JP4010439B2 - 半導体混晶の成長方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体混晶の成長方法に関し、特に、所望の混晶組成を有する基板を作成するのに適した半導体混晶の成長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ターミナル物質AとBとの混晶AxB1-xは、通常組成xに応じて、ターミナル物質AとBとの中間の特性を有する。例えば、所望のバンドギャップや屈折率を有する物質を得ようとする場合、混晶組成xを調整することにより、所望の特性を有する結晶を得ることができる。従って、半導体レーザやホトダイオード等に代表される光デバイスや移動体通信端末や衛星通信用の電子デバイスの材料として化合物半導体混晶が用いられている。
【0003】
これらの化合物半導体混晶は、基板結晶の上に、主に有機金属化学気相堆積(MOCVD)、分子線エピタキシ(MBE)、液相エピタキシ(LPE)等のエピタキシャル成長法により成長される。
【0004】
市販されている代表的な基板として、GaAs、GaP、Si、InPウエハ等がある。化合物半導体デバイスでは、採用した基板の上にエピタキシャル成長可能な範囲でデバイスパラメータ(格子定数、エネルギギャップ、屈折率、歪み等)の設計が行われる。
【0005】
通常の半導体デバイスでは、成長する結晶層を基板又は下地結晶に格子整合させることが必要である。市販の基板を使用すると、その上にエピタキタシャル成長する結晶の格子定数は基板の格子定数により狭い範囲内に限定されてしまう。そのため、デバイスの設計自由度が限定されてしまう。
【0006】
最近、半導体混晶のバルク基板が注目されている。混晶バルク基板は、混晶組成を変えることにより、格子定数を広い範囲内で任意に選択することができる。このため、デバイス設計パラメータの自由度が飛躍的に増大する。
【0007】
例えば、1.3μm帯の高い特性温度T0を有するレーザや面発光レーザ用の基板結晶として、In0.3Ga0.7Asバルク結晶が望まれている。従来使われてきたInP基板を用いた1.3μm帯レーザでは実現困難な、大きなバンドオフセットによる漏れ電流の低減や、屈折率差によるミラーの形成が可能となる。
【0008】
InGaAs混晶バルク結晶は、先ずバーチィカルグラジエントフリーズ(VGF)法やブリッジマン法により、坩堝内でGaAs種結晶の上に成長方向にInAs組成を変化させたInGaAs組成勾配混晶結晶を成長する。この組成勾配を有するInGaAs混晶結晶を種結晶とし、その上にゾーン法によりInAs組成の均一なInGaAs混晶結晶を成長させる。このようにして、InGaAsバルク混晶結晶が作成できる。
【0009】
なお、VGF成長とゾーン成長は、共にメルトとしてInGaAs融液を用いる。InAs−GaAs混晶系は、準2元混晶系であり、InGaAs融液から成長したInGaAs混晶結晶の組成は、成長温度で一義的に定まる。
【0010】
このような結晶成長技術により、混晶バルク基板を作成することが可能であるが、結晶成長中に多結晶化を生じるなど問題が生じる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、効率的に混晶バルク結晶を成長することのできる半導体混晶の成長方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、多結晶化を生じることの少ない半導体混晶の成長方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、
成長温度で成長組成が一義的に決まる二元系あるいは準二元系の混晶系を対象とし、
(A)ルツボ内に、前記混晶系の第1の混晶組成の最表面を有する第1の種結晶と、前記混晶系の第2の混晶組成を有するソース結晶と、融点において前記第1の混晶組成の結晶が析出する飽和溶液の固化物と、前記飽和溶液よりも融点が低く、融点において未飽和の未飽和溶液の固化物と、を収容する工程と、 (B)前記ルツボ内を昇温し、前記未飽和溶液の固化物の融点で、前記未飽和溶液の固化物を溶融して、前記ソース結晶と接触させる工程と、
