JP2023012593A - 動力伝達用潤滑油基油 - Google Patents

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駿介 阿野
Shunsuke Ano
茜 加藤
Akane Kato
明伸 竹上
Akinobu Takegami
猛 岩崎
Takeshi Iwasaki
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Abstract

【課題】本発明は、トラクション係数及び引火点が高く、低温流動性に優れた動力伝達用潤滑油基油を提供する。【解決手段】一般式(1)TIFF2023012593000008.tif54169[式中、R1~R5は、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]で表されるエステル化合物を含有する動力伝達用潤滑油基油に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、動力伝達用潤滑油基油に関する。具体的には、トラクションドライブ用潤滑油基油に関する。
近年、デジタル情報社会化が進み、印刷機及び複写機への要求精度が高まっている。特に紙の高精度送りが求められるモータ部では、高回転精度、低振動及び低騒音化が求められている。これらの回転部の動力伝達手段として歯車方式を採用した場合には振動や騒音が大きい為、それらの少ないトラクションドライブが多く用いられている。
また、産業用ロボットの普及も進み、精密な動きが求められる関節部分にもトラクションドライブが用いられる。他には産業機器用無段変速機、航空機のジェネレータ、ヘリコプターのローター回転数制御などの分野でトラクションドライブの実用化が進展している。動力伝達量を大きくする為に、トラクションドライブの大型化の検討が進められてきているが、接触面積の増大に伴い発熱量も多くなる傾向があった。
トラクションドライブ用潤滑油基油は、動力伝達能を高めるべく、高いトラクション係数を有するものが好ましく、脂環式炭化水素化合物等が提案されている。例えば、2-メチル-2,4-ジシクロヘキシルペンタンで代表されるジシクロヘキシル化合物、二量化ノルボルナン類などが挙げられる(特許文献1及び2)。
しかしながら、2-メチル-2,4-ジシクロヘキシルペンタンに代表される脂環式炭化水素化合物は引火点が200℃以下と低くなる傾向が強く、大型のトラクションドライブ等が採用される耐熱性や安全性が重要視される分野では必ずしも十分でなかった。
また、引火点が高いトラクションドライブ用潤滑油基油としてエステル化合物が提案されている。例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジ(シクロヘキシルメチル)で代表される脂環式ジエステル化合物などが挙げられる(特許文献3)。
しかしながら、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジ(シクロヘキシルメチル)で代表される脂環式ジエステル化合物は流動点が-20℃以上と高くなる傾向が強く、航空機やヘリコプター、自動車など低温下での作動性を重要視される分野では必ずしも十分でなかった。
特開昭47-7664号公報 特開平3-95295号公報 国際公開第2018/008667号
本発明は、トラクション係数及び引火点が高く、且つ、低温流動性が良好な動力伝達用潤滑油基油(特に、トラクションドライブ用潤滑油基油)を提供することを目的とする。
本発明者らは、特定のエステル化合物が高いトラクション係数及び引火点を有し、且つ、低温流動性が良好であることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて更に検討を加えることにより完成したものである。
即ち、本発明は、以下の項目の動力伝達用潤滑油基油(特に、トラクションドライブ用潤滑油基油)を提供するものである。
[項1]
一般式(1)
Figure 2023012593000001
[式中、R~Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]
で表されるエステル化合物を含有する動力伝達用潤滑油基油。
[項2]
一般式(1)に記載のR~Rが、同一又は異なって、それぞれ水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基である、[項1]に記載の動力伝達用潤滑油基油。
[項3]
一般式(1)に記載のR~Rが、同一又は異なって、それぞれ水素原子又はメチル基である、[項1]に記載の動力伝達用潤滑油基油。
[項4]
一般式(1)で表されるエステル化合物の含有量が、動力伝達用潤滑油基油中、70質量%以上である、[項1]~[項3]のいずれかに記載の動力伝達用潤滑油基油。
[項5]
一般式(1)で表されるエステル化合物の含有量が、動力伝達用潤滑油基油中、90質量%以上である、[項1]~[項3]のいずれかに記載の動力伝達用潤滑油基油。
[項6]
前記動力伝達用潤滑油基油がトラクションドライブ用潤滑油基油である、[項1]~[項5]のいずれかに記載の動力伝達用潤滑油基油。
[項7]
[項1]~[項6]のいずれかに記載の動力伝達用潤滑油基油を含有する動力伝達用潤滑油。
[項8]
[項1]~[項6]のいずれかに記載の動力伝達用潤滑油基油及び酸化防止剤を含有することを特徴とする、動力伝達用潤滑油。
[項9]
酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤である、[項8]に記載の動力伝達用潤滑油。
本発明のエステル化合物は、トラクション係数(60℃、140℃)及び引火点が高く、且つ、低温流動性が良好であるという特徴を有しているため、動力伝達用潤滑油基油(特に、トラクションドライブ用潤滑油基油)として好適に使用することができる。
実施例1で得られた2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのIRスペクトルである。 実施例1で得られた2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのH-NMRスペクトルである。 実施例2で得られた3-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのIRスペクトルである。 実施例2で得られた3-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのH-NMRスペクトルである。 実施例3で得られた4-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのIRスペクトルである。 実施例3で得られた4-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのH-NMRスペクトルである。 実施例4で得られた3,5-ジメチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのIRスペクトルである。 実施例4で得られた3,5-ジメチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのH-NMRスペクトルである。 実施例5で得られたシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのIRスペクトルである。 実施例5で得られたシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのH-NMRスペクトルである。
