JPH09259430A - 磁気記録媒体の製造方法及びこれを用いた磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体の製造方法及びこれを用いた磁気記録媒体

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JPH09259430A
JPH09259430A JP8066832A JP6683296A JPH09259430A JP H09259430 A JPH09259430 A JP H09259430A JP 8066832 A JP8066832 A JP 8066832A JP 6683296 A JP6683296 A JP 6683296A JP H09259430 A JPH09259430 A JP H09259430A
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JP8066832A
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Seiichi Miyai
清一 宮井
Teiji Honjo
禎治 本庄
Atsumichi Kawashima
敦道 川島
Minehiro Sotozaki
峰広 外崎
Shunji Amano
俊二 天野
Hiroshi Hayashi
弘志 林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁性層3に錆が発生することなく、信号を正
確に記録されるとともに記録された信号を正確に再生さ
れることのできる磁気記録媒体1を提供する。 【解決手段】 真空室と、この真空室内に配設された円
筒キャンと、このキャンに対向して配設される反応装置
とを備える成膜装置が用いられる。真空室内で非磁性支
持体2上に金属磁性薄膜3が形成されてなるフィルムを
円筒キャンの周面に走行させ、反応装置により上記フィ
ルム上に硬質カーボンよりなる保護層5を化学的気相成
長法によって形成し、反応装置により上記保護層に対し
てプラズマ化したガスを照射して表面処理をすることを
特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体及び
その製造方法に関し、特に保護層の表面及びその内部の
カルボキシル基の量がフーリエ変換−赤外分光法(以
下、FT−IR法と称す。)における測定限度以下の量
である磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、オーディオテープ、ビデオテ
ープ等の磁気テープとしては、酸化物磁性粉末あるいは
合金磁性粉末等の粉末磁性材料と塩化ビニル−酢酸ビニ
ル系共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリ
ウレタン樹脂等の有機バインダーを有機溶媒とともに分
散、混練した磁性塗料を、非磁性支持体上に塗布、乾燥
することにより作製される、いわゆる塗布型の磁気記録
媒体が広く使用されている。
【0003】これに対して、高密度磁気記録への要求の
高まりとともに、Co−Ni合金、Co−Cr合金、C
o−O等の金属磁性材料を、メッキや真空薄膜形成手段
(真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティン
グ法等)によってポリエステルやポリアミド、ポリイミ
ド等の非磁性支持体上に直接被着することで作製され
る、いわゆる金属磁性薄膜型の磁気記録媒体が提案され
注目を集めている。
【0004】この金属磁性薄膜型の磁気記録媒体は、抗
磁力や角形比等に優れるとともに、磁性層の厚みを極め
て薄くできるため、記録減磁や再生時の厚み損失が著し
く小さく、短波長での電磁変換特性に優れる。また、そ
ればかりでなく、磁性層中に非磁性材であるバインダー
を混入する必要がないため磁性材料の充填密度を高める
ことができること等、数々の利点を有している。すなわ
ち、この金属磁性薄膜型の磁気記録媒体は、磁気特性的
な優位さのため高密度磁気記録用の媒体として主流にな
ると考えられる。
【0005】なかでも、金属磁性材料を斜め方向から蒸
着することで磁性層を形成した、斜方蒸着タイプの磁気
記録媒体は、電磁変換特性にとりわけ優れ、大きな再生
出力が得られることから既に実用化されている。
【0006】このような磁気記録媒体には、非磁性支持
体、磁性層の他に、耐久性や走行性等の改善を目的とし
て、磁性層上に硬質カーボン膜よりなる保護層が設けら
れるのが通常である。
【0007】保護層は、磁性層を磁気ヘッドとの摺動か
