JPH09141311A - 冷間圧延方法 - Google Patents

冷間圧延方法

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JPH09141311A
JPH09141311A JP7296603A JP29660395A JPH09141311A JP H09141311 A JPH09141311 A JP H09141311A JP 7296603 A JP7296603 A JP 7296603A JP 29660395 A JP29660395 A JP 29660395A JP H09141311 A JPH09141311 A JP H09141311A
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伸夫 西浦
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷間圧延鋼板を製造する板圧延方法におい
て、板幅端部のエッジ割れや板破断の発生頻度を低減で
きる方法。 【解決手段】 冷間圧延鋼板を製造する板圧延方法にお
いて、あらかじめ被圧延材の引張破断伸びを求めてお
き、各圧延スタンドまたは各圧延パス(S2,S7,S
8)における板幅端部の圧下率が、板幅全体の平均の圧
下率と前記引張破断伸びから求まる限界圧下率を越える
ように(S4,S5)圧延スケジュールを設定する(S
6)ことを特徴とする冷間圧延方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、冷間圧延鋼板を
製造する板圧延方法に関し、板幅端部で発生する耳割れ
や板破断を発生させることのない板圧延方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】冷間圧延後の被圧延材には、エッジドロ
ップと呼ばれる板幅方向の両端部に生じる急激な板厚減
少が見られる。エッジドロップは、板幅端部の幅方向へ
のメタルフローおよびワークロールの表面偏平変形に起
因し、冷間圧延条件に支配されている。そのため、通
常、板幅端部の圧下率に比べて板幅中央部の圧下率が大
きくなり、板幅端部に引張応力が発生し易い条件となっ
ている。特に仕上げ厚が薄い場合には、熱延工程で発生
したエッジドロップの影響で板幅端部に大きな引張応力
が発生するため、耳割れの発生が問題となっている。こ
れに対して、熱延原板のエッジトリムにより耳割れ発生
を防止しているのが現状であり、歩留低下の大きな要因
となっている。
【0003】エッジドロップを制御する技術として、従
来タンデム冷間圧延機の所定のスタンド、通常は第一ス
タンドに、端部に先細りテーパー部を有するワークロー
ルを組み込み、テーパー部を被圧延材の板幅端部に重ね
て圧延することにより、エッジドロップを低減させる冷
間圧延方法が提案されている。しかし、テーパー付きワ
ークロールを使用することで、板幅端部に大きな引張応
力が発生する。このため被圧延材が脆性材の場合、板幅
端部に耳割れ(edge crack)、耳割れを起点
とした板破断が発生しやすいという問題点がある。これ
に対し、耳割れ発生を防止する技術としては、シフト圧
延機の入側において被圧延材を幅圧下処理して肥厚化さ
せることでエッジドロップを抑制し、かつ、耳割れ発生
を防止する技術(例えば特公平5−9163号公報を参
照)がある。しかし、薄板で幅圧下量を取ろうとすると
材料が座屈して必要な板プロフィルを得られないという
問題点があった。
【0004】また、前パスのシフト位置からの相対変化
量を、あらかじめ求めておいたエッジドロップの発生し
ない限界値に制限する技術(例えば特公平5−5620
2号公報を参照)がある。しかし、圧延機入側の板プロ
フィルにより板幅端部に発生する引張応力の大きさは異
なり、前パスのシフト位置からの相対的なシフト変化量
を制限するだけでは、耳割れを防ぐ条件としては不十分
