JPH09168392A - エリスリトールの製造方法 - Google Patents

エリスリトールの製造方法

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JPH09168392A
JPH09168392A JP29123896A JP29123896A JPH09168392A JP H09168392 A JPH09168392 A JP H09168392A JP 29123896 A JP29123896 A JP 29123896A JP 29123896 A JP29123896 A JP 29123896A JP H09168392 A JPH09168392 A JP H09168392A
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堯 佐々木
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隆文 春見
Keiji Kainuma
圭二 貝沼
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博明 石塚
Katsuo Wakao
勝雄 若生
Takeshi Kawaguchi
嶽 川口
Tsunero Oda
恒郎 小田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エリスリトールを製造するにあたり、耐糖性
が高く、耐熱性やエリスリトール生産能に優れ、しかも
培養の際に実質的に泡を生じない菌株を使用して効率よ
くエリスリトールを製造する方法を提供すること。 【解決手段】 糖濃度40%(W/V)以上の環境(培
地)中で良好な生育と高いエリスリトール生産能を維持
することができ、且つ菌体(細胞)が親水性,非凝集性
であり、液体培地中で好気的に培養するとき、泡が実質
的に生成しない新規変異株オーレオバシディウムsp.
SN−γ96株(FERM BP−1431)を糖類を
炭素源として含む培地に接種し、好気的に培養して培養
液中にエリスリトールを生成蓄積させ、これを採取する
ことを特徴とするエリスリトールの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オーレオバシディ
ウム属に属する新規な人工変異株であるオーレオバシデ
ィウムsp.SN−γ96株を用いて糖類をエリスリト
ールに変換することを特徴とするエリスリトールの製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】微生物を用いてエリスリトールを製造す
る方法はすでに公知であり、例えば特開昭60−110
295号公報にはモニリエラ属に属する微生物を用いる
方法が記載されており、特開昭61−31091号公報
にはオーレオバシディウム属に属する微生物を用いる方
法が記載されている。しかし、これらの方法は原料糖か
らのエリスリトールへの変換率が高く、微生物自体の耐
糖性も比較的高いという点では優れているものの、これ
らの微生物は培養時に泡の発生が著しく、消泡剤を多量
に使用してもこれを有効に抑えられないという欠点があ
った。なお、上記特開昭60−110295号等におい
ては、キサンタンガムなどを用いて泡の抑制を試みてい
るが、効果は必ずしも十分でない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、エリス
リトール生産能の高い工業的利用可能な菌株について広
範な探索を行い、オーレオバシディウムsp.SN−1
24A株(FERM BP−1429)を見出し、先に
特許を出願した。このSN−124A株は、エリスリト
ールへの変換能が非常に高く、増殖力も非常に旺盛であ
るという特徴があるが、耐糖性が十分でなく、その上培
養の際の泡の発生もかなり激しいという欠点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは上
記オーレオバシディウムsp.SN−124A株から耐
糖性,起泡性の改善された変異株を誘導、分離するべく
種々検討した結果、紫外線照射処理および突然変移誘起
剤による処理を反復して適用した菌株の中から耐糖性が
高く、起泡性のない菌株を分離することに成功し、本発
明に到達した。
