JPH09286779A - 新規化合物レブラスタチン - Google Patents

新規化合物レブラスタチン

Info

Publication number
JPH09286779A
JPH09286779A JP30603596A JP30603596A JPH09286779A JP H09286779 A JPH09286779 A JP H09286779A JP 30603596 A JP30603596 A JP 30603596A JP 30603596 A JP30603596 A JP 30603596A JP H09286779 A JPH09286779 A JP H09286779A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lebrastatin
salt
measured
hygroscopicus
streptomyces
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP30603596A
Other languages
English (en)
Inventor
Toshio Takatsu
敏夫 高津
Akiko Muramatsu
亜紀子 村松
Masahiko Otsuki
昌彦 大槻
Shinichi Kurakata
慎一 蔵方
Ryuzo Enokida
竜三 榎田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sankyo Co Ltd
Original Assignee
Sankyo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sankyo Co Ltd filed Critical Sankyo Co Ltd
Priority to JP30603596A priority Critical patent/JPH09286779A/ja
Publication of JPH09286779A publication Critical patent/JPH09286779A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Other In-Based Heterocyclic Compounds (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 細胞内Rbタンパク質のリン酸化を阻害する
ことにより細胞周期をG1期で停止させる生物活性を有
し、制癌剤として有用な新規化合物を提供する。 【解決手段】 式 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬、殊にRbタ
ンパク質リン酸化阻害を作用点とし、細胞周期阻害活性
を有する、制癌剤として有用な新規化合物レブラスタチ
ン、該化合物の製造法および該化合物を生産する新規微
生物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、細胞増殖に関与する因子に関する
研究の進展に伴い、上皮細胞、内皮細胞および各種腫瘍
細胞の増殖をG1期で強力に抑制するサイトカインとし
て、トランスフォーミング成長因子β(transfo
rming growth factor β;以下
「TGFβ」という)の存在が明らかとなり、その作用
メカニズムについての研究が進んでいる[Koff, A., Oh
tsuki, M., Polyak, K., Roberts, J. M. and Massagu
e, J.,(1993) Science 260, 536参照]。しかるに、T
GFβ自体は、それ以外にも細胞外マトリクスタンパク
質の産生促進、免疫抑制等の多彩な生理作用を示すた
め、抗腫瘍活性のみを期待することは難しい[Massagu
e, J.,(1990) Ann. Rev. Cell Biol. 6, 579 参照]。
【0003】このTGFβ刺激による細胞周期のG1期
停止の作用メカニズムとして、細胞内のRbタンパク質
のリン酸化抑制が重要であることが報告されている[La
iho,M., DeCaprio, J. A., Ludlow, J. W., Livingston
D. M., and Massague, J.,(1990) Cell 62, 175 参
照]。Rbタンパク質をマイクロインジェクションで細
胞に導入したり、該タンパク質をコードする遺伝子を細
胞に導入して大量に発現させたりすると、細胞の増殖が
停止する[Bookstein, J., Shew, J. Y., Chen,P. L.,
Scully, P. and Lee, W. H. (1990) Science 247, 712
参照]。一方、Rbタンパク質をリン酸化すると考えら
れている酵素複合体、cdk2/サイクリンEをコード
する遺伝子を細胞に発現させると、細胞増殖のG1期停
止が解除され、細胞が増殖するようになることが報告さ
れている[Hinds, P. W., Mittnacht, S., Dulic, V.,
Arnold, A., Reed, S. I. and Weinberg, R. A. (1992)
Cell 70, 993 参照]。すなわち、Rbタンパク質は非
リン酸化型で細胞増殖を抑制し、リン酸化されると結果
的に細胞周期をG1期からS期へ移行させる。
【0004】非リン酸化Rbタンパク質は、E2Fと呼
ばれる転写制御因子と複合体を形成し、細胞周期をG1
期からS期へ移行させるために必要な、DNA複製に関
与する一連の遺伝子群の発現を抑制する[Chellappan,
S. P., Hiebert, S., Mudryj, M., Horowitz, J. M. an
d Nevins, J. R. (1991) Cell 65, 1053参照]。Rbタ
ンパク質がリン酸化されると、E2Fとの複合体形成が
解除され、E2Fの転写活性が回復し、その結果細胞周
期がG1期からS期へ進行する。
【0005】従って、各種腫瘍細胞に存在するリン酸化
型Rbタンパク質を非リン酸化型に回復させ、G1期か
らS期への移行を阻害することにより細胞増殖を抑制す
る薬理作用を有する化合物は、制癌剤として有用である
と考えられる。
【0006】従来臨床において利用されている制癌剤
は、細胞周期のS期に直接的に作用するDNA複製阻害
剤(アルキル化剤や代謝拮抗剤)、M期に作用する細胞
分裂阻害剤がほとんどである。一方、細胞周期をG1期
で停止させるタイプの薬剤としては、ラパマイシン[Pr
ice, D. J., Grove, J. R., Calvo, V., Avruch, J. an
d Bierer, B. E. (1992) Science 257, 973-977 参
照]、ロバスタチン[Keyomersi, K., et al. (1991) C
ancer Res. 51, 3602-3609参照]、ブチロラクトンI
[Kitagawa, M., et al. (1993) Oncogene 8, 2425-243
2 参照]等が報告されているが、現在までに制癌剤とし
て利用されている例はない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、Rb
タンパク質リン酸化阻害を作用点とし、細胞周期阻害活
性を有する、制癌剤として有用な新規化合物、該化合物
の製造法および該化合物を生産する新規微生物を提供す
ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、 (1) 下記の式(I):
【0009】
【化2】
【0010】で表わされる化合物レブラスタチンまたは
その塩、 (2) 下記の物理化学的性状; 1)物質の性状: 白色粉末状物質 2)融点: 222〜231℃ 3)溶解性: メタノール、ジメチルスルホキシドに可
溶、ノルマルヘキサン、クロロホルム、水に不溶 4)分子式: C294428 5)分子量: 548(FABマススペクトル法により
測定) 6)高分解能FABマススペクトル法により測定した精
密質量[M+ ]は以下の通りである: 実測値: 548.3055 計算値: 548.3099 7)紫外部吸収スペクトル: メタノール中で測定した
紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す: 225 nm (ε 16100, sh.), 250 nm (ε 6900), 285 nm
(ε 5800) 8)赤外部吸収スペクトル: 臭化カリウム(KBr)
錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは、以下に示す
極大吸収 (λmax ) を示す: 3355, 2930, 1712, 1660, 1605, 1500, 1380, 1310, 10
90, 1040,870 cm-1 9) 1H−核磁気共鳴スペクトル: ジメチルスルホキ
シド−d6中、内部基準にテトラメチルシランを用いて
測定した、 1H−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示す
通りである: 9.40 (1H, br. s), 9.26 (1H, s), 6.88 (1H, br. s),
6.51 (2H, br. s), 6.30 (1H, br. s), 5.87 (1H, br.
t),5.31 (1H, d, J = 9.8 Hz), 4.87 (1H, d, J = 7.5
Hz),4.37 (1H, br. d, J = 4.9 Hz), 3.63 (3H, s), 3.
