JPH09306507A - 溶融炭酸塩型燃料電池用電極及びその製造方法 - Google Patents

溶融炭酸塩型燃料電池用電極及びその製造方法

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JPH09306507A
JPH09306507A JP8137718A JP13771896A JPH09306507A JP H09306507 A JPH09306507 A JP H09306507A JP 8137718 A JP8137718 A JP 8137718A JP 13771896 A JP13771896 A JP 13771896A JP H09306507 A JPH09306507 A JP H09306507A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融炭酸塩型燃料電池のカソード電極の長寿
命化を図る。 【解決手段】 Ni粉1に焼結助剤2と焼結防止剤3と
を混合し、更に、結合剤4、分散剤5、空孔形成剤6を
混合工程Iで混合し、スラリー7とする。これを成形工
程IIで板状に成形した後乾燥させてテープ8にする。次
いで、脱脂工程III で脱脂して、焼成工程IVで還元雰囲
気にて高温で焼成し、多孔質体9を作る。次に、酸化工
程Vで500℃以上で昇温する過程で酸化させてカソー
ド電極10とする。焼結助剤2と焼結防止剤3を混合さ
せているので、従来のものと同じ空隙率を確保しながら
従来より高い温度で焼成でき、この影響で酸化工程によ
り表面の荒れが生じても比表面積を0.8m2 /g以下
にできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は燃料の有する化学エ
ネルギーを直接電気エネルギーに変換させるエネルギー
部門で用いる燃料電池、特に、溶融炭酸塩型燃料電池の
電極のうち、カソード電極とその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】溶融炭酸塩型燃料電池は、電解質として
溶融炭酸塩を多孔質物質にしみ込ませてなる電解質板
(タイル)をカソード(酸素極)とアノード(燃料極)
の両電極で両面から挟み、カソード側に酸化ガスを供給
すると共に、アノード側に燃料ガスを供給することによ
りカソード側とアノード側で反応が行われるようにした
ものを1セルとし、各セルをセパレータを介し積層して
スタックとするようにしてある。
【0003】上記溶融炭酸塩型燃料電池の電極のうち、
酸化ニッケル(NiO)を主成分とするカソード電極
は、従来、原料粉としてNi粉を粉末冶金的手法によ
り、Ni粉に対して1〜5重量%の結合剤、同じく1〜
5重量%の分散剤、同じく1〜5重量%の空孔形成剤、
水と混合してスラリーとした後、板状に成形し、乾燥後
に還元雰囲気で750℃の温度で焼成して、空隙率が7
0〜80%、比表面積が0.05〜0.4m2 /gの金
属多孔質体とし、次いで、電池外あるいは電池内で50
0℃以上に昇温する過程で酸化させて、空隙率が50〜
60%、比表面積が1〜2m2 /gの金属酸化物多孔質
体の電極として作り、使用するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
に製造された溶融炭酸塩型燃料電池のNiOを主成分と
するカソード電極は、比表面積が大きく、酸化ガス中の
炭酸ガスとの反応により溶融炭酸塩中にNiOが溶解す
る表面積が大きいので、溶融炭酸塩中に溶出して行く量
が多く、電池の寿命に係る大きな問題がある。すなわ
ち、NiOを主成分とするカソード電極は、酸化ガス中
の炭酸ガス(CO2 )との反応により NiO+CO2 →Ni+++CO3 -- の溶解反応を起し、多孔質体の表面から溶解して溶融炭
