JPH09246017A - 積層型チップバリスタ及びその製造方法 - Google Patents

積層型チップバリスタ及びその製造方法

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JPH09246017A
JPH09246017A JP8049702A JP4970296A JPH09246017A JP H09246017 A JPH09246017 A JP H09246017A JP 8049702 A JP8049702 A JP 8049702A JP 4970296 A JP4970296 A JP 4970296A JP H09246017 A JPH09246017 A JP H09246017A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ガラスコート等の絶縁保護層を無くしても、電
気メッキによるバリスタの素体表面にメッキが付かず、
半田耐熱性及び半田付け性が良く、更に低コストで高信
頼性の積層型チップバリスタを提供することが解決すべ
き課題である。 【解決手段】二次イオン質量分析法(SIMS)による
測定結果が、バリスタ素体の表面近傍に含まれる金属L
iまたは金属Naイオン濃度をM1とし、これより深い
位置(表面から深さ10μm)に含まれる金属Liまた
は金属Naイオン濃度をM2としたときに、この金属イ
オン濃度比(M1/M2)を、10≦(M1/M2)<
50000としてなる積層型チップバリスタである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化亜鉛系材料を
使用した積層型チップバリスタ並びにその製造方法に関
するもので、詳しくはチップ素体表面の絶縁性を向上さ
せ、保護層を設けずに端部電極に電気メッキを施した積
層型チップバリスタを得ることに関する。
【0002】
【従来の技術】一般にバリスタは、各種電子機器の制御
回路に使用される半導体部品を異常高電圧(サージ)か
ら保護するために不可欠なものとなっていることは良く
知られている。中でも酸化亜鉛(ZnO)を主成分とす
るバリスタは、電圧非直線性やサージ吸収能力が優れて
いることから多くの電子機器に使用されている。このよ
うなバリスタは、例えば特開平7−320908号公報
や特開平7−335410号公報に開示されている。
【0003】また、最近では電子機器の小型化に伴いバ
リスタの小型化、チップ部品化の要求が高まってきてい
る。このようなものとして単板タイプや積層型タイプの
ものがあり、プリント回路基板等に半田付け固定接続す
るようにされる。この中の積層型のバリスタは例えば特
開平5−283209号公報に開示されている。
【0004】図5は従来のこの種の積層型チップバリス
タを示すものであり、(a)斜視図と(b)断面図とが
例示されている。ここで、9はバリスタ素体、10は内
部電極、11は端部電極、12は絶縁保護層をそれぞれ
表している。一般に、このようなチップ型部品は、プリ
ント回路基板等に半田付けして固定接続するものである
が、その端部電極が半田に喰われ、接続不良等が発生す
ることがある。この対策として、耐熱性を有する電気メ
ッキ膜、例えばNiメッキ膜を施し、更にその上に半田
付け性の良いSnメッキ膜等を形成した電極構造のもの
が製品化されている(メッキ膜構造の図示は省略す
る)。しかしながら、酸化亜鉛を主成分とするバリスタ
の場合、チップ素体表面(酸化亜鉛粒子)の抵抗が低く
(比抵抗1.4×100Ω・cm)ために、前述のよう
に端部電極11にメッキを行うときにチップ素体表面と
Ag下地電極(比抵抗1.62×10-6Ω・cm)との
抵抗の差が小さく、端部電極11以外にもメッキされて
しまう。最悪の場合、両方の端部電極11間で短絡状態
を生じることになるという問題があった。そこで、この
ような事態を防止するために、チップ表面にガラスコー
トなどの絶縁保護層12を設けている。
【0005】次に、図6に従い、積層型チップバリスタ
の従来の製造工程を説明する。まず、印刷法やシート法
等によって内部電極10が1層おきに互い違いに両端部
に露出するようにバリスタ材料層と内部電極材料層を交
互に積層してグリーンシートを作製する(工程a)。次
にこのグリーンシートを単品に切断する。これによりチ
ップの複数個取りが可能となる(工程b)。更にこれら
各チップにバレル研磨を行なうことによって前工程(切
断)でできたバリを取った(工程c)後、グリーンチッ
