JPH09124398A - 化合物半導体の結晶成長方法および結晶成長装置 - Google Patents

化合物半導体の結晶成長方法および結晶成長装置

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JPH09124398A
JPH09124398A JP28312695A JP28312695A JPH09124398A JP H09124398 A JPH09124398 A JP H09124398A JP 28312695 A JP28312695 A JP 28312695A JP 28312695 A JP28312695 A JP 28312695A JP H09124398 A JPH09124398 A JP H09124398A
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crystal
seed
seed crystal
heat sink
solvent
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JP28312695A
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Shiyoutarou Tomita
尚太郎 富田
Hiroyuki Kato
裕幸 加藤
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Stanley Electric Co Ltd
Original Assignee
Stanley Electric Co Ltd
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  • Liquid Deposition Of Substances Of Which Semiconductor Devices Are Composed (AREA)
  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インクルージュンの混入がなく、結晶性のよ
いII−VI族化合物半導体結晶の成長が可能な溶液結
晶成長技術を提供する。 【解決手段】 成長すべきII−VI族化合物半導体結
晶の一つの構成元素を含む下地部材とシード結晶を、ヒ
ートシンクの上面に、前記下地部材がヒートシンク側に
なるように載置する工程と、前記シード結晶の最上面よ
りも下方において前記シード結晶に外的作用を及ぼし、
前記シード結晶の位置を前記ヒートシンクの上面上に拘
束する工程と、前記シード結晶の上面に、前記成長すべ
きII−VI族化合物半導体結晶を構成する元素のう
ち、前記一つの構成元素とは異なる構成元素を含む溶媒
を接触させ、溶媒の上下に温度差を形成し、高温部にソ
ース結晶を配置して前記シード結晶上に結晶を成長させ
る工程とを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は溶液結晶成長に関す
る。蒸気圧の高い化合物半導体、特にII−VI族化合
物半導体のバルク結晶成長技術として、成長温度を低下
できる溶液結晶成長が期待されている。
【0002】
【従来の技術】II−VI族化合物半導体は高い融点を
有し、さらに構成元素の蒸気圧が高い。従って融液成長
では結晶成長容器に高い耐圧性が必要となるばかりでな
く、成長した結晶に高密度の結晶欠陥が生じ易い。
【0003】溶液成長を利用すると、II−VI族化合
物半導体の結晶成長温度を低下させることが可能とな
り、良質の結晶を得られる可能性がある。溶媒としては
II−VI族化合物半導体の構成元素であるII族元素
やVI族元素を用いる方法が提案されている。
【0004】図7に、特開平7−187875号に開示
されたII−VI族化合物半導体の溶液成長による結晶
成長装置の構成例を示す。図中左側に結晶成長装置を断
面で示し、右側に結晶成長装置内に設定される温度分布
をグラフで示す。以下、この結晶成長装置を用いてZn
Seを成長させる場合を説明する。
【0005】2種類の適当な径を有する石英管を接続し
