JPH09144197A - スタジアム屋根の構築方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 引上げによる屋根の構築が僅かな機材によっ
て可能となり、しかも引上げのためのウインチ等への負
担も少ない低コストなスタジアム屋根の構築方法を提供
する。 【解決手段】 競技場を前にして複数個に分割された、
屋根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆを接合してなる屋根構造
体１を、少なくとも観客席等を設けた躯体３上を覆うご
とく設置するスタジアム屋根の構築方法において、前記
躯体３外周部の上端部にヒンジピン４にて屋根構造体外
周部が軸支されて起伏自在に設置された前記屋根構造体
ブロック１Ａの外周部よりさらに外方に突出する仮設桁
５を設置すると共に、これら各屋根構造体ブロック１Ａ
〜１Ｆにおける各仮設桁５の端部に張設したワイヤー６
を地上に配置した移動台車１４上のウインチ１３にて牽
引して地上に固定した伸縮部材１５に預けて固定固縛し
ながら、これら各屋根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆを順次
引き起こすことを特徴とするものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、野球場などの競技
場等少なくとも観客席等を設けた躯体上を覆うごとく設
置される屋根構造物を有するスタジアム屋根の構築方法
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、競技場を囲むように形成した建物
を中心として放射状に分割された屋根構造体ブロックを
接合してなる円形乃至多角形の屋根構造体を少なくとも
観客席等を設けた躯体上を覆うごとく設置するスタジア
ム屋根の構築方法として図６に示した特開平５−４８３
４８号公報に記載されたものがある。この構築方法は、
屋根を棟中心Ｏにより複数のブロックに区画して屋根構
造材３１とし、建物３２の外壁部周縁に沿って固定され
たリング状の固定梁３３に前記屋根構造材３１の軒側端
部を、区画毎にヒンジピン３４により回動可能に取り付
け、予め屋根となる部分を地上に近い位置で組み立てた
後に、支柱３７の上端と屋根構造材３１の回動端側とを
連結した張力部材（ワイヤ）３６を巻き上げるかクレー
ン等のリフトアップによって、これら各屋根構造材３１
を一斉に引き上げる。その際、各屋根構造材３１はヒン
ジピン３４を基点に内周部側が持ち上げられ、上昇する
につれて内周側に配置された互いに隣接する圧縮リング
梁４０が近接した後、再び拡径する。互いに隣接する圧
縮リング梁４０の接離は、圧縮リング梁４０の内部に収
納されている伸縮梁４１が吸収する。その後、伸縮梁４
１を剛結合してドーム屋根を固定し、圧縮リング梁４０
の内周部中央に基端部が回動可能に支持された回動梁３
８を半円形の軌条３９に沿って回動させて、棟中心Ｏ側
にてこれら回動梁３８の旋回端同士を結合して屋根を完
成させていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、このような
屋根の構築方法では、ブロック毎に区画された屋根構造
材３１を一斉に引き上げる必要があることから、ワイヤ
等の張力部材３６を巻き上げる場合には、ブロック毎に
ウインチが必要となって準備する機材が多量となる嫌い
があった。また、クレーン等のリフトアップによる場合
には、該クレーン等を屋根構造材３１の中心側すなわち
建物３２の内側の競技場Ｇに設置する必要があって、そ
の引上げ前後の期間中は建物の内側での工事作業を中断
せねばならず、たとえ建物の外側に設置して引上げを行
うとしてもその場合はさらに大型のクレーン等が必要で
あり、工事費用のコストアップを招いた。さらに、前述
のような構築方法では、支柱３７の上端と屋根構造材３
１の回動端側とを連結した張力部材（ワイヤ）３６を巻
き上げることになるが、該張力部材３６が建物３２の外
側に設置されたウインチ等へは、建物３２の外壁部周縁
上部のヒンジピン３４近傍であり、ヒンジピン３４を中
心とする屋根構造材３１の回動引上げに要する回転モー
メントはきわめて大きいものであり、張力部材３６を巻
き上げるウインチ等に大きな負担がかかっていた。

