JPH09241583A - 無機系結合剤組成物およびその製法 - Google Patents

無機系結合剤組成物およびその製法

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JPH09241583A
JPH09241583A JP8050392A JP5039296A JPH09241583A JP H09241583 A JPH09241583 A JP H09241583A JP 8050392 A JP8050392 A JP 8050392A JP 5039296 A JP5039296 A JP 5039296A JP H09241583 A JPH09241583 A JP H09241583A
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JP8050392A
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Osamu Hiroi
治 廣井
Kazuharu Kato
和晴 加藤
Hiroshi Adachi
廣士 足達
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Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 一般の乾燥設備が使用可能な温度、すなわち
300℃程度以下の温度で硬化しえ、耐水性に優れた硬
化物になりうる、硬化剤を含まない結合剤組成物を提供
することを目的とする。 【解決手段】 水の存在下でリン酸と金属元素源化合物
とを反応させてリン酸塩水溶液をえ、該リン酸塩水溶液
の水分量を調整することによりえられる無機系結合剤組
成物であって、該無機系結合剤組成物の組成を、 P25 + Mxy + H2O (ここで、Mxyは金属酸化物であり、Mは金属元素で
あり、xおよびyは金属Mの価数により決まる数であ
る)に換算して、該無機系結合剤組成物中のP、Mおよ
びH2Oの量の割合を表わすとき、P25の1モルに対
し金属元素が2.8〜3.6当量の範囲内に、H2Oが
10〜40モルの範囲内にある無機系結合剤組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無機系結合剤組成物お
よびその製法に関する。さらに詳しくは、本発明は、耐
熱性が要求される接着剤、コーティング剤、粉体粒子の
結合剤などに用いることができる無機系結合剤組成物お
よびその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、リン酸およびその塩の水溶液
からなる結合剤が知られており、これら結合剤は、たと
えば無機粉体の結合や無機材料のコーティングなどのた
めに用いられてきた。また、多くのばあい、これら結合
剤の組成はリン酸二水素アルミニウムの水溶液またはリ
ン酸二水素マグネシウムの水溶液をベースにしたもので
ある。
【0003】リン酸二水素アルミニウムの水溶液および
リン酸二水素マグネシウムの水溶液は、熱処理によりそ
れ自体が硬化しうるものであるが、通常、その硬化物は
吸湿性が高いものである。この硬化物の吸湿性を低くし
て、その耐水性を向上させるためには、前記の熱処理温
度をメタリン酸塩が生成しうる温度にする必要がある。
メタリン酸塩が生成しうる熱処理温度は、通常300℃
以上と高く、このような高い温度の熱処理は、一般的な
乾燥設備では不可能なばあいが多い。
【0004】低い熱処理温度で耐水性が高い結合剤の硬
化物をうる方法として、前記リン酸二水素アルミニウム
の水溶液またはリン酸二水素マグネシウムの水溶液に、
硬化剤を混合し、これを懸濁液またはスラリーの状態に
して結合剤にする方法があげられる。前記硬化剤として
は、酸性リン酸塩と反応性のある酸化物、水酸化物また
は複酸化物が使用されるのが一般的である。このように
硬化剤を使用する方法の例として、特開昭60−584
73号公報には、チタン、マグネシウム、カルシウムま
たはバリウムの複酸化物と無機弱酸の塩を硬化物として
用いた結合剤が開示されている。
【0005】しかしながら、これらの硬化剤は常温にお
いても緩慢に前記酸性リン酸塩と反応する。したがっ
て、前記硬化剤が添加されたのちの結合剤の可使時間
(ポットライフ)は充分に長いものではない。
【0006】また、前記硬化剤を用いて充分な耐水性を
有する結合剤を調製するばあい、相当量の硬化剤が必要
であるので、結合剤中の硬化剤の成分分率が高くなる。
特公平1−12307号公報には、触媒作用がある酸化
マンガンを添加したリン酸塩系の結合剤組成物を塗料に
用いる例が開示されている。しかしながら、この方法に
おいても、硬化剤であるリン酸カルシウムが使用されて
いる。このような方法において、硬化剤の使用の必要が
なければ、触媒成分をより多く混入することができ、よ
り高い触媒能がえられるのではないかと考えられる。
【0007】また、硬化剤を含む前記のリン酸塩系結合
剤組成物は、熱処理することにより硬化剤とリン酸塩と
の反応を促進させて硬化させるものであるが、その反応
は硬化剤(粉体)の表面部分で起こるため、それ以外の
部分では反応が促進されなかった部分が生じる。このよ
うな硬化剤を含むリン酸塩系結合剤組成物の硬化物にお
いて、前記の反応が促進されなかった部分は吸水性が大
きいものになり、全体として耐水性が低いものになる。
また、このような硬化物は空気中の水分を吸水しやすい
ものと考えられる。リン酸塩は吸水すると電気抵抗率が
急激に低下するものであり、このような硬化剤を含むリ
ン酸塩系結合剤組成物は、電気絶縁性を必要とする用途
に用いることは困難であると考えられる。
【0008】また、硬化剤を含むリン酸塩系結合剤組成
物は懸濁しているものであるために、塗膜にしたばあ
い、透明なものにならない。
【0009】また、前記リン酸塩系結合剤組成物が水酸
化アルミニウムなどの金属水酸化物を含むものであるば
あい、特定の温度になると前記金属水酸化物が急激に水
分を放出して金属酸化物に変化する。このリン酸塩系結
合剤組成物が硬化剤を含み、この硬化剤が金属水酸化物
であるばあい、これら硬化剤の金属水酸化物が未反応で
存在していると、前記の水分の放出の際、この硬化物の
緻密さが損なわれたり、硬化物が塗膜であるばあい、剥
離やクラックが生じる可能性がある。そのためこのよう
なリン酸塩系結合剤組成物の電気絶縁性などが要求され
る用途への利用は困難なものである。