ら保護するためのものである。磁気記録媒体では、高密
度化に対応してスペーシングロスを抑えるために、表面
が一層平滑化される方向にある。しかし、磁性層表面が
平滑になると、ヘッドに対する接触面積が大きくなるた
めに、摩擦力が増大し、磁性層に生ずるせん断応力が大
きくなる。このような厳しい摺動条件から磁性層を保護
するために、上記保護層は重要である。
【0008】この保護層は、CVD法を用いたCVD装
置によって形成される。このCVD装置は、非磁性支持
体の磁性層が形成された面に対して硬質カーボン膜を用
いて保護層を形成する。CVD装置は、炭化水素系の原
料ガスを、例えばプラズマ雰囲気中に導入することによ
り分解し、非磁性支持体の磁性層が形成された面に対し
て被着させる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来の磁気記録媒体及
びその製造方法では、原料ガス中の炭化水素がプラズマ
化されてラジカルとなり、この原料ガス中のラジカルが
単結合や二重結合を形成するいわゆるラジカル反応が進
むことによって硬質カーボン膜を形成していた。
【0010】しかしながら、従来の手法では、上述のラ
ジカル反応が完全に進まない場合、硬質カーボン膜中或
いは硬質カーボン膜表面に活性なラジカルが存在してい
た。硬質カーボン膜中或いは硬質カーボン膜表面の活性
ラジカルは、大気中の酸素や水と反応してカルボキシル
基等の官能基を生じていた。これによって、従来の磁気
記録媒体及びこの磁気記録媒体の製造方法においては、
硬質カーボン膜がその内部或いは表面に存在するカルボ
キシル基等により酸性を示し、金属磁性材料により形成
された磁性層に錆を生じさせる。
【0011】したがって、従来の手法では、磁性層に錆
が生じることによって、磁気記録媒体の品質を高度に保
持することが困難であるといった問題点があった。
【0012】また、従来の手法では、磁気記録媒体がそ
の磁性層に錆が生じることによって、信号を正確に記録
することが困難であるとともに記録された信号を正確に
再生することが困難であるといった問題点があった。
【0013】そこで、本発明は、上述した従来の磁気記
録媒体の問題点を解決し、磁性層に錆を生じさせること
がなく、高品質であるとともに信号の正確な記録及び再
生を行うことのできる磁気記録媒体を提供することを目
的に提案されたものである。
【0014】また、本発明は、上述した従来の磁気記録
媒体の製造方法の問題点を解決し、磁性層に錆が発生す
ることなく、高品質であるとともに信号の正確な記録及
び再生を行うことのできる磁気記録媒体の製造方法を提
供することを目的に提案されたものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】この目的を達成した本発
明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体上に金属磁性薄
膜よりなる磁性層が形成されるとともに、この磁性層上
に硬質カーボンよりなる保護層が化学的気相成長法によ
り形成されている。磁気記録媒体は、この保護層を構成
する硬質カーボンに含まれるカルボキシル基の量がフー
リエ変換−赤外分光法における測定限界以下であること
を特徴とする。
【0016】保護層を構成する硬質カーボンにカルボキ
シル基が存在すると、吸着水の存在下で金属材料の腐食
が進み易く、金属磁性薄膜に容易に錆が発生する。
【0017】本発明に係る磁気記録媒体においては、保
護層を構成する硬質カーボンにカルボキシル基がほとん
ど存在しないので、金属磁性薄膜の腐食が抑えられ、錆
の発生が抑えられる。
【0018】また、上述した目的を解決した本発明に係
る磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に金属磁
性薄膜よりなる磁性層を形成した後、脂環式炭化水素を
原料ガスとして化学的気相成長法により硬質カーボンよ
りなる保護層を前記磁性層上に形成することを特徴とす
る。
【0019】さらに、上述した目的を解決した本発明に
係る磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に金属
磁性薄膜よりなる磁性層を形成した後、芳香族炭化水素
を原料ガスとし、キャリアーガスを供給しながら化学的
気相成長法により硬質カーボンよりなる保護層を前記磁
性層上に形成することを特徴とする。
【0020】さらに、上述した目的を解決した本発明に
係る磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に金属