本発明の動力伝達用潤滑油基油は、一般式(1)
Figure 2023012593000002
[式中、R~Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]
で表されるエステル化合物を含有していることを特徴とする。
一般式(1)に記載のR~Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基であることが好ましい。
一般式(1)で表されるエステル化合物の具体的な例としては、例えば、シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2-メチルシクロヘキサンカルンボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、3-メチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、4-メチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2,3-ジメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2,4-ジメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2,5-ジメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2,6-ジメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、3,4-ジメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、3,5-ジメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2,3,4-トリメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2,3,5-トリメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2,3,6-トリメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2,4,5-トリメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2,4,6-トリメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、3,4,5-トリメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2-エチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、3-エチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、4-エチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2-イソプロピルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、3-イソプロピルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、4-イソプロピルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2-tert-ブチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、3-tert-ブチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、4-tert-ブチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルが好ましく、特に、シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、2-メチルシクロヘキサンカルンボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、3-メチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、4-メチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、3,4-ジメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、3,5-ジメチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル、4-tert-ブチルシクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルが好ましい。
上記のエステル化合物は、単独で又は2種以上の混合物として動力伝達用潤滑油基油として用いることができる。
一般式(1)で表されるエステル化合物の製造方法は特に限定されるものではない。例えば、一般式(1)で表されるエステル化合物は、反応式1に示すように、式(2)で表されるアルコールと、一般式(3)で表されるカルボン酸化合物又はその誘導体とを反応(エステル化反応又はエステル交換反応)させることにより製造することができる。ここで、一般式(3)で表されるカルボン酸の誘導体としては、例えば、酸ハライド(例えば、酸クロライド等)、混合酸無水物、活性エステル等の反応性の高い誘導体、低級(炭素数1~4)アルキルエステル等が挙げられる。
Figure 2023012593000003
[式中、R~Rは、前記に同じ。]
一般式(1)で表されるエステル化合物は、例えば、式(2)で表されるアルコールと、一般式(3)で表されるカルボン酸化合物とを、酸触媒(例えば、硫酸、p-トルエンスルホン酸等)の存在下、加熱して副生する水を除去しながら脱水縮合させて製造することができる。また、酸触媒を、無機金属触媒(例えば、酸化スズ等)や有機チタン触媒(例えば、テトラ-n-ブトキシチタン等)に変更して同様の方法で製造することもできる。
また、一般式(1)で表されるエステル化合物は、式(2)で表されるアルコールと、一般式(3)で表されるカルボン酸化合物とを、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボニルジイミダゾール等)の存在下、反応させて製造することもできる。
また、一般式(1)で表されるエステル化合物は、一般式(3)で表されるカルボン酸化合物を、酸ハライド(例えば、酸クロライド等)、混合酸無水物、活性エステル等の反応性の高い誘導体に変換した後、塩基(例えば、トリエチルアミン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン等)の存在下、式(2)で表されるアルコールを反応させて製造することもできる。