【0010】また、硬化剤を用いずに耐水性のよいリン
酸塩系結合剤組成物の硬化物を作製する方法として、リ
ン酸に対して金属元素を高いモル比で反応させてリン酸
塩系結合剤組成物を調製する方法があげられる。しかし
ながら、このように高いモル比で金属元素を反応させた
リン酸塩系結合剤組成物を調製しようとしても、金属元
素源化合物がリン酸水溶液に充分に溶解しないので、こ
のような組成の均一な水溶液であるリン酸塩系結合剤組
成物を調製することは困難であった。
【0011】また、特開平6−313125号公報に
は、メラミン樹脂が添加されたリン酸塩系結合剤組成物
が開示されており、このものは金属基板のコーティング
または接着に用いるばあい、酸性リン酸塩成分と金属と
が反応することによるガスの発生を抑制することができ
ることも開示されている。しかしながら、このような有
機成分を添加すると、高温にさらされてこの有機成分が
分解することがあり、このようなばあい、コーティング
塗膜や接着塗膜の緻密さを損なったり、この有機成分の
分解によりカーボンが残留して塗膜の電気抵抗値が低下
するおそれがある。
【0012】また、リン酸塩系結合剤組成物の調製にお
いて、リン酸に対しMg(OH)2、MgOなどの反応
性の高い金属元素源化合物を添加するばあい、金属元素
源化合物を粉体状で添加するとリン酸と金属元素源化合
物とが急激に反応するので、凝集・結合して大きな塊に
なりやすい。このようなばあい、リン酸−金属元素源化
合物間の反応は著しく緩慢になるかまたは実質上反応が
停止してしまうので、リン酸に対して反応性の高い金属
元素源化合物をリン酸水溶液に効率よく溶解させること
は困難であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記のような
問題点を解消するためになされたものであり、一般の乾
燥設備が使用可能な温度、すなわち300℃程度以下の
温度で硬化しえ、耐水性、透明性および絶縁性に優れた
硬化物になりうる、硬化剤を含まない無機系結合剤組成
物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、水の存在下で
リン酸と金属元素源化合物とを反応させてリン酸塩水溶
液をえ、該リン酸塩水溶液の水分量を調整することによ
りえられる無機系結合剤組成物であって、該無機系結合
剤組成物の組成を、 P25 + Mxy + H2O (ここで、Mxyは金属酸化物であり、Mは金属元素で
あり、xおよびyは金属Mの価数により決まる数であ
る)に換算して、該無機系結合剤組成物中のP、Mおよ
びH2Oの量の割合を表わすとき、P25の1モルに対
し金属元素が2.8〜3.6当量の範囲内に、H2Oが
10〜40モルの範囲内にある無機系結合剤組成物に関
する。
【0015】本発明において、「水分量を調整する」と
は、前記水溶液の水分量が目的とする範囲内にあるばあ
いは水分量を増減させないばあいも含む。
【0016】前記リン酸塩に含まれる金属元素がアルミ
ニウムおよび/またはマグネシウムであることが好まし
い。
【0017】また、本発明は、水の存在下でリン酸と金
属元素源化合物とを反応させてリン酸塩水溶液をえ、該
リン酸塩水溶液の水分量を調整する前記無機系結合剤組
成物の製法に関する。
【0018】前記リン酸水溶液に前記金属元素源化合物
が、必要に応じて懸濁液として添加されていてもよい。
【0019】前記懸濁液が分散媒として水、水と相溶性
のある有機溶媒、または水と該有機溶媒との混合液を用
いていることが好ましい。
【0020】前記分散媒に、必要に応じて界面活性剤を
添加していてもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の無機系結合剤組成物は、
水の存在下でリン酸と金属元素源化合物とを反応させて
えられ、その組成を、 P25 + Mxy + H2O (ここで、Mxyは金属酸化物であり、Mは金属元素で
あり、xおよびyは金属Mの価数により決まる数であ
る)に換算して、この無機系結合剤組成物中のP、Mお
よびH2Oの量の割合を表わすとき、P25の量に対し
金属元素の量が特定の範囲内にあり、H2Oの量が特定
の範囲内にあるものである。
【0022】従来の技術によれば、耐水性が向上した硬
化物がえられる無機系結合剤組成物をうるために、リン
酸1モルに対して金属元素の当量数が2程度のリン酸水
溶液に金属元素を追加する物質を硬化剤として混合して
無機系結合剤組成物をえ、これを加熱硬化させる過程で
硬化剤を反応させ、結果として金属元素の当量数が高い
硬化物をえていた。しかしながら、本発明の無機系結合
剤組成物によれば、前記H2Oの量を特定の範囲にした
ので、金属元素の当量数が高いリン酸塩を水溶液として
存在させることが可能になり、新たに硬化剤である、金
属元素を追加する物質を使用する必要がない。
【0023】また、従来の前記硬化剤を含む無機系結合
剤組成物によれば硬化剤との反応によってその硬化物の
金属元素の当量数を高くして耐水性を高めようとしてい
るが、硬化後の硬化物を微視的に見ると金属元素の当量
数が充分に高くなっていない部分が存在する。このよう
な金属元素の当量数が充分に高くない部分をも水に難溶
性にするためには、硬化温度を300℃以上にする必要
があった。しかしながら、本発明の無機系結合剤組成物
によれば、硬化剤との反応に依存しないため微視的に見
ても均一かつ金属元素の当量数が充分に高いので、より
低い硬化温度でも好適な耐水性を有する硬化物をうるこ
とができる。
【0024】前記の換算における金属酸化物は、たとえ
ば金属元素が1価のものであるばあいM2Oで、2価の
ものであるばあいMOで、3価のものであるばあいM2
3で表わすことができる。このような金属元素は前記
金属元素源化合物に含まれる金属元素由来のものであ
り、金属元素源化合物が2種類以上の金属元素を含むも
のであるばあい、または異なる金属元素を含む2種類以
上の金属元素源化合物を用いるばあい、前記の換算にお
ける金属酸化物は2種類以上になる。
【0025】無機系結合剤組成物の組成を前述のように
25+Mxy+H2Oに換算して、P、MおよびH2
の量の割合を表わす方法を例をあげて、つぎに説明す
る。
【0026】前記無機系結合剤組成物が、後述する実施
例1のように、85重量%リン酸水溶液230g(リン
酸2モル)に水126g(7モル)および水酸化アルミ
ニウム52g(2当量)を添加してえる水溶液と水18
0g(10モル)に酸化マグネシウム24.2g(1.
