JPH09161736A - 電池用缶とその製造方法 - Google Patents

電池用缶とその製造方法

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JPH09161736A
JPH09161736A JP7346216A JP34621695A JPH09161736A JP H09161736 A JPH09161736 A JP H09161736A JP 7346216 A JP7346216 A JP 7346216A JP 34621695 A JP34621695 A JP 34621695A JP H09161736 A JPH09161736 A JP H09161736A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 正極合剤との接触抵抗を低減させて電池性能
を向上し、漏液の発生を防止した電池用缶とその製造方
法を提供する。 【解決手段】 プレめっき鋼板から成形された、かしめ
部と主部からなる有底筒状の電池用缶であって、側壁主
部の内面の表面粗さRaが0.10〜1.9μmであ
り、かしめ部内面の表面粗さRaが1.0〜0.01μ
mであることを特徴とする、電池用缶であり、しごき率
1〜25%のしごき加工後再絞り加工して表面を粗面化
する電池用缶の製造方法も包含する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリマンガン
電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル電池等の端子
兼容器として用いる電池用缶およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】アルカルマンガン電池等に用いられる缶
はトランスフア絞りにより製造されるため底部の厚さ
が、側面部より薄いものであったので正極合剤の加圧
上、また耐内圧強度上から厚みを必要とする底部の肉厚
が側面部の肉厚より大きくし、また正極合剤との接触面
積を大きくし接触抵抗を低減するために缶内面の表面粗
さを9〜11μmの粗面とすることが提案されている。
(特公平7−99686号)このような粗さの大きな粗
面とすると、接触抵抗は減少するが、他の問題が発生す
る。つまり、絞り、しごき加工時に用いた加工油の洗浄
が困難となり、残存する油分のためこの缶を用いて電池
を組み立てると初期は良好である短絡電流が1ヶ月保存
後著しく低下する傾向がみられる。また正極合剤を充填
する場合充填が困難となり、ペレット状の正極合剤が破
壊される恐れが大きい。さらに、電池のかしめ部が粗面
であると漏液が発生する危険が大きい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、保存後の短
絡電流の低下を防止し、かしめ部からの漏液を防止し、
正極合剤と缶との接触面積を大きくして接触抵抗を減少
し、高性能、高安全性の端子を兼ねた電池用缶とその製
造方法を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、 「1. プレめっき鋼板から成形された、かしめ部と主
部からなる有底筒状の電池用缶であって、側壁主部の内
面の表面粗さRaが0.10〜1.9μmであり、かし
め部内面の表面粗さRaが1.0〜0.01μmである
ことを特徴とする、電池用缶。 2. 電池の内面側のめっき層の表層がNi、Ni−F
e合金、Ni−Sn合金、のいずれか一の層であり、中
間層が存在しないか存在する場合はNi、Ni−Sn−
Fe合金のいずれか一の層であり、下地層は存在しない
か存在する場合はNi、またはNi−Fe合金の層であ