【0005】即ち、本発明は糖濃度40%(W/V)以
上の環境(培地)中で良好な生育と高いエリスリトール
生産能を維持することができ、且つ菌体(細胞)が親水
性,非凝集性であり、液体培地中で好気的に培養すると
き、泡が実質的に生成しない新規変異株オーレオバシデ
ィウムsp.SN−γ96株(FERM BP−143
1)を糖類を炭素源として含む培地に接種し、好気的に
培養して培養液中にエリスリトールを生成蓄積させ、こ
れを採取することを特徴とするエリスリトールの製造方
法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明に用いるオーレオバシディ
ウムsp.SN−γ96株(変異株)と、その親株であ
るオーレオバシディウムsp.SN−124A株(野生
株)の菌学的性質を示す。 〔A〕オーレオバシディウムsp.SN−124A株
(野生株)の菌学的性質 1)培地上の生育状況 a)顕微鏡的所見 栄養細胞の大きさ(*1) 4〜7×4〜15μ 栄養細胞の形状(*1) 菌糸および酵母様の単胞、卵形等の形状を示 す。 栄養細胞の増殖方法(*1)菌糸および酵母様細胞の多極出芽。 菌糸体(*2) 真性菌糸を形成し、先端および側面に全分芽 形分生子を多数生ずる。 (註)*1 YM寒天培地に27℃、5日間培養。 *2 ポテトグルコース寒天によるスライド培養。 b)寒天斜面(*3) 生育 良好 光沢 無し 色調 日数の経過に伴い、白色からうすい黒色のコ ロニーに変化する。 (註)*3 YM寒天培地 c)液体培養(*4) 表面生育 厚い皮膜形成 濁度 透明 沈査 大 (註)*4 YM液体培地
【0007】 2)子のう胞子の形成 ポテトグルコース寒天培地 形成せず コーンミール寒天培地 形成せず YM寒天培地 形成せず ニンジンエキス寒天培地 形成せず V8 寒天培地 形成せず 3)生理学的性質 酸素要求性 好気的 生育温度 約40℃まで 最適生育温度 35〜37℃ 生育pH 2.5〜9.5 最適生育pH 4〜7 KNO3 資化性(*5) 有り (NH4)2 SO4 資化性(*5) 有り 尿素の分解 有り ゼラチンの液化 無し カロチノイドの生成 無し 有機酸の生成 有り アルブチン 無し デンプン様物質の生成 無し ビタミンの要求性(*5) 有り グルコースの濃度(*6)50% 生育 ++ 60% 生育 ++ 食塩濃度(*7) 2% 生育 + 6% 生育 − (註)*5 Wickerhamの合成培地を用いるJ.Lodderら の方法により判定した。 *6 寒天培地 *7 液体培地
【0008】4)糖の発酵性(*5) グルコース ++ ラクトース − ガラクトース − メリビオース − シュクロース ++ ラフィノース − マルトース + セロビオース − トレハロース − イヌリン − 5)糖、有機酸等の資化性 グルコース ++ D−キシロース ± ガラクトース − エリスリトール − D−アラビノース − L−アラビノース − D−リボース + シュクロース + L−ラムノース − マルトース + エタノール − セロビオース + サリシン − L−ソルボース − リビトール − ガラクチトール − グリセリン + トレハロース − ラクトース − メリビオース − D−マンニトール + ラフィノース − メレチトース − α−メチル−D−グルコシド − イヌリン ± イノシトール − 可溶性デンプン − DL−乳酸 − コハク酸 ± クエン酸 ±
【0009】〔B〕オーレオバシディウムsp.SN−
γ96株(変異株)の菌学的性質 オーレオバシディウムsp.SN−γ96株の菌学的性
質は、上記のオーレオバシディウムsp.SN−124
A株(野生株)の菌学的性質のうち、「糖、有機酸等の
資化性」において下記第1表に示すような相違を有する
こと以外は親株の菌学的性質と同一である。
【0010】
【表1】
【0011】上記説明からも明らかなように、本発明に
用いる変異株オーレオバシディウムsp.SN−γ96
株は、野生株であるオーレオバシディウムsp.SN−
124A株と極めて類似した菌学的性質を有する。しか
しながら、本変異株は、後記試験例に示すように、耐糖
性が高いことおよび菌体が親水性で培養の際に泡を生成
しない点で従来のオーレオバシディウムに属する菌株と
相違する。即ち、オーレオバシディウムsp.SN−1
24A株(野生株)は、培地のグルコース濃度が33.
