JPH0722504B2 - 新規微生物及びそれを用いるエリスリト−ルの製造方法 - Google Patents

新規微生物及びそれを用いるエリスリト−ルの製造方法

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JPH0722504B2
JPH0722504B2 JP21066986A JP21066986A JPH0722504B2 JP H0722504 B2 JPH0722504 B2 JP H0722504B2 JP 21066986 A JP21066986 A JP 21066986A JP 21066986 A JP21066986 A JP 21066986A JP H0722504 B2 JPH0722504 B2 JP H0722504B2
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隆文 春見
勝雄 若生
恒郎 小田
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農林水産省食品総合研究所長
日研化学株式会社
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、エリスリトール生産能の高いオーレオバシデ
ィウム(Aureobasidium)sp.SN−124A菌株に関する。
〔従来の技術及びその問題点〕
従来より、エリスリトール生産能を有する微生物として
は、例えばキャンジダ属、デバリオミセス属、トリゴノ
プシス属、トルロプシス属、ハンゼヌラ属、オーレオバ
シディウム属などに属するものが知られている。
例えば、特公昭47−41549号公報にはキャンジダ属、ト
リゴノプシス属に属する微生物を用いてグリセリンなど
の発酵性糖類をエリスリトールに変換する方法が記載さ
れている。しかしながら、この方法に従えば微生物の耐
糖性の問題から主炭素源としての糖質濃度(基質濃度)
に限界があり、比較的低濃度で発酵を行う必要があり、
またエリスリトールへの変換率も必ずしも十分でないこ
とから、未だ工業的に利用されるに至っていない。
本発明者等は、先にオーレオバシディウム属の新規微生
物SN−45菌株(FERM P−7594)を用いてグルコース等
の発酵性糖類よりエリスリトールを製造する方法(特開
昭61−31091)を発明した。この方法は、比較的高濃度
の糖質よりエリスリトールを製造することを可能にし、
それなりに価値を有するものであった。
しかしながら、上記方法は菌体生成量に比べてエリスリ
トールの収率が十分とはいえない上、製造時の至適pH、
温度等の範囲が狭く、しかもその範囲から少しでも外れ
るとエリスリトールの収率が著しく低下する等の欠点を
有し、工業的には必ずしも満足のいくものではなかっ
た。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者等は、かねてより生体触媒としての微生物の有
用性についてそのポリオール類への変換能の検査を行な
ってきたが、たまたま、沖縄県の澱粉工場内の土壌から
分離された不完全菌類のオーレオバシディウム属に属す
る新規微生物SN−124A菌株が、SN−45菌株よりも安定し
て高いエリスリトール生産能を有することを見出し、本
発明に到達したものである。
即ち、本発明はエリスリトール生産能の高いオーレオバ
シディウムsp.SN−124A菌株に関する。
本発明に於いて用いられる微生物オーレオバシディウム
sp.SN−124A菌株は、次のような菌学的性質を有する。
1.倍地上の生育状況 1) 顕微鏡的所見 栄養細胞の大きさ(※1) 4〜7×4〜15μ 栄養細胞の形状(※1)菌糸戦び酵母様の単胞、卵形等
の形状を示す。
栄養細胞の増殖法(※1)菌糸及び酵母様細胞の多極出
芽 菌糸体(※2)真性菌糸を形成し、先端及び側面に全分
芽分生子を多数生ずる。
(註)※1YM寒天培地に27℃、5日間培養 ※2ポテトグルコース寒天によるスライド培養 2) 寒天斜面(※3) 生 育 良 好 光 沢 無 し 色 調日数の経過に伴い、白色から黒色のコロニーに変
化する。
