JPH09225590A - 鋳込集煙装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた集煙機能を維持し，かつ，金属溶湯か
ら放射される輻射熱による劣化を確実に防止することが
できる，鋳込集煙装置を提供すること。 【解決手段】 鋳型に対して金属溶湯を注湯する鋳込場
の上方に配設され，注湯時に発生する煤煙６を集煙する
ための集煙フードと，該集煙フードと鋳込場との間に配
設した通気性遮熱構造体２とよりなる。通気性遮熱構造
体２は，耐熱材よりなる多数のスリット板２１と，スリ
ット板２１を支持する支持体２２とよりなる。スリット
板２１は，集煙フードから鉛直方向に見たとき隣り合う
スリット板２１の一部分と非接触状態で重なり合うよう
に重合配置され，金属溶湯から放射される輻射熱５を遮
ると共に通気性を確保するように構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【技術分野】本発明は，金属溶湯の鋳込場において発生
する煤煙を集煙するための鋳込集煙装置に関する。

【０００２】

【従来技術】鉄鋼材料等の金属のインゴットを作製する
場合には，例えば後述する図１に示すごとく，鋳込み台
車８１上に設けられた複数の鋳型８２に対して，その上
方に位置する取鍋８５に蓄えられている金属溶湯７を注
湯することにより行う。この注湯時においては，例えば
金属溶湯７と空気との接触による酸化現象，或いは金属
溶湯７の表面に予め浮かべた保温材の燃焼等により，煤
煙６が発生する。

【０００３】そのため，図９に示すごとく，環境改善等
を目的として，鋳込場の上方には，煤煙６を集煙するた
めの集煙フード１０よりなる鋳込集煙装置９が設けられ
る。上記集煙フード１０は，金属溶湯７の注湯時におい
ては，常に金属溶湯７からの強い輻射熱５を受ける。そ
のため，図９に示すごとく，集煙フード１０の内面側に
耐火ボード等の耐熱物１９を貼設し，集煙フード１０を
保護している。

【０００４】

【解決しようとする課題】しかしながら，上記従来の鋳
込集煙装置９においては，次の問題がある。即ち，上記
注湯時の金属溶湯７の温度は，例えば鉄鋼材料の場合は
約１６００℃という高温に達する。そのため，その金属
溶湯７から放射される輻射熱５は非常に強烈である。そ
れ故，その輻射熱５を直接受ける上記耐熱物１９は，約
１０００℃を超えるような極めて高い温度にまで加熱さ
れる。

【０００５】また，上記耐熱物１９は，耐熱性を有する
ものの，上記のごとく極めて高い温度に保持された場合
には，短期間で劣化してしまい，変形或いは破損してし
まう。そのため，集煙フード１０自体が直接輻射熱５に
より加熱され，変形や穴明き等が発生する場合もあり，
煤煙６の集煙効率が低下する。

【０００６】このような不具合が発生した際には，耐熱
物１９の張り替えを行うと共に集煙フード１０自体の補
修を行う必要がある。また不具合の発生周期が比較的短
いために，これらの補修作業は，比較的短周期で繰り返
し行うことが必要である。そのため，その費用の損失だ
けでなく，生産効率の低下にもつながる。

【０００７】本発明は，かかる従来の問題点に鑑みてな
されたもので，優れた集煙機能を維持し，かつ，金属溶
湯から放射される輻射熱による劣化を確実に防止するこ
とができる，鋳込集煙装置を提供しようとするものであ
る。

【０００８】

【課題の解決手段】請求項１の発明は，鋳型に対して金
属溶湯を注湯する鋳込場の上方に配設され，注湯時に発
生する煤煙を集煙するための集煙フードと，該集煙フー
ドと上記鋳込場との間に配設した通気性遮熱構造体とよ
りなり，該通気性遮熱構造体は，耐熱材よりなる多数の
スリット板と，該スリット板を支持する支持体とよりな
り，かつ上記スリット板は，上記集煙フードから鉛直方
向に見たとき隣り合うスリット板の一部分と非接触状態
で重なり合うように重合配置され，上記金属溶湯から放
射される輻射熱を遮ると共に通気性を確保するように構
成されていることを特徴とする鋳込集煙装置にある。

【０００９】本発明において最も注目すべきことは，上
記集煙フードと鋳込場との間には，輻射熱遮蔽機能と通
気性とを合わせ持つ上記通気性遮熱構造体を配設してあ
ることである。