である。また、各スタンド出側に張力分布変更ロールを
設置して板幅中央部において押し当て、被圧延材の板幅
端部にかかる張力を低減し、耳割れを防止する技術(例
えば特開平6−87005号公報を参照)がある。しか
しこの方法では、幅方向の張力分布が不均一となり、複
合伸び等の複雑な形状不良の発生が問題となる。
【0005】また、材料側の板幅端部の延性をコントロ
ールすることによって耳割れを防止する技術がある。例
えば、冷間圧延前や途中において、金属板コイルの両側
縁部をホットプレートにより加熱して金属板の側縁部を
軟化することにより延性を向上させ、板幅縁部の耳割れ
を防止する技術(例えば特開平4−371314号公報
参照)がある。しかし、連続化タンデムミルにおいて高
速通板中のオンラインでは実施不可能である。また、金
属板の側縁部を加熱することによる延性の向上効果にも
限界があり、十分であるとは言えない。また、上記従来
技術では、耳割れ発生条件が明確に示されていない。そ
のため、各制御装置の操作量を試行錯誤で決定してお
り、鋼種の違い、板プロフィルの違い、そして、圧延ス
ケジュールの変化に対応し、全てを最適化することは困
難であった。
【0006】一方、薄物・硬質材をタンデム圧延機にて
製造するために、前段スタンドのワークロール径より小
さな小径ワークロールを有する圧延機を後段スタンドに
導入することがある。エッジドロップの原因の一つであ
るワークロールの表面偏平は、ロール径が大径である程
大きいため、前段スタンドでは大きなエッジドロップが
発生する。しかし、後段スタンドでは小径ワークロール
の表面偏平が小さくなり、板幅端部の板プロフィルにロ
ールプロフィルが沿わなくなる。そのため極端な場合に
は、板幅端部に未圧下域が発生する。その結果、板幅端
部の圧下率に比べて板幅中央部の圧下率が大きくなり、
板幅端部に大きな引張応力が発生する。従って被圧延材
が脆性材である場合や、非脆性材においても冷延率の増
加と共に延性が低下することを考えると、後段スタンド
で小径ワークロールによる圧延を行う際に、耳割れ発生
や板破断の発生が問題となる。しかしこの問題について
の対策技術は、これまでに提案されていない。
【0007】また、シフト機能を有しない通常のタンデ
ム圧延機もしくはレバース圧延機による板圧延方法にお
いても、冷延前の熱延工程で生成されたエッジドロップ
量が極端に大きい場合にも、同様に耳割れの発生や板破
断の発生が問題となる。しかし、この問題を解決する技
術は現在までに提案されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来の冷間圧延方法に
おいては、上記のように被圧延材の板幅端部の耳割れや
板破断の発生をなくするという課題はまだ解決されてい
ない。本発明は、上記従来技術の課題を解決するために
なされたものであり、タンデム圧延機、もしくは、レバ
ース圧延機による板圧延方法において、耳割れの発生し
ないパススケジュール設定方法を提案するものである。
また、本発明は、テーパー付きワークロールを軸方向へ
シフトする機構を有する圧延機において、耳割れの発生
しないワークロールシフトの設定・制御方法を提案する
ものである。また、本発明は、タンデム圧延機の後段ス
タンドに小径ワークロールを有する圧延機を使用し、か
つ、少なくとも前段にテーパー付きワークロールを軸方
向にシフトする1スタンドを持っている場合、後段スタ
ンドにて発生しやすい耳割れの発生を防止する前段スタ
ンドのワークロールシフトの設定・制御方法を提案する
ものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る
冷間圧延方法は、冷間圧延鋼板を製造する板圧延方法に
おいて、あらかじめ被圧延材の引張破断伸びを求めてお
き、各圧延スタンドまたは各圧延パスにおける板幅端部
の圧下率が、板幅全体の平均の圧下率と前記引張破断伸
びから求まる限界圧下率を越えるように圧延スケジュー
ルを設定することにより板幅端部のエッジ割れを防止す