て結晶成長容器51が形成されている。なお、初めは上
端を開放しておく。結晶成長容器51内の下部にはカー
ボン等の熱伝導率のよい材料で構成したヒートシンク5
6が配置されている。ヒートシンク56は、結晶成長容
器51に固定されている。
【0006】図8は、ヒートシンク56の上面近傍の拡
大断面図を示す。ヒートシンク56の上面に形成された
凹部60の底面上にZn板59が載置され、その上にシ
ード結晶55が載置されている。その上から適当な長さ
のヒートシンクと同じ外径を有した円筒状のシード止め
54が挿入され、結晶成長容器51に固定されている。
シード止め54の下端に内部に張り出した突出部が形成
されており、この突出部によってシード結晶55がヒー
トシンク56の上面に押しつけられて固定される。
【0007】図7に戻って、結晶成長容器51に溶媒5
3としてSe−Te(所定混合比のSeとTe)、ソー
ス結晶52としてZnSe多結晶を挿入する。なお、Z
nSe結晶成長の溶媒としてSeのみを用いるとZnS
eの溶解度が低い。Se−Teを用いるのは、Teを添
加して溶解度を増大させるためである。ソース結晶5
2、溶媒53を投入した後、結晶成長容器51内を真空
排気し、開放部を封止する。
【0008】このように準備した結晶成長アンプルを、
倒立または斜めに倒して加熱し、まず溶媒を溶融させ、
次にソース結晶を溶媒中に飽和溶解度まで溶解させる。
次に、図7右側に示すような温度勾配を設定した外熱型
の電気炉中に配置する。外熱型電気炉は炉心管57の周
囲にヒータ線58を巻いて構成され、炉心管57の内部
に結晶成長容器51を収容するための縦型空間が形成さ
れている。
【0009】炉心管57の内部には、図中右側に示すよ
うに、上部で高く、下部で低くなる縦方向の温度分布が
設定される。ソース結晶52が配置される位置の温度を
Ts、結晶成長が生じるシード結晶55表面の位置の温
度がTgで示されている。Ts>Tgである。
【0010】このような温度分布内に結晶成長容器51
が配置されると、高温部のソース結晶52は、高温部で
の飽和溶解度まで溶媒53に溶解する。なお、高温での
飽和溶解度は低温での飽和溶解度よりも高い。溶媒53
中に溶解したソース結晶成分は、拡散によって低温部に
も移動し、低温部の溶液を過飽和状態にする。
【0011】シード結晶55が低温部に配置され、過飽
和溶液と接触することにより、シード結晶55上に結晶
成長が生じる。このようにして、シード結晶55上にバ
ルク状の単結晶を成長させる。
【0012】シード結晶55の下に回り込んだ溶媒は、
Zn板59と反応する。このため、シード結晶55が、
その下方に回り込んだ溶媒中に溶解しにくくなり、シー
ド結晶の下面からのインクルージュンの混入を防止する
ことができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】図8に示す従来例にお
いては、Znの熱膨張係数が石英のそれよりも大きいた
め、Zn板59の熱膨張によってシード結晶55に欠陥
が発生する。この欠陥が結晶成長に影響を及ぼし、結晶
性の良い成長結晶を得ることが困難になる。シード結晶
55の厚さを厚くすれば、Zn板59の熱膨張による影
響を低減することができるが、このためには凹部60の
深さを深くする必要がある。凹部60を深くすると横方
向の温度勾配が形成されるため、シード結晶55の側面
からインクルージョンが混入し易くなる。
【0014】本発明の目的は、インクルージュンの混入
がなく、結晶性のよいII−VI族化合物半導体結晶の
成長が可能な溶液結晶成長技術を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の一観点による
と、成長すべきII−VI族化合物半導体結晶の一つの
構成元素を含む下地部材とシード結晶を、ヒートシンク
の上面に、前記下地部材がヒートシンク側になるように
載置する工程と、前記シード結晶の最上面よりも下方に
おいて前記シード結晶に外的作用を及ぼし、前記シード
結晶の位置を前記ヒートシンクの上面上に拘束する工程
と、前記シード結晶の上面に、前記成長すべきII−V
I族化合物半導体結晶を構成する元素のうち、前記一つ