【００１０】上記通気性遮熱構造体を構成する多数のス
リット板に用いる耐熱材としては，受けた輻射熱を支持
体に効率良く伝導させる必要があるため，熱伝導性の良
い鉄鋼材料等の金属材料であって，しかも耐熱性の優れ
た材料を選択する必要がある。また，熱負荷を受ける環
境の中で錆びることのない耐食性を有することが望まし
く，例えばオーステナイト系ステンレス鋼，オーステナ
イト系耐熱鋼が使用可能である。

【００１１】また，スリット板の配置は上記のごとき重
合配置であって，隣り合うスリット板の間に煤煙を通過
させるための一定の隙間を確保する一方，輻射熱の放射
方向においては，各スリット板の一部分が重なり合って
その間隙が見えないように構成してある（図３参照）。
具体的な配置状態としては，後述するごとく，傾斜配置
で千鳥状に交互に傾斜方向を変えたもの等，種々の構成
をとることができる。

【００１２】また，通気性遮熱構造体における支持体
は，多数のスリット板を支持するための剛性を有すると
共に，スリット板と同様に受けた輻射熱を効率よく伝導
し，受けた熱を蓄積せず，放熱させるための伝熱性を合
わせ持つことが重要であり，例えば鉄鋼材料等の金属材
料を用いることが好ましい。この場合には，スリット板
と同様の耐熱材を用いることができる。また，集煙フー
ドの内側には，従来と同様の耐熱物を貼設しておくこと
が好ましい。これにより，集煙フードの保護をより一層
確実に行うことができる。

【００１３】次に，本発明における作用につき説明す
る。本発明の鋳込集煙装置においては，上記通気性遮熱
構造体を，集煙フードと鋳込場との間に設けている。そ
して，上記通気性遮熱構造体は，上記のごとく通気性を
確保して重合配置されたスリット板よりなる。

【００１４】そのため，鋳込み作業時に金属溶湯から放
射される輻射熱は，その放射方向において重なり合った
スリット板によって確実に遮断される。その結果，集煙
フードに直接放射される輻射熱を大幅に低減するか，場
合によっては完全に遮断することができる。

【００１５】それ故，集煙フードの内面に耐熱物を貼設
している場合においても，その耐熱物は従来に比べ輻射
熱の影響を小さく抑えられるため，激しく劣化すること
もない。また，集煙フード自体もある程度温度は上昇す
るが，短期間に劣化することはなく，耐熱物で保護しな
い場合でも，補修回数の大幅な低減が可能であり，場合
によっては省略することも可能である。

【００１６】また，通気性遮熱構造体におけるスリット
板は，非接触状態で重合配置されており，各スリット板
間には間隙を有する。そのため，金属溶湯の注湯時に発
生する煤煙は，その間隙を通過して容易に上記通気性遮
熱構造体の上方に抜ける。これにより，煤煙は，集煙フ
ードにより容易に集煙される。それ故，上記の集煙フー
ドの寿命が向上することと相まって，高い効率で煤煙を
集煙することができる。

【００１７】次に，請求項２の発明のように，上記スリ
ット板は傾斜配置され，交互にその傾斜方向を変えて千
鳥状に重合配置されていることが好ましい（図４）。こ
れにより，通気性を十分に確保した上で，様々な方向か
らの輻射熱を遮ることができ，輻射熱遮断効果に極めて
有効となる。

【００１８】また，請求項３の発明のように，上記スリ
ット板はそれぞれ同じ方向に傾斜して重合配置されてい
てもよい（図７）。この場合には，構造が簡単で，設
計，施工が容易である。

【００１９】また，請求項４の発明のように，上記スリ
ット板は水平に配置され，その重合配置は千鳥状である
配置にしてもよい（図８）。この場合にも，十分な輻射
熱の遮断と通気性の確保を行うことができる。

【００２０】

【発明の実施の形態】

実施形態例 本発明の実施形態例にかかる鋳込集煙装置につき，図１
〜図６を用いて説明する。本例の鋳込集煙装置１は，図
１，図２に示すごとく，鋳型８２に対して金属溶湯７を
注湯する鋳込場８の上方に配設され，注湯時に発生する
煤煙６を集煙するための集煙フード１０と，該集煙フー
ド１０と鋳込場８との間に配設した通気性遮熱構造体２
とよりなる。

【００２１】通気性遮熱構造体２は，図３，図４に示す
ごとく，オーステナイト系ステンレス鋼ＳＵＳ３０４よ
りなる多数のスリット板２１と，該スリット板２１を支
持する支持体２２とよりなる。スリット板２１は，集煙
フード１０から鉛直方向に見たとき隣り合うスリット板
２１の一部分と非接触状態で重なり合うように重合配置
され，金属溶湯７から放射される輻射熱を遮ると共に通
気性を確保するように構成されている。

