JPH0912758A - 多孔質フィルム及びその製造方法並びに電池用セパレータ - Google Patents

多孔質フィルム及びその製造方法並びに電池用セパレータ

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JPH0912758A
JPH0912758A JP7158165A JP15816595A JPH0912758A JP H0912758 A JPH0912758 A JP H0912758A JP 7158165 A JP7158165 A JP 7158165A JP 15816595 A JP15816595 A JP 15816595A JP H0912758 A JPH0912758 A JP H0912758A
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JP
Japan
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porous film
temperature
battery
film
radiation
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JP7158165A
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Inventor
Yasuhiro Torimae
安宏 鳥前
Tetsuji Kito
哲治 鬼頭
Nori Tokuyama
則 徳山
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Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 機械的強度に優れ、特に、電池用セパレータ
として用いた場合に、電気抵抗が低く且つ適当な所定の
SD開始温度を有すると共に、耐熱温度が高く、且つ耐
熱温度幅が広く、安全な多孔質フィルム及びその製造方
法、及び該多孔質フィルムからなる電池用セパレータ並
びに該電池用セパレータを有する電池を提供すること。 【構成】 結晶性ポリエチレンを必須成分とする組成物
からなる多孔質フィルムであって、該多孔質フィルムの
一表面から厚さ方向の所定の深さに亘る部分(a)の溶
融流動温度が他の部分(b)の溶融流動温度より20℃
以上高いことを特徴とする多孔質フィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多孔質フィルム、その
製造方法、該多孔質フィルムからなる電池用セパレータ
及び該電池用セパレータを有する電池に関するもので、
該多孔質フィルムは機械的強度且つ安全性に優れてお
り、特に電池用セパレータとして有用性の高いものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、種々のタイプの電池が実用に
供されており、近年、電子機器のコードレス化等に対応
するための電池として、高エネルギー密度及び高起電力
を有し、自己放電が少ないことからリチウム電池が注目
を浴びている。
【0003】上記リチウム電池の負極としては、例え
ば、金属リチウム、リチウムとアルミニウム等の金属と
の合金、カーボンやグラファイト等のリチウムイオンを
吸着する能力やインターカレーションによりリチウムイ
オンを吸蔵する能力を有する有機材料、又はリチウムイ
オンをドーピングした導電性高分子で成形されたもの等
が用いられている。
【0004】また、上記リチウム電池の正極としては、
例えば、一般に(CFx)nで示されるフッ化黒鉛、M
nO2 、V2 5 、CuO、Ag2 CrO4 、TiO2
等の金属酸化物、CuS等の硫化物等で成形されたもの
が用いられている。
【0005】そして、上記リチウム電池は、負極構成材
料として用いられるリチウム金属等が強い反応性を示
し、また、電解液としてエチレンカーボネート、プロピ
レンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチルラクト
ン、1、2−ジメトキシエタン、又はテトラヒドロフラ
ン等の有機溶媒にLiPF6 、LiCF3 SO3 、Li
ClO4 、又はLiBF4 等を電解質として溶解した有
機溶媒系の電解液が使用されているので、外部短絡や誤
接続等により異常電流が流れた場合に、これに伴って電
池温度が著しく上昇し、それを組み込んだ機器に熱的ダ
メージを与えるという問題がある。
【0006】そして、上記リチウム電池には、一般に多
孔質フィルムが電池用セパレータとして用いられ、該電
池用セパレータは正極と負極との間に介在しており、正
常通電時には、これら両極の短絡を防止すると共に、そ
の多孔質構造により両極間の電気抵抗が低く抑えられ、
電池電圧が維持される。一方、異常電流により電池の内
部温度が上昇した場合には、該電池の内部温度が所定の
温度に達すると、上記多孔質フィルムの多孔質構造を無
孔質構造に変質させ、その電気抵抗を増大させて電池反
応を遮断し、過度の温度上昇を防止して安全を確保しよ
うとしている。
【0007】異常電流による温度の上昇があった場合、
電気抵抗の増大による電池反応を遮断することにより温
度の過昇温を防止して電池の安全を確保する機能を一般
にシャットダウン機能(以下、SD機能と略す)と呼
び、リチウム電池用セパレータには必須の機能である。
【0008】電池用セパレータとして使用される多孔質
フィルムにおいて、電気抵抗が増大し、その値が200
Ω・cm2 に達した際の温度(本明細書において、「S
D開始温度」という)が低すぎる場合には、僅かな温度