って、電池の外面側のめっき層の表層がNi、またはN
i−Fe合金の層であり、下地層は存在しないか存在す
る場合はNi−Fe合金の層である、1項に記載され
た、電池用缶。 3. プレめっき鋼板が低炭素アルミキルド鋼である、
1項または2項に記載された、電池用缶。 4. 開口部内面に丸みを形成した、1項ないし3項の
いずれか1項に記載された、電池用缶。 5. 開口部内面の丸みが0.2〜3.0mmである、
4項に記載された、電池用缶。 6. 開口部内面の丸みが0.5〜2.0mmである、
4項に記載された、電池用缶。 7. 側壁主部とかしめ部の真円度が0.07mm〜0
である円筒部で形成された、1項ないし6項のいずれか
1項に記載された、電池用缶。 8. 側壁主部とかしめ部の真円度が0.05mm〜0
である円筒部で形成された、1項ないし6項のいずれか
1項に記載された、電池用缶。 9. 側壁の厚みが底部の厚みより薄い、1項ないし8
項のいずれか1項に記載された、電池用缶。 10. 側壁主部とかしめ部の厚みが異なる、1項ない
し9項のいずれか1項に記載された、電池用缶。 11. 底部の厚みのばらつきが0.05mm〜0、側
壁主部の厚みのばらつきが0.04mm〜0、かしめ部
の厚みのばらつきが0.03mm〜0である、1項ない
し10項のいずれか1項に記載された、電池用缶。 12. めっき鋼板より形成したカップを絞り加工と再
絞り加工により縮径と増長をおこなって得た有底筒状体
を平均しごき率1〜25%でしごき加工して側壁の肉厚
を均一薄肉化した筒状体を側壁先端部近傍を除いて再絞
り加工して縮径すると共に表面を粗面化して側壁主部を
形成した後側壁先端部近傍を側壁主部より軽度に再絞り
加工して側壁主部より径が大きくかつ粗面化の小さいか
しめ部を形成し次いでトリーミングして開口部内面に丸
みを形成することを特徴とする電池用缶の製造方法。 13. 絞り加工を第1工程ないし第5工程で行い縮径
と同時に側壁先端部にフランジを形成し次の第6工程で
平均しごき率1〜25%でしごき加工を行って表面を平
滑化すると共にフランジ直下の側壁先端部近傍の肉厚を
側壁部より大とし、第7工程で側壁先端部近傍を除いて
再絞り加工を行って内表面を粗面化した側壁主部を形成
すると共に側壁主部の先端部近傍に段差を形成し次いで
第8工程で段差部分と側壁先端部の間を再絞り加工して
径を側壁主部の径より大としてかしめ部を形成し、第9
工程でトリミングを行って第8工程で形成したかしめ部
先端を側壁側面と平行する方向に切断してかしめ部先端
に丸みを配設した、12項に記載された電池用缶の製造
方法。 14. 第6工程のしごき加工で径の異なる2枚のリン
グを使用して側壁の先端側を厚肉とし底部側をそれより
薄肉の二段側壁とする、13項に記載された電池用缶の
製造方法。 15. 第9工程のトリミングで第8工程で形成したか
しめ部先端を屈曲部で切断してかしめ部先端に丸みを配
設した、13項に記載された電池用缶の製造方法。 16. 第7工程の側面主部を形成する再絞り加工の再
絞り比を、第5工程の径/第7工程の径=1.04〜
1.20とし、ダイラジアスを大きくし、クリアランス
を側壁の厚みと同一にしてしごき加工により均一化され
た側壁厚みを変化させないで再絞り加工する、13項に
記載された電池用缶の製造方法。 17. 第6工程のしごき加工をアプローチ部、ランド
部、逃げ部を有し、ランド部の長さが0.5〜2mmで
あり、アプローチ部の中心線に対する角度が4°〜10
°であり、逃げ部の中心線に対する角度が2°〜10°
であるリングを用いて行う、13項ないし16項のずれ
か1項に記載された電池用缶の製造方法。 18. 絞り加工を第1工程ないし第5工程で行い縮径
と同時に側壁先端部にフランジを形成し次の第6工程で