ることができる。
【0010】本発明の請求項2に係る冷間圧延方法は、
テーパ付きワークロールを軸方向へシフトする機構を有
する圧延機を用いて冷間圧延鋼板を製造する板圧延方法
において、あらかじめ被圧延材の引張破断伸びを求めて
おき、前記圧延機の各圧延スタンドまたは各圧延パスに
おける板幅端部の圧下率が、板幅全体の平均の圧下率と
前記引張破断伸びから求まる限界圧下率を越える範囲に
なるようにワークロールをシフトすることにより板幅端
部のエッジ割れを防止することができるものである。
【0011】本発明の請求項3に係る冷間圧延方法は、
少なくとも前段にテーパー付きワークロールを軸方向に
シフトするスタンドを1スタンド有し、後段の少くとも
1スタンドに前段スタンドのワークロール径よりも小さ
な小径ワークロールを有するタンデム圧延機を用いて冷
間圧延鋼板を製造する板圧延方法において、あらかじめ
被圧延材の引張破断伸びを求めておき、前記小径ワーク
ロールによる板幅端部の圧下率が、板幅全体の平均の圧
下率と前記引張破断伸びから求まる限界圧下率を越える
範囲になるように前記小径ワークロール入側の被圧延材
形状を制御することにより板幅端部のエッジ割れを防止
することができるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】発明者らは、被圧延材の板幅端部
において耳割れの発生する境界条件について、鋭意研究
を重ねた結果、耳割れが発生する板幅端部の圧下率は、
圧延機入側の被圧延材の引張試験を実施して求めた破断
伸び歪および板幅全体の平均の圧下率と密接な関係があ
ることを見出した。また発明者らは、テーパー付きワー
クロールを軸方向にシフトする圧延機を用いて、ワーク
ロールのテーパー部と板幅端部との重なり量(以下、W
Rδと記す)と板幅端部の耳割れの発生の関係を調査す
る圧延実験を行った。その結果、耳割れの発生しないW
Rδの範囲が存在することを突き止めた。そしてそのW
Rδの範囲は圧下率に依存することがわかった。図2は
テーパー付きワークロールを軸方向にシフトする圧延機
による耳割れ発生に係る上記実験結果を示す図であり、
図の縦軸は圧下率、横軸はWRδであり、図中のハッチ
ング領域は、板幅端部に耳割れが発生した領域を示して
いる。ここで、WRδを変化させることは、板幅端部の
圧下率を変化させることと等価である。そこで、耳割れ
発生の条件を明確にすべく、板幅端部の圧下率と板幅全
体の平均の圧下率の関係に注目して実験結果を整理し
た。なお、冷間圧延においては、エッジドロップの発生
する板幅端部のごく狭い領域を除いて、板幅全体の圧下
率はほぼ同一と考えられるため板中央部の圧下率を平均
の圧下率とした。
【0013】図3は板幅全体の平均の圧下率と、板幅端
部と板中央部(平均)の圧下率の差との関係を示す図で
あり、同図によって耳割れ発生の明確な境界線が引ける
ことが分かる。即ち耳割れの発生する板幅端部の圧下率
と板幅全体の平均の圧下率の境界条件は、次の式(1)
のように表すことができる。 (redE cr=1−a・(1−redC ) …(1) ここで、 (redE cr:板幅端部の限界圧下率(=(h1 E
0 E )/h1 E ) redC :板幅全体の平均の圧下率(=(h1 C −h0
C )/h1 C ) h1 E :板幅端部入側板厚 h0 E :板幅端部出側板厚 h1 C :板中央部入側板厚 h0 C :板中央部出側板厚 a :定数 である。
【0014】板幅端部の耳割れは、板幅端部の圧下率
(redE )が限界圧下率(redEcr以下となる時
に発生する。そこで、板幅端部の圧下率(redE
が、式(2)を満足する圧延条件を設定することで、エ
ッジ割れを防止できる。 (redE )>(redE cr …(2) さらに、実験を重ねた結果、圧延時に板幅端部において
耳割れの発生する境界条件は、圧延機入側の被圧延材の
延性に左右されることが明らかになった。
【0015】図4は延性の異なる材料で図3と同様の圧