(C)前記工程(B)に続いて、さらに、前記ルツボ内を昇温し、前記飽和溶液の固化物を溶融する工程と、
(D)前記ルツボ内に前記ソース結晶側で高く、前記第1の種結晶側で低い温度勾配を形成し、前記第1の種結晶上に半導体混晶を成長する工程と、
を含む半導体混晶の成長方法
が提供される。
【0014】
【発明の実施の態様】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0015】
図1(A)〜(D)、図2(A)、(B)は、VGF法による組成勾配を有する半導体混晶結晶の成長を説明するための概略断面図及びグラフである。
【0016】
図1(A)に示すように、石英製円筒状坩堝1内にGaAs単結晶4及びInAs多結晶3を充填した。坩堝1は、外径17〜18mm、内径15mmを有する。GaAs単結晶4は、約20mmの長さ、約15mmの直径を有する円柱状である。InAs多結晶3は、長さ約10mm、直径15mmの円柱状である。GaAs単結晶4、InAs多結晶3は、共に坩堝1内に隙間なく収容されるようにその形状が成形されている。
【0017】
図1(B)に示すように、原料を収容した坩堝1をアンプル2内に収め、内部を真空に排気した後封じた。
【0018】
このアンプルを炉内に配置し、図1(C)に示す温度プロフィールにより組成勾配を有するInGaAs半導体混晶結晶を成長した。図1(C)において、縦軸は温度Tを示し、横軸は時間tを示す。曲線p1は、昇温工程を示し、温度T1まで昇温される。曲線p2は、昇温後のメルト形成工程を示し、温度T1で一定時間保持され、坩堝内に一様な組成のメルトが形成される。曲線p3は、結晶成長工程の降温工程を示し、たとえば1℃/h程度で坩堝内を徐々に降温することにより、InGaAs半導体混晶結晶が組成勾配を形成しながら成長する。曲線p4は、急冷工程を示し、温度T3から急冷することにより、成長した結晶上に残るメルトがそのまま固化される。
【0019】
図1(D)は、昇温工程p1、メルト形成工程p2を経た後の坩堝内の状態を示す。坩堝1内には、底にGaAs単結晶4sが長さ5mmほど残り、その上にInGaAsメルト6が形成されている。なお、図中右側に示すように、炉内には上部で高く、下部で低い温度勾配g1が形成されている。GaAs単結晶4sとメルト6との間の固液界面の温度が温度T1である。メルト6は、温度T1でGaAsで飽和しており、GaAs単結晶4sはこれ以上メルト6中に溶解しない。
【0020】
図2(A)は、InAs−GaAs混晶系の相図を概略的に示す。図中縦軸が温度Tを単位℃で示し、横軸がInxGa1-xAs組成xを示す。GaAsの融点は約1238℃であり、InAsの融点は約942℃である。曲線mはInGaAs混晶の融点を示し、曲線sは固化曲線を示す。
【0021】
温度Tが942℃(T4)を越えると、InAsが溶解する。さらに、温度を上げると、その温度が融点となる組成のメルトが生じるようにGaAsがメルト中に溶解する。このようにして、所望組成のメルトが作成される。
【0022】
結晶成長工程では、温度が徐々に降温される。温度T1の組成M1のメルトからは、その温度に対応する固化曲線sの組成Z1の結晶が析出する。メルトの組成と、そのメルトから析出する結晶の組成がずれているため、メルトの組成は徐々に変化する。
【0023】
InGaAsメルトの場合、析出する組成はGaAsリッチであり、結晶が析出するとメルトはInAsリッチ側へ次第に移動する。メルトの組成がInAs側に移動すると共に、析出する結晶の組成もInAs側に移動する。又、メルトの組成変化と共に、結晶化温度も次第に低温側に移る。固液界面の温度がT2に達した時、結晶化するInGaAsの組成はIn0.3Ga0.7Asとなる。
【0024】
図1(C)の温度プロフィールにおいては、InAs組成xが0.3となる温度T2に達した後も降温が続き、温度T3に達した時に成長を終了し、急冷している。温度差ΔT=T2−T3は、例えば30℃に設定される。