33 (3H, s),3.28 (1H, m), 3.23 (3H, s), 3.03 (1H,
m),2.58 (1H, dd, J = 6.3, 13.4 Hz), 2.38 (1H, m),
2.35 (1H, m),2.20 (1H, m), 2.12 (1H, m), 1.73 (1H,
m), 1.68 (3H, s),1.55 (1H, m), 1.44 (3H, s), 1.35
(1H, m), 1.29 (1H, m),1.17 (1H, m), 0.91 (3H, d,
J = 6.5 Hz),0.81 (3H, d, J = 6.5 Hz) ppm. 10)13C−核磁気共鳴スペクトル: ジメチルスルホ
キシド−d6中、内部基準にテトラメチルシランを用い
て測定した、13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示
す通りである: 170.1 (s), 156.1 (s), 150.0 (s), 142.5 (s), 134.6
(d),134.5 (s), 133.4 (d), 133.4 (s), 132.2 (s), 12
9.7 (s),114.6 (d), 107.2 (d), 81.1 (d), 80.6 (d),
79.6 (d), 73.8 (d),59.7 (q), 58.2 (q), 56.4 (q), 3
5.8 (t), 34.4 (t), 33.6 (d),31.1 (d), 29.8 (t), 2
3.6 (t), 19.8 (q), 15.9 (q), 13.0 (q),11.6 (q) pp
m. 11)高速液体クロマトグラフィー: カラム: センシューパックODS−H−2151、6
φ×150mm(センシュー科学(株)社製) 溶媒: 25%アセトニトリル−67mMリン酸緩衝液
(pH6.8) 流速: 1.5ml/分 検出: UV210nm 保持時間: 13.1分; を有する化合物レブラスタチンまたはその塩、 (3) ストレプトマイセス属に属するレブラスタチン
生産菌を培養し、その培養物よりレブラスタチンを採取
することを特徴とする、レブラスタチンの製造法、 (4) ストレプトマイセス属に属するレブラスタチン
生産菌がストレプトマイセス・ハイグロスコピカス・サ
ブエスピー・ハイグロスコピカス(Streptomyceshygros
copicus subsp. hygroscopicus )SANK 6199
5(FERM BP−5140)である、(3)記載の
製造法、 (5) ストレプトマイセス属に属し、(1)または
(2)記載の化合物を生産することを特徴とする微生
物、 (6) ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス・サ
ブエスピー・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygro
scopicus subsp. hygroscopicus )SANK 6199
5(FERM BP−5140)である、(5)記載の
微生物、 (7) (1)または(2)記載の化合物、もしくはそ
れらの薬理学的に許容される塩を含むことからなる医
薬、 (8) (1)または(2)記載の化合物、もしくはそ
れらの薬理学的に許容される塩を含むことからなる制癌
剤、に関する。
【0011】本発明者らは、微生物二次代謝産物中より
Rbタンパク質リン酸化阻害作用を有する物質を探索し
た結果、オーストラリア国アリススプリングにて採取さ
れた土壌より分離した、ストレプトマイセス属に属する
ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス・サブエスピ
ー・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus
subsp. hygroscopicus )SANK 61995株の培
養液中に、Rbタンパク質リン酸化阻害作用を有する新
規化合物レブラスタチンが生産されることを見出し、本
発明を完成した。
【0012】本発明の前記式(I)を有するレブラスタ
チンは、いくつかの不斉炭素原子およびいくつかの二重
結合を有する。それゆえ、種々の光学および幾何異性体
が存在する。本発明においては、これらのレブラスタチ
ン異性体がすべて単一の式で示されているが、本発明は
ラセミ化合物を含むこれらの異性体およびこれらの異性
体の混合物をもすべて含むものである。立体特異的合成
法が使用される場合、または光学活性化合物が原料化合
物として使用される場合、個々のレブラスタチン異性体
は直接的に製造してもよいし、一方、異性体の混合物が
製造されれば、個々の異性体は常法により得てもよい。
【0013】本発明の化合物レブラスタチンは、当業者
に周知の方法を用いて塩にすることができる。本発明は
そのようなレブラスタチンの塩も包含する。レブラスタ
チンの塩としては、医学的に使用され、薬理学的に許容
されるものであれば特に限定はない。なお、レブラスタ
チンの塩が医薬以外の用途に用いられる場合、例えば中
間体として使用される場合にはなんら限定はない。その
ような塩としては、好適にはナトリウム塩、カリウム
塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム
塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アル
ミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバル
ト塩等の金属塩;アンモニウム塩のような無機塩;t−
オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン
塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステ
ル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、
グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン
塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジル
エチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン
塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチル
アミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニア塩、
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有
機塩等のアミン塩;および、グリシン塩、リジン塩、ア
ルギニン塩、オルニチン塩、アスパラギン塩のようなア
ミノ酸塩を挙げることができる。より好適には、薬理学
的に許容される塩として好ましく使用されるもの、すな
わち、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシ
ウム塩およびマグネシウム塩等を挙げることができる。
【0014】また、本発明の化合物レブラスタチンまた
はその塩は、溶剤和物となることがある。例えば、大気
中に放置したり、または、再結晶をすることにより、水
分を吸収し、吸着水が付いたり、水和物となる場合があ
るが、そのような溶剤和物も本発明に包含される。
【0015】さらに本発明は、生体内において代謝され
てレブラスタチンに変換される化合物、いわゆるプロド
ラッグもすべて含むものである。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の化合物レブラスタチン
は、ストレプトマイセス属に属する該化合物の生産菌を
適当な培地で培養し、該培養物から採取することによっ
て得られる。好適なレブラスタチン生産菌であるストレ
プトマイセス・ハイグロスコピカス・サブエスピー・ハ
イグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus subs
p. hygroscopicus )SANK 61995株(以下
「SANK 61995株」という)は、オーストラリ
ア国アリススプリングの土壌から常法に従って採集、分
離されたものである。
【0017】SANK 61995株の菌学的性状は次
の通りである。
【0018】1)形態学的特徴 インターナショナル・ストレプトマイセス・プロジェク
ト(International Streptomyces Project;以下「IS
P」という)規定[Shirling, E. B. and Gottlieb, D.