【００２２】以下，これを詳述する。鋳込集煙装置１に
おける集煙フード１０は，図２に示すごとく，左右２箇
所において集煙するように構成されており，左右それぞ
れの頂点に，吸引ブロアに連結されたメインダクト１２
から分岐した２本の吸引ダクト１１を連結してある。ま
た，集煙フード１０の内面には，従来と同様の耐熱物を
貼設してある（図９参照）。また，図１，図２に示すご
とく，集煙フード１０は，支柱１９によって，後述する
取鍋８５よりも上方に配設されている。

【００２３】通気性遮熱構造体２は，図１，図２に示す
ごとく，上記集煙フード１０の下部の開口部全面を囲う
ように配設されている。また，図３，図４に示すごと
く，通気性遮熱構造体２を構成する多数のスリット板２
１は，ＳＵＳ３０４を用い，その断面形状をコ字状にし
て曲げ剛性の高い形状にしてある。

【００２４】また，スリット板２１は，図４に示すごと
く，ＳＵＳ３０４よりなる左右一対の支持体２２に対し
て傾斜配置され，交互にその傾斜方向を変えて千鳥状に
重合配置されている。即ち，各スリット板２１は，これ
らの間に煤煙６を通過させる間隙を設けると共に，輻射
熱５を遮るように隙間無く重なり合うように配置されて
いる。なお，スリット板２１は，支持体２２に千鳥状に
設けた取付けブラケット２２１に対してボルト２２９を
用いて固定する。

【００２５】次に，上記構成の鋳込集煙装置１の下方に
は，図１，図２に示すごとく，鋳込場８が設けられてい
る。そして，図２に示すごとく，鋳込み作業時における
鋳込場８には，２台の鋳込み台車８１上に配設した複数
の鋳型８２が配置され，さらにその上方には，１台のレ
ードルカー８３に載置された１つの取鍋８５が配置され
る。レードルカー８３の動きは様々な操業条件により変
化するが，例えば図４の左側の鋳型８２に注湯した後，
右側の鋳型８２に注湯するという順序で作業が進められ
る（図２は左側の鋳型８２に注湯中の状態を示す）。

【００２６】上記鋳型８２は，図５に示すごとく，１６
本で構成されて鋳型台８２０上に配置されていると共
に，その中央部には注入管８２１が配設されている。こ
の注入管８２１は，下方において各鋳型８２に対して湯
路８２２を介して連通している。そして，溶湯を注入管
８２１に注ぐことにより，湯路８２２を通って，１６本
の鋳型すべてに下方から溶湯が充填されていくように構
成されている。

【００２７】また，図６に示すごとく，各鋳型８２内に
は，注湯中における金属溶湯の冷却凝固を抑制するため
の保温材７５を注湯直後に挿入する。また，鋳込み台車
８１は，図１，図２に示すごとく，車輪８１８によって
走行可能であり，鋳込場８と離型場等との間を移動する
ことができる。

【００２８】次に，上記取鍋８５は，溶湯供給場におい
て受け取った金属溶湯７を，その下方の注湯口８５５か
ら鋳型８２に注ぐためのものであって，レードルカー８
３に載置されて溶湯供給場と鋳込場８との間を移動す
る。レードルカー８３への取鍋８５の載置は，取鍋８５
の上方の左右に設けた取鍋受台部８５１を係合させるこ
とにより行う。また，レードルカー８３は，溶湯供給場
から鋳込場８まで続くレール８６上に車輪８３８をのせ
て走行可能に設けられており，鋳込み時には，取鍋８５
を鋳込場８に移動させる。

【００２９】次に，本例における作用につき説明する。
本例の鋳込集煙装置１においては，上記構造の通気性遮
熱構造体２を，集煙フード１０と鋳込場８との間に設け
ている。そのため，金属溶湯７から放射される輻射熱５
は通気性遮熱構造体２により確実に遮断される一方，注
湯時に発生する煤煙６は効率よく集煙される。

【００３０】即ち，鋳込場８において鋳込み作業を行う
際には，図１に示すごとく，取鍋８５及び鋳型８２から
煤煙６が発生すると共に，主に取鍋８５から強烈な輻射
熱５が放射される。この煤煙６と輻射熱５とは，集煙フ
ードまで達する。このとき，集煙フード１０と取鍋８５
との間に配設された通気性遮熱構造体２におけるスリッ
ト板２１は，上記のごとく，輻射熱５の放射方向におい
て隙間なく重合配置されている。そのため，強烈な輻射
熱５は，重合配置されたスリット板２１によって確実に
遮断される。従って，集煙フード１０に直接届く輻射熱
５を大幅に低減するか，完全に遮断することができる。