の構成元素とは異なる構成元素を含む溶媒を接触させ、
溶媒の上下に温度差を形成し、高温部にソース結晶を配
置して前記シード結晶上に結晶を成長させる工程とを含
む溶液結晶成長方法が提供される。
【0016】溶媒がシード結晶の下面に回り込んだ場
合、この溶媒が下地基板と反応する。このため、回り込
んだ溶媒中へのシード結晶の溶解を抑制できる。シード
結晶の位置を拘束するために、シード結晶の最上面より
も下方においてシード結晶に外的作用を及ぼしている。
このため、シード結晶中の作用部位近傍に欠陥が発生し
ても、この欠陥がシード結晶の上面へ波及しにくい。シ
ード結晶上面に欠陥が生じにくいため、良質の結晶を成
長させることができる。
【0017】本発明の他の観点によると、前記シード結
晶が、その側面に形成された段差を有し、前記シード結
晶の位置を拘束する工程が、前記段差にシード止め部材
の一部を係合させ、前記シード結晶の位置を拘束する工
程を含む溶液結晶成長方法が提供される。
【0018】シード結晶の側面に形成された段差にシー
ド止めを係合させることにより、シード結晶の位置を拘
束することができる。本発明の他の観点によると、前記
シード結晶が、円柱状形状の結晶の上面から下方に中心
軸に平行に一部の厚さ部分を切り欠いた切り欠き部を有
する形状を有し、前記シード止め部材が、前記切り欠き
部により形成された段差に係合する溶液結晶成長方法が
提供される。
【0019】本発明の他の観点によると、前記シード結
晶の位置を拘束する工程が、前記シード止め部材の下面
の一部を前記段差面に係合させ、該下面の他の部分を前
記段差面とほぼ同じ高さの上面を有する他の部材の該上
面に接触させる溶液結晶成長方法が提供される。
【0020】シード止め部材の下面が、シード結晶と他
の部材の双方に作用するため、シード結晶に加わる力を
緩和することができる。シード止め部材によってシード
結晶に加わる応力が低減するため、より良好な結晶を成
長させることが可能になる。
【0021】本発明の他の観点によると、前記載置する
工程が、前記下地部材を前記ヒートシンクの上面に載置
する工程と、前記シード結晶を、前記下地部材の上に載
置する工程とを含む溶液結晶成長方法が提供される。
【0022】本発明の他の観点によると、前記下地部材
が、前記シード結晶の下面に形成された薄膜である溶液
結晶成長方法が提供される。本発明の他の観点による
と、前記結晶を成長させる工程が、前記溶媒と前記シー
ド結晶とが接触しない状態で、前記溶媒中に成長すべき
結晶の原料を溶解させて飽和させる工程と、前記飽和し
た溶媒を前記シード結晶に接触させるとともに、溶媒の
上下に第1の温度勾配を有する温度差を形成する工程
と、前記溶媒の上下に前記第1の温度勾配よりも大きな
第2の温度勾配を有する温度差を形成し、結晶成長を行
う工程とを含む溶液結晶成長方法が提供される。
【0023】結晶成長を行う前に、比較的小さな第1の
温度勾配を有する温度差を形成する工程を実施すること
により、シード結晶側面に空洞がある場合には、この空
洞を成長結晶で埋めることができる。その後、結晶成長
を行うことにより、シード結晶の上面に良質な結晶を成
長させることができる。
【0024】前記第1の温度勾配を、5〜15℃/cm
とすることが好ましい。また、前記シード結晶の厚さを
3mm以上とすることが好ましい。
【0025】本発明の他の観点によると、少なくとも成
長すべき化合物半導体結晶の一つの構成元素を含む溶媒
の上下に温度差を形成し、溶媒の高温部にソース結晶を
配置し、溶媒の低温部で結晶成長を行う溶液結晶成長装
置において、溶媒下部に配置され、上面を有するヒート
シンクと、成長すべき結晶の前記一つの構成元素とは異
なる他の構成元素を含んで構成され、上面にシード結晶
をほぼ密着して載置するための、前記ヒートシンクの上
面に載置された下地部材と、前記シード結晶の最上面よ
り下方において前記シード結晶に外的作用を及ぼし、前
記シード結晶の位置を拘束するためのシード止め部材と
を有する溶液結晶成長装置が提供される。
【0026】シード結晶の下面に下地部材を配置してい
るため、シード結晶の下面に回り込んだ溶媒中へのシー