5%以下の条件では、37.0〜41.5%の比較的良
好なエリスリトールへの変換率を示すが、グルコース濃
度が39.5%以上になると、変換率の急激な低下が認
められ、グルコース濃度45%では約16%に低下す
る。これに対して、本発明に用いるオーレオバシディウ
ムsp.SN−γ96株(変異株)は、培地のグルコー
ス濃度が60%を超えても、エリスリトールへの変換率
はほとんど低下が認められず、グルコース濃度75%で
も尚32%の変換率を維持している。更に、このオーレ
オバシディウムsp.SN−γ96株は菌体が親水性で
培養の際に実質的に泡の発生が認められない。
【0012】本発明者らは、本発明に用いる変異株につ
いての上記の特徴から、本変異株はオーレオバシディウ
ム属に属する新規な変異株であると判断し、本変異株を
オーレオバシディウムsp.SN−γ96株と命名し
た。本菌株は、工業技術院生命工学工業技術研究所にF
ERM BP−1431として寄託されている。
【0013】次に、本菌株を用いるエリスリトールの製
造方法について説明する。尚、以下の説明中に用いる%
は、特にことわりのない限り、容量(W/V)%であ
る。本菌株の培養は炭素源,窒素源,無機塩類等を含む
液体培地を用いて好気的条件下に実施される。液体培地
の炭素源としては、グルコース,フルクトース,シュク
ロース等の糖質が使用される。糖質の使用量(添加量)
は培地量の10〜95%、好ましくは20〜70%であ
る。窒素源としては微生物により利用可能な窒素化合
物、例えば酵母エキス,ペプトン,麦芽エキス,カザミ
ノ酸,コーンスチープリカー等が使用される。無機塩類
としては、例えば硫酸第一鉄,塩化カリウム,塩化ナト
リウム,リン酸二水素カリウム,水酸化カルシウム等の
塩類が使用される。尚、これらの炭素源,窒素源,無機
塩類の他に、更に必要に応じて、酵母の生育に必要な各
種の有機物,無機物あるいは通常用いられている消泡剤
等を添加することができる。
【0014】培養は、前記組成の液体培地に本変異株の
菌体を直接接種するか、または別に前培養によって得ら
れる種培養液を接種して行われる。この種菌培養液の調
製は、例えば常法により斜面培養した菌をグルコース4
5.0%、コーンスチープリカー6.2%を含むpH4
〜6の液体培地に1白金耳接種して34〜36℃の温度
で2〜4日間培養することにより行われる。培養温度は
微生物が生育しうる範囲内、即ち30〜38℃で行われ
るが、好ましくは35〜37℃の範囲である。なお、培
地のpHは4〜9、好ましくは4〜7の範囲で調整され
る。培養期間は使用する培地の種類および炭素源である
糖質の濃度により異なるが、通常4〜8日間程度であ
る。培養は、培地の栄養源が最大限に利用され、かつ培
養液中のエリスリトールの生成量が最高に達した時点で
培養を終了させることができるように、培養液中のエリ
スリトール量をガスクロマトグラフィー,高速液体クロ
マトグラフィー等の周知の方法により測定しながら行う
ことが望ましい。
【0015】培養液中に蓄積されたエリスリトールは、
培養終了後、常法によって培養液中から分離される。即
ち、かかる場合に当該分野において通常使用されている
周知の手段、例えば濾過,遠心分離,イオン交換または
吸着クロマトグラフィー,溶媒抽出,蒸留,結晶化等の
操作が必要に応じて適宜組み合わせて用いられる。一例
を挙げれば、培養液から濾過,遠心分離等によって菌体
を除去し、次いでこの液を活性炭で処理して着色物質な
どを除き、更にイオン交換樹脂により脱イオンしたの
ち、液を濃縮してシロップとする。次いで、このシロッ
プからエリスリトールを結晶化して分離する。
【0016】
【実施例】次に、本発明を試験例および実施例等により
詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものでは
ない。 試験例1 (耐糖性試験) 酵母エキス2.0%および所定量(22.0〜83.3
%)のグルコースを含む液体培地100mlをそれぞれ
500ml容の三角フラスコに入れ、常法により滅菌を
行ったのち、オーレオバシディウムsp.SN−γ96
株(FERMBP−1431)または同SN−124A
株(FERM BP−1429)の斜面培養菌体を接種
し、それぞれ種菌培養を35℃で1〜5日間行う。次
に、所定量(22.0〜83.3%)のグルコースおよ
び酵母エキス2.0%を含む液体培地2Lを3L容の発