しごき加工を行って表面を平滑化すると共にフランジ直
下の側壁先端部近傍の肉厚を側壁部より大とし、第7工
程でフランジ直下の側壁先端部近傍を除いて再絞り加工
を行って側壁主部とかしめ部を形成し、第8工程でトリ
ミングを行って第7工程で形成したかしめ部先端を側壁
側面と平行する方向に切断してかしめ部先端に丸みを配
設した、12項に記載された電池用缶の製造方法。 19. 第8工程のトリミングで第7工程で形成したか
しめ部先端を屈曲部で切断してかしめ部先端に丸みを配
設した、18項に記載された電池用缶の製造方法。」に
関する。
【0005】本発明における、缶の側面主部の内面の表
面粗さRaは粗さが0.10μm以下では粗さが小さす
ぎ、正極合剤との接触抵抗の低減が不充分となるため電
池性能が劣る。また1.9μm以上の大きな粗さでは板
厚のくびれを伴いやすくピンホールの原因となる危険が
ある。
【0006】かしめ部においては表面粗さRaは、かし
めは縮み加工で表面が粗いと円周方向圧縮応力によるし
わが発生し易いのでかしめ加工性とシール性から制限さ
れる。Raが1.0μm以上ではガスケットとの間に間
隙が生じやすくなり電解液の漏液が発生する危険があ
る。0.01μm以下にすることは技術的に出来ない。
【0007】粗面の粗さを表すパラメーターとして、J
IS B0601−1994 には次のように定義され
ている。 算術平均粗さ(Ra) 最大高さ(Ry) 十点平均粗さ(Rz) 凹凸の平均間隔(Sm) 局部山頂の平均間隔(S) 負荷長さ率(tp) いずれも粗さ曲線から求められる数値であり粗さ曲線に
は、山、谷などが定義されている。ところで上述のパラ
メータの内、Sm、Sでは高さ方向の量が入らず、R
y、Rz、tpでは微小な凹凸である局部山、局部谷の
存在が無視されるので本発明ではRaで粗さを表すこと
にした。なお、Raの測定は東京精密株式会社製、表面
粗さ形状測定機 575A−3DFを用いた。
【0008】鋼板材料としては加工によるピンホール、
開口端の割れを発生させないようにするため大型介在物
の少ない、例えば連続鋳造の低炭素アルミキルド鋼板が
よい。
【0009】缶開口部内面に丸みを形成すると、かしめ
加工に際し、ガスケット挿入時に傷付き、ゆがみがなく
組み立てが確実に行われ、さらにかしめの際の円周方向
圧縮応力による端面の割れ、しわが発生しないので密封
安全性が高い。開口部内面の丸みは0.2〜3.0mm
の範囲が好ましく、0.5〜2.0mmの範囲がより好
ましい。0.2mm以下であると挿入時にガスケットが
傷ついたり、開口部が変形する原因となり、3.0mm
を越えるとかしめ時開口端にしわが生じやすくなって好
ましくない。丸み部を設けると傷付き、ゆがみがなく組
み立てが確実に行われ、さらにかしめの際の円周方向圧
縮応力による端面の割れ、しわが発生しないので密封安
全性が高い。
【0010】主部、かしめ部が真円であると正極合剤と
の密着が円周方向で均一になり、かしめ強度が周方向で
均一になる作用が奏されるので真円に近いことが好まし
い。主部、かしめ部の真円度が0.07mmを越える
と、正極合剤との密着に問題が生じて性能が低下した
り、かしめ不良が生じて好ましくない。0.05mm〜
0がより好ましい。真円度0は真円である。真円度の測
定には、株式会社ミツトヨ製 非接触形真円度円筒度測
定機 RL−101を用いた。
【0011】落下、耐内圧等の強度上側壁の必要厚みは
底部より薄く済むので缶の軽量化のためには必要な最低
限の底板厚を設定しその厚みの原板を使用するとよい。
側壁主部とかしめ部の厚みが異なると例えば側壁主部を
薄くして軽量化をはかり、かしめ部を主部より厚くして
かしめのしわを防止する効果が奏される。
【0012】底部の厚みのバラつきが0.05mmを越