【０００４】このため本発明は、このような従来のスタ
ジアム等の大型屋根構築方法における諸課題を解決し
て、引上げによる屋根の構築が僅かな機材によって可能
となり、しかも引上げのためのウインチ等への負担も少
ない低コストなスタジアム屋根の構築方法を提供する。

【０００５】

【課題を解決するための手段】このため本発明は、競技
場を前にして複数個に分割された、屋根構造体ブロック
を接合してなる屋根構造体を、少なくとも観客席等を設
けた躯体上を覆うごとく設置するスタジアム屋根の構築
方法において、前記躯体外周部の上端部にヒンジピンに
て、屋根構造体外周部が軸支されて起伏自在に設置され
た前記屋根構造体ブロックの外周部よりさらに外方に突
出する仮設桁を設置すると共に、これら各屋根構造体ブ
ロックにおける各仮設桁の端部に張設したワイヤーを地
上に配置した移動台車上のウインチにて牽引して地上に
固定の伸縮部材に預けて固定固縛しながら、各屋根構造
体ブロックを順次引き起こすことを特徴とするもので、
これを課題解決のための手段とするものである。 また
本発明は、前記仮設桁の端部に張設されるワイヤーの始
端部を前記屋根構造体ブロックの内周部上面に係止する
と共に、屋根構造体ブロックの外周部上面に立設された
仮設柱の上端部に張設したことを特徴とするものであ
る。さらに本発明は、前記各屋根構造体ブロックの総て
が引き起こされた後、さらに各屋根構造体ブロック同士
を接合し、前記伸縮部材を緩め、ジャッキダウンさせて
屋根構造体の構築を完了させることを特徴とするもの
で、これらを課題解決のための手段とするものである。

【０００６】

【実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に基づい
て説明する。図１および図２は本発明のスタジアム屋根
の構築方法の第１実施の形態を示し、図２（Ａ）および
（Ｂ）において完成後の平面図および側断面図として示
すように、競技場Ｇを囲むように形成した建物を中心と
して放射状に分割された屋根構造体ブロックを接合して
なる円形乃至多角形の屋根構造体に適用された例で、ほ
ぼ建物の棟中心Ｏを中心として放射状に分割された屋根
構造体ブロック１Ａ〜１Ｆを接合してなる円形乃至多角
形の屋根構造体１が少なくとも観客席等を設けた躯体３
上を覆うごとく設置されるもので、その構築方法として
基本的には、前記躯体３外周部の上端部にヒンジピン４
にて前記各屋根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆの外周部が軸
支されて起伏自在に設置され、この各屋根構造体ブロッ
ク１Ａ〜１Ｆに張設したワイヤーを牽引してこれら各屋
根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆを引き起こした後、各屋根
構造体ブロック１Ａ〜１Ｆをそれぞれ接合した後、ジャ
ッキダウンすることで設計形状を得るものである。

【０００７】以下、本発明のスタジアム屋根の構築方法
を説明すると、円形乃至多角形からなる屋根構造体１は
トラス構造あるいは一般的な鉄骨構造からなり、ほぼ建
物の棟中心を中心として放射状に例えば６個の屋根構造
体ブロック１Ａ〜１Ｆに分割されており、これらの各屋
根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆを順次、図１（Ａ）および
（Ｂ）の平面図および側断面図に示すような方法によっ
て構築していく。屋根構造体１の構成要素である屋根構
造体ブロック１Ａは建物における観客席等が設けられる
ことになる躯体３の上にて仮設され、前記躯体３の外周
部の上端部にヒンジピン４にて屋根構造体ブロック１Ａ
〜１Ｆの外周部が軸支されて起伏自在に設置される。屋
根構造体ブロック１Ａの外周部よりさらに外方（図面左
側）に突出する仮設桁５を適宜の形態にて設置すると共
に、該仮設桁５の端部に軸支した桁滑車９に張設される
張力部材であるワイヤー６の始端部を前記屋根構造体ブ
ロック１Ａの内周部上面にピン８によって係止する。さ
らに、屋根構造体ブロック１Ａの外周部上面には仮設柱
７が立設され、該仮設柱７の上端部に設置した案内滑車
等に前記ワイヤー６の中間部が案内支持される。