2当量)を添加してえる懸濁液とを調合したのち、水の
量を減じて全量を596gにしてえられたものであるば
あい、この無機系結合剤組成物はリン酸(H3PO4)1
95.5g(2モル)、水酸化アルミニウム(Al(O
H)3)52g(2当量)、酸化マグネシウム(Mg
O)24.2g(1.2当量)および水324.3g
(596−(195.5+52+24.2)g)により
えられたことになる。この無機系結合剤組成物中のリン
(P)を全てP25換算すると、このP25は1モルと
なる。また、この無機系結合剤組成物中のアルミニウム
(Al)を全てAl23換算すると、このAl23は2
当量(1/3モル)となる。また、この無機系結合剤組
成物中のマグネシウム(Mg)を全てMgO換算する
と、このMgOは1.2当量となる。また、この無機系
結合剤組成物の全重量から、前記のP251モルの重量
(142g)、Al232当量の重量(1モルが6当量
であり、1モルが102gである)およびMgO1.2
当量の重量(1モルが2当量であり、1モルが40.3
gである)を差し引いた重量がH2Oの重量に相当する
として換算すると、このH2Oは22モルとなる。すな
わち、前述の換算においては、P251モルに対してA
23が2当量であり、MgOが1.2当量であり、H
2Oが22モルであると表わすことができる。なお、こ
のばあい、金属元素(M)の当量数はAlとMgとの合
計当量数(3.2当量)となる。
【0027】前記無機系結合剤組成物が、後述する実施
例9のように、85重量%リン酸水溶液230g(リン
酸2モル)に水126g(7モル)および水酸化アルミ
ニウム83.2(3.2当量)を添加し、これに水を加
えて全量を592gにしてえられたものであるばあい、
この無機系結合剤組成物は、リン酸(H3PO4)19
5.5(2モル)、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)83.2g(3.2当量)および水313.3g
(592−(195.5+83.2)g)によりえられ
たことになる。
【0028】この無機系結合剤組成物中のリン(P)を
全てP25換算すると、このP25は1モルとなる。ま
た、この無機系結合剤組成物中のアルミニウム(Al)
を全てAl23換算すると、このAl23は3.2当量
となる。また、この無機系結合剤組成物の全重量から、
前記のP251モルの重量、Al233.2当量の重量
を差し引いた重量がH2Oの重量に相当するとして換算
すると、このH2Oは22モルとなる。すなわち、前述
の換算においては、P251モルに対してAl23
3.2当量であり、H2Oが22モルであると表わすこ
とができる。
【0029】また、前記の換算において、前記無機系結
合剤組成物中、P25の1モルに対し、前記金属元素が
2.8〜3.6当量の範囲内で、好ましくは3.2〜
3.5当量の範囲内で含まれる。前記金属元素の量が前
記の範囲より少ないばあい、この無機系結合剤組成物を
硬化させた硬化物が吸水性や潮解性などを示すため、こ
の硬化物が耐水性の良好なものにならない傾向があり、
一方前記の範囲より多いばあい、不溶性の懸濁成分が生
じるために、この無機系結合剤組成物が均一で透明な水
溶液にならない傾向がある。
【0030】また、前記の換算において、前記無機結合
剤組成物中、P25の1モルに対し、前記H2Oが10
〜40モルの範囲内で、好ましくは13〜25モルの範
囲内で含まれる。前記H2Oの量が前記の範囲より少な
いばあい、この無機系結合剤組成物が高粘度になり、取
り扱いが困難になる傾向があり、一方前記の範囲より多
いばあい、不溶性の懸濁成分が生じるために、この無機
系結合剤組成物が均一で透明な水溶液にならない傾向が
ある。
【0031】前記金属元素源化合物とは、前記無機系結
合剤組成物に金属元素を供与する化合物のことをいい、
このような化合物として、金属水酸化物、金属酸化物、
金属炭酸化物などをあげることができる。
【0032】前記金属水酸化物としては、水酸化アルミ
ニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg
(OH)2)などがあげられる。また、前記金属酸化物
としては、酸化アルミニウム(Al23)、酸化マグネ
シウム(MgO)などがあげられる。また、前記金属炭
酸化物としては、炭酸マグネシウム(MgCO3)など
があげられる。これら金属元素源化合物のうち、反応性
が適度である点で、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)および酸化マグネシウム(MgO)が有利である。
すなわち、前記リン酸塩を構成する金属元素がアルミニ
ウムおよび/またはマグネシウムであることが好まし
い。
【0033】このような無機系結合剤組成物は、金属元
素が高いモル比で含まれるにもかかわらず、水に不溶性
の懸濁成分を含まないか、または含んでいてもその懸濁
成分が非常に少ない溶液である。そのため、この無機系
結合剤組成物を熱処理することにより、緻密な構造の硬
化物をうることができ、この硬化物は耐水性がよく、透
明性が高く、絶縁性がよいものである。
【0034】通常、リン酸に金属元素源化合物を溶解さ
せていくとpHが上昇するが、本発明の無機系結合剤組
成物においては、金属元素源化合物がリン酸に充分に反
応しうるため従来のリン酸塩系結合剤組成物(最も一般
的なものの例として、リン酸二水素アルミニウム水溶液
系のものおよびリン酸二水素マグネシウム水溶液系のも
のがある)に比べてpHが高いものである。そのため、
これを金属基板に塗布したり、金属の接着などに用いる
ばあいでも、これら金属との反応による水素ガスの発生
が少ないので、塗膜に気泡が生じにくい。
【0035】前記無機系結合剤組成物は、水の存在下で
リン酸と金属元素源化合物とを反応させて、リン酸塩水
溶液をえ、このリン酸塩水溶液の水分量を調整すること
によりうることができる。
【0036】また、前記無機系結合剤組成物は、水の存
在下でリン酸と金属元素源化合物とを反応させたのち、
追加の金属元素源化合物をさらに反応させることによ
り、リン酸塩水溶液をえ、このリン酸塩水溶液の水分量
を調整することによりうることもできる。このばあいに
おいて、最初に反応させる金属元素源化合物と追加の金
属元素源化合物とが異なるものであってもよい。
【0037】前記のように水の存在下でリン酸と金属元
素源化合物とを反応させる工程において、リン酸と水と
の量の比率は、前記金属元素源化合物がリン酸を含む水
に好適に溶解または分散しうる量であればよい。また、
金属元素源化合物が水溶液、懸濁液などの形でリン酸ま
たはリン酸を含む水に混合されるばあいもある。
【0038】また、前記金属元素源化合物の量は目的と
する無機系結合剤組成物に含まれる金属元素の量(この
金属元素が2種類以上のときは、その合計量)に合わせ
られる、すなわちリン酸(H3PO4)2モルに対して、
前記金属元素源化合物中の金属の当量数を2.8〜3.