(1966) Int. J. Syst. Bacteriol. 16, 313-340参照]
の寒天培地上で28℃、14日間培養後の観察では、本
菌株の基生菌糸は非常に良好に伸長、分岐し、オリーブ
灰、茶味灰ないし黄味茶色を示すが、ノカルディア (No
cardia)属菌株様の断裂やジグザグ伸長は観察されな
い。気菌糸は単純分岐する。胞子鎖の形態は螺旋状を示
す。走査型電子顕微鏡による観察では、胞子の表面構造
はしわ状を示す。胞子は気菌糸上のみに形成されるが、
明瞭な胞子の境界を観察することは困難である。また、
菌核、菌糸の断裂、胞子嚢などの特殊器官は観察されな
い。
【0019】2)各種培養基上での諸性質 各種培養基上で28℃、14日間培養後の性状は以下の
表1に示す通りである。表中、ISP番号の記されてい
る培地の組成はそれぞれISPの規定の通りである。ま
た、項目Gは生育、同AMは気菌糸、同Rは裏面、同S
Pは可溶性色素をそれぞれ表す。色調の記述は「色の標
準(日本色彩研究所版)」によるものであり、カッコ内
の色調の表示は、マンセル方式に準拠したカラーナンバ
ーである。
【0020】
【表1】 3)生理学的性質 28℃で培養後、2乃至21日間に観察した本菌株の生
理学的性質は、表2に示した通りである。表中、培地1
は、イーストエキス・麦芽エキス寒天培地(ISP
2)を表す。
【0021】
【表2】 また、プリドハム・ゴトリーブ寒天培地(ISP 9)
を使用して、28℃で14日間培養後に観察した本菌株
の炭素源の資化性は表3に示す通りである。表中、
「+」は資化する、「±」は弱く資化する、「−」は資
化しないことを示す。
【0022】
【表3】 4)化学的分類学的性質 本菌株の細胞壁をベッカーらの方法[Becker, B., et a
l.,(1984) Applied Microbiology, 12, 421-423 参照]
に従い検討した結果、LL−ジアミノピメリン酸が検出
されたことから細胞壁タイプIであることが確認され
た。また、本菌株の全細胞中の糖成分を長谷川らの方法
[Hasegawa, T., et al. (1983) J. Gen.Appl. Microbi
ol. 29, 319-322参照]に従い検討した結果、特徴的な
パターンは認められなかった。
【0023】以上の菌学的性質から、本菌株は放線菌の
中でもストレプトマイセス (Streptomyces) 属に属する
ことが明らかとなった。さらに、シャーリングとゴトリ
ーブによるISP菌株記載[Shirling E. B. and Gottl
ieb, D., Int. J. Syst. Bacteriol. 18, 68-189 and 2
79-392 (1968); 19, 391-512 (1969); 22, 265-394 (19
72) 参照]、ワックスマン著、ジ・アクチノミセーテス
第2巻[Waksman, S.A. (1961) The Actinomycetes 2
参照]、ウィリアムズ等編、バージーズ・マニュアル・
オブ・システマチック・バクテリオロジー第4巻[Will
iams, S. T. etal. (1989) Bergey's Manual of Syste
matic Bacteriology 4 参照]を参照することにより既
知の菌種と比較したところ、本菌株はストレプトマイセ
ス・ハイグロスコピカス・サブエスピー・ハイグロスコ
ピカス(Streptomyces hygroscopicus subsp. hygrosco
picus )に極めて近縁であることが判明した。しかしな
がら、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス・サブ
エスピー・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygrosc
opicus subsp. hygroscopicus )とは、炭素源の資化
性、特にラフィノース資化性が陽性である点において差
異が認められた。
【0024】このような菌学的特徴を有する本菌株は、
明らかにストレプトマイセス・ハイグロスコピカス・サ
ブエスピー・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygro
scopicus subsp. hygroscopicus )とは異なる新菌株で
あると考えられるが、これらの差異のみをもって種を区
別することはできない。そこで、本発明者らは本菌株を
ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス・サブエスピ
ー・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus
subsp. hygroscopicus )SANK 61995と同定
した。該菌株は平成7年(1995年)6月20日付で
工業技術院生命工学工業技術研究所に国際寄託され、受
託番号FERM BP−5140が付された。
【0025】以上、SANK 61995株について説
明したが、放線菌の諸性質は一定したものではなく、自
然的、人工的に容易に変異を起こし得ることは周知の通
りである。本発明で使用しうる菌株は、そのようなすべ
ての変異株を包含する。すなわち本発明は、ストレプト
マイセス属に属し、レブラスタチンを生産するすべての
菌株を包含するものである。
【0026】本発明のレブラスタチン生産菌を培養する
に際し使用される培地としては、炭素源、窒素源、無機
イオンおよび有機栄養源等より選択されたものを適宜含
有する培地であれば、合成または天然培地のいずれでも
使用可能である。
【0027】該栄養源としては、従来真菌類や放線菌類
の菌株の培養に利用されている公知の、微生物が資化で
きる炭素源、窒素源および無機塩が使用できる。
【0028】具体的には、例えば炭素源としてはグルコ
ース、フルクトース、マルトース、シュクロース、マン
ニトール、グリセロール、デキストリン、オート麦、ラ
イ麦、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ、トウモロコシ
粉、大豆粉、綿実油、水飴、糖蜜、大豆油、クエン酸、
酒石酸などを単一で、あるいは併用して使用することが
できる。培地中の該炭素源の含量は、一般には培地量の
1〜10重量%で変量するが、この範囲に限定されな
い。
【0029】また、窒素源としては、一般にタンパク質
またはその水解物を含有する物質を用いることができ
る。好適な窒素源としては、例えば大豆粉、フスマ、落
花生粉、綿実粉、カゼイン加水分解物、ファーマミン、
魚粉、コーンスチープリカー、ペプトン、肉エキス、生
イースト、乾燥イースト、イーストエキス、マルトエキ
ス、ジャガイモ、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウ
ム、硝酸ナトリウム等を使用し得る。該窒素源は、単一
または併用して培地量の0.2〜6重量%の範囲で用い
られることが好ましい。
【0030】さらに栄養無機塩としては、ナトリウム、
アンモニウム、カルシウム、フォスフェート、サルフェ
ート、クロライド、カーボネート等のイオンを得ること
のできる通常の塩類を使用し得る。また、カリウム、カ
ルシウム、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム等の
微量の金属も使用され得る。
【0031】なお、液体培養に際しては、消泡剤として
シリコン油、植物油、界面活性剤等を使用することがで
きる。
【0032】SANK 61995株を培養してレブラ
スタチンを生産するための培地のpHは、好適には5.