磁性薄膜よりなる磁性層を形成し、この上に化学的気相
成長法により硬質カーボンよりなる保護層を形成した
後、保護層に対してプラズマ処理を行うことを特徴とす
る。
【0021】したがって、以上のような磁気記録媒体の
製造方法によれば、化学的気相成長法の際の原料ガスと
して脂環式炭化水素ガス、或いは芳香族炭化水素ガスと
キャリアーガスとの混合ガスを用いているので、カルボ
キシル基が殆ど存在しない状態で硬質カーボンよりなる
保護層が形成される。
【0022】同様に、磁気記録媒体は、硬質カーボンよ
りなる保護層を形成した後に、これをプラズマ処理して
も、ラジカルが消滅されて不活性化され、カルボキシル
基が殆ど残存しない状態となる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る磁気記録媒体
及びその製造方法の好適な実施の形態を図面を参照にし
ながら詳細に説明する。
【0024】本発明に係る磁気記録媒体1は、図1に示
すように、非磁性支持体2の一方の面に金属磁性薄膜3
が形成されたテープ基板4上に硬質カーボンよりなる保
護層5が化学的気相成長法により形成されることによっ
てなる。
【0025】テープ基板4には、非磁性支持体2の材質
として、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル
類、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン
類、セルローストリアセテート,セルロースダイアセテ
ート,セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポ
リ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、
ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等の高分子
材料が用いられる。
【0026】また、テープ基板4には、金属磁性薄膜3
として、例えば金属磁性材料を薄膜形成手段によって非
磁性支持体2上に直接被着することで形成される金属磁
性薄膜3が設けられる。
【0027】この金属磁性材料としては、蒸着タイプの
磁気テープで通常使用されるものがいずれも使用可能で
ある。例えばFe、Co、Niなどの強磁性金属、Fe
−Co、Co−O、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、C
o−Cu、Co−Au、Co−Pt、Mn−Bi、Mn
−Al、Fe−Cr、Co−Cr、Ni−Cr、Fe−
Co−Cr、Co−Ni−Cr、Fe−Co−Ni−C
r等の強磁性合金が挙げられる。
【0028】これら金属磁性薄膜3を成膜する手段とし
ては、真空下で金属磁性材料を加熱蒸発させ非磁性支持
体2上に沈着させる真空蒸着法や、強磁性金属材料の蒸
発を放電中で行うイオンプレーティング法、アルゴンを
主成分とする雰囲気中でグロー放電を起こし生じたアル
ゴンイオンでターゲット表面の原子をたたき出すスパッ
タ法等、いわゆるPVD技術が挙げられる。
【0029】なお、テープ基板4は、金属磁性薄膜3と
して、上述した材料の単層膜であっても良いし多層膜で
あっても良い。また、テープ基板4は、非磁性支持体3
と金属磁性薄膜3との間及び多層膜である場合は各層間
に、付着力向上並びに抗磁力の制御等を目的として、下
地層や中間層を設けるようにしても良い。さらに、テー
プ基板4は、金属磁性薄膜3の表面近傍が耐食性改善等
のために酸化物になっていてもよい。
【0030】上述のように構成されたテープ基板4は、
図2に示すように、成膜装置6によって、その金属磁性
薄膜3の表面に硬質カーボン膜からなる保護層5が形成
される。
【0031】この成膜装置6は、密閉された空間部を形
成する成膜槽7と、この成膜槽7内部に配設され周面に
沿ってテープ基板4が走行される円筒キャン8と、この
円筒キャン8の外周面に対向して配設される反応管部9
と、テープ基板4を送り出す送りロール10と、テープ
基板4を巻き取る巻取りロール11とから構成されてい
る。
【0032】成膜槽7は、その内部が密閉されるように
形成され、外部に真空排気装置12が付設されている。
成膜槽7の内部は、真空排気装置12によって高度に真
空状態が保持されている。
【0033】円筒キャン8は、円筒状に形成され、その
高さ寸法がテープ基板4の幅寸法よりも大とされ、その
内径が送りロール10及び巻取りロール11の内径より
も大とされ、成膜槽7内の略中心に回転自在に配設され
ている。
【0034】反応管部9は、円筒キャン8の外周面に対