延実験を行った結果を示す図であり、同図により、式
(1)中の定数aは被圧延材の延性に依存する項である
ことがわかる。延性の代表値として引張試験で得られた
破断伸歪を用いて実験の結果を整理し、前記式(1)中
の定数aを次の式(3)に示すように破断伸歪εfの関
数として定式化した。 a=EXP[(0.5−b)・εf] …(3) ここで、bは、実験より導出される定数である。以上よ
り、エッジ割れ発生の境界条件は前記式(1)〜式
(3)で与えられる。本発明の実施形態1〜実施形態3
は、これらの境界条件式を用いた板幅端部での耳割れの
発生を防止する方法を示すものであり、以下に順次説明
する。
【0016】実施形態1.実施形態1においては、前記
式(2)を満足する範囲内で圧延パススケジュールを設
定する方法について述べる。なお、この場合に、タンデ
ム圧延機の各圧延スタンド、もしくは、レバース圧延機
の各パスの入・出側の板プロフィルは、FEM(有限要
素解析)等の厳密計算モデルの計算結果や実機での板プ
ロフィル測定結果の回帰式などの板プロフィル予測式に
より求めるものとする。図1は本発明の実施形態1に係
る耳割れを発生しないようなパススケジュールの決定フ
ローを示す図である。なお図のSに続く数値はステップ
番号を示す。
【0017】図1においては、まず熱延原板クラウン測
定を行い(図のS1参照)、その後スタンド番号1から
基本スケジュールによる圧下率を基準として設定し(図
のS2,S3を参照)、該当スタンドの出側板プロフィ
ルを予測式により算出し、式(2)を満足するか否かを
チェックし(図のS4,S5を参照)、満足しない場合
には耳割れが発生しない圧下率に修正する(図のS6を
参照)。そしてスタンド番号1から順次最終スタンドま
での各スタンドについて(図のS7,S8を参照)、上
記S3〜S6の処理を行い、最終スタンド出側板厚が所
望の目標板厚を満足しているか否かの判定を行い(図の
S9を参照)、満足していれば終了し、満足していない
場合は、耳割れを防止し、かつ、所望の板厚を得ること
は不可能と判断し、エッジトリムの実施、もしくは、2
回冷圧を実施する(図のS10を参照)ことを前提とし
てスケジュールを設定するなどの処理を行う。
【0018】実施形態2.実施形態2においては、前記
式(2)を満足する範囲内でテーパ付きワークロールの
シフト量を設定する方法について述べる。ただしこの場
合に、該当スタンドの板幅端部および中央部の入・出側
板厚が、各スタンド間に設置されている板プロフィル
計、もしくは、板プロフィル予測式、のいずれかの方法
により既知であるとする。なお、ここで板プロフィル予
測式は、FEM(有限要素解析)等の厳密計算モデルの
計算結果や実機での板プロフィル測定決定の回帰式など
のいずれでもよい。テーパ付きワークロールの軸方向シ
フトにより板端部にロールテーパ部が重なった時に、板
端部のギャップ変化が発生する。ここでは、次の式
(4)に示すように、ロールプロフィル転写率を使用し
た板幅端部の出側板厚の予測式を用い、ワークロール・
シフト後の板プロフィルを予測する。
【0019】
【数1】
【0020】ここで、 h0 E′ :ワークロールシフト後の出側エッジ部の板厚 h0 E :ワークロールシフト前の出側エッジ部の板厚 η :ロールプロフィル転写率 ΔWRδ:ワークロールの現在の位置からのシフト量 g,L :ロールテーパ形状を表すパラメータ (L:ワークロール端部のテーパー長さ、g:テーパー深さ) である。
【0021】ロールプロフィル転写率は、ワークロール
シフトによって発生する板端部のギャップ変化量Δgに
対する板厚変化Δhの比率である。ロールプロフィル転
写率の定義式を次の式(5)に示す。 η=Δh/Δg …(5) ここで、Δg:ギャップ変化量、 Δh:板厚変化量 である。なお、出側板厚の予測式は、式(4)以外に、
FEM等の計算モデルの計算結果や実機での試験結果の
回帰式を用いてもよい。この場合、式(2)および式
