JPH09103479A - 医用材料及びその製造法 - Google Patents

医用材料及びその製造法

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JPH09103479A JP7301898A JP30189895A JPH09103479A JP H09103479 A JPH09103479 A JP H09103479A JP 7301898 A JP7301898 A JP 7301898A JP 30189895 A JP30189895 A JP 30189895A JP H09103479 A JPH09103479 A JP H09103479A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 毒性の少ない架橋法、及び、これによる医用
材料を提供するものである。 【解決手段】 ゼラチンをスクシンイミド化ポリ−L−
グルタミン酸により架橋して成る医用材料。ゼラチンを
含む水溶液とスクシンイミド化ポリ−L−グルタミン酸
を含む水溶液を混合し、ゼラチンとポリ−L−グルタミ
ン酸とを架橋させることを特徴とする医用材料の製造
法。生体接着剤、止血材、血管塞栓材、動脈瘤の封止材
等、医療現場で直接架橋させて用いる医用材料。架橋後
のゲル化ゼラチンを癒着防止材、薬物担体のいずれかに
適用させた医用材料の提供に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に医療用材料と
して適用されるゼラチンゲル及びその製造法の提供に関
する。
【0002】
【従来の技術】ゼラチンは生体に含まれるコラーゲンか
ら得られるタンパク質として知られ、安全性に優れ、ま
た、生体内で分解、消失する特性を活かし、医療分野で
はカプセル剤をはじめとして多岐に応用されている。ま
た、かかるゼラチンをゲル化し、生体に対する接着剤、
止血剤等として用いる試みもなされている。例えば、術
時に患部にゼラチン水溶液とホルムアルデヒド、レゾル
シノールを加え、生体上でゼラチンをゲル化させて接着
剤として用いる方法がフランスE.H.S社のキット
(商品名:GRF glue)として臨床に利用され、
また、同様に患部上でゼラチンとポリ−L−グルタミン
酸をカルボジイミドで架橋してハイドロゲルを作成し、
同用途に適用することも試みられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ゼラチンは水溶性高分
子であるため、水中では一定の形態を保つことができ
ず、従って、前記したようにホルムアルデヒドやレゾル
シノールで架橋したり、ゼラチンとポリ−L−グルタミ
ン酸をカルボジイミドで架橋してハイドロゲルを作成す
ることが試みられているのであるが、これらの架橋剤に
は毒性の問題があり、特に、患部上で直接架橋させる前
記のような接着剤、止血材等の用途においてはこれらの
架橋剤が周囲の組織を障害しないよう細心の注意を払う
必要がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる点、毒
性の少ない架橋法、及びこれによる医用材料を提供する
もので、ゼラチンをスクシンイミド化ポリ−L−グルタ
ミン酸により架橋して成る医用材料。ゼラチンを含む水
溶液とスクシンイミド化ポリ−L−グルタミン酸を含む
水溶液を混合し、ゼラチンとポリ−L−グルタミン酸と
を架橋させることを特徴とする医用材料の製造法。生体
接着剤、止血材、血管塞栓材、動脈瘤の封止材等、医療
現場で直接架橋させて用いる医用材料。架橋後のゲル化
ゼラチンを癒着防止材、薬物担体のいずれかに適用させ
た医用材料の提供に関する。即ち、本発明は予めグルタ
ミン酸に活性基を導入し、これをゼラチン水溶液と混合
することによってゼラチンのゲル化が可能であることを
見いだし、かかる方法により毒性の高い架橋剤を直接生
体に触れさせることなしにこれを可能としたものであ
る。以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の実施の形態】
【0005】本発明におけるゼラチンとは生体に含まれ
るヒト、牛、豚等の骨、あるいは皮膚等から得たものが
使用でき、その製法としてはコラーゲンを酸、アルカ
リ、酵素等により適宜処理して得たものが用いられる。
本発明におけるスクシンイミド化ポリ−L−グルタミン
酸は、人体に対し無害であり、反応基(−COOH基)
を多数有するため迅速な反応が可能であるポリ−L−グ
ルタミン酸のカルボキシル基にカルボジイミドの併用下
に細胞毒性の低いn−ヒドロキシスクシンイミド、若し
くは、n−ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム
塩を反応させ、活性エステルを導入したものである。か
かる反応物は、ポリ−L−グルタミン酸0.1〜20重
量%に対し、n−ヒドロキシスクシンイミド、若しく
は、n−ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩
を0.001〜10重量%,カルボジイミドを0.00
1〜20重量%の割合で用い、反応温度0〜189℃,
反応時間1〜50時間の適宜の条件を選択して得られ
る。尚、カルボジイミドとしては、1−エチル−3−
(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸
塩、1−シクロヘキシル−3(2−モルホリノエチル)
カルボジイミド・メト−p−トルエンスルホン酸塩、ジ
シクロヘキシルカルボジイミドを用いることができる。
【0006】上記のスクシンイミド化ポリ−L−グルタ
ミン酸とゼラチンとのゲル化反応は、ゼラチン1〜50
重量%に対し、スクシンイミド化ポリ−L−グルタミン
酸0.1〜10重量%加え、好ましくは、30〜50℃
で反応させる。反応に要する時間は、両者を混合してか
ら2秒〜10分程度であるが、通常3〜60秒という極
めて短時間の内に反応してゲル化するのでこの程度の時
間があれば良い。尚、両者の配合に際しては、均一なゲ
ルを得やすいことから双方適宜濃度の溶液として混合す
るのが好ましい。尚、かかる溶液を作製するための溶媒
としては、蒸留水のほか、生理食塩水、炭酸水素ナトリ
ウム、ホウ酸、リン酸等の緩衝液等、毒性のないものを
用いることができる。
【0007】以上のようにゲル化されるゼラチンはゲル
化を直接患部で行いこれによる作用を発現させる、例え
ば、生体接着剤、止血材、血管塞栓材、動脈瘤の封止材
のいずれかに適用し、或は、一旦ゲル化させた後用いる
癒着防止材、薬物担体として好適に用られる。尚、かか
るゲルは当該用途に適用後は生体内で分解し、一定期間
経過すると吸収、消失する特性があり、体内に異物とし
て残存することがない。以下、本発明について実施例を
挙げて詳細に説明する。
【0008】(実施例1) −ポリ−L−グルタミン酸のスクシンイミド化の実施例
− 表1の割合でポリ−L−グルタミン酸(PLGA)、n
−ヒドロキシスクシンイミド(HSI)、及び、1−エ
チル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイ
ミド塩酸塩(EDC)を混合し、10mlのジメチルス
ルフォキシド(DMSO)に溶かして、室温で振とうし
つつ20時間反応を行った。反応後、未反応のEDC、
HSIおよびEDCの反応後生成物である1−エチル−
3−(3−ジメチルアミノプロピル)ウレア(EDC−
Urea)を除去するためにアセトンに再沈させ、更に
2回アセトンで、2回ヘキサンで洗浄した後、真空乾燥
し、活性基の導入量の異なる本発明にかかわる3種のス
クシンイミド化ポリ−L−グルタミン酸(Suc−PL
GA)を得た。なお、ポリ−L−グルタミン酸(PLG
A)は、味の素(株)製の商品名(Ajicoat p
olyamino acid resin SPG)を
塩酸で透析し、ポリ−L−グルタミン酸としたものを用
いた。
【0009】
【表1】
【0010】(実施例2) −毒性試験− 実施例1で用いたHSI,EDC、反応後生成物である
EDC−Ureaの細胞毒性試験をL929細胞を用い
て色素排除法にて行った。その結果を図1に示したがE
DCに対しHSI,EDC−Ureaは極めて毒性が低
いことを示している。尚、本発明においてはEDCは実
施例1のように洗浄除去されるので実用上問題を生じな
い。
【0011】(図1)
【0012】(実施例3) −ゼラチンのゲル化架橋反応の実施例− 等電点が8.9の新田ゼラチン(株)製ゼラチン(Ty
pe G−0545P,牛骨由来酸処理ゼラチン)を2
0重量%になるように7%NaHCO水溶液に溶解さ
せ、ゼラチンを含む水溶液とした。これを直径16mm
の試験管に500μl採取し、37℃の恒温水槽に漬
け、1cmのスターラーチップで一定速度で攪拌した。
そこへ各種濃度に7%NaHCO水溶液で調製したS
uc−PLGA水溶液を最終添加濃度(純分換算)で
1,5,10,20,40mg/mlとなるよう加え
た。そしてSuc−PLGA水溶液を加えてからゼラチ
ンがゲル化してスターラーチップが止まるまでの時間を
測定し、その結果を図2に示した。
【0013】(図2)
【0014】かかる結果はSuc−PLGAの導入活性
基量が多いほど、また、混合液中のSuc−PLGAの
濃度が高いほどゲル化時間が短くなる傾向を示し、これ
の調整によりゲル化時間のコントロールが可能であるこ