(註)※3YM寒天培地 3) 液体培養(※4) 表面生育 厚い皮膜形成 濁 度 透 明 沈 査 大 (註)※4YM液体培地 2.子のう胞子の形成 ポテトグルコース寒天培地 形成せず コーンミール寒天培地 形成せず YM寒天培地 形成せず ニンジンエキス寒天培地 形成せず V8寒天培地 形成せず 3.生理学的性質 酵素要求性 好気的 生育温度 約40℃まで 最適生育温度 35〜37℃ 生育pH 2.5〜 9.5 最適生育pH 4〜7 KNO3資化性(※5) 有り (NH42SO4資化性(※5) 有り 尿素の分解 有り ゼラチンの液化 無し カロチノイドの生成 無し 有機酸の生成 有り アルブミン 無し デンプン様物質の生成 無し ビタミンの要求性(※5) 有り グルコース濃度(※6) 50%生育 60% 食塩濃度(※7) 2%生育 + 6%生育 − (註)※5Wickerhamの合成培地を用いたJ.Lodderらの方
法により判定 ※6寒天培地 ※7液体培地 4.糖の発酵性(※5) グルコース ラクトース − ガラクトース − メリビオース − シュクロース ラフィノース − マルトース + セロビオース − トレハロース − イヌリン − 5.糖、有機酸等の資化性 グルコース D−キシロース ± ガラクトース − エリスリトール + D−アラビノース − L−アラビノース − D−リボース + シュクロース + L−ラムノース − マルトース + エタノール − セロビオース + サリシン − L−ソルボース − リビトール − ガラクチトール − グリセリン + トレハロース − ラクトース − メリビオース − D−マンニトール + ラフィノース − メレチトース − α−メチル−D−グルコシド − イヌリン ± イノシトール − 可溶性デンプン − DL−乳酸 − コハク酸 ± クエン酸 + 上記のごとき菌学的性質を有する本菌株の分類学上の位
置をTHE GENERA OF FUNGI SPORULATING IN PURE CULTUR
E(J.A.VON ARX;1974年)を参照して検討した結果、本
菌株はYM寒天培地上での培養後期に於いて日数の経過に
伴ない白色から黒色のコロニーを形成し、栄養細胞に菌
糸を形成し、多くのBlast sporeを生じ、かつ厚膜胞子
を形成しない、などの特徴を有していることからオーレ
オバシディウムに属する新規な微生物であると判断し、
オーレオバシディウムsp.SN−124A菌株と命名した。
即ち、本発明の微生物は沖縄県の澱粉工場内の土壌から
常法に従って純粋分離されたもので、オーレオバシディ
ウム属に属し、栄養細胞が4〜7×4〜15μの単胞、卵
形等の形状で、多極出芽により増殖し、子のう胞子は見
られず、真性菌糸が見られ、YM寒天地上での生育も速く
3日間で白色から黒色のコロニーとなり、液体培地では
皮膜を形成し、かつ発酵性糖類を主としてエリスリトー
ルと少量のグリセリンに変換する能力を有する。
本菌株は、工業技術院生命工学工業技術研究所(旧名
称:工業技術院微生物工業技術研究所)にFERM P−87
45として寄託されている。
以下に、本発明に係る微生物の培養方法及び該微生物を
用いたエリスリトールの製造方法について述べる。
本発明に於ける培養は、通常液体培地を用いて好気的条
件下に撹拌培養により実施されることが望ましい。
当該液体培地の主炭素源としてはグルコース、フルクト
ース、シュクロース、マルトースなどの糖質が使用され
るが、これらの糖質の培地中に於ける量的割合としては
10〜40%(W/W)、特に好ましくは20〜30%(W/W)の範
囲で添加使用されることが望ましい。窒素源としては微
生物により利用可能な窒素化合物、例えば酵母エキス、
ペプトン、麦芽エキス、カザミノ酸、コーンスチープリ
カーなどが使用される。また、培地に加える無機塩類と
しては、例えば硫酸第一鉄、塩化カリウム、塩化ナトリ
ウム、リン酸二水素カリウム、水酸化カルシウムなどの
塩類が使用される。更に、必要に応じて酵母の生育に必
要な各種の有機物、無機物、あるいは通常用いられる消
泡剤などを添加することが出来る。
培養は、前記組成からなる液体培地に微生物菌体を直接
接種するか、又は、別に前培養によって得られる種培養
液を接種して行なわれる。この種培養液の調製は、例え
ばグルコース20%(W/W)、コーンスチープリカー2.0%
を含むpH5〜6の液体培地に斜面培養した菌を1白金耳
接種して34〜36℃の温度で2〜4日間培養することによ
り行われる。
培養温度は微生物が生育しうる範囲内、即ち30〜38℃で
行われるが、特に好ましくは35〜37℃の範囲である。
また、培地のpHは4〜9、好ましくは5〜7の範囲で調
節される。
培養期間は使用する培地の種類及び種炭素源である糖質
の濃度により異なるが、通常4〜10日間程度である。
本発明に於ける培養は、培地の栄養源が最大限に利用さ
れ、かつ培養液中のエリスリトールの生成量が最高に達
した時点で培養を終了させることが望ましい。