上昇で電気抵抗が増大し電池反応が遮断されることにな
り実用性に乏しく、一方、SD開始温度が高過ぎる場合
には安全の確保が不十分となる。従って、好ましいSD
開始温度は約110〜140℃であり、更に好ましいS
D開始温度は120〜130℃と認識されている。
【0009】更に、電池用セパレータは、増大した電気
抵抗が適当な温度まで維持されることが安全性確保の点
から望ましい。増大した電気抵抗が維持される上限温度
を、本明細書において「耐熱温度」といい、また、SD
開始温度から耐熱温度までの温度幅を、本明細書におい
て「耐熱温度幅」という。更に、電気抵抗の増大開始温
度から増大した抵抗がほぼ一定になるまでの温度幅を、
本明細書において「SD開始温度幅」という。
【0010】上記耐熱温度は、電池用セパレータのフィ
ルム形状維持機能ともみることができる。温度の過昇に
よって、電池用セパレータが溶融すると、該電池用セパ
レータがその形状を維持できずに破れを生じ、電気抵抗
が減少しSD機能が壊失される。そして、SD機能が壊
失されると、リチウム電池内において正極と負極とが接
触短絡して温度が急激に上昇し、それを組み込んだ機器
に熱的ダメージを与えるという問題がある。従って、電
池用セパレータには安全性を確保する点から、約110
〜140℃の範囲内にSD開始温度を有し、耐熱温度が
高く、且つ耐熱温度幅が広いことが望まれる。特に、S
D開始温度が、より低い温度に要求されるに従い、電池
内の昇温源をより速く抑えるという観点から、電池用セ
パレータには上記耐熱温度幅が広いことのみならず、S
D開始温度幅が狭いことが望まれる。
【0011】上述のSD開始温度等の特性の他に、基本
的な特性として、電池用セパレータには、電気抵抗が低
いこと、引張強度等の機械的強度が高いこと、及びフィ
ルム厚さムラや電気抵抗等の特性のバラツキが小さいこ
と等が要求される。
【0012】上記要求を満たすため、特開昭60−23
954号公報、特開平2−75151号公報において
は、ポリエチレン(以下、PEと略す)多孔質フィルム
又はポリプロピレン(以下、PPと略す)多孔質フィル
ムからなる電池用セパレータが開示されている。また、
特開平2−21559号公報においては、通常の分子量
を有するPEと高分子量PEとの混合物からなる多孔質
フィルムを電池用セパレータとして用いることが、特開
昭62−10857号公報及び特開昭63−30886
6号公報においては、材質の異なる多孔質フィルムを重
ね合わせて電池用セパレータとして用いることが開示さ
れている。更に、特開平5−331306号公報におい
てはPPとPEとを必須成分とする樹脂組成物からなる
多孔質シートを電池用セパレータとして用いることが開
示されている。
【0013】また、リチウム電池用セパレータとして用
いられる多孔質フィルムとしては、特公昭46−401
19号公報、特公昭55−32531号公報、米国特許
第3679538号明細書及び米国特許第380140
4号明細書においては、PPを高ドラフト比(フィルム
成形時におけるフィルムの引き取り速度をダイからの樹
脂の押出速度で除した値)でフィルム状に押出成形し、
これを熱処理した後、延伸して得られるPP多孔質フィ
ルムが、特公昭59−37292号公報においては、特
定の分子量、分子量分布を有するPE、無機微粉体及び
有機液状体の3成分を混合してフィルム状に成形した
後、無機微粉体および有機液状体を抽出し、次いで延伸
して得られるPE多孔質フィルムが、特開昭50−11
1174号公報においては、PPとPEとからなる二軸
配向させた多孔質フィルムが開示されている。また、特
開平3−277640号公報においては、通常の高密度
PE(分子量30万未満)と超高分子量PE(分子量8
0万以上)、無機微粉体及び有機液状体からなる多孔質
フィルムから有機液状体を抽出した後、該多孔質フィル
ムを電子線照射処理した多孔質フィルムが開示されてい
る。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特公昭46−
40119号公報、特公昭55−32531号公報、米
国特許第3679538号明細書及び米国特許第380
1404号明細書等に開示されたPP多孔質フィルムか
らなる電池用セパレータは、SD開始温度が170℃以
上と高いため、また、特開昭60−23954号公報、
特開平2−75151号公報、特公昭59−37292
号公報に開示されたPE多孔質フィルムからなる電池用
セパレータは、耐熱温度が140℃と低いため、何れも
安全性確保の点で不十分なものである。
【0015】また、特開平2−21559号公報に開示
された、通常の分子量のPEと高分子量のPEの混合物
からなる多孔質フィルムは、SD開始温度幅が広く、且
つ耐熱温度が約145℃と低いため、電池用セパレータ
としては安全性確保の点で不十分なものである。また、
特開平3−277640号公報に開示された多孔質フィ
ルムは鉛電池用セパレータとして酸化劣化を防止する性
能が開示されているのみで、電池用セパレータに必要な
SD特性及びその関連事項は全く開示されていない。
【0016】また、特開昭62−10857号公報及び
特開昭63−308866号公報に開示された、材質の
異なる多孔質フィルムを重ね合わせたセパレータでは、
SD特性の点では好ましい結果が得られると思われる
が、フィルムの重ね合わせにより各フィルムの微細孔位
置が互いにズレ、微細孔が表面から裏面に連通しなくな
るため電気抵抗が増加するという問題がある。また、重
ね合わせに際して接着剤を使用したときは、微孔の一部
が接着剤により閉塞され、このことによっても電気抵抗
が増加してしまう。更に、当然のことながら重ね合わせ