6の範囲内、好ましくは3.2〜3.5の範囲内とす
る。このようにして、調整することによりえられる無機
系結合剤組成物の前記換算におけるP251モルに対す
る金属元素源化合物の当量数は2.8〜3.6の範囲
内、好ましくは3.2〜3.5の範囲内になる。
【0039】また、前記金属元素源化合物は粉体などの
形状のものを用いることができ、粉体の形状であること
が、リン酸を含む水中に迅速に分散しやすいという点で
好ましい。また、前記金属元素源化合物が水に分散しに
くいものであるばあい、これを分散媒に懸濁させて懸濁
液としたのち、この懸濁液をリン酸を含む水中に添加す
ることが、前記金属元素源化合物がリン酸を含む水中に
迅速に分散しやすく、迅速にリン酸と反応しやすいとい
う点で好ましい。
【0040】前記分散媒としては、水;エタノール、メ
タノールなどの水と相溶性のある有機溶媒;または水と
これら有機溶媒との混合液があげられる。前記分散媒に
おいて、有機溶媒を使用するばあい、毒性がなく扱いや
すいという点でエタノールが好ましい。また、水とこれ
らの有機溶媒との混合液が用いられるばあいの混合比は
使用される金属元素源化合物により調節すればよい。
【0041】また、これら水と相溶性のある有機溶媒が
リン酸塩水溶液中に多量に残留していると、不溶性の懸
濁成分を生じやすいので、リン酸塩水溶液の水分量を調
整する際などに、これら有機溶媒がリン酸塩水溶液から
充分に除去されることが好ましい。
【0042】また、前記分散媒に必要に応じ界面活性剤
が添加されていてもよく、これにより前記金属元素源化
合物がリン酸を含む水中に迅速に分散しやすくなる。前
記界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレンア
ルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノー
ル、ソルビタン脂肪酸エステルなどがあげられる。これ
ら界面活性剤は、通常前記分散媒中に0.01〜1重量
%程度添加して用いられればよい。
【0043】前記のようにして水の存在下でリン酸と金
属元素源化合物とを反応させる際、リン酸と金属元素源
化合物とを含むこの水の温度は、金属元素源化合物が充
分に水中に分散するまでは、50℃以下の温度であるこ
とが好ましい。分散するまでの前記水の温度が50℃よ
り高い温度であるばあい、前記金属源化合物が凝集しや
すくなる傾向がある。また、金属元素源化合物として水
素化アルミニウム(Al(OH)3)、酸化アルミニウ
ム(Al23)など常温でリン酸と反応しにくい化合物
を使用するばあい、この金属元素源化合物とリン酸とを
反応させるときの前記水の温度は80℃以上の温度であ
ることが好ましい。このばあいの前記水の温度が前記の
範囲より低いとき、前記反応が充分に完結しにくくなる
傾向がある。
【0044】なお、超音波加振により金属元素源化合物
を前記水に充分に分散または溶解させる方法を用いても
よい。
【0045】前述のようにして反応を充分に完結させる
ことにより、リン酸塩水溶液がえられる。
【0046】このようにしてえられたリン酸塩水溶液の
水分量を調整して、えられる無機系結合剤組成物の組成
の前記換算におけるH2Oの値を前記の範囲に入るよう
にする。
【0047】このときの水分量の調整は、水分量が所定
量より多いばあい(水分量が多く、前記換算におけるH
2Oの値が所定の値より大きいばあい、前記リン酸塩水
溶液を加熱、減圧またはその併用により行ないうる。一
方、水分量が所定量より少ないばあい(水分量が少な
く、前記換算におけるH2Oの値が所定の値より小さい
ばあい)、前記リン酸塩水溶液に水を添加することによ
り水分量の調整を行ないうる。
【0048】このようにしてえられる本発明の無機系結
合剤組成物は、たとえば電気絶縁用塗料、触媒作用を有
する塗料、耐アーク塗料、耐摩耗塗料、耐熱塗料、耐熱
接着剤、各種無機粉体の成形用結合剤などの用途に用い
ることができる。
【0049】また、本発明の無機系結合剤組成物は、3
00℃程度以下、有利には150〜300℃程度の温度
で硬化させることができ、このようにして硬化させた硬
化物は耐水性、絶縁性および透明性が好適なものであ
る。
【0050】
【実施例】つぎに、本発明を実施例に基づき、さらに詳
細に説明するが、本発明は係る実施例により制限される
ものではない。
【0051】[実施例1]85重量%リン酸水溶液23
0g(水溶液中にリン酸2モルを含む)に水126g
(7モル)を追加し、さらにこれを撹拌および超音波加
振しながら金属元素源化合物である水酸化アルミニウム
52g(2当量)を徐々に添加した。なお、この工程で
リン酸と水酸化アルミニウムとの反応熱によって、リン
酸と水酸化アルミニウムとを含むこの水溶液の温度が上
昇すると、未反応の水酸化アルミニウムが凝集する。そ
のため、この未反応の水酸化アルミニウムが水溶液中に
充分に分散することが妨げられる。このような現象を防
止するために、この水溶液の温度をこの工程を通して3
0〜50℃に保った。また、金属元素源化合物である水
酸化アルミニウムの添加終了ののち、超音波加振をさら
に5分間行なった。この工程において、水の量は厳密に
制限されるものではないが、金属元素源化合物がリン酸
を含む水溶液に好適に溶解または分散し、金属元素源化
合物とリン酸とが好適に反応しえ、また目的とする無機
系結合剤組成物にするために水分量を調整するときに、
この水分量を調整しやすい量であることが好ましい(以
下の実施例においても同じ)。
【0052】つぎに、この水溶液を80℃に加熱して、
この温度を10分間保ったところ透明なリン酸塩を含む
水溶液がえられた(実施例1において、この水溶液は、
リン酸二水素アルミニウムを含む水溶液である)。
【0053】つづいて追加の金属元素源化合物である酸
化マグネシウム24.2g(1.2当量)を追加の金属
元素源化合物の分散溶媒である水180g(10モル)
に加え撹拌したのち超音波加振して追加の金属元素源化
合物である酸化マグネシウムの懸濁液をえた。この懸濁
液を前記のリン酸塩を含む水溶液に撹拌・超音波加振し
ながら徐々に添加したのち、さらに1時間撹拌・超音波
加振を加えたところ、やや懸濁した水溶液がえられた。
この工程における追加の金属元素源化合物の分散溶媒の
量は厳密に制限されるものではなく、追加の金属元素源
化合物がこの分散溶媒に好適に溶解または分散し、また
