JPH09301919A - 三級カルボン酸エステル化合物及び該化合物を含有する潤滑油組成物 - Google Patents

三級カルボン酸エステル化合物及び該化合物を含有する潤滑油組成物

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JPH09301919A JP11742796A JP11742796A JPH09301919A JP H09301919 A JPH09301919 A JP H09301919A JP 11742796 A JP11742796 A JP 11742796A JP 11742796 A JP11742796 A JP 11742796A JP H09301919 A JPH09301919 A JP H09301919A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高粘度指数,高い酸化安定性,耐加水分
解性などの特性を兼ね備えたエステル系潤滑油組成物及
び該エステル系潤滑油組成物に用いられる新規なエステ
ル化合物を提供すること。 【解決手段】 炭素数13以上の三級カルボン酸とヒン
ダードアルコールから得られる炭素数13以上の三級カ
ルボン酸エステル化合物、及び該エステル化合物を含有
する潤滑油組成物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気雰囲気下で低
温から高温までの広い範囲の温度で使用される潤滑油、
例えば、タービン油,圧縮機油,エンジン油,ギヤ油,
軸受油などとして好適に用いられる潤滑油、及び上記潤
滑油に好適に用いられる新規なエステル化合物に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、省エネルギー化やロングドレン化
の傾向に伴い、潤滑特性ならびに安定性においてより優
れた潤滑油が要望され、これらの特性を満足するため各
種の合成潤滑油が開発されている。とりわけ、エステル
類は潤滑特性ならびに耐熱性に優れていることから、タ
ービン油,エンジン油,耐熱性作動油,冷凍機油等の潤
滑油として広く用いられている。しかし、エステル類を
上記のような潤滑油に用いた場合、通常、加水分解を起
こしやすく、全酸化が上昇するという問題を生じてい
た。また、特に、ヒンダードエステル類は、タービン
油,エンジン油等の高い熱安定性が要求される潤滑油の
基油または添加剤として用いられてきたが、近年の高性
能化,長寿命化の要求に対してはその安定性が不充分と
なってきた。従来、このようなエステル類の例として
は、例えば、米国特許第3,115,519号明細書に
は、多価アルコールとピバリン酸のエステルが開示され
ている。しかしながら、ここに開示されるエステルは三
級脂肪酸以外の脂肪酸から得られるヒンダードエステル
に比べ、耐熱性,耐加水分解性には優れているが、粘度
指数が低いという問題がある。また、特開平4−164
993号公報には、炭素数12以下の三級一価脂肪酸及
び二価脂肪酸とヒンダードアルコールのエステルが開示
されている。このエステルではα分岐カルボン酸による
粘度指数低下を改善するために二価脂肪酸を用いている
ものの、粘度指数が不充分であり、酸化安定性も劣る。
更に、特開平4−314793号公報には三級一価脂肪
酸,二級一価脂肪酸及び二価脂肪酸とヒンダードアルコ
ールのエステルが開示されている。しかし、ここに開示
されるエステルは二級一価脂肪酸及び二価脂肪酸を用い
ているので、α分岐カルボン酸による粘度指数低下につ
いては改善されているが、酸化安定性は三級脂肪酸のみ
によるエステルよりも劣るため、非空気雰囲気下での用
途を除いて用いることはできず、実際には、冷凍機油へ
の用途に限定されている。特開平7−224289号公
報にはペンタエリスリトールと直鎖脂肪酸ならびに二級
脂肪酸のエステルが開示されている。しかしながら、こ
のエステルは直鎖脂肪酸のみに比べ耐加水分解性には優
れているが、二級脂肪酸を用いているため酸化安定性に
劣るものとなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来にお
いては、高い酸化安定性,耐加水分解性及び高い粘度指
数のすべてを兼ね備えたエステル系潤滑油は得られてい
なかった。本発明は、このような状況下でなされたもの