により厚さが増加し、電池の小型化、高エネルギー密度
化の要請に逆行することとなる。
【0017】また、特開平5−331306号公報及び
特開昭50−111174号公報に開示された、PPと
PEとからなる多孔質フィルムは、各々の樹脂組成物の
特性の差から、製造に際して、実生産規模での制御が困
難である。
【0018】従って、本発明の第1の目的は、機械的強
度に優れ、特に、電池用セパレータとして用いた場合
に、電気抵抗が低く且つ適当な所定のSD開始温度を有
すると共に、耐熱温度が高い、即ち耐熱温度幅が広く、
安全な多孔質フィルム及びその製造方法、及び該多孔質
フィルムからなる電池用セパレータ並びに該電池用セパ
レータを有する電池を提供することにある。
【0019】また、本発明の第2の目的は、上記第1の
目的に加えて、更に、電池用セパレータに要求される物
性である狭いSD開始温度幅を有する多孔質フィルム及
びその製造方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
した結果、特定の多孔質フィルムを放射線照射処理して
得られた多孔質フィルムが上記第1の目的を達成するこ
とを知見した。しかし、この多孔質フィルムは、SD開
始温度幅の点において改良の余地があるものであった。
そこで、本発明者らは、更に鋭意検討した結果、多孔質
フィルムの一表面から厚さ方向の所定の深さに亘る部分
(a)の溶融流動温度が他の部分(b)の溶融流動温度
より20℃以上高くなっている多孔質フィルムが上記第
1及び第2の目的を達成することを知見した。
【0021】本発明は、上記知見に基づいてなされたも
ので、結晶性ポリエチレンを必須成分とする組成物から
なる多孔質フィルムであって、該多孔質フィルムの一表
面から厚さ方向の所定の深さに亘る部分(a)の溶融流
動温度が他の部分(b)の溶融流動温度より20℃以上
高いことを特徴とする多孔質フィルムを提供するもので
ある。
【0022】また、本発明は、上記多孔質フィルムの好
ましい製造方法として、結晶性ポリエチレンを必須成分
とする組成物をシートに成形し、該シートをアニーリン
グした後、延伸処理して多孔質フィルムとし、次いで、
該多孔質フィルムをアニーリングした後、該多孔質フィ
ルムの一表面から厚さ方向の所定の深さに亘る部分を放
射線照射処理することを特徴とする多孔質フィルムの製
造方法を提供するものである。
【0023】更に、本発明は、上記多孔質フィルムから
なる、電池の正極及び負極間に介在されて使用される電
池用セパレータ及び該電池用セパレータを有する電池を
提供することにより上記目的を達成したものである。
【0024】以下、先ず、本発明の多孔質フィルムにつ
いて詳述する。本発明において用いられる結晶性PEと
しては、高密度PE、中密度PE、低密度PE、線状低
密度PE、エチレンとプロピレンとの共重合樹脂挙げら
れる。これらの中でも、特に、結晶性の高い、高密度P
Eが好ましく用いられ、中でもメルトインデックスが
0.05〜5(190℃/2.16kgでの測定値)の
高密度PEが好ましく用いられ、メルトインデックスが
0.1〜3である高密度PEが更に好ましく用いられ
る。
【0025】上記結晶性PEにはPPをブレンドして用
いることができる。PEにPPをブレンドして用いる場
合のPEとPPとのブレンド比は、用いられるPEの融
点等によって異なるが、PPの含量が70重量%以下で
あることが好ましく、50重量%以下であることが更に
好ましい。ブレンドされるPPのメルトインデックス
(230℃/2.16kgでの測定値)は0.1〜10
であることが好ましく、0.2〜5であることが更に好
ましい。また、上記結晶性PEを、アクリル酸、メタク
リル酸、及びそれらのメチルエステル及び酢酸ビニル等
の極性モノマーをグラフト共重合させる方法や界面活性
剤を含浸させる方法等により親水化処理して用いてもよ
い。
【0026】本発明の多孔質フィルムは、上記結晶性P
Eを必須成分とする組成物からなるもので、放射線照射
処理前の多孔質フィルムは、原料樹脂組成物から成形さ
れたシートを延伸することによって得られる。上記原料
樹脂組成物は、上記結晶性PEを必須成分とし、CaC
O3 、TiO2、SiO2等の無機充填材が配合されたものを用
いてもよい。上記無機充填剤の平均粒径は好ましくは
0.005〜1μm、更に好ましくは0.01〜0.5
μmである。
【0027】また、本発明の放射線照射処理前の多孔質
フィルムは、上記結晶性PEを必須成分とする原料組成
物に、溶媒に可溶な有機液状化合物又は固体化合物を混
練してシートを成形し、該シートから有機液状化合物又
は固体化合物を溶媒で抽出し、除去することによっても
得られる。上記有機液状化合物又は固体化合物として
は、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、プ
ロセスオイル等の鉱油、フタル酸ジオクチル、アジピン
酸ジデシル、リン酸トリブチル等のエステル化合物等が
挙げられる。本発明においては、上記有機化合物又は固
体化合物を単独で用いても、又は2種以上を混合して用
いてもよい。配合割合は上記結晶性PE100重量部に
対し、好ましくは1〜200重量部、更に好ましくは5
〜100重量部である。
【0028】上記結晶性PEを必須成分とする組成物に
は、所望により、界面活性剤、老化防止剤、可塑剤、難
燃剤、着色剤、相溶化剤等、通常、樹脂物性改良に用い
られる添加剤を適量含有してもよい。上記添加剤は、上
記組成物100重量部に対して、好ましくは0.05〜
5重量部用いることができる。
【0029】本発明の多孔質フィルムの厚みは、一般に
10〜50μmであることが好ましく、20〜40μm