【0025】
図2(A)の相図において示されるように、温度T3で析出する組成Z3は、x=0.3の組成Z2よりもInAsリッチの組成となっている。
【0026】
図2(B)は、図1(C)の降温工程p3で行われる結晶成長を概略的に示す。図中右側に坩堝1内での結晶化工程を概略的に示す。GaAs単結晶4sの上に組成勾配を有するInGaAs混晶結晶7が成長する。混晶結晶7は、その最下部において組成Z1を有し、組成は結晶成長が進むにつれ次第にInAsリッチに変化する。組成Z2を過ぎ、さらにInAsリッチの組成Z3に達した時に結晶成長を終了させる。
【0027】
結晶成長中、固液界面はGaAs単結晶4sの表面から次第に上昇する。結晶成長を終了させる時点では、固液界面は上方に移動しており、この固液界面において温度をT3に設定する。
【0028】
図中左側に、炉内の温度分布を概略的に示す。曲線g1は、結晶成長開始時の温度分布を示す。炉内の温度を徐々に降温することにより、曲線g2の時に組成Z2の結晶が成長し、曲線g3の時に固液界面の組成はZ3となる。この状態で結晶成長を終了し、急冷することによりメルト6も固化させる。この時点で、メルト6は組成Z3により飽和している。
【0029】
VGF結晶成長を行った後、坩堝1を壊し、内部に形成された固体を取り出し、ゾーン成長に移った。
【0030】
図3(A)は、ゾーン成長用坩堝8内の構成を示す。VGF成長により得たGaAs単結晶4s、組成勾配を有するInGaAs混晶結晶7、その上のメルトの固化物6aをそのまま坩堝8内に収容する。坩堝8は、坩堝1との内径15mm、より若干大きく外径17〜18mmの円筒状坩堝であり、VGF成長で得た固化物をスムースに収容することができる。混晶結晶7は、新たにシード結晶となる。
【0031】
GaAs単結晶4sは長さ約5mmであった。組成勾配を有するInGaAs混晶結晶7は、長さ約15mmを有していた。その上のメルト固化物6aは、長さ約10mmを有していた。
【0032】
メルト固化物6aの上に、長さ約3〜4mm、直径15mmのInAs多結晶13を配置し、その上に長さ20mm、直径15mmのIn0.3Ga0.7As多結晶ソース10を充填した。
【0033】
図2(A)の相図に示すように、InAs多結晶13は融点が約942℃である。942℃を越えると、InAs多結晶13は溶融するが、他の収容物は未だ融点に達せず溶融しない。
【0034】
図3(B)に示すように、原料を充填した坩堝8をアンプル9内に収容し、内部を真空に排気した後気密に封じた。このアンプルを、ゾーン成長に用いる。
【0035】
図3(C)は、ゾーン成長における温度プロフィールを示す。曲線p5は、昇温工程を示す。昇温は、In0.3Ga0.7Asに対応する温度T2まで行われる。曲線p6は、一定成長温度で行なわれるゾーン成長工程を示す。ゾーン成長工程は、基本的には一定の温度勾配の元で行われるが、固液界面の移動に合わせ、炉内の温度はわずかに降温される。実際には、約0.1℃〜0.05℃/hの徐冷速度で炉内を徐冷した。曲線p7は、結晶成長終了後の急冷工程を示す。
【0036】
図4(A)は、昇温工程p5において、坩堝内の温度がInAsの融点T4に達した状態を示す。InAsが融点に達したため、InAs多結晶13は溶融し、InAsメルト13aとなる。メルト13aは、ソース結晶10、メルト固化物6aと接触し、これらを溶解する能力を有する。
【0037】
炉内の温度をInAsの融点T4からさらに上昇させることにより、やがてメルト固化物6aが溶解する温度T3に達する。温度T3では、メルト固化物6aが溶融しメルトとなり、メルト13aと混合し、一体化する。なお、温度T3に達するまでに、メルト13aはソース10の一部、メルト固化物6a、の一部も溶解する。メルト固化物6aが溶融する時点においては、メルト13aは、メルト固化物6aの組成に近づく。
【0038】
メルト固化物6aは、溶融してもその下に配置されているInGaAs混晶結晶7の飽和溶液であるため、InGaAs混晶結晶7はほとんど溶解しない。
【0039】