酵槽に入れ、ここに上記の対応する基質濃度の種菌培養
液80mlを加えて培養温度35℃、通気量2.0vv
m、回転(攪拌)数1000rpmの条件でそれぞれの
培地のグルコースが完全に消費されるまで(2〜14日
間)培養する。培養終了後、各培養液中のエリスリトー
ル含量を高速液体クロマトグラフィーで測定して、第2
表の結果を得た。
【0017】
【表2】
【0018】試験例2 (発泡性、凝集性および親水性
試験) 酵母エキス1.6%,グルコース40.0%を含む液体
培地5mlを試験管に入れ、常法により滅菌を行う。こ
れにオーレオバシディウムsp.SN−γ96株(FE
RM BP−1431)または同SN−124A株(F
ERM BP−1429)の斜面培養菌体を接種し、3
0℃で5日間振盪培養して各培養液における泡の生成状
態および培養停止後の菌体の凝集状態を観察した。培養
中、SN−γ96株の培養液には発酵による泡の発生が
全く見られず、振盪による泡の生成が僅かに見られるの
みであった。また、振盪停止後は泡が直ちに消失し、菌
体は培養液中に均一に懸濁した状態になっている。一
方、SN−124A株の場合は、培養中に激しく生成し
た泡が培養停止後もほとんど消失することなく、その量
は培地量(高さ)の80%にも達しており、この泡は数
時間放置しても消失せず、菌体は凝集して底部および泡
の周辺に分離する。更に、上記の培養液に培養液と同量
のベンゼンを加えて激しく攪拌後、約30分静置して菌
体の状態を観察したところ、SN−γ96株の菌体は全
て水層にとどまり、ベンゼン層への移行が認められなか
ったのに対して、SN−124A株の菌体は全てベンゼ
ン層に移行して水層が透明となり、二つの菌体の親水性
の相違が明瞭に観察された。
【0019】参考例1 (変異株の造成) オーレオバシディウムsp.SN−124A株(FER
M BP−1429)をグルコース22.0%,酵母エ
キス0.5%を含む5.0mlの液体培地に接種し、温
度30℃で2日間振盪培養し、培養物を得た。次に、上
記で得られた培養物を22.0%グルコース溶液で10
0倍に希釈し、シャーレ中でゆるやかに攪拌しながら3
0cmの距離から15Wの紫外線ランンプ(東芝殺菌灯
「GL15」)を40分間照射した。終了後、シャーレ
中の処理液をグルコース22.0%,酵母エキス0.5
%、寒天1.5%を含む寒天培地に塗布し、30℃で4
日間静置培養して生育した菌株を選抜した。次に、上記
処理で選抜した菌株をグルコース22.0%,酵母エキ
ス0.5%の液体培地に接種し、30℃で2日間振盪培
養して培養物を得た。
【0020】このようにして得た培養物を上記と同様に
して希釈したのち、上記と同じ条件により再度20分間
紫外線照射した。照射後、処理液をグルコース33.5
%,酵母エキス1.0%,寒天1.5%を含む寒天培地
に塗布し、30℃で4日間静置培養し、生育した菌株を
選抜した。更に、上記より選抜した菌株をグルコース3
3.5%,酵母エキス1.0%を含む液体培地に接種
し、30℃で2日間振盪培養して培養物を得た。次に、
上記で得られた培養物から遠心分離により菌体を分離
し、更にこの菌体を2Mのグルコースを含む0.2M酢
酸緩衝液(pH5.0)で2回洗浄したのち、1×10
7 cell/mlとなるように菌体を緩衝液に懸濁し、
1mg/ml濃度のN−メチル−N’−ニトロ−N−ニ
トロソグアニジンにより30℃で30分間処理した。終
了後、常法により菌体を分離し、更に緩衝液で洗浄した
のち、グルコース40.0%,酵母エキス1.0%,寒
天1.5%を含む寒天培地に塗布して30℃で5日間静
置培養し、生育した菌株を選抜した。
【0021】次に、上記より選抜した菌株を酵母エキス
1.6%,グルコース40.0%からなる液体培地に接
種し、30℃で2日間振盪培養して培養物を得た。次い
で、上記で得られた培養物を1×107 cell/ml
に希釈したもの3mlをガラス製の試験管に入れ、18
cmの距離からγ線(60Co)を200kRad照射し
た。終了後、処理菌体をグルコース45.0%,酵母エ
キス1.6%,寒天1.5%を含む寒天培地に塗布し、
30℃で5日間静置培養して生育した菌体を選抜して変
異株オーレオバシディウムsp.SN−γ96株(FE
RM BP−1431)を得た。
【0022】実施例1 (a)種菌培養液の調製 グルコース40.0%,酵母エキス1.6%,寒天1.