【０００８】一方、建物の外側の地上部分にはウインチ
１３を搭載した移動台車１４が、その移動方向（図１
（Ａ）の矢印）を前記ワイヤー６の牽引方向と直交させ
てアンカー２１により地面に固定され、該移動台車１４
上のウインチ１３に巻き付けられたワイヤー１７と前記
仮設桁５の端部に軸支された桁滑車９に張設されたワイ
ヤー６とが連結され、それらの連結は、多数の滑車１０
Ａおよび１０Ｂ間にワイヤー１７が懸回された多重ワイ
ヤー帯体１０からなる倍力機構および前記躯体３の外壁
直下にアンカー２１により固定された方向転換用の固定
滑車１２を介在させて行われる。なお、図１の例では、
移動台車１４は、その移動方向をワイヤー６の牽引方向
と直交させてアンカー２１により地面に固定されている
が、場所に応じて適宜の位置に設置固定できることは言
うまでもない。このようなワイヤー６によるウインチ１
３での巻き上げ機構は図１（Ａ）に示したように屋根構
造体ブロック１Ａの円周方向に隔てられた２か所に設置
される。なお、図１（Ｂ）における固定滑車１２の右側
の部分に示されたように、前記固定滑車１２を多重ワイ
ヤー帯体１０における下方の滑車１０Ｂに代用させるこ
ともできる。また、ウインチ１３での巻上げを、仮設桁
５の端部に設けた滑車１０Ａおよび１０Ｂ間の多重ワイ
ヤー帯体等の牽引で行い、屋根構造体ブロックの内周部
上面にワイヤーの始端を係止し、仮設柱を介した仮設桁
の端部の張設を本設ワイヤーとして屋根構造体ブロック
に設置構成することも本発明の範囲内であることは言う
までもない。以上のような構成の屋根構造体ブロック１
Ａの躯体３上での引上げ前の仮設状態は、図１（Ｂ）の
２点鎖線によって示されている。

【０００９】このように設置された屋根構造体ブロック
１Ａをヒンジピン４を軸支点として引き上げるには、図
１（Ａ）のように２か所に固定された各移動台車１４上
のウインチ１３を駆動して巻き上げることにより、ワイ
ヤー１７がウインチ１３の巻胴に巻き取られるに従い、
倍力機構を構成する多重ワイヤー帯体１０における上方
の滑車群１０Ａ下方の滑車群１０Ｂとの間隔を近接させ
ながら、大きな力でワイヤー６を牽引していく。この結
果、屋根構造体ブロック１Ａはヒンジピン４を軸支点と
して図１（Ｂ）の実線で示した屋根の設計上の位置まで
引き上げられる。その際、ウインチ１３へのワイヤー１
７の巻き取りに要する牽引力は小さくとも前記倍力機構
を構成する多重ワイヤー帯体１０の存在によって大きな
力で屋根構造体ブロック１Ａを引き上げることができ
る。しかも、本発明では、前記屋根構造体ブロック１Ａ
の外周部よりさらに外方に突出する仮設桁５を設置して
いるので、前記ヒンジピン４からのスパンの長さの分だ
けさらに小さな牽引力で済み、ウインチ１３への負担が
さらに軽減されることとなる。

【００１０】このようにして引き上げて建て起こした屋
根構造体ブロック１Ａは、幾分設計上の位置より僅か上
方の位置に保持されるものであるが、その位置保持のた
めに、前記ワイヤー１７をアンカー２１にて地上に固定
された伸縮部材１５に預けて（適宜の形態にて係止し）
固定固縛する。その後、ワイヤー１７の緊張が解除され
たウインチ１３を搭載した一対の移動台車１４はアンカ
ー２１の固定が解かれて、次の例えば屋根構造体ブロッ
ク１Ｂの引き上げ使用のために移動される。前記仮設桁
５の撤去は、各屋根構造体ブロックの引上げ完了後毎に
行われてもよいし（この場合には後述する屋根構造体１
全体の一斉のジャッキダウンは伸縮部材１６により行わ
れる）、総ての屋根構造体ブロックの引上げ完了後に一
斉に行われてもよい（この場合には伸縮部材１５による
屋根構造体１全体の一斉のジャッキダウン後に仮設桁５
の撤去が行われる）。それらの仮設桁５を撤去するに
は、各屋根構造体ブロックの外周部の端部に張設したワ
イヤー１１を躯体３の外壁直下にアンカー２１にて固定
した伸縮部材１６に固縛した後に行い、同時に前記ワイ
ヤー６、仮設柱７も取り外される。