酸塩中に溶出して行く性質があるが、上記した従来のカ
ソード電極の場合は、溶解される表面積が大きいため、
溶解反応による溶出量が多い。
【0005】溶出したNi++は、アノード側から拡散し
て来た水素により電解質板の溶融炭酸塩中で還元されて
金属Niとなって析出し、この析出した金属Niにより
カソードとアノード間の短絡が生じ、電池の電流が電池
内部で消費されることになって電池の発電効率を低下す
るという問題があり、又、上記電解質板中での還元反応
において、炭酸塩中のNi++イオンは、炭酸塩中で飽和
することはなく、継続的にカソード電極の表面から炭酸
塩中へのNiの溶出が続くので、電池運転中にカソード
電極が減肉し、多孔質構造を粗にして脆弱化し、電池運
転中の圧縮下で破壊に至り、電池性能が劣化し、電池の
寿命が短かくなる問題がある。
【0006】そこで、本発明は、溶融炭酸塩型燃料電池
において、炭酸ガスと反応して溶解反応を起すカソード
電極の表面積を小さくして、電池を長時間にわたって高
い特性を維持することができる安定性に優れた溶融炭酸
塩型燃料電池用の電極とその製造方法を提供しようとす
るものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、電解質として溶融炭酸塩を多孔質物質に
しみ込ませてなる電解質板をカソードとアノードの両電
極で両面から挟み、カソード側に酸化ガスを供給すると
共にアノード側に燃料ガスを供給するようにしたセルを
セパレータを介し多層に積層してなる溶融炭酸塩型燃料
電池の上記カソード電極を、比表面積が0.8m2 /g
以下の多孔質電極とした構成とする。
【0008】カソード電極は、比表面積を従来の1〜2
2 /gに比して大幅に小さい0.8m2 /g以下とし
てあるので、溶融炭酸塩への反応が少なくなって、反応
によりNiの溶出量を少なくすることができる。これに
伴い電極の劣化も少なくなり、又、炭酸塩の組成変化も
少なくなって電池の劣化も少なくなり、電池の寿命を延
ばすことができる。
【0009】カソード電極の組成を、Ni粉に焼結助剤
と焼結防止剤を混合させたものとし、焼結助剤として、
高温で拡散によりNi粉に固溶するFe、Cr、Coの
如き金属粉又は合金粉を用いるか又はFeOの如き酸化
物粉又は複合酸化物粉を用い、且つ粒径を1〜20μm
として焼結し易くしているものを用い、焼結防止剤とし
て、高温で拡散によりNi粉に固溶しないか固溶しても
僅かなMgO、CaOの如き酸化物等をNi粉と分散が
良いように1〜20μmの粒径にしたものを用いるよう
にすると、従来と同じ空隙率となるように焼成するとき
の温度を従来より高い900℃以上の高温で焼成するこ
とができるので、強く焼結させることができて従来より
粉体同士の結合が強くなり、多孔質体の表面積を低下さ
せることができる。
【0010】上記多孔質体を酸化させて比表面積が0.
8m2 /g以下のカソード電極とするが、高温で焼成し
ている影響で酸化による表面の荒れが少なくなって表面
積の増加を防止できて比表面積を従来よりも小さい0.
8m2 /g以下にでき、上記のように反応面積が小さく
て溶解量を少なくできる。
【0011】又、焼成を900℃以上の高温で行うと、
粉体同士を強く結合できて粒界が少なくなり、更に粉体
の焼結位置の太さが太くなり、表面積を低下できる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。
【0013】図1は本発明の実施の一形態を示すもの
で、溶融炭酸塩型燃料電池のカソード電極を製造するプ
ロセスフローを示すものである。
【0014】原料粉としてのNi粉1に、混合工程Iで
粒径に依存するが、Ni粉に対して0.1〜15重量%
の焼結助剤2と同じくNi粉に対して0.1〜15重量
%の焼結防止剤3を添加して混合すると共に、メチルセ