であることが更に好ましい。多孔質フィルムの厚みが5
0μmを超えるとセパレータ自身の占有体積が増え電池
の単位容積当たりの電池容量(性能)が劣る。また、1
0μm未満であると異常昇温時のSD性能に欠け、ま
た、膜強度不足から電池組立加工性に劣る。
【0030】本発明の多孔質フィルムは、通電時の電気
抵抗、微粒子透過阻止性能の観点から、その各孔の孔部
が、好ましくは直径0.05〜2μmの透過気孔よりな
るものであり、更に好ましい直径は0.2〜0.8μm
である。また、本発明の多孔質フィルムは、気孔率は3
0〜70%、好ましくは35〜55%である。気孔率の
測定は、膜全体の容積、膜の重量、樹脂組成物の密度測
定から次式により算出した。 気孔率=空孔容積/膜全体の容積×100 空孔容積=(膜全体の容積─膜重量)/樹脂組成物の密
【0031】而して、本発明の多孔質フィルムは、上記
結晶性PEを必須成分とする組成物からなる多孔質フィ
ルムであって、該多孔質フィルムの一表面から厚さ方向
の所定の深さに亘る部分(a)の溶融流動温度を他の部
分(b)の溶融流動温度より20℃以上高くしたもので
ある。上記部分(a)の溶融流動温度と上記部分(b)
の溶融流動温度の差が20℃未満であると耐熱温度幅が
小さく、且つSD開始温度幅が広くなる。上記所定の深
さは、上記部分(a)の厚さa’と上記部分(b)の厚
さb’との比a’/b’が、1/3〜3/1となる深さ
が好ましく、1/2〜2/1となる深さが更に好まし
い。a’/b’が1/3より小さくなると耐熱温度幅が
小さくなり、3/1を超えるとSD開始温度幅が広くな
る。また、本発明の多孔質フィルムにおいては、上記部
分(a)が、フィルムの全面を覆っているものであるこ
とが耐熱温度幅を大きくし、安全性向上の観点から好ま
しい。
【0032】上記部分(a)の溶融流動温度を上記部分
(b)の溶融流動温度より20℃以上高くする方法に特
に制限はないが、例えば、多孔質フィルムの一表面から
厚さ方向の所定の深さに亘る部分を放射線照射処理する
方法が挙げられる。尚、放射線照射処理に使用する放射
線については、後述する「製造方法」の説明において詳
述する。
【0033】また、本発明の多孔質フィルムは、その耐
熱温度幅が好ましくは20℃以上、更に好ましくは30
℃以上である。耐熱温度幅が20℃未満であると、電池
用セパレータとして用いた場合に安全性の確保が不十分
となる。
【0034】また、本発明の多孔質フィルムは、そのS
D開始温度が好ましくは110〜140℃であり、更に
好ましくは120〜130℃である。SD開始温度が1
10℃未満であると、電池用セパレータとして用いた場
合に電池内部の僅かな温度上昇で電気抵抗が増大し、電
池反応が遮断されてしまい実用性に乏しい。また、14
0℃を超えると、電池用セパレータとしての安全性に不
十分であるので、上記範囲内であるのが好ましい。
【0035】また、本発明の多孔質フィルムは、その耐
熱温度幅が20℃以上となるためには、その耐熱温度は
好ましくはSD開始温度+20℃以上であり、更に好ま
しくはSD開始温度+30℃以上である。例えば、SD
開始温度が130℃の多孔性フィルムの耐熱温度は好ま
しくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上であ
る。
【0036】本発明の多孔質フィルムは、電池用セパレ
ータとして好適である他、分離膜、建築用通気性フィル
ム、医療用通気性フィルム、衣料用通気性フィルム及び
食品用通気性フィルム等として用いることができる。
【0037】次に、本発明の多孔質フィルムの好ましい
製造方法である本発明の多孔質フィルムの製造方法につ
いて説明する。本発明の多孔質フィルムの製造方法は、
結晶性PEを必須成分とする組成物をシートに成形し、
該シートをアニーリングした後、延伸処理して多孔質フ
ィルムとし、次いで、該多孔質フィルムをアニーリング
した後、該多孔質フィルムに、その一表面から厚さ方向
の所定の深さに亘る部分を放射線照射処理することから
なる。
【0038】本発明の多孔質フィルムの製造方法におい
て本発明の多孔質フィルムを製造するには、先ず、上記
結晶性PEを必須成分とする組成物をシートに成形す
る。上記シートを成形するには、上記結晶性PEを必須
成分とする組成物を、従来から熱可塑性樹脂のシート成
形法として知られているインフレーション法、Tダイ法
等により実施することができる。例えば、上記組成物を
二軸押出機、ニーダー、ロール、バンバリーミキサー等
により溶融混練し、次いで、インフレーション成形、T
ダイ成形等により溶融成形してフィルム状物として得る
ことができるが、かかる方法に制限されない。成形条
件、例えば、ドラフト比は好ましくは20以上、更に好
ましくは50以上であり、フィルム引き取り速度は好ま
しくは5〜200m/min、更に好ましくは10〜1
00m/minである。また、成形温度は好ましくは1
50〜270℃、更に好ましくは180〜240℃であ
る。尚、上記ドラフト比とは、下記の式で表される値を
いう。 ドラフト比=フィルム引き取り速度/ダイから押し出さ
れる樹脂の線速度
【0039】次いで、上記成形されたシートを、アニー
リング(熱処理)する(このアニーリングを、以下「第
1アニーリング」という)。この第1アニーリングを施
すことにより、後に行われる延伸工程での微細孔の形成
が促進され、気孔率の高い多孔質フィルムを得ることが
できる。
【0040】上記第1アニーリングは、従来公知のいか
なる方法によっても実施することができ、例えば、加熱
されたロールや金属板にシートを接触させる方法、シー
トを空気や不活性ガス中で加熱する方法やシートを芯体
上に巻取り、これを気相中で加熱する方法等が採用でき