目的とする無機系結合剤組成物にするために水分量を調
整するときにこの水分量を調整しやすい量であることが
好ましい(以下の実施例においても、追加の金属元素源
化合物および追加の金属元素源化合物の分散溶媒を用い
るときは同じ)。
【0054】この水溶液を減圧容器に入れたのち、30
℃に保ち、撹拌しながら10mmHgまで減圧し、この
水溶液の全量が596gになるまで、この撹拌減圧を続
けた。このようにして、透明で粘稠な水溶液である無機
系結合剤組成物がえられた。
【0055】前記無機系結合剤組成物の前記換算におけ
るP251モルに対する金属の当量数は3.2(アルミ
ニウムが2当量であり、マグネシウムが1.2当量であ
る)であり、H2Oのモル数は22である。
【0056】この水溶液に100gの水を加えたとこ
ろ、ただちに加水分解を起こして不溶の懸濁成分が生じ
た。したがって、無機系結合剤組成物を透明で粘稠な均
一溶液にするためには水分量の制御が不可欠であること
が判る。
【0057】えられた無機系結合剤組成物の組成を、前
述のようにP25+MxY+H2Oとして換算(酸化物
換算)(ここで、実施例1のばあい、MxYはAl23
とMgOとを示す)したばあいのP25の1モルに対す
る金属元素Mの当量数(実施例1のばあい、AlとMg
との当量数)およびH2Oのモル数をつぎの方法により
求めた。
【0058】まず、無機系結合剤組成物を秤量する。そ
して、これを示差熱重量分析(TG−DTA)にかけ、
常温から800℃まで昇温させたときの減量値を測定す
る。この減量値を秤量した無機系結合剤組成物のH2
の重量とする。そして、この重量からH2Oのモル数を
計算する。つぎに、前記示差熱重量分析にかけた無機系
結合剤組成物の残渣を加熱加圧容器中で無機酸に溶解さ
せ、その溶液中のPおよび金属元素M(実施例1のばあ
い、AlとMg)の量をIPC発光分光分析装置(Indu
ctively Coupled Plasma Emission Spectorometer)に
より測定する。そして、金属元素Mの測定値からこの金
属元素Mの当量数を計算する。また、Pの量の測定量に
基づき、酸化物(P25)換算して、P25のモル数を
計算する。このようにしてえられた無機系結合剤組成物
におけるP25のモル数、金属元素Mの当量数およびH
2Oのモル数より、P25の1モルに対する金属元素M
の当量数およびH2Oのモル数を算出する。
【0059】なお、無機系結合剤組成物に、たとえば溶
媒などの有機成分などが含まれているばあいは、前記示
差熱重量分析において、減量値にH2O以外の脱離成分
も含まれてしまう。このようなばあい、分留によって水
以外の溶媒成分などを分離し、その量を把握することが
できる。そして水以外の溶媒成分などを分離したのち、
これを前記示差熱重量分析にかけることにより、H2
の重量を求める。
【0060】その結果、この測定におけるAl23、M
gO、P25およびH2Oの量の値は、仕込み組成およ
びえられた無機系結合剤組成物の重量から計算した値と
ほぼ一致した(以下に示すほかの実施例および比較例に
おいても同様に、その測定値とその計算値はほぼ一致し
た)。
【0061】前記無機系結合剤組成物をバーコーターで
ガラス基板に塗布し、200℃に加熱して硬化させてえ
られた塗膜を観察し、透明性を目視で評価した。透明で
あるものを○、やや白濁しているものを△、不透明であ
るものを×とした。その結果を表6に示す。
【0062】なお、透明性を必要とする硬化物として
は、通常前記評価結果が○または△、好ましくは○であ
る無機結合剤組成物が用いられる。
【0063】つぎに、この無機系結合剤組成物をSUS
304基板上に均一に流延したのち、200℃で120
分間加熱することにより、3〜30μmの塗膜を形成し
た。この塗膜の表面に導電ペーストを塗布して電極を形
成し、この塗膜の体積抵抗率を測定して絶縁性の評価を
した。その結果を表6に示す。
【0064】つぎに、この無機系結合剤組成物を蒸発皿
に入れ200℃で2時間加熱することにより硬化させ発
泡したガラス状の硬化物をえた。これを100メッシュ
の大きさに粉砕し、この粉末1gを、10gの水に加え
1時間撹拌した。このとき水中に溶出したPO4 3-イオ
ンのモル数をモリブデンブルーの吸収(825nm)に
よる吸光光度法にて測定することにより、前記硬化物の
耐水性を評価した。その結果を表6に示す。
【0065】なお、PO4 3-イオンのモル数の値が大き
いほど、耐水性がわるいものである。また、耐水性を必
要とする硬化物には、通常このPO4 3-イオンのモル数
の値が5×10-4モル以下、好ましくは1×10-4モル
以下である無機系結合剤組成物が用いられる。
【0066】また、絶縁性を必要とする硬化物として
は、通常前記体積抵抗率が0.5×1011Ω・cm以
上、好ましくは5×1011Ω・cm以上である無機系結
合剤組成物が用いられる。
【0067】[実施例2〜10]金属元素源化合物であ
る水酸化アルミニウムの使用量を表1に記載の量にした
ほかは実施例1と同様の方法でリン酸のアルミニウム塩
を含む水溶液をえた。
【0068】つづいて、追加の金属元素源化合物である
酸化マグネシウムの使用量を表1に記載の量にし、えら
れる無機系結合剤組成物の重量を表1に記載の重量にし
たほかは実施例1と同様の方法で無機系結合剤組成物を
えた。なお、実施例1において、目的とする無機系結合
剤組成物の重量の調整(H2Oの量の調整)は、最終的
に水分量を減じることにより行なわれるが、この実施例
および後述する実施例および比較例においては、目的と
する無機系結合剤組成物の重量の調整(H2Oの量の調
整)を、最終的に水を追加することにより水分量を増し
て行なわれるばあいもある。以下の表1〜5において、
無機系結合剤組成物の重量の調整(H2Oの量の調整)
が最終的に水分量を減じることにより行なわれるものに
「水分量減」と、水分量を増して行なわれるものに「水
分量増」と記入して、重量の調整方法を明確にした。え
られた無機系結合剤組成物の状態を表6に示す。
【0069】この無機系結合剤組成物の前記換算におけ
るP251モルに対する金属の当量数(アルミニウムお
よびマグネシウムの当量数)を表6に示す。
【0070】つぎに、この無機系結合剤組成物を用い
て、実施例1と同様にして、硬化させた塗膜の透明性の
評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の耐水