尚、培養液中のエリスリトール生成量はガスクロマトグ
ラフィー、高速液体クラマトグラフィーなどの周知の方
法を用いて速やかに測定することが出来る。
かくして、培養液中に蓄積されたエリスリトールは、常
法に従って培養液中から分離される。即ち、かかる場合
に当該分野において通常使用されている周知の手段、例
えばろ過、遠心分離、イオン交換又は吸着クロマトグラ
フィー、溶媒抽出、蒸留、結晶化などの操作が必要に応
じて適宜組み合わせて用いられる。一例を挙げれば、培
養液からろ過、遠心分離などによって菌体を除去し、次
いでこの液を活性炭で処理して着色物質などを除き、更
にイオン交換樹脂により脱イオンした後、液を濃縮して
シロップとする。次に、このシロップからエリスリトー
ルを結晶化して分離する。エリスリトールを分離した後
の母液中にグリセリンが含まれている場合には、これを
更に減圧蒸留により精製してグリセリンを得ることがで
きる。
〔実施例〕
次に実施例を示し、本発明の態様を更に具体的に説明す
る。
実施例1 グルコース20%(W/W)、予めpH6.0に調整したコーンス
チープリカー2.0%、ソルビタン脂肪酸エステル0.1%及
びシリコン系消泡剤0.03%を含む培地5kgを7リットル
容の発酵槽に入れ、120℃、20分間滅菌した。放冷後、
無菌的に培地pHを5.5に調整した。これに上記と同様の
培地で3日間培養を行なったオーレオバシディウムsp.S
N−124A菌株「微工研菌寄第8745号」の種培養液200mlを
加え、35℃、400rpm、通気量1リットル/minで7日間培
養を行なった。その結果この培養液中に467gのエリスリ
トール及び痕跡程度のゲリセリンが蓄積された。
この培養液から菌体を遠心分離して除去し、活性炭によ
る脱色及びイオン交換樹脂((IRA−410:IR−120B=2:
1)による脱塩を行なった。次いで濃縮し、5℃に保存
することにより結晶を得た。この結晶を溶解し、同様の
方法により再結晶した。得られた多面体様の白色結晶は
爽やかな甘味を有し、その融点は121℃であった。NMR、
旋光度、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラ
フィー等の測定結果からこの白色結晶はエリスリトール
と同定された。
実施例2 グルコース30%(W/W)、コーンスチープリカー(pH6.0
調整液)3.2%を含む培地50gを500mlの三角フラスコに
入れ、滅菌、冷却後培地pHを6.0に調整した。これに実
施例1と同様の種培養液2mlを接種し、35℃、180rpmで1
0日間振とう培養を行なった。その結果、この培養液中
に5.9gのエリスリトール及び1.4gのグリセリンが蓄積さ
れた。
実施例3 シュクロース20%(w/w)、酵母エキス0.5%を含む培地
50gを500mlの三角フラスコに入れ、120℃、15分間滅菌
した。冷後培地pHを6.0に調整し、これにオーレオバシ
ディウムsp.SN−124A菌株(微工研菌寄第8745号)を接
種し、35℃、180rpmで7日間振とう培養を行なった。そ
の結果、培養液中に4.2gのエリスリトールが蓄積され、
グリセリンの蓄積は認められなかった。
実施例4 酵母エキス0.5%、グルコース10〜30(W/W)を含む培地
50gを500mlの三角フラスコに入れ、120℃、15分間滅菌
を行なった。冷後培地pHを5.5に調整し、これに種培養
液(オーレオバシディウムsp.SN−124A菌株をグルコー
ス20%、酵母エキス0.5%から成る培地を用い、35℃、
3日間培養した培養液)を2mlを接種し、35℃、180rpm
で4〜11日間振とう培養を行なった。その結果は表−1
に示す通りであった。
実施例5 グルコース20%(W/W)、酵母エキス0.5%から成る培地
50gずつを8本の500ml三角フラスコに入れ、滅菌を行な
った。冷後1N塩酸又は1N水酸化ナトリウムで培地pHを2.
9〜10.1の間になるように調整した。次いで、得られた
それぞれの培地に種菌(オーレオバシディウムsp.SN−1
24A菌株、微工研菌寄第8745号)を接種し、35℃、180rp
mで7日間振とう培養を行なった。その結果表−2に示
すような収率でエリスリトールが得られた。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エリスリトール生産能の高いオーレオバシ
    ディウムsp.SN−124A菌株(FERM P−8745)。
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