態時間”が短くなるものの、それでもオーステナイ
ト化が終了するまでにかなりの時間が必要である。とこ
ろが、本発明に係る溶融焼入れを施した場合は、150
0℃以上の溶融温度へ短時間(瞬時)に加熱して溶融し
放冷するだけで被処理部の組織を瞬時にオーステナイト
にすることができ、また自己放冷により引続き直ちに焼
入れがなされてしまう。この場合、加熱から0.05秒程度
で溶融させて焼入れしても、また溶融時間を 0.5秒程度
としても、あるいは溶融後に一定時間だけ溶融状態に保
持してから(例えば加熱から1秒程度経ってから)焼入
れを行っても同じ結果となるが、処理効率や熱伝達によ
る悪影響等を考慮すれば、0.05秒以内のわずかな時間で
溶融させ焼入れするようにするのが有利である。つま
り、短時間処理によると熱伝導により被処理部周辺の温
度が上昇するのを抑制することができるので、被処理部
材に蓄積される熱量がその分少なくなり、自己放冷効果
を高くすることができる上、熱歪を生じる等の弊害も抑
えられる。
【0038】従って、前記通常の電子ビ−ム表面焼入れ
の場合にはロックアップクラッチピストン材全体の熱容
量を被処理部の熱容量の8倍以上に設定しないと(即ち
部材の肉厚を厚くしないと)処理が不可能であるのに対
して、本発明法の場合には部材全体の熱容量が小さくて
も処理が可能であり、その結果、ロックアップクラッチ
ピストン材の肉厚を小さくすることができる。例えば、
本発明法によると“通常の電子ビ−ム表面焼入れにおけ
る限界肉厚”の 1/2程度の被処理部材でも処理すること
が可能である。
の場合にはロックアップクラッチピストン材全体の熱容
量を被処理部の熱容量の8倍以上に設定しないと(即ち
部材の肉厚を厚くしないと)処理が不可能であるのに対
して、本発明法の場合には部材全体の熱容量が小さくて
も処理が可能であり、その結果、ロックアップクラッチ
ピストン材の肉厚を小さくすることができる。例えば、
本発明法によると“通常の電子ビ−ム表面焼入れにおけ
る限界肉厚”の 1/2程度の被処理部材でも処理すること
が可能である。
【0039】また、本発明法によれば、ロックアップク
ラッチピストン材の被処理部をわずかな時間で処理する
ことができる(従ってマルテンサイトの変態開始温度以
下に冷却する時間も極めて短い)ので、図8で示す炭素
鋼のT−T−T曲線図から分かるように、被処理部にベ
ーナイト等の組織が形成されることがなく、焼入不良が
発生するのを防止することができる。
ラッチピストン材の被処理部をわずかな時間で処理する
ことができる(従ってマルテンサイトの変態開始温度以
下に冷却する時間も極めて短い)ので、図8で示す炭素
鋼のT−T−T曲線図から分かるように、被処理部にベ
ーナイト等の組織が形成されることがなく、焼入不良が
発生するのを防止することができる。
【0040】しかも、本発明法に従って処理された硬化
部位は、表層が一旦溶融した後に凝固しているため、表
面の粗さが著しく改善されている。即ち、図9は本発明
法に従って処理された前記ロックアップクラッチピスト
ン材の処理部位と非処理部位との表面粗さ(Rz)を比較
したグラフであるが、この図9からも、本発明法に従っ
て処理された部位では表面粗さが顕著に改善されて平滑
化していることが分かる。
部位は、表層が一旦溶融した後に凝固しているため、表
面の粗さが著しく改善されている。即ち、図9は本発明
法に従って処理された前記ロックアップクラッチピスト
ン材の処理部位と非処理部位との表面粗さ(Rz)を比較
したグラフであるが、この図9からも、本発明法に従っ
て処理された部位では表面粗さが顕著に改善されて平滑
化していることが分かる。
【0041】前述のように、本発明法に従って処理され
たロックアップクラッチピストン材は、所望部位のみが
高硬度となって優れた耐摩耗性が付与され、該硬化部位
以外は硬度が高くならないので、これに対して例えば塑
性かしめ(ダボかしめやトックスかしめ等)といった各
種の塑性加工を施すことができる。しかも、処理の際に
部材の広範囲にわたって温度が上昇することがないので
精度変形が発生することもなく(例えばロックアップク