とを示唆する。しかしながら使用濃度がある一定以上で
あるとそれに要する時間はほぼコンスタントである。
尚、実施例1におけるスクシンイミド化ポリ−L−グル
タミン酸の製造、及び、実施例3におけるゼラチンとの
反応を化学式として化1に示した。
【0015】
【化1】
【0016】(実施例4) −Suc−PLGAの保存安定性試験− 実施例1で得たSuc−PLGAの粉末を作成後90日
間シリカゲルを入れた容器に入れ、冷蔵庫内で保存して
おいたものを用い、実施例3に準じてゲル化実験を行っ
た結果を図3に示した。この結果、図2とほとんど同じ
曲線が得られ、この方法でSuc−PLGAは安定して
保存できることがわかった。
【0017】(図3)
【0018】(実施例4) −実用試験例− 本発明にかかわるゼラチンゲルの応用例として、フィブ
リン糊のような止血剤が考えられる。そこで兎を用いた
in vivo実験を行った。実験は血管が比較的均一
に網目状に存在している脾臓を用いて行った。体重5k
gの日本種白色兎(オス)をネンブタール静脈注射、ケ
タラール、筋肉弛緩剤の筋肉注射により麻酔させる。次
いで電気メスを用いて開腹し、脾臓を露出させ、18G
の注射針を0.6mmの深さまで突き刺して出血創を作
成する。その後1分間の出血をろ紙で採取する。作創後
1分後に出血部位で以下の方法によりゼラチンをゲル化
させる。用いたゼラチンは実施例3と同じものであり、
Suc−PLGAはSuc基の導入が10:4の実施例
1により得たものを用いた。20%ゼラチン水溶液(7
%NaHCO)50μlを創部に滴下後、ただちに2
0mg/mlのSuc−PLGA水溶液(7%NaHC
)50μl(即ち、最終濃度10mg/mlに相
当)を添加し、ゼラチンをゲル化させた。尚、Suc−
PLGAの7%NaHCOへの溶解は作創と同時に行
ったので溶解後1分後にゲル化したことになる。このよ
うなゲル化の後、1分おきに前記と同じように出血を採
取し、シアンメトヘモグロビン法を用いて出血量の定量
を行った。その結果を図4に示す。これにおいて、創部
からの出血はほぼ完全に抑えられたことが、ゼラチンゲ
ルを創部に用いないコントロールとの比較において明ら
かである。
【0019】(図4)
【0020】尚、図4においてヨコ軸は経過時間、タテ
軸は吸光度の相対値(累積値)を表す。ろ紙に採取した
血液をシアンメトヘモグロビン法により定量する。即
ち、血液を吸い取ったろ紙を0.75%NHCl i
n 17mM Tris−HCl buffer(pH
=7.6)に漬け、37℃で24時間振とうし、血液を
抽出する。抽出液20μlに対し、0.78mMシアン
化カリウム、0.61mMフェリシアン化カリウム液を
5ml加える。これの540nmの吸光度を測定する。
ゲル添加前の1分間の血液量を示す吸光度を1とし、そ
の後の出血量を相対値で示した。ゲルを添加しない場
合、出血は持続するがゲルを添加することによって出血
が抑制される。
【0021】
【発明の効果】本発明は、毒性の少ない架橋法、及びこ
れによる医用材料を提供したもので、生体接着剤、止血
材、血管塞栓材、動脈瘤の封止材等、医療現場で直接架
橋させて用いる医用材料に用いて従来のようにその適用
時の毒性に注意を払う必要がなく、従って、その操作が
極めて簡単である。一方、架橋させたゲル化ゼラチンは
他の用途として癒着防止材、徐放性薬物の担体としても
好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Suc−PLGAの合成に関係する3つの化合
物の細胞毒性試験の結果を示した図。
【図2】Suc−PLGAの種類と濃度がゲル化時間に
与える影響を示した図。
【図3】作成後90日保存した後のSuc−PLGAの
水溶液濃度とゲル化時間の関係を示した図。
【図4】出血創に本発明ゲルを適用したときの出血量の
変化を示した図。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゼラチンをスクシンイミド化ポリ−L−
    グルタミン酸により架橋して成る医用材料。
  2. 【請求項2】 ゼラチンを含む水溶液とスクシンイミド
    化ポリ−L−グルタミン酸を含む水溶液を混合し、ゼラ
    チンとポリ−L−グルタミン酸とを架橋させることを特
    徴とする医用材料の製造法。
  3. 【請求項3】 生体接着剤、止血材、血管塞栓材、動脈
    瘤の封止材のいずれかに適用される請求項1記載の医用
    材料。
  4. 【請求項4】 癒着防止材、薬物担体のいずれかに適用
    される請求項1記載の医用材料。
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