ド結晶の溶解を抑制できる。シード結晶の最上面よりも
下方においてシード結晶に外的作用を及ぼし、シード結
晶の位置を拘束することができる。このため、シード結
晶中の作用部位近傍に欠陥が発生しても、この欠陥がシ
ード結晶の上面へ波及しにくい。シード結晶上面に欠陥
が生じにくいため、良質の結晶を成長させることができ
る。
【0027】本発明の他の観点によると、前記ヒートシ
ンクが、その上面に形成された凹部を有し、前記下地部
材が、前記凹部の底面上に載置されている溶液結晶成長
装置が提供される。
【0028】本発明の他の観点によると、さらに、前記
ヒートシンクの上面に載置された環状部材を有し、前記
下地部材が、前記環状部材に囲まれた前記ヒートシンク
の上面に載置されている溶液結晶成長装置が提供され
る。
【0029】シード結晶の側面の凹部開口面と同じ高さ
もしくは環状部材の上面と同じ高さに段差を形成してお
く。この段差を凹部周囲のヒートシンク上面もしくは環
状部材の上面と共にヒートシンク上面側に押しつける
と、力が凹部周囲のヒートシンクもしくは環状部材に分
散される。このため、シード結晶に加わる応力を低減す
ることができる。
【0030】本発明の他の観点によると、前記シード止
め部材の下面の形状が、円周の一部が該円周の内部に張
り出した形状の内周を画定し、該張り出し部分が前記シ
ード結晶の側面の段差に係合して前記シード結晶の位置
を拘束する溶液結晶成長装置が提供される。
【0031】シード止め部材の張出部を、シード結晶の
段差に係合させることにより、シード結晶の位置を拘束
することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、II−VI族化合物半導体
のZnSeをSe−Te溶媒を用いて成長する場合を例
にとって説明する。ZnSeは、青色発光半導体素子と
して期待される材料である。
【0033】次に、図1〜図3を参照して、本発明の実
施例について説明する。図1は、本発明の実施例による
結晶成長装置を示す。図中左側に結晶成長装置の断面図
を示し、図中右側に炉内に設定される温度分布を示す。
【0034】適当な径を有する小口径の石英管1aと大
口径の石英管1bとを接続し、結晶成長容器1を準備す
る。なお、この段階では大口径の石英管1b上部は開放
された状態である。
【0035】この結晶成長容器1の内面を弗酸でエッチ
ングして表面を清浄化する。表面を清浄化した結晶成長
容器1の底部にカーボン等の熱伝導率のよい材料で形成
したヒートシンク8を収納し、真空ベーキングを施す。
【0036】ヒートシンク8の一部に予め刻みを入れて
おき、真空ベーキング後、成長容器1をそれに応じて変
形させることによってヒートシンク8を結晶成長容器1
に固定する。ヒートシンク8の上面には鏡面処理が施さ
れている。ヒートシンク8の材料は、シード結晶と同程
度の熱膨張係数を有するものが好ましい。
【0037】図2(A)は、ヒートシンク8の上面近傍
を拡大した断面図を示す。ヒートシンク8の上面に、ヒ
ートシンク8と同じ外径を有し、厚さ約1.5mmの環
状部材6を載置する。環状部材6はヒートシンク8と同
じ材料で形成され、上面、下面及び内周面には鏡面処理
が施されている。環状部材6もヒートシンク8と同様に
真空ベーキングを施す。
【0038】直径8mm、厚さ約0.5mmのZn板7
を環状部材6に囲まれたヒートシンク8の上面に載置す
る。環状部材6の内径は、Zn板7の径8mmよりも数
百μm程度大きくなるように形成されている。Zn板7
の上にZnSeの単結晶からなるシード結晶5を載置す
る。
【0039】図2(B)は、シード結晶5の平面図を示
す。シード結晶5は、直径8mm、厚さ5mmの円柱状
結晶の上面の縁の一部を切り欠いた形状を有する。この
切り欠きにより、側面の厚さ方向の中間部に上面と平行
な弓形の段差面5aが形成されている。シード結晶5の
下面から段差面5aまでの高さ(切り残し部の厚さ)は
約1mm、段差面5aの弓形形状の中央部分の幅Wは約
0.7mmである。実施例では、上面に(111)面が
現れたシード結晶を用いたが、その他の面方位を有する
面が現れた結晶を使用してもよい。