昇温工程p5は、温度T3からさらに温度T2まで昇温される。昇温に伴い、InGaAs混晶結晶7は温度T2に相当する部分まで溶解される。温度T2は、図2(A)に示すようにIn0.3Ga0.7Asに相当する温度である。従って、温度T2に達した時、InGaAs混晶結晶7は、組成x=0.3のところまで上部から溶解されている。
【0040】
温度T2の状態においては、メルトの上にIn0.3Ga0.7Asのソース結晶10が配置され、メルトの下にIn0.3Ga0.7Asの最表面を有するInGaAs混晶シード結晶7が配置されている。
【0041】
図4(B)は、成長工程p6における炉内の状態を概略的に示す坩堝内断面図、および温度勾配を示すグラフである。図中右側に示すように、組成x=0.3の最表面を有するInGaAsシード結晶7、メルト14、ソース結晶10を含む領域に、図中左側に示すような温度勾配g4が形成される。
【0042】
温度勾配g4は、ソース結晶10側で高く、シード結晶7側で低い。従って、ソース結晶10は、高温側の飽和濃度までメルト14に溶解し、濃度拡散で下部に拡散する。メルト14の下部では温度が低いため、低温側の濃度は過飽和濃度となり、シード結晶7上にIn0.3Ga0.7As混晶結晶11が析出する。
【0043】
結晶成長が進むと固液界面は次第に上方に移動する。炉内の温度を一定に保つと、固液界面は徐々に高温側に移動し、析出するInGaAs混晶の組成も変化してしまうことになる。この変化を打ち消すように、炉内の温度は徐々に、例えば0.1〜0.05℃/h程度で降温される。すなわち、固液界面が図示の位置まで上昇した時には、温度勾配がg5のように変化しており、固液界面の温度はT2に一定に保たれる。
【0044】
図5は、このようなゾーン結晶を行った後、アンプルを急冷し、取り出した状態を概略的に示す。坩堝8内の最下部には、長さ約5mmのGaAs単結晶4sが配置され、その上に組成xが約0.05〜約0.3まで変化するInGaAs混晶結晶7が長さ約13〜14mm配置され、その最表面の上に、一定の組成In0.3Ga0.7Asを有する混晶バルク結晶11が長さ約20mm形成されていた。
【0045】
ここで、参考例によるゾーン成長を説明する。参考例においては、図3(A)に示す状態において、InAs13を使用しない。InGaAs混晶結晶7の上にメルト固化物6aが配置され、その上に直接ソース結晶10が配置される。
【0046】
図8(A)に示すように、メルト固化物6aの融点に達すると、メルト固化物は溶融する。この時点で、メルト固化物6aは、種結晶7の最表面成分で飽和した組成である。種結晶7はメルトバックされ、所望の組成を有する最表面を露出する。この時点で、種結晶7の最表面とソース結晶10とは同一組成となる。
【0047】
ソース結晶10も、メルト6中に溶解するが、メルト6は種結晶7の最表面組成の飽和溶液であり、ソース結晶10がメルト6中に溶解する溶解力は弱いであろう。
【0048】
ソース結晶10が高温側に配置され、種結晶7が低温側に配置されているため、ソース結晶から溶解した成分が濃度勾配で種結晶7側に移動し、種結晶7上に結晶成長する。
【0049】
図8(B)は、成長した一定組成のInGaAs結晶11の最表面が、元のソース結晶10の下面に達した状態を示す。この参考例によれば、ソース結晶10の下面に相当する位置で多結晶化を生じることが多い。多結晶化の原因は、以下のように考察され得るであろう。
【0050】
図8(C)は、ソース結晶10とメルト6との接触する面を拡大した状態で示す。ソース結晶10は、例え平坦に作成されていても、微視的には凹凸を有するであろう。ソース結晶10が、メルト6中に徐々に溶解すると、ソース結晶の下面は徐々に上昇する。この際、ソース結晶10下面に存在した凹凸により、ソース結晶10は、一様に固相のままメルト6中に放出される成分10xが考えられる。メルト6は飽和溶液であるため、放出された固相成分10xを溶融する力は弱い。結晶成長面が徐々に上昇し、放出された固相成分10xに達すると、固相成分10xは、新たな結晶核を形成することが考えられる。この場合、下方から成長したエピタキシャル成長面と、固相成分10xとの配向方向は不定である。従って、固相成分10xを取り込んだ後の結晶成長面は、多結晶化してしまう。