さらに、一般式(1)で表されるエステル化合物は、一般式(3)で表されるカルボン酸化合物と低級(炭素数1~4)アルコール(例えば、メタノール、エタノール等)とを反応(エステル化)させて低級アルキルエステルとした後、これを式(2)で表されるアルコールとエステル交換反応させて製造することもできる。
上記反応式1で示される反応は、その反応の種類に応じて公知の反応条件に従い又は準じて実施することができる。
或いは、一般式(1)で表されるエステル化合物は、反応式2に示すように、式(2)で表されるアルコールと、一般式(4)で表される芳香族カルボン酸又はその誘導体とを反応(エステル化反応又はエステル交換反応)させて、一般式(5)で表される化合物を得た後、当該化合物の芳香環を核水素化(還元)することにより製造することもできる。ここで、一般式(4)で表される芳香族カルボン酸の誘導体としては、例えば、酸ハライド(例えば、酸クロライド等)、混合酸無水物、活性エステル等の反応性の高い誘導体、低級(炭素数1~4)アルキルエステル等が挙げられる。
Figure 2023012593000004
[式中、R~Rは、前記に同じ。]
式(2)で表されるアルコールと、一般式(4)で表される芳香族カルボン酸又はその誘導体とを反応させて、一般式(5)で表される化合物を製造する反応は、上記反応式1における式(2)で表されるアルコールと、一般式(3)で表されるカルボン酸化合物又はその誘導体とを反応させて一般式(1)で表される化合物を製造する反応に従い又は準じて実施することができる。
一般式(5)で表される化合物を核水素化(還元)する反応は公知の方法を採用することができる。例えば、水素雰囲気下(常温から加圧)、還元触媒(白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム等の遷移金属又はその酸化物、パラジウム/C等)の存在下、一般式(5)で表される化合物を還元することにより、一般式(1)で表される化合物を製造することができる。
一般式(1)で表されるエステル化合物の酸価としては、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下である。酸価が0.1mgKOH/g以下のときには、一般式(1)で表されるエステル化合物自身の耐熱性がより向上する傾向が認められ、本発明の基油の熱酸化安定性の向上にも好影響を与える。酸価を低減する方法としては、反応を十分に進行させる方法や、後処理工程でのアルカリ成分で中和及び水洗する方法(例えば、アルカリ水溶液による洗浄(中和)及び水による洗浄を行う方法)や、活性アルミナで吸着処理する方法等が例示される。
一般式(1)で表されるエステル化合物の水酸基価としては、好ましくは2mgKOH/g以下、より好ましくは1mgKOH/g以下である。水酸基価が2mgKOH/g以下のときには、一般式(1)で表されるエステル化合物自身の吸湿性がより低くなり、耐熱性もより向上する傾向が認められ、本発明の基油の耐水性及び熱酸化安定性の向上にも好影響を与える。水酸基価を低減する方法としては、反応を十分に進行させる方法や、後処理工程での原料アルコール成分を減圧留去する方法(例えば、蒸留可能な過剰の原料アルコール等を減圧下又は常圧下にて留去する方法)等が例示される。
本発明は、一般式(1)で表されるジエステル化合物を含有する動力伝達用潤滑油基油(特に、トラクションドライブ用潤滑油基油)を開示する。
動力伝達用潤滑油基油のトラクション係数(60℃)は、通常、0.080以上であり、好ましくは0.090以上である。なお、本明細書及び請求の範囲においてトラクション係数(60℃)は、後述の実施例に記載した方法で測定される値である。
また、トラクション係数(140℃)は、通常、0.075以上であり、好ましくは0.085以上である。なお、本明細書及び請求の範囲においてトラクション係数(140℃)は、後述の実施例に記載した方法で測定される値である。
動力伝達用潤滑油基油の低温流動性は、例えば、流動点によって評価することができる。潤滑油基油の流動点は、低温作動性の観点から、通常、-30℃以下であり、好ましくは-35℃以下である。なお、本明細書及び請求の範囲において流動点は、後述の実施例に記載した方法で測定される値である。
動力伝達用潤滑油基油の引火点は、貯蔵安定性及び取り扱い性の観点から、通常、185℃以上であり、好ましくは200℃以上である。185℃未満であると、引火による取り扱い上の制約が増大する。なお、本明細書及び請求の範囲において引火点は、後述の実施例に記載した方法で測定される値である。
動力伝達用潤滑由基油としては、例えば、トラクション係数(60℃)0.090以上、トラクション係数(140℃)0.085以上、流動点-30℃以下、引火点185℃以上の動力伝達用潤滑由基油;トラクション係数(60℃)0.090以上、トラクション係数(140℃)0.075以上、流動点-35℃以下、引火点185℃以上の動力伝達用潤滑由基油;トラクション係数(60℃)0.090以上、トラクション係数(140℃)0.075以上、流動点-30℃以下、引火点200℃以上の動力伝達用潤滑由基油;トラクション係数(60℃)0.080以上、トラクション係数(140℃)0.075以上、流動点-35℃以下、引火点200℃以上の動力伝達用潤滑由基油が挙げられ、さらに、トラクション係数(60℃)0.090以上、トラクション係数(140℃)0.085以上、流動点-35℃以下、引火点185℃以上の動力伝達用潤滑由基油;トラクション係数(60℃)0.090以上、トラクション係数(140℃)0.085以上、流動点-30℃以下、引火点200℃以上の動力伝達用潤滑由基油;トラクション係数(60℃)0.090以上、トラクション係数(140℃)0.075以上、流動点-35℃以下、引火点200℃以上の動力伝達用潤滑由基油が好ましく、特に、トラクション係数(60℃)0.090以上、トラクション係数(140℃)0.085以上、流動点-35℃以下、引火点200℃以上の動力伝達用潤滑由基油が好ましい。
本発明の動力伝達用潤滑油基油は、トラクション係数(60℃、140℃)及び引火点が高く、且つ、低温流動性が良好なことから、動力伝達用潤滑油基油、特に、トラクションドライブ用潤滑油基油として好適に用いられる。
本発明の動力伝達用潤滑油基油は、併用することができる他の基油(以下「併用基油」と表記する)を含むことができる。つまり、本発明の動力伝達用潤滑油基油には、一般式(1)で表されるエステル化合物のみ、及び当該一般式(1)で表されるエステル化合物と併用基油との混合物を包含する。以下、動力伝達用潤滑油基油を「基油」と表記する場合がある。
併用基油としては、鉱物油(石油の精製によって得られる炭化水素油)、ポリ-α-オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式炭化水素油、動植物油、有機酸エステル(一般式(1)で表されるエステル化合物を除く)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、シリコーン油などの基油が挙げられる。これらの少なくとも1種を適宜併用することができる。
鉱物油としては、溶剤精製鉱油、水素化精製鉱油、ワックス異性化油が挙げられるが、通常、100℃における動粘度が1~25mm/s、好ましくは2~20mm/sの範囲にあるものが用いられる。