0〜8.0である。
【0033】SANK 61995株の生育温度は12
〜36℃であるが、レブラスタチンを生産させるために
は該菌株を20〜28℃で培養することが好ましく、よ
り好適には26〜28℃で培養することが好ましい。
【0034】レブラスタチンは、SANK 61995
株を好気的に培養することにより得られるが、そのよう
な培養法としては、通常用いられる好気的培養法、例え
ば固体培養法、振とう培養法、通気攪拌培養法等を用い
ることができる。
【0035】小規模の培養においては、28℃で数日間
振とう培養を行うのが好適である。培養は、バッフル
(水流調節壁)のついた、あるいは通常の三角フラスコ
中で、1〜2段階の種の発育工程により開始する。種発
育段階の培地には、炭素源および窒素源を併用できる。
種フラスコは定温インキュベーター中で28℃、5日間
振とうするか、または充分に成長するまで振とうする。
成長した種は、第二の種培地、または、生産培地に接種
するのに用いる。中間の発育工程を用いる場合には、本
質的に同様の方法で成長させ、その一部を生産培地に接
種する。接種したフラスコを一定の温度で数日間振とう
培養し、培養終了後フラスコ内の培養物を遠心分離また
はろ過する。
【0036】大量培養の場合には、攪拌機や通気装置が
付いたジャーファーメンターあるいはタンクで培養する
のが好ましい。そのためにはまず栄養培地を121℃ま
で加熱して滅菌し冷却しておき、次いで、該滅菌済培地
に前述したような方法によって予め成長させておいた種
を接種する。その後の培養は28℃で通気攪拌して行
う。この方法は多量の化合物を得るのに適している。
【0037】培養の経過に伴って生産されるレブラスタ
チンの量は、培養液の一部を採取して高速液体クロマト
グラフィーを実施することにより測定することができ
る。レブラスタチン生産量は、通常3〜9日で最高値に
達する。
【0038】培養終了後、培養液中の菌体成分を、珪藻
土をろ過操作助剤とするろ過操作または遠心分離によっ
て分別し、そのろ液または上清中に存在するレブラスタ
チンを、高速液体クロマトグラフィーを指標にして、そ
の物理化学的性状を利用し抽出精製する。例えば、この
ろ液中に存在するレブラスタチンは、まず中性またはp
H3程度の酸性条件下で、水と混和しない有機溶剤、例
えばノルマルブタノール、メチルエチルケトン、酢酸エ
チル等の単独使用、またはそれらの組み合わせにより抽
出精製することができる。あるいは、吸着剤として、例
えば活性炭または吸着用樹脂であるアンバーライトXA
D−2、XAD−4(以上ローム・アンド・ハース社
製)等や、ダイヤイオンHP−10、HP−20、CH
P−20P、HP−50(以上三菱化成(株)社製)等
を使用することができる。レブラスタチンを含む溶液を
上記のごとき吸着剤の層を通過させて不純物を吸着させ
て取り除き、素通り画分を回収するか、または逆にレブ
ラスタチンを吸着させた後、メタノール水、アセトン
水、ノルマルブタノール水などを用いて溶出させる事に
より、レブラスタチンを分離することができる。
【0039】さらに、このようにして得られたレブラス
タチンは、シリカゲル、フロリジル、コスモシル(ナカ
ライテスク社製)のような担体を用いた吸着カラムクロ
マトグラフィー、セファデックスLH−20(ファルマ
シア社製)などを用いた分配カラムクロマトグラフィ
ー、トヨパールHW40F(東ソー(株)社製)などを
用いたゲルろ過クロマトグラフィー、または順相、逆相
カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー等により精
製することができる。
【0040】以上の分離、精製の手段を単独または適宜
組み合わせ、場合によっては反復して用いることによ
り、本発明の化合物レブラスタチンを分離精製すること
ができる。
【0041】以上のごとくして得られる本発明の化合物
レブラスタチンは、文献未掲載の新規化合物であるが、
そのRbタンパク質リン酸化阻害活性、または細胞周期
阻害活性は以下のようにして調べることができる。
【0042】(a)Rbタンパク質リン酸化阻害活性
[DeCaprio, J. A., Ludlow, J. W.,Figge, J., Shew,
J. Y., Huang, C. M., Lee, W. H., Marsilio, E., Pau
cha,E. and Livingston, D. M. (1988) Cell 54, 275参
照] Rbタンパク質リン酸化阻害活性は以下に記載す
るようなウエスタンブロット法を利用した方法により調
べることができる。すなわち、まずレブラスタチン存在
下、または非存在下で培養した細胞の細胞内タンパク質
を、界面活性剤および各種プロテアーゼ阻害剤を含む溶
液で抽出したものについてSDS−ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動を行い、ゲル内で分画されたタンパク質を
当業者に周知の方法を用いてニトロセルロース膜に転写
する。このニトロセルロース膜を抗Rbタンパク質抗体
を含む緩衝液中に浸すことにより膜上のRbタンパク質
に抗Rbタンパク質抗体を結合させる。さらに、該抗体
を、放射性同位元素や酵素等で標識された抗イムノグロ
ブリン抗体を用いて検出することにより、各サンプル中
のRbタンパク質を同定することができる。
【0043】リン酸化型Rbタンパク質と非リン酸化型
Rbタンパク質とは電気泳動での移動度が異なるため、
上記のウエスタンブロットの検出結果における両者のバ
ンドは容易に識別され得る。レブラスタチン添加によ
り、細胞内のリン酸化型Rbタンパク質のバンドは薄く
なり、非リン酸化型Rbタンパク質のバンドが濃くなる
ことから、レブラスタチンがRbタンパク質のリン酸化
を阻害する活性を有することが示される。
【0044】(b)チミジン取り込み阻害活性[Mache
r, B. A., Lockney, M., Moskal, J.R., Fung, Y. K. a
nd Sweeley, C. C. (1978) Exp. Cell Res., 117, 95参
照]培養細胞をレブラスタチン存在下または非存在下で
培養し、さらにトリチウム標識チミジン(以下「 3H−
TdR」という)を培地に添加して一定時間培養する。
細胞を回収し、シンチレーションカウンター等を用いて
細胞内に取り込まれた 3H−TdRの量を測定する。レ
ブラスタチンはこのチミジン取り込みを低濃度で阻害す
る。チミジンはS期のDNA複製の際に取り込まれるの
で、レブラスタチンが細胞周期をいずれかの段階で停止
させていることが示される。
【0045】(c)フローサイトメトリーによる細胞周
期阻害活性の検出[Crissman, H. A. and Tobey, R. A.