である。すなわち、本発明の目的は、酸化安定性,耐加
水分解性を高水準に維持しつつ粘度指数を向上せしめた
エステル系潤滑油組成物及び該エステル系潤滑油組成物
に用いられる新規なエステル化合物を提供することにあ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の長鎖ア
ルキル基を導入した三級カルボン酸エステル化合物を開
発し、このエステル化合物からなる潤滑油が酸化安定
性,耐加水分解性を高水準に維持したまま、粘度指数を
向上させることができることを見出したものである。本
発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。す
なわち、本発明は、炭素数13以上の三級カルボン酸と
ヒンダードアルコールから得られる炭素数13以上の三
級カルボン酸エステル化合物を提供するものであり、ま
た、炭素数13以上の三級カルボン酸エステル化合物を
含有し、空気雰囲気下で使用することを特徴とする潤滑
油組成物を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を更に詳細に説明
する。本発明の炭素数13以上の三級カルボン酸エステ
ル化合物(以下、本発明のエステル化合物ということが
ある)は、炭素数13以上の三級カルボン酸化合物とア
ルコール類とをエステル化反応させて得ることができる
が、ここで使用する炭素数13以上の三級カルボン酸化
合物としては、例えば、2,2−ジメチルトリデカン
酸,2−メチル−2−エチルドデカン酸,2,2−ジメ
チルペンタデカン酸,2−メチル−2−エチルテトラデ
カン酸,2,2−ジエチルトリデカン酸,2,2−ジメ
チルヘプタデカン酸,2−メチル−2−エチルヘキサデ
カン酸,2,2−ジエチルペンタデカン酸,2,2−ジ
メチルノナデカン酸,2−メチル−2−エチルオクタデ
カン酸,2,2−ジエチルヘプタデカン酸,2,2−ジ
メチルヘンエイコサン酸,2−メチル−2−エチルエイ
コサン酸,2,2−ジエチルノナデカン酸,ネオペンタ
デカン酸,ネオヘプタデカン酸,ネオノナデカン酸,ネ
オヘンエイコサン酸,ネオトリコサン酸,ネオペンタコ
サン酸,ネオヘプタコサン酸,ネオノナコサン酸等を使
用することができる。上記三級カルボン酸化合物は、そ
の炭素数が13以上であるが、好ましくは15〜30、
更に好ましくは17〜25である。炭素数が上記範囲よ
り少ない場合は粘度指数が低くなり、上記範囲より大き
い場合は流動点が高くなる。本発明においては、上記三
級カルボン酸化合物は単独で使用することもできるが、
二種以上を組み合わせて使用することも可能である。ま
た、酸化安定性,耐加水分解性を損なわない範囲で2級
カルボン酸化合物あるいは1級カルボン酸化合物を混合
使用することもできる。
【0006】また、エステル化反応に使用しうるアルコ
ール類としては、特に限定はされないが、耐熱性の点か
ら、ヒンダードアルコール、特に、β位が4級となるア
ルコールが好ましく挙げられる。このような化合物とし
ては、例えば、ネオペンチルグリコール,トリメチロー
ルプロパン,ペンタエリスリトール,2,2−ジメチル
−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−
3’−ヒドロキシプロピオネートあるいはこれらの二量
体(例えば、ジトリメチロールプロパン,ジペンタエリ
スリトール)などが挙げられる。これらのアルコール
は、単独で使用することもできるが、二種以上を組み合
わせて使用することも可能である。
【0007】本発明のエステル化合物は、上記三級カル
ボン酸化合物と上記アルコール類とをエステル化反応さ
せることにより得られるが、その反応は、例えば、三級
カルボン酸化合物とアルコール類とを、モル比1:1〜
3:1の割合で混合し、これをオルトチタン酸イソプロ
ピル,p−トルエンスルホン酸などの触媒の存在下、1
00〜300℃の温度下、加熱攪拌あるいは上記三級カ
ルボン酸を塩化チオニル,オキシ塩化リン,三塩化リ
ン,五塩化リンなどで酸クロライドとし、これにアルコ
ールを加えることにより行うことができる。得られる本
発明のエステル化合物は、高性能油としての使用のため
高い粘度指数が要求されるため、100以上、好ましく
は110以上、更に好ましくは120以上の粘度指数を
有する。また、その流動点は低温始動性の点から、0℃
以下であることが好ましい。