【0040】図2(A)に戻って、環状部材6の厚さ
が、Zn板7とシード結晶5の切り残し部の合計の厚さ
に等しくなるように構成されているため、環状部材6の
上面が、Zn板7の上に載置したシード結晶5の段差面
5aとほぼ同じ高さになる。
【0041】次に、ヒートシンク6と同じ外径、かつシ
ード結晶5の径とほぼ同じ内径を有する石英製の円筒状
のシード止め4を、石英管1a内に挿入する。図2
(C)は、シード止め4の底面図を示す。シード止め4
の下面には、円環の一部が内部に向かって張り出した張
出部4aが形成されている。シード止め4を石英管1a
内に挿入するとき、張出部4aをシード結晶5の段差面
5aに係合させる。
【0042】図2(A)に戻って、シード止め4を石英
管1aに融着して固定する。環状部材6は、ヒートシン
ク8の上面とシード止め4の下面に挟まれてほぼ固定さ
れる。Zn板7とシード結晶5は、ヒートシンク8の上
面と張出部4aに挟まれてほぼ固定される。
【0043】図1に戻って、溶媒3として所定組成のS
e−Te混合物、ソース結晶2としてZnSeの多結晶
を結晶成長容器1内に投入する。ソース結晶2、溶媒3
を充填した結晶成長容器1を真空排気装置に接続し、そ
の内部を2×10-6Torrよりも高い真空度に真空排
気し、開放端を封止する。
【0044】このように準備した結晶成長容器を斜めに
傾け、シード結晶と溶媒を分離して一定時間、一定温度
に保持することにより溶媒3中にZnSeを飽和溶解さ
せる。その後、この結晶成長容器1を縦にすることによ
り、飽和溶液をシード結晶に接触させる。このとき、溶
解しないで残ったソース結晶2は、結晶成長容器1の段
差により保持される。
【0045】次に、結晶成長容器1を、図1右側に示す
ような温度分布を形成した電気炉内に配置する。電気炉
は内部に結晶成長容器1を収容することのできる縦型空
間を形成する炉心管20の周囲にヒータ線21が巻かれ
た構成を有する。なお、ソース結晶2の配置される位置
の温度をTs、シード結晶5表面の結晶成長が生じる部
分の温度をTgで表す。
【0046】図3(A)は、温度TsとTgの時間変化
を示す。横軸は経過時間、縦軸は温度を共に任意目盛り
で表す。時刻t0 まで石英管1を転倒させて飽和溶液を
作製する。
【0047】時刻t0 において、シード結晶の位置の温
度を950℃とし、5〜15℃/cmの温度勾配を形成
する。図3(B)は、時刻t1 におけるシード結晶5の
断面図を結晶成長装置と共に示す。図中の破線は、温度
勾配形成前のシード結晶5の断面を示す。なお、結晶成
長装置の各構成部分には、図2(A)と同様の符号を付
して示している。シード結晶5の上面部分が溶解し、切
り欠き部に結晶が析出してこの部分の空洞を埋めている
ことがわかる。これは、温度勾配が比較的小さいため、
高温部からの原料原子の拡散による結晶成長がほとんど
起こらず、シード結晶5近傍の局所的な温度勾配による
結晶の溶解と析出が支配的であるためと考えられる。
【0048】時刻t0 から約50時間経過後、時刻t1
において、温度勾配を10〜50℃/cmとし、結晶成
長を行う。このように、結晶成長を行う前に比較的緩や
かな温度勾配を形成することにより、シード結晶5近傍
の空洞を成長結晶で埋めることができる。その後結晶成
長を行うため、シード結晶5の上面にシード止め4の内
周面に沿った円柱状の結晶を成長させることができる。
【0049】これに対し、飽和溶液を作製した後、直ち
に時刻t1 以降の比較的大きな温度勾配を形成して結晶
成長を行うと、良質の成長結晶を得ることができなかっ
た。図3(C)は、飽和溶液作製後、直ちに比較的大き
な温度勾配を形成して結晶成長を行う場合の温度履歴を
示す。飽和溶液が作製されると、時刻t2 においてソー
ス結晶部分の温度を上昇させ、比較的大きな温度勾配を
形成する。
【0050】図3(D)は、図3(C)の温度履歴によ
り形成された成長結晶の断面図を結晶成長装置と共に示
す。段差面5a上に結晶が成長し、その上方の側面に凹
部5bが形成されている。段差面5a上に成長する結晶
の原料はソース結晶からの拡散により供給されるのでは
なく、シード結晶5の段差面5aの上方部分から溶解し