る。
【0041】上記第1アニーリングの条件(温度/時
間)は、用いられる結晶性PEの種類によって異なる
が、温度は好ましくは80〜140℃であり、時間は好
ましくは10秒〜10時間である。また、結晶性PEと
して、高密度PEを使用する場合のアニーリングの条件
は、温度は好ましくは100〜140℃であり、時間は
好ましくは10秒〜10時間である。
【0042】次いで、上記第1アニーリングされたシー
トを延伸処理して多孔質フィルムとする。延伸方法は特
に制限されず、従来から知られているロール式延伸法、
テンター式延伸法等により実施することができる。延伸
条件(延伸温度/延伸倍率)は用いられる結晶性PE及
び目標空隙率等によって異なるが、延伸温度は好ましく
は50〜120℃であり、延伸倍率は好ましくは30〜
600%である。また、結晶性PEとして、高密度PE
を使用する場合の延伸の条件は、延伸温度は好ましくは
50〜120℃であり、延伸倍率は好ましくは30〜6
00%である。
【0043】次いで、上記多孔質フィルムを更にアニー
リングする(このアニーリングを、以下「第2アニーリ
ング」という)。第2アニーリングの温度は上記延伸温
度〜用いられる結晶性PEの融点より5℃以上低く、延
伸温度より5℃以上高い温度が好ましい。延伸後の第2
アニーリングによって、多孔質フィルムの長さが第2ア
ニーリング前の多孔質フィルムの長さの10〜30%減
少するよう張力を制御しながら行うのが好ましい。
【0044】次いで、上記多孔質フィルムの一表面から
厚さ方向の所定の深さに亘る部分を放射線照射処理する
ことにより結晶性PEを架橋させ、該放射線照射処理さ
れた部分(a)の溶融流動温度を他の部分(b)の溶融
流動温度より20℃以上高くする。上記放射線として
は、坂本良憲著「実務者のための電子線加工(新高分子
文庫27) 、(株)高分子刊行会発行(1989.2.10)」の1
頁の図1に記載されている放射線が挙げられ、その中で
も工業的に主として使用されている、電子線及びガンマ
線が好ましく用いられる。また、同書には放射線の取扱
が詳細に説明されている。
【0045】本発明の多孔質フィルムの製造方法におい
ては、上述したように、多孔質フィルムの一表面から厚
さ方向の所定の深さに亘る部分を放射線照射処理する。
多孔質フィルムの一表面から厚さ方向の所定の深さに亘
る部分を放射線照射処理する方法に特に制限はないが、
例えば、遮蔽板を用いてフィルム厚さ方向の一部を遮蔽
し、多孔質フィルムの厚さ方向の一部に放射線が照射さ
れない部分を形成して放射線を照射する方法が挙げられ
る。
【0046】上記製造方法における、遮蔽板を用いてフ
ィルム厚さ方向の一部を遮蔽して放射線照射処理する方
法について〔図1〕を参照して更に詳述する。ここで、
〔図1〕は、本発明の多孔質フィルムの製造方法におい
て多孔質フィルムの厚さ方向の一部を遮蔽して放射線照
射処理するための装置10の一例を示す概略図である。
【0047】本発明の多孔質フィルムの製造方法におい
て、多孔質フィルム14の厚さ方向の一部を遮蔽して放
射線照射処理するには、多孔質フィルム14をロール1
5を動転することにより矢印方向に搬送しながら、放射
線18を多孔質フィルムに照射する。該照射をする際
に、多孔質フィルム14と放射線発生装置16との間
に、多孔質フィルム14の厚さ方向の一部を遮蔽するよ
うに遮蔽板12を配置することにより、多孔質フィルム
14の厚さ方向の一部が放射線照射処理部14”、即ち
上記部分(a)となり、また、残部が放射線非照射部1
4’、即ち上記部分(b)となる。
【0048】また、上記装置10においては、放射線照
射処理部14”の厚さと放射線非照射部14’の厚さと
の比を変動させることができるように、遮蔽板12の位
置を放射線照射方向に対して水平方向に微調整できるよ
うになっている。
【0049】尚、〔図2〕に、多孔質フィルムの全面を
放射線照射処理するための装置20の一例を示す概念図
を示す。この方法では、多孔質フィルム24を矢印方向
に搬送しながら、該多孔質フィルム24を放射線発生装
置26から照射される放射線28で処理する。この方法
によれば、多孔質フィルム24は架橋処理され、多孔質
フィルムは放射線照射処理部24”を有するものとなる
が、多孔質フィルム24の一表面から厚さ方向の所定の
深さに亘る部分(a)のみを架橋することが困難であ
り、特に電池用セパレータのように薄いフィルム(50
μm以下)では不可能である。従って、多孔質フィルム
の一表面から厚さ方向の所定の深さに亘る部分(a)の
溶融流動温度を他の部分(b)の溶融流動温度より20
℃以上高くすることは困難であった。本発明の多孔質フ
ィルムの製造方法によれば、容易に多孔質フィルムの一
表面から厚さ方向の所定の深さの部分(a)の溶融流動
温度を他の部分(b)の溶融流動温度より20℃以上高
くすることができる。
【0050】上記放射線の照射量は、好ましくは5〜4
0Mrad、更に好ましくは10〜30Mradであ
る。照射量が40Mradを超えると多孔質フィルムの
機械強度が弱く(脆く)なり、電池の組立加工性、使用
時の耐衝撃性が劣る。5Mrad未満であると耐熱温度
幅が20℃に達しないので、上記範囲内とするのが好ま
しい。また、放射線の照射量が10Mradを超える場
合は、複数回に分けて照射するのが好ましい。このと
き、例えば、30Mradとは、10Mradの放射線
を3回照射することをいう。
【0051】例えば、高密度PEからなる多孔質フィル
ムに20Mradの電子線を照射した場合は、室温にお
いて有機電解液中で測定した電気抵抗は1枚当り5Ω・
cm 2 以下と低く、且つ、130〜170℃において、
その電気抵抗値が最初の室温における抵抗値より数十倍