向した位置に配設され、その内部に金属メッシュ等から
なる電極板13が配設されている。この電極板13は、
円筒キャン8の外周面と平行に配設されるとともに成膜
装置6の外部に設置された直流電源部14と接続されて
いる。反応管部9は、成膜装置6の外部に設置された図
示しない原料ガス供給装置と接続されており、その内部
に原料ガスが供給されるようになっている。
【0035】送りロール10及び巻取りロール11は、
円筒状に形成され、その高さ寸法がテープ基板4の幅寸
法よりも大とされ、その内径が上述した円筒キャン8の
内径よりも小とされている。送りロール10及び巻取り
ロール11は、円筒キャン8を介して成膜層7内のコー
ナー部にそれぞれ離間して回転自在に配設されている。
送りロール10は、テープ基板4を巻回するとともに図
2中反時計回りに回転駆動することによって、テープ基
板4を送り出している。巻取りロール8は、図2中反時
計回りに回転駆動することによって、送りロール7から
送り出されたテープ基板4を巻き取る。
【0036】また、成膜槽7には、第1のガイドローラ
15及び第2のガイドローラ16が設けられている。第
1のガイドローラ15及び第2のガイドローラ16は、
円筒状に形成され、その高さ寸法がテープ基板4の幅寸
法よりも大とされ、その内径が送りロール10及び巻取
りロール11の内径よりも小とされている。第1のガイ
ドローラ15は、円筒キャン8と送りロール7との間に
回転自在に配設されている。第2のガイドローラ16
は、円筒キャン8と巻取りロール8との間に回転自在に
配設されている。
【0037】上述のように構成された成膜装置6におい
て、テープ基板4は、送りロール10から引き出され、
円筒キャン8の外周面に沿って走行され、巻取りロール
11に導かれるようにテープ走行路を形成している。こ
のとき、テープ基板4は、金属磁性薄膜3が形成された
面が反応管部9に対向するようにテープ走行路を形成し
ている。そして、第1のガイドローラ15及び第2のガ
イドローラ16は、テープ基板4に対して所定のテンシ
ョンを負荷する事によって、テープ基板4を円滑に走行
させる。
【0038】テープ基板4は、上述にようにテープ走行
路を形成した状態で図2中矢印で示した方向へ走行さ
れ、反応管部9において硬質カーボン膜よりなる保護層
5が形成され、巻取りロール11に巻き取られる。
【0039】反応管部9は、原料ガス供給装置より原料
ガスが供給されるとともに直流電源部10より電極板1
3に直流電流が流される。これによって、反応管部9内
の原料ガスは、プラズマ化されてラジカル分解物となり
テープ基板4の金属磁性薄膜3表面に硬質カーボン膜と
なって被着する。
【0040】この時、原料ガスは、その主成分がシクロ
ヘキサン等の脂環式炭化水素で構成されているため、プ
ラズマ化されると完全にラジカル分解物になる。同時
に、このラジカル分解物は、硬質カーボン膜生成反応が
速やかに進行するために、活性なラジカルを含まない硬
質カーボン膜を形成する。これによって、保護層5は、
その表面及びその内部に活性なラジカルが殆ど存在せ
ず、金属磁性薄膜3に錆を発生させない。
【0041】また、本発明は、上述した主成分が脂環式
炭化水素ガスからなる原料ガスに限定されるものではな
く、例えば、芳香族炭化水素ガスとキャリアーガスとを
混在させたようなものを用いる製造方法であってもよ
い。この原料ガスは、トルエン等の芳香族炭化水素が気
化され、アルゴン等のキャリアーガス中に所定の割合で
混入させたものとして用いられる。
【0042】この時、保護層3は、原料ガスが上述した
脂環式炭化水素で構成されている場合と同様に成膜装置
6によって形成される。この原料ガスは、芳香族炭化水
素がキャリアーガスによって十分に希釈されてプラズマ
化されることにより、完全にラジカル分解物となる。同
時に、このラジカル分解物は、硬質カーボン膜生成反応
が速やかに進行するために、活性なラジカルを含まない
硬質カーボン膜を形成する。これによって、保護層5
は、その表面及びその内部に活性なラジカルが殆ど存在
せず、金属磁性薄膜3に錆を発生させない。
【0043】また、本発明に係る磁気記録媒体1は、そ
の保護層5が芳香族炭化水素ガスを主成分とする原料ガ
スより形成される場合、図3に示すように、成膜装置2
0によって金属磁性薄膜3の表面に硬質カーボンからな
る保護層5が形成されてもよい。なお、成膜装置20に
おいて、上述した成膜装置6と同一部材は、同一符号を
付することにより、その構成及び動作の詳細な説明は省
略する。
【0044】この成膜装置20は、密閉された空間部を
形成する成膜槽7と、この成膜槽7内部に配設され周面