(1974) Science 184, 1297 参照] 対数増殖期にある
培養細胞をレブラスタチン存在下または非存在下で培養
した後、細胞を回収する。付着細胞や細胞どうしが接着
する細胞については、トリプシン等で分散させておく。
次いで、細胞をメタノール等を用いて固定することによ
り細胞周期を停止させる。さらに、ヨウ化プロピジウム
等、DNAに特異的に結合する蛍光標識剤を用いて細胞
内のDNAを蛍光標識した後、フローサイトメーターで
各細胞の蛍光強度を測定し、蛍光強度を横軸、細胞数を
縦軸とする度数分布を取得する。各細胞の蛍光強度はそ
の細胞のDNA量に比例するので、蛍光強度によりその
細胞の細胞周期を相対的に知ることができる。すなわ
ち、G1期の染色体数は2nであり、G2期およびM期
の染色体数は4nであるので、G2期からM期にある細
胞の蛍光強度はG1期の約2倍となり、S期の蛍光強度
は両者の間の値となる。レブラスタチン存在下で培養し
た細胞の度数分布においては、G1期に相当する細胞の
数が有意に増加することから、レブラスタチンがG1期
からS期への移行を阻害することが示唆される。
【0046】以上、レブラスタチンの生物活性の代表的
な評価方法を説明したが、評価方法はこれらに限定され
ず、既に当業者に知られているこれら以外の細胞周期阻
害活性の評価方法を用いることもできる。
【0047】本発明のレブラスタチンまたはその薬理学
的に許容される塩は種々の形態で投与される。その投与
形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散
剤、シロップ剤等による経口投与、または注射剤(静脈
内、筋肉内、皮下)、点滴剤、坐剤等による非経口投与
を挙げることができる。これらの各種製剤は、常法に従
って主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭
剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の
製剤技術分野において通常使用し得る既知の補助剤を用
いて製剤化することができる。
【0048】錠剤の形態に成形するに際しては、担体と
してこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば
乳糖、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、澱
粉、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ
酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロ
ップ、グルコース液、澱粉液、ゼラチン溶液、カルボキ
シメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リ
ン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤;乾燥
澱粉、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、
炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチ
レンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリ
ウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉、乳糖等の崩
壊剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等
の崩壊抑制剤;第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸
ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、澱粉等の保湿
剤;澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状
ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、硼酸
末、ポリエチレングリコール等の潤沢剤等が例示でき
る。さらに錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、
例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコ
ーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができ
る。
【0049】丸剤の形態に成形するに際しては、担体と
してこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば
グルコース、乳糖、カカオバター、澱粉、硬化植物油、
カオリン、タルク等の賦形剤;アラビアゴム末、トラガ
ント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤;ラミナラン
寒天等の崩壊剤等が例示できる。
【0050】坐剤の形態に成形するに際しては、担体と
してこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば
ポリエチレングリコール、カカオバター、高級アルコー
ル、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グ
リセリド等を挙げることができる。
【0051】注射剤として調製される場合には、液剤お
よび懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であるのが好ま
しく、これら液剤、乳剤および懸濁剤の形態に成形する
に際しては、希釈剤としてこの分野で慣用されているも
のをすべて使用でき、例えば水、エタノール、プロピレ
ングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、
ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエ
チレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることがで
きる。なお、この場合、等張性の溶液を調製するのに十
分な量の食塩、グルコース、あるいはグリセリンを医薬
製剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、
緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。
【0052】さらに必要に応じて着色剤、保存剤、香
料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有せしめてもよ
い。
【0053】上記医薬製剤中に含まれる有効成分化合物
の量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、通
常全組成物中1−70重量%、好ましくは1−30重量
%含まれる量とするのが適当である。
【0054】上記医薬製剤の投与方法は特に限定はな