プを焼成する(工程d)。次に絶縁保護層12を形成す
るために焼成済みチップの上下面及び両側面の4つの面
に1つの面ごとにガラスコートの印刷と乾燥を繰り返し
(工程i、j、k、l)てから、このガラスコートに熱
処理を施した(工程m)。これに続けて、チップの端部
に、端部電極11としてのAg下地電極を塗布(工程
e’)、焼付け(工程f’)した後に、電気メッキでN
iメッキ膜とSn/Pbメッキ膜を施す(工程h’)。
これらの工程を全て経ることにより積層型チップバリス
タが完成する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
製造方法では、バリスタ素体の4つの面に対して、所定
形状の絶縁保護層12としてのガラスコートの印刷・乾
燥の工程を繰り返して行い、ガラスの焼付けなどを施し
ているので、工程数が多くなり、また、ガラスの焼付け
に伴う高温の熱処理等のため製造上の歩留りが悪く、低
コストで高品質の製品を提供することができなかった。
【0007】そこで、本発明は上記のような課題の解決
のためになされたものであり、絶縁保護層12としての
ガラスコートを無くしても、電気メッキによってバリス
タの素体表面にメッキが付くことがなく、半田耐熱性及
び半田付け性が良く、更に低コストで高信頼性の積層型
チップバリスタを提供することを目的とするものであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る積層型チッ
プバリスタは、バリスタ素体の表面付近に金属Liまた
は金属Naを含有させるため、これらを積層型バリスタ
の表面から内部に向かって拡散させる。含有量は当然表
面近傍から内部に向かって少なくなるが、二次イオン質
量分析法(SIMS)による測定結果が、表面近傍に含
まれる金属イオン濃度をM1、表面から深さ10μmに
含まれる金属イオン濃度をM2としたとき、10≦(M
1/M2)<50000となるようにする。これによ
り、ガラスコートを無くしても、電気メッキによってチ
ップバリスタの素体表面にメッキが付くことがなく、半
田耐熱性及び半田付け性が良く、低コストで信頼性の高
い積層型チップバリスタを得ることができる。
【0009】また、本発明に係る積層型チップバリスタ
の製造方法は、積層型チップバリスタ素体を焼成し、端
部電極を塗布し、焼き付けた後に、密閉こう鉢の内部に
炭酸リチウムまたは炭酸ナトリウムの粉末を入れ、適宜
間隔を置いて前記素体を保持し、加熱することによっ
て、Li雰囲気またはNa雰囲気中で熱処理を行い、結
果的に上記のような積層型チップバリスタの製造方法で
ある。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は、本発明における積層型チ
ップバリスタを示す(a)斜視図と(b)断面図であ
る。1はバリスタ素体、2は内部電極、3は端部電極、
4は金属拡散層である。図2は、本発明におけるバリス
タ表面部分における(a)酸化亜鉛粒子の模式図と
(b)表面からの距離(深さ)と金属イオン濃度との関
係を示している。図3及び図4は、本発明における金属
拡散工程を示している。
【0011】本発明に係る端部電極3については、前述
の従来技術と同様にAg下地電極に耐熱性を有する電気
メッキ膜、例えばNiメッキ膜を施し、更にその上に半
田付け性の良いSn/Pbメッキ膜等を施す(メッキ膜
構造の図示は省略する)。
【0012】ここで、図1及び図2を参照すると、金属
拡散層4はバリスタ素体1の4つの面を取り囲むように
形成されている。この金属拡散層4は、酸化亜鉛粒子5
に金属を熱処理によってバリスタ表面からバリスタ内部
へ拡散させた部分である。金属としては比較的軽いもの
が良く金属Liまたは金属Naが好ましい。二次イオン
質量分析法(SIMS)による測定結果が、バリスタ素
体1の表面近傍に含まれる金属Liまたは金属Naのイ
オン濃度をM1、表面から深さ10μmに含まれる金属
Liまたは金属Naのイオン濃度をM2としたときに、
この金属イオン濃度比(M1/M2)が、10≦(M1
/M2)<50000となるようにする。
【0013】ここで二次イオン質量分析法(SIMS)
について簡単に説明する。SIMSは表面層からμmオ
ーダーで深さ方向濃度プロファイルを高感度で測定でき
る方法である。高エネルギー(数keV〜20keV)
のイオンビームを固体表面に照射させるとスパッタ現象
により試料構成原子が中性原子またはイオンとして放出
される。このようにして二次的に放出されるイオンを質
量分析計で質量・電荷の比に分けて試料表面の元素分析