に沿ってテープ基板4が走行される円筒キャン8と、こ
の円筒キャン8に対向して配設されて硬質カーボン膜を
形成する第1の反応管21と、この第1の反応管21に
併設されプラズマ化したガスをテープ基板4に照射する
第2の反応管22と、テープ基板4を送り出す送りロー
ル10と、テープ基板4を巻き取る巻取りロール11と
を備えて構成されている。
【0045】第1の反応管21は、円筒キャン8の外周
面に対向する位置に配設され、その内部に金属メッシュ
等からなる電極板23が設けられて構成されている。こ
の電極板23は、円筒キャン8の外周面に対して平行と
なるように設けられており、成膜槽7の外部に設置され
ている直流電源部24と接続されている。また、第1の
反応21は、成膜槽7の外部に配設される図示しない原
料ガス供給装置と接続されており、このガス供給装置か
ら原料ガスが供給される。
【0046】第2の反応管22は、上述した円筒キャン
8の外周面に対向する位置に配設されるとともに上述し
た第1の反応管21に並列するように配設されている。
第2の反応管22は、金属メッシュ等からなる電極板2
5が設けられて構成されている。この電極板25は、円
筒キャン8の外周面に対して平行となるように設けられ
ており、成膜槽7の外部に設置されている直流電源部2
6と接続されている。第2の反応管22は、成膜槽の外
部に配設されている図示しない表面処理ガス供給装置と
接続されており、この表面処理ガス供給装置から表面処
理ガスが供給される。
【0047】この表面処理ガスは、メタンやエタン等の
炭化水素或いはアルゴン或いは水素或いは窒素からな
り、電極板25に電流を流して第2の反応管22内に電
解が生じるとプラズマ化する。
【0048】成膜装置20は、テープ基板4が図3中矢
印で示した方向に走行され、第1の反応管21において
硬質カーボンよりなる保護層が形成され、第2の反応管
22においてプラズマ化された表面処理ガスが照射され
るように動作する。
【0049】第1の反応管21は、その内部に原料ガス
供給装置より原料ガスが供給されるとともに直流電源部
24よりその内部に設けられた電極板23に電流が流さ
れる。これによって、原料ガスは、プラズマ化されてラ
ジカル分解物となりテープ基板4の金属磁性薄膜3が形
成された面に硬質カーボン膜となって被着する。
【0050】この時、硬質カーボン膜中或いはその表面
には、芳香族炭化水素と主成分とする原料ガスが均一な
ラジカル分解物とならずラジカル反応が円滑に進行しな
いことによって、活性なラジカルが残存してしまうこと
がある。
【0051】一方、第2の反応管22は、その内部に表
面処理ガス供給装置よりアルゴン等の表面処理ガスが供
給されるとともに直流電源部26よりその内部に設けら
れた電極板25に電流が流される。これによって、表面
処理ガスは、プラズマ化され第1の反応管21で形成さ
れた硬質カーボン膜上に照射される。
【0052】このプラズマ化した表面処理ガスは、第1
の反応管21で金属磁性薄膜3上に形成された硬質カー
ボン膜に残存する活性なラジカルに照射されることによ
って、活性なラジカルを不活性化する。これによって、
テープ基板4は、保護層5が大気中の酸素や水と反応し
てカルボキシル基等の官能基を生じることはない。した
がって、テープ基板4は、保護層5に官能基を有さない
ので、金属磁性薄膜3に錆を発生させることはない。
【0053】なお、上述した成膜装置6,20は、反応
管部9及び第1の反応管21及び第2の反応管22が外
部に設置された直流電源と接続されたいわゆるDCプラ
ズマCVD装置であった。しかしながら、本発明に係る
磁気記録媒体1は、成膜装置6,20が外部に設置され
た高周波電源部と接続されたいわゆるRFプラズマCV
D装置によって形成されたものであってもよいことは勿
論である。
【0054】また、本発明は、上述した成膜装置6,2
0によって形成される磁気記録媒体1に限定されるもの
ではないことは勿論である。すなわち、本発明は、図4
に示した成膜装置30によって形成された磁気記録媒体
であってもよい。なお、上述した成膜装置6と同一の部
材について、同一の符号を付することによりその構成及
び動作の詳細な説明は省略する。
【0055】この成膜装置30は、密閉された空間部を
形成する成膜槽7と、この成膜槽7内部に配設されテー
プ基板4を掛け合わせる円筒キャン8と、この円筒キャ
ン8に対向して配設されて硬質カーボン膜を形成する第
1の反応管31と、この第1の反応管31に併設されプ
ラズマ化したガスをテープ基板4に照射する第2の反応
管32と、テープ基板4を送り出す送りロール10と、
テープ基板4を巻き取る巻取りロール11とを備えて構