ルロース系の結合剤4、アニオン系の分散剤5、電気泳
動用セルロース粉(メッシュ200〜300)の空孔形
成剤6を、ともにNi粉に対して1〜5重量%混合して
スラリー7とした後、これを成形工程IIで板状(テープ
状)に成形して乾燥させ、乾燥テープ8とするる。次
に、これを脱脂工程III で脱脂処理後、焼成工程IVにて
真空又は還元雰囲気の下で従来よりも高温(900℃以
上)で焼成して、空隙率が70〜80%、比表面積が
0.05〜0.4m2 /gの多孔質体9を作るようにす
る。
【0015】次に、上記多孔質体9を、酸化工程Vで酸
化させて空隙率が50〜65%、比表面積が0.8m2
/g以下のカソード電極10を製造するようにする。
【0016】上記酸化工程Vは、電池外酸化と電池内酸
化の2通りがあり、電池内酸化の場合は、上記NiO多
孔質体9をカソードとして電解質板に重ね合わせて電池
内に組み込み、カソード側に供給される酸化ガスにより
酸化させるようにするものであり、電池外酸化の場合と
同様に500℃以上に昇温する過程で酸化させるように
する。
【0017】上記した本発明のカソード電極の製造方法
において、焼結助剤2としては、高温で拡散によりNi
粉1と固溶し得る金属X又は金属酸化物Yを使用するよ
うにし、金属Xとしては、Fe、Cr、Co、Pd、P
t、V、Cu、Mn、Mo、Re、Ru、W、Nb、R
h、Ti(66at%以下)、Zr(28at%以下)
のいずれか1種又は複数種の金属粉又は合金粉とする。
又、金属酸化物Yとしては、FeO、Fe2 3 、Fe
3 4 、Cr2 3 、NiO、Li2 Oのいずれか1種
又は複数種の金属粉又は合金粉とする。又、粒径は1〜
20μmとする。
【0018】又、焼結防止剤3としては、高温で拡散に
よりNi粉1と固溶しないか又は固溶しても僅かな酸化
物、たとえば、MgO、CaO、Al2 3 の如き酸化
物の粉や、熱分解によりMgO、CaO、Al2 3
なるMgCO3 、CaCO3、Li2 CO3 、K2 CO
3 、Na2 CO3 の如き炭酸塩の粉や、Mg(O
H)2 、Al(OH)3 の如き水酸化物の粉を用いるよ
うにする。又、粒径は1〜20μmとする。
【0019】本発明においては、原料粉としてのNi粉
1に、焼結助剤2としてFe、Crの如き金属又はFe
O、Fe2 3 の如き金属酸化物の粉と、焼結防止剤と
してMgO、CaOの如き酸化物等の粉とを混合してい
るので、焼成工程IVで従来と同じ空隙率70〜80%と
なるように焼成する場合に、従来より高温(900℃以
上)で強く焼結させることができる。この高温で焼結さ
せることにより、従来より粉体同士の結合が強く、又、
粒界が少なくなり、更に、粉体の焼結位置の太さが太く
なり、表面積を低下させることができる。
【0020】次の酸化工程Vで酸化させると、従来の場
合では、酸化により表面が荒れて表面積が増大するが、
本発明の場合は、焼成工程IVにて高温で焼成しているた
めに、酸化による表面の荒れが少なくなり、表面積の増
加は防止され、カソード電極10の比表面積を従来のカ
ソード電極の比表面積1〜2m2 /gより大幅に小さく
することができることになり、クリプトンガスを使用し
てガスが吸着する表面積を測定するB.E.T法による
と、比表面積は0.8m2 /g以下であった。
【0021】このように酸化ガス中の炭酸ガスと反応す
る表面積が小さいカソード電極とすることができたこと
から、炭酸ガスと反応して溶解反応を起す面積が小さく
て、溶融炭酸塩中への溶出量を少なくすることができ、
これにより電極表面の変化が少なくなって電極の劣化が
少なくなり、又、溶融炭酸塩中への溶出量が少なくなる
ことから炭酸塩の組成変化も少なくなって電池性能の劣
化を防止できることになり、電池寿命を延長できる。
【0022】本発明のカソード電極は、比表面積が0.