【００１１】このようにして、順次引き起こされた各屋
根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆが総て建て起こされて保持
された時点で、これら屋根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆ同
士をそれらの互いに隣接せる接合部においてボルト２６
等によって接合連結する。その後、各屋根構造体ブロッ
ク１Ａ〜１Ｆを保持固縛していた各伸縮部材１５または
１６をジャッキダウンさせながらワイヤーを一斉に緩め
ることで、屋根構造体１はその自重にて幾分降下して設
計上の屋根形状に落ちついてその構築を完了する。ま
た、屋根構造体１を少なくとも観客席等を設けた躯体３
上のみを覆うごとく設置される上部開口型スタジアム屋
根の場合には、前記屋根構造体１の内周開口部をそのま
ま残し、以上でその構築を終了するが、躯体３全体を覆
い、競技場Ｇ部分が風雨の影響を受けないように屋根版
２を必要とする場合には、図２（Ｂ）に示すように、各
屋根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆの内周部にリフトアップ
装置１９を上端部に有する仮設柱１８をそれぞれ立設
し、競技場Ｇ部分の仮設構台２０の上にて組立仮設した
屋根版２を前記仮設柱１８に案内させてリフトアップ装
置１９により引き上げ、屋根構造体１の内周開口部を屋
根版２によって閉塞して構築を終了する。なお、屋根版
２を仮設構台に隣接したジャッキアップ装置によるプッ
シュアップ工法にて構築することも当然考えられる。

【００１２】図３は本発明のスタジアム屋根の構築方法
の第２実施の形態を示すもので、本実施の形態も基本的
な構造は前記第１の実施の形態と同様であり、図３
（Ａ）および（Ｂ）に平面図および側断面図として示す
ように、ほぼ建物の棟中心を中心として放射状に分割さ
れた、屋根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆを接合してなる円
形乃至多角形の屋根構造体１が、少なくとも観客席等を
設けた躯体３上を覆うごとく設置されるもので、前記躯
体３外周部の上端部にヒンジピン４にて屋根構造体ブロ
ック１Ａ〜１Ｆの外周部が軸支されて起伏自在に設置さ
れ、前記各屋根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆに張設したワ
イヤーを牽引してこれら各屋根構造体ブロック１Ａ〜１
Ｆを順次引き起こした後、各屋根構造体ブロック１Ａ〜
１Ｆをそれぞれ接合した後、ジャッキダウンすることで
設計形状を得るものである。