えると落下した時、局部が凹んだりする欠点が生じ、側
壁主部の厚みのバラツキが0.04mmを越えると正極
合剤との密着が不均一になる問題が生じる。かしめ部の
厚みのバラツキが0.03mmを越えると、かしめ不良
が生じやすいという問題が生じる。したがって底部の厚
みのばらつきが0.05mm〜0、側壁主部の厚みのば
らつきが0.04mm〜0、かしめ部の厚みのばらつき
が0.03mm〜0であることが好ましい。この範囲外
では安定した性能が得られなくなる傾向があり好ましく
ない。
【0013】鋼板表面には電池性能上、防錆上、必要な
めっきを両面に施す。缶体のめっき鋼板は鋼板にNiを
めっきし、場合によりさらにSnをめっきした鋼板であ
る。めっき時にNiやSnの一部が鋼板の表面に分散し
たり、鋼板のFeがめっき層に分散したり、めっきした
金属が互いに分散して合金を形成する場合がある。本発
明の缶体のめっき鋼板のめっき層について説明すると、
めっき層の内面側は表1の構造となっている。
【0014】
【表1】
【0015】(註) 表中−は存在しないことを示す。
下地層の次は基体の鋼板である。Snの存在する場合は
Niめっき層の上にSnめっきをほどこした場合或いは
SnとNiの合金のめっきを施した場合である。
【0016】また外面のめっき層は表2に示す通りとな
っている。
【0017】
【表2】
【0018】次に製造方法の発明において、絞り加工の
次にしごき加工して壁部の肉厚を均一化した後、再絞り
加工するのは内面を粗面化して正極合剤との接触面積を
大にし、接触抵抗を小とするためである。側壁主部の再
絞り比を1.04〜1.20としダイラジアスを大きく
して、クリアランスを側壁と同一にし、肉厚の変化を防
止することにより、表面粗さRaは大きくなる。かしめ
部の再絞りは再絞り比は側壁主部の再絞り比より小さい
ので表面の粗さは小さくなり平滑となる。トリミングは
かしめ部先端の屈曲部を切断することにより開口部には
丸みが形成される。
【0019】
【発明の実施の形態】発明の実施の態様を図面に基づき
製造方法により説明する。はじめに説明のため図14に
電池を示す。1は正極缶、2は正極合剤、3がセパレー
タ、4が集電体、5がガスケット、6が負極端子、7が
負極活物質である。本発明は正極缶に関する。
【0020】図1は、カップ8を絞り加工したところで
ある。9は底部、10は側壁である。ポンチ等加工具は
図示していない。図2〜図5はいずれも順次再絞り加工
した缶を示し、図5で缶体の径はdとなった。絞りと
再絞りの繰り返しで径を小さくするとともに高さを増す
が、側壁厚みが絞り作用で開口部程厚くなるのでこれを
均一薄肉化するために6工程目でしごきを導入する。
【0021】図6はしごき加工した缶体を示す。壁部の
肉厚はtとなり、径dはdと同一であり縮径はな
い。拡大部から明らかなように側壁部11の先端部には
段差13を有する側壁先端部12が形成されている。均
一薄肉化を効果的かつめっき層にダメージを与えること
なく行うには13図のような中心線に対する角度が4°
〜10°であるアプローチ部17、長さが0.5〜2m
mのランド部18、中心線に対する角度が2°〜10°
である逃げ部19を有したしごきリング16を用いるこ
とがよく、特にランド部の設定が重要である。しごきに
よる板厚の減少率をしごき率と言うが、しごき前の再絞
り(2〜5工程)で薄肉化再絞りを導入するとしごき率
が小さくなり、しごきによる平滑化は大きくならない。
【0022】図7は側壁11を再絞り加工し側壁主部2
0を形成した缶であって径dはしごき加工した缶の径
より小さくなっている。側壁先端部近傍21は絞ら
れていないので径はしごき加工した缶と同一である。再
絞り比(d/d)は比較的小さく(1.04〜1.