く、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾
患の程度等に応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、液
剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤およびカプセル剤の場合には
経口投与される。また注射剤の場合には単独であるいは
グルコース、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内
投与され、さらには必要に応じて単独で筋肉内、皮内、
皮下もしくは腹腔内投与される。坐剤の場合には直腸内
投与される。
【0055】その使用量は症状、年齢、体重、投与方法
および剤形等によって異なるが、通常は成人に対して1
日あたり、上限として2000mg(好ましくは100
0mg)であり、下限として0.1mg(好ましくは1
mg、さらに好ましくは10mg)を症状に応じて1回
または数回に分けて投与することができる。
【0056】製剤例. カプセル剤 レブラスタチン 100mg 乳糖 100mg トウモロコシ澱粉 148.8mgステアリン酸マグネシウム 1.2mg 全量 350mg 上記処方の粉末を混合し、60メッシュのふるいに通し
た後、この粉末をゼラチンカプセルに入れ、カプセル剤
とする。
【0057】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】1)ストレプトマイセス・ハイグロスコピ
カス・サブエスピー・ハイグロスコピカス(Streptomyc
es hygroscopicus subsp. hygroscopicus )SANK
61995(FERM BP−5140)株の培養 以下に記載する組成の培地80mlを入れた500ml
の三角フラスコ(種フラスコ)にSANK 61995
株を無菌的に1白金耳接種し、次いで該種フラスコを、
ロータリー振とう機中で28℃、210rpmにて振と
うして、4日間の前培養を行った。
【0059】本実施例で使用された培地の組成は以下の
通りである: グリセロール 25g グルコース 25g 生イースト 10g 脱脂大豆粉 10g リン酸一カリウム 0.5g 硫酸マグネシウム・七水和物 0.5g 炭酸カルシウム 5g 消泡剤 (CB−442:日本油脂(株)社製) 50mg 水道水 1000ml 滅菌前のpH;7.0 滅菌:オートクレーブにて121℃で滅菌する。
【0060】本培養は以下に記載するようにして行っ
た。すなわち、滅菌済の上記の組成の培地80mlの入
った500ml容の三角フラスコ10本に、種培養液を
それぞれ1ml入れ、ロータリー振とう機で28℃、2
10rpmで4日間振とう培養した。
【0061】2)単離精製 本培養終了後、本培養フラスコ10本分の培養液800
mlに、等量のアセトンを添加し、1時間攪拌し可溶物
を抽出した。この抽出液を、セライトをろ過助剤として
ろ過した後、等量の酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エ
チル層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾
燥し、ロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮を行
うことにより、褐色の油状物質960mgが得られた。
【0062】次に、該油状物質をメタノール300ml
に懸濁し、該懸濁液を3000rpmで遠心分離した。
この操作を3回繰り返し、可溶性画分(上清)と不溶性
画分(沈澱)に分画した。得られた上清をロータリーエ
バポレーターを用いて1mlまで減圧濃縮し、再び生じ
た沈澱を3000rpmで遠心分離することにより除去
した。上清を25%アセトニトリル水溶液で平衡化した
HPLCカラム(センシューパックH5251 OD
S、20φ×250mm(センシュー科学(株)社
製))にチャージし、14ml/分で展開した。溶出液
の紫外部210nmでの吸収を検出し、25〜27分の
間に溶出されるピークを分取した。得られた画分を濃
縮、凍結乾燥することにより、11mgのレブラスタチ
ンが純品として得られた。
【0063】
【発明の効果】試験例1. Rbタンパク質リン酸化阻害活性 レブラスタチンのRbタンパク質リン酸化阻害活性を、
以下に記載するウエスタンブロット法により調べた。す
なわち、まずヒト肺癌由来細胞株A549(アメリカン
・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)N
o.CCL−185)を、10%のウシ胎児血清(サミ
ット社製)を含むRPMI1640培地(ギブコ−BR
L社製)で1×105 個/mlとなるように調整し、細
胞培養用6穴プレート(コーニング社製)に3mlずつ
分注した。翌日被検サンプルを添加し、さらに24時間
培養した。培地を除いた後、細胞をトリス緩衝生理食塩
水(25mMトリス−塩酸(pH8.0)、150mM
塩化ナトリウム:以下「TBS」という)で2回洗浄
し、抽出用緩衝液(50mM トリス−塩酸(pH8.
0)、120mM 塩化ナトリウム、0.5% ノニデ
ットP−40、100mM フッ化ナトリウム、200
mM バナジン酸ナトリウム、600mM フッ化メチ
ルフェニルスルフォニル、10μg/ml ロイペプチ
ン、10μg/ml アンチパイン、100μg/ml
ベンザミジン、50μg/ml アプロチニン、10
0μg/ml ダイズ・トリプシンインヒビター:試薬
はすべてシグマ社製)100μlをプレートに加え、4
℃にて15〜20分放置して細胞内タンパク質を抽出し
た。
【0064】上記のごとくして得られた細胞内タンパク
質抽出液に、電気泳動試料用緩衝液(0.5M トリス
−塩酸(pH6.8)、40%(v/v)グリセロー
ル、8%(w/v)ラウリル硫酸ナトリウム(以下「S
DS」という)、0.05%(w/v)ブロムフェノー
ルブルー、0.4M ジチオスレイトール)50μlを
加え、95℃で2分間加熱した。この処理液を、SDS
ポリアクリルアミドゲル(7.5%プレキャストゲル
(第一化学薬品(株)社製)を使用)で電気泳動した。
分子量マーカーとして着色済β−ガラクトシダーゼ(分
子量約115kDa;シグマ社製)を別のレーンで同時
に電気泳動した。該マーカーのバンドがゲル上端から
6.5cm移動するまで泳動を行い、該マーカーのバン
ドの位置を中心としてその上下各1.5cmまでの部分
(合計3cm幅)を泳動方向に対して直角に切り取り、
バッファータンク型転写装置(トランスブロット;バイ
オラッド社製)を用いてブロッティング用緩衝液(25
mM トリスヒドロキシメチルアミノメタン、190m
M グリシン、20%メタノール)中でニトロセルロー
ス膜に転写した(30V定電圧、一晩)。この際、緩衝
液の温度を該転写装置に付属の冷却装置を用いて4℃に
保持した。
【0065】後の操作における抗体の非特異的吸着を防
ぐため、転写終了後のニトロセルロース膜を、ブロッキ
ング溶液(0.1%のTween20を含むTBS(以
下「TBST」という)にスキムミルク(雪印(株)社
製)を5%(w/v)濃度に溶解した溶液)中に1時間
浸した後、TBSTで3回洗浄した。次いで、膜をTB
STで100倍希釈(終濃度1μg/ml)したモノク