5%からなる斜面培地にオーレオバシディウムsp.S
N−γ96株(FERM BP−1431)の菌体を塗
布し、35℃で5日間静置培養した。次に、グルコース
40.0%,酵母エキス1.6%を含む液体培地(pH
4.9)100mlを入れた500ml容量の三角フラ
スコに上記斜面培養菌体を1白金耳植菌し、35℃で3
日間培養を行った。更に、この培養液9mlを上記と同
様の液体培地150mlを入れた500ml容量の三角
フラスコに接種し、35℃で3日間振盪培養して培養物
を得た。
【0023】(b)本培養 グルコース40.0%およびコーンスチープリカー6.
8%を含む液体培地(グルコースおよびコーンスチープ
リカーは予め別々に滅菌したものを使用)15Lを30
L容量の発酵槽に入れ、消泡剤(旭電化KK製「アデカ
ノールLG−109」)300ppmを加え、水酸化ナ
トリウムを用いて培地のpHを4.2に調整した。これ
に上記(a)で調製したオーレオバシディウムsp.S
N−γ96株の種菌培養液900mlを加え、温度35
℃,通気量1.0vvm,回転数400rpmで4日間
培養を行った。培養終了後、高速液体クロマトグラフィ
ー(HPLC)により培養液の分析を行った結果、グル
コースは完全に消費されており、培養液中のエリスリト
ール含量は18.9%(収率47.3%)、グリセリン
含量は3.5%(収率8.8%)であった。
【0024】次に、この培養液600mlを採り、遠心
分離により菌体を除去し、更に活性炭による脱色および
イオン交換樹脂(IRA−140:IR−120=2:
1)による脱塩を行った。次いで、溶出液を糖濃度50
%以上に濃縮したのち、徐冷してから結晶を析出させて
分離し、更にこの結晶を水から再結晶させて多面体様の
白色結晶を得た。この結晶の融点は121.0℃で、爽
やかな甘味を有していた。更に、この結晶は液体クロマ
トグラフィー,ガスクロマトグラフィー,旋光度および
核磁気共鳴スペクトルの測定によりエリスリトール(m
eso−エリスリトール)と同定された。
【0025】実施例2 グルコース50%およびコーンスチープリカー6.8%
を含む培地(培地材料は予め別々に滅菌したものを使
用)15Lを容量30Lの発酵槽に入れ、消泡剤300
ppmを加え、水酸化ナトリウムを用いて培地のpHを
4.2に調整した。これに実施例1(a)の方法に従っ
て調製したオーレオバシディウムsp.SN−γ96株
の種菌培養液90mlを加え、温度35℃,通気量1.