(4)より耳割れが発生ないワークロール・シフトの相
対変化量の許容範囲は、式(6)のようになる。
【0022】
【数2】
【0023】前記式(6)の範囲内で、ワークロールの
シフト条件を圧延前にセットアップおよび、圧延中にフ
ィードバック制御する。具体的には、冷間圧延前に各圧
延スタンドのワークロールのシフト量をセットアップす
るに際して、まず、ホット原板の板プロフィルを測定す
る。そして、FEM等の厳密計算モデルの計算結果や実
機での板プロフィル測定結果の回帰式などの板プロフィ
ル予測式によって、各圧延スタンドの入・出側の板プロ
フィル予測値を算出した後、式(6)に基づいて各スタ
ンドのワークロール・シフト量を決定し、セットアップ
する。また、各スタンド間に板プロフィル計、例えば、
X線式クラウンメータやマルチビーム式クラウンメータ
などが設置されている場合、各スタンドの入・出側の板
プロフィルを圧延中オンラインで測定し、式(6)に基
づいて各スタンドのシフト量を決定し、リアルタイムに
制御を実施する。これにより、母材板プロフィルがコイ
ル長手方向に変化した場合にも耳割れが発生することな
く圧延を実施することが可能となる。以上のワークロー
ルの軸方向のシフトの制御方法を実施することで、シフ
トミルでの耳割れ発生を防止できる。
【0024】以下に本発明の実施形態2を実施した具体
例を示す。この例では、前段3スタンドにワークロール
径φ500の4Hiワークロール・シフト・ミル、後段
2スタンドにワークロール径φ500の4Hiミルを有
する全5スタンドのタンデム圧延機において、前段3ス
タンドの各入・出側にX線式クラウンメータを設置し、
本発明の実施形態2による冷間圧延法を実施した結果、
耳割れ発生頻度が各鋼種でおよそ半減した。従来は、耳
割れ発生条件が明確になっていなかったため、各圧延機
のワークロールの軸方向シフト量はオペレータの経験に
より決定されていた。しかし、本発明の実施形態2によ
り、冷延原板の板プロフィルおよび、圧延中の各スタン
ド間の測定板プロフィルに基づいて、耳割れが発生しな
いようにワークロールの軸方向シフト量を決定するた
め、耳割れ発生頻度が激減したものである。図5は本発
明の実施形態2による冷間圧延方法の実施前後における
耳割れ発生頻度の比較を示す図である。同図により図示
の3つの鋼種とも、本実施形態2の実施後の耳割れ発生
頻度が実施前の半分程度であるこが判る。
【0025】実施形態3.タンデム圧延機の後段スタン
ドに小径ワークロール・ミルを導入した際に耳割れの発
生が懸念される。実施形態3においては、これを防止す
るための前段ワークロールシフトミルでのシフト条件の
決定方法について述べる。まず、小径ワークロールを有
する後段スタンドにおいて、板幅端部および中央部の入
・出側板厚が、各スタンド間に設置されている板プロフ
ィル計、もしくは、板プロフィル予測式のいずれかの方
法により既知であるとする。ただし、板プロフィル予測
式は、FEM等の厳密計算モデルの計算結果や実機での
板プロフィル測定結果の回帰式などのいずれでもよい。
このとき、小径ロールスタンドでの耳割れ発生防止法の
概略は次の通りである。すなわち、小径ワークロール・
ミルにおける板中央部と板幅端部の圧下率を計算し、式
(2)を満足するかをチェックする。満足しない場合、
前段スタンドのワークロールシフトミルのシフト条件を
制御し、後段小径ワークロールミルにおける板幅端部の
圧下率が式(2)を満足するような入側板クラウンを作
り込む。以下にこの方法を詳述する。
【0026】後段スタンドの小径ワークロール・ミルの
入側の板幅端部と板幅中央部の板厚差をΔChとした時
の板幅端部の入・出側板厚を次の式(7A),(7B)
に示す。 入側板厚:h1 E =h1 C −ΔCh …(7A) 出側板厚:h0 E =h0 C −β[1−redC ]ΔCh …(7B) ここで、h1 E :板幅端部の入側板厚 h0 E :板幅端部の出側板厚 h1 C :板中央部の入側板厚 h0 C :板中央部の出側板厚 ΔCh:板クラウン β :エッジドロップ率遺伝係数 である。