〜数百倍以上に急上昇し、1枚当りの電気抵抗値が20
0Ω・cm2 以上となり、電池用セパレータとして使用
した場合にSD特性に優れたものとなる。また、上記結
晶性PEを必須成分とする組成物からなる多孔質フィル
ムの一表面から厚さ方向の一部に電子線を照射すること
により、増大した電気抵抗はSD開始温度より少なくと
も20℃高い温度まで維持され、即ち20℃以上の耐熱
温度幅を有することが確認された。また、該多孔質フィ
ルムのSD開始温度幅が狭くなっていることも確認され
た。
【0052】本発明の多孔質フィルムの製造方法は、本
発明の多孔質フィルムの製造方法として好適である。ま
た、本発明の多孔質フィルムのフィルムの製造方法の一
部である「フィルムの一表面から厚さ方向の所定の深さ
に亘る部分を放射線照射処理する方法」は、多孔質フィ
ルムに限らず非孔質フィルムの製造にも適用可能であ
る。
【0053】次に、本発明の電池用セパレータについて
説明する。本発明の電池用セパレータは、本発明の多孔
質フィルムからなり、電池の正極及び負極間に介在され
て使用されるものである。上記電池用セパレータは多孔
質構造を有する点では、前記従来のPE多孔質フィルム
又はPP多孔質フィルムからなる電池用セパレータと共
通するが、SD機能の発現機構はこれらとは異なるもの
である。
【0054】上記従来の電池用セパレータでは、電池の
内部温度が電池用セパレータを構成する成分の軟化点又
は融点に達すると溶融現象により多孔質構造が無孔質構
造に変化し、電気抵抗値の増大により電流が遮断される
ものである。従って、そのSD特性は電池用セパレータ
を構成する成分の軟化点又は融点に依存することにな
る。それ故に、PE多孔質フィルム製の電池用セパレー
タは耐熱温度が低く、一方、PP多孔質フィルム製の電
池用セパレータはSD開始温度が高く、且つ耐熱温度と
接近していて耐熱温度幅が狭く、この点からも安全性に
懸念があった。
【0055】しかし、本発明の多孔質フィルムからなる
電池用セパレータは、電池内部の温度が上昇してPEの
軟化点又は融点に達すると電池用セパレータを構成する
多孔質フィルムの孔部が閉塞し、電気抵抗が増大し、電
流は遮断されるが、電池用セパレータの膜形状は維持さ
れるので、充分な耐熱温度を示すのである。
【0056】即ち、結晶性PEを必須成分とする組成物
からなる多孔質フィルムは放射線照射処理されることに
より、融点又は軟化温度が殆んど変わらず、溶融流動温
度のみが上昇するため、該多孔質フィルムからなる電池
用セパレータは、PEの有する低いSD開始温度を有し
ながら高い耐熱温度を呈すし、更にSD開始温度幅が小
さいため、安全性に富むものである。このように、1つ
の素材からなる多孔質フィルムに2つの機能を共有させ
ることにより、優れた実用性を発揮するようにした点
は、従来品と全く異なるものである。
【0057】次に、本発明の電池である円筒形電池につ
いて、〔図3〕を参照して詳細に説明する。尚、ここで
は、本発明の電池用セパレータを有する本発明の円筒形
電池3を例示して説明するが、この他に、角形電池や円
板型(ボタン型)電池等にも適用することができる。本
発明の電池である〔図3〕に示す円筒形電池3は、シー
ト状の正極板32とシート状の負極板33との間に本発
明の電池用セパレータ34が介在されて使用されてお
り、それらが渦巻き状に巻かれ、金属製の外装缶36に
収納され、電解液が注入されると共に上部を安全弁を装
着した封口板38で封口した構造となっている。
【0058】上記電池用セパレータ34は正極板32と
負極板33とを分離しており、また、上記電池用セパレ
ータ34は本発明の多孔質フィルムであるため、電解質
イオンを透過させる機能を有している。また、本発明の
多孔質フィルムは、適当なSD開始温度を有し、耐熱温
度が高く、且つ耐熱温度幅が広いので、円筒形電池3の
内部温度が一定の温度に達すると、電池用セパレータ3
4の孔が閉じて電流を遮断するようになっており、内部
短絡、過充填等の際の安全性が確保される。
【0059】上述したように、本発明の電池は、本発明
の電池用セパレータが電池の正極と負極との間に介在さ
れて使用されている。この際、本発明の電池の正極、負
極、電池ケース及び電解液等の材質や構成要素等の配置
構造は何ら格別である必要はなく、従来の電池と同様の
ものである。
【0060】
【実施例】本発明を以下の実施例を用いて更に具体的に
説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるもので
はない。
【0061】〔実施例1〕見かけ密度0.960、メル
トインデックス0.11の高密度PE100重量部、平
均粒径0.01μmのSiO22重量部からなる組成物を、
ダイ径200mm、スリットギャップ1mmのインフレ
ーション成形ダイを備えたインフレーション成形機を用
い、シートに成形した。成形操作は、樹脂温度が240
℃、ブロー比が1.0、及びドラフト比が140になる
ようバブル内の空気圧を調整しながらダイス上5cmの
位置から空気を吹き付けて冷却し、フロストラインを3
00mmに保ちながら35m/minでフィルムを引き
取り、シートを成形した。得られたシートは、厚さが2
4μmであった。得られたシートを無張力下に100℃
で30分間アニーリング(熱処理)を行い、次いで、こ
のシートをロール延伸機(径500mmの予熱ロール、
径50mmの延伸ロール、径500mmのアニーリング
ロール、更に同径の冷却ロールを各々2本1組を備えた
ロール幅700mmの延伸機)を用い、予熱ロール温度
80℃、延伸ロール温度70℃にて3.0倍に延伸し、
多孔質フィルムを得た。尚、未延伸のシートの送り速度