ポリ-α-オレフィンとしては、炭素数2~16のα-オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン等)の重合体又は共重合体であって、100℃における動粘度が1~25mm/s、粘度指数が100以上のものが例示され、特に100℃における動粘度が1.5~20mm/sで、粘度指数が120以上のものが好ましい。
ポリブテンとしては、イソブチレンを重合したもの、イソブチレンをノルマルブチレンと共重合したものがあり、一般に100℃の動粘度が2~40mm/sの広範囲のものが挙げられる。
アルキルベンゼンとしては、炭素数1~40の直鎖又は分岐のアルキル基で置換された、分子量が200~450であるモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、トリアルキルベンゼン、テトラアルキルベンゼン等が例示される。
アルキルナフタレンとしては、炭素数1~30の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン等が例示される。
脂環式炭化水素油としては、ナフテン系炭化水素油等があり、一般に100℃の動粘度が1~40mm/sの広範囲のものが例示される。
動植物油としては、牛脂、豚脂、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油等が例示される。
有機酸エステルとしては、脂肪酸モノエステル(一般式(1)で表されるエステル化合物を除く)、脂肪族二塩基酸ジエステル、脂肪族二価アルコールジエステル、ポリオールエステル及びその他のエステルが例示される。
脂肪酸モノエステルとしては、炭素数5~22の脂肪族直鎖状又は分岐鎖状モノカルボン酸と炭素数3~22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。但し、一般式(1)で表されるエステル化合物を除く。
脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナメチレンジカルボン酸、1,10-デカメチレンジカルボン酸等脂肪族二塩基酸若しくはその無水物と炭素数3~22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのジエステルが挙げられる。
脂肪族二価アルコールジエステル、ポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチルプロパンジオール、2-ブチル2-エチルプロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のネオペンチル型構造のポリオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、1,6-ヘプタンジオール、2-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、1,7-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,8-オクタンジオール、4-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-ノナンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,9-ノナンジオール、4-メチル-1,9-ノナンジオール、5-メチル-1,9-ノナンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等の非ネオペンチル型構造のポリオールと、炭素数3~22の直鎖状及び/又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪酸とのフルエステルを使用することが可能である。
その他のエステルとしては、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、或いは、縮合ヒマシ油脂肪酸、水添縮合ヒマシ油脂肪酸などのヒドロキシ脂肪酸と炭素数3~22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、アルコールと炭素数2~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレンオキシドの開環重合体が例示される。アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、これらの1種を用いた重合体、若しくは2種以上の混合物を用いた共重合体が使用可能である。又、片端又は両端の水酸基部分がエーテル化した化合物も使用可能である。重合体の動粘度としては、好ましくは5~1000mm/s(40℃)、より好ましくは5~500mm/s(40℃)が推奨される。
ポリビニルエーテルとしては、ビニルエーテルモノマーの重合によって得られる化合物であり、モノマーとしてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、n-ペンチルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、2-メトキシエチルビニルエーテル、2-エトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。重合体の動粘度としては、好ましくは5~1000mm/s(40℃)、より好ましくは5~500mm/s(40℃)が推奨される。
ポリフェニルエーテルとしては、2個以上の芳香環のメタ位をエーテル結合又はチオエーテル結合でつないだ構造を有する化合物が挙げられ、具体的には、ビス(m-フェノキシフェニル)エーテル、m-ビス(m-フェノキシフェノキシ)ベンゼン、及びそれらの酸素の1個若しくは2個以上を硫黄に置換したチオエーテル類(通称C-エーテル)等が例示される。
アルキルフェニルエーテルとしては、ポリフェニルエーテルを炭素数6~18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換した化合物が挙げられ、特に1個以上のアルキル基で置換したアルキルジフェニルエーテルが好ましい。
シリコーン油としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンのほか、長鎖アルキルシリコーン、フルオロシリコーン等の変性シリコーンが挙げられる。
本発明の動力伝達用潤滑油基油中における、一般式(1)で表されるエステル化合物の含有量は、通常、70質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは98質量%以上である。
本発明の動力伝達用潤滑油基油中における併用基油の含有量は、通常、30質量%以下であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。