20)し、かつダイラジアスを大きめにし、さらにクリ
アランスは側壁と同等(t)にして均一化された側壁
厚み(t)を変化させないようにすることがよい。こ
うして出来た側壁主部は半径方向の絞り加工により、し
ごき工程直後と比較して表面粗さRaが大きくなる。R
aが大きくなると加工油の洗浄が困難になり、残油が充
填物に何らかの悪影響を与え、電池性能を低下させる可
能性があるので極端に大きく出来ない。また大掛かりな
洗浄は衛生上、環境上避けるべきである。
【0023】図8は段差部22と側壁先端部近傍21を
再絞りしかしめ部23を形成した缶体である。再絞り比
は側壁主部より小さいので径d7はしごき加工した缶の
径dより小さいが、側面主部の径dより大となって
いる。このように側壁のかしめ部再絞りは側壁主部を形
成した後、8工程目に行う。この部分の径dはd
りわずかに大きいが、そのため再絞り比が主部より小さ
くなり粗さの変化は少なく、従って主部より滑らかであ
る。この場合絞りしごきすればより滑らかなかしめ部が
得られる。この再絞りでもしごきで均一になった厚みを
崩さないことが重要である。このように径はd>d
>dとなる。しごき工程での缶の抜き取りは一般に非
常に大きい力を必要とする。そのため開口部にフランジ
を残しておくことが引っ掛かりを確実にし、円周上の一
部に偏った力による缶の変形するを防止することに有利
である。また万一、変形が生じた場合も7、8工程はこ
れを矯正し、真円度を向上させる効果がある。トリミン
グはかしめ部先端24で行われる。この部分は第8工程
のダイラジアスをRとすると、トリミング前にはほぼ半
径R+t1の屈曲部25が形成される。この屈曲部の半
径はトリミングの加工力で変形し、やや変わる傾向があ
る。トリミングのバリはかしめ時の端面の割れ、しわを
防止するため極力少なくすることがよい。
【0024】トリミングは図9と図10に示されるよう
にかしめ部の先端の屈曲部25切断する。
【0025】図11は拡大部から明らかなように、側壁
の先端側に段差部分27を有する厚肉部26を配設し、
底部側に段差部分28を有する薄肉部29が設けられて
いる。これはしごき加工でしごきリングを2枚同心にセ
ットし、最終的に主部に相当する部分をt、かしめ部
に相当する部分をt(t>t)にしておき、8工
程でtに絞りしごきし形成することも出来る。
【0026】本発明は図12に示すように、第7工程で
しごき加工後トリミングの位置まで再絞り加工してかし
め部の再絞りを省略し、トリミングにより開口端に丸み
をつける方法であり、本発明に包含される。
【0027】
【実施例】次に実施例と比較例を示して本発明を具体的
に説明する。
【0028】実施例1 炭素0.03%、マンガン0.18%、リン0.012
%、硫黄0.002%の冷延鋼板(厚み0.25mm)
の両面にニッケルめっき(厚み2 μm )した後、熱
処理して拡散させ、ニッケル−鉄合金層を形成させた材
料を用いた。板の状態で水溶性の加工油(日本工作油製
G2700 NT)を塗り、直径51mmに打ち抜
き、図1ないし図9の工程にピップ部形成を加えたプロ
セスで、主部内径13.4mm、かしめ部内径13.7
mm、高さ50.3mm、側壁部厚み0.21mmの缶
をプレス成形した。缶を40℃の湯で60秒間スプレー
洗浄し、乾燥させ電池用缶を得た。この缶を正極缶とし
て使い以下の手順で単3サイズのアルカリマンガン電池
を作成した。二酸化マンガンと黒鉛とを水酸化カリウム
で混練し、加圧成形してペレット状にしたものを正極合
剤とした。この正極合剤を缶内に挿入した後、セパレー
タを挿入し、亜鉛粒と酸化亜鉛を飽和させた水酸化カリ
ウムからなる負極活物質をセパレータ内に入れた。かし
め部下部をネックイン加工後、集電体を溶接した負極端
子、ガスケットを組み立てたものを挿着し、開口端をか
しめて電池とした。電池を25℃で16時間放置した直
後のものと60℃−湿度95%に4週間保存したものを
それぞれ30個、短絡電流値、内部抵抗(交流インピー
ダンス法)を測定した。測定結果の平均値(除 漏洩
缶)を表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】成形は、第1工程から第5工程まではRd
=3mm(Rd…ダイラジアス)、CL=0.25mm
(CL…クリアランス)の再絞りである。第6工程のし
ごき加工はCL=0.21mmであり、平均しごき率は
16.0%である。第7工程はRd=3mmCL=0.