た結晶構成元素が拡散して供給されると考えられる。こ
のため、段差面5aの上方に凹部5bが形成されると考
えられる。凹部5bは結晶の成長と共に上方に移動す
る。
【0051】また、飽和溶液を作製したのち、急激に大
きな温度勾配を形成すると、固液界面における過飽和度
が大きくなり、成長核が発生し易くなる。例えば、シー
ド止め4の下端の張出部4aの先端等に成長核が発生し
やすくなる。この成長核から成長する結晶はシード結晶
5の結晶構造を引き継いでいないため、高品質の単結晶
を得ることができなくなる。さらに、シード結晶5から
成長した結晶と成長核から成長した結晶との界面に溶媒
を含んでしまう場合もある。
【0052】図3(A)に示すように、飽和溶液作製
後、結晶成長前に、比較的温度勾配の緩やかな期間を設
けておくと、固液界面における過飽和度が小さくなるな
るため、成長核の発生を抑制できる。時刻t1 において
温度勾配を大きくするときには、段差面5aの上方の空
洞が成長結晶により埋められているため、シード止め4
の下端張出部に成長核が発生することはないであろう。
【0053】図2(A)に示すように、本実施例による
と、シード結晶5が環状部材6と共にシード止め4で下
方に押さえつけられて固定される。シード止め4による
下方へ押さえつける力がシード結晶5と環状部材6に分
散されるため、シード結晶5のみを押さえつける場合に
比べてシード結晶5に加わる応力を低減させることがで
きる。
【0054】また、カーボン製の環状部材6の熱膨張係
数は7.9×10-6/Kであり、ZnSeの熱膨張係数
は7.55×10-6/Kである。このように、環状部材
6とシード結晶5がほぼ同程度の熱膨張係数を有するた
め、高温の結晶成長時においてもシード止め4による下
方へ押さえつける力を有効に分散させることができる。
成長温度において環状部材6の上面がシード結晶5の段
差面5aよりもやや高くなるように環状部材6の厚さを
調整しておくことにより、シード結晶5へ加わる応力を
より緩和することができる。
【0055】Zn板7の熱膨張等により、シード止め4
の張出部4aとZn板7とに挟まれた切り残し部に発生
した応力により欠陥が発生する場合がある。しかし、シ
ード結晶5の全厚さを5mmとし、切り残し部の厚さを
1mmとしているため、切り残し部に発生した欠陥がシ
ード結晶の上面まで波及しにくい。このため、シード結
晶5の上面に良質の結晶を成長させることができる。な
お、シード結晶5の下面の欠陥による影響を防止するた
めには、シード結晶5の厚さを3mm以上とすることが
好ましい。
【0056】次に、図4〜図6を参照して上記実施例の
変形例を説明する 図4は、第1の変形例による結晶成長装置のシード結晶
部の断面図を示す。ヒートシンク8の上面に凹部10が
形成されている。凹部10の底面には鏡面処理が施され
ている。凹部10が、図2(A)に示す環状部材6の内
周面とヒートシンク8の上面とによって画定される円形
の凹部に対応する。その他の構成は図1及び図2(A)
に示す結晶成長装置と同様である。
【0057】図5(A)は、第2の変形例による結晶成
長装置のシード結晶部の断面図を示す。図2(A)で
は、シード結晶5の段差面5aにシード止め4の張出部
4aを係合させてシード結晶5の位置を拘束したが、図
5(A)では、シード止めリング11を用いてシード結
晶5の位置を拘束する。このため、シード止め4の下端
に張出部は形成されていない。その他の構成は図1及び
図2(A)に示す結晶成長装置と同様である。
【0058】図5(B)は、シード止めリング11の平
面図を示す。シード止めリング11の外周はヒートシン
ク8の外径とほぼ等しい径の円形形状である。その内周
は、環状部材6の内径とほぼ同径の円周のうち一部に円
周の内側に向かって張り出した張出部11aを形成した
形状とされている。シード止めリング11がシード止め
4により下方に押さえつけられて固定され、張出部11
aがシード結晶5の段差面5aに係合してシード結晶5
の位置を拘束する。
【0059】図6は、第3の変形例による結晶成長装置
のシード結晶部の断面図を示す。図5(A)に示す環状