は5m/minで行なった。次いで、該多孔質フィルム
を110℃に加熱したアニーリングロールにて10%収
縮させ、最終延伸倍率2.7倍の多孔質フィルムを得
た。
【0062】得られた多孔質フィルムの開孔を走査型電
子顕微鏡(SEM)により表面観察を行なった。得られ
た多孔質フィルムの表面の最大の孔(楕円形)は、短径
が0.1μmであり、長径が0.3μmであった。ま
た、得られた多孔質フィルムの気孔率は41%であり、
厚みは20μmであり、外観上のムラもない良好なもの
であった。更に、得られた多孔質フィルムの延伸方向の
引張弾性率は4850kg/cm2 であり、室温におけ
る電気抵抗は2.3Ω・cm2 であった。
【0063】次いで、得られた多孔質フィルムの一表面
から厚さ方向の所定の深さに亘る部分を10Mradの
電子線で照射処理した。電子線照射処理は、上記多孔質
フィルム(厚さ20μm)を2枚重ね、〔図1〕に示す
遮蔽板及びロール(ロール幅は150mm、遮蔽板は水
冷出来る構造で電子線照射方向に対して水平方向に微小
可変調節できる構造からなる)を有する装置にて、クリ
アランス(電子線の照射方向に対して垂直方向)を20
μm、搬送速度を6m/分とし、日新ハイボルテージ
(株)製、CURETRON EBC−200−20−
15を用い、窒素気流中、印加電圧150kv、電流
7.6mAで照射を行ない、本発明の多孔質フィルムを
得た。
【0064】得られた多孔質フィルムの溶融流動温度を
下記の通り測定した。島津製作所(株)製、フローテス
ターCFT−500Cにより、Φ1mm×1mmのダイ
を用い、100kgf/cm2 の圧力下、6℃/分の割
合で昇温させ、温度/吐出量曲線の接線とベースライン
との交点を溶融流動温度とした。尚、溶融流動温度は、
電子線を照射した部分及び照射していない部分について
測定した。測定結果を〔表1〕に示す。
【0065】〔実施例2〕電子線の照射を20Mrad
とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔質
フィルムを得た。尚、20Mradの電子線照射処理
は、実施例1における電子線照射処理を2回繰り返すこ
とにより行った。得られた多孔質フィルムの溶融流動温
度の測定を実施例1と同様に行った。その結果を〔表
1〕に示す。
【0066】〔実施例3〕電子線の照射を30Mrad
とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔質
フィルムを得た。尚、30Mradの電子線照射処理
は、実施例1における電子線照射処理を3回繰り返すこ
とにより行った。得られた多孔質フィルムの溶融流動温
度の測定を実施例1と同様に行った。その結果を〔表
1〕に示す。
【0067】〔比較例1〕実施例1の多孔質フィルムを
電子線照射処理する前の多孔質フィルムの溶融流動温度
の測定を実施例1と同様に行った。その結果を〔表1〕
に示す。
【0068】
【表1】
【0069】〔実施例4〕実施例1の多孔質フィルムを
電子線照射処理する前の多孔質フィルムの一表面から厚
さ方向の所定の深さに亘る部分を10Mradの電子線
で処理し、本発明の多孔質フィルムを得た。電子線照射
処理は、〔図1〕の装置にて、クリアランスを10μm
とした以外は実施例1と同様に行った。
【0070】得られた多孔質フィルムについて、下記
〔多孔質フィルムの評価基準〕に従って、それぞれ評価
を行なった。引張弾性率及び軟化温度の測定結果を下記
〔表2〕に示し、SD特性の結果を〔図4〕に示した。
〔表2〕及び〔図4〕から明らかなように、得られた多
孔質フィルムは、引張弾性率が高く、20℃以上の耐熱
温度幅を有し、且つSD開始温度幅が狭いものである。
【0071】〔多孔質フィルムの評価基準〕 (1)引張弾性率;ASTM−D−882に準拠し、延
伸方向にテンシロン引張試験機にて測定した。 (2)軟化温度;延伸方向を長さ方向とし、幅2cm長
さ5cmの試験用フィルムを作製し、長さの短い方の二
辺を、それぞれ重さ3.2gのクランプで挟み、ギヤオ
ーブン中に吊り下げた。ギヤオーブンを10℃/分の割
合で昇温し、フィルムが溶融して切断した時のオーブン
の温度を軟化温度とした。
【0072】(3)SD特性;多孔質フィルムの引張方
向の長さが一定になるように2辺を固定し、これを所定
の温度に保温した空気恒温槽に入れ、5分間放置した後
取り出し、室温においてその電気抵抗を測定し、電気抵
抗と温度との関係をグラフに表し、このグラフからSD
特性を評価した。尚、電気抵抗の測定はJIS C 2
313に準じて行った。即ち、電解液としてプロピレン
カーボネート及び1,2−ジメトキシエタンを同容量づ
つ混合した溶液に、電解質として無水過塩素酸リチウム
を1mol/lの濃度になるように溶解したものを用
い、国洋電気工業(株)製の抵抗計、LCRメーターK
C−532により1KHzの交流抵抗を測定し、下記式
により多孔質フィルムの電気抵抗R(Ω・cm2 )を算
出した。 R=(R1 −R0 )×S 上記式において、R0 、R1 及びSは、下記のものを示
す。 R0 ;電解液の電気抵抗(Ω) R1 ;電解液中に多孔質フィルムを浸漬した状態で測定
した電気抵抗(Ω) S ;多孔質フィルムの断面積(cm2 ) 〔註〕本実施例において使用した電気抵抗測定セルは若
干の漏れ電流があるため、完全に無孔のフィルムにおい
ても、最大で600Ω・cm2 程度の電気抵抗しか測定
することができなかった。
【0073】〔実施例5〕電子線の照射を20Mrad
とした以外は、実施例4と同様にして、本発明の多孔質
フィルムを得た。尚、20Mradの電子線照射処理
は、実施例4における電子線照射処理を2回繰り返すこ