ラッチピストンの“トルクコンバ−タに組み込んだ際の
フロントカバー側の面”に精度変形が発生することがな
いために摩擦材を取付ける面の平坦度が確保される)、
従ってロックアップクラッチ装置を円滑に係合させるこ
とができる。
たロックアップクラッチピストン材は、所望部位のみが
高硬度となって優れた耐摩耗性が付与され、該硬化部位
以外は硬度が高くならないので、これに対して例えば塑
性かしめ(ダボかしめやトックスかしめ等)といった各
種の塑性加工を施すことができる。しかも、処理の際に
部材の広範囲にわたって温度が上昇することがないので
精度変形が発生することもなく(例えばロックアップク
ラッチピストンの“トルクコンバ−タに組み込んだ際の
フロントカバー側の面”に精度変形が発生することがな
いために摩擦材を取付ける面の平坦度が確保される)、
従ってロックアップクラッチ装置を円滑に係合させるこ
とができる。
【0042】ところで、前記図4で示した溶融焼入れ装
置では、電子ビームガン87から発射された電子ビームBM
を偏向レンズ89によって偏向させ、照射箇所を任意に変
更することができるので、同時に並行して複数箇所を溶
融焼入れ処理することができる。図10は、前記ロックア
ップクラッチピストン41の2つの表層硬化処理領域を説
明したものであり、ロックアップクラッチピストン41の
平板部411 及び立上がり部412 に設定される表層硬化処
理領域(被処理領域)AR1, AR2は、何れもロックアップ
クラッチピストン41の全周にわたっている。この2つの
被処理領域を同時に並行して溶融焼入れ処理するには、
図11で示すように電子ビームBMを偏向させれば良い。
置では、電子ビームガン87から発射された電子ビームBM
を偏向レンズ89によって偏向させ、照射箇所を任意に変
更することができるので、同時に並行して複数箇所を溶
融焼入れ処理することができる。図10は、前記ロックア
ップクラッチピストン41の2つの表層硬化処理領域を説
明したものであり、ロックアップクラッチピストン41の
平板部411 及び立上がり部412 に設定される表層硬化処
理領域(被処理領域)AR1, AR2は、何れもロックアップ
クラッチピストン41の全周にわたっている。この2つの
被処理領域を同時に並行して溶融焼入れ処理するには、
図11で示すように電子ビームBMを偏向させれば良い。
【0043】即ち、図11は、上記2つの被処理領域を同
時に並行して処理する場合の電子ビームの照射状態を示
しており、前記電子ビームガン87からの電子ビームBMは
図示を省略した偏向レンズによって偏向され、被処理領
域AR1, AR2へ交互に照射されている。そして、このよう
な手法によって被処理領域AR1, AR2は同時に並行して溶
融焼入れされる。
時に並行して処理する場合の電子ビームの照射状態を示
しており、前記電子ビームガン87からの電子ビームBMは
図示を省略した偏向レンズによって偏向され、被処理領
域AR1, AR2へ交互に照射されている。そして、このよう
な手法によって被処理領域AR1, AR2は同時に並行して溶
融焼入れされる。
【0044】この時における電子ビームBMの照射部軌跡
の1例を図12に示す。図12に示す例では、電子ビームBM
は2つの円偏向軌跡C1,C2に従って照射される。この場
合、各円偏向軌跡C1,C2によってそれぞれ被熱処理領域
AR1, AR2に電子ビームBMが照射され、その間中、被処理
部材たるロックアップクラッチピストン材はその中心軸
回りに回転させられる。従って、被処理領域AR1, AR2に
おける電子ビームBMの軌跡は矢印H方向に移動する。
の1例を図12に示す。図12に示す例では、電子ビームBM
は2つの円偏向軌跡C1,C2に従って照射される。この場
合、各円偏向軌跡C1,C2によってそれぞれ被熱処理領域
AR1, AR2に電子ビームBMが照射され、その間中、被処理
部材たるロックアップクラッチピストン材はその中心軸
回りに回転させられる。従って、被処理領域AR1, AR2に
おける電子ビームBMの軌跡は矢印H方向に移動する。
【0045】なお、各円偏向軌跡C1,C2は、x軸方向及
びy軸方向において正弦波の偏向波形を発生させ、その