物の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0071】
【表1】
【0072】[実施例11〜13]追加の金属元素源化
合物(およびその溶媒)を使用せず、金属元素源化合物
である水酸化アルミニウムの量を表2に記載の量に代
え、えられる無機系結合剤組成物の重量を表2に記載の
重量にしたほかは実施例1と同様の方法で無機系結合剤
組成物をえた。
【0073】すなわち、85重量%リン酸水溶液230
g(水溶液中にリン酸2モルを含む)に水126g(7
モル)を追加し、さらにこれを撹拌(および超音波加振
しながら、表2に記載の量の金属元素源化合物である水
酸化アルミニウムを徐々に添加した。なお、超音波加振
中のこの水溶液の温度は実施例1と同様の温度に保っ
た。そして、この水溶液を80℃に加熱して、10〜6
0分間保ったのち、この水溶液に水を添加することによ
り、全量を所定の量(表2に記載)に調整して無機系結
合剤組成物である水溶液をえた。えられた無機系結合剤
組成物の状態を表6に示す。
【0074】また、この無機系結合剤組成物の前記換算
におけるP251モルに対する金属の当量数(アルミニ
ウムの当量数)を表6に示す。
【0075】つぎに、この無機系結合剤組成物を用い
て、実施例1と同様にして、硬化させた塗膜の透明性の
評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の耐水
性の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0076】
【表2】
【0077】[実施例14〜16]追加の金属元素源化
合物(およびその溶媒)を使用せず、金属元素源化合物
として水酸化アルミニウムの代りに酸化マグネシウムを
用い、この酸化マグネシウムを懸濁液にしてリン酸水溶
液に添加し、えられる無機系結合剤組成物の重量を表3
に記載の重量にしたほかは、実施例1と同様の方法で無
機系結合剤組成物である水溶液をえた。なお、実施例1
では、このようにしてえた水溶液を80℃に加熱した
が、この実施例ではこの手順は不要であった。
【0078】すなわち、85重量%リン酸水溶液230
g(水溶液中にリン酸2モルを含む)に、表3に記載の
量の金属元素源化合物である酸化マグネシウムを表3に
記載の量の水に加え撹拌したのち超音波加振してえた酸
化マグネシウムの懸濁液を添加した。なお、この懸濁液
は、リン酸水溶液を30〜50℃に保った状態(添加工
程を通して)で撹拌・超音波加振のもと、徐々に添加さ
れた。そして、添加完了ののち、さらにこの撹拌・超音
波加振を1時間続けた。この水溶液に実施例12および
13では水を添加することにより、実施例14では実施
例1と同様の方法により水分量を減じることにより、全
量を所定の重量(表3に記載)に調整して、無機系結合
剤組成物をえた。えられた無機系結合剤組成物の状態を
表6に示す。
【0079】この無機系結合剤組成物の前記換算におけ
るP251モルに対する金属の当量数(マグネシウムの
当量数)を表6に示す。
【0080】つぎに、この無機系結合剤組成物を用い
て、実施例1と同様にして、硬化させた塗膜の透明性の
評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の耐水
性の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0081】
【表3】
【0082】[実施例17]金属元素源化合物として水
酸化アルミニウムの代りに活性アルミナを用い、えられ
る無機系結合剤組成物の重量を表4に記載の重量にした
ほかは、実施例1と同様の方法で無機系結合剤組成物を
えた。
【0083】すなわち、85重量%リン酸水溶液230
g(水溶液中にリン酸2モルを含む)に水126g(7
モル)を追加し、さらに、表4に記載の量の金属元素源
化合物である活性アルミナを添加した。なお、この活性
アルミナは、リン酸水溶液を30〜50℃に保った状態
(添加工程を通して)で撹拌・超音波加振のもと、徐々
に添加された。そして、添加完了ののち、さらにこの超
音波加振を1時間続けた。
【0084】このようにしてえられた水溶液を80℃に
加熱して30分間保ったのち、この水溶液に、実施例1
と同様にして、同様の追加の金属元素源化合物を追加の
金属元素源化合物の分散溶媒に懸濁させた懸濁液を、水
溶液の撹拌・超音波加振のもと徐々に添加した。そのの
ち、この撹拌・超音波加振をさらに1時間加え、つづい
て、実施例1と同様の方法でこの水溶液の水分を減じる
ことにより所定の重量(表4に記載)の無機系結合剤組
成物をえた。えられた無機系結合剤組成物の状態を表6
に示す。
【0085】また、この無機系結合剤組成物の前記換算
におけるP251モルに対する金属の当量数(アルミニ
ウムおよびマグネシウムの当量数)を表6に示す。
【0086】つぎに、この無機系結合剤組成物を用い
て、実施例1と同様にして、硬化させた塗膜の透明性の
評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の耐水
性の評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の
耐水性の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0087】[実施例18〜20]追加の金属元素源化
合物の種類および使用量ならびに追加の金属元素源化合
物の分散溶媒の種類および使用量を表4に示すように
し、えられる無機系結合剤組成物の重量を表5に記載の
重量にしたほかは実施例1と同様の方法で無機系結合剤
組成物である水溶液をえた。えられた無機系結合剤組成
物の状態を表6に示す。
【0088】また、この無機系結合剤組成物の前記換算
におけるP251モルに対する金属の当量数(アルミニ
ウムおよびマグネシウムの当量数)を表6に示す。
【0089】つぎに、この無機系結合剤組成物を用い
て、実施例1と同様にして、硬化させた塗膜の透明性の
評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の耐水
性の評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の