21mm、第8工程はRd=1.5mmCL=0.21
mmである。第9工程のトリミングはトリミング径1
4.12mmである。
【0031】実施例2 第5工程をRd=0.7mm、CL=0.25mmとし
た以外は実施例1と同様にして電池用缶とし、実施例1
と同様にして電池とした。平均しごき率は10.6%で
ある。
【0032】実施例3 第4工程と第5工程をRd=0.7mm、CL=0.2
5mmとした以外は実施例1と同様にして電池用缶と
し、実施例1と同様にして電池とした。平均しごき率は
7.5%である。
【0033】実施例4 第3工程と第4工程と第5工程をRd=0.7mm、C
L=0.25mmとした以外は実施例1と同様にして電
池用缶とし、実施例1と同様にして電池とした。平均し
ごき率は4.5%である。
【0034】実施例5 第3工程と第4工程をRd=0.7mm、CL=0.2
5mmとし、第5工程をRd=0.5mm、CL=0.
25mmとした以外は実施例1と同様にして電池用缶と
し、実施例1と同様にして電池とした。平均しごき率は
1.9%である。
【0035】実施例6 第3工程をRd=0.7mm、CL=0.25mmと
し、第4工程と第5工程をRd=0.5mm、CL=
0.25mmとし、第8工程をRd=1.5mm、CL
=0.207mmとした以外は実施例1と同様にして電
池用缶とし、実施例1と同様にして電池とした。平均し
ごき率は1.4%である。
【0036】比較例1 第5工程までRd=3mm、CL=0.30mmの再絞
りとした以外は実施例1と同様にした。平均しごき率は
28%である。
【0037】比較例2 第8工程でかしめ部のしごきをしない以外は実施例6と
同様にした。平均しごき率は1.4%である。
【0038】比較例3 第3工程ないし第5工程をRd=0.5mm、CL=
0.25mmとした以外は実施例1と同様にした。平均
しごき率は0.9%である。
【0039】比較例4 第3工程のRd=0.5mm、CL=0.25mmと
し、第4工程と第5工程をRd=0.2mm、CL=
0.25mmとした以外は実施例6と同様にした。平均
しごき率は0%である。
【0040】比較例5 第4工程までは比較例3と同様にし、第5工程をRd=
0.2mm、CL=0.25mmとし、第6工程、第7
工程、第9工程を実施例6と同様とし、第8工程をRd
=3.5mm、CL=0.21mmとした。平均しごき
率は0.5%である。
【0041】総合評価として短絡電流値が保存後も4.