【００３１】それ故，集煙フード１０の内面に貼設した
耐熱物の受ける熱負荷を著しく低減できるため，耐熱物
は激しく劣化することがない。また耐熱物に保護された
集煙フード１０自体の熱負荷も小さく抑えられるため，
補修回数を大幅に減少したり，場合によっては省略する
ことができる。

【００３２】また，通気性遮熱構造体２における多数の
スリット板２１の間には，上記のごとく間隙を有する。
そのため，発生した煤煙６は，スリット板２１間の間隙
を通って容易に通気性遮熱構造体２の上方へ抜けること
ができる。それ故，通気性遮熱構造体２を設けていない
場合と比べて劣ることなく，高い効率で煤煙を集煙する
ことができる。また，集煙フード１０が損傷を受けない
ため，これによる集煙効率の低下もない。

【００３３】実施形態例２ 本例においては，図７に示すごとく，実施形態例１にお
ける通気性遮熱構造体２のスリット板２１の配置を，そ
れぞれ同じ方向に傾斜して重合配置させた。その他は，
実施形態例１と同様である。この場合には，通気性遮熱
構造体２の構造が簡単となり，その作製を容易に行うこ
とができる。その他，実施形態例１と同様の作用が得ら
れる。

【００３４】実施形態例３ 本例においては，図８に示すごとく，実施形態例１にお
ける通気性遮熱構造体２のスリット板２１の配置方向を
変えて水平とした。また，その重合配置は，千鳥状とし
た。その他は実施形態例１と同様である。この場合に
も，実施形態例１と同様の作用が得られる。

【００３５】

【発明の効果】上述のごとく，本発明によれば，優れた
集煙機能を維持し，かつ，金属溶湯から放射される輻射
熱による劣化を確実に防止することができる，鋳込集煙
装置を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施形態例１の鋳込集煙装置の正面図。

【図２】実施形態例１の鋳込集煙装置の側面図。

【図３】図２のＡ−Ａ線矢視方向から上方を見た，通気
性遮熱構造体の構成を示す説明図。

【図４】図３のＢ−Ｂ線矢視方向から見た，スリット板
の配置状態を示す断面図。

【図５】実施形態例１における，鋳型の構成を示す説明
図。

【図６】実施形態例１における，鋳型内の保温材を示す
説明図。

【図７】実施形態例２における，スリット板の配置状態
を示す断面図。

【図８】実施形態例８における，スリット板の配置状態
を示す断面図。

【図９】従来例の鋳込集煙装置を示す説明図。

【符号の説明】

１．．．鋳込集煙装置， １０．．．集煙フード， ２．．．通気性遮熱構造体， ２１．．．スリット板， ２２．．．支持体， ５．．．輻射熱， ６．．．煤煙， ７．．．金属溶湯， ８．．．鋳込場， ８１．．．鋳込み台車， ８２．．．鋳型， ８３．．．レードルカー， ８５．．．取鍋，

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鋳型に対して金属溶湯を注湯する鋳込場
   の上方に配設され，注湯時に発生する煤煙を集煙するた
   めの集煙フードと，該集煙フードと上記鋳込場との間に
   配設した通気性遮熱構造体とよりなり，該通気性遮熱構
   造体は，耐熱材よりなる多数のスリット板と，該スリッ
   ト板を支持する支持体とよりなり，かつ上記スリット板
   は，上記集煙フードから鉛直方向に見たとき隣り合うス
   リット板の一部分と非接触状態で重なり合うように重合
   配置され，上記金属溶湯から放射される輻射熱を遮ると
   共に通気性を確保するように構成されていることを特徴
   とする鋳込集煙装置。
2. 【請求項２】 請求項１において，上記スリット板は傾
   斜配置され，交互にその傾斜方向を変えて千鳥状に重合
   配置されていることを特徴とする鋳込集煙装置。
3. 【請求項３】 請求項１において，上記スリット板はそ
   れぞれ同じ方向に傾斜して重合配置されていることを特
   徴とする鋳込集煙装置。
4. 【請求項４】 請求項１において，上記スリット板は水
   平に配置され，その重合配置は千鳥状であることを特徴
   とする鋳込集煙装置。