耐水性の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0090】[実施例21]85重量%リン酸水溶液2
30g(水溶液中にリン酸2モルを含む)に水126g
(7モル)を追加し、さらにこれを撹拌および超音波加
振しながら金属元素源化合物である水酸化アルミニウム
52g(2当量)を添加した。なお、この水酸化アルミ
ニウムは、リン酸水溶液を50℃に保った状態(添加工
程を通して)で、撹拌・超音波加振のもと、除々に添加
された。そして、添加完了ののち、さらに、この超音波
加振をさらに5分間行なった。
【0091】このようにしてえられた水溶液を80℃に
加熱して10分間保ったのち、この水溶液に、追加の金
属元素源化合物である酸化マグネシウム24.2g
(1.2当量)を追加の金属元素源化合物の分散溶媒で
ある水とエタノールとの混合液(水144g(8モル)
とエタノール46.1g(1モル)との混合液)に加え
撹拌したのち超音波加振してえた追加の金属元素源化合
物である酸化マグネシウムの懸濁液を添加した。なお、
この懸濁液は撹拌・超音波加振のもと除々に添加され
た。そして添加完了ののち、さらに1時間撹拌・超音波
加振を加えたところ、やや懸濁した水溶液がえられた。
【0092】この水溶液を減圧容器に入れたのち、30
℃に保ち、撹拌しながら10mmHgまで減圧し、この
水溶液の全量が576.2gになるまで(エタノール分
が除去できるまで)、この撹拌、減圧を続けた。つぎ
に、この水溶液に水を加えて全量を596gにして、無
機系結合剤組成物をえた。
【0093】また、この無機系結合剤組成物の前記換算
におけるP251モルに対する金属の当量数(アルミニ
ウムおよびマグネシウムの当量数)を表6に示す。
【0094】つぎに、この無機系結合剤組成物を用い
て、実施例1と同様にして、硬化させた塗膜の透明性の
評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の耐水
性の評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の
耐水性の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0095】
【表4】
【0096】[比較例1〜4]金属元素源化合物である
水酸化アルミニウムの使用量、追加の金属元素源化合物
である酸化マグネシウムの使用量およびえられた無機系
結合剤組成物の重量を表5に示すようにしたほかは実施
例1と同様にして無機系結合剤組成物をえた。えられた
無機系結合剤組成物の状態を表6に示す。
【0097】また、この無機系結合剤組成物の前記換算
におけるP251モルに対する金属の当量数(アルミニ
ウムおよびマグネシウムの当量数)を表6に示す。
【0098】つぎに、この無機系結合剤組成物を用い
て、実施例1と同様にして、硬化させた塗膜の透明性の
評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の耐水
性の評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の
耐水性の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0099】[比較例5〜6]金属元素源化合物である
水酸化アルミニウムの使用量およびえられた無機系結合
剤組成物の重量を表5に示すようにしたほかは実施例1
1と同様の方法で無機系結合剤組成物をえた。えられた
無機系結合剤組成物の状態を表6に示す。
【0100】また、この無機系結合剤組成物の前記換算
におけるP251モルに対する金属の当量数(アルミニ
ウムの当量数)を表6に示す。
【0101】つぎに、この無機系結合剤組成物を用い
て、実施例1と同様にして、硬化させた塗膜の透明性の
評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の耐水
性の評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の
耐水性の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0102】[比較例7〜8]金属元素源化合物である
酸化マグネシウムの使用量およびえられた無機系結合剤
組成物の重量を表5に示すようにしたほかは実施例14
と同様の方法で無機系結合剤組成物をえた。えられた無
機系結合剤組成物の状態を表6に示す。
【0103】また、この無機系結合剤組成物の前記換算
におけるP251モルに対する金属の当量数(マグネシ
ウムの当量数)を表6に示す。
【0104】つぎに、この無機系結合剤組成物を用い
て、実施例1と同様にして、硬化させた塗膜の透明性の
評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の耐水
性の評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の
耐水性の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0105】
【表5】
【0106】[比較例9]50重量%のリン酸二水素ア
ルミニウム水溶液424gに水157gを添加した水溶
液に硬化剤として水酸化アルミニウム182g(7当
量)を撹拌しながら徐々に添加して無機系結合剤組成物
をえた。えられた無機系結合剤組成物の状態を表6に示
す。
【0107】また、この無機系結合剤組成物の前記換算
におけるP251モルに対する金属の当量数(アルミニ
ウムおよびマグネシウムの当量数)を表6に示す。
【0108】つぎに、この無機系結合剤組成物を用い
て、実施例1と同様にして、硬化させた塗膜の透明性の
評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の耐水
性の評価、その塗膜の体積抵抗率の測定および硬化物の
耐水性の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0109】
【表6】
【0110】前記実施例より、前記のすべての実施例の
無機系結合剤組成物は本発明の目的を達成するものであ
るが、金属元素源化合物が金属元素としてアルミニウム
のみを含むもののばあいは、金属元素源化合物または追
加の金属元素源化合物がマグネシウムを含むものに比べ
て、使用する金属元素源化合物(追加の金属元素源化合