5vvm,回転数400rpmの条件で6日間培養を行
った。培養終了後、培養液の分析をしたところ、グルコ
ースは完全に消費されており、培養液中のエリスリトー
ル含量は23.3%(収率46.5%)、グリセリン含
量は4.5%(収率9.0%)であった。
【0026】実施例3 グルコース60.2%、酵母エキス2.0%の液体培地
(培地材料は予め別々に滅菌したものを使用)2Lを3
Lの発酵槽に入れ、消泡剤200ppmを加えた。これ
に実施例1(a)の方法に従って調製したオーレオバシ
ディウムsp.SN−γ96株の種菌培養液80mlを
加え、温度35℃,通気量2.5vvm,回転数100
0rpmの条件で7日間培養を行った。培養終了後、培
養液の分析をしたところ、グルコースは完全に消費され
ており、培養液中のエリスリトール含量は28.8%
(収率47.7%)、グリセリン含量は6.8%(収率
11.3%)であった。
【0027】実施例4 グルコース75.5%、酵母エキス2.0%を含む液体
培地(培地材料は予め別々に滅菌したものを使用)2L
を容量3Lの発酵槽に入れ、消泡剤200ppmを加え
た。これに実施例1(a)の方法に従って調製したオー
レオバシディウムsp.SN−γ96株の種菌培養液8
0mlを加え、温度35℃,通気量2.0vvm,回転
数1000rpmの条件で11日間培養を行った。培養
終了後、培養液の分析を行ったところ、グルコースは完
全に消費されており、培養液中のエリスリトール含量は
24.5%(収率32.4%)、グリセリン含量は1
1.0%(収率14.3%)であった。
【0028】実施例5 シュクロース50.0%およびコーンスチープリカー
6.8%を含む培地(培地材料は予め別々に滅菌したも
のを使用)5Lを容量7Lの発酵槽に入れ、消泡剤30
0ppmを加え、水酸化ナトリウムを用いて培地のpH
を4.2に調整した。これに実施例1(a)の方法に従
って調製したオーレオバシディウムsp.SN−γ96
株の種菌培養液300mlを加え、温度35℃,通気量
1.0vvm,回転数800rpmの条件で5日間培養
を行った。培養終了後、培養液の分析を行った結果、シ
ュクロースは完全に消費されており、培養液中のエリス
リトール含量は23.6%(収率47.2%)、グリセ
リン含量は5.0%(収率10.0%)であった。
【0029】実施例6 シュクロース61.0%、酵母エキス2.0%の液体培
地(培地材料は予め別々に滅菌したものを使用)2Lを
容量3Lの発酵槽に入れ、消泡剤200ppmを加え
た。これに実施例1(a)の方法に従って調製したオー
レオバシディウムsp.SN−γ96株の種菌培養液8
0mlを加え、温度35℃,通気量2.0vvm,回転
数1000rpmの条件で6日間培養を行った。培養終
了後、培養液の分析をしたところ、シュクロースは完全
に消費されており、培養液中のエリスリトール含量は2
4.6%(収率40.3%)、グリセリン含量は7.8
%(収率12.8%)であった。
【0030】実施例7 シュクロース93.3%、酵母エキス2.0%の液体培
地(培地材料は予め別々に滅菌したものを使用)2Lを
容量3Lの発酵槽に入れ、消泡剤200ppmを加え
た。これに実施例1(a)の方法に従って調製したオー
レオバシディウムsp.SN−γ96株の種菌培養液8
0mlを加え、温度35℃,通気量2.0vvm,回転
数1000rpmの条件で15日間培養を行った。培養
終了後、培養液の分析をしたところ、シュクロースは完
全に消費されており、培養液中のエリスリトール含量は
21.6%(収率23.0%)、グリセリン含量は4.
9%(収率5.3%)であった。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、耐糖性が高く、耐熱性
やエリスリトール生産能に優れ、しかも培養の際に実質
的に泡を生じない新規変異株オーレオバシディウムs
p.SN−γ96株を用いてエリスリトールを製造する
ため、従来の方法よりも効率よくエリスリトールを製造
することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:645) (72)発明者 貝沼 圭二 茨城県新治郡桜村並木3丁目619 (72)発明者 石塚 博明 茨城県筑波郡谷田部町稲荷前17−12 沼尻 アパート208 (72)発明者 若生 勝雄 埼玉県行田市持田5−10−2 (72)発明者 川口 嶽 埼玉県行田市壱里山町21−6 (72)発明者 小田 恒郎 東京都秋川市下代継128

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 糖濃度40%(W/V)以上の環境(培
    地)中で良好な生育と高いエリスリトール生産能を維持
    することができ、且つ菌体(細胞)が親水性,非凝集性
    であり、液体培地中で好気的に培養するとき、泡が実質
    的に生成しない新規変異株オーレオバシディウムsp.
    SN−γ96株(FERM BP−1431)を糖類を
    炭素源として含む培地に接種し、好気的に培養して培養
    液中にエリスリトールを生成蓄積させ、これを採取する
    ことを特徴とするエリスリトールの製造方法。
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