【００１３】本実施の形態が前記第１の実施の形態のも
のと異なるのは、ウインチ１３を搭載した移動台車１４
が、前記屋根構造体ブロック１Ａの外周部よりさらに外
方に突出する仮設桁５の端部の直下よりも躯体３の外壁
側に配置される点である。図３（Ｂ）に示すように、建
物である躯体３の外壁側に近接した地上部分にはウイン
チ１３を搭載した移動台車１４が、前記第１の実施の形
態と同様に、その移動方向（図３（Ａ）の矢印）を前記
ワイヤー６の牽引方向と直交させてアンカー２１により
地面または躯体３の外壁面に固定され、該移動台車１４
上のウインチ１３に巻き付けられたワイヤー１７と前記
仮設桁５の端部に軸支された桁滑車９に張設されたワイ
ヤー６とが連結され、それらの連結は、多数の滑車１０
Ａおよび１０Ｂ間にワイヤー１７が懸回された多重ワイ
ヤー帯体１０からなる倍力機構および前記仮設桁５の端
部に軸支された桁滑車９の直下にアンカー２１により固
定された方向転換用の固定滑車１２を介在させて行われ
る。なお、前記実施の形態と同様に、移動台車１４はそ
の移動方向をワイヤー６の牽引方向と直交させてアンカ
ー２１により地面に固定されているが、場所に応じて適
宜の位置に設置固定できることは言うまでもない。な
お、図３（Ｂ）における固定滑車１２の左側の部分に示
されたように、前記固定滑車１２を多重ワイヤー帯体１
０における下方の滑車１０Ｂに代用させることもでき
る。以上のような構成の各屋根構造体ブロックをウイン
チ１３を駆動して引き上げる方法および屋根構造体１の
ジャッキダウンの方法は、前記第１の実施の形態と同様
であるので、その説明は省略する。本実施の形態では、
建物である躯体３の外壁の周囲が前記第１の実施の形態
ののように広い工事用地が確保できない場合に採用でき
る構築形態で、ウインチ１３を搭載した移動台車１４を
躯体３の外壁に近接した位置に配置せざるを得ない場合
に好適である。

【００１４】図４は本発明のスタジアム屋根の構築方法
の第３実施の形態を示すもので、本実施の形態では、前
記屋根構造体ブロック１Ａの外周部よりさらに外方に突
出する仮設桁として、前記各実施の形態の仮設桁５に代
えて、図４（Ａ）に示したように屋根構造体ブロック１
Ａの内部であって外周方向に隔てられた２か所に半径方
向にスライドおよび固定自在に補強スパン２５を設置し
たものである。 前記補強スパン２５は屋根構造体ブロ
ック１Ａの半径方向に充分に長いものであり、外側へ引
き出して固定した場合には、前記屋根構造体ブロック１
Ａをヒンジピン４を軸支点として引き上げる際の前記第
１および第２実施の形態における仮設桁５の役割をな
し、各屋根構造体ブロック１Ａ〜１Ｆの引上げ構築完了
後に内側へ引き戻して固定した場合には、各屋根構造体
ブロック１Ａ〜１Ｆにおける各補強スパン２５が屋根構
造体ブロック内に集合連結することが可能になる。な
お、補強スパン２５は各屋根構造体ブロックの補強を万
全にすることは言うまでもない。

【００１５】図５は本発明のスタジアム屋根の構築方法
の第４実施の形態を示すもので、前述した各実施の形態
のものが、野球場等のように、競技場Ｇを囲むように形
成した建物を中心として放射状に分割された屋根構造体
ブロックを接合してなる円形乃至多角形の屋根構造体に
適用された例であるのに対して、本実施の形態のもの
は、例えば全体として楕円形に形成されたサッカー場等
のように、競技場Ｇを前に両側あるいは片側に臨設され
た観客席を覆うごとく設置されるスタジアム屋根に適用
される例で、詳述すると、図５（Ａ）に示すように、本
実施の形態における屋根構造体１は、各々が適宜形状に
て複数個に分割された屋根構造体ブロック１Ａ、１Ｂ、
１Ｃ、１Ｄを接合してなるもので、該屋根構造体１は競
技場Ｇを前にして該競技場Ｇの両側あるいは片側に臨設
された少なくとも観客席を設けた躯体３の上方を覆うご
とく設置される。

【００１６】以上のような構成の各屋根構造体ブロック
１Ａ〜１Ｄを、前述した実施の形態と同様にして、図５
（Ｂ）に示すように、躯体３の外周部の上端部にヒンジ
ピン４にて、屋根構造体外周部が軸支されて起伏自在に
設置された前記各屋根構造体ブロックの外周部よりさら
に外方に突出する仮設桁５を設置すると共に、これら各
屋根構造体ブロックにおける各仮設桁５の端部に張設し
たワイヤー６を多重ワイヤー帯体１０からなる倍力機構
等を介して地上に配置した移動台車１４上のウインチに
て牽引して地上に固定の伸縮部材に預けて固定固縛しな
がら、各屋根構造体ブロックを順次引き起こし、各屋根
構造体ブロック１Ａ〜１Ｄをそれぞれ接合した後、ジャ
ッキダウンすることで設計形状を得るものであるが、こ
れらの構築方法については前述した各実施の形態と同様
であるので、その詳細な説明は省略する。なお、図５
（Ａ）のハッチングにて示した両側端部に位置する屋根
構造体ブロック１Ｄについては、他の屋根構造体ブロッ
クと同様にして構築することも可能であるが、予め建て
起こし、サポート支柱２２によって支持しておくことが
望ましい。本実施の形態における屋根構造体１の形状に
ついては種々のものが採用できる他、それらを構成する
各屋根構造体ブロックの分割形状、さらには、屋根構造
体を図面の左右のみならず図面上下方向の両側にも設置
できることは言うまでもない。