本発明は、前記動力伝達用潤滑油基油を含む動力伝達用潤滑油をも提供する。当該動力伝達用潤滑油は、その性能を向上させるために、基油に例えば、酸化防止剤、金属清浄剤、無灰分散剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、金属不活性剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、加水分解抑制剤、増ちょう剤、腐食防止剤、色相安定剤等の添加剤の少なくとも1種を適宜配合することも可能である。これらの配合量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、その具体的な例を以下に示す。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられ、具体的には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンビスフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジ(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチル-ジフェニルメタン、2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、2,6-ビス(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1,4-ジヒドロキシアントラキノン、3-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,4-ジベンゾイルレゾルシノール、4-tert-ブチルカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,5-トリヒドロキシベンゾフェノン、α-トコフェロール、ビス[2-(2-ヒドロキシ-5-メチル-3-tert-ブチルベンジル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコールビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジフェニルアミン、モノブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン、特にモノ(C-Cアルキル)ジフェニルアミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の一方が、アルキル基、特にC-Cアルキル基でモノ置換されているジフェニルアミン)、ジブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、ジペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、ジヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、ジヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のジ(アルキルフェニル)アミン、特に、ジ(C-Cアルキルフェニル)アミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の各々が、アルキル基、特にC-Cアルキル基でモノ置換されているジフェニルアミンであって、二つのアルキル基が同一であるもの)、ジ(モノC-Cアルキルフェニル)アミンであって、一方のベンゼン環上のアルキル基が他方のベンゼン環上のアルキル基と異なるもの、ジ(ジ-C-Cアルキルフェニル)アミンであって、二つのベンゼン環上の4つのアルキル基のうちの少なくとも1つが残りのアルキル基と異なるもの、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、4-オクチルフェニル-1-ナフチルアミン、4-オクチルフェニル-2-ナフチルアミン等のナフチルアミン類、p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類等が例示される。
この中でも、特に、ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、チオジプロピオン酸ジ(n-ドデシル)、チオジプロピオン酸ジ(n-オクタデシル)等のチオジプロピオン酸エステル、フェノチアジン等の硫黄系化合物等が例示される。これらの酸化防止剤は、単独で又は適宜2種以上組み合わせて用いることができる。酸化防止剤を使用する場合、通常、基油に対して0.01~5質量%、好ましくは0.05~3質量%程度添加することが望ましい。
ここで、本明細書及び特許請求の範囲において、「基油に対して0.01~5質量%」のように、「基油に対して」との表現を用いて、添加剤の配合量の範囲を規定している場合がある。この場合に用いる「基油」は、一般式(1)で表されるエステル化合物のみからなる基油又は一般式(1)で表されるエステル化合物と併用基油との混合物からなる基油の何れかの意味で用いている。そしてまた、「基油に対して0.01~5質量%」の例で言えば、基油100質量部に対して、0.01~5質量部という意味と同義である。
金属清浄剤としては、Ca-石油スルフォネート、過塩基性Ca-石油スルフォネート、Ca-アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ca-アルキルベンゼンスルフォネート、Ba-アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ba-アルキルベンゼンスルフォネート、Mg-アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Mg-アルキルベンゼンスルフォネート、Na-アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Na-アルキルベンゼンスルフォネート、Ca-アルキルナフタレンスルフォネート、過塩基性Ca-アルキルナフタレンスルフォネート等の金属スルフォネート、Ca-フェネート、過塩基性Ca-フェネート、Ba-フェネート、過塩基性Ba-フェネート等の金属フェネート、Ca-サリシレート、過塩基性Ca-サリシレート等の金属サリシレート、Ca-フォスフォネート、過塩基性Ca-フォスフォネート、Ba-フォスフォネート、過塩基性Ba-フォスフォネート等の金属フォスフォネート、過塩基性Ca-カルボキシレート等が使用可能である。金属清浄剤を使用する場合、通常、基油に対して1~10質量%程度、好ましくは2~7質量%程度添加することが望ましい。
無灰分散剤としては、ポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸アミド、ポリアルケニルベンジルアミン、ポリアルケニルコハク酸エステル等が例示される。これらの無灰分散剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、基油に対して1~10質量%、好ましくは2~7質量%程度添加することが望ましい。
油性剤としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコールなどのグリセリンエーテル、ラウリルポリグリセリンエーテル、オレイルポリグリセリルエーテルなどのアルキル若しくはアルケニルポリグリセリルエーテル、ジ(2-エチルヘキシル)モノエタノールアミン、ジイソトリデシルモノエタノールアミンなどのアルキル若しくはアルケニルアミンのポリ(アルキレンオキサイド)付加物等が例示される。これらの油性剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、基油に対して0.01~5質量%、好ましくは0.1~3質量%程度添加することが望ましい。