8m2 /g以下としてあるが、これ以上の場合は、従来
のカソード電極と同様に溶融炭酸塩中への溶出量が多く
寿命が短かいことが計算によっても確認された。
【0023】次に、本発明者等が行った上記確認のため
の計算について説明する。
【0024】多孔質体であるカソード電極は、前記した
ように炭酸ガスとの反応による溶解反応により表面から
溶解するが、図2はカソード電極の比表面積の変化、す
なわち、比表面積が電池の運転時間により減少して行く
状態を、本発明のカソード電極(図中●印)と従来のカ
ソード電極(図中○印)について示すものであり、又、
図3は従来のカソードの電解質板中に溶け込んだNiの
溶出量と電池の運転時間との関係を示すものである。
【0025】従来のカソード電極の比表面積Sは、図2
のように時間Tの約−0.22乗に比例して減少する。
【0026】 S=AT-0.22 A:定数 … カソード電極の多孔質構造を円筒体の集合体と考えれ
ば、表面積は体積Vの0.5乗である。すなわち、円筒
体の半径をr、円筒体の長さをlとすれば、体積Vは、 V=πr2 l 側面の表面積Sは、 S=2πrl 故に、S=√4πlV=(4πlV)0.5 … 溶解量変化(溶解速度)は表面積変化の2乗に比例する
ので、上記式より AT-0.22 =√4πlV=(4πlV)0.5 つまり、A2 -0.22 ×2 =4πlV V=(A2 /4πl)×T-0.44 … となり、溶解量は時間の約−0.44乗に比例する。
【0027】一方、体積Vは比重ρにより重量Wに変換
できる。W=ρ×Vよって、式より W=(A2 ρ/4πl)×T-0.44 =BT-0.44 … B:定数 式を時間Tで積分すると、溶出して炭酸塩中に集積し
て行く集積速度wは、
【0028】
【数1】 となり、時間の約0.56乗に比例する。
【0029】図3は、溶出量が時間の約0.55乗に比
例していることを示しており、上記集積速度wが時間の
0.56乗に比例することとほぼ一致している。このこ
とは、多孔質構造が円筒状の集合体と考え、表面積変化
は体積変化の0.5乗であることが正しく、溶解量変化
(溶解速度)が表面積の2乗に比例することを意味して
いるので、逆に、表面積を小さくすると、比表面積の2
乗に比例して溶解量変化(溶解速度)が小さくなること
になる。
【0030】たとえば、比表面積を従来の0.8倍にす
れば、溶解速度は、2乗に比例するため従来の0.64
倍と約半分になる。そのため、カソードとアノード間で
短絡に至る時間を、従来のカソード電極の場合に比して
大幅に延ばすことができ、これだけ溶融炭酸塩型燃料電
池の寿命を延長させることができる。因に、本発明のカ
ソード電極の場合、図2から明らかなように、比表面積
は時間の約−0.067乗で減少している。
【0031】
【実施例】次に、本発明者等の行った実験結果を説明す
る。 (1) Ni粉としてNi255の粉末と、焼結助剤として
Fe粉を2重量%と焼結防止剤としてMgCO3 粉を3
重量%とを混合し、更に、メチルセルロース系の結合剤
を3重量%とアニオン系の分散剤を1重量%含む結合剤
溶液に混ぜてスラリー状にした後、板状に成形して乾燥
させた。次に、これを500℃位に加熱してメチルセル
ロースを熱分解させることにより除去後、950℃程度
で真空又は還元雰囲気で焼成して、空隙率74%の多孔
質体Ni−Fe−MgOを得た。この多孔質体の比表面
積は、0.19m2 /gであった。これをカソードとし
て溶融炭酸塩型燃料電池内に組み込み、500℃以上に
昇温させる過程で酸化ガスにより溶融炭酸塩の存在下で
酸化させ、NiO−MgO−Fe2 3 のカソード電極
とした。このカソード電極の比表面積は、0.5m2
gであった。このカソード電極を用いた燃料電池の性能
は、650℃の温度の下で標準ガス条件、すなわち、6
0℃加湿飽和とH2 /CO2 =80/20のアノードガ
スと、空気/CO2 =70/30のカソードガスを、1
50mA/cm2 負荷をかけたときに燃料利用率が75
%、酸化剤利用率が50%となるような流量とした場合
において、図4に示す如くであった。図4中、△は電
圧、□は内部抵抗分除去した電圧を示す。 (2) 従来のカソード電極の製法について行った実験結果
を説明すると、Ni粉に、焼結防止剤としてMgCO3
粉のみを3重量%添加して成形、乾燥後、950℃で焼
成したところ、空隙率74%の多孔質体が得られ、その
比表面積は0.4m2 /gであった。これを酸化させて
カソード電極としたが、このカソード電極の比表面積
は、1.4m2 /gと大きかった。又、Ni粉に、焼結
防止剤としてMgCO3 粉を3重量%と、空孔形成剤を
3重量%とを添加して、1000℃で焼成したところ、
空隙率80%の多孔質体が得られ、その比表面積は0.