偏向の組合せによって形成される。また、各円偏向軌跡
C1,C2を切り換え、被処理領域AR1, AR2において交互に
電子ビームBMを照射するために、図13に示すような偏向
波形w1 が発生させられ、該偏向波形w1 と前記y軸方
向における偏向波形とが重ねられる。従って、電圧VE
が正の値を採る時間t1 の間に被熱処理領域AR1 に電子
ビームBMが照射され、電圧VE が負の値を採る時間t2
の間に被熱処理領域AR2 に電子ビームBMが照射される。
びy軸方向において正弦波の偏向波形を発生させ、その
偏向の組合せによって形成される。また、各円偏向軌跡
C1,C2を切り換え、被処理領域AR1, AR2において交互に
電子ビームBMを照射するために、図13に示すような偏向
波形w1 が発生させられ、該偏向波形w1 と前記y軸方
向における偏向波形とが重ねられる。従って、電圧VE
が正の値を採る時間t1 の間に被熱処理領域AR1 に電子
ビームBMが照射され、電圧VE が負の値を採る時間t2
の間に被熱処理領域AR2 に電子ビームBMが照射される。
【0046】この場合、既に述べたように、熱伝導によ
るロックアップクラッチピストン材の広範囲にわたって
の温度上昇はないので、各被処理領域AR1, AR2間の熱的
な干渉がなく、不本意な焼きもどし,焼きなまし等が発
生することはない。また、複数の被処理領域AR1, AR2に
同時に溶融焼入れを施すことができるので熱処理時間を
短縮することもできる。
るロックアップクラッチピストン材の広範囲にわたって
の温度上昇はないので、各被処理領域AR1, AR2間の熱的
な干渉がなく、不本意な焼きもどし,焼きなまし等が発
生することはない。また、複数の被処理領域AR1, AR2に
同時に溶融焼入れを施すことができるので熱処理時間を
短縮することもできる。
【0047】ところで、ロックアップクラッチピストン
の立上がり部412 においてはスプリング52の遠心力が加
わるので耐摩耗性を高くする必要があるのに対して、ロ
ックアップクラッチピストンの平板部411 においてはス
プリング52の遠心力は加わらないのでロックアップクラ
ッチピストンの立上がり部412 ほど耐摩耗性を高くする
必要がない。そこで、前記偏向波形w1 の時間t1 を短
く、時間t2 を長く設定することによって、被熱処理領
域AR1 を被熱処理領域AR2 より軟らかくすることができ
る。従って、溶融焼入れの消費エネルギーを小さくする
ことができるだけでなく、処理時間を短くすることがで
きる。
の立上がり部412 においてはスプリング52の遠心力が加
わるので耐摩耗性を高くする必要があるのに対して、ロ
ックアップクラッチピストンの平板部411 においてはス
プリング52の遠心力は加わらないのでロックアップクラ
ッチピストンの立上がり部412 ほど耐摩耗性を高くする
必要がない。そこで、前記偏向波形w1 の時間t1 を短
く、時間t2 を長く設定することによって、被熱処理領
域AR1 を被熱処理領域AR2 より軟らかくすることができ
る。従って、溶融焼入れの消費エネルギーを小さくする
ことができるだけでなく、処理時間を短くすることがで
きる。
【0048】更に、図14は、被処理領域AR1, AR2を同時
に並行して溶融焼入れするための電子ビームBMの照射部
軌跡の別例を示している。この場合には、二つの面偏向
軌跡C3,C4によって電子ビームBMが照射される。つま
り、各面偏向軌跡C3,C4によってそれぞれ被処理領域AR
1, AR2に電子ビームBMが照射され、その間中、被処理部
材たるロックアップクラッチピストン材はその中心軸回
りに回転させられる。従って、この場合も被処理領域AR
1, AR2における電子ビームBMの軌跡は矢印H方向に移動
する。
に並行して溶融焼入れするための電子ビームBMの照射部
軌跡の別例を示している。この場合には、二つの面偏向
軌跡C3,C4によって電子ビームBMが照射される。つま
り、各面偏向軌跡C3,C4によってそれぞれ被処理領域AR
1, AR2に電子ビームBMが照射され、その間中、被処理部
材たるロックアップクラッチピストン材はその中心軸回