【0027】ここでは、板幅端部の出側板厚は、エッジ
ドロップ遺伝係数を使用した予測式で与える。エッジド
ロップ遺伝係数とは、前パスで変更された入側板厚分布
の差がエッジドロップ率として出側板厚分布の差に残存
する割合であり、予め導出しておく値である(第44回
塑性加工連合講演会講演論文集p.165参照)。エッ
ジドロップ遺伝係数の定義式を式(8)に示す。
【0028】
【数3】
【0029】ここで式(8)の添字1は入側、0は出側
を表す。なお、出側板厚の予測式は、式(7A),(7
B)以外に、FEM等の計算モデルの計算結果や実機測
定結果の回帰式を用いてもよい。
【0030】式(7A),(7B)を式(2)に代入し
て整理し、エッジ割れを防止するための板クラウン量Δ
Chを求めると式(9)のようになる。
【0031】
【数4】
【0032】ただし、式(9)の(redE )crは式
(1)より求めるものとする。小径ワークロール・スタ
ンドの入側板クラウンが式(9)にて決定される範囲内
になるように、前段スタンドのロールテーパー付きワー
クロールの軸方向へのシフト条件を決定する。このシフ
ト条件に基づいたセットアップおよび圧延中のフィード
バック制御を実施する。具体的には、冷間圧延前に前段
スタンドのワークロールのシフト条件をセットアップす
るに際して、まず、ホット原板の板プロフィルを測定す
る。そして、FEM等の厳密計算モデルの計算結果や実
機での板プロフィル測定結果の回帰式などの板プロフィ
ル予測式によって、各圧延スタンドの入・出側の板プロ
フィル予測値を算出し、小径ワークロールを有する後段
スタンドの入側の板クラウンが式(9)を満足するよう
に前段スタンドのワークロールのシフト量を決定しセッ
トアップする。
【0033】また、各スタンド間に板プロフィル計が設
置されている場合、各スタンドの入・出側板プロフィル
を圧延中オンラインで測定し、小径ワークロールを有す
る後段スタンドの入側の板クラウンが式(9)を満足す
るように前段スタンドのワークロールシフト量を決定し
リアルタイムに制御する。これにより、母材板プロフィ
ルがコイル長手方向に変化した場合にも、小径ワークロ
ールの後段スタンドにて耳割れが発生することなく圧延
を実施することが可能となる。以上に述べた前段シフト
ミルのシフト条件に基づいた制御を実施することによ
り、後段小径ワークロールミルでの耳割れ発生を防止で
きる。ただし、前段シフトミルでの耳割れ発生を防止す
るためには、式(6)も同時に満足させる必要がある。
また、シフト機能を有しない通常のテンダム圧延機もし
くはレバース圧延機でパス・スケジュールが固定されて
いる場合には、式(9)により冷延工程での耳割れ発生
を防止し得る熱延原板のエッジドロップ量を決定するこ
とが可能となり、熱延工程でのエッジドロップの管理基
準を設定可能となる。これにより、従来耳割れ防止のた
めに行っていた熱延原板のエッジトリムを省略でき、大
きく歩留まりを向上できる。
【0034】以下に本発明の実施形態3を実施した具体
例を説明する。この例では、前段3スタンドにワークロ
ール径φ500の4Hiワークロール・シフト・ミル
を、後段2スタンドにワークロール径φ200の6Hi
ミルを有する全5スタンドのタンデム圧延機において、
原板厚3.0mm、板幅1000mmのSU430を製
品厚0.8mmまで圧延した場合について説明する。冷
延コイル母材のプロフィル測定をした結果、板幅中央部
=3.000mm、板幅端部=2.865mmであっ
た。前段3スタンドのシフト量は、WRδ=0.0mm
として圧延したところ、4スタンド出側にて耳割れが発
生した。そのとき、4スタンドの入側プロフィル測定結
果は、板幅中央部=1.148mm、板幅端部=1.0
79mm、出側プロフィル測定結果は、板幅中央部=
1.079mm、板幅端部=0.883mmであった。
実機試験から求まるエッジドロップ遺伝係数β=0.