6m2/gであった。これを酸化させてカソード電極と
したが、このカソード電極の比表面積は1.6m2 /g
と大きかった。
【0032】そこで、本発明者等は、Ni粉に焼結助
剤、焼結助剤と焼結防止剤を添加して多孔質体を得る実
験を行った。その結果を次に示す。 Ni粉に、焼結助剤としてFe粉を2重量%添加して
成形、乾燥後、950℃で焼成したところ、空隙率68
%の多孔質体が得られ、Fe粉添加により上記従来の実
験結果より焼結が進むことがわかった。 同様にして、Ni粉に、焼結助剤としてFe粉を2重
量%と、焼結防止剤としてMgO粉を0.5重量%とを
添加して成形、乾燥後、950℃で焼成したところ、空
隙率70%の多孔質体が得られ、MgO粉添加により
より焼結による収縮が減り、その分粉同士の結合焼結は
進んでいることがわかった。 同様にして、Ni粉に、焼結助剤としてFe粉2重量
%と、焼結防止剤としてMgO粉を0.5重量%と、空
孔形成剤を3重量%を添加して成形、乾燥後、950℃
で焼成したところ、空隙率76%の多孔質体が得られ
た。空孔形成剤のために空隙率は大きくなり、更に高温
で焼結可能となることがわかった。 Ni粉に、焼結助剤としてFe粉を2重量%と、焼結
防止剤としてMgO粉を0.5重量%及びMgCO3
を5重量%とを添加して成形、乾燥後、950℃で焼成
したところ、空隙率78%の多孔質体が得られ、その比
表面積は、0.3m2 /gであった。これを酸化させて
カソード電極としたが、このカソード電極の比表面積は
0.7m2 /gであった。焼結防止剤としてMgCO3
粉を添加することで、のように空孔形成剤を入れるよ
りも大きな空隙率のものを得ることができた。 Ni粉に、焼結助剤としてFe粉を2重量%と、焼結
防止剤としてMgO粉を0.5重量%及びLi2 CO3
粉を20重量%とを添加して成形、乾燥後、950℃で
焼成したところ、空隙率77%の多孔質体が得られ、上
記のMgCO3に代えてLi2 CO3 を上記の添加量
として入れても同様な効果があることがわかった。 (3) Ni粉に焼結助剤としてのFe粉と焼結防止剤とし
てのMgO粉を混合して成形後、焼成して得た本発明に
よる多孔質体Ni−MgO−Fe2 3 の場合(イ)
と、Ni粉にMgO粉のみを添加して成形後、焼成して
得た多孔質体Ni−MgOの場合(ロ)を、酸化後、電
池外の酸化ガス雰囲気下で650℃の溶融炭酸塩に、1
00時間浸漬した後、溶融炭酸塩中に溶け出た金属の量
を調べて比較してみた。
【0033】その結果、図5に示す如く、本発明による
低い比表面積とした(イ)の方がNiの溶出量がはるか
に少ないことがわかった。又、このときのカソード電極
の比表面積の分析値を運転時間による変化として示した
のが図6であり、●印は図5における(イ)、○印は図
5の(ロ)の場合であり、比表面積は本発明の場合には
0.8m2 /g以下で時間的にも変化が少ない結果が得
られた。
【0034】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明の溶融炭酸塩型
燃料電池用電極及びその製造方法によれば、次の如き優
れた効果を奏し得る。 (i) カソード電極は比表面積が0.8m2 /g以下とな
るようにしてあるので、従来のカソード電極の比表面積
より大幅に小さくて炭酸ガスとの反応による溶解反応で
表面から溶解する量を少なくでき、寿命を延ばすことが
できる。 (ii)原料粉としてのNi粉に焼結助剤と焼結防止剤を混
合して焼成して多孔質体とするので、従来のカソード電
極と同じ空隙率を確保しながら焼成するときの温度を高
くすることができて、強く焼結させることができ、この
影響で酸化させたときに酸化による表面の荒れを少なく
抑えることができて表面積を低下させ、比表面積を0.