および化合物分析を行う方法である。
【0014】バリスタ素体1内部に拡散した金属Liま
たは金属Naは内部電極2まで到達しないことが望まし
く、また実際にSIMSにより測定したところ、10μ
m以上深いところでは拡散金属イオン強度が一定とな
る。つまり拡散はしていないと思われ、深さ10μmを
内部の金属量の代表値とした。
【0015】酸化亜鉛粒子5中に金属Liまたは金属N
aが拡散して行き、表面近傍の酸化亜鉛結晶中に金属L
iまたは金属Naが固溶した状態となっている。金属イ
オン濃度の比(M1/M2)を10以上とすることによ
って、酸化亜鉛粒子5の抵抗値を増大させる効果(比抵
抗105〜107Ω・cmオーダー)が得られるので、見
かけ上バリスタ表面近傍の酸化亜鉛粒子が絶縁体状態と
なり、電気メッキ時にバリスタ表面から電流が流入しな
くなり、チップバリスタ素体の表面にメッキが着かなく
なり外観不良が無くなる。このため、ガラスコートを設
ける必要が無い。また、金属イオン濃度比(M1/M
2)を50000以上とするとサージ吸収機能が低下し
てしまい、バリスタ特性が得られない。
【0016】次に、図3及び図4に従い、本発明に係る
積層型チップバリスタの製造工程を説明する。まず、印
刷法やシート法等によって内部電極2を1層おきに互い
違いに両端部に露出するようにして酸化亜鉛系バリスタ
材料層と内部電極材料層を交互に積層してグリーンシー
トを作製する(工程a)。酸化亜鉛系の材料としては、
例えばZnOを主成分とし、副成分として希土類、Co
O、〓b族(B、Al、Ga、In)、Si、Cr、〓
a族(K、Rb、Cs)、〓a族(Mg、Ca、Sr、
Ba)等を添加した材料を挙げることができる。また、
内部電極材料としては、例えばAg−Pd、Agなどを
挙げることができる。次に、このグリーンシートを単品
に切断する。これによりチップの複数個取りが可能とな
る(工程b)。更に、これら各チップにバレル研磨を行
って切断によってできたバリを取った(工程c)後、グ
リーンチップを焼成し(工程d)、端部電極を塗布、焼
付けしてAg下地電極を形成する(工程e、f)。ここ
では、下地電極材料としてAgを選択したが、バリスタ
素体1に対する焼付きが良く、内部電極材料との接続が
良く、また後続のメッキ工程でメッキが付き易い材料で
あれば適宜材料を選択することができる。
【0017】これに続く金属拡散層4の形成工程では、
金属拡散源8の粉末や粒状物を適宜な量だけ敷き詰めた
こう鉢6aの中にバリスタ素体1を適宜間隔をおいて網
7などの上に載置し、ふた6bによって密閉して熱処理
する(工程g)。ここで金属拡散源8として熱拡散し易
く、取り扱いの容易な金属を含む材料、金属としては金
属Liまたは金属Naなど比較的軽いものが良いが他の
アルカリ金属を含むものでも良い。例えば、炭酸リチウ
ム(Li2CO3)や炭酸ナトリウム(Na2CO3)など
が有効である。
【0018】最後に、電気メッキによってNiメッキ膜
とSn/Pbメッキ膜を生成させる(工程h)。これら
の工程を全て経て積層型チップバリスタが完成する。
【0019】前記のように端部電極焼付け(工程f)と
金属拡散熱処理(工程g)とを別々の工程とすることに
代えて、端部電極焼付けの熱処理と金属拡散の熱処理と
を同時に行っても良い。これにより、バリスタ素体に係
る熱負担が1回で済むことになり熱履歴の面で有利とな
る。そればかりでなく製造工程が少なくなり、製造コス
トを下げることができる。
【0020】また、前述した金属の拡散方法について
は、熱処理温度を制御したり、熱処理時間の長さや金属
拡散源の量などを制御しても良く、またこれらの制御を
任意に組み合わせてもよい。
【0021】
【実施例】次に実施例によって本発明をさらに詳細に説
明する。
【0022】(実施例1)前述の図3並びに図4に従
い、酸化亜鉛系バリスタ材料層と内部電極材料層を交互
に積層してグリーンシートを作製し、切断、バレル研
磨、焼成、端部電極の塗布、焼付けの各工程を実施し、
Ag下地電極を備えた積層型チップバリスタ素体1を用
意した。
【0023】これに続いて、金属拡散層4を形成する工
程では、金属拡散源8として炭酸リチウム(Li2
3)粉末を1×10-4mol/cm3敷き詰めた密閉こ
う鉢6a、6bの中に適宜間隔をおいて網7の上にバリ
スタ素体1を載置して、これを700℃にて1時間、熱
処理を行った。
【0024】最後に、酸性Niメッキ液槽中にて2〜5
μm厚のNiメッキ膜と酸性Sn/Pbメッキ液槽中に