【0008】本発明の潤滑油組成物は、上記本発明のエ
ステル化合物を主成分として含有するものであるが、該
エステル化合物は、潤滑油組成物中に少なくとも5重量
%,好ましくは少なくとも10重量%含有することが本
発明の効果を有効に奏する点から好ましい。また、本発
明においては、これと組み合わせて他の潤滑油成分、例
えば、鉱油,ポリ−α−オレフィン類,ポリエーテル
類,他のエステル類,アルキルベンゼン類,アルキルナ
フタレン類,フッ素化炭化水素化合物等を適宜含有する
ことができる。本発明の潤滑油組成物の粘度は特に限定
はされないが、高温での潤滑油油膜保持などの点から、
100℃における動粘度が2.0〜20cStであること
が好ましい。また、本発明の潤滑油組成物には、通常、
潤滑油に使用しうる各種添加剤、例えば、アミン系など
の酸化防止剤,防錆剤,清浄分散剤,流動点降下剤,粘
度指数向上剤,極圧剤,消泡剤,耐摩耗添加剤,油性向
上剤等を適宜配合することも可能である。
【0009】本発明の潤滑油組成物は、高い酸化安定
性,耐加水分解性を有することから、空気雰囲気下、低
温から高温までの広い温度範囲で使用可能な潤滑油とし
て有用であり、例えば、タービン油,エンジン油,圧縮
機油,ギヤ油,軸受油等の潤滑油として好適に使用する
ことができる。
【0010】
【実施例】以下に、実施例により本発明を更に具体的に
説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定さ
れるものではない。 実施例1カルボン酸の合成 オレフィンとして1−オクタデセンを用い、特公昭49
−3511号公報の実施例1に記載の方法によりネオノ
ナデカン酸を得た。エステル化反応 2リットルの4首丸底フラスコに冷却管,ディーンシュ
タック管,温度計を各々取付け、ここに上記得られたネ
オノナデカン酸1116g(3モル)とネオペンチルグ
リコール120g(1.36モル)を入れ、更に、触媒と
してオルトチタン酸テトライソプロピル20gを加え、
水分が留出しはじめるまで徐々に温度を上げた。留出が
始まった時点で更に温度を10℃上げ、この温度で水分
の留出が終わるまで反応させ、本発明のエステル化合物
を得た。得られたエステル化合物を 1H−NMR,IR
により分析したところ、添付図1及び2に示す結果が得
られ、この化合物が本発明の炭素数19の三級カルボン
酸エステルであることがわかった。
【0011】実施例2 1−オクタデセンに代えて1−ドコセンを用いて得られ
るネオトリコサン酸をカルボン酸として用いた以外は実
施例1と同様にしてエステル化合物を得た。得られたエ
ステル化合物を実施例1と同様に分析したところ、添付
図3及び4に示す結果が得られ、この化合物が本発明の
炭素数23の三級カルボン酸エステルであることがわか
った。
【0012】実施例3 1−オクタデセンに代えて1−テトラデカンを用いて得
られるネオペンタデカン酸をカルボン酸として用い、ま
たネオペンチルグリコールに代えてトリメチロールプロ
パンをアルコールとして用いた以外は実施例1と同様に
してエステル化合物を得た。得られたエステル化合物を
実施例1と同様に分析したところ、添付図5及び6に示
す結果が得られ、この化合物が本発明の炭素数15の三
級カルボン酸エステルであることがわかった。 比較例1〜5 下記第1表に示すようなカルボン酸及びアルコールを使
用した以外は、実施例1と同様にしてエステル化合物を
得た。
【0013】
【表1】
【0014】比較例6 2リットルの4首丸底フラスコに冷却管,温度計を各々
取付け、ここに塩化チオニル999g(8.4モル)を入
れ、これに室温にて2,2,6−トリメチルヘプタン酸
(ネオ酸、エッソ化学社製)1204g(7.0モル)を
滴下し反応させ、酸クロライドを得た。次いで、トリメ
チロールプロパン220g(1.64モル)とN,N−ジ
メチルアニリン590g(4.92モル)をエチルエーテ
ル500ミリリットルに溶解し、2リットルの4首丸底
フラスコに入れ、ここに得られた酸クロライドを滴下し
反応させ、エステル化合物を得た。
【0015】実施例4〜6及び比較例7〜12 上記実施例1〜3及び比較例1〜6で得られたカルボン
酸エステル化合物の各々に、アミン系酸化防止剤(N−
フェニルナフチルアミン)を2重量%配合してなる潤滑
油を調製し、各々について以下の方法で評価を行った。