0を下回らず、かつ漏洩のないものを○、そうでないも
のを×とする相対評価を行った。本発明の範囲にあるも
のはいずれも良好な結果が得られている。本発明に対
し、比較例1のように主部Raが0.1以下では短絡電
流が劣る。比較例3のように粗さが1.9を超えると初
期の性能はよいが経時で劣化する。この原因は粗さが大
きすぎるために谷部に油が残留し、徐々にしみ出し、発
電要素と反応していることが予想される。また比較例4
のようにRaが極端に大きくなると初期の性能も悪くな
る。この場合主部の粗さが大きすぎるため缶内面と正極
合剤との接触が悪化していると考えられる。比較例2、
比較例3、比較例4、比較例5のようにかしめ部のRa
が1.0を超えるとガスケットとの間に間隙が生じやす
くなり電解液の漏洩が起こりやすい。
【0042】
【発明の効果】本発明は、側壁主部の内面の表面租さR
aを0.10〜1.9μmとし、かしめ部内面の表面粗
さRaを1.0〜0.01μmとしたことにより正極合
剤との接触抵抗が低減し電池性能が非常に向上し、かし
め部の表面粗さRaを1.0〜0.01μmとしたこと
により平滑となり漏液の発生がない効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】絞りカップを示す説明図である。
【図2】第1絞り缶を示す説明図である。
【図3】第2絞り缶を示す説明図である。
【図4】第3絞り缶を示す説明図である。
【図5】第4絞り缶を示す説明図である。
【図6】しごき加工した缶を示す説明図である。
【図7】側壁主部を再絞りした缶を示す説明図である。
【図8】かしめ部を再絞りした缶を示す説明図である。
【図9】トリミングした缶を示す説明図である。
【図10】かしめ部先端の屈曲部を示す説明図である。
【図11】二枚リングを用いたしごき缶を示す説明図で
ある。
【図12】側壁主部とかしめ部を同時再絞りした缶を示
す説明図である。
【図13】しごきリングの説明図である。
【図14】電池の説明図である。
【符号の説明】
1 正極缶 2 正極合剤 3 セパレータ 4 集電体 5 ガスケット 6 負極端子 7 負極活物質 8 カップ 9 底部 10 側壁 11 側壁部 12 側壁先端部 13 段差 14 フランジ 15 トリミング位置 16 しごきリング 17 アプローチ部 18 ランド部 19 逃げ部 20 側壁主部 21 側壁先端部近傍 22 段差部 23 かしめ部 24 かしめ部先端 25 屈曲部 26 厚肉部 27 段差部分 28 段差部分 29 薄肉部
フロントページの続き (72)発明者 今津 勝宏 神奈川県横浜市泉区和泉町6205−1

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プレめっき鋼板から成形された、かしめ
    部と主部からなる有底筒状の電池用缶であって、側壁主
    部の内面の表面粗さRaが0.10〜1.9μmであ
    り、かしめ部内面の表面粗さRaが1.0〜0.01μ
    mであることを特徴とする、電池用缶。
  2. 【請求項2】 電池の内面側のめっき層の表層がNi、
    Ni−Fe合金、Ni−Sn合金、のいずれか一の層で
    あり、中間層が存在しないか存在する場合はNi、Ni
    −Sn−Fe合金のいずれか一の層であり、下地層は存
    在しないか存在する場合はNi、またはNi−Fe合金
    の層であって、電池の外面側のめっき層の表層がNi、
    またはNi−Fe合金の層であり、下地層は存在しない
    か存在する場合はNi−Fe合金の層である、請求項1
    に記載された、電池用缶。
  3. 【請求項3】 プレめっき鋼板が低炭素アルミキルド鋼
    である、請求項1または2に記載された、電池用缶。
  4. 【請求項4】 開口部内面に丸みを形成した、請求項1
    ないし3のいずれか1項に記載された、電池用缶。
  5. 【請求項5】 開口部内面の丸みが0.2〜3.0mm
    である、請求項4に記載された、電池用缶。
  6. 【請求項6】 開口部内面の丸みが0.5〜2.0mm
    である、請求項4に記載された、電池用缶。
  7. 【請求項7】 側壁主部とかしめ部の真円度が0.07
    mm〜0である円筒部で形成された、請求項1ないし6
    のいずれか1項に記載された、電池用缶。
  8. 【請求項8】 側壁主部とかしめ部の真円度が0.05