摩耗防止剤又は極圧剤としては、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、アルキルフェニルホスフェート類、トリブチルホスフェート、ジブチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリブチルホスファイト、ジブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト等の亜リン酸エステル類及びこれらのアミン塩等のリン系、硫化油脂、硫化オレイン酸などの硫化脂肪酸、ジベンジルジスルフィド、硫化オレフィン、ジアルキルジスルフィドなどの硫黄系、Zn-ジアルキルジチオフォスフェート、Zn-ジアルキルジチオフォスフェート、Mo-ジアルキルジチオフォスフェート、Mo-ジアルキルジチオカルバメートなどの有機金属系化合物等が例示される。これらの摩耗防止剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、基油に対して0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%程度添加することが望ましい。
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、没食子酸エステル系の化合物等が例示される。これらの金属不活性剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、基油に対して0.01~0.4質量%、好ましくは0.01~0.2質量%程度添加することが望ましい。
防錆剤としては、ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸アミドなどのアルキル又はアルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエートなどの多価アルコール部分エステル、Ca-石油スルフォネート、Ca-アルキルベンゼンスルフォネート、Ba-アルキルベンゼンスルフォネート、Mg-アルキルベンゼンスルフォネート、Na-アルキルベンゼンスルフォネート、Zn-アルキルベンゼンスルフォネート、Ca-アルキルナフタレンスルフォネートなどの金属スルフォネート、ロジンアミン、N-オレイルザルコシンなどのアミン類、ジアルキルホスファイトアミン塩等が例示される。これらの防錆剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、基油に対して0.01~5質量%、好ましくは0.05~2質量%程度添加することが望ましい。
粘度指数向上剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸エステル共重合体などのオレフィン共重合体が例示される。これらの粘度指数向上剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、基油に対して0.1~15質量%、好ましくは0.5~7質量%程度添加することが望ましい。
流動点降下剤としては、塩素化パラフィンとアルキルナフタレンの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物、既述の粘度指数向上剤であるポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン等が例示される。これらの流動点降下剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、基油に対して0.01~5質量%、好ましくは0.1~3質量%程度添加することが望ましい。
消泡剤としては、液状シリコーンが適しており、これを使用する場合、その添加量は、通常、基油に対して0.0005~0.01質量%程度である。
加水分解抑制剤としては、アルキルグリシジルエーテル類、アルキルグリシジルエステル類、アルキレングリコールグリシジルエーテル類、脂環式エポキシ類、フェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、ジ-tert-ブチルカルボジイミド、1,3-ジ-p-トリルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物が使用可能であり、通常、基油に対して0.05~2質量%程度である。
本発明の動力伝達用潤滑油基油に増ちょう剤を適宜組み合わせることにより、「グリース」とすることができる。
増ちょう剤としては、金属石鹸系増ちょう剤や複合体金属石鹸系増ちょう剤、非石鹸系増ちょう剤が挙げられる。
金属石鹸系増ちょう剤としては、ナトリウム石鹸やカルシウム石鹸、リチウム石鹸、特に、リチウム-12-ヒドロキシステアレート等の水酸基を有する脂肪族カルボン酸リチウム塩、リチウムステアレート等の脂肪族カルボン酸リチウム塩又はそれらの混合物等が例示される。
複合体金属石けん系増ちょう剤としては、水酸基を有する1価の脂肪族カルボン酸金属塩と2価の脂肪族カルボン酸金属塩とのコンプレックス等が挙げられ、具体的には複合体リチウム石けんや複合体アルミニウム石けんが例示される。
非石鹸系増ちょう剤としては、ベントナイトやシリカエアロゲル、ナトリウムテレフタラメート、ポリテトラフルオロエチレン、窒化ホウ素、ウレア化合物(脂環族、芳香族、脂肪族、ジウレア、トリウレア、テトラウレア、ウレア・ウレタン化合物等を含む)等が例示される。
上記の中でも、耐熱性及び耐水性、せん断安定性の観点より、リチウム石鹸、リチウムコンプレックス石鹸、ウレア化合物が増ちょう剤として好適であり、特に、ウレア化合物が好ましい。
これらの増ちょう剤は1種で又は適宜2種以上を組み合わせて用いることができ、その添加量は所定の効果を奏する限り特に限定されるものではない。
腐食防止剤としては、ナトリウムスルホネートやソルビタンエステルが例示され、通常、基油に対して0.1~3.0質量%程度添加される。
色相安定剤としては、置換ハイドロキノン、フルフラールアジン等が例示され、通常、基油に対して0.01~0.1質量%程度添加される。
かくして得られる本発明の動力伝達用潤滑油は、上述の通り、トラクション係数及び引火点が高く、低温流動性に優れた基油を含有することから、トラクションドライブ用潤滑油として好適である。
本発明の動力伝達用潤滑油基油及び一般式(1)で表されるエステル化合物は、動力伝達用潤滑油(特に、トラクションドライブ用潤滑油)に添加することにより、動力伝達用潤滑油のトラクション係数の向上を図ることができる。そのため、トラクション係数向上剤として用いることができる。
本発明の動力伝達用潤滑油は、動力伝達能が高く、振動や騒音の発生が小さく、さらに引火点が高いため、トラクションドライブ、即ち2以上の回転体からなる動力伝達装置の潤滑油として用いることができる。当該トラクションドライブを採用する装置としては、例えば、自動車、船舶、航空機、精密機器、ロボット等のモータ、変速機、ジェネレータ、減速機等が挙げられる。
以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、各例における潤滑油基油及び潤滑油組成物の物理特性及び化学特性は以下の方法により評価した。特に言及していない化合物は試薬を使用した。
<使用化合物>
・シクロヘキサンカルボン酸:シグマ-アルドリッチ社製