8、また、ラボ実験および引張試験より式(3)の定数
を求め、式(9)より4スンタド入側の板クラウン改善
目標値を求めると、ΔCh>−0.002mm(センタ
ークラウン比率=−0.2%)となる。これを実現する
ように、前段3スタンドのワークロールのシフト量を調
整した結果、耳割れ発生を抑制することができた。
【0035】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、冷間圧延
鋼板を製造する板圧延方法において、あらかじめ被圧延
材の引張破断伸びを求めておき、各圧延スタンドまたは
各圧延パスにおける板幅端部の圧下率が、板幅全体の平
均の圧下率と前記引張破断伸びから求まる限界圧下率を
越えるように圧延スケジュールを設定するようにしたの
で、板幅端部のエッジ割れや板破断の発生頻度を大幅に
低減でき、生産能率を大幅に向上することが可能となっ
た。
【0036】また本発明によれば、テーパ付きワークロ
ールを軸方向へシフトする機構を有する圧延機を用いて
冷間圧延鋼板を製造する板圧延方法において、あらかじ
め被圧延材の引張破断伸びを求めておき、前記圧延機の
各圧延スタンドまたは各圧延パスにおける板幅端部の圧
下率が、板幅全体の平均の圧下率と前記引張破断伸びか
ら求まる限界圧下率を越える範囲になるようにワークロ
ールをシフトするようにしたので、板幅端部のエッジ割
れや板破断の発生頻度が大幅に減少するようになった。
【0037】また本発明によれば、少なくとも前段にテ
ーパー付きワークロールを軸方向にシフトするスタンド
を1スタンド有し、後段の少くとも1スタンドに前段ス
タンドのワークロール径よりも小さな小径ワークロール
を有するタンデム圧延機を用いて冷間圧延鋼板を製造す
る板圧延方法において、あらかじめ被圧延材の引張破断
伸びを求めておき、前記小径ワークロールによる板幅端
部の圧下率が、板幅全体の平均の圧下率と前記引張破断
伸びから求まる限界圧下率を越える範囲になるように前
記小径ワークロール入側の被圧延材形状を制御するよう
にしたので、板幅端部のエッジ割れや板破断の発生を大
幅に抑制可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る耳割れを発生しない
ようなパススケジュールの決定フローを示す図である。
【図2】テーパー付きワークロールを軸方向にシフトす
る圧延機による耳割れ発生に係る実験結果を示す図であ
る。
【図3】板幅全体の平均の圧下率と、板幅端部と板中央
部の圧下率の差との関係を示す図である。
【図4】被圧延材の延性と板幅端部の耳割れ発生の境界
条件の関係を示す図である。
【図5】本発明の実施前後における耳割れ発生頻度の比
較を示す図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 冷間圧延鋼板を製造する板圧延方法にお
    いて、あらかじめ被圧延材の引張破断伸びを求めてお
    き、各圧延スタンドまたは各圧延パスにおける板幅端部
    の圧下率が、板幅全体の平均の圧下率と前記引張破断伸
    びから求まる限界圧下率を越えるように圧延スケジュー
    ルを設定することにより板幅端部のエッジ割れを防止す
    ることを特徴とする冷間圧延方法。
  2. 【請求項2】 テーパ付きワークロールを軸方向へシフ
    トする機構を有する圧延機を用いて冷間圧延鋼板を製造
    する板圧延方法において、 あらかじめ被圧延材の引張破断伸びを求めておき、前記
    圧延機の各圧延スタンドまたは各圧延パスにおける板幅
    端部の圧下率が、板幅全体の平均の圧下率と前記引張破
    断伸びから求まる限界圧下率を越える範囲になるように
    ワークロールをシフトすることにより板幅端部のエッジ
    割れを防止することを特徴とする冷間圧延方法。
  3. 【請求項3】 少なくとも前段にテーパー付きワークロ
    ールを軸方向にシフトするスタンドを1スタンド有し、
    後段の少くとも1スタンドに前段スタンドのワークロー
    ル径よりも小さな小径ワークロールを有するタンデム圧
    延機を用いて冷間圧延鋼板を製造する板圧延方法におい
    て、 あらかじめ被圧延材の引張破断伸びを求めておき、前記
    小径ワークロールによる板幅端部の圧下率が、板幅全体
    の平均の圧下率と前記引張破断伸びから求まる限界圧下
    率を越える範囲になるように前記小径ワークロール入側
    の被圧延材形状を制御することにより板幅端部のエッジ
    割れを防止することを特徴とるす冷間圧延方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103736742A (zh) * 2013-12-26 2014-04-23 秦皇岛首秦金属材料有限公司 一种中厚板表面纵向边部裂纹控制方法
CN104289550A (zh) * 2014-08-20 2015-01-21 河北钢铁股份有限公司唐山分公司 一种冷轧高强罩式退火板平直度的控制方法
WO2024111238A1 (ja) * 2022-11-21 2024-05-30 Jfeスチール株式会社 鋼板の冷間圧延方法、冷延鋼板の製造方法、及び冷延鋼板の製造設備

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