ローナルマウス抗ヒトRb抗体(G3−245:ファー
ミンジェン社製)に接触させ、1時間穏やかに振とうし
た。さらに、TBSTで膜を3回洗浄した後、TBST
で10000倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウス
イムノグロブリン抗体(アマシャム社製)に接触させ3
0分間穏やかに振とうした。膜をTBSTで5回洗浄し
た後、ECLシステム(アマシャム社製)を用いて、膜
上に残存するペルオキシダーゼの触媒反応による化学発
光を開始させた。その後直ちに、この化学発光を通常の
オートラジオグラフィーと同様の方法で検出した。すな
わち、膜をX線フィルムに重ねて30秒から10分間感
光させ、以下現像、固定した。
【0066】非リン酸化型とリン酸化型のRbタンパク
質の移動度の違いから、上記の電気泳動条件により、ウ
エスタンブロットの結果における両者のバンドは明瞭に
区別される。すなわち、非リン酸化型Rbタンパク質の
バンドは分子量110kDaに相当する位置に検出さ
れ、一方リン酸化型Rbタンパク質のバンドは分子量1
12〜116kDaに相当する位置に検出される。
【0067】培地中にレブラスタチンを添加しなかった
細胞のサンプルでは、リン酸化型Rbタンパク質のバン
ドのみ検出された。一方、終濃度3μg/mlのレブラ
スタチンを添加して24時間培養した細胞のサンプルで
は、リン酸化型と非リン酸化型のバンドがほぼ同じ濃さ
で検出された。従って、レブラスタチンがA549細胞
のRbタンパク質のリン酸化を阻害していることが示唆
された。
【0068】試験例2. チミジン取り込み阻害活性 A549細胞を、被検サンプルを含む培地(10%のウ
シ胎児血清を含むRPMI1640)中で24時間培養
した後、比活性0.5μCi/25μlのトリチウム標
識チミジン(以下「 3H−TdR」という)/リン酸緩
衝生理食塩液(8.0g/リットル 塩化ナトリウム、
0.2g/リットル 塩化カリウム、2.9g/リット
ル リン酸二ナトリウム・12水和物、0.2g/リッ
トル リン酸一カリウム;以下「PBS」という)を添
加し、37℃、2時間培養することにより、細胞をパル
スラベルした。インキュベーション終了後、プレートご
と冷凍庫に入れて凍結させ、次いでプレートを室温に戻
した。セルハーベスター(スキャトロン社製)を用いて
グラスフィルター上に細胞を集め、ベータプレートシス
テム(ファルマシア社製)を用いて、取り込まれた 3
−TdRの量を測定した。
【0069】その結果、レブラスタチンがA549細胞
のチミジン取り込みを50%阻害する濃度(IC50)は
1.5μg/mlであったことから、レブラスタチンが
低濃度でDNA複製を阻害することが示された。
【0070】試験例3. フローサイトメトリーによる
細胞周期阻害活性の検出 対数増殖期にあるA549細胞を、10%のウシ胎児血
清を含むRPMI1640培地で1×105 個/mlに
調整し、60mmφディッシュ(底面積21cm2 )に
撒き、翌日被検サンプルを添加後、24時間培養した。
0.05%トリプシン−0.02%エチレンジアミン四
酢酸溶液(シグマ社製)で細胞を単細胞化し、PBSで
2回洗浄した。次いで、50%メタノール/PBS中に
細胞を浮遊させ、−20℃に15分間以上置くことによ
り細胞を固定した。固定した細胞をPBSで2回洗浄し
た後、1mg/mlのリボヌクレアーゼA/PBSを1
00μl加え、37℃で60分間保温した。20μg/
mlのヨウ化プロピジウム(シグマ社製)/PBSを1
00μl加え、室温にて10分間以上インキュベートす
ることにより、DNAをヨウ化プロピジウムで標識した
後、PBSを50μl添加し、解析用試料とした。該試
料をフローサイトメーター(サイトエース180;日本
分光(株)社製)で解析し、蛍光強度(横軸)による細
胞数(縦軸)の度数分布を取得した。フローサイトメー
ターの測定条件設定は以下の通りであった。
【0071】 励起波長: 488nm 検出波長: 600±20nm 前方散乱ゲイン: 2 側方散乱ゲイン: 180 蛍光強度ゲイン: 390 上記方法により取得される度数分布は、蛍光強度の大き
さにより以下の表4に示す3つの領域に分けることがで
きる。
【0072】
【表4】 解析の結果、終濃度10μg/mlのレブラスタチンを
含む培地で培養した細胞から調製した試料では、上記の
G1期に相当する領域の度数(細胞数)の合計がレブラ
スタチン非添加細胞と比較して有意に増加していた。従
って、レブラスタチンがA549細胞のG1期からS期
への移行を阻害することが示された。
【0073】以上のごとく、本発明の化合物レブラスタ
チンは、低濃度でRb蛋白のリン酸化阻害作用を示す新
規細胞周期阻害剤であり、制癌剤として有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:55) (C12P 17/10 C12R 1:55) (72)発明者 蔵方 慎一 東京都品川区広町1丁目2番58号 三共株 式会社内 (72)発明者 榎田 竜三 茨城県つくば市御幸が丘33 三共株式会社 内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の式(I): 【化1】 で表わされる化合物レブラスタチンまたはその塩。
  2. 【請求項2】 下記の物理化学的性状; 1)物質の性状: 白色粉末状物質 2)融点: 222〜231℃ 3)溶解性: メタノール、ジメチルスルホキシドに可
    溶、ノルマルヘキサン、クロロホルム、水に不溶 4)分子式: C294428 5)分子量: 548(FABマススペクトル法により
    測定) 6)高分解能FABマススペクトル法により測定した精
    密質量[M+ ]は以下の通りである: 実測値: 548.3055 計算値: 548.3099 7)紫外部吸収スペクトル: メタノール中で測定した
    紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す: 225 nm (ε 16100, sh.), 250 nm (ε 6900), 285 nm
    (ε 5800) 8)赤外部吸収スペクトル: 臭化カリウム(KBr)
    錠剤法で測定した赤外部吸収スペクトルは、以下に示す
    極大吸収 (λmax ) を示す: 3355, 2930, 1712, 1660, 1605, 1500, 1380, 1310, 10
    90, 1040,870 cm-1 9) 1H−核磁気共鳴スペクトル: ジメチルスルホキ
    シド−d6中、内部基準にテトラメチルシランを用いて
    測定した、 1H−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示す
    通りである: 9.40 (1H, br. s), 9.26 (1H, s), 6.88 (1H, br. s),
    6.51 (2H, br. s), 6.30 (1H, br. s), 5.87 (1H, br.
    t),5.31 (1H, d, J = 9.8 Hz), 4.87 (1H, d, J = 7.5
    Hz),4.37 (1H, br. d, J = 4.9 Hz), 3.63 (3H, s), 3.