て3〜5μm厚のSn/Pbメッキ膜を生成させて所期
の積層型チップバリスタを完成させた。
【0025】金属Liイオン濃度比(M1/M2)は、
バリスタ素体1の表面近傍における金属Liイオン濃度
M1、表面から深さ10μmにおける金属Liイオン濃
度M2とを二次イオン質量分析法(SIMS)を用いて
測定して得たものである。
【0026】バリスタ素体1内部に拡散した金属Liは
内部電極2まで到達しないことが望ましく、また実際に
SIMSにより測定したところ、10μm以上深いとこ
ろでは拡散金属イオン強度が一定となり、つまり拡散し
ていないため、深さ10μmを内部の金属量の代表値と
した。
【0027】また、外観上の良否の判定は、端部電極3
以外の部分(バリスタ素体表面)にメッキされたものを
不良として判断した。この判定は最終製品の信頼性を維
持するためにも必要な項目である。
【0028】更に、特性上の良否の判定は、250A、
8/20μsecの標準インパルス電流を1回印加した
後にバリスタ電圧が10%以上変化したものを不良とし
て判断した。
【0029】こうして得られたバリスタの金属Liの金
属イオン濃度を測定したところ、その比(M1/M2)
の値として10が得られた。このときの表面近傍の酸化
亜鉛粒子5の抵抗値を増大させる効果(比抵抗1.27
×105Ω・cm)が得られたので、ガラスコートを無
くしても、電気メッキによるチップバリスタの外観不良
が無くなり、バリスタ本来の特性も劣化せずに十分に発
揮された。
【0030】(実施例2)前記実施例1の実験条件のう
ち、熱処理温度を変えて800℃、900℃、930
℃、1000℃、1070℃、1090℃として実験を
行った以外は全て同条件である。
【0031】上記の熱処理条件により、金属Liの金属
イオン濃度比(M1/M2)は、それぞれ50、50
0、1000、5000、30000、49000とな
った。
【0032】これらによっても表面近傍の酸化亜鉛粒子
5の抵抗値を十分に増大させる効果(比抵抗2.46×
105Ω・cm以上)が得られた。また、電気メッキに
おけるチップバリスタの外観不良も無く、バリスタ本来
の特性が十分に発揮されることも前記実施例1の場合と
同様である。
【0033】(実施例3)前記実施例1並びに実施例2
の実験条件のうち、金属拡散源8を炭酸リチウム(Li
2CO3)粉末から炭酸ナトリウム(Na2CO3)粉末と
変えた以外は全て同条件である。
【0034】こうして得られたバリスタの金属Naの金
属イオン濃度比(M1/M2)が10以上となった。こ
のときも、金属Liを拡散させたときと同様に表面近傍
の酸化亜鉛粒子5の抵抗値を増大させる効果(比抵抗
1.04×105Ω・cm以上)が得られたので、ガラ
スコートを無くしても、電気メッキによるチップバリス
タの外観不良が無くなり、バリスタ本来の特性も十分に
発揮される。
【0035】(比較例1)前記実施例1及び実施例2の
実験条件のうち、熱処理温度を700℃以下、具体的に
は500℃と600℃、及び1090℃以上、具体的に
は1100℃とした以外は全て同条件である。
【0036】これらの熱処理温度の中で500℃及び6
00℃のときには、金属Liの金属イオン濃度比(M1
/M2)が1及び5となり10未満であった。このと
き、表面近傍の酸化亜鉛粒子5の抵抗値を十分に増大さ
せることができず(比抵抗104Ω・cm未満)、電気
メッキにおけるチップバリスタの外観不良率が60%及
び40%となった。ただし、バリスタの本来の特性には
影響がなかった。また、熱処理温度が1100℃のとき
には、金属Liの金属イオン濃度比(M1/M2)が5
0000に達した。このとき、表面近傍の酸化亜鉛粒子
5の抵抗値を十分に増大することができたので、電気メ
ッキにおけるチップバリスタの外観不良は無かったが、
標準インパルス電流を印加したときのバリスタ電圧が降
下してしまいバリスタ本来の特性は発揮されなかった。
【0037】(比較例2)前記比較例1の実験条件のう
ち、金属拡散源8を炭酸リチウム(Li2CO3)粉末か
ら炭酸ナトリウム(Na2CO3)粉末と変えた以外は全
て同条件である。
【0038】これらの熱処理温度の中で500℃及び6
00℃のときには、金属Naの金属イオン濃度比(M1
/M2)が1及び5となり10未満であった。このと
き、表面近傍の酸化亜鉛粒子5の抵抗値を十分に増大さ
せることができず、電気メッキにおけるチップバリスタ
の外観不良率60%及び45%となった。ただし、バリ
スタの本来の特性には影響がなかった。また、熱処理温