【００１７】以上各実施の形態について説明してきた
が、本発明の趣旨の範囲内で、建物、観客席、躯体、競
技場の形状、屋根構造体の形態（トラス構造や鉄骨構造
等）、形状（円形、楕円形、四角形を含む多角形等の平
面視形状）、分割形状、仮設桁および仮設柱の形状、数
およびそれらの屋根構造体ブロックへの設置位置および
設置形態、各滑車の取付形態、多重ワイヤー帯体等倍力
機構の形態、移動台車の形式、ウインチの形態および移
動台車への設置形態、移動台車の地面への固定形態、伸
縮部材へのワイヤの預け形態、屋根版の形状およびその
構築形態等については適宜採用できることは言うまでも
ない。なお、以上で述べた伸縮部材とはジャッキ、ウイ
ンチ等の揚重装置を言う。

【００１８】

【発明の効果】以上詳細に説明してきたように本発明に
よれば、複数個に分割された各屋根構造体ブロック毎に
移動台車上のウインチに巻き取られるワイヤーによって
引き上げて該ワイヤーを地上に固定された伸縮部材に預
けて固定固縛するので、前記ワイヤーを牽引するウイン
チを搭載した移動台車を次の屋根構造体ブロックの引き
上げのために移動させて使い回しすることができ、準備
する機材が少なくて済む。また本発明では、牽引ワイヤ
ーにより順次引き起こされた各屋根構造体ブロックが総
て建て起こされて設計形状より幾分上方に保持された時
点でワイヤーを地上に固定された伸縮部材に預けて固定
固縛するので、これら屋根構造体ブロック同士をそれら
の互いに隣接せる接合部においてボルト等によって接合
連結した後、各屋根構造体ブロックを保持固縛していた
各伸縮部材をジャッキダウンさせながらワイヤーを一斉
に緩めることで、屋根構造体はその自重にて幾分降下し
て設計上の屋根形状に落ち着かせて設計形状を得ること
ができる。また、屋根構造体ブロックの引き上げ使用の
ために該屋根構造体ブロックの外周部よりさらに外方に
突出する仮設桁を設置したので、屋根構造体ブロックの
外周部が軸支されるヒンジピンからの仮設桁のスパンの
長さの分だけさらに小さな牽引力で済み、各屋根構造体
ブロックを引き上げるウインチへの負担が軽減されるこ
ととなる。また、前記仮設桁の端部に張設されるワイヤ
ーの始端部を前記屋根構造体ブロックの内周部上面に係
止すると共に、屋根構造体ブロックの外周部上面に立設
された仮設柱の上端部に張設したことにより、牽引され
るワイヤーによって屋根構造体ブロックの上面が直接ワ
イヤーに触れることがないので、ワイヤー牽引時に屋根
構造体ブロックおよびワイヤー自体が損傷することがな
い。しかも、前記仮設桁の端部と前記移動台車上のウイ
ンチとの間に多重ワイヤー帯体からなる倍力機構を設置
させた場合は、ウインチへのワイヤーの巻き取りに要す
る牽引力は小さくとも、大きな力で屋根構造体ブロック
を引き上げることができるので、ウインチへの負担がさ
らに軽減されることになる。