【0051】
上述の実施例によれば、温度上昇工程において先ずInAsが溶融する。この時点において、メルトは高い溶解力を有し、ソース結晶10の表面を速やかに溶解するであろう。表面から例え固相成分が放出されても、この固相成分を溶解する能力が高い。従って、メルト中に固相成分は残らず、結晶成長を開始する時点では完全に液相のメルトが形成されるであろう。多結晶化の原因が回避されるため、十分大きな単結晶が成長できるのであろう。
【0052】
上述の実施例においては、VGF成長で得たメルト固化物の上に、InAsを配置した。ソース結晶を溶解する能力が高いものであれば、InAsの代りにInGaAsを用いても良いことは自明であろう。但し、メルト固化物6aが溶解する前に溶融する低融点メルト固化物である必要がある。メルト固化物6aの上に配置する低融点メルト固化物は、メルト固化物よりも低融点を有し、ソース結晶に関しての未飽和溶液の固化物である。
【0053】
上述の実施例においては、GaAs単結晶とInAs多結晶とを坩堝内に収容し、VGF成長を行った。
【0054】
図6(A)は、この変形例を示す。坩堝1内に、GaAs単結晶4と、所望の組成を有するInGaAs多結晶6bとを収容し、真空に排気した後密封する。この場合、炉内の温度をInGaAs多結晶6bの融点まで上昇すると、InGaAs6bは同時に溶解する。このメルトが、GaAsの飽和溶液であれば、GaAs単結晶4はほとんど溶解しない。InGaAs多結晶6bを完全に溶融するため、温度を融点以上に上げても、GaAs単結晶4が溶解する量は限られたものである。
【0055】
上述の実施例においては、VGF成長を行った後、坩堝内から取り出した複数の成分を有する固化物をそのままソーン成長に用いた。
【0056】
混晶バルク結晶が得られた後は、ゾーン成長のたびにVGF成長を行う必要は必ずしもないであろう。
【0057】
図6(B)は、混晶バルク結晶をシード結晶としてゾーン成長を行なう場合の構成を概略的に示す。坩堝8内に、混晶バルク結晶のシード結晶16を配置し、その上に飽和溶液のメルト6c、未飽和溶液のメルト固化物13を配置し、その上にソース結晶10を配置する。この場合、シード結晶16とソース結晶10とは同一組成とすることが好ましいであろう。飽和溶液のメルト固化物6cは、融点においてこの組成の飽和溶液となる。低融点の未飽和溶液の固化物13は、メルト固化物6cよりも低融点であり、この温度においてソース結晶10、シード結晶16の組成の未飽和溶液であることが必要である。
【0058】
温度上昇工程において、低融点未飽和溶液の固化物13が溶融すると、ソース結晶10の表面が溶解される。この時、シード結晶16、メルト固化物6cも溶解されるが、未飽和溶液13がソース結晶10に接して配置されているため、ソース結晶を溶解する能力は高い。シード結晶16をメルトバックするため、温度を上昇させることが好ましいであろう。この場合、温度上昇によりメルトバックされるシード結晶16の量は、温度上昇の量により制限することができる。
【0059】
成長する混晶バルク結晶の組成は、目的に応じて広い範囲で選択することができる。成長したバルク半導体混晶から、混晶基板を切り出すことができる。混晶基板は、種々の目的に使用することができる。
【0060】
図7は、In0.3Ga0.7As混晶バルク基板を用いた半導体レーザの構成を概略的に示す。基板4は、n+型In0.3Ga0.7As混晶で形成されている。基板4の上に、n型InGaPクラッド層5b、In0.3Ga0.7As活性層6、p型InGaPクラッド層5aを成長した後、さらにその上にp型InGaAsキャップ層3を成長する。
【0061】
積層成長したエピタキシャル層に、溝状のエッチングを行ない、メサストライプ構造7を残す。このメサストライプ構造を覆って、SiO2等の絶縁層9を形成する。絶縁層9に開口部を設け、p側電極1を形成する。基板4の裏面にはn側電極2を形成する。