成されている。
【0056】成膜装置30は、第1の反応管31に設け
られた電極板33と成膜槽7の外部に設置された高周波
電源部34とが接続され、第2の反応管32に設けられ
た電極板35と成膜槽7の外部に設置された高周波電源
部36とが接続されて構成されている。これによって、
第1の反応管31は、その内部に原料ガス供給装置より
原料ガスが供給されるとともに高周波電源部34よりそ
の内部に設けられた電極板33に高周波電流が流され
る。また、第2の反応管32は、その内部にガス供給装
置よりアルゴン等の表面処理ガスが供給されるとともに
高周波電源部36よりその内部に設けられた電極板35
に高周波電流が流される。
【0057】したがって、テープ基板4は、第1の反応
管31によりその金属磁性薄膜3が形成された面に硬質
カーボン膜が形成され、第2の反応管32によりその硬
質カーボン膜中或いはその表面の活性なラジカルが不活
性化されて形成される。
【0058】また、本発明は、図5に示した成膜装置4
0によって形成された磁気記録媒体であってもよい。成
膜装置40には、円筒キャン8に対向して配設されるカ
ーボンターゲット41と、このカーボンターゲット41
に対してプラズマ化したアルゴンを衝突させる図示しな
いスパッタ装置と、このカーボンターゲット41よりも
フィルム走行路に対して後段に設けられた反応管42と
が設けられている。この成膜装置40は、プラズマ化し
たアルゴンがスパッタ装置から出射され、このアルゴン
がカーボンターゲット41に衝突してカーボンターゲッ
ト41内部のカーボン粒子を飛翔させるように構成して
いる。成膜装置40は、このカーボン粒子が円筒キャン
8の外周面上に掛け合わされたテープ基板4の金属磁性
薄膜3に被着することによって硬質カーボン膜を形成す
る。
【0059】また、成膜装置40は、硬質カーボン膜に
対して反応管42がプラズマ化したアルゴンを照射する
ことによって硬質カーボン膜の表面処理を行っている。
反応管42は、その内部にガス供給装置よりアルゴン等
の表面処理ガスが供給されるとともに高周波電源部44
よりその内部に設けられた電極板43に直流電流が流さ
れる。
【0060】したがって、テープ基板4は、カーボンタ
ーゲット41によりその金属磁性薄膜3に硬質カーボン
膜が形成され、反応管42によりその硬質カーボン膜中
或いはその表面の活性なラジカルが不活性化されて形成
される。
【0061】さらに、本発明に係る磁気記録媒体は、上
述したように成膜装置が硬質カーボン膜を形成する反応
管とこの硬質カーボン膜に対してプラズマ化したアルゴ
ンを照射する反応管とが別構成である必要はなく、図6
及び図7に示した同一構成である成膜装置50で形成さ
れてもよい。
【0062】すなわち、本発明は、図6に示すように、
成膜装置50がテープ基板4の金属磁性薄膜3に対向し
た位置に反応管51を配設するようなものであってもよ
い。この反応管51には、その内部に電極板52が設け
られている。この電極板52は、外部に設置されている
直流電源部53が接続されており、電流が流されること
によって反応管51内に電解を生じさせる。なお、成膜
装置50は、図7に示すように、電極板52に接続され
た電源が高周波電源部54であっても良いことは勿論で
ある。
【0063】以上のように構成された成膜装置50は、
反応管51に原料ガスが供給されるとともに電極板52
に直流電流又は高周波電流が流されることによって硬質
カーボン膜を形成する。成膜装置50は、硬質カーボン
膜が形成された後、反応管42内に表面処理ガスが供給
されるとともに電極板52に直流電流が流されることに
よって表面処理を行う。
【0064】したがって、テープ基板4は、反応管51
によりその金属磁性薄膜3が形成された面に硬質カーボ
ン膜が形成され、反応管51によりその硬質カーボン膜
中或いはその表面の活性なラジカルが不活性化されて形
成される。
【0065】
【実施例】以下に本発明の具体的な実施例と該実施例の
性能を実証するための実験を示す。しかし、本発明は、
以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】実施例1 本実施例は、図2に示した成膜装置6を用いてテープ基
板4の金属磁性薄膜3上に硬質カーボン膜よりなる保護
層5を形成してなるものである。この保護層5は、その
厚み寸法が8nmとなるように形成される。
【0067】具体的には、テープ基板4は、金属磁性薄
膜3としてCo−Ni合金を用いており、原料ガスとし
て脂環式化合物であるシクロヘキサンを用いている。こ
の時、成膜装置6は、直流電源部14からの電圧が1.