度が1100℃のときには、金属Naの金属イオン濃度
比(M1/M2)が50000に達した。このとき、表
面近傍の酸化亜鉛粒子5の抵抗値を十分に増大すること
ができたので、電気メッキにおけるチップバリスタの外
観不良は無かったが、バリスタの本来の特性は発揮され
なかった。
【0039】以上の実験の結果をまとめたものを表1に
示す。
【0040】
【表1】
【0041】金属Liまたは金属Naの金属イオン濃度
比(M1/M2)を10以上とすることによって、表面
近傍の酸化亜鉛粒子5の抵抗値を増大させる効果が得ら
れるので、ガラスコートを無くしても、電気メッキによ
るチップバリスタの外観不良が無くなり、バリスタの本
来の特性も十分に発揮される。
【0042】一方、前記金属イオン濃度の比が10未満
であると、電気メッキによるチップバリスタの外観不良
率が40%以上になってしまい、歩留まりが悪いばかり
でなく信頼性の確保ができない。また、金属イオン濃度
の比が50000以上であると、電気メッキによるチッ
プバリスタの外観不良は無くなるものの、バリスタ材料
組成が変化することになり、サージ吸収機能が低下し
て、バリスタの本来の特性が得られないことがわかっ
た。
【0043】この結果から、二次イオン質量分析法(S
IMS)による測定結果を基にして、前記金属イオン濃
度の比(M1/M2)を10≦(M1/M2)<500
00となるように設定することが望ましいことが解っ
た。
【0044】
【発明の効果】以上のことから理解されるように、本発
明に係わる積層型チップバリスタは、チップバリスタ素
体の表面側から酸化亜鉛粒子内部に金属Liまたは金属
Naを拡散させることによって、当該チップバリスタ素
体の表面近傍における酸化亜鉛粒子の抵抗値を増大させ
ることができ、見かけ上バリスタ表面近傍の酸化亜鉛粒
子が絶縁体状態になる。このため、所要の電気メッキを
実施するときにバリスタ表面より電流が流入しなくな
り、チップバリスタ素体の表面にメッキが着かなくな
り、外観不良の発生がなくなる。このために、チップバ
リスタ素体の表面にガラスコート等の保護層を形成させ
る必要が無くなり、その製造工程が簡略化され、低コス
トで積層型チップバリスタを提供することができる。こ
れに加えて、最終製品の歩留まりが良くなり、高信頼性
のものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における積層型チップバリスタの(a)
斜視図と(b)断面図。
【図2】本発明におけるバリスタ表面部分における
(a)酸化亜鉛粒子の模式図と(b)表面からの距離
(深さ)と金属イオン濃度との関係を示す図。
【図3】本発明における金属拡散工程を示す図。
【図4】本発明における金属拡散工程手順を示す図。
【図5】従来例における積層型チップバリスタの(a)
斜視図と(b)断面図。
【図6】従来例における金属拡散工程手順を示す図。
【符号の説明】
1:バリスタ素体 2:内部電極 3:端部電極 4:金属拡散層 5:酸化亜鉛粒子 6a:こう鉢 6b:ふた 7:網 8:拡散金属源 9:バリスタ素体 10:内部電極 11:端部電極 12:絶縁保護層

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化亜鉛系バリスタ材料層と電極材料層と
    を交互に積層した積層型チップバリスタにおいて、 二次イオン質量分析法(SIMS)による測定結果が、
    チップバリスタ素体の表面近傍に含まれる金属Liまた
    は金属Naのイオン濃度をM1とし、これより深い位置
    (表面から深さ10μm)に含まれる金属Liまたは金
    属Naのイオン濃度をM2としたときに、この金属イオ
    ン濃度比(M1/M2)が、10≦(M1/M2)<5
    0000であることを特徴とする積層型チップバリス
    タ。
  2. 【請求項2】酸化亜鉛系バリスタ材料層と電極材料層と
    を交互に積層した積層型チップバリスタの製造方法にお
    いて、 積層型チップバリスタ素体を焼成し、端部電極を塗布
    し、焼付けた後に、密閉こう鉢の内部に炭酸リチウムま
    たは炭酸ナトリウムの粉末を入れ、前記素体相互に適宜
    間隔を置いて前記素体を保持し、加熱することによっ
    て、Li雰囲気またはNa雰囲気中で熱処理を行うこと
    を特徴とする請求項1に記載の積層型チップバリスタの
    製造方法。
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