    33 (3H, s),3.28 (1H, m), 3.23 (3H, s), 3.03 (1H,
    m),2.58 (1H, dd, J = 6.3, 13.4 Hz), 2.38 (1H, m),
    2.35 (1H, m),2.20 (1H, m), 2.12 (1H, m), 1.73 (1H,
    m), 1.68 (3H, s),1.55 (1H, m), 1.44 (3H, s), 1.35
    (1H, m), 1.29 (1H, m),1.17 (1H, m), 0.91 (3H, d,
    J = 6.5 Hz),0.81 (3H, d, J = 6.5 Hz) ppm. 10)13C−核磁気共鳴スペクトル: ジメチルスルホ
    キシド−d6中、内部基準にテトラメチルシランを用い
    て測定した、13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示
    す通りである: 170.1 (s), 156.1 (s), 150.0 (s), 142.5 (s), 134.6
    (d),134.5 (s), 133.4 (d), 133.4 (s), 132.2 (s), 12
    9.7 (s),114.6 (d), 107.2 (d), 81.1 (d), 80.6 (d),
    79.6 (d), 73.8 (d),59.7 (q), 58.2 (q), 56.4 (q), 3
    5.8 (t), 34.4 (t), 33.6 (d),31.1 (d), 29.8 (t), 2
    3.6 (t), 19.8 (q), 15.9 (q), 13.0 (q),11.6 (q) pp
    m. 11)高速液体クロマトグラフィー: カラム: センシューパックODS−H−2151、6
    φ×150mm(センシュー科学(株)社製) 溶媒: 25%アセトニトリル−67mMリン酸緩衝液
    (pH6.8) 流速: 1.5ml/分 検出: UV210nm 保持時間: 13.1分; を有する化合物レブラスタチンまたはその塩。
  3. 【請求項3】 ストレプトマイセス属に属するレブラス
    タチン生産菌を培養し、その培養物よりレブラスタチン
    を採取することを特徴とする、レブラスタチンの製造
    法。
  4. 【請求項4】 ストレプトマイセス属に属するレブラス
    タチン生産菌がストレプトマイセス・ハイグロスコピカ
    ス・サブエスピー・ハイグロスコピカス(Streptomyces
    hygroscopicus subsp. hygroscopicus )SANK 6
    1995(FERM BP−5140)である、請求項
    3記載の製造法。
  5. 【請求項5】 ストレプトマイセス属に属し、請求項1
    または2記載の化合物を生産することを特徴とする微生
    物。
  6. 【請求項6】 ストレプトマイセス・ハイグロスコピカ
    ス・サブエスピー・ハイグロスコピカス(Streptomyces
    hygroscopicus subsp. hygroscopicus )SANK 6
    1995(FERM BP−5140)である、請求項
    5記載の微生物。
  7. 【請求項7】 請求項1または2記載の化合物、もしく
    はそれらの薬理学的に許容される塩を含むことからなる
    医薬。
  8. 【請求項8】 請求項1または2記載の化合物、もしく
    はそれらの薬理学的に許容される塩を含むことからなる
    制癌剤。
JP30603596A 1996-02-22 1996-11-18 新規化合物レブラスタチン Pending JPH09286779A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30603596A JPH09286779A (ja) 1996-02-22 1996-11-18 新規化合物レブラスタチン

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3464996 1996-02-22
JP8-34649 1996-02-22
JP30603596A JPH09286779A (ja) 1996-02-22 1996-11-18 新規化合物レブラスタチン

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH09286779A true JPH09286779A (ja) 1997-11-04

Family

ID=26373474

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP30603596A Pending JPH09286779A (ja) 1996-02-22 1996-11-18 新規化合物レブラスタチン

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH09286779A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005061461A1 (ja) * 2003-12-24 2005-07-07 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. ヒートショックプロテイン90(hsp90)ファミリー蛋白質阻害剤
WO2007001049A1 (ja) 2005-06-29 2007-01-04 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. ベンゼノイドアンサマイシン誘導体

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005061461A1 (ja) * 2003-12-24 2005-07-07 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. ヒートショックプロテイン90(hsp90)ファミリー蛋白質阻害剤
WO2007001049A1 (ja) 2005-06-29 2007-01-04 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. ベンゼノイドアンサマイシン誘導体
US7776849B2 (en) 2005-06-29 2010-08-17 Kyowa Hakko Kirin Co., Ltd. Benzenoid ansamycin derivative

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2007291075A (ja) 新規化合物ステレニン及びその製造方法
JPH08175990A (ja) Pi3キナーゼ阻害剤とその製造法
JPH06339390A (ja) Bu−4164e−a及びb、プロリルエンドペプチダーゼインヒビター
KR0145680B1 (ko) "류스트로덕신"으로 명명된 신규 화합물, 그의 제조방법 및 그의 치료학적 용도
KR0135600B1 (ko) 항암 항생물질 mi43-37f11, 그 제조방법 및 그 용도
JPH09286779A (ja) 新規化合物レブラスタチン
US5789602A (en) Physiologically active substances PF1092A, PF1092B and PF1092C, process for the production thereof, and contraceptives and anticancer drugs containing the same as active ingredients
JPH0394692A (ja) 生理活性物質be―18257類
KR940004128B1 (ko) 혈소판 활성화 인자 길항 물질인 "포막틴(phomactins)", 그의 제조방법 및 용도
JP3641013B2 (ja) 新規な細胞接着阻害剤マクロスフェライドa及びb並びにそれらの製造法
JPH06256391A (ja) 薬理作用を有するアピオクレアクリソスペルマからの活性ペプチドであるクリソスペルミン類、その生産方法およびその使用
US20050131061A1 (en) Angiogenesis inhibitors
JP2001286292A (ja) 新規化合物f−90558及びその製造法
JP2000159765A (ja) 新規抗細菌化合物
JPH09316068A (ja) 骨吸収阻害物質a−75943
JPH05255184A (ja) 新規化合物イリシコリン酸aまたはb
JP2002080446A (ja) 新規化合物f−15603及びその製造法
JPH1129561A (ja) 新規化合物am6105及びその製法
JP2001335482A (ja) マクロライド化合物を含有する医薬組成物
JP2000226391A (ja) マクロライド化合物、および免疫抑制剤の評価方法
WO2000032604A1 (fr) Composes de macrolides et methodes d'evaluation d'immunodeprimants
JPH10114786A (ja) 新規抗真菌化合物
JPH09124683A (ja) 新規化合物a38840
JPH1017527A (ja) 抗菌性物質be−39589類及びその製造法
JP2000344768A (ja) 新規化合物a−77543及びその製造法