部材6の代わりにヒートシンク8の上面に図4の第1の
変形例と同様の凹部10を形成し、シード結晶5の横方
向の位置を拘束している。その他の構成は図5(A)に
示す結晶成長装置と同様である。
【0060】上記第1〜第3の変形例においても、シー
ド結晶5の上面よりも下方においてシード結晶に外的作
用を及ぼし、シード結晶の位置を拘束している。従っ
て、上記実施例と同様の効果が得られるであろう。
【0061】上記実施例及び変形例では、シード結晶5
の裏側にZn板7を密着させる場合について説明した
が、シード結晶の裏側にスパッタ法等により予め厚さ1
0μm〜100μmのZn膜を形成しておいてもよい。
スパッタ法等によってシード結晶裏側にZn膜を形成す
ることにより、シード結晶の裏側のわずかな隙間の発生
をも防止することが可能になる。
【0062】また、Se−Te溶媒を用い、ZnSe結
晶を成長させる場合を例にとって説明したが、上記実施
例は他のII−VI族化合物半導体の溶液結晶成長に適
用することも可能である。この場合、シード結晶の下面
に密着して配置されたZn板の代わりに、溶媒中に含ま
れるシード結晶の一つの構成元素とは異なる他の構成元
素からなる部材を配置する。
【0063】以上実施例に沿って本発明を説明したが、
本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種
々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に
自明であろう。
【0064】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
シード結晶の最上面より下方においてシード結晶に外的
作用を施して位置を拘束するため、シード結晶の上面に
応力が加わらない。このため、シード結晶の上面に良好
な結晶を成長させることができる。
【0065】また、結晶を成長させる前に、溶媒中に緩
やかな温度勾配を形成することにより、成長核の発生を
抑制することができる。また、シード結晶側面に空洞が
形成されている場合には、この空洞をシード結晶からの
成長結晶で埋めることができる。このため、シード結晶
の上面に良質の結晶を成長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による溶液結晶成長を説明する
ための結晶成長装置の断面図および温度分布のグラフで
ある。
【図2】図1の結晶成長装置の結晶成長部の断面図、シ
ード結晶の平面図、及びシード止めの底面図である。
【図3】実施例による溶液結晶成長及び比較例による溶
液結晶成長の溶媒温度の時間変化を示すグラフ、及びシ
ード結晶の断面図である。
【図4】第1の変形例による溶液結晶成長で使用する結
晶成長装置の結晶成長部の断面図である。
【図5】第2の変形例による溶液結晶成長で使用する結
晶成長装置の結晶成長部の断面図及びシード止めリング
の平面図である。
【図6】第3の変形例による溶液結晶成長で使用する結
晶成長装置の結晶成長部の断面図である。
【図7】従来の技術による溶液結晶成長を説明するため
の溶液結晶成長装置の断面図および温度分布のグラフで
ある。
【図8】図7の結晶成長装置の結晶成長部の断面図であ
る。
【符号の説明】
1、51 結晶成長容器 2、52 ソース結晶 3、53 溶媒 4、54 シード止め 5、55 シード結晶 6 環状部材 7、59 Zn板 8、56 ヒートシンク 10、60 凹部 11 シード止めリング 20、57 炉心管 21、58 ヒータ線

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成長すべきII−VI族化合物半導体結
    晶の一つの構成元素を含む下地部材とシード結晶を、ヒ
    ートシンクの上面に、前記下地部材がヒートシンク側に
    なるように載置する工程と、 前記シード結晶の最上面よりも下方において前記シード
    結晶に外的作用を及ぼし、前記シード結晶の位置を前記
    ヒートシンクの上面上に拘束する工程と、 前記シード結晶の上面に、前記成長すべきII−VI族
    化合物半導体結晶を構成する元素のうち、前記一つの構