【0062】
メサストライプ構造7と直交する方向に基板及びその上のエピタキシャル成長層をへき開し、レーザキャビティ−を形成する。必要に応じてキャビティ両面に反射増強膜、反射防止膜を形成することができる。p側電極1からn側電極2に向って電流を流すことにより、レーザ発振を生じさせ、レーザ光8を取り出すことができる。この半導体レーザは、高い特性温度を実現することができる。なお、単層の活性層を用いる場合を説明したが、単層の活性層に代え、多重量子井戸構造を用いいても良い。又、歪みを導入することもできる。
【0063】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。InGaAs混晶を成長する場合を説明したが、成長する混晶はInGaAsに限らない。連続的に混晶を形成できる2元、または準2元混晶系、例えばInGaAs、InGaSb、AlGaAs、Si−Ge、HgCdTe,PbSnTe、PbSSeのいずれかを成長することができる。又、ゾーン成長のシード結晶は、ソース結晶と必ずしも同一でなくてもよいであろう。成長する混晶と格子状数がほぼ等しい結晶をシード結晶として用いることができるであろう。「ほぼ等しい」範囲は、各結晶について公知の結晶成長可能な範囲とすることができる。その他、種々の変更、改良、組み合わせが可能なことは当業者に自明であろう。
【0064】
以下、本発明の特徴を付記する。
(付記1) (A)ルツボ内に、第1の混晶組成の最表面を有する第1の種結晶と、前記第1の混晶組成の構成元素で形成された第2の混晶組成を有するソース結晶と、融点において前記第1の組成で飽和した飽和溶液の固化物と、前記飽和溶液よりも融点が低く、融点において前記第2の混晶組成で未飽和の未飽和溶液の固化物と、を収容する工程と、
(B)前記ルツボ内を昇温し、前記未飽和溶液の固化物を溶融して、前記ソース結晶と接触させる工程と、
(C)さらに、前記ルツボ内を昇温し、前記飽和溶液の固化物を溶融する工程と、
(D)前記ルツボ内に前記ソース結晶側で高く、前記種結晶側で低い温度勾配を形成し、前記種結晶上に半導体混晶を成長する工程と
を含む半導体混晶の成長方法。
(付記2) 前記第2の混晶組成が前記第1の混晶組成より高い融点を有し、前記種結晶が厚さ方向に、最表面に向って融点が低下する組成勾配を有し、前記工程(C)が、前記飽和溶液を融点より高い温度まで昇温し、前記種結晶の最表面をメルトバックし、前記第2の混晶組成とほぼ同一の混晶組成を有する最表面を露出する工程を含む付記1に記載の半導体混晶の成長方法。
(付記3) さらに、
(X)第2の種結晶の上に前記第1の混晶組成の構成元素で形成されたメルトを形成し、徐冷することによって最表面に向って融点の低下する組成勾配を有する混晶を前記第2の種結晶上に成長し、前記第1の種結晶を作成する工程を含む付記1または2記載の半導体混晶の成長方法。
(付記4) 前記工程(X)で前記第2の種結晶の上に残ったメルトの固化物を前記飽和溶液の固化物とする付記3記載の半導体混晶の成長方法。
(付記5) 前記工程(D)が、前記温度勾配を徐々に高温側に移動し、成長面の温度をほぼ一定に保つ付記1〜4のいずれか1項記載の半導体混晶の成長方法。
(付記6) 前記半導体混晶が、InGaAs、InGaSb、AlGaAs、Si−Ge、HgCdTe,PbSnTe、PbSSeのいずれかである付記1〜5のいずれか1項記載の半導体混晶の成長方法。
(付記7)前記半導体混晶がInGaAsであり、前記第1の種結晶がGaAs単結晶上にInGaAs組成勾配混晶を成長した結晶であり、前記飽和溶液がInGaAsであり、前記未飽和溶液が前記飽和溶液よりIn組成の高いInGaAsまたはInAsである付記1〜6のいずれか1項記載の半導体混晶の成長方法。
(付記8) (A)ルツボ内に、第1の格子定数の最表面を有する第1の種結晶と、第2の格子定数を有する混晶組成のソース結晶と、融点において前記混晶組成でほぼ飽和した飽和溶液の固化物と、前記飽和溶液よりも融点が低く、融点において前記混晶組成が未飽和の未飽和溶液の固化物と、を収容する工程と、