物を含む)の金属元素の当量数が同じであっても、えら
れる硬化物の耐水性が比較的低くなることが判る。
【0111】また、金属元素源化合物が金属元素として
マグネシウムのみを含むもののばあいは比較的均一な水
溶液になりにくいため、無機系結合剤組成物であるこの
水溶液を硬化させてなる硬化物の透明性が比較的やや劣
るものであることが判る。したがって、実施例1〜10
または17〜21の無機系結合剤組成物のようにアルミ
ニウムとマグネシウムとを含む金属元素源化合物(たと
えば、金属元素源化合物と追加金属元素源化合物との混
合系を用いてアルミニウムとマグネシウムとを含む金属
元素源化合物をうる方法が例としてあげられる。)を用
いたものが好ましい。
【0112】また、前記換算において、P251モルに
対する金属元素の当量数が2.8以上のとき比較的耐水
性のよい硬化物がえられるが、より高い耐水性を必要と
するばあいには、この当量数を3.2以上にすることが
望ましいことが判る。
【0113】また、前記換算において、P251モルに
対する金属元素の当量数が3.5をこえるとき、えられ
る硬化物の透明性が比較的やや劣る結果となった。した
がって硬化物の透明性が必要なばあいは、前記換算にお
いて、P251モルに対する金属元素の当量数を3.5
以下とすることが好ましいことが判る。
【0114】また、実施例20においては、懸濁液を調
製する際に水に少量の界面活性剤を添加したので、金属
元素源化合物粉末の分散性が向上し、迅速に反応を進行
させることができた。
【0115】また、実施例21においては、水より表面
張力の小さい有機溶媒を懸濁液を調製する際に混合した
ので、金属元素源化合物粉末の分散性が向上し、迅速に
反応を進行させることができた。
【0116】また、前記比較例より、前記換算におい
て、P251モルに対する金属元素の当量数が2.8未
満では、えられる硬化物の耐水性が著しく劣り、3.6
をこえると、えられる硬化物の透明性が著しく劣ること
が判る。
【0117】また、比較例4においては、前記換算にお
いて、P251モルに対するH2Oの量を所定の範囲以
上にしたので、不溶性の成分のために水溶液が顕著に懸
濁し、この水溶液を用いてえた硬化物が透明にはなら
ず、また耐水性が実施例のものより劣る結果となった。
【0118】また、比較例9においては、従来技術のご
とく硬化剤を添加してえた無機系結合剤組成物を硬化さ
せて硬化物をえたので、この硬化物は透明性、耐水性の
両面において実施例の結果より劣る結果となった。
【0119】
【発明の効果】本発明の無機系結合剤組成物によれば、
水の存在下でリン酸と金属元素源化合物とを反応させて
リン酸塩水溶液をえ、該リン酸塩水溶液の水分量を調整
することにより前記換算におけるP251モルに対する
金属元素の当量数およびH2Oのモル数を所定の値に制
御することで均一系水溶液としたので、この無機系結合
剤組成物を硬化させてえる硬化物の耐水性が向上し、さ
らにこの硬化物が緻密で透明なものとなる。さらに、こ
の無機系結合剤組成物には硬化剤が添加されていないの
で可使時間が長いものである。
【0120】また、前記リン酸塩を構成する金属元素が
アルミニウムおよび/またはマグネシウムであることに
より好適な結合力を有する無機系結合剤組成物がえられ
る。
【0121】また、前記無機系結合剤組成物は、水の存
在下でリン酸と金属元素源化合物とを反応させてリン酸
塩水溶液をえ、該リン酸塩水溶液の水分量を調整する製
法によりえられる。
【0122】また、前記製法によれば、リン酸に対して
分散性のわるい金属元素源化合物を使用するばあい、こ
の金属元素源化合物を懸濁液の状態にしてリン酸に添加
することにより、このリン酸に好適に分散させられる。
また、超音波加振しながら金属元素源化合物を添加する
ことによりリン酸とこの金属元素源化合物とを速やかに
反応せしめることが可能となる。また、無機系結合剤組
成物の製造過程で水分が過剰となったばあいその水分は
加熱、減圧を施し所定量まで減じて調整することで均一
系の無機系結合剤組成物である水溶液が容易にえられ
る。また、逆に水分が不足するばあいは、水分を所定量
まで加えて調整することで均一系の無機系結合剤組成物
である水溶液が容易にえられる。
【0123】また、前記懸濁液が分散媒として水、水と
相溶性のある有機溶媒、または水と該有機溶媒との混合
液を用いていることにより、前記金属元素源化合物がリ
ン酸水溶液に好適に分散するので反応を迅速に進行させ
ることができる。
【0124】また、前記分散媒に界面活性剤を添加して
いることにより、前記金属元素源化合物がリン酸水溶液
に好適に分散するので反応を迅速に進行させることがで
きる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水の存在下でリン酸と金属元素源化合物
    とを反応させてリン酸塩水溶液をえ、該リン酸塩水溶液
    の水分量を調整することによりえられる無機系結合剤組
    成物であって、該無機系結合剤組成物の組成を、 P25 + Mxy + H2O (ここで、Mxyは金属酸化物であり、Mは金属元素で
    あり、xおよびyは金属Mの価数により決まる数であ
    る)に換算して、該無機系結合剤組成物中のP、Mおよ
    びH2Oの量の割合を表わすとき、P25の1モルに対
    し金属元素が2.8〜3.6当量の範囲内に、H2Oが
    10〜40モルの範囲内にある無機系結合剤組成物。
  2. 【請求項2】 前記リン酸塩を構成する金属元素(M)
    がアルミニウムおよび/またはマグネシウムである請求
    項1記載の無機系結合剤組成物。
  3. 【請求項3】 水の存在下でリン酸と金属元素源化合物
    とを反応させてリン酸塩水溶液をえ、該リン酸塩水溶液
    の水分量を調整する請求項1記載の無機系結合剤組成物
    の製法。
  4. 【請求項4】 前記金属元素源化合物が懸濁液として添
    加されている請求項3記載の製法。
  5. 【請求項5】 前記懸濁液が分散媒として水、水と相溶
    性のある有機溶媒、または水と該有機溶媒との混合液を
    用いている請求項4記載の製法。
  6. 【請求項6】 前記分散媒に界面活性剤を添加している
    請求項5記載の製法。
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