・2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸:シグマ-アルドリッチ社製
・3-メチル-シクロヘキサンカルボン酸:シグマ-アルドリッチ社製
・4-メチル-シクロヘキサンカルボン酸:シグマ-アルドリッチ社製
・安息香酸:東京化成工業株式会社製、商品名「Benzoic Acid」
・1-ノナン酸:東京化成工業株式会社製、商品名「Nonanoic Acid」
・2-へキシル-1-デカノール:東京化成工業株式会社製、商品名「2-Hexyl-1-decanol」
・3,5-ジメチル-シクロヘキサンカルボン酸:特開昭49-135950号公報を参考に3,5-ジメチル安息香酸(東京化成工業社製)を5質量%パラジウム-カーボン触媒存在下で、水素化反応し、得られた粗物を蒸留精製することにより、3,5-ジメチルシクロヘキサンカルボン酸を得た。
・2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクタノール:日産化学株式会社製、製品名「ファインオキソコール 180」
・アジピン酸ジイソデシル:新日本理化株式会社製 製品名「サンソサイザー DIDA」
・鉱物油Y:日油株式会社製、製品名「ポリブテン0N」
(a)酸価(AV)
JIS K2501(2003)に準拠して測定した。なお検出限界は0.01mgKOH/gである。
(b)水酸基価(OHV)
JIS K0070(1992)に準拠して測定した。なお検出限界は0.1mgKOH/gである。
[潤滑油基油の物性測定]
(c)トラクション係数
下記装置および条件にて試験した時の最大トラクション係数を測定し、トラクション係数(60℃、140℃)とした。
[測定条件]
装置:ボールオンリング型摩擦試験機(Phoenix Tribology社製、TE54型)
試験片形状:上試験片(直径25mmの球)、下試験片(直径50mmのリング)
試験片材質:SUJ2
滑り率:5%
試料温度:60℃、140℃
荷重:150N
<トラクション係数(60℃)の評価>
A:0.090以上
B:0.080以上0.090未満
C:0.080未満
<トラクション係数(140℃)の評価>
A:0.085以上
B:0.075以上0.085未満
C:0.075未満
(d)低温流動性試験(流動点)
JIS-K-2269(1987)に準拠して流動点を測定した。
<低温流動性の評価>
A:-35℃以下
B:-35℃を越え-30℃以下
C:-30℃を越える
(e)引火点
JIS K2265(クリーブランド開放式)に準拠して測定した。
<引火点の評価>
A:200℃以上
B:185℃以上200℃未満
C:185℃未満
(f)動力伝達用潤滑油基油の評価
動力伝達用潤滑油基油の評価としては、トラクション係数の評価、低温流動性の評価及び引火点の評価の結果において、Cが1以上あれば不適と、Bが2以下(他の評価はA)であれば良好と、Bが1以下(他の評価はA)であれば特に良好と評価される。
(g)IRスペクトル
赤外分光分析装置(株式会社パーキンエルマージャパン製、Spectrum400)を用いて、ATR法(減衰全反射法)により、得られたエステル化合物のIRスペクトルを測定した。
(h)プロトン核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)
核磁気共鳴装置(Bruker社製、DRX-500)を用いて、得られたエステル化合物のH-NMR(500MHz、重クロロホルム)を測定した。
[実施例1]
撹拌器、温度計、冷却管付き水分分留受器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸312.8g(2.20mol)、2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクタノール541.0g(2.00mol)、酸化スズ0.8g、エントレーナーとしてキシレン30gを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、徐々に230℃まで昇温した。キシレンが還流するように減圧度を調整しながら、理論生成水量(36.0g)を目処にして留出してくる生成水を水分分留受器で除去しつつ、エステル化反応を行った。反応終了後、残存する2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸とキシレンを減圧下で蒸留により除去してエステル化粗物を得た。次いで、得られたエステル化粗物の酸価に対して1.5倍当量の苛性ソーダ水溶液で中和した後、中性になるまで水洗を繰り返した。得られたエステル化粗物に硫酸マグネシウムを加えて脱水した後、濾過により硫酸マグネシウムを除去して、2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル631.5g(1.60mol)を得た。
得られたエステル化合物の酸価は、0.01mgKOH/g以下、水酸基価は、1mgKOH/g以下であった。当該エステル化合物を動力伝達用潤滑油基油(A)として評価した際の各物性を表1に示す。また、2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのIRスペクトル、H-NMRスペクトルを測定し、図1~2に示した。なお、H-NMRスペクトルの7.27ppm付近のピークは溶媒の重クロロホルムの残存プロトンのピークである。
IR(cm-1):2951,2866,1732,1466,1393,1378,1364,1317,1250,1172,1132,1045,1009
[実施例2]
2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸を3-メチル-シクロヘキサンカルボン酸312.8g(2.20mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、3-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル671.0g(1.70mol)を得た。
得られたエステル化合物の酸価は、0.01mgKOH/g以下、水酸基価は、1mgKOH/g以下であった。当該エステル化合物を動力伝達用潤滑油基油(B)として評価した際の各物性を表1に示す。また、3-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのIRスペクトル、H-NMRスペクトルを測定し、図3~4に示した。なお、H-NMRスペクトルの7.27ppm付近のピークは溶媒の重クロロホルムの残存プロトンのピークである。
IR(cm-1):2950,2866,1732,1458,1392,1377,1364,1247,1215,1176,1137,1089,1045,1006,969
[実施例3]
2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸を4-メチル-シクロヘキサンカルボン酸312.8g(2.20mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、4-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル678.8g(1.72mol)を得た。