りに回転させられる。従って、この場合も被処理領域AR
1, AR2における電子ビームBMの軌跡は矢印H方向に移動
する。
【0049】なお、各面偏向軌跡C3,C4はx軸方向及び
y軸方向において三角波の偏向電圧を発生させることに
よって形成される。また、各面偏向軌跡C3,C4を切り換
え、被処理領域AR1, AR2において電子ビームBMを照射す
るために、図15に示すような偏向波形w1 と前記x軸方
向及びy軸方向における三角波とが重ねられる。勿論、
円偏向と面偏向とを組み合わせたり、線,楕円等の軌跡
をたどるように電子ビームBMを偏向させたりすることも
できる。
y軸方向において三角波の偏向電圧を発生させることに
よって形成される。また、各面偏向軌跡C3,C4を切り換
え、被処理領域AR1, AR2において電子ビームBMを照射す
るために、図15に示すような偏向波形w1 と前記x軸方
向及びy軸方向における三角波とが重ねられる。勿論、
円偏向と面偏向とを組み合わせたり、線,楕円等の軌跡
をたどるように電子ビームBMを偏向させたりすることも
できる。
【0050】ところで、この実施例ではトルクコンバ−
タのロックアップクラッチピストン材を処理する例を説
明したが、多板摩擦係合装置におけるプレ−ト摺動部,
部材同士又はスナップリング等による結合部,オイルポ
ンププレ−ト,シ−ルリング等、表層部を全部又は部分
的に硬化させる必要がある鋼部材であれば何れのもので
あっても本発明を適用することができることは言うまで
もない。
タのロックアップクラッチピストン材を処理する例を説
明したが、多板摩擦係合装置におけるプレ−ト摺動部,
部材同士又はスナップリング等による結合部,オイルポ
ンププレ−ト,シ−ルリング等、表層部を全部又は部分
的に硬化させる必要がある鋼部材であれば何れのもので
あっても本発明を適用することができることは言うまで
もない。
【図1】トルクコンバータの1例に係る縦断面図であ
る。
る。
【図2】図1に示すトルクコンバータの要部に係る一部
破断平面図である。
破断平面図である。
【図3】炭素鋼のT−T−A曲線図である。
【図4】本発明で使用する溶融焼入装置例の説明図であ
る。
る。
【図5】鉄−炭素系平衡状態図である。
【図6】溶融焼入れ部材断面の金属組織写真図である。
【図7】溶融焼入れ部材断面の硬度分布を示したグラフ
である。
である。
【図8】炭素鋼のT−T−T曲線図である。
【図9】溶融焼入れ部と溶融焼入れを施さない部位との
表面粗さ(Rz)を比較したグラフである。
表面粗さ(Rz)を比較したグラフである。
【図10】ロックアップクラッチピストンの被処理領域
を説明した図である。
を説明した図である。
【図11】2領域に並行して電子ビーム照射している状
態を示す図である。
態を示す図である。
【図12】電子ビームの照射部軌跡の1例に関する説明
図である。
図である。
【図13】電子ビーム照射の偏向波形例を示す図であ
る。
る。
【図14】電子ビームの照射部軌跡の別例に関する説明
図である。
図である。
【図12】電子ビーム照射の偏向波形の別例を示す図で
ある。
ある。
1 ポンプインペラ 2 タ−ビンランナ 3 ステ−タ 4 ロックアップクラッチ装置 41 ロックアップクラッチピストン 411 ロックアップクラッチピストンの平板部 412 ロックアップクラッチピストンの立上がり部 5 ダンパ装置 51 ドリブンプレ−ト 52 スプリング 53 スプリング 6 フロントカバ− 7 タ−ビンハブ 81 真空加工室ケ−ス 82 真空加工室 83 真空排気系 84 被処理物支持軸 85 モ−タ 86 ビ−ム管 87 電子ビ−ムガン 88 集束レンズ 89 偏向レンズ 90 高電圧電源 91 EB・集束偏向制御装置 92 総合制御装置 AR1 被処理領域 AR2 被処理領域
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年3月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】トルクコンバータの1例に係る縦断面図であ
る。
る。
【図2】図1に示すトルクコンバータの要部に係る一部