(B)前記ルツボ内を昇温し、前記未飽和溶液の固化物を溶融して、前記ソース結晶と接触させる工程と、
(C)さらに、前記ルツボ内を昇温し、前記飽和溶液の固化物を溶融する工程と、
(D)前記ルツボ内に前記ソース結晶側で高く、前記種結晶側で低い温度勾配を形成し、前記種結晶上に半導体混晶を成長する工程と
を含む半導体混晶の成長方法。
(付記9)前記第1の格子定数と第2の格子定数がほぼ等しい付記8記載の半導体混晶の成長方法。
(付記10)前記第1の種結晶が、第2の種結晶上に前記混晶組成の構成元素から形成され、組成勾配を有する混晶を成長させた結晶である付記8記載の半導体混晶の成長方法。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、効率的にバルク半導体混晶を成長することができる。
【0066】
多結晶化を生じることの少ないゾーン成長を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例によるVGF成長を説明するための概略断面図及びグラフである。
【図2】 本発明の実施例によるVGF成長を説明するための概略断面図及びグラフである。
【図3】 本発明の実施例によるゾーン成長を説明するための概略断面図及びグラフである。
【図4】 本発明の実施例によるゾーン成長を説明するための概略断面図及びグラフである。
【図5】 本発明の実施例により結晶成長を行なった坩堝内の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】 図1〜図5に示す実施例の変形例を示す概略断面図である。
【図7】 得られたバルク半導体混晶の基板を用いて作成した半導体装置の構成例を示す斜視図である。
【図8】 参考例による結晶成長を説明する概略断面図である。
【符号の説明】
1 坩堝
2 アンプル
3 InAs多結晶
4 GaAs単結晶
6 メルト
7 (組成勾配を有する)InGaAs(シード)結晶
8 坩堝
9 アンプル
10 InGaAs多結晶
12 炉
13 InAs多結晶
14 メルト
Claims (5)
- 成長温度で成長組成が一義的に決まる二元系あるいは準二元系の混晶系を対象とし、
(A)ルツボ内に、前記混晶系の第1の混晶組成の最表面を有する第1の種結晶と、前記混晶系の第2の混晶組成を有するソース結晶と、融点において前記第1の混晶組成の結晶が析出する飽和溶液の固化物と、前記飽和溶液よりも融点が低く、融点において未飽和の未飽和溶液の固化物と、を収容する工程と、 (B)前記ルツボ内を昇温し、前記未飽和溶液の固化物の融点で、前記未飽和溶液の固化物を溶融して、前記ソース結晶と接触させる工程と、
(C)前記工程(B)に続いて、さらに、前記ルツボ内を昇温し、前記飽和溶液の固化物を溶融する工程と、
(D)前記ルツボ内に前記ソース結晶側で高く、前記第1の種結晶側で低い温度勾配を形成し、前記第1の種結晶上に半導体混晶を成長する工程と、
を含む半導体混晶の成長方法。 - 前記第2の混晶組成が前記第1の混晶組成より高い融点を有し、前記第1の種結晶が厚さ方向に、最表面に向って融点が低下する組成勾配を有し、前記工程(C)が、前記飽和溶液を融点より高い温度まで昇温し、前記種結晶の最表面をメルトバックし、前記第2の混晶組成と同一の混晶組成を有する最表面を露出する工程を含む請求項1に記載の半導体混晶の成長方法。
- さらに、
(X)第2の種結晶の上に前記混晶系のメルトを形成し、徐冷することによって最表面に向って融点の低下する組成勾配を有する混晶を、前記第2の種結晶上に成長し、前記第1の種結晶を作製する工程、
を含む請求項1または2記載の半導体混晶の成長方法。 - 前記工程(X)で前記第2の種結晶の上に残ったメルトの固化物を前記飽和溶液の固化物とする請求項3記載の半導体混晶の成長方法。
- 前記工程(D)が、前記温度勾配を徐々に高温側に移動し、成長面の温度を一定に保つ請求項1〜4のいずれか1項記載の半導体混晶の成長方法。
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