得られたエステル化合物の酸価は、0.01mgKOH/g以下、水酸基価は、1mgKOH/g以下であった。当該エステル化合物を動力伝達用潤滑油基油(C)として評価した際の各物性を表1に示す。また、4-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのIRスペクトル、H-NMRスペクトルを測定し、図5~6に示した。なお、H-NMRスペクトルの7.27ppm付近のピークは溶媒の重クロロホルムの残存プロトンのピークである。
IR(cm-1):2950,2867,1731,1467,1456,1392,1377,1364,1246,1182,1138,1036,991
[実施例4]
2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸を3,5-ジメチル-シクロヘキサンカルボン酸343.7g(2.20mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、3,5-ジメチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル637.6g(1.56mol)を得た。
得られたエステル化合物の酸価は、0.01mgKOH/g以下、水酸基価は、1mgKOH/g以下であった。当該エステル化合物を動力伝達用潤滑油基油(D)として評価した際の各物性を表1に示す。また、3,5-ジメチル-シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのIRスペクトル、H-NMRスペクトルを測定し、図7~8に示した。なお、H-NMRスペクトルの7.27ppm付近のピークは溶媒の重クロロホルムの残存プロトンのピークである。
IR(cm-1):2950,2869,1732,1458,1392,1377,1364,1280,1245,1177,1140,1104,1011,970,946
[実施例5]
2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸をシクロヘキサンカルボン酸282.0g(2.20mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル624.3g(1.64mol)を得た。
得られたエステル化合物の酸価は、0.01mgKOH/g以下、水酸基価は、1mgKOH/g以下であった。当該エステル化合物を動力伝達用潤滑油基油(E)として評価した際の各物性を表1に示す。また、シクロヘキサンカルボン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチルのIRスペクトル、H-NMRスペクトルを測定し、図9~10に示した。なお、H-NMRスペクトルの7.27ppm付近のピークは溶媒の重クロロホルムの残存プロトンのピークである。
IR(cm-1):2935,2860,1732,1466,1451,1392,1377,1364,1311,1274,1245,1226,1193,1167,1132, 1076, 1038, 968, 926, 894, 845, 754
[比較例1]
アジピン酸ジイソデシルを動力伝達用潤滑油基油(a)として評価した際の各物性値を表2に示す。
[比較例2]
鉱物油Yを動力伝達用潤滑油基油(b)として評価した際の各物性を表2に示す。
[比較例3]
2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸を3-メチル-シクロヘキサンカルボン酸328.5g(2.31mol)に、2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクタノールを2-へキシル-1-デカノール509.1g(2.10mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、3-メチル-シクロヘキサンカルボン酸2-へキシル-1-デシル646.7g(1.76mol)を得た。
得られた化合物の酸価は、0.01mgKOH/g以下、水酸基価は、1mgKOH/g以下であった。当該化合物を動力伝達用潤滑油基油(c)として評価した際の各物性を表2に示す。
[比較例4]
2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸を1-ノナン酸348.1g(2.20mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、1-ノナン酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル706.4g(1.72mol)を得た。
得られた化合物の酸価は、0.01mgKOH/g以下、水酸基価は、1mgKOH/g以下であった。当該化合物を動力伝達用潤滑油基油(d)として評価した際の各物性を表2に示す。
[比較例5]
2-メチル-シクロヘキサンカルボン酸を安息香酸268.7g(2.20mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、安息香酸2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチル-1-オクチル651.8g(1.74mol)を得た。
得られた化合物の酸価は、0.01mgKOH/g以下、水酸基価は、1mgKOH/g以下であった。当該化合物を動力伝達用潤滑油基油(e)として評価した際の各物性を表2に示す。
Figure 2023012593000005
Figure 2023012593000006
表1から、実施例1~5に記載の本発明の動力伝達用潤滑油基油は、トラクション係数(60℃)が0.090以上かつトラクション係数(140℃)が0.085以上と高く、流動点が-30℃以下であり、また、引火点が190℃以上と高いことがわかる。
本発明の動力伝達用潤滑油基油は、高いトラクション係数、高い引火点及び良好な低温流動性を有することから、自動車、船舶、航空機及び精密機器等の動力伝達用潤滑油基油(特に、トラクションドライブ用潤滑油基油)として好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 一般式(1)
    Figure 2023012593000007
    [式中、R~Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]
    で表されるエステル化合物を含有する動力伝達用潤滑油基油。
  2. 一般式(1)に記載のR~Rが、同一又は異なって、それぞれ水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基である、請求項1に記載の動力伝達用潤滑油基油。
  3. 一般式(1)で表されるエステル化合物の含有量が、動力伝達用潤滑油基油中、70質量%以上である、請求項1又は請求項2に記載の動力伝達用潤滑油基油。
  4. 前記動力伝達用潤滑油基油がトラクションドライブ用潤滑油基油である、請求項1~3のいずれかに記載の動力伝達用潤滑油基油。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の動力伝達用潤滑油基油を含有する動力伝達用潤滑油。
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