8m2 /g以下という非常に小さくできる。 (iii) カソード電極の比表面積を小さくできることか
ら、溶解反応により溶融炭酸塩中に溶出する量を少なく
することができて、電極表面の変化を少なくでき、電極
の劣化も少なくなる。 (iv)溶解反応によって溶け出る量が少ないため、電池内
の溶融炭酸塩中に溶け込む量が少なくなり、炭酸塩の組
成変化が少なくなって電池の劣化も少なくなる。 (v) 溶融炭酸塩中への溶け込み量が少なくなるため、炭
酸塩中で再度金属等に還元析出する量が減少し、析出し
た金属によるカソードとアノード間の短絡による特性の
低下に至るまでの時間を飛躍的に延ばすことができる。 (vi)上記により電池を長時間にわたって高い特性を維持
することができる安定性に優れたカソード電極とするこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すシステムフロー図で
ある。
【図2】カソード電極の比表面積が運転時間により変化
する状態を示す図である。
【図3】溶出量の時間による変化を示す図である。
【図4】本発明によるカソード電極を用いた燃料電池の
性能を示す図である。
【図5】異なる比表面積とした場合の溶出量の比較を示
す図である。
【図6】図5の場合の比表面積の分析値を運転時間によ
る変化として示した図である。
【符号の説明】 I 混合工程 II 成形工程 III 脱脂工程 IV 焼成工程 V 酸化工程 1 Ni粉 2 焼結助剤 3 焼結防止剤 4 結合剤 5 分散剤 6 空孔形成剤 7 スラリー 8 乾燥テープ 9 多孔質体 10 カソード電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森田 哲行 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社東二テクニカルセンタ ー内 (72)発明者 山桝 義和 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社東二テクニカルセンタ ー内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電解質として溶融炭酸塩を多孔質物質に
    しみ込ませてなる電解質板をカソードとアノードの両電
    極で両面から挟み、カソード側に酸化ガスを供給すると
    共にアノード側に燃料ガスを供給するようにしたセルを
    セパレータを介し多層に積層してなる溶融炭酸塩型燃料
    電池の上記カソード電極を、比表面積が0.8m2 /g
    以下の多孔質電極としたことを特徴とする溶融炭酸塩型
    燃料電池用電極。
  2. 【請求項2】 カソード電極の多孔質体に、焼結助剤と
    焼結防止剤が混入されている請求項1記載の溶融炭酸塩
    型燃料電池用電極。
  3. 【請求項3】 カソード電極の多孔質体に、0.1〜1
    5重量%の焼結助剤と0.1〜15重量%の焼結防止剤
    が混入され、それらの元素が残留している請求項1記載
    の溶融炭酸塩型燃料電池用電極。
  4. 【請求項4】 Ni粉に焼結助剤と焼結防止剤を混合し
    て成形した後、高温で還元雰囲気にて焼成し、空隙率が
    70〜80%、比表面積が0.4m2 /g以下の多孔質
    体を作り、次に、該多孔質体を、酸化させて比表面積が
    0.8m2 /g以下のカソード電極を製造することを特
    徴とする溶融炭酸塩型燃料電池用電極の製造方法。
  5. 【請求項5】 焼結助剤を、高温で拡散によりNi粉に
    固溶し得る金属であるFe、Cr、Co、Pd、Pt、
    V、Cu、Mn、Mo、Re、Ru、W、Nb、Rh、
    Ti(66at%以下)、Zr(28at%以下)のい
    ずれか1種又は複数種の金属粉又は合金粉とし、焼結防
    止剤を、高温で拡散によりNi粉に固溶しないか又は固
    溶しても僅かなMgO、CaO、Al2 3 の如き酸化
    物粉か、熱分解によりMgO、CaO、Al2 3 とな
    るMgCO3 、CaCO3 、Li2 CO3 、K2
    3 、Na2 CO3 の如き炭酸塩粉かあるいはMg(O
    H)2 、Al(OH)3 の如き水酸化物粉とした請求項
    4記載の溶融炭酸塩型燃料電池用電極の製造方法。
  6. 【請求項6】 焼結助剤を、金属に代えて金属酸化物で
    あるFeO、Fe23 、Fe3 4 、NiO、Li2
    Oのいずれか1種又は複数種の酸化物粉又は複合酸化物
    粉とした請求項5記載の溶融炭酸塩型燃料電池用電極の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 焼成時の温度を900℃以上とする請求
    項4記載の溶融炭酸塩型燃料電池用電極の製造方法。
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