【００１９】また、前記仮設桁の撤去を、各屋根構造体
ブロックの外周部の端部に張設したワイヤーを躯体の外
壁直下に固定した伸縮部材に固縛させることを、各屋根
構造体ブロックの引上げ完了後毎に行われるならば、こ
れらの仮設桁、仮設柱、多重ワイヤー帯体等について
も、次の屋根構造体ブロックの引き上げに使い回しする
ことができる。また、屋根構造体を少なくとも観客席等
を設けた躯体上のみを覆うごとく設置される上部開口型
スタジアム屋根の場合には、前記屋根構造体の内周開口
部をそのまま残せばよいし、躯体全体を覆い、競技グラ
ンド部分が風雨の影響を受けないように屋根版を必要と
する場合には、適宜の方法にて屋根構造体の内周開口部
を屋根版によって容易に閉塞構築工事を行うことができ
る。このように本発明によれば、引上げによる屋根の構
築が僅かな機材によって可能となり、しかも引上げまた
は押上げのためのウインチ等への負担も少ない低コスト
なスタジアム屋根の構築方法が提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施の形態に係るスタジアム屋
根の構築方法における屋根構造体ブロックの平面および
側断面図である。

【図２】本発明の完成後のスタジアム屋根の全体の平面
および側断面図である。

【図３】本発明の第２の実施の形態に係るスタジアム屋
根の構築方法における屋根構造体ブロックの平面および
側断面図である。

【図４】本発明の第３の実施の形態に係るスタジアム屋
根の構築方法における屋根構造体ブロックの平面および
側断面図である。

【図５】本発明の第４の実施の形態に係るスタジアム屋
根の構築方法における屋根構造体ブロックの平面および
側断面図である。

【図６】従来のスタジアム屋根の構築方法を示す全体の
側断面および平面図である。

【符号の説明】

１・・・屋根構造体 １Ａ〜１Ｆ・・屋根構造体ブロック ２・・・屋根版 ３・・・躯体 ４・・・ヒンジピン ５・・・仮設桁 ６・・・ワイヤー（張力部材） ７・・・仮設柱 ８・・・ピン ９・・・桁滑車 １０・・・多重ワイヤー帯体 １１・・・ワイヤー １２・・・固定滑車 １３・・・ウインチ １４・・・移動台車 １５・・・伸縮部材 １６・・・伸縮部材 １７・・・ワイヤー １８・・・仮設柱 １９・・・リフトアップ装置 ２０・・・仮設構台 ２１・・・アンカー ２２・・・サポート支柱 ２５・・・補強スパン ２６・・・ボルト Ｇ・・・競技場

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田口 猛也 東京都中央区銀座６丁目２番10号 株式会 社巴コーポレーション内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 競技場を前にして複数個に分割された、
   屋根構造体ブロックを接合してなる屋根構造体を、少な
   くとも観客席等を設けた躯体上を覆うごとく設置するス
   タジアム屋根の構築方法において、前記躯体外周部の上
   端部にヒンジピンにて、屋根構造体外周部が軸支されて
   起伏自在に設置された前記屋根構造体ブロックの外周部
   よりさらに外方に突出する仮設桁を設置すると共に、こ
   れら各屋根構造体ブロックにおける各仮設桁の端部に張
   設したワイヤーを地上に配置した移動台車上のウインチ
   にて牽引して地上に固定の伸縮部材に預けて固定固縛し
   ながら、各屋根構造体ブロックを順次引き起こすことを
   特徴とするスタジアム屋根の構築方法。
2. 【請求項２】 前記仮設桁の端部に張設されるワイヤー
   の始端部を前記屋根構造体ブロックの内周部上面に係止
   すると共に、屋根構造体ブロックの外周部上面に立設さ
   れた仮設柱の上端部に張設したことを特徴とする請求項
   １に記載のスタジアム屋根の構築方法。
3. 【請求項３】 前記各屋根構造体ブロックの総てが引き
   起こされた後、さらに各屋根構造体ブロック同士を接合
   し、前記伸縮部材を緩め、ジャッキダウンさせて屋根構
   造体の構築を完了させることを特徴とする請求項１また
   は２に記載のスタジアム屋根の構築方法。