とにより行なった。得られた多孔質フィルムの評価を実
施例4と同様に行なった。その結果を下記〔表2〕及び
〔図5〕に示す。〔表2〕及び〔図5〕から明らかなよ
うに、得られた多孔質フィルムは、引張弾性率が高く、
20℃以上の耐熱温度幅を有し、且つSD開始温度幅が
狭いものである。
【0074】〔実施例6〕電子線の照射を30Mrad
とした以外は、実施例4と同様にして、本発明の多孔質
フィルムを得た。尚、30Mradの電子線照射処理
は、実施例4における電子線照射処理を3回繰り返すこ
とにより行なった。得られた多孔質フィルムの評価を実
施例4と同様に行なった。その結果を〔表2〕及び〔図
6〕に示す。〔表2〕及び〔図6〕から明らかなよう
に、得られた多孔質フィルムは、引張弾性率が高く、2
0℃以上の耐熱温度幅を有し、且つSD開始温度幅が狭
いものである。
【0075】〔比較例2〕実施例1の多孔質フィルムを
電子線照射処理する前の多孔質フィルムについて実施例
4と同様に評価を行なった。その結果を下記〔表2〕及
び〔図7〕に示す。
【0076】〔比較例3〕高密度PEを、メルトインデ
ックス0.4のPPのアイソタクチックホモポリマーと
した以外は実施例1と同様にして多孔質フィルムを得
た。得られた多孔質フィルムの表面の最大の孔(楕円
形)は短径が0.1μm、長径が0.3μmで気孔率は
45%であった。得られた多孔質フィルムを電子線照射
処理しないで、実施例4と同様に評価を行った。その結
果を下記〔表2〕及び〔図8〕に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
【発明の効果】本発明の多孔質フィルムは、機械的強度
に優れ、特に、電池用セパレータとして用いた場合に、
電気抵抗が低く且つ適当なSD開始温度を有すると共
に、耐熱温度が高く、耐熱温度幅が広く、且つSD開始
温度幅が狭く、安全な多孔質フィルムであり、従って、
特に、電池用セパレータとして有用性の高いものであ
る。そして、この多孔質フィルムは、本発明の多孔質フ
ィルムの製造方法により容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の多孔質フィルムの製造方法に
おける放射線照射処理をするための装置の一例を示す概
略図である。
【図2】図2は、従来の、多孔質フィルムの放射線照射
処理をするための装置の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の電池である、円筒形電池を示
す一部分解斜視図である。
【図4】図4は、実施例1の多孔質フィルムのSD特性
を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例2の多孔質フィルムのSD特性
を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例3の多孔質フィルムのSD特性
を示すグラフである。
【図7】図7は、比較例2の多孔質フィルムのSD特性
を示すグラフである。
【図8】図8は、比較例3の多孔質フィルムのSD特性
を示すグラフである。
【符号の説明】
10 多孔質フィルムの一表面から厚さ方向の所定の深
さに亘る部分を放射線照射処理する装置 12 遮蔽板 14 多孔質フィルム 15 ロール 16 放射線発生装置 18 放射線 30 円筒形電池 32 正極板 33 負極板 34 電池用セパレータ 36 外装缶 38 封口板

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶性ポリエチレンを必須成分とする組
    成物からなる多孔質フィルムであって、該多孔質フィル
    ムの一表面から厚さ方向の所定の深さに亘る部分(a)
    の溶融流動温度が他の部分(b)の溶融流動温度より2
    0℃以上高いことを特徴とする多孔質フィルム。
  2. 【請求項2】 各孔の孔部が、直径0.05〜2μmの
    透過気孔よりなり、気孔率が30〜70%である請求項
    1記載の多孔質フィルム。
  3. 【請求項3】 上記部分(a)が、フィルムの全面を覆
    っている請求項1又は2記載の多孔質フィルム。
  4. 【請求項4】 上記部分(a)が、放射線照射処理され
    ることにより形成されている請求項1〜3の何れかに記
    載の多孔質フィルム。
  5. 【請求項5】 上記放射線が電子線である請求項1〜4
    の何れかに記載の多孔質フィルム。
  6. 【請求項6】 結晶性ポリエチレンを必須成分とする組
    成物をシートに成形し、該シートをアニーリングした
    後、延伸処理して多孔質フィルムとし、次いで、該多孔
    質フィルムをアニーリングした後、該多孔質フィルムの
    一表面から厚さ方向の所定の深さに亘る部分を放射線照
    射処理することを特徴とする多孔質フィルムの製造方
    法。
  7. 【請求項7】 上記放射線照射処理が、遮蔽板を用いて
    フィルム厚さ方向の一部を遮蔽して行われる請求項6記
    載の多孔質フィルムの製造方法。
  8. 【請求項8】 上記放射線が電子線である請求項6又は
    7記載の多孔質フィルムの製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜5の何れかに記載の多孔質フ
    ィルムからなる、電池の正極及び負極間に介在されて使
    用される電池用セパレータ。
  10. 【請求項10】 請求項9記載の電池用セパレータを有
    する電池。
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