    mm〜0である円筒部で形成された、請求項1ないし6
    のいずれか1項に記載された、電池用缶。
  9. 【請求項9】 側壁の厚みが底部の厚みより薄い、請求
    項1ないし8のいずれか1項に記載された、電池用缶。
  10. 【請求項10】 側壁主部とかしめ部の厚みが異なる、
    請求項1ないし9のいずれか1項に記載された、電池用
    缶。
  11. 【請求項11】 底部の厚みのばらつきが0.05mm
    〜0、側壁主部の厚みのばらつきが0.04mm〜0、
    かしめ部の厚みのばらつきが0.03mm〜0である、
    請求項1ないし10のいずれか1項に記載された、電池
    用缶。
  12. 【請求項12】 めっき鋼板より形成したカップを絞り
    加工と再絞り加工により縮径と増長をおこなって得た有
    底筒状体を平均しごき率1〜25%でしごき加工して側
    壁の肉厚を均一薄肉化した筒状体を側壁先端部近傍を除
    いて再絞り加工して縮径すると共に表面を粗面化して側
    壁主部を形成した後側壁先端部近傍を側壁主部より軽度
    に再絞り加工して側壁主部より径が大きくかつ粗面化の
    小さいかしめ部を形成し次いでトリーミングして開口部
    内面に丸みを形成することを特徴とする電池用缶の製造
    方法。
  13. 【請求項13】 絞り加工を第1工程ないし第5工程で
    行い縮径と同時に側壁先端部にフランジを形成し次の第
    6工程で平均しごき率1〜25%でしごき加工を行って
    表面を平滑化すると共にフランジ直下の側壁先端部近傍
    の肉厚を側壁部より大とし、第7工程で側壁先端部近傍
    を除いて再絞り加工を行って内表面を粗面化した側壁主
    部を形成すると共に側壁主部の先端部近傍に段差を形成
    し次いで第8工程で段差部分と側壁先端部の間を再絞り
    加工して径を側壁主部の径より大としてかしめ部を形成
    し、第9工程でトリミングを行って第8工程で形成した
    かしめ部先端を側壁側面と平行する方向に切断してかし
    め部先端に丸みを配設した、請求項12に記載された電
    池用缶の製造方法。
  14. 【請求項14】 第6工程のしごき加工で径の異なる2
    枚のリングを使用して側壁の先端側を厚肉とし底部側を
    それより薄肉の二段側壁とする、請求項13に記載され
    た電池用缶の製造方法。
  15. 【請求項15】 第9工程のトリミングで第8工程で形
    成したかしめ部先端を屈曲部で切断してかしめ部先端に
    丸みを配設した、請求項13に記載された電池用缶の製
    造方法。
  16. 【請求項16】 第7工程の側面主部を形成する再絞り
    加工の再絞り比を、第5工程の径/第7工程の径=1.
    04〜1.20とし、ダイラジアスを大きくし、クリア
    ランスを側壁の厚みと同一にしてしごき加工により均一
    化された側壁厚みを変化させないで再絞り加工する、請
    求項13に記載された電池用缶の製造方法。
  17. 【請求項17】 第6工程のしごき加工をアプローチ
    部、ランド部、逃げ部を有し、ランド部の長さが0.5
    〜2mmであり、アプローチ部の中心線に対する角度が
    4°〜10°であり、逃げ部の中心線に対する角度が2
    °〜10°であるリングを用いて行う、請求項13ない
    し16のずれか1項に記載された電池用缶の製造方法。
  18. 【請求項18】 絞り加工を第1工程ないし第5工程で
    行い縮径と同時に側壁先端部にフランジを形成し次の第
    6工程でしごき加工を行って表面を平滑化すると共にフ
    ランジ直下の側壁先端部近傍の肉厚を側壁部より大と
    し、第7工程でフランジ直下の側壁先端部近傍を除いて
    再絞り加工を行って側壁主部とかしめ部を形成し、第8
    工程でトリミングを行って第7工程で形成したかしめ部
    先端を側壁側面と平行する方向に切断してかしめ部先端
    に丸みを配設した、請求項12に記載された電池用缶の
    製造方法。
  19. 【請求項19】 第8工程のトリミングで第7工程で形
    成したかしめ部先端を屈曲部で切断してかしめ部先端に
    丸みを配設した、請求項18に記載された電池用缶の製
    造方法。
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