結果を第2表に示す。評価方法 (1)加水分解試験 エステル化合物75gに水25gを加え、更に触媒とし
て鉄板ならびに銅板を入れ、100℃で168時間攪拌
し、油層の全酸化をJIS K−2501「石油製品及
び潤滑油中和価試験方法(電位差滴定法)」により測定
し、加水分解のしやすさの指標として評価した。 (2)酸化試験 JIS K−2242に規定された「熱処理油」の酸化
安定性試験に従って、評価した。但し、触媒としては銅
板ならびに鉄板を用い、試験温度,時間をそれぞれ19
0℃,168時間として測定した。 (3)粘度ならびに粘度指数 JIS K−2283に規定された「原油および石油製
品の動粘度試験法並びに石油製品粘度指数算出法」に従
って評価した。 (4)流動点 JIS K−2269に規定された「原油および石油製
品の流動点並びに石油製品曇り点試験法」に従って評価
した。
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】第2表に示すように、実施例1及び2の各
々で使用したカルボン酸エステル化合物はいずれも耐加
水分解性、酸化安定性,粘度指数すべてにおいて良好な
ものであった。
【0019】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明のカ
ルボン酸エステル化合物からなる潤滑油組成物によれ
ば、空気雰囲気下で使用した場合においても、高温での
潤滑性に優れ、熱分解,全酸化の上昇も少ないなど、酸
化安定性,耐加水分解性を高水準に維持したまま粘度指
数を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたエステル化合物の 1H−N
MR分析の結果を示す図である。
【図2】実施例1で得られたエステル化合物のIR分析
の結果を示す図である。
【図3】実施例2で得られたエステル化合物の 1H−N
MR分析の結果を示す図である。
【図4】実施例2で得られたエステル化合物のIR分析
の結果を示す図である。
【図5】実施例3で得られたエステル化合物の 1H−N
MR分析の結果を示す図である。
【図6】実施例3で得られたエステル化合物のIR分析
の結果を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10N 30:00 30:02 30:10 40:02 40:04 40:06 40:25 (72)発明者 奥田 亮一 山口県徳山市宮前町1番地1 出光石油化 学株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素数13以上の三級カルボン酸とヒン
    ダードアルコールから得られる炭素数13以上の三級カ
    ルボン酸エステル化合物。
  2. 【請求項2】 ヒンダードアルコールが、ネオペンチル
    グリコール,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリ
    トール,エステルグリコール,ジトリメチロールプロパ
    ン及びジペンタエリスリトールから選ばれる請求項1記
    載の三級カルボン酸エステル化合物。
  3. 【請求項3】 粘度指数が100以上である請求項1又
    は2に記載の三級カルボン酸エステル化合物。
  4. 【請求項4】 炭素数13以上の三級カルボン酸エステ
    ル化合物を含有し、空気雰囲気下で使用することを特徴
    とする潤滑油組成物。
  5. 【請求項5】 三級カルボン酸エステル化合物が、炭素
    数13以上の三級カルボン酸とヒンダードアルコールか
    ら得られることを特徴とする請求項4記載の潤滑油組成
    物。
  6. 【請求項6】 ヒンダードアルコールが、ネオペンチル
    グリコール,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリ
    トール,エステルグリコール,ジトリメチロールプロパ
    ン及びジペンタエリスリトールから選ばれる請求項4又
    は5に記載の潤滑油組成物。
  7. 【請求項7】 タービン油,圧縮機油,エンジン油,ギ
    ヤ油及び軸受油から選ばれる請求項4〜6のいずれかに
    記載の潤滑油組成物。
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