5kVとされ、成膜槽7内の気圧が30Paとされてい
る。
【0068】実施例2 本実施例は、図2に示した成膜装置6を用いてテープ基
板4の金属磁性薄膜3上に硬質カーボン膜よりなる保護
層5を形成してなるものである。この保護層5は、その
厚み寸法が8nmとなるように形成される。
【0069】本実施例においては、原料ガスとして脂環
式化合物であるシクロプロパンが用いられ、実施例1と
同様にして形成されている。
【0070】実施例3 本実施例は、図2に示した成膜装置6を用いてテープ基
板4の金属磁性薄膜3上に硬質カーボン膜よりなる保護
層5を形成してなるものである。この保護層5は、その
厚み寸法が8nmとなるように形成される。
【0071】本実施例においては、原料ガスがアルゴン
ガスと芳香族炭化水素であるトルエンとからなり、実施
例1と同様にして形成されている。
【0072】実施例4 本実施例は、図2に示した成膜装置6を用いてテープ基
板4の金属磁性薄膜3上に硬質カーボン膜よりなる保護
層5を形成してなるものである。この保護層5は、その
厚み寸法が8nmとなるように形成される。
【0073】本実施例においては、原料ガスが窒素ガス
と芳香族炭化水素であるトルエンとからなり、実施例1
と同様に形成されている。
【0074】実施例5 本実施例は、図3に示した成膜装置20を用いてテープ
基板4の金属磁性薄膜3上に硬質カーボン膜よりなる保
護層5を形成してなるものである。この保護層5は、そ
の厚み寸法が8nmとなるように形成される。
【0075】本実施例においては、原料ガスとして芳香
族炭化水素であるトルエンが用いられ、表面処理ガスと
してアルゴンガスが用いられる。テープ基板4は、第1
の反応管21においてトルエンにより保護層5が形成さ
れ、第2の反応管22においてアルゴンガスにより保護
層5に対して表面処理が行われる。この時、成膜装置2
0は、直流電源部24からの電圧が1.5kVとされ、
成膜槽7内の気圧が30Paとされている。
【0076】実施例6 本実施例は、図3に示した成膜装置20を用いてテープ
基板4の金属磁性薄膜3上に硬質カーボン膜よりなる保
護層5を形成してなるものである。この保護層5は、そ
の厚み寸法が8nmとなるように形成される。
【0077】本実施例においては、原料ガスとして芳香
族炭化水素であるトルエンが用いられ、表面処理ガスと
して窒素ガスが用いられる。テープ基板4は、第1の反
応管21においてトルエンにより保護層5が形成され、
第2の反応管22において窒素ガスにより保護層5に対
して表面処理が行われて、実施例5と同様に形成され
る。
【0078】比較例1 比較例1は、図2に示した成膜装置6を用いてテープ基
板4の金属磁性薄膜3上に硬質カーボン膜よりなる保護
層5を形成してなるものである。この保護層5は、その
厚み寸法が8nmとなるように形成されている。この
時、テープ基板4は、金属磁性薄膜3としてCo−Ni
合金が用いられている。
【0079】本比較例において、テープ基板4は、原料
ガスとして芳香族炭化水素であるトルエンが用いられ、
実施例1と同様に形成される。
【0080】性能評価試験 1.高温高湿試験 上述のようにして得られた実施例1乃至実施例6及び比
較例1について以下のように高温高湿条件下で性能評価
試験を行った。
【0081】高温高湿試験は、実施例1乃至実施例6及
び比較例1が以下に示す条件下で1週間放置された後、
フーリエ変換−赤外分光法(以下、FT−IRと称
す。)によりカルボキシル基の有無を検出し、目視によ
りテープ基板4に発生した腐食を観察することにより行
われた。
【0082】試験条件 雰囲気 :空気 温度 :60℃ 湿度 :90%2.腐食性ガス試験 上述のようにして得られた実施例1乃至実施例6及び比
較例1について以下のように腐食性ガス条件下で性能評
価試験を行った。
【0083】腐食性ガス試験は、実施例1乃至実施例6
及び比較例1が以下に示す条件下で24時間放置された
後、フーリエ変換−赤外分光法(以下、FT−IRと称
す。)によりカルボキシル基の有無を検出し、目視によ
りテープ基板4に発生した腐食を観察することにより行
われた。
【0084】試験条件 雰囲気 :SO2, 0.5ppm 温度 :30% 湿度 :90% これら性能評価試験1,2において、FT−IRは、図
8及び図9に示すように、カルボキシル基中のカルボニ
ル基の特性吸収位置(1600〜1800cm-1)に吸
収ピークとして検出することができる。なお、図8は、
保護層5にカルボキシル基が存在するときのFT−IR
スペクトルの一例である。図8中Aで示すピークは、カ
ルボキシル基中カルボニル基の吸収ピークである。
【0085】試験結果 上述した高温高湿試験の試験結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】また、上述した腐食性ガス試験の試験結果