    成元素とは異なる構成元素を含む溶媒を接触させ、溶媒
    の上下に温度差を形成し、高温部にソース結晶を配置し
    て前記シード結晶上に結晶を成長させる工程とを含む溶
    液結晶成長方法。
  2. 【請求項2】 前記シード結晶が、その側面に形成され
    た段差を有し、 前記シード結晶の位置を拘束する工程が、前記段差にシ
    ード止め部材の一部を係合させ、前記シード結晶の位置
    を拘束する工程を含む請求項1に記載の溶液結晶成長方
    法。
  3. 【請求項3】 前記シード結晶が、円柱状形状の結晶の
    上面から下方に中心軸に平行に一部の厚さ部分を切り欠
    いた切り欠き部を有する形状を有し、 前記シード止め部材を、前記切り欠き部により形成され
    た段差面に係合させる請求項2に記載の溶液結晶成長方
    法。
  4. 【請求項4】 前記シード結晶の位置を拘束する工程
    が、前記シード止め部材の下面の一部を前記段差面に係
    合させ、該下面の他の部分を前記段差面とほぼ同じ高さ
    の上面を有する他の部材の該上面に接触させる請求項3
    に記載の溶液結晶成長方法。
  5. 【請求項5】 前記載置する工程が、 前記下地部材を前記ヒートシンクの上面に載置する工程
    と、 前記シード結晶を、前記下地部材の上に載置する工程と
    を含む請求項1〜4のいずれかに記載の溶液結晶成長方
    法。
  6. 【請求項6】 前記下地部材が、前記シード結晶の下面
    に形成された薄膜である請求項1〜4のいずれかに記載
    の溶液結晶成長方法。
  7. 【請求項7】 前記結晶を成長させる工程が、 前記溶媒と前記シード結晶とが接触しない状態で、前記
    溶媒中に成長すべき結晶の原料を溶解させて飽和させる
    工程と、 前記飽和した溶媒を前記シード結晶に接触させるととも
    に、溶媒の上下に第1の温度勾配を有する温度差を形成
    する工程と、 前記溶媒の上下に前記第1の温度勾配よりも大きな第2
    の温度勾配を有する温度差を形成し、結晶成長を行う工
    程とを含む請求項1〜6のいずれかに記載の溶液結晶成
    長方法。
  8. 【請求項8】 前記第1の温度勾配が、5〜15℃/c
    mである請求項7に記載の溶液結晶成長方法。
  9. 【請求項9】 前記シード結晶の厚さが3mm以上であ
    る請求項1〜8のいずれかに記載の溶液結晶成長方法。
  10. 【請求項10】 少なくとも成長すべき化合物半導体結
    晶の一つの構成元素を含む溶媒の上下に温度差を形成
    し、溶媒の高温部にソース結晶を配置し、溶媒の低温部
    で結晶成長を行う溶液結晶成長装置において、 溶媒下部に配置され、上面を有するヒートシンクと、 成長すべき結晶の前記一つの構成元素とは異なる他の構
    成元素を含んで構成され、上面にシード結晶をほぼ密着
    して載置するための、前記ヒートシンクの上面に載置さ
    れた下地部材と、 前記シード結晶の最上面より下方において前記シード結
    晶に外的作用を及ぼし、前記シード結晶の位置を拘束す
    るためのシード止め部材とを有する溶液結晶成長装置。
  11. 【請求項11】 前記ヒートシンクが、その上面に形成
    された凹部を有し、 前記下地部材が、前記凹部の底面上に載置されている請
    求項10に記載の溶液結晶成長装置。
  12. 【請求項12】 さらに、前記ヒートシンクの上面に載
    置された環状部材を有し、 前記下地部材が、前記環状部材に囲まれた前記ヒートシ
    ンクの上面に載置されている請求項10に記載の溶液結
    晶成長装置。
  13. 【請求項13】 前記シード止め部材の下面の形状が、
    円周の一部が該円周の内部に張り出した形状の内周を画
    定し、該張り出し部分が前記シード結晶の側面の段差に
    係合して前記シード結晶の位置を拘束する請求項10〜
    12のいずれかに記載の溶液結晶成長装置。
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