破断平面図である。
破断平面図である。
【図3】炭素鋼のT−T−A曲線図である。
【図4】本発明で使用する溶融焼入装置例の説明図であ
る。
る。
【図5】鉄−炭素系平衡状態図である。
【図6】溶融焼入れ部材断面の金属組織写真図である。
【図7】溶融焼入れ部材断面の硬度分布を示したグラフ
である。
である。
【図8】炭素鋼のT−T−T曲線図である。
【図9】溶融焼入れ部と溶融焼入れを施さない部位との
表面粗さ(Rz)を比較したグラフである。
表面粗さ(Rz)を比較したグラフである。
【図10】ロックアップクラッチピストンの被処理領域
を説明した図である。
を説明した図である。
【図11】2領域に並行して電子ビーム照射している状
態を示す図である。
態を示す図である。
【図12】電子ビームの照射部軌跡の1例に関する説明
図である。
図である。
【図13】電子ビーム照射の偏向波形例を示す図であ
る。
る。
【図14】電子ビームの照射部軌跡の別例に関する説明
図である。
図である。
【図15】電子ビーム照射の偏向波形の別例を示す図で
ある。
ある。
【符号の説明】 1 ポンプインペラ 2 タ−ビンランナ 3 ステ−タ 4 ロックアップクラッチ装置 41 ロックアップクラッチピストン 411 ロックアップクラッチピストンの平板部 412 ロックアップクラッチピストンの立上がり部 5 ダンパ装置 51 ドリブンプレ−ト 52 スプリング 53 スプリング 6 フロントカバ− 7 タ−ビンハブ 81 真空加工室ケ−ス 82 真空加工室 83 真空排気系 84 被処理物支持軸 85 モ−タ 86 ビ−ム管 87 電子ビ−ムガン 88 集束レンズ 89 偏向レンズ 90 高電圧電源 91 EB・集束偏向制御装置 92 総合制御装置 AR1 被処理領域 AR2 被処理領域
フロントページの続き (72)発明者 渡辺 好 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エィ・ダブリュ株式会社内 (72)発明者 樅山 尚久 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エィ・ダブリュ株式会社内
Claims (11)
- 【請求項1】 高密度エネルギ−ビ−ム照射によって鋼
部材の被処理部を表層のみが溶融した状態となし、続い
て該溶融部の急冷を行うことを特徴とする、鋼部材の表
面処理方法。 - 【請求項2】 溶融部が全溶融層とこれに隣接する不完
全溶融層とで構成された状態とする、請求項1に記載の
鋼部材の表面処理方法。 - 【請求項3】 被処理部表層をオ−ステナイト変態終了
時間以内の短時間で溶融状態とする、請求項1又は2に
記載の鋼部材の表面処理方法。 - 【請求項4】 照射するエネルギ−ビ−ムを複数箇所に
分配し、複数箇所の被処理部表層を同時に溶融状態とす
る、請求項1乃至3の何れかに記載の鋼部材の表面処理
方法。 - 【請求項5】 溶融部の急冷を自然放冷によって行う、
請求項1乃至4の何れかに記載の鋼部材の表面処理方
法。 - 【請求項6】 鋼部材全体の熱容量を被処理部の熱容量
の4倍以上とする、請求項1乃至5の何れかに記載の鋼
部材の表面処理方法。 - 【請求項7】 鋼部材の肉厚を溶融部深さの4倍以上と
する、請求項1乃至6の何れかに記載の鋼部材の表面処
理方法。 - 【請求項8】 母材金属が溶融し急冷凝固した表層部を
備えて成ることを特徴とする、表面処理鋼部材。 - 【請求項9】 母材金属が溶融し急冷凝固した表層部
は、その熱容量が部材全体の熱容量の 1/4以下である、
請求項8に記載の表面処理鋼部材。 - 【請求項10】 母材金属が溶融し急冷凝固した表層部
は、その深さが部材肉厚の 1/4以下である、請求項8に
記載の表面処理鋼部材。 - 【請求項11】 溶融・凝固した表層部を耐摩耗面とし
て使用するための、請求項8乃至10の何れかに記載の表
面処理鋼部材。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7345160A JPH093528A (ja) | 1995-04-17 | 1995-12-07 | 鋼部材の表面処理方法及び表面処理鋼部材 |