を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】表1及び表2に示す結果から明らかなよう
に、テープ基板4は、原料ガスが脂環式化合物である場
合、保護層5にカルボキシル基を発生させることなく、
高温高湿条件下及び腐食性ガス条件下において錆を発生
させることがない。
【0090】また、テープ基板4は、原料ガスが芳香族
炭化水素とキャリアーガスとを混入させたものである場
合、保護層5にカルボキシル基を発生させることなく、
高温高湿条件下及び腐食性ガス条件下において錆を発生
させることがない。
【0091】さらに、テープ基板4は、原料ガスが芳香
族炭化水素である場合、保護層5にカルボキシル基が発
生しており、高温高湿条件下及び腐食性ガス条件下にお
いて錆を発生させていた。この場合、テープ基板4は、
保護層5を形成した後にプラズマ化した表面処理ガスが
保護層5に照射されることによって、保護層5にカルボ
キシル基を発生させることなく、高温高湿条件下及び腐
食性ガス条件下において錆を発生させることがない。
【0092】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明に係
る磁気記録媒体及びこの磁気記録媒体の製造方法では、
硬質カーボン膜中或いはその表面に残存する活性なラジ
カルが不活性化されて形成される。これによって、磁気
記録媒体は、金属磁性材料により形成された磁性層に錆
を発生させることがなく、信号を正確に記録するととも
に記録された信号を正確に再生する、高品質を有するも
のとして形成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る磁気記録媒体の縦断面図である。
【図2】本発明に係る磁気記録媒体の成膜装置の構成図
である。
【図3】本発明に係る磁気記録媒体の他の成膜装置の構
成図である。
【図4】本発明に係る磁気記録媒体の他の成膜装置の構
成図である。
【図5】本発明に係る磁気記録媒体の他の成膜装置の構
成図である。
【図6】本発明に係る磁気記録媒体の他の成膜装置の構
成図である。
【図7】本発明に係る磁気記録媒体の他の成膜装置の構
成図である。
【図8】保護層にカルボキシル基が存在するときのFT
−IRスペクトルである。
【符号の説明】
1 磁気記録媒体、3 金属磁気薄膜、4 テープ基
板、5 保護層、6,20,30,40,50 成膜装
置、
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 外崎 峰広 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 天野 俊二 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 林 弘志 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる
    磁性層が形成されるとともに、この磁性層上に硬質カー
    ボンよりなる保護層が化学的気相成長法により形成され
    てなり、 上記保護層を構成する硬質カーボンに含まれるカルボキ
    シル基の量がフーリエ変換−赤外分光法における測定限
    界以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる
    磁性層を形成した後、脂環式炭化水素を原料ガスとして
    化学的気相成長法により硬質カーボンよりなる保護層を
    前記磁性層上に形成することを特徴とする磁気記録媒体
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる
    磁性層を形成した後、芳香族炭化水素を原料ガスとし、
    キャリアーガスを供給しながら化学的気相成長法により
    硬質カーボンよりなる保護層を前記磁性層上に形成する
    ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  4. 【請求項4】 非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる
    磁性層を形成し、この上に化学的気相成長法により硬質
    カーボンよりなる保護層を形成した後、保護層に対して
    プラズマ処理を行うことを特徴とする磁気記録媒体の製
    造方法。
JP8066832A 1996-03-22 1996-03-22 磁気記録媒体の製造方法及びこれを用いた磁気記録媒体 Pending JPH09259430A (ja)

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