DE69615267T DE69615267T2 (de) | 1995-04-17 | 1996-04-15 | Verfahren zur Oberflächenbehandlung von Bauteilen aus Stahl und oberflächenbehandelte Bauteile aus Stahl |
EP96105877A EP0743369B1 (en) | 1995-04-17 | 1996-04-15 | Surface processing method for a steel member and surface processed steel member |
US08/632,805 US5961751A (en) | 1995-04-17 | 1996-04-17 | Surface processing method for a steel member and surface processed steel member |
KR1019960011551A KR960037845A (ko) | 1995-04-17 | 1996-04-17 | 강부재의 표면처리방법 및 표면처리강부재 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7-91202 | 1995-04-17 | ||
JP9120295 | 1995-04-17 | ||
JP7345160A JPH093528A (ja) | 1995-04-17 | 1995-12-07 | 鋼部材の表面処理方法及び表面処理鋼部材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH093528A true JPH093528A (ja) | 1997-01-07 |
Family
ID=26432674
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7345160A Pending JPH093528A (ja) | 1995-04-17 | 1995-12-07 | 鋼部材の表面処理方法及び表面処理鋼部材 |
Country Status (5)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US5961751A (ja) |
EP (1) | EP0743369B1 (ja) |
JP (1) | JPH093528A (ja) |
KR (1) | KR960037845A (ja) |
DE (1) | DE69615267T2 (ja) |
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1995
- 1995-12-07 JP JP7345160A patent/JPH093528A/ja active Pending
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1996
- 1996-04-15 EP EP96105877A patent/EP0743369B1/en not_active Expired - Lifetime
- 1996-04-15 DE DE69615267T patent/DE69615267T2/de not_active Expired - Fee Related
- 1996-04-17 US US08/632,805 patent/US5961751A/en not_active Expired - Fee Related
- 1996-04-17 KR KR1019960011551A patent/KR960037845A/ko not_active Application Discontinuation
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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